JP6689781B2 - 終端固定具 - Google Patents

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Description

本発明は、各種木構造の強度を向上するため、骨格材にテンションロッドを取り付ける場合に用いる終端固定具に関する。
木造建築は一般に大規模化が難しく、公共施設や事業所などでは、強度や経済性に優れた鉄骨構造や鉄筋構造が導入されることが多い。しかし近年は、環境面などで木材の有効活用が模索されているほか、集成材の製造技術が向上したため、強度面での課題が改善され、木造建築の大規模化が無理なく実現できるようになった。この大規模化に際し、骨格材同士は強固に連結する必要があり、連結箇所には各種金物を用いることも多く、その一例としてテンションロッドが挙げられる。テンションロッドは骨格材を特定の方向に引き寄せ、骨格材の変位を拘束する。
テンションロッドを用いて骨格材を補強する技術の例として、後記特許文献が挙げられる。そのうち特許文献1では、登り梁の下端部とテンションロッドを強固に連結できるほか、登り梁の据え付け作業を無理なく実施可能な梁受け構造が開示されている。この構造は、登り梁の下端面に接触するT字状の金具などを用いており、金具には、水平方向に突出する接続軸を設けてある。接続軸は、登り梁を水平方向に貫く収容孔に入り込み、しかもテンションロッドと螺合することができる。したがってテンションロッドに作用する張力は、金具を介して登り梁の下端面で受け止められる。また金具により、登り梁を柱に据え付ける作業も容易である。
次の特許文献2では、テンションロッドの脱落を防止できるほか、経年変形にも配慮された主部材の補強構造が開示されている。この構造は、コの字状の固定具と、固定具の左右に配置する一対のリンクと、一対のリンクの先端同士を結ぶ外部ピンなどで構成され、リンクは、固定具に対して揺動自在に取り付ける。また外部ピンの中央部には、クレビスを介してテンションロッドを取り付ける。そして固定具は、主部材の端部を囲むように配置することで、テンションロッドに作用する張力は、主部材の端面で受け止められる。そのため、テンションロッドの脱落を防止できるほか、主部材の繊維方向に圧縮荷重が作用することで、主部材の経年変形を抑制できる。
特開2017−14735号公報 特開2017−36575号公報
前記の特許文献は、いずれも部材の端面に何らかの金属板を接触させ、この金属板を介してテンションロッドに作用する張力を部材に伝達しており、テンションロッドの脱落や部材の破損を招きにくい。当然ながらこれらの技術では、部材の端部から離れた中間部にテンションロッドを取り付けることができない。しかし実際には、部材の中間部にテンションロッドを取り付けたいことも多く、その具体例としては、登り梁の下端部を延長し、軒先の骨格としての機能を併せ持つ場合が挙げられる。この登り梁の下端面は、柱との接合位置よりも屋外側に突出するため、登り梁の下端面に何らかの金属板を接触させることが難しい。
骨格材にテンションロッドを取り付ける方法は様々で、前記のように、部材の端面に金属板を接触させることができない場合でも、何らかの対応策は容易に導き出すことができる。ただしテンションロッドは、建築物の安全性を確保する上で極めて重要な役割を担い、その脱落を防ぐため、十分な対策を講じるべきであり、単純に取り付けができればよい訳ではない。
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、各種木構造の強度を向上するため、骨格材にテンションロッドを取り付ける場合において、骨格材の端部以外にもテンションロッドを取り付け可能で、しかも安全性にも配慮された終端固定具の提供を目的としている。
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、骨格材にテンションロッドを取り付けるために用いる終端固定具であって、該骨格材の両側面を貫通する中心軸と、該中心軸を取り囲むように複数配置し且つ該骨格材の両側面を貫通する補強軸と、該骨格材の両側面に配置する接続板と、前記テンションロッドの端部を保持するクレビスと、を有し、前記クレビスの丸孔に前記中心軸を差し込み、該中心軸で該クレビスを揺動可能に保持し、前記接続板には、前記中心軸と同心に揃う中心孔を設け、該中心孔を用いて該接続板と該中心軸を一体化するほか、前記接続板には、前記補強軸と同心に揃う固着孔を設け、該固着孔を用いて該接続板と該補強軸を一体化し、前記補強軸および前記接続板によって前記骨格材を取り囲む梯子状の枠組を形成し、該枠組の中央を前記中心軸が貫いていることを特徴とする。
本発明による終端固定具は、骨格材にテンションロッドの一端側を取り付けるために用いる。ここで骨格材とは、木造建築を始めとする各種木構造の骨格となる棒状の木材を指し、骨格材には、平行に対向する二側面を有するものとする。そしてテンションロッドは、骨格材の個々の側面に沿って計二本配置する場合もあれば、骨格材の中央付近に一本だけ配置する場合もある。また本発明は、各種木構造のあらゆる箇所で用いることができ、骨格材が登り梁に相当する場合もあれば、柱に相当する場合もある。
終端固定具は、中心軸と補強軸と接続板とクレビスの四要素を中心に構成される。そのうち中心軸は、骨格材の両側面を貫通するように差し込む丸棒状のもので、諸条件に応じて全長を調整する。そして中心軸には、クレビスを介してテンションロッドの一端側を取り付ける。なお中心軸を差し込むため、骨格材には、あらかじめ両側面を貫通する主孔を加工しておく。主孔は、中心軸を緩みなく差し込めるような内径に仕上げる。
クレビスは、涙滴のような細長い形状の機械部品で、隣接する二要素を接続する機能を有し、本発明においては、中心軸とテンションロッドを接続するために用いる。本発明でのクレビスには、中心軸を緩みなく差し込み可能な丸孔を設けてあり、この丸孔に中心軸を差し込むと、クレビスは自在に揺動できるものとする。またクレビスには、テンションロッドの端部を保持できるよう、メネジなどを設ける必要がある。なおクレビスは、一本のテンションロッドに対して一個用いるものとする。
中心軸は、丸棒状であればよく、金属製の丸棒のほか、強度に問題がないならば、長尺のボルトをそのまま流用することもできる。この場合、骨格材に加工する主孔は、長尺のボルトの軸部に応じた内径に仕上げ、緩みを必要最小限に留める。また中心軸として長尺のボルトを用いる場合、その抜けを防ぐため、先部にナットを螺合させるが、ナットの締め付けでクレビスの揺動を拘束しないよう、何らかの対策を講じる。
補強軸は、中心軸と同様、骨格材の両側面を貫通するように差し込む丸棒状のもので、中心軸を囲むように複数配置する。補強軸は文字通り、中心軸を補強する役割を担い、テンションロッドに作用する張力の一部を骨格材に伝達する。この補強軸を差し込むため、骨格材には、あらかじめ両側面を貫通する副孔を加工しておくが、副孔は、補強軸を緩みなく差し込める内径に仕上げる。なお補強軸についても、中心軸と同様、金属製の丸棒のほか、長尺のボルトを流用することもでき、この場合、長尺のボルトの先部にナットを螺合させ、接続板を骨格材に密着させる。そのほか補強軸は、テンションロッドやクレビスとの干渉を避けるように配置する。
接続板は、中心軸と補強軸を一体化するための部品で、骨格材の側面を挟み込むように計二枚配置する。そのため接続板は、全ての補強軸と接触できる大きさとする。そして接続板には、中心軸と同心に揃う中心孔と、補強軸と同心に揃う固着孔を設ける。中心孔は、接続板と中心軸を一体化するために用い、その内径は、テンションロッドの配置や中心軸の形態によって異なる。仮に、中心軸として金属製の丸棒を用い、これを骨格材の側面から突出させる場合、中心孔は、中心軸を緩みなく差し込み可能な内径とする。また中心軸として長尺のボルトを用いる場合、中心孔は、その軸部に応じた内径とする。
固着孔は、接続板と補強軸を一体化するために用いる。補強軸として金属製の丸棒を用いる場合、補強軸の端面を接続板に接触させ、接続板と補強軸をボルトで一体化する。そのため補強軸の端面中心には、メネジを設けるほか、固着孔は、このボルトの軸部に応じた内径とする。また補強軸として長尺のボルトを用いる場合、このボルトの軸部は、接続板を貫通する。したがって固着孔は、長尺のボルトの軸部に応じた内径とする。
このように、中心軸と補強軸と接続板とクレビスの四要素を中心に構成される終端固定具を用いることで、骨格材の端部のほか、あらゆる箇所にテンションロッドを取り付け可能で、様々な建築形態に柔軟に対応できる。またテンションロッドに作用する張力は、中心軸と補強軸の双方を介して骨格材に伝達され、骨格材の内部に発生する応力を緩和できる。しかも中心軸と補強軸は、遠ざけて配置することができ、骨格材の内部でのヒビ割れの発生や、その成長を抑制可能である。
請求項1記載の発明のように、中心軸と補強軸と接続板とクレビスの四要素を中心に構成される終端固定具を用いることで、骨格材の端部のほか、あらゆる箇所にテンションロッドを取り付け可能で、様々な建築形態に柔軟に対応できる。そのため、登り梁の下端部を延長し、軒先の骨格としての機能を併せ持つ場合でも、無理なく登り梁にテンションロッドを取り付けることができる。
また、本発明による終端固定具において、テンションロッドに作用する張力は、中心軸と補強軸の双方を介して骨格材に伝達される。そのため、骨格材の内部に発生する応力を緩和でき、骨格材の破損を防ぐ。しかも中心軸と補強軸は、遠ざけて配置することができ、骨格材の内部でのヒビ割れの発生や、その成長を抑制可能で、安全性が向上する。
本発明による終端固定具の形状例と使用例を示す斜視図で、骨格材の左右両側にテンションロッドを取り付けるため、一組の終端固定具を使用している。なお骨格材は、斜方向に配置される登り梁で、その下端部が柱の上面に載る。 図1の骨格材にテンションロッドを取り付け、さらに柱と一体化した状態を示す斜視図である。なお図の左上には、骨格材に中心軸と補強軸を差し込んだ状態を描いてある。 本発明による終端固定具を用い、二本の骨格材を合掌形状に組み上げた屋根構造と、この屋根構造を柱に載せた状態を示す斜視図である。なお図の上方には、屋根構造だけを描いてあり、図の下方には、屋根構造を柱に載せた状態を描いてある。 図1とは接続板の形状が異なる終端固定具を示す斜視図で、基本構成は図1と同じだが、補強軸を二本としてあり、これに伴い、接続板を細長い長円形としている。 図4の骨格材にテンションロッドを取り付け、さらに柱と一体化した状態を示す斜視図である。なお図の左上には、骨格材に中心軸と補強軸を差し込んだ状態を描いてある。 補強軸として長尺のボルトを用いた場合を示す斜視図で、それ以外の構成は図4と同じである。なお図の上方には、構成要素を分離した状態を描いてあり、図の下方には、これらを一体化した状態を描いてある。 中心軸と補強軸の双方に長尺のボルトを用いた場合を示す斜視図で、中心軸以外の構成は図6と同じである。なお図の上方には、構成要素を分離した状態を描いてあり、図の下方には、これらを一体化した状態を描いてある。 クレビスを一個だけ用いた構成の一例を示す斜視図で、骨格材の下斜面に加工したスリットの内部にクレビスを収容する。 図8のテンションロッドを骨格材に取り付けた状態を示す斜視図で、図の左上には、クレビスの取り付け前の状態を描いてあり、図の右下には、クレビスの取り付け後の状態を描いてある。なお内部構造を示すため、骨格材と柱については、縦断面を描いてある。 図8と同様にクレビスを一個だけ配置した上で、中心軸と補強軸の双方に長尺のボルトを用いた構成を示す斜視図で、図の左上には、構成要素を分離した状態を描いてあり、図の右下には、これらを一体化した状態を描いてある。
図1は、本発明による終端固定具の形状例と使用例を示し、骨格材51の左右両側にテンションロッド74を取り付けるため、一組の終端固定具を用いている。図1では、木造建築を構成する骨格材51と柱61を描いてあり、そのうち骨格材51は、斜方向に配置される登り梁で、その下端部には、水平方向に広がる当接面56を加工してあり、これが柱61の上面に載る。さらに骨格材51の下端部は、軒先の骨格として機能させるため、クサビ状に仕上げてあり、柱61よりも図の左側に突出する。
終端固定具は、中心軸11と補強軸31と接続板21とクレビス41を中心に構成され、中心軸11は金属製の丸棒で、骨格材51の両側面を貫通する主孔52に差し込む。主孔52は、中心軸11を緩みなく収容できる内径に仕上げてある。なお中心軸11の延長は、骨格材51の横幅(主孔52の延長)よりも長く、中心軸11の両端部は、骨格材51から突出する。そして中心軸11の端部には、クレビス41を介してテンションロッド74を取り付けるが、クレビス41やテンションロッド74は、骨格材51を挟むように二組配置してある。
クレビス41は長円形の外観で、その端部には、中心軸11を緩みなく差し込むため、丸孔46を設けてあり、その反対側には、テンションロッド74の端部のオネジと螺合するメネジ48を設けてある。またクレビス41は、中心軸11を支点として自在に揺動可能で、テンションロッド74をあらゆる方向に引き出すことができる。そのほかテンションロッド74の端部には、緩み止めとして機能するロックナット75を螺合させてある。
クレビス41が中心軸11から離脱しないよう、中心軸11の端面には、ワッシャ18を取り付ける。そして、ワッシャ18を固定するため、ボルト17を用いており、中心軸11の両端面の中心には、このボルト17と螺合するメネジ15を設けてある。なおワッシャ18とボルト17は、図1の右下側にのみ描いてあるが、実際には図1の左上側でも用いる。
補強軸31は中心軸11と同様、金属製の丸棒で、中心軸11の周囲に配置するもので、図1では四本の補強軸31を等間隔で並べる。そして補強軸31を差し込むため、骨格材51には、両側面を貫通する副孔53を四箇所に加工してある。なお補強軸31と副孔53は、延長を揃えてあり、補強軸31が副孔53から突出することはない。さらに補強軸31についても、その両端面の中心にはメネジ35を設けてある。
接続板21は円形の金属板で、骨格材51の側面に配置し、中心軸11と補強軸31を一体化する役割を担う。したがって接続板21の中心には、中心軸11を緩みなく差し込むため、中心孔24を設けてあり、さらにその外側には、固着孔26を設けてある。固着孔26は、補強軸31のメネジ35と螺合するボルト27を差し込むために設けてあり、このボルト27を締め付けることで、接続板21と補強軸31が一体化する。当然ながら、接続板21の中心孔24や固着孔26は、骨格材51の主孔52や副孔53と同心に揃える必要があり、また接続板21は、全ての補強軸31の端面を覆い隠す大きさを有する。
接続板21を用いることで、中心軸11の半径方向に作用する荷重は、接続板21を介して補強軸31に伝達される。したがって、テンションロッド74に作用する張力は、中心軸11のほか、補強軸31からも骨格材51に伝達され、主孔52や副孔53の周辺に作用する応力が緩和され、経年変形やヒビ割れの発生を抑制できる。なお接続板21を取り付けるボルト27は、図1の右下側にのみ描いてあるが、実際には図1の左上側でも用いる。
そのほか骨格材51と柱61は、双方を貫くホゾシャフト67を介して一体化する。そのため柱61の上端面の中心には、下方向に伸びるホゾ穴64を加工してあるほか、骨格材51の当接面56にも、ホゾ穴54を加工してある。そして骨格材51と柱61の双方の側面からドリフトピン69を打ち込むことで、ホゾシャフト67を固定する。なおドリフトピン69を打ち込むため、骨格材51の側面には、上下に並ぶ二列のピン孔55を加工してあり、柱61の側面には十字状に二列のピン孔65を加工してあり、さらにホゾシャフト67の側周面には、側孔68を設けてある。
図2は、図1の骨格材51にテンションロッド74を取り付け、さらに柱61と一体化した状態を示す。施工時は図2の左上に描くように、まず骨格材51の主孔52に中心軸11を差し込むと共に、四箇所の副孔53に補強軸31を差し込む。次に、骨格材51の両側面に接続板21を接近させ、接続板21の中心孔24に中心軸11を差し込み、その後、接続板21から補強軸31のメネジ35に向けてボルト27を差し込むと、二枚の接続板21が四本の補強軸31を挟み込み、接続板21と補強軸31が一体化する。
中心軸11の両端部は、接続板21から突出しており、それぞれの端部にクレビス41を取り付け、さらにワッシャ18でクレビス41の脱落を防いでいる。ワッシャ18は、中心軸11の端面に接触しており、その中心に差し込んだボルト17で固定してある。またクレビス41には、テンションロッド74を取り付けてあるが、その緩みを防ぐため、ロックナット75をクレビス41に密着させてある。クレビス41は、中心軸11を支点として自在に揺動可能で、テンションロッド74をあらゆる方向に引き出すことができ、図2では、二本のテンションロッド74をいずれも水平方向に引き出している。
このような方法でテンションロッド74を取り付けることで、テンションロッド74に作用する張力は、中心軸11と補強軸31の双方を介して骨格材51に伝達し、骨格材51の内部での応力集中を緩和できる。また骨格材51と柱61は、ホゾシャフト67とドリフトピン69を介して一体化されている。そのほか骨格材51の下端部は、クサビ状に仕上げてあり、柱61よりも図の左側に突出する。
図3は、本発明による終端固定具を用い、二本の骨格材51を合掌形状に組み上げた屋根構造と、この屋根構造を柱61に載せた状態を示す。図3の上方に描いた屋根構造において、骨格材51は登り梁に相当しており、この二本の骨格材51は、その一端面同士を接触させた上、他端面同士を二列のテンションロッド74で引き寄せており、屋根構造の合掌形状が維持される。そしてテンションロッド74の取り付けには、図1などに描いた終端固定具を用いている。
屋根構造は、自立的に形状を維持しており、仮に屋根構造の頂点に下向きの荷重が作用した場合でも、テンションロッド74の張力により、骨格材51が倒れることはない。なお、テンションロッド74の張力を調整するため、テンションロッド74の中間部には、ターンバックル76を組み込んである。そのほか屋根構造の下端面には、柱61との接合のため、ホゾシャフト67を差し込んであり、ホゾシャフト67はドリフトピン69で固定してある。
図3の下方に描くように、屋根構造を柱61に載せると、木造建築の枠組みが完成する。なお強度を確保するため、木造建築の奥行方向に隣接する二本の柱61を桁材71で結んでいるほか、屋根構造の頂上同士は棟木70で結んでいる。また、図3の上方に描いた屋根構造は、自立的に形状を維持できるため、通常は地上に倒した状態で組み立て作業を進めていく。そのため、施工時の高所作業を減らすことができ、安全性や生産性の向上が期待できる。
図4は、図1とは接続板22の形状が異なる終端固定具を示している。図4においても、基本構成は図1と同じで、骨格材51は斜方向に伸びる登り梁で、その両側にテンションロッド74を取り付けることを想定している。ただし補強軸31は、中心軸11を挟んで二本としてあり、これに伴い、接続板22も細長い長円形としている。この接続板22の中央には、中心軸11を差し込むため、中心孔24を設けてあり、また両端部には、補強軸31と螺合するボルト27の軸部を通すため、固着孔26を設けてある。
中心軸11は、接続板22の中心孔24から突出し、そこにクレビス41を取り付けることは、これまでと同じである。また補強軸31は、二枚の接続板22で挟み込まれ、ボルト27を介して接続板22と補強軸31は一体化する。そのため、中心軸11の半径方向に作用する荷重は、接続板22を介して補強軸31に伝達される。このように、補強軸31の配置は、骨格材51の大きさや荷重条件などに基づき、自在に決めることができ、接続板22の形状は、補強軸31の配置に基づいて決める。
図5は、図4の骨格材51にテンションロッド74を取り付け、さらに柱61と一体化した状態を示す。長円形の接続板22は、登り梁51の傾斜方向に沿って配置してあり、テンションロッド74に作用する張力は、中心軸11のほか、二本の補強軸31にも伝達され、応力が緩和される。なお、補強軸31と螺合するボルト27の頭部は、接続板22から突出するが、これがクレビス41と接触しないよう、中心軸11の延長を調整してある。
図6は、補強軸32として長尺のボルトを用いた場合を示しており、それ以外の構成は図4と同じである。図1や図4などの補強軸31は、金属製の丸棒を用いているが、荷重条件によっては、図6のように、補強軸32として長尺のボルトを用い、構成を簡素化することもできる。この場合、接続板22の固着孔26や、骨格材51の副孔53は、補強軸32の軸部に応じた内径となる。また補強軸32の先部にはナット36を螺合し、二枚の接続板22を骨格材51の側面に密着させる。図6においても、補強軸32の軸部を副孔53に接触させることで、テンションロッド74に作用する張力を骨格材51に伝達することができる。
図7は、中心軸12と補強軸32の双方に長尺のボルトを用いた場合を示しており、中心軸12以外の構成は図6と同じである。図7のように、中心軸12についても長尺のボルトを用いることで、骨格材51の主孔52や、接続板23の中心孔25や、クレビス42の丸孔47は、中心軸12の軸部に応じた内径としてある。なお、クレビス42の脱落を防ぐため、ワッシャ18を用いる点は、これまでの各図と同じである。そのほか中心軸12の脱落を防ぐため、その先部には二個のナット19を螺合させている。この二個のナット19を密着させることで、中心軸12に緩み(軸線方向の緩み)を持たせてあり、クレビス42の揺動を拘束することがない。
図7のように、中心軸12と補強軸32の双方に長尺のボルトを用いることで、終端固定具の製造価格を抑制することができる。仮に、テンションロッド74に作用する張力が比較的緩いならば、このような構成でも問題を生じることはない。なお図7においても、接続板23の延長を増し、補強軸32の本数を増やすならば、強度の向上を実現できる。
図8は、クレビス43を一個だけ用いた構成の一例を示し、骨格材51の下斜面に加工したスリット57の内部にクレビス43を収容する。この構成においても、骨格材51に中心軸11と補強軸31を差し込み、これらを接続板23で一体化することに変わりはない。ただしクレビス43は、中心軸11の中央付近に配置してあり、スリット57の内部で揺動可能となる。なお図8では、中心軸11を接続板23に貫通させる必要がなく、接続板23の中心孔25は、ボルト17の軸部を差し込み可能な内径としてある。さらに、中心軸11と補強軸31の双方の延長は、骨格材51の横幅と等しく、これらの端面は接続板23に接触する。
スリット57は、骨格材51の下斜面を切り欠くように形成され、その先端付近で主孔52と交差する。なおスリット57の形成については、チェーンソーを用いることを想定している。またクレビス43のメネジ48は、テンションロッド74と螺合させるため、骨格材51の外部に配置する必要がある。そのため図8のクレビス43は、スリット57に応じた延長としてある。そのほか中心軸11や補強軸31のメネジ15、35は、両端面に設けてあり、左右両側からボルト17、27を差し込み、二枚の接続板23で中心軸11と補強軸31を一体化する。
図9は、図8のテンションロッド74を骨格材51に取り付けた状態を示す。なお内部構造を示すため、骨格材51と柱61については、縦断面を描いてある。接続板23は、直立した状態で骨格材51の両側面に接触している。また、骨格材51のスリット57の先端付近には、中心軸11が露出しており、ここでクレビス43を揺動自在に保持する。そして中心軸11と補強軸31は、接続板23で一体化しており、テンションロッド74に作用する張力は、中心軸11と補強軸31の双方を介して骨格材51に伝達する。
図10は、図8と同様にクレビス44を一個だけ配置した上で、中心軸12と補強軸32の双方に長尺のボルトを用いた構成を示している。中心軸12と補強軸32に長尺のボルトを用いることで、骨格材51の主孔52や副孔53のほか、クレビス44の丸孔47は小径となる。ただし、主孔52はスリット57と交差しており、中心軸12でクレビス44を揺動自在に保持することは、これまでの各図と同じである。なお中心軸12や補強軸32の先部にはナット19、36を螺合し、これらを締め付けることで、対向する接続板23が骨格材51の側面に密着する。
11 中心軸(丸棒)
12 中心軸(長尺のボルトを流用)
15 メネジ(中心軸の両端面)
17 ボルト
18 ワッシャ
19 ナット(中心軸と螺合)
21 接続板(円形)
22 接続板(長円形・中心孔が大径)
23 接続板(長円形・中心孔が小径)
24 中心孔(大径)
25 中心孔(小径)
26 固着孔
27 ボルト
31 補強軸(丸棒)
32 補強軸(長尺のボルトを流用)
35 メネジ(補強軸の両端面)
36 ナット(補強軸と螺合)
41 クレビス(骨格材の外側に配置・丸孔が大径)
42 クレビス(骨格材の外側に配置・丸孔が小径)
43 クレビス(骨格材の内部に配置・丸孔が大径)
44 クレビス(骨格材の内部に配置・丸孔が小径)
46 丸孔(大径)
47 丸孔(小径)
48 メネジ(クレビス)
51 骨格材(登り梁)
52 主孔
53 副孔
54 ホゾ穴
55 ピン孔
56 当接面
57 スリット
61 柱
64 ホゾ穴
65 ピン孔
67 ホゾシャフト
68 側孔
69 ドリフトピン
70 棟木
71 桁材
74 テンションロッド
75 ロックナット
76 ターンバックル

Claims (1)

  1. 骨格材(51)にテンションロッド(74)を取り付けるために用いる終端固定具であって、
    該骨格材(51)の両側面を貫通する中心軸(11又は12)と、該中心軸(11又は12)を取り囲むように複数配置し且つ該骨格材(51)の両側面を貫通する補強軸(31又は32)と、該骨格材(51)の両側面に配置する接続板(21乃至23)と、前記テンションロッド(74)の端部を保持するクレビス(41乃至44)と、を有し、
    前記クレビス(41乃至44)の丸孔(46又は47)に前記中心軸(11又は12)を差し込み、該中心軸(11又は12)で該クレビス(41乃至44)を揺動可能に保持し、
    前記接続板(21乃至23)には、前記中心軸(11又は12)と同心に揃う中心孔(24又は25)を設け、該中心孔(24又は25)を用いて該接続板(21乃至23)と該中心軸(11又は12)を一体化するほか、
    前記接続板(21乃至23)には、前記補強軸(31又は32)と同心に揃う固着孔(26)を設け、該固着孔(26)を用いて該接続板(21乃至23)と該補強軸(31又は32)を一体化し、
    前記補強軸(31又は32)および前記接続板(21乃至23)によって前記骨格材(51)を取り囲む梯子状の枠組を形成し、該枠組の中央を前記中心軸(11又は12)が貫いていることを特徴とする終端固定具。
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