JP3851052B2 - 建築構造体補強金具及び建築構造体の補強方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築構造体補強金具及び該金具による建築構造体の補強方法に関し、特に多層階木造建築物の補強に有効な建築構造体補強金具および該金具を用いた建築構造体の補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、限られた宅地の有効利用やゆとりある住環境の実現を目指して木造多層階住宅が求められる傾向にあり、特に準防火地域を対象とする3階建て木造住宅に対する制限の合理化を含む昭和62年の建築基準法改正を受けて3階建てを含む多層階木造住宅が広く普及しつつある。
【0003】
わが国において準防火地域を対象として永い間3階建て木造住宅に対する厳しい制限が行われていたのは、周知の通り限られた宅地を有効利用しなければならないにもかかわらず地震多発国であることから、安全を期することを目的としていたためである。
【0004】
このような多層階木造建築物の建築制限が緩和されたとは言っても、安全な建築物を確保すべきことは当然であり、耐震性や耐風圧性の向上をはじめとする各種の補強手段や防火対策が取られており、補強のための用具や施工方法も多く提案されている。例えば軽量鉄骨やさらには鋼材を組み合わせる組立式住宅等もその一つであるが、わが国においてはまだ伝統的な木造住宅に固執する傾向が強い。
【0005】
このような木造住宅に対する補強手段としては、一般的に、在来工法で周知の木材を斜めに配設して固定する筋交い(すじかい)を利用するものや土台のような水平部である直交部隅の近くに小形補強材を斜めに配設する火打ち工法等が知られている。
【0006】
しかしながら、このような在来の補強工法には次のような欠点があり十分に機能するものではない。すなわち、在来工法の木材の筋交いや火打ち工法による補強においては、補強用木材を取り付ける際に木材同士に切り込み加工を行う必要があり、その結果主建築材の強度を低下せしめる可能性があること、また、その取り付け手段、例えば釘打ちまたはボルト締め箇所自体の強度が不足すること等が挙げられる。
【0007】
さらに、各部材同士のほぞとほぞ孔・ほぞ溝等による接合部が、地震や風圧等の強力な繰り返し外力を受けた際に脱落し、極端な場合には倒壊に至る場合がある。このような事態を回避するために、土台、梁、桁または胴差のような水平部材と柱のような垂直部材との接合部等に対する局部的な補強金具、例えば平金物、羽子板ボルト、各種形状のホールダウン金物等による締結を行う方法等が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの補強金具を用いた在来の施工方法は局部的補強が中心となり、総合的な対策は必ずしも達せられていない。また、新築の場合に止まらず、既存の住宅の耐震性や耐風圧性を向上させるべく改装を行いたいとする要請も多くあるが、現状では十分な方策が得られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、多層階木造建築物をはじめ各種建築構造体に対して適用可能な建築構造体補強金具ならびに該補強金具を用いた建築構造体の補強方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、建築構造体の所要部分に取り付け可能な第1の連結取り付け部材と、前記第1の連結取り付け部材の一部に揺動可能に接続され、かつ張力調整可能な機構を備えた少なくとも1つの張力調整部材と、前記建築構造体のその他の所要部分に取り付け可能な第2の連結取り付け部材と、該第2の連結取り付け部材の一部と前記張力調整部材との間を接続するための所望長さの緊張部材と、からなる建築構造体補強金具において、前記緊張部材がワイヤロープを主体として構成された線状緊張部材(16、17、S)であること、ならびに、前記第1の連結取り付け部材および/または第2の連結取り付け部材が、建築構造体に対して平行に立設された一対の金属体(12t、12t)によって支持された軸同士の間に張力を付加することができる左右平衡形連結取り付け部材(12A、12B)として形成されること、を特徴とする建築構造体補強金具によって解決される。
【0011】
また、本発明の課題は、前記第2の連結取り付け部材(12B)の一部と前記張力調整部材との間を接続するための結合部が二又状アイボルト(14b)であり、前記ワイヤロープを主体として構成された線状緊張部材(16、17)の両端部が溝付きリング(S)の溝を介して引き止められ、該溝付きリング(S)を前記二又状アイボルト(14b)の中間に挟持されることにより回動自在に結合されること、を特徴とする建築構造体補強金具によって解決される。
【0012】
さらに、本発明においては、前記第1および第2の連結取り付け部材が、土台側に取り付けられる際に、土台取り付け用金物(50、60)によって締結固着される建築構造体補強金具がより有利に利用可能である。
【0013】
さらに、本発明の課題は、建築構造体の所要部位に固定される第1および第2の連結取り付け部材と、張力調整部材と、ワイヤロープを主体とする線状緊張部材と、を用い、前記第1の連結取り付け部材の連結部と前記第2の連結取り付け部材との間を、前記張力調整部材に対して前記ワイヤロープを主体とする線状緊張部材を直列に連結した状態で遥動可能に連結する、建築構造体補強金具による建築構造体の補強方法であって、前記第1および第2の連結取り付け部材を、建築構造体の方形部分における対角位置の少なくとも一方に配設することにより筋交い手段ならびに建築部材脱落防止手段として機能せしめ、完工時において前記張力調整部材を調整しつつ建築構造体の方形状態の維持を図ること、を特徴とする建築構造体補強方法によって有利に解決される。
【0014】
この場合、本発明にかかる建築構造体の補強方法は、地面に対して垂直の方形部分、すなわち左右の柱と土台・梁または桁等で形成される方形面部分に、または、土台・梁または桁等で形成される水平の方形面部分に、または両者を組み合わせた方形部分に、対してそれぞれ任意に適用することができる。
【0015】
このような本発明にかかる建築構造体補強金具においては、両端の連結取り付け部材12、22、32、42および張力調整部材14、14a、14bはそれぞれ剛体をもって形成され、これらの中間を連結する線状緊張部材16は建築構造体の強度を考慮して適当な太さおよび強度のものが使用されるべきであるが、通常はワイヤロープのように可撓性を有するものである。そのため、製造・保管・運搬のいずれにおいても容易であり、施工にあたっての困難性も少なくなる。
【0016】
そして、施工時には全体が剛体である場合に比して取り付け作業と張力調整作業とを別個に行うことができ、作業効率を大幅に向上せしめることができる。この場合の張力調整は、トルクレンチのような張力調整具によって正確かつ確実に所定値に調整することができる利点が得られる。
【0017】
また、建築構造体補強金具を取り付ける際の所要間隙も少なくて済むことから設計上の自由度も高くなり、新築の場合はもとより、既設建築構造体に対する予防的補強工事、さらには、地震・台風等の被害を受け半壊または歪みの生じた建築物の復元工事に伴う改装・補強工事にも容易に適用可能であり、それぞれ顕著な効果を発揮するものである。
【0018】
さらに、本発明にかかる建築構造体に対して平行に立設された一対の金属体(12t、12t)を有する左右平衡形取り付け部材により支持された軸(ボルト)同士の間に張力を付加することができるため、構造体に対して不平衡張力が発生せず、余分な歪みが生じない利点が得られる。
【0019】
また、本発明にかかる建築構造体補強金具を用いた建築構造体の補強方法によれば、同種または異種の連結取り付け部材、張力調整部材、線状緊張部材の太さおよび長さ等の選定により、多様な建築物に対応することができる。特に線状緊張部材の少なくとも一方の連結は、Uボルトと通称ヒョットコと称される金具からなるボルト接続金具によって容易に調整することも可能であり、いわゆる現場合わせも可能である。したがって、全体を工場生産しておくばかりでなく、既設建築物の現状に合わせた連結取り付け具の種類や線状緊張部材の長さ等を決定しながら製造または修正しつつ施工することができる特徴が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について添付図を参照しつつ開示する。図1は、本発明にかかる建築構造体補強金具の基本構成を示す図である。なお、構造材Cについては、単に建築構造体補強金具との基位置関係を示すもので、寸法的には整合していない。
【0021】
図1に示すように、建築構造体補強金具の両端には、方形構造体の対角部にそれぞれ取り付けるための第1および第2の連結取り付け部材12A、12Bが配設される。この形状の連結取り付け部材12A、12Bは、方形構造体の対角位置の内角部に取り付けるのに適する構造を示すものであるが、後述するように適用部位に応じてそれぞれ適する形状のものを選択・使用すべきものである。また、第1および第2の連結取り付け部材12A、12Bは、ここでは構造材Cに対して、構造材Cを貫通させるボルト・ナットをはじめ適宜形状の締結部材により固着されている。
【0022】
図1に示す形状の連結取り付け部材12A、12Bの各直交部12rに挟まれた部位には、張力調整部材または線状緊張部材として機能するワイヤロープ等を取り付けるための三角形の部材12tが一対形成されている。この一対の三角形の部材12tは直交部12rに対して別途切断された三角板を溶接することによって形成され、連結取り付け部材12A、12Bを建築構造体に取り付けた際に、該構造材に対して平行に立設され、平衡した張力を与えることになる。この三角形の部材12tには、溝付きリング(シンブル)S(図3参照)を介して線状緊張部材(ワイヤロープ)16または張力調整部材14のアイボルト14aの環状部が挿通し、一対の三角形の部材12tの軸として機能するボルト12bによって連結されている。
【0023】
第1の連結取り付け部材12Aに連結される線状緊張部材(ワイヤロープ)16の他端部側には張力調整部材14が取り付けられる。この張力調整部材14の一方端のアイボルト14aの環状部は、第2の連結取り付け部材12Bの取り付け穴12aにボルト止めされる。このボルトは一対の三角形の部材12tの双方を連結する軸として機能する。これら張力調整部材14としては、必ずしも限定されるものではないが、古くから広く普及しており種々の材質、寸法および強度のものが入手可能であるため本実施例では、ターンバックルを使用している。なお、ボルトとスリーブ等を組み合わせた形式の張力調整部材等を用いることも可能である。
【0024】
ターンバックルは、周知の通り、本体部両端が相互に逆ネジとなっており、ターンバックル胴を左右いずれかに回転させることにより、長手方向寸法が変更され、したがって張力が適宜調整可能なものである。なお、本実施例では下端側に1つの張力調整部材14が配設されているが、例えば調整しろを大きくする必要があるような用途においては、線状緊張部材として機能するワイヤロープ16の両端に配設し、それぞれにより2倍の長さ調整が可能となる。
【0025】
張力調整部材14の他端部はいわゆる二又形(C字形)アイボルト14bであり、このアイボルト14bの環状部に線状緊張部材として機能するワイヤロープ16の端部が挿通せしめられる。このように二又形(C字形)アイボルト14bを介してワイヤロープ16を連結することにより、構造材に平行に立設された一対の金属体を有する第1およびまたは第2の連結取り付け部材12A、12Bと相まって平衡張力を発生させるように作用する。
【0026】
図1の下方に示される第2の連結取り付け部材12Bは構造材Cに対して2本または1本のボルト・ナットによって固定された状態を図示しているが、用途や建築物の規模および建築地点の地形や地耐力等を勘案して適宜変更することができる。
【0027】
なお、線状緊張部材として機能するワイヤロープ16の両端は、図3に示すように、溝付きリングであるシンブルSの溝部分に巻き付けて圧着スリーブ17により圧着締めつけを行ったものである。このような端末処理は、少なくとも一方または双方共に工場製作により簡易に締めつけ処理しておくことも可能である。特に新築の建築物のように所要長さが所定範囲の誤差で確実に算出可能である用途にあっては、予め工場生産により製作しておき、現場での工数を低減することができる。このような圧着スリーブに代えて、ボルトコネクタによって現場処理することも可能であり何ら限定されない。
【0028】
図2は、図1の実施の形態に示したような、方形構造体の対角位置の内角部に取り付けるのに適する左右平行形連結取り付け部材12A、12Bの構成例を示すものである。図(A)はその正面図であり、図(B)は左側面図、図(C)は平面図である。図(A)には直交部12rが垂直および水平に示されており、紙背側並びに紙表面側の双方に三角形部材12tがあり、それぞれの面には軸として機能するボルトを挿通するための貫通孔12h、12aがそれぞれ配設されている。このように、三角形部材12tを表裏に一対設ける連結取り付け部材12A、12Bとしている結果、前述のように張力を平衡させるために効果が得られるものである。
【0029】
図2に示した連結取り付け部材12は、例えば土台、左右の柱、梁、桁または胴差等によって形成される垂直の方形構造体の対角部同士にそれぞれ配設され、通しボルト等によって固定される。この場合の連結取り付け部材12A、12Bの表裏に形成されている三角形部材12tの貫通孔12aに挿通されて軸として機能するボルト同士は張力調整部材14および線状緊張部材として機能するワイヤロープ16を介してそれぞれ接続される。
【0030】
その後、双方の張力調整部材14の張力を監理されたトルクのもとに適宜調整し、水平・垂直部材が正確な直交状態を維持するように調整する。この場合、前述のように、表裏に形成された一対の三角形部材12tとしたことにより直交部12rを介して構造材C(図1参照)に加わる張力は平衡することになる。したがって、連結取り付け部材12A、12Bはもとより、取り付けボルト・ナット、構造材Cに加わる張力が平衡することになり、余分な歪みの発生が防止される。
【0031】
このような補強方法は、縦横の土台同士または梁や桁または胴差等によって形成される水平の方形構造体にも適用可能である。前述の垂直の方形構造体の補強に加えてこのような水平の方形構造体にも、同様の補強手段を講ずることにより、より堅固な建築物を形成することができる。
【0032】
以下、図1に示したその他の主要部材の構成例を説明する。図3は線状緊張部材16の端末処理の状態を示すものである。このような構成による処理を施した結果、ワイヤロープ素線に擦り傷等を与える危険性が減少し、耐久力が増大する。なお、このワイヤロープ16の連結は、工場において、シンブルSや溝付きリング等を巻き込むようにしてさらに圧着スリーブ17を使用して予め連結処理を済ませておくこともできるが、現場においてワイヤロープ16の長さを確認した後に締め付け処理することもできる。工場処理の場合には、圧着スリーブ用の油圧等による圧着補助具により簡易手法により確実に連結することができる。
【0033】
図4(A)、(B)は、張力調整部材14としてのターンバックルの構成例を示すものである。ターンバックルは古くから長手方向寸法または張力の調整部材として知られているものである。図(A)のように細長の鋳鋼製のターンバックル胴の両端には破線で示したボルト14a、14bを挿通せしめるネジ孔が設けられており、両頭矢印Xのように右回りまたは左回りのいずれかに従って、両ボルト14a、14b同士を左右一対の矢印で示すように運動せしめ、緊張あるいは弛緩せしめるものである。
【0034】
図4(B)は図(A)の位置を90度変位した側面図で、図上側は通常のアイボルト14aであるが、図下側は二又状(C形)アイボルト14bとなっている。このような二又状アイボルト14bは、他部材との連結に際して二又状部に他部材を挟持せしめることにより容易に挿通ボルト接続を行うことができる。
【0035】
なお、張力調整部材14は、ターンバックルに限定されずボルトとスリーブの組み合わせ等による長さ調整可能な構成手段を利用することもできる。このような張力調整部材14に関しても、その寸法や強度は補強すべき建築構造体の規模や目的等を考慮して適宜選定されるものである。
【0036】
図5(A)、(B)は、ワイヤロープ16を2又状アイボルト14b等の環状部に取り付ける際の実施の形態を示すものである。図3のように、溝付きリングであるシンブルSの溝部分にワイヤロープを巻き付け、ワイヤロープ16とその端部とを圧着スリーブ17によって圧着固定した端部を、図4のターンバックル14の一端にねじ込まれている2又状アイボルト14bに挟持させ、連結ボルト18を挿通してナット19で締結することにより連結される。なお、ボルト18に緩み止めの割ピン20を挿通すると締結状態が確実に維持される。かかる連結形態を採用した結果、ワイヤロープ16のリング部分と挿通ボルト18との直接の接触が回避され、磨耗や過度の緊張力に起因する素線切れのような不都合な事態の発生が回避される。なお、ワイヤロープ端末の環状部形成に当たっては、前述の圧着スリーブ17に代えて、Uボルトとヒョットコと俗称される留め金等によって構成されるボルトコネクタにより現場処理を行うことも可能である。
【0037】
図6は連結取り付け部材の他の実施の形態を示すものである。この連結取り付け部材22は長方形鋼板の2隅の両角を切除した6角形状に形成されている。この連結取り付け部材22は、主として間柱を中心とした水平の方形構造体や多層階木造建築物の下層階と上層階との間を跨いで補強を行う際に適する構成を示すものである。方形の孔22Hはほぞを貫通せしめるものである。
【0038】
また、第1および第2の2個の貫通孔22a、22bは、それぞれ線状緊張部材のアイボルトまたはその他の接続補助金物、例えば羽子板金物等を取り付けるものであり、また、第3の貫通孔22hは構造材Cにボルト等で固定するためのものである。これら態様における構造材Cとしての柱や桁または胴差等は、それぞれ破線によって部分的に示している。
【0039】
図7は、さらに他の連結取り付け部材の構成例を示すものである。この連結取り付け部材32は、台形状板部に図6に示す実施の形態と同様に3個の貫通孔32a、32b、32hを有し、図(B)に示すように折り返し部32fを有している。
【0040】
貫通孔32a、32bは、それぞれ線状緊張部材のアイボルトまたはその他の接続補助金物を取り付けるものであり、また、第3の貫通孔32hは構造材(図示していない)にボルト等で固定するものである。また、図(B)に示すように折り返し部32fを有している。したがって、この形状は図6に示した部材を中央付近で直角に折り曲げたものに相当する。この折り返し部32fは柱、桁または胴差等の構造材に固定するためのボルト用貫通孔およびまたはほぞ貫通用の角孔を設けることができるものであるが、これらについては適宜変形可能な部分であり、詳述は省略する。
【0041】
図8はさらに他の形状の連結取り付け部材の構成例を示すものである。この連結取り付け部材42は、正方形の4隅を切除した略正8角形状の鋼板材である。この連結取り付け部材42は、構造材としての特定部材を中心として4方にわたり建築構造体補強金具を取り付ける際に使用するものである。その中央付近には十字形の大きな貫通孔42Hが形成されている。この貫通孔42Hは、必要に応じて水平または垂直のほぞを貫通せしめるものであるが、例えば最壁面等に配設される場合には貫通させないで使用することもできる。
【0042】
ここでは、図2、図6、図7、図8等の各種の連結取り付け部材を開示しているが、基本的には、構造材への取り付けおよび羽子板部材もしくはアイボルト等の適宜接続金物への連結が可能であればこれらに限定されるものではなく、その形状は任意に選定できるものである。また、連結取り付け部材両端の取り付け部の状況に応じて同種部材または異種の連結取り付け部材を適宜組み合わせることにより建築構造体補強金具を形成することができる。
【0043】
図8の8角形状の鋼板材の各辺には、破線で示した構造材への固定孔42hと、それぞれ線状緊張部材のアイボルトまたはその他の接続補助金物を取り付けるための貫通孔42a、42b、42cおよび42dが形成されている。なお、このような対称方向に補強金具の張力が及ぶ形状の連結取り付け部材42を使用する場合には、この連結取り付け部材42の近くにそれぞれ張力調整部材14(図示していない)を配設すると都合がよい。
【0044】
このような構成で張力調整を行うにあたっては、中心となる構造材、特にそのほぞ部分に損傷を与えないように留意することが望ましく、常に四周にわたり平衡を保ちながら各張力調整部材に対し順次張力調整を行う必要がある。この場合、作業者またはすぐ近くにいる相手作業者との共同作業によって過度の不平衡が生ずる事態を防止しつつ作業を実施することが可能となるためである。
【0045】
かかる構成の建築構造体補強金具は、所要設置間隙、すなわち内壁と外壁の間の空間部分の寸法が薄くて済むため格別の設置スペースを設けるための設計変更等は不要である。特に、両端部の連結取り付け部材ならびに張力調整部材は剛体によって形成されているが、最も長尺となる線状緊張部材はワイヤロープやピアノ線を縒り合わせたものであるため、他部材との交差箇所においても格別の間隙増大は生じない。
【0046】
また、張力調整部材の取り付け部位も一方に拘束されず、任意に選択可能である。そのため使用上の制限、例えば他構造材と接近して干渉する場合等は適宜方向に変移せしめることもできる。また、複数の張力調整部材を配設し、調整操作を容易にすることも可能である。したがって、新設の建築物に対して適用し得ることはもとより、既存の建築物の耐震性や耐風圧性を大幅に向上せしめることが可能である。既存の建築物に適用する場合、例えば所望部位の外壁面のみを取り外し、最小の費用および工数で補強作業を行うことができる。
【0047】
さらに、上述のような特性から、地表に対して垂直の壁面のみならず、床板の下層や天井と上層階床との間隙、最上階の天井部等にも容易に適用可能である。この場合、図9に示すように、垂直面の補強金具同士を上下層階間で連結取り付け部材を兼用し、さらに垂直面の補強金具と水平面の補強金具との連結取り付け部材を部分的に共用することにより、きわめて強力な補強を実現することができる。そのため、例えば木造3階建て住宅の場合の継ぎ柱であっても十分に強固な建築物を構成することができる。
【0048】
図10は木造3階建て住宅に本発明にかかる建築構造体補強金具を太線で略示したように適用した状態を示すものである。これらに加えて図10に示すように基礎と土台Bとの間ならびに最上層階の桁と小屋部分Rとの間に別途補強金具を適用することにより、このような住宅は土台から壁面を経て小屋部分までが強固に一体的に連結されることになり、耐震性、耐風圧性共に大幅に向上せしめることができ、堅固な多層階木造建築物を得ることができる。なお、土台部における補強金具の取り付けにあたっては、図11の下方に示すように、金属板に2本のボルトを溶接した土台取り付け具あるいはホールダウン金物を使用して、適宜長さのねじをねじ込み固定する手段を利用することができる。
【0049】
図11(A)、(B)は土台部の建築構造体補強金物を取り付ける際に適する取り付け金物50、60の構成を例示したものである。図(A)の金物50は、平板鋼材51に対してΠ字状に2本のボルト55を取り付け、参照符号53のように溶接したものである。かかる取り付け金物は、構造材Cに予め設けられた穴の下方から挿通され、上端側をナット52によって締めつけるものである。したがって、土台である構造材Cの下方に十分なスペースが得られる状態、例えば新築の場合での使用に適するものである。
【0050】
図(B)に示す金物60は、金物の他の構成例を示すもので、平板鋼材61の裏面にナット64を固着せずに配設しておき、上方から下向き矢印のように首のないねじ65をねじ込み、その後構造材Cの上方から下向き矢印のようにナット62で締結する。この構成例は、土台である構造材Cの下方に十分なスペースが得られない状況下、例えば既存建築物の補強工事や改装工事の場合に適するものである。この場合、土台の一部にナット64を配設するための僅かな空間を切り欠く作業で足りる。なお、建築物の構造によっては、平板鋼材61の裏面にナット64を溶接しておき、上方から下向き矢印のように首のないねじ65をねじ込む構成としてもよい。
【0051】
【発明の効果】
本発明にかかる建築構造体補強金具によれば、設置のための所要間隙が少なくかつ大きな工数増加を招くことなしに建築物の効果的な補強が可能となる。また、補強金具を構成する最も長尺部材である線状緊張部材が可撓性であることから、製造・保管・運搬・現場での一時保管等の全てにおいて有利であり、総体的な経費削減を図りつつ強固な建築物補強が可能となる。
【0052】
本発明にかかる建築構造体補強金具を用いた補強方法によれば、長さ的に大部分を占める線状緊張部材が可撓性であり、かつ張力が事後的に調整可能であることから、取り付けに際して全体が剛体である部材を取り付ける場合のような格別な困難性はなく、事後的に例えばトルクレンチにより規定張力となるような張力調整により最適の補強条件を達成することができる。したがって、取り付け作業に格別の熟練した技能は要求されず、一通りの設置が終了した後調整者が全体の状況を図りつつ、トルクレンチ等で監理された状況下で最適の張力調整を実施することができ、かかる観点からも少ない工数で十分な補強効果を得ることが期待できる。
【0053】
また、本発明にかかる建築構造体補強金具には張力調整部材が含まれているため、その後の地盤の不等沈下やその他の経年変化等により狂いが生じた場合にも、繰り返し微調整を行い、簡易に修復することができる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる建築構造体補強金具の構成を説明する図である。
【図2】本発明にかかる建築構造体補強金具の連結取り付け部材の第1の構成例を示す正面図(A)、側面図(B)および平面図(C)である。
【図3】本発明にかかる建築構造体補強金具における線状緊張部材の端末処理の状態を示す図である。
【図4】本発明にかかる建築構造体補強金具の張力調整部材の構成例を説明する正面図(図(A))および側面図(B)である。
【図5】本発明にかかる建築構造体補強金具の線状緊張部材と二又状アイボルトとの連結状態を示す正面図(A)および側面図(B)である。
【図6】本発明にかかる建築構造体補強金具の連結取り付け部材の第2の構成例を示す平面図である。
【図7】本発明にかかる建築構造体補強金具の連結取り付け部材の第3の構成例を示す平面図(A)および側面図(B)である。
【図8】本発明にかかる建築構造体補強金具の連結取り付け部材の第4の構成例を示す平面図である。
【図9】本発明にかかる建築構造体補強金具を用いた補強工事の施工例を示す正面図である。
【図10】本発明にかかる建築構造体補強金具を用いた建築構造体の基礎部分および小屋部分を含めた補強工事の施工例を示す正面図である。
【図11】本発明にかかる建築構造体補強金具を土台部の取り付けに適する土台取り付け金物を示す図である。
【符号の説明】
12、22、32、42 連結取り付け部材
14 張力調整部材(ターンバックル)
14a ボルト
14b ボルト
16 線状緊張部材(ワイヤロープ)
17 ワイヤ接続具(圧着スリーブ)
18 ボルト
19 ナット
20 割ピン
22 他形状の金具1
32 他形状の金具2
42 他形状の金具3
50 土台取り付け金物(新築用)
60 土台取り付け金物(改装用)
C 構造材
B 土台
P 柱
R 小屋部分
S シンブル
Claims (4)
- 建築構造体の所要部分に取り付け可能な第1の連結取り付け部材と、前記第1の連結取り付け部材の一部に揺動可能に接続され、かつ張力調整可能な機構を備えた少なくとも1つの張力調整部材と、前記建築構造体のその他の所要部分に取り付け可能な第2の連結取り付け部材と、該第2の連結取り付け部材の一部と前記張力調整部材との間を接続するための所望長さの緊張部材と、からなる建築構造体補強金具において、
前記緊張部材がワイヤロープを主体として構成された線状緊張部材(16、17、S)であること、ならびに、前記第1の連結取り付け部材および/または第2の連結取り付け部材が、建築構造体に対して平行に立設された一対の金属体(12t、12t)によって支持された軸同士の間に張力を付加することができる左右平衡形連結取り付け部材(12A、12B)として形成される、ことを特徴とする建築構造体補強金具。 - 前記第2の連結取り付け部材(12B)の一部と前記張力調整部材との間を接続するための結合部が二又状アイボルト(14b)であり、前記ワイヤロープを主体として構成された線状緊張部材(16、17)の両端部が溝付きリング(S)の溝を介して引き止められ、該溝付きリング(S)を前記二又状アイボルト(14b)の中間に挟持されることにより回動自在に結合される、ことを特徴とする請求項1記載の建築構造体補強金具。
- 前記第1および第2の連結取り付け部材(12、22、32、42)が、土台側に取り付けられる際に、土台取り付け用金物(50、60)によって締結固着される、ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の建築構造体補強金具。
- 建築構造体の所要部位に固定される第1および第2の連結取り付け部材と、張力調整部材と、ワイヤロープを主体とする線状緊張部材と、を用い、前記第1の連結取り付け部材の連結部と前記第2の連結取り付け部材との間を、前記張力調整部材に対して前記ワイヤロープを主体とする線状緊張部材を直列に連結した状態で遥動可能に連結する、建築構造体補強金具による建築構造体の補強方法であって、前記第1および第2の連結取り付け部材を、建築構造体の方形部分における対角位置の少なくとも一方に配設することにより筋交い手段ならびに建築部材脱落防止手段として機能せしめ、完工時において前記張力調整部材を調整しつつ建築構造体の方形状態の維持を図る、ことを特徴とする建築構造体補強方法。
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