JP6689146B2 - 熱可塑性樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂および光学レンズに関する。更に詳しくは、高屈折率、低複屈折および高耐熱性を具備する特定のエステル構造を有する熱可塑性樹脂およびそれからなる光学レンズに関する。
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有しており、カメラレンズ用高屈折率材料としてポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステル樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏光感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
光学用樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、耐熱性、透明性、低吸水性、耐薬品性、低複屈折、耐湿熱性が求められる。そのため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されるという弱点がある。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い結像性能の高い、より複屈折の低いカメラレンズが求められている。一般に複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ組成同士で、互いの複屈折を打ち消しあう手法があげられる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料の構成比率は非常に重要となる。
特許文献1には、内部回転異性性を付与しうる結合軸で結合し、該結合軸に対し少なくとも一方のアリール基のπ電子数が4n+6(nは自然数)であるビアリール化合物をモノマー成分として含む樹脂組成物が開示されており、透明性に優れており、光学異方性が少なく、高屈折率であるといった特性を有しているが、さらなる高屈折率と低複屈折を有する光学レンズ用材料はまだ得られていない。
特開2001−72872号公報
そこで本発明の第一の目的は、高屈折率、低複屈折および高耐熱性を具備する、特に光学特性に優れる熱可塑性樹脂を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、上記第一の目的に加え、特に高度の屈折率を具備する、光学特性に優れる熱可塑性樹脂を提供することである。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される熱可塑性樹脂によって、上記課題を解決することができることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
1.下記一般式(1)で表される繰り返し単位が全単位中の70mol%以上含む熱可塑性樹脂。
Figure 0006689146
(式(1)において、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、nおよびmは夫々独立して0以上の整数を示す。R〜R10は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。R11およびR12は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、oおよびpは夫々独立して0以上の整数を示す。R13〜R20は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。)
2.前記一般式(1)において、RおよびRが、夫々炭素原子数1〜3の炭化水素基であり、nおよびmが、夫々0または1であり、R〜R10が、夫々水素原子または炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基である前記1に記載の熱可塑性樹脂。
3.前記一般式(1)において、RおよびRが、夫々メチレン基であり、nおよびmが、夫々1であり、R〜R10が水素原子である前記2に記載の熱可塑性樹脂。
4.前記一般式(1)において、R11およびR12が、夫々炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、oおよびpが、夫々0または1であり、R13〜R20が、夫々水素原子または炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基である前記1に記載の熱可塑性樹脂。
5.前記一般式(1)において、R11およびR12が、夫々エチレン基であり、oおよびpが、夫々1であり、R13〜R20が水素原子である前記4に記載の熱可塑性樹脂。
6.屈折率が1.650〜1.700である前記1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
7.比粘度が0.12〜0.40である前記1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
8.ガラス転移温度が128〜160℃である前記1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
9.配向複屈折が0〜4×10−3である前記1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
10.熱可塑性樹脂は、ポリエステルまたはポリエステルカーボネート樹脂である前記1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
11.前記1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学部材。
12.前記1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学レンズ。
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率、低複屈折および高耐熱性を具備するため、その奏する産業上の効果は、格別である。
実施例1で得られたポリエステル樹脂のプロトンNMRである。
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の熱可塑性樹脂は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を70mol%以上含むことが必要であり、具体的な熱可塑性樹脂としてはポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂であることが好ましく、特に本発明の効果の点からポリエステル樹脂であることが好ましい。
前記一般式(1)において、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、nおよびmは夫々独立して0以上の整数を示す。R〜R10は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。R11およびR12は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、oおよびpは夫々独立して0以上の整数を示す。R13〜R20は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。
およびRは、好ましくは夫々独立して炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、nおよびmは、好ましくは、夫々独立して0または1の整数を示す。R〜R10は、好ましくは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。R11およびR12は、好ましくは夫々独立して炭素原子数1〜4の炭化水素基を示し、oおよびpは、好ましくは、夫々独立して0または1の整数を示す。R13〜R20は、好ましくは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。特に好ましくは、RおよびRは、メチレン基を示し、nおよびmは1を示し、R〜R10は水素原子を示し、R11およびR12は、エチレン基を示し、oおよびpは1を示し、R13〜R20は水素原子を示す。
更にRおよびRは、同一であっても異なっていても良く、nおよびmは、同一であっても異なっていても良く、R〜R10は、同一であっても異なっていても良く、R11およびR12は、同一であっても異なっていても良く、oおよびpは、同一であっても異なっていても良く、R13〜R20は、同一であっても異なっていても良い。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位が全体中の70mol%以上、好ましくは75mol%以上、より好ましくは80mol%以上である。この範囲にあると耐熱性と成形性のバランスに優れる。
前記一般式(1)において、1,1’−ビナフチル骨格は、熱可塑性樹脂の耐熱性と屈折率を向上させるとともに、二つのナフタレン環を結ぶ結合軸で直交するような立体配座になっているため、複屈折を低減させる効果がある。
1,1’−ビナフチル骨格は、置換基で置換されていても良く、また置換基同士で縮環していてもよい。置換基としては、種々のものが挙げられ特に制限はないが、代表的には、アルキル、アリール等が挙げられる。上記アルキル基としては、炭素数1〜12のものが好ましく、直鎖でも分岐でも良い。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
また、ビナフチル骨格は、R体、S体、ラセミ体のいずれでも良く、好ましくは、ラセミ体が良い。光学分割する必要のないラセミ体はコストメリットがある。
本発明の第一の目的は、高屈折率と高耐熱性を具備させることであり、25℃で測定波長589nmの屈折率(以下nDと略すことがある)は、1.650〜1.700であることが好ましく、1.655〜1.695であるとさらに好ましく、1.657〜1.686であるとよりさらに好ましい。
。また、ガラス転移点(以下Tgと略すことがある)は、128〜160℃であることが好ましく、130〜158℃であることがより好ましい。
また、本実施結果より算出されたnDとTgの関係式は、
Tg>−850nD+1555 (1)
を満たす関係にあることが好ましい。
また、本発明の第二の目的は、上記第一の目的に加え、特に高度の屈折率を具備させることであり、nDが、1.675〜1.690であることがより好ましく、Tgが130〜143℃であることがより好ましく、さらにnDが1.677〜1.682で、Tgが130〜137℃であることが最も好ましい。
屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。屈折率が1.650以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くする事ができる。
本発明の熱可塑性樹脂のアッベ数(ν)は、17〜25であることが好ましく、17〜23であるとさらに好ましい。アッベ数は25℃で測定した波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
なお、本発明においては、
nD:波長589nmでの屈折率、
nC:波長656nmでの屈折率、
nF:波長486nmでの屈折率を意味する。
本発明の熱可塑性樹脂は、下記式により算出され、配向複屈折(Δn)の絶対値が0〜4×10−3で有ることが好ましく、さらに好ましくは0〜2×10−3の範囲である。配向複屈折(Δn)は、本発明の熱可塑性樹脂より得られる厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸した時、波長589nmにおいて測定する。配向複屈折が上記範囲内であると、レンズの光学歪が小さくなるため好ましい。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
前記一般式(1)の繰り返し単位は、後述のジオール成分とジカルボン酸成分を反応させることにより製造することができる。
具体的な原料について以下で説明する。
<一般式(1)のジカルボン酸成分>
ジカルボン酸成分は主として、下記式(a)で表される化合物、またはそのエステル形成性誘導体が好ましく用いられる。
Figure 0006689146
本発明の一般式(1)の原料となるジカルボン酸の上記一般式(a)において、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、nおよびmは夫々独立して、0以上の整数を示す。R〜R10は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。RおよびRは、好ましくは夫々独立して炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、nおよびmは、好ましくは、夫々独立して0または1の整数を示す。R〜R10は、好ましくは夫々独立して、水素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。特に好ましくは、RおよびRは、メチレン基を示し、nおよびmは、1を示し、R〜R10は水素原子を示す。更にRおよびRは、同一であっても異なっていても良く、nおよびmは、同一であっても異なっていても良く、R〜R10は、同一であっても異なっていても良い。
以下、一般式(a)で表されるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の代表的具体例を示すが、本発明の一般式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
2,2’−ジカルボキシ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(カルボキシメトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(2−カルボキシエトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(3−カルボキシプロポキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ジメトキシカルボニル−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(メトキシカルボニルメトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(2−メトキシカルボニルエトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(3−メトキシカルボニルプロポキシ)−1,1’−ビナフチル、 2,2’−ジエトキシカルボニル−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(エトキシカルボニルメトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(2−エトキシカルボニルエトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ジフェノキシカルボニル−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(フェノキシカルボニルメトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(2−フェノキシカルボニルエトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(3−フェノキシカルボニルプロポキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ジtert-ブトキシカルボニル−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(tert-ブトキシカルボニルメトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(2−tert-ブトキシカルボニルエトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(3−tert-ブトキシカルボニルプロポキシ)−1,1’−ビナフチル等が挙げられる。これらの中でも、一般式(a)におけるRおよびRがメチレン基であり、oおよびpが1であり、R〜R10は水素原子である、2,2’−ビス(カルボキシメトキシ)−1,1’−ビナフチル(以下、BCMBと略すことがある。)またはそのエステル形成誘導体であることが最も好ましい。
<一般式(1)のジオール成分>
ジオール成分は、主として一般式(b)で表される化合物が好ましく用いられる。
Figure 0006689146
前記一般式(1)の原料となるジオール成分の上記一般式(b)において、R11およびR12は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、oおよびpは夫々独立して0以上の整数を示す。R13〜R20は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。R11およびR12は、好ましくは夫々炭素原子数1〜4の炭化水素基を示し、oおよびpは、好ましくは、夫々0または1の整数を示す。R13〜R20は、好ましくは夫々独立して、水素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。特に好ましくは、R11およびR12は、エチレン基を示し、oおよびpは、1を示し、R13〜R20は水素原子を示す。更にR11およびR12は、同一であっても異なっていても良く、oおよびpは、同一であっても異なっていても良く、R13〜R20は、同一であっても異なっていても良い。
具体的には前記一般式(b)において、R11およびR12がエチレン基であり、oおよびpが1であり、R13〜R20は水素原子である2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフチル(以下、BHEBと略すことがある)もしくは、oおよびpが0であり、R13〜R20は水素原子である1,1’−ビ−2−ナフトールであることがさらに好ましい。
<一般式(1)以外の共重合成分>
本発明における熱可塑性樹脂は、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するが、それとは別に共重合成分を含んでいても良い。共重合成分としては前記一般式(a)で示される以外のジカルボン酸成分、前記一般式(b)で示される化合物以外のジオール成分、さらにカーボネート結合を有する繰り返し単位などが例示される。
具体的な共重合成分としてのジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸成分、1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が挙げられる。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類を用いてもよい。これらの中でも耐熱性と屈折率をより高くしやすいことから単環式芳香族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分、ビフェニルジカルボン酸成分が好ましい。
また、具体的な共重合成分としてのジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール等の脂肪族ジオール成分、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等の脂環式ジオール成分、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビフェノール、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)―3−フェニルフェニル]フルオレン、ジヒドロキシナフタレン、ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン等の芳香族ジオール成分等が挙げられる。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。これらの中でも成形性を高めつつ、耐熱性や屈折率の低下を抑えやすいことからエチレングリコールや9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)―3−フェニルフェニル]フルオレンやビスクレゾールフルオレンが好ましい。
また、具体的な共重合成分としてのカーボネート結合を有する繰り返し単位としては、前記一般式(b)で例示したジオール成分および前述の共重合成分として例示したジオール成分をカーボネート結合させたものが挙げられ、これらの中でも成形性を高めつつ、耐熱性や屈折率の低下を抑えやすいことから、前記一般式(b)で例示したジオール成分および9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)―3−フェニルフェニル]フルオレン、ビスクレゾールフルオレンを用いたものが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂は、前述の一般式(a)および(b)で示される原料をエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすればよい。
具体的には、例えば不活性ガスの存在下で、ジオール成分と、ジカルボン酸成分またはそのジエステルを混合し、減圧下、通常、120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させることが好ましい。減圧度は段階的に変化させ、最終的には0.13kPa以下にして生成した水または、アルコール類を系外に留去させ、反応時間は通常1〜10時間程度である。
重合触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物またはアルミニウム化合物が好ましい。このような化合物としては、例えばアンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウムの酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等を上げることができる。また、これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。中でも、この中でも、熱可塑性樹脂の溶融安定性、色相の観点からスズ、チタン、ゲルマニウム化合物が好ましい。
エステル交換触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、マンガン、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、コバルト、ナトリウム、リチウム、鉛元素を含む化合物などを用いることができる。具体的にはこれらの元素を含む酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等が挙げることができる。この中でも、熱可塑性樹脂の溶融安定性、色相、ポリマー不溶異物の少なさの観点からマンガン、マグネシウム、亜鉛、チタン、コバルトの酸化物、酢酸塩、アルコラート等の化合物が好ましい。さらにマンガン、マグネシウム、チタン化合物が好ましい。これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂は、前述の通り、一般式(1)の繰り返し単位を形成する以外の共重合成分を含有させてもよい。例えば、ポリエステルカーボネート樹脂とする場合は、ジオール成分およびジカルボン酸成分の他に、ジカルボン酸クロライドやホスゲンとの反応、またはジオール、ジカルボン酸およびビアリールカーボネートを反応させることにより製造することができる。
ビアリールカーボネートの具体例としては、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等の炭酸ジエステルが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
該ジカルボン酸クロライドやホスゲン、またはビアリールカーボネート成分の含有量は、ジカルボン酸成分100mоl%に対し、好ましくは42mоl%未満、より好ましくは30mоl%未満、さらに好ましくは20mоl%未満である。
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、充填剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜添加して熱可塑性樹脂組成物として用いることができる。
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ト
リグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物に配合させる離型剤としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
リン系熱安定剤において、好ましくはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
熱可塑性樹脂のリン系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤において、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001〜0.3重量部が好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、より好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2.4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましくは0.01〜3.0重量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
<光学レンズ>
本発明の熱可塑性樹脂は、光学部材、特に光学レンズに好適である。
本発明の熱可塑性樹脂の光学レンズを射出成型で製造する場合、シリンダー温度260〜350℃、金型温度90〜170℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度270〜320℃、金型温度100〜160℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が350℃より高い場合では、熱可塑性樹脂が分解着色し、260℃より小さい場合では、溶融粘度が高く成形が困難になりやすい。また金型温度が170℃より高い場合では、熱可塑性樹脂から成る成形片が金型から取り出すことが困難になりやすい。他方、金型温度が、90℃未満では、成型時の金型内で樹脂が早く固まり過ぎて成形片の形状が制御しにくくなったり、金型に付された賦型を十分に転写することが困難になりやすい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形を用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要が無く、軽量化および成形コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明の光学レンズは、成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは、3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
本発明の光学レンズにおける熱可塑性樹脂からなるレンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチングなど任意の方法により成形される。この中でも、製造コストの面から金型成形がより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、評価は次に示す方法で行った。
(a)フィルム
得られた熱可塑性樹脂3gを塩化メチレン50mlに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストした。室温にて十分に乾燥させた後、120℃の温度にて24時間乾燥して、厚さ約100μmのキャストフィルムを作成した。
評価は下記の方法で行った。
(1)共重合比:得られた熱可塑性樹脂を日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。
(2)比粘度:得られた熱可塑性樹脂を十分に乾燥し、該樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。
(3)ガラス転移点:得られた熱可塑性樹脂を島津製作所製DSC−60Aにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)屈折率(nd):(a)の手法により作成したフィルムをATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)を測定した。
(5)配向複屈折(Δn):(a)の手法により作成した厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
○:0以上、2×10−3以下
△:2×10−3超え、4×10−3以下
×:4×10−3超え
実施例1
2,2’−ビス(カルボキシメトキシ)−1,1’−ビナフチル(BCMB)20.12重量部、2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフチル(BHEB)18.72重量部およびテトラブトキシチタン17.0×10−3重量部を撹拌器および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、徐々に昇温、減圧を行い、最終的に260℃、0.13kPa以下まで昇温、減圧し、エステル交換反応・重縮合反応を行った。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%であった。また、得られたポリエステル樹脂の比粘度は0.28、ガラス転移温度Tgは135℃、屈折率は1.680であった。
実施例2
BCMB20.12重量部、BHEB14.98重量部、エチレングリコール(EG)6.83重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%で、40mol%がBHEB由来、10mol%がEG由来であった。得られたポリエステル樹脂の比粘度は0.27、ガラス転移温度Tgは132℃、屈折率は1.679であった。
実施例3
BCMB16.90重量部、BHEB21.72重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)3.64重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステルカーボネート樹脂に導入されたジカルボン酸成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して42mol%、ポリエステルカーボネート樹脂に導入されたジオール成分が、全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して58mol%であった。得られたポリエステルカーボネート樹脂の比粘度は0.27、ガラス転移温度Tgは132℃、屈折率は1.678であった。
実施例4
2,2’−ビス(エトキシカルボニルメトキシ)−1,1’−ビナフチル(BECMB)22.93重量部、BHEB18.72重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジエステル成分が全モノマー成分(全ジエステル酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分が全モノマー成分(全ジエステル成分+全ジオール成分)に対して50mol%であった。また、得られたポリエステル樹脂の比粘度は0.28、ガラス転移温度Tgは135℃、屈折率は1.680であった。
比較例1
BCMB20.12重量部、BHEB11.23重量部、EG4.34重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%で、30mol%がBHEB由来、20mol%がEG由来であった。得られたポリエステル樹脂の比粘度は0.27、ガラス転移温度Tgは128℃、屈折率は1.677であった。
比較例2
テレフタル酸ジメチル(DMT)9.71重量部、BHEB18.72重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)0重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジエステル酸成分が全モノマー成分(全ジエステル酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分が全モノマー成分(全ジエステル酸成分+全ジオール成分)に対して50mol%であった。また、得られたポリエステル樹脂の比粘度は0.25、ガラス転移温度Tgは127℃、屈折率は1.658であった。
比較例3
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)21.93重量部、BHEB18.72重量部、DPC21.85重量部以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリカーボネート樹脂に導入された全モノマー成分に対して50mol%がBPEF由来、50mol%がBHEB由来であった。また、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度は0.23、ガラス転移温度Tgは135℃、屈折率は1.649であった。
比較例4
BPEF43.85重量部、DPC21.85重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリカーボネート樹脂に導入されたジオール成分の100mol%がBPEF由来であった。また、得られたポリカーボネート樹脂の比粘度は0.24、ガラス転移温度Tgは147℃、屈折率は1.638であった。
参考例1
BCMB16.90重量部、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンBPEF25.43重量部、DPC3.64重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステルカーボネート樹脂に導入されたジカルボン酸成分が、全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して42mol%、ポリエステルカーボネート樹脂に導入されたジオール成分が全モノマー成分(全ジカルボン酸成分+全ジオール成分)に対して58mol%であった。また、得られたポリエステルカーボネート樹脂の比粘度は0.24、ガラス転移温度Tgは150℃、屈折率は1.660であった。
Figure 0006689146
表1の式(1)の値は、全繰り返し単位の合計を100モル%とした時の式(1)で示される繰り返し単位の割合である。
表1の実施例1〜3で得られたポリエステル、またはポリエステルカーボネート樹脂は高屈折率、低複屈折そして耐熱性と成形性のバランスのとれた樹脂であり、光学レンズとして優れる。これに対して、比較例1のポリマーは、耐熱性が低く、比較例2は複屈折が十分に打ち消されておらず、耐熱性も低い。該ポリマーより得られる複屈折は大きく、また耐熱性が悪い。比較例3は1,1’−ビナフタレン構造をジオール成分BHEBとして、BPEFと共重合したポリカーボネート共重合であるが、屈折率が低い。
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率、低複屈折、高耐熱性を兼備するため、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特にレンズに極めて有用である。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される繰り返し単位が全単位中の70mol%以上含む熱可塑性樹脂。
    Figure 0006689146
    (式(1)において、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、nおよびmは夫々独立して0以上の整数を示す。R〜R10は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。R11およびR12は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、oおよびpは夫々独立して0以上の整数を示す。R13〜R20は夫々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。)
  2. 前記一般式(1)において、RおよびRが、夫々炭素原子数1〜3の炭化水素基であり、nおよびmが、夫々0または1であり、R〜R10が、夫々水素原子または炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基である請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
  3. 前記一般式(1)において、RおよびRが、夫々メチレン基であり、nおよびmが、夫々1であり、R〜R10が水素原子である請求項2に記載の熱可塑性樹脂。
  4. 前記一般式(1)において、R11およびR12が、夫々炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、oおよびpが、夫々0または1であり、R〜R10が、夫々水素原子または炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基である請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
  5. 前記一般式(1)において、R11およびR12が、夫々エチレン基であり、oおよびpが、夫々1であり、R13〜R20が水素原子である請求項4に記載の熱可塑性樹脂。
  6. 屈折率が1.650〜1.700である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
  7. 比粘度が0.12〜0.40である請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
  8. ガラス転移温度が128〜160℃である請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
  9. 配向複屈折が0〜4×10−3である請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
  10. 熱可塑性樹脂は、ポリエステルまたはポリエステルカーボネート樹脂である請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学部材。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学レンズ。
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