JP2022154123A - ポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂、および該樹脂を用いた光学部材 - Google Patents

ポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂、および該樹脂を用いた光学部材 Download PDF

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一良 小笠原
Kazuyoshi Ogasawara
義弘 石原
Yoshihiro Ishihara
稜大 真野
Ryota Mano
安彦 友成
Yasuhiko Tomonari
高恒 柳田
Takatsune Yanagida
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Abstract

【課題】高屈折率、低複屈折および耐熱性と成形性のバランスに優れ、さらに色相、耐湿熱性に優れたポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂を提供する。【解決手段】ビスヒドロキシナフチルフルオレン型のモノマーおよびビスヒドロキシビナフチル型のモノマーに代表される繰り返し単位を含み、それらの繰り返し単位の比が、15:85~85:15であり、末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下であるポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、高屈折率、低複屈折および耐熱性と成形性のバランスに優れ、さらに色相、耐湿熱性に優れるポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂に関する。
カメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話あるいはカメラ付ドアホンなどには、撮像モジュールが用いられている。近年、この撮像モジュールに用いられる光学系では、特に小型化が求められている。光学系を小型化していくと光学系の色収差が大きな問題となる。そこで、光学レンズの屈折率を高く、かつアッベ数を小さくして高分散にした光学レンズ材料と、屈折率を低くかつアッベ数を大きくして低分散にした光学レンズ材料を組み合わせることで、色収差の補正を行うことができることが知られている。
光学系の材料として従来用いられていたガラスは要求される様々な光学特性を実現することが可能であると共に、環境耐性に優れているが、加工性が悪いという問題があった。これに対し、ガラス材料に比べて安価であると共に加工性に優れる樹脂が光学部品に用いられてきている。特に、フルオレン骨格やビナフタレン骨格を有する樹脂が、高屈折率である等の理由から使用されている。
高屈折率にするには、ポリカーボネートより、ポリエステル、またはポリエステルカーボネート等、縮合部分の酸素が少ないものほど効果的である。
ポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂を高屈折率にするため、樹脂のジオール部分とカルボン酸部分に使用されるモノマーの両方とも高屈折率が見込める物質が必要になっている。
高屈折率樹脂を構成するジカルボン酸部分として、ビナフタレン骨格を有している物質を使用することにより、高屈折率な樹脂が得られることが報告されている。なかでも、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、またはそのエステルをジカルボン酸成分とするポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂が高屈折率、高耐熱性、低複屈折率をもつ樹脂として有用である。
たとえば、特許文献1には、2,2’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルと9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンとを用いたポリエステル樹脂が記載されている。また、特許文献2~4では、特定のジオールとカルボン酸が反応した繰り返し単位を持つ樹脂が記載されている。これらの樹脂では、屈折率は高いものの、複屈折と耐熱性・成形性とのバランスが不十分であり未だ改善の余地がある。
これらの問題を解決するために、特許文献5では、特定のジオールとジカルボン酸として2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル(BCMB)の反応物からなる繰り返し単位と、別の特定のジオールと2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルの反応物からなる繰り返し単位を一定比率で含む樹脂が記載されており、好ましい高屈折率、高耐熱性、低複屈折率をもつ樹脂が得られている。しかし、原料として、ジカルボン酸を使用しており、樹脂の末端にカルボン酸が残っている。末端カルボン酸は、耐乾熱性、色相に悪い影響を及ぼす。
特開2017-171885号公報 特開2018-002895号公報 特開2018-002894号公報 特開2018-002893号公報 国際公開第2019/176874号
そこで本発明の目的は、高屈折率、低複屈折および耐熱性と成形性のバランスに優れ、さらに色相、耐湿熱性に優れたポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂を提供することにある。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定の芳香族基を導入したフルオレン骨格とビナフチル骨格を有し、さらに末端のカルボン酸量が非常に少ないポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂が高屈折率かつ低複屈折であり、耐熱性と成形性も高度にバランスさせ、かつ、色相、耐湿熱性に優れることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.下記式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含み、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位の比が、15:85~85:15であり、末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下であるポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
Figure 2022154123000001
(式中、環Z、Zはそれぞれ炭素原子数9~20の多環芳香族炭化水素基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
Figure 2022154123000002
(式中、R、R、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R16、R19~R26は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、r、s、tおよびuはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
2.前記式(1)のZおよびZがナフタレンジイル基である前記1に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
3.前記式(1)が、下記式(3)で表される単位からなる前記1に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
Figure 2022154123000003
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
4.前記式(3)が下記式(4)である前記3に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
Figure 2022154123000004
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。)
5.前記式(3)または(4)中のR、Rがエチレン基、RおよびRがメチレン基である前記3または4に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
6.前記式(1)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位中20モル%以上である前記1~5のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
7.前記式(2)中のR~R16、R19~R26が水素原子であり、r、s、tおよびuが1である前記1~6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
8.前記式(2)中のR、Rがメチレン基、R17およびR18がエチレン基である前記1~7のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
9.前記式(2)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位中20モル%以上である前記1~8のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
10.前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(2)で表される繰り返し単位の比が、25:75~75:25である前記1~9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
11.塩化メチレン中に0.53質量%で溶解した溶液について測定した比粘度が0.12~0.40である前記1~10のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
12.屈折率が1.675~1.695である前記1~11のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
13.ガラス転移温度が140~155℃である前記1~12のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
14.ガラス転移温度より10℃高い温度で2倍に延伸したフィルムにおける20℃、波長589nmでの複屈折の絶対値が0.001×10-3~5.0×10-3である前記1~13のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
15.前記樹脂1.0gを分光分析用塩化メチレン5mLに溶解し、その溶液を測定したCIE1976(L)表色系のb値が3.0以下である、前記1~14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
16.原料として、下記式(a)、(b)および(c)で表される化合物と、任意でカーボネート形成性誘導体を溶融重合により反応させることを特徴とする、前記1~15のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
Figure 2022154123000005
(式中、環Z、Zはそれぞれ炭素原子数9~20の多環芳香族炭化水素基を示し、R、Rはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素
基を示し、R~Rは水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、kはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
Figure 2022154123000006
(式中、R17、R18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R19~R26は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、t、uはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
Figure 2022154123000007
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、r、sはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R27、R28は、メチル基、エチル基またはフェニル基を示す。)
17.前記1~16のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂からなる光学部材。
18.光学レンズである前記17に記載の光学部材。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、高屈折率、低複屈折および耐熱性と成形性のバランスに優れ、さらに色相、耐湿熱性に優れるため、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明をさらに詳しく説明する。
<ポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂>
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、下記式(1)およ
び(2)で表される繰り返し単位を含み、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位の比が、15:85~85:15であり、末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下である。
Figure 2022154123000008
(式中、環Z、Zはそれぞれ炭素原子数9~20の多環芳香族炭化水素基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
Figure 2022154123000009
(式中、R、R、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R16、R19~R26は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、r、s、tおよびuはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、前記式(1)において環Z、Zで表される多環芳香族炭化水素基としては、少なくとも炭素原子数が9~20であれば良く、ベンゼン環骨格を有する縮合多環式芳香族炭化水素環が好ましく挙げられ、縮合二環式炭化水素環、縮合三環式炭化水素環などが好ましい。縮合二環式炭化水素環としては、インデン環、ナフタレン環等の炭素原子数9~20の芳香族炭化水素環が好ましく、炭素原子数10~16の縮合二環式炭化水素環がより好ましい。また、縮合三環式炭化水素環としては、アントラセン環、フェナントレン環等が好ましい。これらの多環芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、前記式(1)のZおよびZがナフタレンジイル基である。
上記式(1)において環Z、Zで表される多環芳香族炭化水素基としては、ナフタ
レン-1,4-ジイル基またはナフタレン-2,6-ジイル基が好ましく、ナフタレン-2,6-ジイル基がより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、前記式(1)が、下記式(3)で表される単位からなる。
Figure 2022154123000010
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
前記式(3)中のR~R、R~R16は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが好ましく挙げられ、水素原子、アリール基がより好ましく、水素原子がさらに好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などが好ましく挙げられ、炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基などが好ましく挙げられ、シクロヘキシル基がより好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、アルキルフェニル基(トリル基、2-メチルフェニル基、キシリル基などのモノまたはジメチルフェニル基)、ナフチル基などが好ましく挙げられ、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基などが好ましく挙げられ、ベンジル基がより好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが好ましく挙げられ、炭素原子数1~4のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がさらに好ましい。
シクロアルキルオキシ基の具体例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基などが好ましく挙げられ、
シクロヘキシルオキシ基がより好ましい。
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基(モノまたはジメチルフェノキシ基)、ナフチルオキシ基などが好ましく挙げられ、フェノキシ基、ナフチルオキシ基がより好ましく、フェノキシ基がさらに好ましい。
アラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などが好ましく挙げられ、ベンジルオキシ基がより好ましい。
前記式(3)中のj、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
前記式(3)中のm、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2であり、好ましくは1である。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、前記式(3)が、下記式(4)で表される単位からなる。
Figure 2022154123000011
前記式(4)中のR、R、R、Rは、それぞれ独立に素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基や、フェニレン基、ナフタレンジイル基等のアリーレン基が好ましく挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基が好ましく、R、Rはエチレン基がより好ましく、R、Rはメチレン基がより好ましい。
前記式(2)中のR~R16、R19~R26は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキリオキシ基などがより好ましく挙げられ、水素原子、アリール基がより好ましく、水素原子がさらに好ましく挙げられる。
ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキリオキシ基において、それぞれ好ましい具体例は上述の通りである。
前記式(2)中のr、s、tおよびuはそれぞれ独立に0以上の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
前記式(2)中のR、R、R17、R18は、それぞれ独立に炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基や、フェニレン基、ナフタレンジイル基等のアリーレン基が好ましく挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基が好ましく、R、Rはメチレン基がより好ましく、R17、R18はエチレン基がより好ましい。
従来よりLorentz-Lorenz式として知られている分子構造と屈折率の関係式から、分子の電子密度を上げ、分子体積を減らすことによって物質の屈折率が高くなることが知られている。フルオレン骨格やビナフタレン骨格を有する樹脂はこの理論に基づき、分子内に多くの芳香族基を導入することで高屈折率化がなされている。しかしながら、これらの樹脂は屈折率は高いものの、複屈折と耐熱性・成形性とのバランスが不十分である。
本発明の前記式(1)で示される特定のエステル構造は高屈折率かつ低複屈折率であり、高耐熱性に寄与し、前記式(2)で示される特定のエステル構造は前記式(1)よりは屈折率は下がるものの高屈折率かつ低複屈折で樹脂のガラス転移温度を下げ成形性に寄与する。よって、前記式(1)および前記式(2)で表される繰り返し単位を含むポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、高屈折率であり複屈折と耐熱性・成形性をバランスすることが出来る。
本発明における樹脂の組成比とは、全モノマー単位のモル数を基準として、樹脂に導入されたモノマー構造のモル比で示す。なお、全モノマー単位には炭酸成分は含まない。
本発明における繰り返し単位とは、エステル結合および/またはカーボネート結合で繋がった最小単位を意味する。エステル結合の繰り返し単位はジオール成分とジカルボン酸成分から形成される構造単位を指し、カーボネート結合の繰り返し単位はジオール誘導体と炭酸成分から形成される構造単位を指す。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(2)で表される繰り返し単位のモル比は、15:85~85:15である。
前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(2)で表される繰り返し単位のモル比は、25:75~75:25が好ましく、さらに30:70~70:30が好ましい。上記範囲にあることで、高屈折率と複屈折のバランスに優れる。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、
比粘度が、0.12~0.40であることが好ましく、0.15~0.35であるとより好ましく、0.18~0.30であるとさらに好ましい。比粘度が上記範囲内であると成形性と機械強度のバランスに優れるため好ましい。なお、比粘度は、塩化メチレン中に0.53質量%で溶解した溶液(樹脂0.7gを塩化メチレン100mLに溶解した溶液)を用いて、20℃で測定して得られる比粘度(ηsp)である。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、
25℃で測定した波長589nmの屈折率(以下nDと略すことがある)が、1.660~1.695であることが好ましく、1.670~1.695であるとより好ましく、1.675~1.695であるとさらに好ましく、1.680~1.695であると特に好ましい。屈折率が下限以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くすることができる。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は高屈折率であるが、さらに低アッベ数であることが好ましい。アッベ数(ν)は、15.0~21.0であることが好ましく、16.0~20.0であるとより好ましく、16.0~19.0であるとさらに好ましく、17.0~19.0であることが特に好ましい。アッベ数は25℃で測定した波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する
ν=(nD-1)/(nF-nC)
なお、本発明においては、
nD:波長589nmでの屈折率、
nC:波長656nmでの屈折率、
nF:波長486nmでの屈折率を意味する。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、ガラス転移温度(Tg)が140~160℃であることが好ましく、140~155℃であるとより好ましく、140~150℃であるとさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は
配向複屈折の絶対値(|Δn|)が好ましくは、0.001×10-3~10.0×10-3、より好ましくは0.001×10-3~5.0×10-3、さらに好ましくは0.001×10-3~4.0×10-3、特に好ましくは0.001×10-3~3.5×10-3、最も好ましくは0.001×10-3~3.0×10-3の範囲である。
|Δn|は、本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂より得られる厚さ100μmのフィルムをTg+10℃の温度で一方向に2倍延伸し、波長589nmにおける位相差を測定して下記式による求める。|Δn|が上記範囲内であると、レンズの光学歪が小さくなるため好ましい。
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、1mm厚の全光線透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上である。全光線透過率が上記範囲内であると、光学部材として適している。なお、全光線透過率の測定は、1mm厚の成形片を日本電色工業(株)製NDH-300Aを用いて測定した。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、着色の度合い、特に黄色味が薄いことが好ましい。具体的にはCIE1976(L
)表色系のb値が、4.0以下が好ましい。b値は3.0以下がより好ましく、2.0以下であるとさらに好ましく、1.6以下であると特に好ましく、1.4以下であると最も好ましい。このb値は、塩化メチレン5mLに1.0gを溶解した溶液(塩化メチレン中に13質量%で溶解した溶液)について分光光度計で測定したCIE1976(L)表色系の値である。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の好ましい態様は、23℃、24時間浸漬後の吸水率が0.25質量%以下であると好ましく、0.20質量%以下であるとより好ましい。吸水率が上記範囲内であると、吸水による光学特性の変化が小さいため好ましい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下であり、より好ましくは0.5当量/トン以下、さらに好ましく
は0.3当量/トン以下である。末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下だと末端カルボン酸がエステル結合の加水分解の触媒として働くのを抑制することが出来、耐湿熱性が改善する。また、カルボン酸が脱炭酸分解や副反応を引き起こして着色成分が生成することを抑制することが出来るため色相が改善される。すなわち、末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下であると耐湿熱性、色相に優れる。末端カルボン酸量は窒素雰囲気下、樹脂0.1gを室温で10mLの塩化メチレンに溶解した後、アセトンを3mL加えた混合液を滴定することにより測定することが出来る。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の耐湿熱性は、耐湿熱性が85℃・相対湿度85%環境で所定時間処理し、処理前後での樹脂の比粘度を比較することで評価することが出来る。具体的には下記式で耐湿熱性を算出することが出来る。
耐湿熱性(%)=[処理後の樹脂の比粘度]/[処理前の樹脂の比粘度]×100
耐湿熱性は500時間処理後で95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂に使用する具体的な原料について、以下で説明する。
<原料モノマー>
(前記式(1)のジオール成分)
本発明の前記式(1)の原料となるジオール成分は、主として下記式(a)で表されるジオール成分であり、単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
Figure 2022154123000012
前記式(a)において、環Z、Zはそれぞれ炭素原子数9~20の多環芳香族炭化水素基を示し、R、Rはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~Rは水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、kはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。
前記式(a)において、Z、Z、R~R、j、k、m、n、p、qの好ましいものは、前記式(1)における各式と同じである。
以下、前記式(a)で表されるジオール成分の代表的具体例を示すが、本発明の前記式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
具体的には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-
ビス(6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン等が好ましく挙げられる。なかでも9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンがより好ましく、特に、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレンがより好ましい。
これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(前記式(2)のジオール成分)
本発明の前記式(2)の原料となるジオール成分は、主として下記式(b)で表されるジオール成分であり、単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
Figure 2022154123000013
前記式(b)において、R17、R18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R19~R26は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、t、uはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。
前記式(b)において、R17~R26、t、uの好ましいものは、前記式(2)における各式と同じである。
以下、前記式(b)で表されるジオール成分の代表的具体例を示すが、本発明の前記式(2)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
具体的には、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトール、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ジヒドロキシ-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ジヒドロキシ-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル等が好ましく挙げられる。なかでも、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトールがより好ましく、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルがさらに好ましい。
これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(前記式(1)および前記式(2)以外のジオール成分)
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、本発明の特性を損なわない程度に他のジオール成分を共重合してもよい。他のジオール成分は、全繰り返し単位中30mol%未満が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂に使用できるその他のジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン等が例示され、これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
(前記式(1)および前記式(2)のジカルボン酸成分)
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の前記式(1)および前記式(2)で表される単位を形成するジカルボン酸成分モノマーとして、下記式(c)で表されるジカルボン酸エステルが使用される。
Figure 2022154123000014
前記式(c)において、R、Rはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、r、sはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R27、R28は、メチル基、エチル基またはフェニル基を示す。
前記式(c)において、R~R16、r、sの好ましいものは、前記式(1)における各式と同じである。
以下、前記式(c)で表されるジカルボンエステルの代表的具体例を示すが、本発明の前記式(c)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
具体的には、2,2’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル、2,2’-ビフェニルジカルボン酸ジエチル、2,2’-ビフェニルジカルボン酸ジフェニル、2,2’-ビス(エトキシカルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-エトキシカルボキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-エトキシカルボキシプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-エトキシカルボキシ-2-メチルプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(4-エトキシカルボキシフェニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ビス(メトキシカルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-メトキシカルボキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-メトキシカルボキシプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-メトキシカルボキシ-2-メチルプロポキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(4-メトキシカルボキシフェニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル等が好ましく挙げられ、2,2’-ビス(エトキシカルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(メトキシカルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルがより好ましい。
また、ジカルボン酸エステルが分子内で同一のエステルではなく、混合エステルであっても問題なく使用可能である。具体例としては、2-(エトキシカルボキシメトキシ)-2’-(メトキシカルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルのような非対称エステルがあげられる。
これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジカルボン酸成分の原料モノマーとしてジカルボン酸エステルを使用することにより、ポリマーの末端がエステルとなる。このため末端カルボン酸量の低減が可能であり、末端カルボン酸による色相、耐湿熱性の悪化等の影響を低減することができる。
(前記式(1)および前記式(2)以外のジカルボン酸成分)
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂に使用するジカルボン酸成分としては、本発明の特性を損なわない程度に他のジカルボン酸成分を共重合しても良い。該他のジカルボン酸成分は、全繰り返し単位中30mol%未満が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂に使用するその他のジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレン等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が好ましい。これらの原料としてカルボン酸を使用してもよいし、またエステルの状態になっていてもよい。さらに、単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の製造方法について、以下で説明する。
<ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明のポリエステル樹脂は、ジオール成分と、ジカルボン酸成分としてジエステルを使用し、エステル交換反応により、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすればよい。
全ジオール成分に対して、エチレングリコール成分が0~50mol%であると好ましい。上記範囲であると耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
重合方法として、エステル交換等による公知の溶融重合法を行うことによって、樹脂を製造できる。
本発明におけるポリエステルの重合方法は、ジオール成分と、ジカルボン酸成分のジエステルを混合し、好ましくは120~350℃、より好ましくは150~300℃、さらに好ましくは180~270℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には0.13kPa以下にして生成したアルコール、フェノール等のヒドロキシ化合物を系外に留去させることができる。反応時間は通常1~10時間程度が好ましい。
また、溶融重合法において重合速度を速めるために触媒を用いることができる。例えば酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アン
チモン化合物類、マンガン化合物類、マグネシウム化合物類、チタン化合物類、コバルト化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を好ましく用いることができる。中でも、樹脂の溶融安定性、色相の観点からアルミニウム、スズ、チタン、ゲルマニウム化合物がより好ましく、アルミニウム化合物がさらに好ましい。
重合触媒の使用量は、全モノマー単位の合計1モルに対して、1×10-8~1×10-3モルの範囲が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、分子量調整や熱安定性向上のため、末端封止剤を使用しても良い。末端封止剤としては、単官能ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、ケテンイミン化合物等が好ましく挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂には、ジオール成分とジカルボンエステル以外の共重合成分を含有させてもよい。
<ポリエステルカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、ジオール成分およびジカルボン酸エステルと炭酸ジエステルなどのカーボネート形成性誘導体とを溶融重合法によって反応させて得ることができ、必要に応じて触媒、末端停止剤、酸化防止剤等を使用してもよい。
溶融重合法による反応は、通常、ジオール成分と、ジカルボン酸エステルとカーボネート形成性誘導体とのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下にジオール成分とジカルボン酸エステルとカーボネート形成性誘導体とを加熱しながら混合して、生成するアルコールやフェノール等のヒドロキシ化合物を留出させる方法により行われる。
反応温度は、用いるジオール成分によって異なるが、好ましくは120~350℃、より好ましくは150~300℃、さらに好ましくは180~270℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には0.13kPa以下にして生成したアルコールやフェノール等のヒドロキシ化合物を系外に留去させる。
反応時間は通常1~10時間程度が好ましい。
反応初期は、180~220℃程度の比較的低温で反応を行い、低分子のアルコールを留出させることが好ましい。留出塔に還流装置がある場合は、還流比を上げることにより、選択的に低分子アルコールを留出させることができる。
カーボネート形成性誘導体としては、置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1~4のアルキル基などのエステルが好ましく挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが好ましく挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートがより好ましい。
また、溶融重合法において重合速度を速めるために触媒を用いることができる。例えば酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類
金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、マグネシウム化合物類、チタン化合物類、コバルト化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を好ましく用いることができる。中でも、樹脂の溶融安定性、色相の観点からアルミニウム、スズ、チタン、ゲルマニウム化合物がより好ましく、アルミニウム化合物がさらに好ましい。
触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよく、助触媒として別の化合物を併用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、全モノマー単位の合計1モルに対して、1×10-8~1×10-3モルの範囲が好ましい。
触媒として好ましく用いられるアルミニウムまたはその化合物は、エステル交換によってポリエステルカーボネート樹脂を重合させるための触媒としての活性を有している。特にジオール成分、ジカルボン酸成分およびカーボネート形成性誘導体を原料モノマーとする重合における、カーボネート形成反応の触媒として作用している。
このようなアルミニウムまたはその化合物としては、例えば、金属アルミニウム、アルミニウム塩、アルミニウムキレート化合物、有機アルミニウム化合物、無機アルミニウム化合物等を好ましく挙げることができる。
アルミニウム塩としては、アルミニウムの有機酸塩及び無機酸塩を好ましく挙げることができる。アルミニウムの有機酸塩としては、例えば、アルミニウムのカルボン酸塩を挙げることができ、具体的にはギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、及びサリチル酸アルミニウムを好ましく挙げることができる。アルミニウムの無機酸塩としては、例えば、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びホスホン酸アルミニウムを好ましく挙げることができる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、及びアルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキシドを好ましく挙げることができる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコキシド、例えばトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、アルキルアルミニウムジアルコキシド、アルミニウムトリアルコキシド及びこれらの加水分解物等を好ましく挙げることができ、具体的には、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムn-プロポキシド、アルミニウムiso-プロポキシド、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウムtert-ブトキシドなどアルミニウムアルコキシド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム及びこれらの加水分解物を好ましく挙げることができる。無機アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム等が好ましく挙げられる。
特に、アルミニウムのカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でも特に、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートがより好ましい。
これらアルミニウム化合物には助触媒として別の化合物を併用しても良く、特にリン化合物は、ポリエステルカーボネート樹脂の重合反応におけるアルミニウムまたはその化合
物の触媒活性を向上させることができる。
このようなリン化合物としては、例えば、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、及びホスフィン系化合物を挙げることができる。これらの中でも特に、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、及びホスフィンオキサイド系化合物を好ましく挙げることができ、特にホスホン酸系化合物をより好ましく挙げることができる。
ホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、メチルホスホン酸ジへキシル、メチルホスホン酸ジオクチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジヘキシル、フェニルホスホン酸ジオクチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジヘキシル、ベンジルホスホン酸ジオクチル、ベンジルホスホン酸ジフェニル、p-メチルベンジルホスホン酸ジメチル、p-メチルベンジルホスホン酸ジエチル、p-メチルベンジルホスホン酸ジヘキシル、p-メチルベンジルホスホン酸ジオクチル、p-メチルベンジルホスホン酸ジフェニル、3,5-ジーtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジメチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジヘキシル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが好ましく挙げられ、3,5-ジーtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジメチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジヘキシル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがより好ましい。
アルミニウムまたはその化合物の使用量に対するリン化合物の使用量の比はモル比で、好ましくは0.5~10の範囲であり、より好ましくは1~5の範囲であり、さらに好ましくは1.5~3の範囲である。
触媒を添加する際の形態は特に限定されず、粉末状等の形態でモノマーに添加してもよく、溶媒中の分散体または溶液の形態でモノマーに添加してもよい。また、アルミニウムまたはその化合物とリン化合物とを予め混合したものを添加してもよいし、アルミニウムまたはその化合物とリン化合物とを別々に添加してもよい。
本発明のポリエステルカーボネート樹脂には、ジオール成分とジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体以外のジオール成分の共重合成分を含有させてもよい。
<不純物>
(残存フェノール)
本発明のポリエステルカーボネート樹脂の残存フェノール含有量は、好ましくは1~500ppm、より好ましくは1~400ppm、さらに好ましくは1~300ppmである。
フェノールの含有量は、圧力1.3kPa以下での反応時間により調整することが好ましい。1.3kPa以下の真空度での反応を行わない場合は、フェノールの含有量が多くなる。又、反応時間が長すぎると、樹脂中より留去しすぎてしまう。
又、本発明のポリエステルカーボネート樹脂を得た後にフェノール含有量を調整しても
良い。例えば、本発明のポリエステルカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解させ、有機溶媒層を水で洗う方法や、一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用い、133~13.3Paの圧力、200~320℃の温度で脱揮除去する方法を用いても良い。
本発明のポリエステルカーボネート樹脂における残存フェノールの含有量は、耐熱性を損なうことなく、成形流動性を向上させる事ができる。しかし、500ppmより高くなると加熱溶融した際の熱安定性が乏しく、さらに樹脂射出成形時の金型汚染がひどくなり好ましくない。さらに、フェノールは、酸化されると着色する性質があり、ポリエステルカーボネート樹脂の色相が悪化する。また、1ppm未満では、成形流動性に劣り好ましくない。
(残存フルオレノン)
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の残存フルオレノン含有量は、好ましくは1~500ppm、より好ましくは1~300ppm、さらに好ましくは1~100ppm、特に好ましくは1~50ppmである。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂における残存フルオレノンの含有量が500ppmより高くなると樹脂が著しく着色するため好ましくない。
<添加剤>
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂(以下、本発明の樹脂、樹脂と称することがある)には、必要に応じて、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、充填剤などの添加剤を適宜添加して用いることができる。
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
本発明の樹脂に配合させる離型剤としては、樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。3価のリン化合物は、熱安定効果の他に、酸化防止剤としての効果もあるので、好ましい。
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。
なかでも、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく使用される。特に好ましくはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
リン系熱安定剤の含有量としては、樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート
)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3、3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)である。
硫黄系熱安定剤の含有量は、樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。なかでも、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が特に好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部が好ましい。
リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、より好ましくは、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2.4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)
オキシ]-フェノール等が挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、特に2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)が好適である。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
紫外線吸収剤の配合量は、樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~3.0重量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、樹脂成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル-RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、樹脂の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した樹脂組成物の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によって樹脂組成物が黄色味を帯びやすい現実があり、レンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
ブルーイング剤の配合量は、樹脂100重量部に対して好ましくは0.05~1.5ppmであり、より好ましくは0.1~1.2ppmである。
<光学レンズ>
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、光学部材、特に光学レンズに好適である。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の光学レンズを射出成型で製造する場合、シリンダー温度230~350℃、金型温度70~180℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度250~300℃、金型温度80~170℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が350℃より高い場合では、樹脂が分解着色し、230℃より低い場合では、溶融粘度が高く成形が困難になりやすい。また金型温度が180℃より高い場合では、樹脂から成る成形片が金型から取り出すことが困難になりやすい。他方、金型温度が、70℃未満では、成型時の金型内で樹脂が早く固まり過ぎて成形片の形状が制御しにくくなったり、金型に付された賦型を十分に転写することが困難になりやすい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形を用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要が無く、軽量化および成形コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05~3.0mm、より好ましくは0.05~2.0mm、さらに好ましくは0.1~2.0mmである。また、直径が1.0mm~20.0mm、より好ましくは1.0~10.0mm、さらに好ましくは、3.0~10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズで
あることが好ましい。
本発明の光学レンズにおけるポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂からなるレンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチングなど任意の方法により成形される。この中でも、製造コストの面から金型成形がより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
(1)共重合比:重合終了後に得られた樹脂を日本電子(株)製JNM-ECZ400S/L1のH NMRを測定により求めた。
(2)比粘度:重合終了後に得られた樹脂を十分に乾燥し、該樹脂0.7gを塩化メチレン100mLに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。この測定では、20±0.01℃の恒温槽中でオストワルド粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t-t)/t
:樹脂溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
(3)末端カルボン酸量
窒素雰囲気下、樹脂0.1gを25℃で10mLの塩化メチレンに完全に溶解させ、その後アセトンを3mL加えた混合液を滴定することにより樹脂重量1トン当りの当量数として、カルボン酸末端基数(当量/トン)を測定した。指示薬にはフェノールレッドを用いた。
(4)ガラス転移温度(Tg):溶融混練後に得られた樹脂を(株)島津製作所製DSC-60Aにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(5)屈折率(nD):得られた樹脂3gを塩化メチレン50mLに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストし、室温にて十分に乾燥させた後、120℃以下の温度にて8時間乾燥して、厚さ約100μmのフィルムを作成した。このフィルムをATAGO製DR-M2アッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数(波長:486nm、589nm、656nmにおける屈折率から下記式を用いて算出)を測定した。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
なお、本発明においては、
nD:波長589nmでの屈折率、
nC:波長656nmでの屈折率、
nF:波長486nmでの屈折率を意味する。
(6)配向複屈折の絶対値(|Δn|):(5)で作成した厚さ100μmのフィルムをTg+10℃で一方向に2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM-220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折の絶対値を求めた。
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
(7)色相:得られた樹脂1.0gを分光分析用塩化メチレン5mLに溶解し、その溶液のb値(黄色味)をHITACHI製分光光度計U-3310により測定した。
(8)耐湿熱性:得られた樹脂ペレットを85℃・相対湿度85%環境にて500時間処理し、下記式より耐湿熱性を評価した。
耐湿熱性(%)=[処理後の樹脂の比粘度]/[処理前の樹脂の比粘度]×100
(9)成形性:樹脂ペレットを120℃で8時間真空乾燥した後、成形温度Tg+110℃、金型温度Tg-10℃にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、Φ5mmのレンズを射出成形した。500枚成形した際のレンズの充填不良、成形不良、金型付着物等を目視にて評価し、欠陥品の確率が5%未満の場合:成形性○、5%以上20%未満の場合:成形性△、20%以上の場合:成形性×と評価した。
[実施例1]
2,2’-ビス(エトキシカルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル((以下、BECMBと省略することがある)を53.3質量部、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(以下、BNEFと省略することがある)を31.4質量部、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル(以下、BHEBと省略することがある)を21.8質量部、及びテトラブトキシチタン(IV)4.0×10-3質量部を攪拌機および留出装置付きの反応器に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを200℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて40kPaまで減圧した。その後、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、50分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で所定の撹拌トルクに到達するまで重合反応を行った。反応終了後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたポリエステル樹脂をH NMRにより分析し、全モノマー成分に対して、BECMB成分が50mol%、BNEF成分が25mol%、BHEB成分が25mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステル樹脂の評価結果を表1に記載した。
[実施例2]
BECMB57.5質量部、BNEF33.8質量部、BHEB14.1質量部、エチレングリコール(以下、EGと省略することがある)16.0質量部、テトラブトキシチタン(IV)4.3×10-3質量部を攪拌機および留出装置付きの反応器に入れ、その後は実施例1と同様の方法を行いポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたポリエステル樹脂にはBECMB成分が50mol%、BNEF成分が25mol%、BHEB成分が15mol%、EG成分が10mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステル樹脂の評価結果を表1に記載した。
[実施例3]
実施例1のBECMBを51.4質量部、BNEFを42.3質量部、BHEBを12.6質量部、テトラブトキシチタン(IV)を3.8×10-3質量部とする以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたポリエステル樹脂にはBECMB成分が50mol%、BNEF成分が35mol%、BHEB成分が15mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステル樹脂の評価結果を表1に記載した。
[実施例4]
BECMB44.4質量部、BNEF36.0質量部、BHEB25.0質量部、及びジフェニルカーボネート(以下、DPCと省略することがある)8.7質量部を攪拌機および留出装置付きの反応器に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを200℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて40kPaまで減圧した。60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温した後、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて26kPaまで減圧した。その後、アルミニウムアセチルアセトネート(以下、Al(acac)と省略することがある)22.4×10-3質量部、3,5
-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(以下、DEBHBPと省略することがある)49.3×10-3質量部を反応器に添加した。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、70分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で所定の撹拌トルクに到達するまで重合反応を行った。反応終了後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリエステルカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂にはBECMB成分が42mol%、BNEF成分が29mol%、BHEB成分が29mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステルカーボネート樹脂の評価結果を表1に記載した。
[実施例5]
実施例4のBECMBを50.1質量部、BNEFを19.6質量部、BHEBを36.4質量部、DPCを5.7質量部、Al(acac)を23.6×10-3質量部、DEBHBPを52.0×10-3質量部とする以外は、実施例4と同様の方法でポリエステルカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂にはBECMB成分が45mol%、BNEF成分が15mol%、BHEB成分が40mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステルカーボネート樹脂の評価結果を表1に記載した。
[実施例6]
実施例4のBECMBを48.2質量部、BNEFを31.5質量部、BHEBを26.2質量部、DPCを5.5質量部、Al(acac)を22.7×10-3質量部、DEBHBPを50.0×10-3質量部とする以外は、実施例4と同様の方法でポリエステルカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂にはBECMB成分が45mol%、BNEF成分が25mol%、BHEB成分が30mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステルカーボネート樹脂の評価結果を表1に記載した。
[実施例7]
実施例4のBECMBを45.6質量部、BNEFを47.6質量部、BHEBを12.4質量部、DPCを5.2質量部、Al(acac)を21.5×10-3質量部、DEBHBPを47.2×10-3質量部とする以外は、実施例4と同様の方法でポリエステルカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂にはBECMB成分が45mol%、BNEF成分が40mol%、BHEB成分が15mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステルカーボネート樹脂の評価結果を表1に記載した。
[比較例1]
実施例1のBECMBの代わりに2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル(以下、BCMBと省略することがある)を46.8質量部使用したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたポリエステル樹脂をH NMRにより分析し、全モノマー成分に対して、BCMB成分が50mol%、BNEF成分が25mol%、BHEB成分が25mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステル樹脂の評価結果を表1に記載した。
[比較例2]
実施例2のBECMBの代わりにBCMB50.5質量部を使用したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたポリエステル樹脂にはBCMB成分が50mol%、BNEF成分が25mol%、BHEB成分が15mol%、EG成分が10mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステル樹脂の評価結果を表1に記載した。
[比較例3]
実施例3のBECMBの代わりにBCMBを45.1質量部使用し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたポリエステル樹脂にはBCMB成分が50mol%、BNEF成分が35mol%、BHEB成分が15mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステル樹脂の評価結果を表1に記載した。
[比較例4]
実施例4のBECMBの代わりにBCMB39.0質量部を使用したこと以外は実施例4と同様の操作を行い、ポリエステルカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂にはBCMB成分が42mol%、BNEF成分が29mol%、BHEB成分が29mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステルカーボネート樹脂の評価結果を表1に記載した。
[比較例5]
実施例7で、BECMBの代わりにBCMBを40.0質量部使用したこと以外は実施例7と同様の操作を行い、ポリエステルカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂にはBCMB成分が45mol%、BNEF成分が40mol%、BHEB成分が15mol%導入されていることを確認した。得られたポリエステルカーボネート樹脂の評価結果を表1に記載した。
Figure 2022154123000015
実施例1~7で得られたポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、比較例1~5と屈折率、アッベ数、耐熱性等の物性は同等である。末端カルボン酸量は0.8当量/トン以下であり、比較例1~5より、色相、耐湿熱性が優れていることが確認できる。
本発明のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂は、光学材料に用いられ、レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光
ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特にレンズに極めて有用である。

Claims (18)

  1. 下記式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含み、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位の比が、15:85~85:15であり、末端カルボン酸量が0.8当量/トン以下であるポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
    Figure 2022154123000016
    (式中、環Z、Zはそれぞれ炭素原子数9~20の多環芳香族炭化水素基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
    Figure 2022154123000017
    (式中、R、R、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R16、R19~R26は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、r、s、tおよびuはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
  2. 前記式(1)のZおよびZがナフタレンジイル基である請求項1に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  3. 前記式(1)が、下記式(3)で表される単位からなる請求項1に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
    Figure 2022154123000018
    (式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、k、rおよびsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
  4. 前記式(3)が下記式(4)である請求項3に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
    Figure 2022154123000019
    (式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示す。)
  5. 前記式(3)または(4)中のR、Rがエチレン基、RおよびRがメチレン基である請求項3または4に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  6. 前記式(1)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位中20モル%以上である請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  7. 前記式(2)中のR~R16、R19~R26が水素原子であり、r、s、tおよびuが1である請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  8. 前記式(2)中のR、Rがメチレン基、R17およびR18がエチレン基である請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  9. 前記式(2)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位中20モル%以上である請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  10. 前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(2)で表される繰り返し単位の比が、25:75~75:25である請求項1~9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  11. 塩化メチレン中に0.53質量%で溶解した溶液について測定した比粘度が0.12~0.40である請求項1~10のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  12. 屈折率が1.675~1.695である請求項1~11のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  13. ガラス転移温度が140~155℃である請求項1~12のいずれか一項に記載のポリ
    エステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  14. ガラス転移温度より10℃高い温度で2倍に延伸したフィルムにおける20℃、波長589nmでの複屈折の絶対値が0.001×10-3~5.0×10-3である請求項1~13のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  15. 前記樹脂1.0gを分光分析用塩化メチレン5mLに溶解し、その溶液を測定したCIE1976(L)表色系のb値が3.0以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
  16. 原料として、下記式(a)、(b)および(c)で表される化合物と、任意でカーボネート形成性誘導体を溶融重合により反応させることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
    Figure 2022154123000020
    (式中、環Z、Zはそれぞれ炭素原子数9~20の多環芳香族炭化水素基を示し、R、Rはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~Rは水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、j、kはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ独立に1または2を示す。)
    Figure 2022154123000021
    (式中、R17、R18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R19~R26は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、t、uはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。)
    Figure 2022154123000022
    (式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、R~R16は水素原子、脂肪族または芳香族の置換基を示し、r、sはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、R27、R28は、メチル基、エチル基またはフェニル基を示す。)
  17. 請求項1~16のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂からなる光学部材。
  18. 光学レンズである請求項17に記載の光学部材。
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