JP6689115B2 - 炭化タングステン粉末の製法及び炭化タングステン - Google Patents
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(a)タングステン酸塩と炭素源となる有機化合物とを、前記タングステン酸塩をWに換算したときのモル数をMw、前記有機化合物をCに換算したときのモル数をMcとしたときにMc/Mwが3.78を超えるように混合した混合物を水熱処理し、生成した固形物を分離して前駆体を得る工程と、
(b)前記前駆体を不活性ガス雰囲気下、大気圧以上で1050〜1150℃で熱処理して微粒の炭化タングステン粉末を得る工程と、
を含むものである。
XRDチャートにWCのピークは存在するが異相のピークは存在せず、
平均粒径D50が30〜70nm、
粒度分布で粒子数が累算10%のときの粒径D10が0.6×D50以上、
粒度分布で粒子数が累算90%のときの粒径D90が1.4×D50以下、
のものである。
(a)タングステン酸塩と炭素源となる有機化合物とを、前記タングステン酸塩をWに換算したときのモル数をMw、前記有機化合物をCに換算したときのモル数をMcとしたときにMc/Mwが3.78を超えるように混合した混合物を水熱処理し、生成した固形物を分離して前駆体を得る工程と、
(b)前記前駆体を不活性ガス雰囲気下、大気圧以上で1050〜1150℃で熱処理して微粒の炭化タングステン粉末を得る工程と、
を含むものである。
水溶性のタングステン源であるメタタングステン酸アンモニウム(以下MTAという)水溶液18.5g(W換算で0.04mol、以下W換算のモル数をMwという)に炭素源であるグルコース4.6g(0.026mol、C換算で0.156mol、以下C換算のモル数をMcという)、水24gを混合溶解させた後、100mL容量のテフロン製耐圧容器(テフロンは登録商標)に充填して200℃で14時間、水熱処理(昇温速度200℃/hr)を行った。Mc/Mwは3.90であった。水熱処理して得られた沈殿物を吸引ろ過器を用いてろ過し、純水で洗浄後回収した。回収した黒色沈殿物を乾燥させて前駆体粉末とした。これを黒鉛製るつぼに入れ、1150℃で6時間、1atm、アルゴン雰囲気下で熱処理して炭化タングステン(以下WCという)粉末を得た。
得られたWC粉末のXRDを、CuKα線を用いて電圧50kV、電流300mAという条件で測定した。このときのXRDチャートを図2に示す。図2から明らかなように、WCのピークのみ確認され、W2CやメタルWのピークは見られなかった。
得られたWC粉末のSEM画像を撮影し、500個の粒子に外接円を当てはめ、その直径を測定して粒径を求め、横軸が粒径、縦軸が頻度の粒度分布を作成した。このときのSEM画像を図3に示す。また、粒度分布を図4に示す。図4は、実験例1のWC粉末と市販のWC粉末の粒度分布のグラフである。実験例1のWC粉末は平均粒径D50が50nm、D10が32nm(=0.64×D50)、D90が65nm(=1.3×D50)であった。
全炭素量すなわち全体の質量に占める炭素質量の割合は6.3質量%であり、6.1質量%(理論値)±0.2質量%の範囲内に収まっていた。
実験例2,3では、水熱処理時の昇温速度を400℃/hr(実験例2)、40℃/hr(実験例3)に変更した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を製造した。いずれの実験例で得られたWC粉末も、実験例1と同様のWC粉末であった。
実験例4,5では、水熱処理時の濃度を1/2倍(実験例4)、2倍(実験例5)に変更した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を製造した。いずれの実験例で得られたWC粉末も、実験例1と同様のWC粉末であった。
実験例6では、実験例1の熱処理条件を1050℃で30時間に変更した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を製造した。得られたWC粉末は、実験例1と同様のWC粉末であった。実験例2〜6では、いずれも再現性よく実験例1と同様のWC粉末が得られた。
実験例7では、実験例1の熱処理条件を1200℃で6時間に変更した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末の製造を試みた。しかし、途中で分解反応が起き、WC以外の異相が発生した。
実験例8では、炭素源としてグルコースの代わりにスクロースを使用した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を得た。具体的には、MTA水溶液18.55g(Mw=0.04mol)にスクロース4.45g(0.013mol、Mc=0.156mol、Mc/Mw=3.90)、水24gを混合溶解させた以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を製造した。得られたWC粉末は、実験例1と同様、WCのXRDピークのみが観察された。
実験例9〜12では、炭素割合を変更した。すなわち、Mc/Mwが4.08(実験例9)、3.78(実験例10)、3.48(実験例11)、3.24(実験例12)となるようにグルコースの使用量を設定した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を製造した。なお、実験例1のMc/Mwは3.90である。実験例1,9〜12のWC粉末のXRDチャートを図5に示す。また、実験例1,9〜12のWC粉末の全炭素量を表1に示す。図5及び表1から明らかなように、Mc/Mwが3.78を超えると(3.90以上だと)、単相のWCが得られたが、Mc/Mwが大きくなるにしたがって全炭素量つまり残炭素が増えた。また、Mc/Mwが3.78以下では、反応に必要な炭素が足りず、異相(W2CやメタルW)が発生してしまった。
実験例13では、実験例1の前駆体粉末を黒鉛製るつぼに入れ、1150℃で6時間、真空下(1.33Pa)で熱処理した以外は、実験例1と同様の方法でWC粉末を製造した。得られたWC粉末のXRDチャートを図6に示す。図6から、メインピークはWCであるが、ピーク高さが実験例1と比べて低いことから結晶度が低かった。また、異相(W2CやメタルW)が発生した。
実験例14では、実験例1の水熱処理後にろ過せずそのまま水分を蒸発させて得た固形物を用いて熱処理した以外は、実験例1と同様にしてWC粉末の製造を試みた。得られたWC粉末は、WC以外の異相はみられなかったが、粒度分布の幅がかなり大きくなった。
Claims (6)
- (a)タングステン酸塩と炭素源となる有機化合物とを、前記タングステン酸塩をWに換算したときのモル数をMw、前記有機化合物をCに換算したときのモル数をMcとしたときにMc/Mwが3.78を超えるように混合した混合物を水熱処理し、生成した固形物を分離して前駆体を得る工程と、
(b)前記前駆体を不活性ガス雰囲気下、大気圧以上で1050〜1150℃で熱処理して微粒の炭化タングステン粉末を得る工程と、
を含む炭化タングステン粉末の製法。 - 前記タングステン酸塩は、タングステン酸アンモニウムであり、
前記有機化合物は、糖類である、
請求項1に記載の炭化タングステン粉末の製法。 - 前記水熱処理は、150〜300℃で行う、
請求項1又は2に記載の炭化タングステン粉末の製法。 - 前記不活性ガスは、アルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンと窒素の混合ガスである、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末の製法。 - 前記Mc/Mwは、4.08以下である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末の製法。 - XRDチャートにWCのピークは存在するが異相のピークは存在せず、
平均粒径D50が30〜70nmであり、
粒度分布で粒子数が累算10%のときの粒径D10が0.6×D50以上であり、
粒度分布で粒子数が累算90%のときの粒径D90が1.4×D50以下であり、
全炭素量が6.1±0.2%である、
炭化タングステン。
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