JP6687561B2 - スライド式切換弁および冷凍サイクルシステム - Google Patents

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Description

本発明は、スライド式切換弁および冷凍サイクルシステムに関する。
従来、ルームエアコン等の空気調和機で利用される冷凍サイクルとして、冷却モード(冷房)運転時に圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、及び室内熱交換器を経由して冷媒を圧縮機に環流させ、加温モード(暖房)運転時に圧縮機、室内熱交換器、膨張弁、及び室外熱交換器を経由して冷媒を圧縮機に環流させるように、冷媒の環流方向を逆転させるものが利用されている。このような冷凍サイクルにおける冷媒の環流経路を逆転させる流路切換弁(所謂、四方切換弁)として、弁本体の内部にスライド自在に設けられた弁部材を備えたスライド式切換弁が広く用いられている。
このようなスライド式切換弁(例えば四方切換弁)では、弁部材が弁座面に対して押し付けられつつスライドすることから、スムーズなスライド動作を実現するために、弁部材の摺接面に凹部を形成することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載された四方切換弁では、弁体(弁部材)のシール面(摺接面)に、開口に対してスライド方向に隣り合う位置に直線状の溝が形成されている。特許文献2に記載された四方弁では、摺動弁体の摺動面に、開口を囲む環状の条溝が形成されている。これらの構成では、摺接面に形成された凹部に流体中の油が取り込まれることにより、弁部材がスムーズにスライドするようになっている。
特開2013−227994号公報 実開昭52−143050号
しかしながら、特許文献1に記載された直線状の溝は、シール面の端縁まで連続しており、開放されている(即ち閉空間を形成しない)。従って、溝に油を取り込みやすいものの、取り込んだ油が流出しやすい。また、シール面のうちスライド方向との直交方向から開口を挟み込む部分には、溝が形成されていない。この部分は、スライド時に弁座側の開口部と重ならず常に弁座面と摺動するとともに、スライド方向に沿って延びており接触面積が大きいため、摺動と停止を連続的に繰り返す運動(スティックスリップ)が生じ、振動や騒音の原因となりやすい。
特許文献2に記載された環状の条溝は、常に弁座面と摺動する部分にも形成されていることから、上記不具合は起こりにくい。また、この条溝は弁座面との間に閉空間を形成することから、油が流出しにくい。しかしながら、摺動弁体のスライド時に、条溝の一部が、弁座面のうち開口の周縁部を通過するため、条溝の周縁部が弁座面の開口に入り込んで摺動弁体が削れてしまう可能性があった。
そこで、摩擦による不具合および弁部材の損傷を抑制するために、開口を直交方向から挟み込む位置にのみ凹部を設ける構成が考えられる。しかしながら、このような凹部は、弁座側の開口と重ならないため、弁座面との間に閉空間を形成する形状の場合には油を取り込みにくい。一方、特許文献1に記載されたように閉空間を形成しない凹部とした場合には取り込んだ油が流出しやすい。従って、いずれの場合においても弁部材がスムーズにスライドしない可能性がある。
本発明の目的は、弁部材をスムーズにスライドさせるとともに損傷を抑制することができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体と、複数の弁座開口部が直線状に並ぶように弁座面に形成された弁座と、前記弁本体に収容されるとともに前記複数の弁座開口部の並設方向に沿ってスライドする椀状の弁部材と、を備えたスライド式切換弁であって、前記弁部材は、前記弁座面に摺接する摺接面と、前記弁座開口部同士を連通させるように開口した弁開口部と、を備え、前記摺接面は、前記並設方向との直交方向において前記弁開口部の両側に位置して前記弁座開口部に重ならない閉鎖領域と、前記並設方向において前記弁開口部に隣り合うとともに前記弁座開口部に重なる開放領域と、を有し、前記摺接面には、前記閉鎖領域において前記並設方向に沿って延びるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅狭凹部と、前記開放領域から前記閉鎖領域に亘って設けられるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅広凹部と、前記直交方向における両側の前記幅広凹部同士を前記開放領域において分断する梁部と、が形成され、前記幅狭凹部及び前記幅広凹部は、平面視において所定の領域を囲む閉形状となっており、前記梁部は、前記弁開口部の外縁から前記並設方向に沿って連続的に延びて前記弁座面に当接することを特徴とする。
このような本発明によれば、幅広凹部が開放領域から閉鎖領域に亘って設けられていることで、弁部材のスライド時に幅広凹部の一部が弁座開口部と重なり、流体中の油を取り込むことができる。このとき、幅広凹部と幅狭凹部とが不連続であり、幅狭凹部が弁座面との間に常に閉空間を形成する場合でも、これらの凹部は、弁部材のスライド時に閉鎖領域において軌跡が重なることから、幅広凹部の油が幅狭凹部に供給されやすい。従って、閉鎖領域に形成された幅狭凹部に油を取り込むことができ、弁部材をスムーズにスライドさせることができる。さらに、弁座面に当接する梁部が、弁開口部の外縁から並設方向に沿って連続的に延びていることで、弁部材のスライド時に、摺接面のうち幅広凹部の周縁部が弁座開口部内に入り込みにくく、弁部材の損傷を抑制することができる。
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体と、複数の弁座開口部が直線状に並ぶように弁座面に形成された弁座と、前記弁本体に収容されるとともに前記複数の弁座開口部の並設方向に沿ってスライドする椀状の弁部材と、を備えたスライド式切換弁であって、前記弁部材は、前記弁座面に摺接する摺接面と、前記弁座開口部同士を連通させるように開口した弁開口部と、を備え、前記摺接面は、前記並設方向との直交方向において前記弁開口部の両側に位置して前記弁座開口部に重ならない閉鎖領域と、前記並設方向において前記弁開口部に隣り合うとともに前記弁座開口部に重なる開放領域と、を有し、前記摺接面には、前記閉鎖領域において前記並設方向に沿って延びるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅狭凹部と、前記開放領域から前記閉鎖領域に亘って設けられるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅広凹部と、前記直交方向における両側の前記幅広凹部同士を前記開放領域において分断する梁部と、が形成され、前記梁部は、前記弁開口部の外縁から前記並設方向に沿って連続的に延びて前記弁座面に当接するとともに、 前記摺接面には、2つの前記幅広凹部に挟まれるように前記直交方向の中央部に1つの前記梁部が形成されていることを特徴とする。
このような本発明によれば、直交方向の中央部に梁部が設けられていることで、摺接面のうち幅広凹部の周縁部が弁座開口部内に入り込むことがさらに抑制される。
また、本発明のスライド式切換弁では、前記並設方向に沿って配置された前記幅狭凹部および前記幅広凹部によって構成される凹部群には、前記弁座面に当接する分断部が少なくとも1つ設けられ、前記並設方向において当該凹部群が不連続となっていることが好ましい。このような構成によれば、弁開口部に対して並設方向の両側に設けられて同一の凹部群を構成する2つの幅広凹部のそれぞれが、弁部材のスライド時に互いに異なる弁座開口部と重なった際に、凹部群が不連続であることから、弁座開口部同士が凹部群を介して連通しないようになっている。これにより、高圧側の弁座開口部から低圧側の弁座開口部に流体が流れ込むことを抑制することができる。
さらに、本発明のスライド式切換弁では、前記開放領域には、前記幅広凹部を挟んで前記弁開口部の反対側に、前記弁座面に当接する端部当接領域が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、開放領域に端部当接領域が形成されていることで、幅広凹部が並設方向において開放領域の全体に亘って形成されていない。従って、スライド時に並設方向の一方側の幅広凹部が弁座開口部と重なった際に、他方側において、端部当接領域が他の弁座開口部と重なりやすい。即ち、並設方向の一方側及び他方側の幅広凹部が、互いに異なる弁座開口部に対して同時に重なりにくく、並設方向の両側の幅広凹部を介して高圧側の弁座開口部から低圧側の弁座開口部に流体が流れ込むことを抑制することができる。
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、前記いずれかに記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。このような本発明によれば、上記のように弁部材をスムーズにスライドさせることができ、例えばスティックスリップ等の運転時の異音や振動を抑制することができる。また、上記のように弁部材の損傷を抑制することができ、損傷した部分からの流体の漏れを抑制し、冷凍サイクルシステムの運転効率の低下を抑制することができる。
本発明のスライド式切換弁およびスライド式切換弁によれば、弁部材の摺接面に幅狭凹部と幅広凹部と梁部とが形成されていることで、弁部材をスムーズにスライドさせるとともに損傷を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係るスライド式切換弁が設けられた冷凍サイクルの概略構成図である。 前記スライド式切換弁を示す断面図である。 前記スライド式切換弁を示す断面図である。 前記スライド式切換弁の弁部材の摺接面を示す平面図である。 前記弁部材をスライドさせた際の前記摺接面を示す平面図である。 前記弁部材をスライドさせた際の前記スライド式切換弁の要部を示す断面図である。 第1の変形例に係るスライド式切換弁の弁部材の摺接面を示す平面図である。 第2の変形例に係るスライド式切換弁の弁部材の摺接面を示す平面図である。
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)10は、例えば冷凍サイクル1に設けられるものである。冷凍サイクル1は、ルームエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器3と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器4と、室外熱交換器3と室内熱交換器4との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁5と、四方切換弁10と、四方切換弁10の流路を切換え制御するパイロット電磁弁6と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁5に限らず、キャピラリでもよい。
この冷凍サイクル1は、図1に示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室外熱交換器3、膨張弁5、室内熱交換器4、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、加温モード(暖房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室内熱交換器4、膨張弁5、室外熱交換器3、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、パイロット電磁弁6による四方切換弁10の切換え動作によって行われる。
本発明の実施形態に係る四方切換弁10は、図2、3にも示すように、円筒状の弁本体11と、この弁本体11の内部にスライド自在に設けられた弁体12と、圧縮機2の吐出口に連通する継手部材としての高圧側導管(D継手)13と、圧縮機2の吸込口に連通する低圧側導管(S継手)14と、室内熱交換器4に連通する室内側導管(E継手)15と、室外熱交換器3に連通する室外側導管(C継手)16と、を備えて構成されている。
円筒状の弁本体11は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体17,18と、弁本体11の内部に固定された弁座19と、を有し、全体に密閉されたシリンダーとして構成されている。栓体17,18には、それぞれパイロット電磁弁6に連通された導管17A,18Aが接続されている。弁座19には、低圧側導管14、室内側導管15、及び室外側導管16のそれぞれの先端が挿入されるとともに、後述する第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bを構成する開口が設けられている。弁座19の上面19Aは、弁体12をスライド案内する案内面(弁座面)となっている。
弁本体11には、その側面部111に開口した複数のポート11A,11B,11C,11Dが形成されている。すなわち、高圧側導管13が接続されて弁本体11の内部に冷媒を流入させる開口部としての流入ポート11Aと、流入ポート11Aに対して弁本体11の側面部111の径方向反対側にて弁座19の上面19Aに形成された弁座開口部としての第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bと、が設けられている。流出ポート11Bは、弁本体11の軸方向略中央に設けられ、第一ポート11Cは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの一方側(図2の左側)に隣り合って設けられ、第二ポート11Dは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの他方側(図2の右側)に設けられている。即ち、3つのポート11B〜11Dは、直線状に並ぶように設けられている。
流出ポート11Bには、低圧側導管14が接続され、第一ポート11Cに室内側導管15が接続されることで、当該第一ポート11Cが室内側ポートを構成し、第二ポート11Dに室外側導管16が接続されることで、当該第二ポート11Dが室外側ポートを構成している。低圧側導管14、室内側導管15及び室外側導管16は、それぞれ流出ポート11B、第一、二ポート11C,11D周辺の弁本体11及び弁座19にろう付け固定されている。
弁体12は、弁本体11の内周面に摺接する左右一対のピストン体21,22と、一対のピストン体21,22を連結して弁本体11の軸方向に沿って延びる連結部材23と、連結部材23に支持される椀状の弁部材24と、を有して構成されている。弁本体11の内部空間は、一対のピストン体21,22間に形成される高圧室R1と、一方のピストン体21と栓体17との間に形成される第一作動室R2と、他方のピストン体22と栓体18との間に形成される第二作動室R3と、に仕切られている。
連結部材23は、金属板材からなり、弁本体11の軸方向に沿って延び弁座19の上面19Aと平行に設けられる連結板部23Aと、連結板部23Aの一方側端部が折り曲げられてピストン体21に固定される固定片部23Bと、連結板部23Aの他方側端部が折り曲げられてピストン体22に固定される固定片部23Cと、を有して形成されている。連結板部23Aには、弁部材24を保持する保持孔23Dと、冷媒を流通させる2箇所の貫通孔23Eと、が形成されている。
弁部材24は、合成樹脂製の一体成形部材であって、弁座19に向かって凹状に開口した椀部25と、この椀部25の開口縁から外方に延びるフランジ部26と、を有して形成されている。椀部25は、平面視で長円形状を有したドーム状に形成され、連結部材23の保持孔23Dに挿入されている。椀部25の内部には、流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させて第二ポート11Dを連通させないか、又は、流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させて第一ポート11Cを連通させないような連通空間R4が形成されている。
フランジ部26は、その下面(弁座19の上面19Aと対向する面)260に、上面19Aに摺接する摺接面26Aと、椀部25の内部に連通する弁開口部25Aと、を有する。このフランジ部26は、弁座19と連結部材23との間に配置される。そして、弁部材24に作用する高圧と低圧の圧力差により摺接面26Aが弁座19の上面19Aに密接され、椀部25の連通空間R4が弁座19に対して閉じられるようになっている。尚、ポート11B〜11Dおよび弁開口部25Aの周囲にはテーパ部が形成されているが、後述するポート11B〜11Dおよび弁開口部25Aの寸法は、テーパ部を含まない(Z方向に沿って延びる部分の)寸法とする。
以上の四方切換弁10では、パイロット電磁弁6及び導管18Aを介して第二作動室R3に高圧冷媒が導入されると、図1、2に示すように、ピストン体22が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向(ポート11B〜11Dの並設方向)の一方側(図1、2の左側)にスライドされ、第一位置に移動される。また、パイロット電磁弁6及び導管17Aを介して第一作動室R2に圧縮機2から吐出された高圧冷媒が導入されると、ピストン体21が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向他方側(図1、2の右側)にスライドされ、第二位置に移動される。
弁体12が第二位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させる。また、椀部25が第一ポート11Cよりも他方側に位置することから、この第一ポート11Cは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第二位置にある状態は、流入ポート11Aと第一ポート11Cとが連通され、流出ポート11Bと第二ポート11Dとが連通された加温モード(暖房運転)となる。
この加温モードでは、圧縮機2から吐出された高圧冷媒Hが高圧側導管13及び流入ポート11Aを介して高圧室R1に導入され、この高圧室R1を通過した高圧冷媒Hが第一ポート11C及び室内側導管15を介して室内熱交換器4に供給される。また、室外熱交換器3から室外側導管16及び第二ポート11Dを介して低圧冷媒Lが椀部25の連通空間R4に導入され、この連通空間R4を通過した低圧冷媒Lが流出ポート11B及び低圧側導管14を介して圧縮機2に還流される。
一方、弁体12が第一位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させる。また、椀部25が第二ポート11Dよりも一方側に位置することから、この第二ポート11Dは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第一位置にある状態は、流入ポート11Aと第二ポート11Dとが連通され、流出ポート11Bと第一ポート11Cとが連通された冷却モード(冷房運転)となる。
以上のような四方切換弁10における弁部材24の詳細について、図3、4に基づいて説明する。ここで、ポート11B〜11Dの並設方向をX方向とし、導管13〜16の延在方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向(弁部材24の幅方向)をY方向とする。
弁部材24の摺接面26Aは、Y方向を長手方向とするとともに角部が丸められた略長方形状となっており、弁開口部25Aは、長方形と半円とが組み合わされてX方向を長手方向とするオーバル状に形成されている。弁開口部25AのY方向寸法は、ポート11B〜11Dの直径と概ね同等である。従って、摺接面26Aのうち弁開口部25Aに対してY方向両側に位置する部分は、ポート11B〜11Dを挟み込むとともに、弁部材24のスライド時にポート11B〜11Dのいずれとも重ならない。このように摺接面26Aのうち弁開口部25Aに対してY方向両側に位置する部分を閉鎖領域A1とする。また、摺接面26Aのうち弁開口部25Aおよび閉鎖領域A1を除く部分(X方向において弁開口部25Aと隣り合うとともにスライド時にポート11C、11Dと重なる部分)を開放領域A2とする。
摺接面26AにおけるY方向の一方側(図4における上側)には、第1幅広凹部271と、第1幅狭凹部272と、第2幅広凹部273と、が形成されるとともに、凹部271〜273がX方向に沿って配置されて凹部群27が構成されている。凹部271〜273は、上面19Aに接触せず適宜な油の量を収容できるような深さを有している。また、凹部271〜273は、平面視において所定の領域を囲むように閉形状となっており、摺接面26Aの端縁には達していない。即ち、凹部271〜273と上面19Aとの間に閉空間が形成されるようになっている。尚、図3では、凹部271〜273のうち第1幅狭凹部272のみが見えている。
第1幅広凹部271および第2幅広凹部273は、閉鎖領域A1から開放領域A2に亘って設けられ、X方向に沿って延びる一対の平行な辺を有する略台形状に形成されるとともに、X方向から弁開口部25Aを挟み込んでいる。第1幅広凹部271および第2幅広凹部273のうち弁開口部25Aと対向する縁部271A、273Aは、弁開口部25Aに沿って円弧状に形成されている。
幅狭凹部272は、X方向に沿って延びる長方形状に形成されるとともに、第1幅広凹部271と第2幅広凹部273とによってX方向から挟み込まれている。第1幅広凹部271と幅狭凹部272との間、及び、幅狭凹部272と第2幅広凹部273との間には、それぞれ、上面19Aに当接する分断部274、275が設けられ、凹部271〜273が独立となっている。即ち、凹部群27がX方向において不連続となっている。尚、分断部274、275の幅(X方向寸法)は、第1幅狭凹部272のY方向両側の壁(閉鎖領域A1のうち上面19Aに当接する部分)の厚さと同程度となっている。
摺接面26AにおけるY方向の他方側(図4における下側)には、第3幅広凹部281と、第2幅狭凹部282と、第4幅広凹部283と、が形成されるとともに、凹部281〜283がX方向に沿って配置されて凹部群28が構成されている。凹部281〜283は、それぞれ凹部271〜273と対称な形状を有している。
摺接面26Aの開放領域A2には、Y方向の両側に設けられた第1幅広凹部271と第3幅広凹部281とを分断する梁部291と、Y方向の両側に設けられた第2幅広凹部273と第4幅広凹部283とを分断する梁部292と、が形成されている。即ち、弁開口部25AのX方向両側のそれぞれにおいて、2つの幅広凹部に挟まれるように、Y方向の中央部に1つの梁部291、292が形成されている。
梁部291、292は、X方向に沿って弁開口部25Aの外縁から摺接面26Aの端縁まで連続的に延びて上面19Aに当接するように形成されている。即ち、梁部291、292には凹部が形成されていない。尚、梁部291、292の幅(Y方向寸法)は、ポート11B〜11Dの直径の1/3以上であることが好ましい。梁部291、292の幅が狭すぎると、弁部材24のスライド時に、摺接面26Aのうち幅広凹部271、273、281、283の周縁部がポート11C、11D内に入り込みやすくなってしまう。
摺接面26Aの開放領域A2には、幅広凹部271、281を挟んで弁開口部25Aの反対側に端部当接領域293が形成され、幅広凹部273、283を挟んで弁開口部25Aの反対側に端部当接領域294が形成されている。端部当接領域293、294は、上面19Aに当接する領域である。即ち、幅広凹部271、273、281、283がX方向において開放領域A2の全体に亘って形成されていない。また、梁部291と端部当接領域293とが連続し、梁部292と端部当接領域294とが連続している。
ここで、摺接面26Aの各部とポート11B〜11Dとの関係について説明する。尚、図4、5においてポート11B〜11Dを二点鎖線で示しているが、これは、テーパ部を含まずZ方向に沿って延びる部分を示すものである。図4は、上記の第一位置に対応しており、弁開口部25Aによってポート11B、11Cが囲まれている。このとき、幅広凹部273、283は、第二ポート11Dと重ならないようになっている。このような状態から、上記の第二位置となるように弁部材24をX方向にスライドさせていくと、図5に示すように、第一ポート11Cが幅広凹部271、281に重なる。このとき、第二ポート11Dは、梁部292および端部当接領域294と重なり、幅広凹部273、283とは重ならない。
弁部材24のスライドを進めていくと、第一ポート11Cが幅広凹部271、281に重なるとともに、第二ポート11Dが幅広凹部273、283と重なるようになる。さらにスライドを進めると、第一ポート11Cが幅広凹部271、281に重ならなくなった後、弁体12が第二位置に位置付けられる。
このように弁部材24をスライドさせる際、上面19Aのうちポート11C、11Dの周縁部が開放領域A2上を通過する。図6には、第二ポート11Dの周縁部(角部)190が開放領域A2上を通過する様子を示している。このとき、梁部292が弁開口部25Aの外縁からX方向に沿って連続的に延びていることで、周縁部190は常に梁部292に当接する。従って、弁部材24が上面19Aに押し付けられている状態において、弁部材24が上面19Aにさらに近づくように変形することが規制され、摺接面26Aのうち幅広凹部273、283の周縁部(X方向に交差するように延びる縁部、例えば、縁部273Aや、縁部273Aに対向してY方向に沿って延びる縁部273B)がポート11D内に入り込みにくくなっている。
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、幅広凹部271、273、281、283が開放領域A2から閉鎖領域A1に亘って設けられていることで、弁部材24のスライド時に幅広凹部271、273、281、283の一部がポート11C、11Dと重なり、流体(冷媒)中の油を取り込むことができる。このとき、幅広凹部271、273と幅狭凹部272とが弁部材24のスライド時に閉鎖領域A1において軌跡が重なることから、幅広凹部271、273の油が幅狭凹部272に供給されやすい(凹部281〜283においても同様)。従って、閉鎖領域A1に形成された幅狭凹部272、282に油を取り込むことができ、弁部材24をスムーズにスライドさせることができる。さらに、弁座19の上面19Aに当接する梁部291、292が、弁開口部25Aの外縁からX方向に沿って連続的に延びていることで、摺接面26Aのうち幅広凹部271、273、281、283の周縁部がポート11C、11D内に入り込みにくく、弁部材24の損傷を抑制することができる。
また、摺接面26AのY方向の中央部に梁部291、292が設けられていることで、摺接面26Aのうち幅広凹部271、273、281、283の周縁部がポート11C、11D内に入り込むことがさらに抑制される。
また、凹部群27が分断部274、275によって不連続となっていることから、幅広凹部271、273のそれぞれが、弁部材24のスライド時に互いに異なるポート11C、11Dと重なった際に、ポート11C、11D同士が凹部群27を介して連通しないようになっている。これにより、高圧側のポートから低圧側のポートに冷媒が流れ込むことを抑制することができる。
また、開放領域A2に端部当接領域293、294が形成され、幅広凹部271、273が互いに異なるポート11C、11Dに対して同時に重なりにくくなっていることから、X方向の両側の幅広凹部271、273を介して高圧側のポートから低圧側のポートに冷媒が流れ込むことを抑制することができる。
また、上記のような弁部材24が冷凍サイクル1に設けられていることから、弁部材24をスムーズにスライドさせることができ、例えばスティックスリップ等の運転時の異音や振動を抑制することができる。また、弁部材24の損傷を抑制することができ、損傷した部分からの冷媒の漏れを抑制し、冷凍サイクル1の運転効率の低下を抑制することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、摺接面26Aに形成された凹部群27において、第1幅広凹部271と第1幅狭凹部272と第2幅広凹部273とがそれぞれ分断部274、275によって分断されて独立に形成されているものとしたが、摺接面26Aには、幅狭凹部と幅広凹部とが形成されていればよく、これらの関係は、以下に例示するようなものであってもよい。
図7に示す第1の変形例では、摺接面26Aには、Y方向の両側に凹部群30、31が形成されている。凹部群30は、2つの凹部301、302によって構成されるとともに、X方向中央部に形成された分断部303によってX方向において不連続となっている。凹部301は、閉鎖領域A1に形成された幅狭凹部301Aと、開放領域A2から閉鎖領域A1に亘って設けられた幅広凹部301Bと、が連続することで形成された1つの凹部である。凹部302も凹部301と同様に、幅狭凹部302Aと幅広凹部302Bとによって構成されている。凹部群31は、2つの凹部311、312によって構成され、凹部311、312は、それぞれ凹部301、302と同様の形状を有している。また、摺接面26Aには、前記実施形態と同様に梁部291、292および端部当接領域293、294が形成されている。
図8に示す第2の変形例では、摺接面26Aには、Y方向の両側に凹部32、33が形成されている。凹部32は、開放領域A2から閉鎖領域A1に亘って設けられた幅広凹部321と、閉鎖領域A1に形成された幅狭凹部322と、開放領域A2から閉鎖領域A1に亘って設けられた幅広凹部323と、が連続することで形成された1つの凹部である。凹部321〜323は、X方向においてこの順に並んでいる。凹部32は、分断部が形成されておらず、X方向において連続した形状となっている。
第2の変形例では、摺接面26Aには前記実施形態と同様の梁部291、292が形成されているものの、端部当接領域は形成されていない。即ち、幅広凹部321、323がX方向において開放領域A2の略全体に亘って形成されている。尚、凹部33は凹部32と同様の形状を有している。
また、前記実施形態では、摺接面26Aに、Y方向両側の幅広凹部271、281に挟まれるようにY方向の中央部に1つの梁部291が形成されているものとしたが、Y方向両側の幅広凹部の間に、2つ以上の梁部が形成されていてもよい。即ち、Y方向両側の幅広凹部の間に他の凹部が形成されていてもよい。このとき、2つ以上の梁部は、摺接面26AのY方向中央部からずれて配置されていてもよい。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
1 冷凍サイクル
2 圧縮機
3 室外熱交換器(第一熱交換器)
4 室内熱交換器(第二熱交換器)
5 膨張弁(膨張手段)
10 四方切換弁(スライド式切換弁)
11 弁本体
11A 流入ポート(開口部)
11B〜11D ポート(弁座開口部)
13 高圧側導管(継手部材)
19A 上面(弁座面)
24 弁部材
25A 弁開口部
26A 摺接面
271、273、281、283 幅広凹部
272、282 幅狭凹部
27、28 凹部群
274、275 分断部
291、292 梁部
293、294 端部当接領域
A1 閉鎖領域
A2 開放領域

Claims (5)

  1. 筒状の弁本体と、複数の弁座開口部が直線状に並ぶように弁座面に形成された弁座と、前記弁本体に収容されるとともに前記複数の弁座開口部の並設方向に沿ってスライドする椀状の弁部材と、を備えたスライド式切換弁であって、
    前記弁部材は、前記弁座面に摺接する摺接面と、前記弁座開口部同士を連通させるように開口した弁開口部と、を備え、
    前記摺接面は、前記並設方向との直交方向において前記弁開口部の両側に位置して前記弁座開口部に重ならない閉鎖領域と、前記並設方向において前記弁開口部に隣り合うとともに前記弁座開口部に重なる開放領域と、を有し、
    前記摺接面には、前記閉鎖領域において前記並設方向に沿って延びるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅狭凹部と、前記開放領域から前記閉鎖領域に亘って設けられるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅広凹部と、前記直交方向における両側の前記幅広凹部同士を前記開放領域において分断する梁部と、が形成され、
    前記幅狭凹部及び前記幅広凹部は、平面視において所定の領域を囲む閉形状となっており、
    前記梁部は、前記弁開口部の外縁から前記並設方向に沿って連続的に延びて前記弁座面に当接することを特徴とするスライド式切換弁。
  2. 筒状の弁本体と、複数の弁座開口部が直線状に並ぶように弁座面に形成された弁座と、前記弁本体に収容されるとともに前記複数の弁座開口部の並設方向に沿ってスライドする椀状の弁部材と、を備えたスライド式切換弁であって、
    前記弁部材は、前記弁座面に摺接する摺接面と、前記弁座開口部同士を連通させるように開口した弁開口部と、を備え、
    前記摺接面は、前記並設方向との直交方向において前記弁開口部の両側に位置して前記弁座開口部に重ならない閉鎖領域と、前記並設方向において前記弁開口部に隣り合うとともに前記弁座開口部に重なる開放領域と、を有し、
    前記摺接面には、前記閉鎖領域において前記並設方向に沿って延びるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅狭凹部と、前記開放領域から前記閉鎖領域に亘って設けられるとともに前記弁座面との間に閉空間を形成可能な幅広凹部と、前記直交方向における両側の前記幅広凹部同士を前記開放領域において分断する梁部と、が形成され、
    前記梁部は、前記弁開口部の外縁から前記並設方向に沿って連続的に延びて前記弁座面に当接するとともに、
    前記摺接面には、2つの前記幅広凹部に挟まれるように前記直交方向の中央部に1つの前記梁部が形成されていることを特徴とするスライド式切換弁。
  3. 前記並設方向に沿って配置された前記幅狭凹部および前記幅広凹部によって構成される凹部群には、前記弁座面に当接する分断部が少なくとも1つ設けられ、前記並設方向において当該凹部群が不連続となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
  4. 前記開放領域には、前記幅広凹部を挟んで前記弁開口部の反対側に、前記弁座面に当接する端部当接領域が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
  5. 流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1〜4のいずれかに記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
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