JP6686927B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の制御装置、詳しくは、駆動力源から出力されたトルクを、変速機を介して駆動輪に出力するようにした車両の制御装置に関する。
車両の変速機による変速段の切り替えは、オイルパンに貯留された作動油をオイルポンプにより吸い上げ、変速機の摩擦係合要素に油圧を供給し、摩擦係合要素を選択的に係合することで実現される。
ところで、坂路(特に路面の摩擦係数が低い場合)では、発進時に駆動輪が加速スリップしやすい。そこで、坂路の発進時に、運転者のアクセル操作量に対して駆動力源の駆動力を小さくして、駆動輪の加速スリップの防止を図った車両用制御装置が、特許文献1に開示されている。
特開2014−034915号公報
しかしながら、特許文献1に記載の車両用制御装置では、駆動輪の加速スリップの防止については考慮されているが、坂路において作動油の油面がオイルパンの底面に対して傾いているときに、車両の加速によって作動油の油面がさらに傾くことについては考慮されていない。
したがって、特許文献1に記載の車両用制御装置では、坂路の発進時において、オイルポンプがオイルストレーナーを介してオイルパンから作動油をうまく吸い上げずに、エアを吸引する可能性があった。よって、坂路の発進時において、変速機の摩擦係合要素の係合圧が不足し、摩擦係合要素に滑りが生じて変速段の切り替えができないおそれがあった。
本発明は、かかる不具合を解消すべくなされたものであり、車両の加速によって作動油の油面が大きく傾くことを抑制し、変速機の摩擦係合要素に生じる滑りを抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る車両の制御装置の一形態は、
駆動力源、
前記駆動力源に接続された変速機、及び
前記変速機の変速段を形成する摩擦係合要素に所定の係合圧となる油圧を供給する係合油圧供給手段を備える車両の制御装置であって、
前記制御装置は、前記車両の坂路における発進時において、運転者の操作によるアクセル開度に基づき設定される要求駆動力が、所定値未満の領域では、前記駆動力源による出力トルクを平坦路における発進のときと等しく設定し、前記所定値以上の領域では、前記駆動力源による出力トルクを前記平坦路における発進のときの出力トルクに比べて低減させて設定する一方、前記係合圧に関しては、前記平坦路又は前記坂路における発進にかかわらず、前記要求駆動力に対応させた前記係合圧を等しく設定して係合圧を制御するように構成されていることを特徴とする。
上記本発明に係る車両の制御装置の一形態によれば、坂路の発進時において、要求駆動力が所定値以上の場合には、駆動力源による出力トルクが平坦路の発進時よりも低減され、車両の加速が抑えられるので、加速によって作動油の油面が大きく傾くことを抑制することが可能となる。また、要求駆動力が所定値以上の場合に、平坦路又は坂路における発進にかかわらず、要求駆動力に対応させた摩擦係合要素の係合圧を等しくするので、坂路の発進時のときの、上記低減された出力トルクに対する係合圧が、平坦路の発進のときの出力トルクに対する係合圧よりも高くなり、摩擦係合要素に生じる滑りを抑制することが可能となる。
本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の動力分割機構を含む無段変速部と、無段変速部と駆動輪との間の動力伝達経路に直列に連結されている有段変速部を示すスケルトン図である。 本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の制御系の構成の一例を示すブロック図である。 図1における有段変速部の作動表である。 シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例を示した図である。 図1における有段変速部の油圧制御回路の一例を示す構成図である。 車速と出力トルクとに基づく変速切換制御を説明する変速線図と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える境界線を示す動力源切換線図とのそれぞれの一例を図示するマップである。 本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置で実行される有段変速制御の一例を示すフローチャートである。 要求駆動力−駆動力源トルクマップの内容を示すグラフである。 車両の傾斜角度−駆動力源トルク低減量マップの内容を示すグラフである。 要求駆動力−係合圧マップの内容を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
<車両の主たる構成>
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の動力分割機構を含む無段変速部と、無段変速部と駆動輪との間の動力伝達経路に直列に連結されている有段変速部を示すスケルトン図である。図2は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の制御系の構成の一例を示すブロック図である。
先ず、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の主たる構成を説明する。本実施形態に係るハイブリッド車両は、駆動力源として、内燃機関であるエンジン100と、モータジェネレータ(MG)として機能する第1及び第2の回転電機MG1、MG2とを備えている。この車両は、これらエンジン100や第1及び第2の回転電機MG1、MG2の出力する回転動力を、これら駆動力源に接続された変速機により変速し、駆動輪DWに伝達して転動させることにより走行する。本実施形態に係るハイブリッド車両は、エンジン100が縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両であり、エンジン100と、エンジン100の出力軸であるクランクシャフト102に接続され動力分割機構210を含む電気的な無段変速部(以下、第1変速部とも称す)200と、無段変速部200と駆動輪DWとの間の動力伝達経路に直列に連結されている有段変速部(以下、第2変速部とも称す)300とを備えている。無段変速部200は、3軸式の動力分割機構210と、動力分割機構210に接続された発電可能な第1回転電機MG1と、動力分割機構210に接続された第2回転電機MG2とを含んでいる。
図2に移り、本実施形態に係るハイブリッド車両は制御系として、車両全体を制御するハイブリッド電子制御ユニット(以下「HVECU」という)400、エンジン100を制御するエンジン電子制御ユニット(以下「エンジンECU」という)120、第1及び第2の回転電機MG1、MG2を制御する電子制御ユニット(以下「MGECU」という)270、後述する不図示のバッテリを管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)280、有段変速部300を制御する変速機電子制御ユニット(以下「変速機ECU」という)350などを含んでいる。これら、HVECU400と、エンジンECU120、MGECU270、バッテリECU280、及び変速機ECU350とは互いに通信可能に接続されている。
エンジン100は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン100の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力されるエンジンECU120により、燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU120は、HVECU400と通信しており、HVECU400からの制御信号によりエンジン100を運転制御すると共に必要に応じてエンジン100の運転状態に関するデータをHVECU400に出力する。
<無段変速部>
図1に戻り、無段変速部200における動力分割機構210は、図1に示すように、外歯歯車のサンギヤS0と、サンギヤS0と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR0と、サンギヤS0に噛合すると共にリングギヤR0に噛合する複数のピニオンギヤP0と、複数のピニオンギヤP0を自転かつ公転自在に保持するキャリアCA0とを含んでいる。動力分割機構210は、サンギヤS0とリングギヤR0とキャリアCA0とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。
キャリアCA0には、エンジン100のクランクシャフト102が連結され、サンギヤS0には第1回転電機MG1の回転軸(出力軸)202が連結され、リングギヤR0には伝達軸212(後述の有段変速部300の入力軸302)が連結されている。動力分割機構210は、この伝達軸212、クランクシャフト102、第1回転電機MG1の回転軸202の三要素を機械的に連結し、かつ、この三要素のうちいずれか一つを反力要素とすることで、他の二つの要素間での動力伝達を可能としている。例えば、動力分割機構210は、第1回転電機MG1が発電機として機能するときには、キャリアCA0から入力されるエンジン100からの動力をサンギヤS0側とリングギヤR0側にそのギヤ比に応じて分配する。動力分割機構210は、第1回転電機MG1が電動機として機能するときには、キャリアCA0から入力されるエンジン100からの回転力と回転軸202を介してサンギヤS0から入力される第1回転電機MG1からの回転力を統合して、リングギヤR0側に出力する。リングギヤR0に出力された動力は、リングギヤR0の回転軸から伝達軸212、有段変速部300の入力軸302、出力軸304、デファレンシャルギヤDGを介して駆動輪DWに出力される。
第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2は、発電機として駆動することができると共に、電動機として駆動できる周知の同期発電電動機を用いることができる。第1及び第2の回転電機MG1,MG2は、インバータを介してバッテリと電力のやりとりを行なう。
インバータとバッテリとを接続する電力ラインは、各インバータが共用する正極母線及び負極母線を含む。これにより、第1及び第2の回転電機MG1,MG2の一方で発電される電力を他方の回転電機MG1,MG2で消費することができるようになっている。したがって、バッテリは、第1及び第2の回転電機MG1,MG2から生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とにより電力収支のバランスをとるようにすれば、バッテリは充放電されない。
第1及び第2の回転電機MG1,MG2は、ともにMGECU270により駆動制御されている。MGECU270には、第1、第2回転電機MG1,MG2を駆動制御するために必要な信号が入力される。これらの信号は、図2に示すように、例えば、第1、第2回転電機MG1,MG2の回転子の回転速度を検出するMG1回転数センサ404,MG2回転数センサ405からの信号や、電流センサ410で検出した第1、第2回転電機MG1,MG2に印加される相電流などを含む。
上記のように構成された無段変速部200(動力分割機構210)では、エンジン100の出力が第1回転電機MG1と伝達軸212とに分配されると共に、分配されたエンジン100の出力の一部で第1回転電機MG1により発生された電気エネルギで第2回転電機MG2が回転駆動されるので、無段変速部200は電気的な無段変速機(第1変速部)として機能する。
<有段変速部>
有段変速部300は、図1に示すように、エンジン100から駆動輪DWへの動力伝達経路の一部を構成しており、第1遊星歯車装置311及び第2遊星歯車装置312を備え、機械的に複数の変速比が段階的に設定される有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置311は、シングルピニオン型の歯車式遊星機構であって、サンギヤS1、複数のピニオンギヤP1、これら複数のピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA1、及び、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。第2遊星歯車装置312も同様に、シングルピニオン型の歯車式遊星機構であって、サンギヤS2、複数のピニオンギヤP2、これら複数のピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA2、及び、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第2遊星歯車装置312には、プラネタリキャリアCA1及び第2のリングギヤR2における回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチF1が設けられている。
本実施形態における有段変速部300では、第1のサンギヤS1は第1のブレーキB1を介して変速機ケース320に選択的に連結され、第1のキャリアCA1は第2のリングギヤR2と一体的に連結されて第2のクラッチC2を介して伝達軸212に連結されると共に、第2のブレーキB2を介して変速機ケース320に選択的に連結されている。さらに、第1のリングギヤR1と第2のキャリアCA2とが一体的に連結されて出力軸304に連結されている。また、第2のサンギヤS2は第1のクラッチC1を介して伝達軸212に連結されている。ワンウェイクラッチF1は、変速機ケース320に連結されている。
以上のように構成された有段変速部300では、変速機ECU350による指令制御による解放側係合装置の解放及び係合側係合装置の係合により、例えば、クラッチツウクラッチ変速が実行されて、有段変速部300が第2変速部と表示されている図3の(係合)作動表に示されるように、複数のギヤ段(変速段)が選択的に成立され得る。図3は、第1及び第2クラッチC1及びC2、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2における係合状態または解放状態と各変速段(1st〜4th,Rev(後進段))との関係を示す作動表である。図3の作動表において、○印は「係合状態」を示し、括弧付の○印はエンジンブレーキ時の係合を示し、空白は「解放状態」を示している。また、本実施形態に係るハイブリッド車両は、図4に示すシフトレバー360の選択操作により、例えば、駐車「P(パーキング)」、後進走行「R(リバース)」、動力伝達経路遮断の中立「N(ニュートラル)」、前進走行「D(ドライブ)」、前進走行「M(マニュアル)」のいずれかを選択可能に備えている。
第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、第1のブレーキB1及び第2のブレーキB2(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられ、変速機の変速段を形成する摩擦係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本又は2本のバンドの一端が油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)によって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
<油圧制御回路>
有段変速部300の複数の変速段を選択的に成立させるための油圧制御回路500の一例を、図5を参照して説明する。油圧制御回路500は、変速機のオイルパン502に還流した作動油をオイルストレーナー503を介して吸引して圧送するための、例えば、エンジン100によって駆動される機械式オイルポンプ504及び電動機によって駆動される電気式オイルポンプ506を備えている。機械式オイルポンプ504及び電気式オイルポンプ506は、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、第1のブレーキB1及び第2のブレーキB2に所定の係合圧となる油圧を供給する係合油圧供給手段として機能する。機械式オイルポンプ504及び電気式オイルポンプ506から、それぞれ、逆止め弁508及び510を介して圧送された作動油は、リリーフ式の調圧弁512に油路514を介して供給される。そして、リニアソレノイドバルブSLTから出力される制御圧PSLTに基づいて、調圧弁512からのリリーフ量が制御され、油路514から分岐された変速制御用油路516がハイブリッド車両の走行状態に応じたライン圧PLに調圧される。調圧弁512は、機械式オイルポンプ504や電気式オイルポンプ506から発生する油圧を元圧として、変速機ECU350からの指令信号に応じた値にライン圧PLを調圧する。
油圧制御回路500は、第1及び第2のクラッチC1、C2、第1及び第2のブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータの作動を制御する4個の第1〜第4のソレノイドバルブSL1〜SL4を含んで構成される。変速制御用油路516は、第1〜第4のソレノイドバルブSL1〜SL4を介して、それぞれ、順に、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、第1のブレーキB1、第2のブレーキB2に接続されている。ここで、本実施形態における、第1〜第4のソレノイドバルブSL1〜SL4はそれぞれノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。
上記有段変速部300において、例えば、1st(前進1速段)を形成する場合には、図3の作動表から明らかなように、第1のクラッチC1及び第2のブレーキB2が係合される(第2のブレーキB2についてはエンジンブレーキ時の係合)と共に、第2のクラッチC2及び第1のブレーキB1は非係合状態にあることが必要である。この第1のクラッチC1及び第2のブレーキB2の係合状態と、第2のクラッチC2及び第1のブレーキB1の非係合状態とを得るためには、第1〜第4のソレノイドバルブSL1〜SL4のうち、第1のソレノイドバルブSL1及び第4のソレノイドバルブSL4がオン(ON)されることが必要である。
<制御系の構成>
図2に戻って、図2は、本実施形態のハイブリッド車両を制御するHVECU400に入力される信号及びそのHVECU400から出力される信号を例示している。HVECU400は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジンECU120を介してのエンジン100、MGECU270を介しての第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2に関するハイブリッド駆動制御、バッテリECU280を介してのバッテリの充放電制御及び変速機ECU350を介しての有段変速部300の変速制御等の各種制御を実行するものである。
上記HVECU400には、図2に示すように、出力軸304の回転数に対応する車速Vを検出する車速センサ401、運転者の操作によるアクセル開度(すなわちアクセルペダルの操作量)Accを検出するアクセル開度センサ402、車両の傾きを検出する傾斜角度センサ403、第1回転電機MG1の回転数を検出するMG1回転数センサ404、第2回転電機MG2の回転数を検出するMG2回転数センサ405、出力軸304の回転数を検出する出力軸回転数センサ406、図4に示すシフトレバー360のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ407、エンジン100の回転数を検出するエンジン回転数センサ408、エンジン100のスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ409、バッテリの充放電電流を検出する電流センサ410、バッテリの温度を検出するバッテリ温度センサ411、及びP(パーキング)スイッチ412などが接続されている。
HVECU400は、アクセル開度センサ402で検出されたアクセル開度Acc、車速センサ401で検出された車速Vに基づいて要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段として機能する。また、HVECU400は、車速センサ401により計測された車両の車速Vに基づいて、発進時であるか否かを判定する発進時判定手段として機能し、さらに、傾斜角度センサ403で検出された傾斜角度θに基づいて、登坂路であるか否かを判定する登坂路判定手段として機能する。エンジンECU120は、HVECU400からの指示に基づいて、要求駆動力設定手段にて設定された要求駆動力に応じて、エンジン100からの出力トルクを制御する。MGECU270も同様に、HVECU400からの指示に基づいて、要求駆動力設定手段にて設定された要求駆動力に応じて、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2からの出力トルクを制御する。さらに、変速機ECU350は、要求駆動力設定手段にて設定された要求駆動力に応じて、有段変速部300を制御し、HVECU400からの指示に基づいて、有段変速部300の第1及び第2クラッチC1、C2、第1及び第2ブレーキB1、B2を係合する係合圧を制御する。
また、上記HVECU400からは、同じく図2に示すように、エンジン100の出力を制御するエンジントルク指令信号SEがエンジンECU120へ送られ、エンジンECU120からは、例えば、エンジン100の吸気通路に備えられた電子スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、燃料噴射装置によるエンジン100の燃料供給量を制御する燃料供給量信号、及び点火装置によるエンジン100点火時期を指令する点火信号が、それぞれ、出力される。さらに、上記HVECU400からは、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の作動を指令する、MG1トルク指令信号SM1及びMG2トルク指令信号SM2がMGECU270へ送られ、MGECU270は指令に応じて第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2への供給電流を制御する。さらに、上記HVECU400からは、変速機ECU350に対し、有段変速部300の油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)の油圧アクチュエータを制御するために、油圧制御回路500に含まれる第1〜第4のソレノイドバルブSL1〜SL4を作動させるバルブ動作指令信号が、それぞれ出力される。
そして、HVECU400は、取得するセンサ信号などの各種情報に基づいてRAMやROM内の制御プログラムを実行することにより、例えば、当該RAMやROM内に格納されている図6に示す変速線図などのマップに従って有段変速部のクラッチC1、C2とブレーキB1、B2の駆動を制御するようになっている。
具体的に、HVECU400は、例えば、効率のよい走行を実現するために、図6の変速線図に示すように、出力軸304から出力することを要求される出力トルクと車速とをパラメータとして、クラッチC、ブレーキBを締結状態または解放状態にする駆動制御信号を出力して変速制御処理を実行するようになっている。ここで、図6は、車速と出力トルクとをパラメータとして変速切換制御を実行する際に用いる変速線SHd、SHuを示す変速線図の一例を示している。さらに、図6には、エンジン100の回転動力を走行トルクにするエンジン走行と、第1及び第2の回転電機MG1,MG2の回転動力を走行トルクにするモータ走行とを切り換えるために、エンジン走行領域とモータ走行領域との動力境界線PTを示す動力源切換線図の一例も図示されている。
詳細には、HVECU400は、図6中の変速線SHd、SHuを横切るタイミングに変速段切換制御処理を実行するようになっている。このとき、HVECU400は、加速中に、低速側から高速側に向かってアップシフト変速線SHuを横切るタイミングに、例えば、2速から3速にアップシフトさせる変速段切換制御処理を実行する。また、ECU11は、減速中に、高速側から低速側に向かってダウンシフト変速線SHdを横切るタイミングに、例えば、4速から3速にダウンシフトさせる変速段切換制御処理を実行する。
なお、上記HVECU400は、バッテリを管理するバッテリECU280に通信可能に接続され、バッテリECU280には、バッテリを管理するのに必要な信号、例えば、バッテリの端子間電圧、電流センサ410によるバッテリの充放電電流、及び、バッテリ温度センサ411によるバッテリの温度などが入力されている。これらのバッテリの状態に関するデータは、必要に応じて直接に又は通信によりHVECU400に送信される。なお、バッテリECU280では、上記充放電電流の積算値に基づいて充電量(SOC)が演算される。
<フローチャート>
上述した構成になる本発明の実施形態に係る制御装置であるHVECU400で実行されるプログラムの制御ルーチンにつき、図7を参照して以下説明する。
本発明の実施形態に係るハイブリッド車両では、通常の前進走行モードにおいて、アクセル開度Accと車速Vと傾斜角度θとに基づいて、駆動輪DWに出力すべき駆動力源による出力トルク(駆動力源トルクとも称す)、及び変速機のクラッチC、ブレーキBの係合圧がそれぞれ決定される。そして、この駆動力源トルクが得られるように、エンジン100の駆動制御がエンジンECU120により行われ、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2の駆動制御がMGECU270により行われ、及び有段変速部300の変速段の切替制御が変速機ECU350により行われる。また、クラッチC、ブレーキBに所定の係合圧が供給されるように、調圧弁512に対する調圧制御が変速機ECU350により行われる。これら駆動制御、切替制御、調圧制御は、HVECU400からの指示に基づいてそれぞれ行われる。なお、傾斜角度θは、水平方向に対する車両の前後方向の傾きを表し、水平を±0度として傾斜角度センサ403によって計測される。
そして、HVECU400では、この通常の前進走行モードにおいて、図7のフローチャートに示すように、登坂路発進時における車両の状態に基づく制御が実行される。
先ず、HVECU400は、車速センサ401により計測された車両の車速V、アクセル開度センサ402により計測されたアクセル開度Accをそれぞれ取得する。そして、HVECU400は、取得した車両の車速V、アクセル開度Accに基づいて、要求駆動力を設定する。
ステップS11において、HVECU400は、検出したシフトポジション及び取得した車両の車速Vに基づいて、発進時であるか否かを判定する。具体的には例えば、検出したシフトポジションが前進走行用のドライブポジション(Dポジション)である場合、且つ、取得した車両の車速が0km/h以上微速(例えば5km/h)以下の場合、HVECU400は、前進走行の発進時と判定し、ステップS12に進む。HVECU400は、発進時でないと判定した場合、処理を終了する。
ステップS12において、HVECU400は、傾斜角度センサ403により検出された傾斜角度θを取得し、ステップS13に進む。
ステップS13において、HVECU400は、検出された傾斜角度θに基づいて、道路が登坂路であるか否かを判定する。具体的には例えば、傾斜角度θが所定値(例えば+5度)以上の角度の場合には登坂路であると判定され、それ以外の場合には平坦路である(或いは登坂路でない)と判定される。なお、HVECU400は、傾斜角度θが第1所定値(例えば−5度)以上第2所定値(例えば+5度)未満の角度の場合、平坦路であると判定してもよい。HVECU400は、登坂路であると判定すると、ステップS14に進む。一方、HVECU400は、平坦路であると判定すると、ステップS15に進む。
ステップS14において、HVECU400は、要求駆動力に応じて駆動力源トルクが決定される図8に示すようなマップや、車両の傾斜角度θに応じて駆動力源トルクの低減量が決定される図9に示すようなマップを参照して、登坂路用駆動力源トルクを設定する。加えて、HVECU400は、要求駆動力に応じてクラッチC、ブレーキBの係合圧が決定される図10に示すようなマップを参照して、設定された要求駆動力に基づき登坂路用係合圧を設定する。
図8は、要求駆動力−駆動力源トルクマップの内容を示すグラフであり、図9は、車両の傾斜角度−駆動力源トルク低減量マップの内容を示すグラフである。本実施形態では、HVECU400は、図8に示すように、車両の登坂路における発進時において、要求駆動力が、所定値a未満の領域では、駆動力源トルクを平坦路における発進のときと等しく設定し、所定値a以上の領域では、駆動力源トルクを平坦路における発進のときの駆動力源トルクに比べて低減させて設定する。要求駆動力が所定値aより大きい値b以上の場合には、図8に示すように、平坦路の発進時の場合と登坂路の発進時の場合との駆動力源トルクの差が、b未満の場合と比較して大きいものとなっている。この「所定値a」は、例えば、オイルパン502に貯留された作動油に揺れが生じて、機械式オイルポンプ504や電気式オイルポンプ506がオイルストレーナー503を介して作動油を安定して吸い上げることができない可能性があるか否かを参照して決定されうる。この構成により、登坂路の発進時において、車両を急加速しようとしても、加速が緩やかとなり、加速によって作動油の油面が大きく傾くことを抑制することが可能となる。よって、登坂路で発進して加速する場合において、オイルストレーナー503から作動油を有効に吸い上げて、クラッチC、ブレーキBに充分な油圧を供給することができるので、クラッチC、ブレーキBをより確実に係合させることが可能となり、クラッチC、ブレーキBに生じる滑りを抑制することが可能となる。
また、本実施形態では、図9に示すように、車両の傾斜角度θに対する駆動力源トルクの低減量が、要求駆動力の大きさに応じて設定されうる。図9では、要求駆動力が大きい場合(例えばbの場合)には、車両の傾斜角度θに対する駆動力源トルクの低減量を、要求駆動力が小さい場合(例えばaの場合)よりも大きく設定している。この構成により、登坂路の勾配が急な場合、且つ発進時の場合において、アクセル操作量が大きくなっても、加速が緩やかとなり、加速によって作動油の油面が大きく傾くことを抑制することが可能となる。エンジンECU120、MGECU270、及び変速機ECU350は、設定された登坂路用駆動力源トルクに合わせるように、駆動力源トルクを制御する。
図10は、要求駆動力−係合圧マップの内容を示すグラフである。本実施形態では、HVECU400は、図10に示すように、平坦路又は登坂路における発進にかかわらず、要求駆動力に対応させたクラッチC、ブレーキBの係合圧を等しく設定して係合圧を制御する。
一般に、係合圧は、駆動力源トルクに応じて決定され、駆動力源トルクが高いと、係合圧はそれに伴って高いものとなる。例えば、上述したように、要求駆動力が所定値a以上の領域において駆動力源トルクを低減させた場合、図10に示す一点鎖線のように、係合圧もそれに伴って低くなる。本実施形態では、登坂路における発進時において、要求駆動力が所定値a以上の領域では、駆動力源トルクを平坦路における発進のときよりも低減させて設定するが、係合圧については低減させないように設定する。本実施形態では、HVECU400は、要求駆動力が所定値a以上の場合に、図10に示すように、登坂路の発進時の場合と平坦路の発進時の場合とを等しい値になるように制御する。このように制御することで、要求駆動力が所定値a以上の場合には、登坂路の発進時における駆動力源トルクに対する係合圧を、平坦路の発進時における駆動力源トルクに対する係合圧よりも高くすることが可能となる。よって、登坂路の発進時の場合に、クラッチC、ブレーキBをより確実に係合させることが可能となり、クラッチC、ブレーキBに生じる滑りを抑制することが可能となる。変速機ECU350は、設定された登坂路用係合圧に合わせるように、クラッチC、ブレーキBの係合圧を制御する。この制御は、油圧制御回路500に供給する作動油のライン圧を調圧弁512によって調圧することで実行される。
図7に戻り、ステップS15において、HVECU400は、ステップS14と同様に、要求駆動力に応じて駆動力源トルクが決定される図8に示すようなマップを参照して、平坦路用駆動力源トルクを設定する。加えて、HVECU400は、要求駆動力に応じてクラッチC、ブレーキBの係合圧が決定される図10に示すようなマップを参照して、設定された要求駆動力に基づき平坦路用係合圧を設定する。駆動力源トルク及びクラッチC、ブレーキBの係合圧を制御する詳細については、上述のステップS14で説明した内容と同様であるので省略する。
登坂路では、車両のオイルパン502に貯留された作動油が、オイルパン502の底面に対して傾くことになるが、この状態で発進して急加速を行うと、傾いていた作動油の油面がさらに傾くことになり、オイルストレーナー503から作動油をうまく吸い上げることが出来ず、クラッチC、ブレーキBに作動油を充分に供給出来ずに、クラッチC、ブレーキBに滑りが発生するおそれがあった。本実施形態では、上述したフローを実行することで、登坂路の発進時であっても、車両の加速によって作動油の油面が大きく傾くことを抑制し、クラッチC、ブレーキBに生じる滑りを抑制することが可能となる。なお、上述した3つのマップは、予め作成され、HVECU400のRAMやROMに記憶されている。
なお、上述したのはあくまでも実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、本発明に係る車両は、ハイブリッド車両に限られず、係合圧の供給によって変速段が形成される変速機を用いた様々な種類の車両に本発明を適用することが可能である。
加えて、上述した実施形態では、登坂路における前進走行の場合について説明したが、登坂路における後進走行の場合や、降坂路における前進・後進走行の場合についても、車両の加速によるオイルパン502の油面の傾きを抑制し、且つ、クラッチC、ブレーキBの滑りを抑制するという本発明の効果を奏するものである。降坂路における前進走行の場合、図7のステップS13において、HVECU400は、傾斜角度θが所定値(例えば−5度)未満の角度の場合、降坂路であると判定しステップS14へ進む。
さらに、本発明では、クラッチC、ブレーキBの係合圧を供給するソレノイドバルブは、調圧が可能なリニアソレノイドバルブであってもよい。この場合、変速機ECU350は、当該リニアソレノイドバルブによる調圧により、クラッチC、ブレーキBにそれぞれ供給される係合圧を制御してもよい。
100 エンジン
120 エンジンECU
200 無段変速部
270 MGECU
300 有段変速部
350 変速機ECU
400 HVECU(制御装置)
401 車速センサ
402 アクセル開度センサ
403 傾斜角度センサ
B1、B2 ブレーキ
C1、C2 クラッチ
MG1 第1回転電機
MG2 第2回転電機
SL1〜SL4 第1〜第4のソレノイドバルブ

Claims (1)

  1. 駆動力源、
    前記駆動力源に接続された変速機、及び
    前記変速機の変速段を形成する摩擦係合要素に所定の係合圧となる油圧を供給する係合油圧供給手段を備える車両の制御装置であって、
    前記制御装置は、前記車両の坂路における発進時において、運転者の操作によるアクセル開度に基づき設定される要求駆動力が、所定値未満の領域では、前記駆動力源による出力トルクを平坦路における発進のときと等しく設定し、前記所定値以上の領域では、前記駆動力源による出力トルクを前記平坦路における発進のときの出力トルクに比べて低減させて設定する一方、前記係合圧に関しては、前記平坦路又は前記坂路における発進にかかわらず、前記要求駆動力に対応させた前記係合圧を等しく設定して係合圧を制御するように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
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