JP6686485B2 - 吸収式ヒートポンプ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収式ヒートポンプ装置に関する。
従来、冷媒蒸発時の蒸気を吸収可能な吸収液を用いた吸収式ヒートポンプ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、再生器、凝縮器、蒸発器および吸収器を備えた吸収式冷温水機(吸収式ヒートポンプ装置)が開示されている。この特許文献1に記載の吸収式冷温水機では、吸収器の内部において、各々が直管からなる伝熱管群が所定間隔を隔てて互いに平行(水平)に配置されるとともに、各伝熱管の上方に液溜まり部を有する液散布装置が配置されている。そして、液散布装置から伝熱管の表面(外表面)に滴下された吸収液に、蒸発器から供給された冷媒蒸気が吸収されて吸収液が希釈される。この際、伝熱管の表面を滴り落ちる吸収液は、冷媒蒸気が吸収液に吸収される際に吸収熱を発生する。そして、この吸収熱は、伝熱管の内部を流通する冷却水側に奪われるように構成されている。
特開2000−179989号公報
ここで、臭化リチウム(LiBr)水溶液などの吸収液は一般的に表面張力が大きいので、吸収液の伝熱面に対する濡れ性は低い。したがって、上記特許文献1に記載された吸収器においては、液散布装置から伝熱管の表面に滴下された吸収液は、伝熱管の表面に沿って拡張するよりもむしろ液滴の状態のまま伝熱管の表面を流下する傾向にあると考えられる。この場合、吸収液と伝熱管の表面との接触面積(有効伝熱面積)が十分でないことに加えて、液滴状の吸収液が滞留せずに比較的速い速度で流下して伝熱管群から離脱することに起因して、伝熱管群の冷却性能を十分に得ることができないという不都合がある。また、車両などに搭載した場合に、振動などに起因して液散布装置から伝熱管への滴下が適切に行われない場合にも、伝熱管群の冷却性能が十分に得られなくなる。このため、所定の冷却性能を確保するために伝熱管の長さや本数を増やすなどして吸収器をより大型化する必要があり、その結果、吸収式ヒートポンプ装置が大型化するという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、熱交換器の性能を維持しつつ、装置の小型化を図ることが可能な吸収式ヒートポンプ装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における吸収式ヒートポンプ装置は、吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、内部に熱交換流体が流通されるとともに、吸収液または冷媒からなる溶液と熱交換流体との熱交換を行う伝熱面を含む熱交換器と、熱交換器に設けられ、熱交換器の伝熱面に溶液を供給する溶液供給部と、を備え、熱交換器は、熱交換流体が流通する内部通路を有して平板状に形成されているとともに、溶液供給部は、熱交換器の内部に設けられており、溶液供給部は、熱交換器の伝熱面に開口する溶液供給孔を含む
この発明の一の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記のように、吸収液または冷媒からなる溶液と熱交換流体との熱交換を行う伝熱面を含む熱交換器と、熱交換器に設けられ、熱交換器の伝熱面に溶液を供給する溶液供給部とを備える。これにより、伝熱面の配置方向(傾斜方向)に関係なく、熱交換器自体に設けられた溶液供給部を介して熱交換器の伝熱面に溶液を確実に供給することができるので、溶液の伝熱面への濡れ面積(熱交換流体との有効な熱交換領域)を十分に確保することができる。すなわち、溶液を十分な濡れ面積を有して熱交換流体と熱交換させることができるので、吸収器における吸収液の冷却性能、または、蒸発器における冷媒の蒸発性能を向上させることができる。換言すれば、より小型化された熱交換器を用いて従来と同等の熱交換量を得ることができる。この結果、熱交換器の性能を維持しつつ、吸収式ヒートポンプ装置の小型化を図ることができる。
また、溶液供給部が熱交換器の内部に設けられる分、溶液供給部が熱交換器の外部に突出しないので、平板状に形成された熱交換器を用いてコンパクトな吸収器または蒸発器を容易に構成することができる。また、平板状の熱交換器の伝熱面に開口する溶液供給孔を介して吸収液または冷媒からなる溶液を、熱交換器の伝熱面に確実に供給することができる。
上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、溶液供給孔は、熱交換器の伝熱面に複数設けられており、複数の溶液供給孔の各々は、溶液供給孔から吐出される溶液が表面張力により伝熱面から突出するような開口径に設定されている。
このように構成すれば、各々の溶液供給孔において、溶液の表面張力を利用して熱交換器の伝熱面から溶液の表面を曲面状に突出させた状態で、溶液を一時的に保持することができる。これにより、複数の溶液供給孔の各々の出口に保持された溶液を、たとえば、ブラシ状の塗布部材などを用いて熱交換器の伝熱面全体に万遍なく塗布することができる。
上記溶液供給孔が熱交換器の伝熱面に複数設けられる構成において、好ましくは、熱交換器の伝熱面に沿って移動するとともに溶液供給部の溶液供給孔上を通過する際に伝熱面から突出する溶液供給孔内の溶液に接触することによって、毛細管現象により吸い出された溶液を伝熱面に沿って塗布するように構成された塗布部材をさらに備える。
このように構成すれば、伝熱面に設けられた複数の溶液供給孔の各々から溶液の表面張力により凸状(曲面状)に突出する溶液を、毛細管現象を利用して塗布部材側に容易に含浸させることができる。そして、溶液が含浸された状態となった塗布部材の移動を利用して、溶液を熱交換部の伝熱面に万遍なく薄膜状に塗布することができるので、溶液の伝熱面への濡れ面積(熱交換流体との有効な熱交換領域)を確実に確保することができる。また、このような効果は、伝熱面の配置方向(傾斜方向)に関係なく得られるので、本発明の吸収式ヒートポンプ装置は、車両(自動車)などへの搭載にも非常に適する。
この場合、好ましくは、複数の溶液供給孔は、塗布部材の移動経路上の熱交換器の伝熱面に設けられている。
このように構成すれば、移動経路に沿って移動する塗布部材が複数の溶液供給孔に対応した位置を通過した際に、溶液供給孔から突出する溶液を塗布部材に確実に接触させて毛細管現象により塗布部材に含浸させることができる。
この発明の第2の局面における吸収式ヒートポンプ装置は吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、内部に熱交換流体が流通されるとともに、吸収液または冷媒からなる溶液と熱交換流体との熱交換を行う伝熱面を含む熱交換器と、熱交換器に設けられ、熱交換器の伝熱面に溶液を供給する溶液供給部と、を備え、熱交換器は、伝熱面を対向させた状態で互いに所定の間隔を隔てて横方向に複数配置されており、溶液供給部は、各々の熱交換器が互いに隣接する一方側の伝熱面および他方側の伝熱面の両方に溶液を供給するように構成されている。
この発明の第2の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記のように、熱交換器を横方向に複数配置して吸収器または蒸発器を構成する場合であっても、吸収液または冷媒からなる溶液を各々の熱交換器の両面(一方側および他方側の両方の伝熱面)から吐出(流出)させることができる。したがって、小型化された吸収器または蒸発器においても、溶液(冷媒蒸気が吸収される吸収液、または、冷媒)と熱交換流体との有効な熱交換領域を効率よく確保することができる。
なお、上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、以下の構成も考えられる。
(付記項1)
すなわち、上記塗布部材をさらに備える吸収式ヒートポンプ装置において、塗布部材は、溶液供給部の溶液供給孔から溶液が熱交換器の伝熱面に沿って流下する方向と反対方向に移動して熱交換器の伝熱面に供給された溶液を伝熱面に沿って塗布するように構成されている。
(付記項2)
また、上記複数の溶液供給孔が熱交換器の伝熱面に設けられている吸収式ヒートポンプ装置において、複数の溶液供給孔は、塗布部材の移動経路上の熱交換器の伝熱面に分散して配置されている。
(付記項3)
また、上記塗布部材をさらに備える吸収式ヒートポンプ装置において、熱交換器は、円盤状に形成されており、円盤状の熱交換器の中心を回転中心として塗布部材が伝熱面に沿って回転移動されるように構成されており、複数の溶液供給孔は、塗布部材の回転半径方向に沿って熱交換器の伝熱面に開口するように配置されている。
(付記項4)
また、上記熱交換器が互いに所定の間隔を隔てて横方向に複数配置されている吸収式ヒートポンプ装置において、複数の熱交換器の各々に設けられた溶液供給部に対して共通の溶液供給路が接続されることにより、溶液が共通の溶液供給路を介して各々の熱交換器の溶液供給部に分配されるように構成されている。
本発明の第1実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の全体構成を示した図である。 本発明の第1実施形態における吸収器の概略的な構造を示した斜視図である。 本発明の第1実施形態における吸収器の内部構造を示した斜視図である。 本発明の第1実施形態における吸収器内の濃液供給ポートの構造を示した断面図である。 本発明の第1実施形態における吸収器内の濃液供給ポートの構造を示した断面図である。 本発明の第1実施形態の変形例における吸収器の内部構造を示した斜視図である。 本発明の第2実施形態における蒸発器の内部構造を示した斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。
(吸収式ヒートポンプ装置の構成)
本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100では、冷媒としての水と、吸収液としての臭化リチウム(LiBr)水溶液とが用いられており、エンジン90を備えた乗用車およびバスなどの車両(図示せず)に搭載されるように構成されている。また、吸収式ヒートポンプ装置100では、エンジン90から排出される高温の排気ガスの熱を利用(回収)して、吸収液(希液)が加熱されるように構成されている。
吸収式ヒートポンプ装置100は、図1に示すように、再生器10(二点鎖線枠内)と、凝縮器20と、蒸発器30と、吸収器40とを備える。再生器10は、吸収液から冷媒蒸気(高温水蒸気)を分離する役割を有する。凝縮器20は、冷房運転時に、冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有する。蒸発器30は、冷房運転時に、凝縮水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させる役割を有する。吸収器40は、濃液状態で供給された吸収液に蒸発器30で気化した冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収させる役割を有する。
再生器10は、吸収液を加熱する加熱部11と、加熱された吸収液から冷媒蒸気を分離する気液分離部12とを含む。加熱部11では、エンジン90からの排気管91を流通する高温の排気ガスと吸収液とが熱交換される。排気管91は、加熱部11を経由する排熱供給路91aと、迂回路91bとを含み、排熱供給路91aには弁92が設けられている。冷房運転時および暖房運転時に弁92が開かれることによって、エンジン90からの排気ガスの一部が排熱供給路91aを経由して加熱部11に流通されるように構成されている。
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、吸収液循環路51aおよび51bからなる循環通路51と、冷媒蒸気通路52a、52bおよび53と、冷媒通路54と、吸収液通路55および56と、冷媒供給路57および58とを備える。循環通路51は、吸収液を加熱部11と気液分離部12との間で循環させる役割を有しており、吸収液循環路51aにポンプ71が設けられている。冷媒蒸気通路52aは、冷房運転時に気液分離部12からの冷媒蒸気を凝縮器20に供給する役割を有する。冷媒蒸気通路52bは、暖房運転時に気液分離部12で分離された冷媒蒸気を蒸発器30(この場合は凝縮器の役割を果たす)に流入させる役割を有する。冷媒蒸気通路52bと冷媒蒸気通路53との接続部分には、冷房運転時に冷媒蒸気通路52bを閉じるか、暖房運転時に冷媒蒸気通路52bから蒸発器30への通路を開くかが切替可能な三方弁64が設けられている。また、冷媒蒸気通路52bには、弁65が設けられている。弁65は、暖房運転時に、気液分離部12により分離された冷媒蒸気が凝縮器20に流入するのを遮断する役割を有する。また、冷媒通路54には、弁66が設けられている。
吸収液通路55は、弁61の開閉動作に応じて吸収器40に吸収液(濃液)を供給する役割を有する。吸収液通路56は、ポンプ72と弁62との連動時に吸収器40において冷媒蒸気が吸収された吸収液(希液)を循環通路51に供給する役割を有する。冷媒供給路57は、暖房運転時にポンプ73と弁63とが連動することによって、蒸発器30(この場合は凝縮器の役割を果たす)に貯留された冷媒(凝縮水)を循環通路51に供給する役割を有する。冷媒供給路58は、結晶化防止を目的として弁67の開閉動作に応じて凝縮器20に貯留された凝縮水を直接的に吸収器40に供給する役割を有する。熱交換器59においては、吸収液通路55および56を流通する吸収液同士の熱交換が行われる。
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、冷房運転時に駆動される冷却水回路80を備える。冷却水回路80は、凝縮器20における冷媒蒸気の冷却と、吸収器40における冷媒の吸収液(濃液)への吸収時に発生する吸収熱の除去とに用いられる。詳細には、冷却水回路80は、冷却水(熱交換流体の一例)が流通する冷却水循環路81と、ポンプ82と、凝縮器20に配置された熱交換部83と、吸収器40に配置された熱交換部43(図3参照)と、放熱部84とを含む。放熱部84では、熱交換部84aを流通する冷却水が送風機84bにより送風された空気(外気)によって冷却(放熱)される。
蒸発器30は、図1に示すように、内部を絶対圧力で1kPa以下の真空状態に保持する容器31と、容器31内部に設置された熱交換部33および噴射器34とを含む。蒸発器30の外部には、冷媒貯留部31aと噴射器34とを接続する通路35にポンプ36が設けられている。これにより、冷媒貯留部31aの冷媒(水)がポンプ36により汲み上げられて噴射器34から熱交換部33に向けて噴霧される。また、熱交換部33は、容器31の側壁部を貫通して循環水回路85および熱交換部86に接続される。これにより、冷房運転時には、循環水回路85から流入した空調用の循環水は、熱交換部33内を流通する際に熱交換部33に噴霧された冷媒が冷媒蒸気(低温水蒸気)になる際の蒸発潜熱により冷却されて循環水回路85に戻される。熱交換部86では、送風機88からの空気が熱交換器87を流通する循環水によって冷却されるとともに、冷風が車内に吹き出される。
(吸収器の構造)
吸収器40は、図2および図3に示すように、内部を絶対圧力で1kPa以下の真空状態に保持する容器41と、各々が平板状(円盤状)の15個の熱交換器42を一体的に含む熱交換部43と、隣接する熱交換器42間の領域に配置された後述する回転体44と、回転体44を矢印R方向に回転させるモータ95とを備える。また、容器41は、吸収液(濃液に冷媒が吸収された希液)が主に貯留される吸収液貯留部41cを有する。なお、図2および図3では、熱交換部43をX軸方向における途中の部分でカットしてその内部構造を示しているが、実際には、容器41とともに矢印X2方向に延びている。
熱交換部43は、15個の熱交換器42がX軸方向に沿って等ピッチ間隔で並んでいる。この際、個々の熱交換器42は、各々が有する伝熱面42bを互いに対向させた状態で所定の間隔を隔てて横方向に配置されている、また、個々の熱交換器42は、冷却水が流通する内部通路42e(図3参照)を有して平板状(円盤状)に形成されている。そして、熱交換部43は、Z2側の底部に配置された冷却水導入路43aとZ1側の頂部に配置された冷却水導出路43bとによって個々の熱交換器42が互いに接続されている。また、個々の熱交換器42は、回転体44を回転させる回転軸46が中心部を貫通する貫通部42aを有する。また、熱交換器42は、貫通部42aの部分でも内部通路42eが内壁部42d(図3参照)により密閉されている。
また、冷却水導入路43aおよび冷却水導出路43bは、容器41の側壁部41bを貫通して冷却水循環路81(図1参照)に接続されている。これにより、冷却水導入路43aから流入した冷却水は、各熱交換器42に分配され、熱交換器42内をZ2側(下側)からZ1側(上側)に流れて冷却水導出路43bに集まり冷却水循環路81に戻される。また、吸収器40には、吸収液(濃液)を供給する濃液供給路55aと、吸収液貯留部41cの吸収液(吸収反応後の希液)を排出する希液排出路56aとが設けられている。
ここで、第1実施形態では、濃液供給路55aは、容器41のX1側の内壁面41aから矢印X2方向に直線状に延びている。そして、濃液供給路55aと個々の熱交換器42との接続部分に、濃液供給路55aから矢印Y2方向に水平に分岐する濃液供給ポート45(溶液供給部の一例)がそれぞれ設けられている。各々の濃液供給ポート45は、熱交換器42の内部において、U字状の内壁部42d(図3参照)により内部通路42eから隔絶されたポート部屋45aを有する。したがって、濃液供給ポート45(ポート部屋45a)は、熱交換器42自体に一体的に形成されている。また、ポート部屋45aは、熱交換器42の縁部から矢印Y2方向に沿って熱交換器42の内部に向かって延びている。この熱交換器42の内部に設けられた濃液供給ポート45(ポート部屋45a)は、熱交換器42の伝熱面42bに吸収液(濃液)を供給する役割を有する。
また、濃液供給ポート45(ポート部屋45a)に対応する熱交換器42の伝熱面42bの部分には、複数(熱交換器42の片側の伝熱面42bに4個×3列=12個)の孔部45b(溶液供給孔の一例)が形成されている。個々の孔部45bは、後述するブラシ部材47(ブラシ49)の移動経路Q(破線内側領域)上の伝熱面42bに分散して配置されている。また、各列の孔部45b(4個)は、ブラシ49の回転半径方向に沿って直線状(Y軸方向)に配列された状態で伝熱面42bに開口している。また、孔部45bは、図4に示すように、各々の熱交換器42の一方側(X1側)の伝熱面42bおよび他方側(X2側)の伝熱面42bの両方に設けられている。したがって、孔部45bは、1つの熱交換器42あたり24個設けられており、片側12個ずつの孔部45bを介して熱交換器42の両方の伝熱面42bに吸収液(濃液)が供給されるように構成されている。
また、複数の熱交換器42の各々に設けられた濃液供給ポート45に対して共通の(1本の)濃液供給路55aが接続されている。これにより、吸収液(濃液)が共通の濃液供給路55aを介して各々の濃液供給ポート45(ポート部屋45a)に分配されるとともに、各々の濃液供給ポート45(ポート部屋45a)を介して、対応する熱交換器42の伝熱面42bに吸収液(濃液)が供給されるように構成されている。
また、第1実施形態では、図4に示すように、複数の孔部45bの各々は、孔部45bから吐出される濃液が表面張力により伝熱面42bから突出するような開口径Dに設定されている。これにより、濃液の表面張力を利用して、各々の孔部45bから吸収液(濃液)が熱交換器42の伝熱面42bに均等に吐出(流出)するように構成されている。
また、図2および図3に示すように、容器41の側壁部41bには、モータ95(破線で示す)を収容するハウジング41dが取り付けられている。なお、ハウジング41d内も真空状態に保たれており、モータ95が側壁部41bに取り付けられている。また、モータ95には、回転軸46(破線で示す)が接続されており、回転軸46が各熱交換器42の貫通部42aを介してX1側からX2側に延びている。なお、回転軸46の端部46a(図1参照)は、最もX2側の熱交換器42の貫通部42aに対して回転可能に支持されている。また、回転軸46が側壁部41bを貫通する部分には、封止材96が回転軸46に対して摺動可能に嵌め込まれている。
また、回転体44は、回転軸46まわりに一対のブラシ部材47を有しており、各々が互いに180°間隔で回転軸46に取り付けられている。ブラシ部材47は、回転軸46から半径外側方向に延びる腕部48と、腕部48に対して熱交換器42の伝熱面42bに向かって矢印X1方向および矢印X2方向に延びるように固定された複数本のブラシ49(塗布部材の一例)とを有する。したがって、冷房運転時においては、気液分離部12(図1参照)から供給された吸収液(濃液)が濃液供給ポート45を介して個々の熱交換器42の伝熱面42bに供給された状態で、モータ95の駆動とともに回転体44を構成する各々のブラシ部材47が伝熱面42bに沿って軸線150まわりに矢印R方向に回転移動されるように構成されている。
また、第1実施形態では、図5に示すように、ブラシ49が伝熱面42bに沿って濃液供給ポート45の孔部45bから矢印Z2方向(吸収液(濃液)が熱交換器42の伝熱面42bに沿って流下する方向)と反対の矢印Z1方向(上方向)に移動しながら孔部45b上を通過する際に、ブラシ49の毛先が伝熱面42bから突出する孔部45b内の濃液(図4参照)に接触するように構成されている。そして、ブラシ49が濃液に接触することによって、濃液が毛細管現象によりブラシ49に吸い出されるように構成されている。すなわち、伝熱面42bの孔部45bから表面張力により凸形状を有して突出する濃液(図4参照)が、毛細管現象を利用してブラシ49に容易に含浸されるとともに、ブラシ49に含浸された濃液が矢印R方向(図3参照)に沿って伝熱面42bに薄膜状に塗布されるように構成されている。これにより、伝熱面42bのうち孔部45bが設けられた領域よりも上方の伝熱面42bの領域に濃液が確実に塗布されるようになる。
なお、伝熱面42bに沿って矢印R方向に回転移動される際に、伝熱面42bに残留する冷却水との熱交換済みの吸収液(冷媒が吸収されて希釈された希液)がブラシ49により伝熱面42bから除去される。また、熱交換済みの希液が除去された伝熱面42bに、ブラシ49に供給された濃液(冷媒の吸収量が少ない吸収液)が新たに塗布される。なお、塗布された濃液に冷媒蒸気が吸収される際の吸収熱は、熱交換器42を介して冷却水に奪われる。したがって、塗布された吸収液の温度が低温に保たれるので、塗布された吸収液への更なる冷媒蒸気の吸収が促進される。吸収液は、希液となってブラシ部材47により伝熱面42bから除去されて吸収液貯留部41cに落下する。
また、希液排出路56aは、内壁面41aから吸収液貯留部41c内を矢印X2方向に直線状に延びている。そして、濃液供給路55aおよび希液排出路56aは、側壁部41bを貫通して吸収液通路55および56(図1参照)にそれぞれ接続されている。以上の構成によって、吸収式ヒートポンプ装置100は、以下のように動作される。
(冷房運転時の動作)
冷房運転時には、図1に示すように、弁61および62を閉じた状態でポンプ71が始動されて吸収液を循環通路51に矢印P方向に循環させる。加熱部11により昇温されて気液分離部12で分離された冷媒蒸気が所定温度に達した時点で弁61および62が開かれてポンプ72が始動される。これにより、気液分離部12に貯留されたLiBr濃液が吸収液通路55および56にも矢印Q方向に流通される。また、三方弁64が気液分離部12と凝縮器20とを連通する側に切り替えられ、凝縮器20で凝縮された冷媒蒸気が冷媒蒸気通路52を介して蒸発器30に流入されて、熱交換部86により車内空気が冷却される。熱交換部33で蒸発した冷媒蒸気は、冷媒蒸気通路53を流通して吸収器40に吸引される。
吸収器40では、吸収液通路55、濃液供給路55aおよび濃液供給ポート45を経由して熱交換器42の伝熱面42bに吸収液(濃液)が供給されるとともに、回転移動するブラシ部材47(複数本のブラシ49)によって濃液が伝熱面42bに塗布される。そして、伝熱面42bにおいて吸収液(濃液)に冷媒蒸気が吸収されて希液となり下方に流下して吸収液貯留部41cに貯留される。吸収液貯留部41cに貯留された希液は、希液排出路56aおよび吸収液通路55を流通して循環通路51に戻される。
(暖房運転時の動作)
暖房運転時には、弁61および62は常に閉じられており吸収器40は使用されない。三方弁64が気液分離部12と蒸発器30とを連通する側に切り替えられ、かつ、弁65および66が閉じられる。運転開始直後に循環通路51を循環させて吸収液の昇温が行われ、気液分離部12で分離された高温水蒸気が蒸発器30(凝縮器の役割になる)に流入されて熱交換部86を介して車内空気が暖められる。蒸発器30で熱交換された凝縮水は、ポンプ73と弁63との連動により冷媒供給路57を介して循環通路51に還流される。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、冷媒蒸気が吸収される吸収液(濃液)と冷却水との熱交換を行う伝熱面42bを含む熱交換器42と、熱交換器42に設けられ、熱交換器42の伝熱面42bに溶液を供給する濃液供給ポート45とを備える。これにより、伝熱面42bの配置方向(傾斜方向)に関係なく、熱交換器42自体に設けられた濃液供給ポート45を介して熱交換器42の伝熱面42bに溶液を確実に供給することができるので、吸収液(濃液)の伝熱面42bへの濡れ面積(冷却水との有効な熱交換領域)を十分に確保することができる。すなわち、吸収液(濃液)を十分な濡れ面積を有して冷却水と熱交換させることができるので、吸収器40における吸収液の冷却性能を向上させることができる。換言すれば、より小型化された熱交換器42を用いて従来と同等の熱交換量を得ることができる。この結果、熱交換器42の性能を維持しつつ、吸収式ヒートポンプ装置100の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、熱交換器42を冷却水が流通する内部通路42eを有して平板状(円盤状)に形成するとともに、熱交換器42の内部に設けられた濃液供給ポート45は、伝熱面42bに開口する孔部45bを有する。これにより、濃液供給ポート45が熱交換器42の内部に設けられる分、濃液供給ポート45が熱交換器42の外部に突出しないので、円盤状に形成された熱交換器42を用いてコンパクトな吸収器40を容易に構成することができる。また、円盤状の熱交換器42の伝熱面42bに開口する孔部45bを介して吸収液(濃液)を、熱交換器42の伝熱面42bに確実に供給することができる。
また、第1実施形態では、複数の孔部45bの各々を、孔部45bから吐出される吸収液(濃液)が表面張力により伝熱面42bから突出するような開口径Dに設定する。これにより、各々の孔部45bにおいて、濃液の表面張力を利用して熱交換器42の伝熱面42bから濃液の表面を曲面状に突出させた状態で、濃液を一時的に保持することができる。したがって、各々の孔部45bの出口に保持された濃液を、ブラシ49を用いて伝熱面42b全体に万遍なく塗布することができる。
また、第1実施形態では、伝熱面42bに沿って移動するとともに濃液供給ポート45の孔部45b上を通過する際に伝熱面42bから突出する孔部45b内の濃液に接触することによって、毛細管現象により吸い出された濃液を伝熱面42bに沿って塗布するブラシ49を備える。これにより、伝熱面42bに設けられた複数の孔部45bの各々から表面張力により曲面状に突出する濃液を、毛細管現象を利用してブラシ49に容易に含浸させることができる。そして、濃液が含浸された状態となったブラシ49の移動を利用して、濃液を熱交換器42の伝熱面42bに万遍なく薄膜状に塗布することができるので、濃液の伝熱面42bへの濡れ面積(冷却水との有効な熱交換領域)を確実に確保することができる。このような効果は、伝熱面42bの配置方向(傾斜方向)に関係なく得られるので、吸収式ヒートポンプ装置100は、車両(自動車)などへの搭載にも非常に適する。
また、第1実施形態では、複数の孔部45bを、ブラシ49の移動経路Q上の熱交換器42の伝熱面42bに設ける。これにより、移動経路Qに沿って移動するブラシ49が複数の孔部45bに対応した位置を通過した際に、孔部45bから突出する吸収液をブラシ49に確実に接触させて毛細管現象によりブラシ49に含浸させることができる。
また、第1実施形態では、平板状(円盤状)の熱交換器42を伝熱面42bを対向させた状態で互いに所定の間隔を隔てて横方向(X軸方向)に複数配置し、各々の熱交換器42が互いに隣接する一方側の伝熱面42bおよび他方側の伝熱面42bの両方に吸収液(濃液)を供給するように濃液供給ポート45を構成する。これにより、平板状の熱交換器42を横方向に複数配置して吸収器40を構成する場合であっても、吸収液(濃液)を各々の熱交換器42の一方側および他方側の両方の伝熱面42bから吐出(流出)させることができる。したがって、小型化された吸収器40においても、冷媒蒸気が吸収される吸収液(濃液)と冷却水との有効な熱交換領域を効率よく確保することができる。
また、第1実施形態では、濃液供給ポート45の孔部45bから吸収液(濃液)が熱交換器42の伝熱面42bに沿って流下する矢印Z2方向と反対方向(矢印Z1方向)にブラシ49を移動させて伝熱面42bに供給された濃液を伝熱面42bに沿って塗布するように構成する。これにより、熱交換器42の伝熱面42bのうち孔部45bが設けられた領域よりも上方の伝熱面42bの領域にブラシ49を用いて濃液を塗布することができるので、濃液の伝熱面42bへの塗布面積を効果的に確保することができる。
また、第1実施形態では、複数の孔部45bをブラシ49の移動経路Q上の伝熱面42bに分散して配置する。これにより、吸収液(濃液)をブラシ49の移動経路Q上の熱交換器42の伝熱面42bから万遍なくブラシ49に供給することができる。すなわち、ブラシ49の熱交換器42の伝熱面42bとの対向領域に確実に濃液を供給することができるので、ブラシ49による濃液の塗布面積を最大限に得ることができる。
また、第1実施形態では、熱交換器42の中心を回転中心としてブラシ49が伝熱面42bに沿って回転移動され、複数の孔部45bをブラシ49の回転半径方向に沿って伝熱面42bに開口するように配置する。これにより、回転移動するブラシ49の回転半径方向に沿って濃液を万遍なく供給することができるので、ブラシ49の移動経路Qを、冷媒蒸気が吸収される濃液と冷却水との有効な熱交換領域として活用することができる。
また、第1実施形態では、複数の熱交換器42の各々に設けられた濃液供給ポート45に対して共通の濃液供給路55aを接続することにより、濃液が共通の濃液供給路55aを介して各々の熱交換器42の濃液供給ポート45に分配されるように構成する。これにより、平板状の熱交換器42を横方向に複数配置して吸収器40を構成する場合であっても、1本の濃液供給路55aを介して濃液を各々の熱交換器42の伝熱面42bに容易に供給することができるので、吸収器40の内部構造を簡素化させることができる。
[第1実施形態の変形例]
図6を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。この第1実施形態の変形例では、1個の熱交換器142あたりの「溶液供給部」の個数を増加させた例を説明する。
図6に示すように、吸収器140には、15個の熱交換器142がX軸方向に沿って等ピッチ間隔で配置された熱交換部143が設けられている。そして、各々の熱交換器142には、2箇所に濃液供給ポート145および146(溶液供給部の一例)が設けられている。すなわち、個々の熱交換器142は、水平方向におけるY1側において濃液を供給する濃液供給路255aと、Y2側において濃液を供給する濃液供給路255bとによって互いに接続されている。濃液供給路255aには、個々の熱交換器142に対応する部分に濃液供給ポート145が設けられるとともに、濃液供給路255bには、個々の熱交換器142に対応する部分に濃液供給ポート146が設けられている。したがって、冷房運転時においては、濃液が濃液供給ポート145および146を介して個々の熱交換器142の伝熱面142bに供給された状態で、モータ95の駆動とともに各々のブラシ部材47が伝熱面142bに沿って矢印R方向に回転移動されるように構成されている。
(第1実施形態の変形例の効果)
第1実施形態の変形例では、上記のように、複数の熱交換器142の各々に設けられた濃液供給ポート145に対して共通の濃液供給路255aを接続し、かつ、濃液供給ポート146に対して共通の濃液供給路255bを接続することにより、濃液が濃液供給路255aおよび255bの各々を介して各熱交換器142の濃液供給ポート145および146に分配されるように構成する。これにより、平板状の熱交換器142を横方向に複数配置して吸収器140を構成する場合であっても、濃液供給路255aおよび255bの各々を介して濃液を伝熱面142bに効率よく供給することができる。
[第2実施形態]
図1、図3および図7を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、蒸発器230に対しても吸収器40(図2参照)と同様の構造を適用して吸収式ヒートポンプ装置200を構成した例について説明する。
本発明の第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置200(図1参照)では、図7に示すように、上記第1実施形態で用いた蒸発器30(図1参照)の代わりに、熱交換部233(熱交換器232)および回転体234を含む蒸発器230を備える。
(蒸発器の構造)
図7に示すように、蒸発器230は、10個の熱交換器232を含む熱交換部233と、熱交換器232間に配置された回転体234と、回転体234を矢印R方向に回転させるモータ98とを備える。熱交換部233は、下部(Z2側)と上部(Z1側)とにおいて、各々の熱交換器232に接続された空調用循環水(熱交換流体の一例)の水配管233aおよび233bによって互いに接続されている。また、蒸発器230には、冷媒(凝縮水)を供給する冷媒通路54と、暖房運転時に冷媒を循環通路51に戻す冷媒供給路57とが容器231の側壁部231bを貫通して設けられている。なお、冷媒通路54の熱交換器232への接続構造は、吸収器40の場合の濃液供給路55a(図3参照)と同様である。
ここで、第2実施形態では、冷媒通路54と個々の熱交換器232との接続部分に、冷媒通路54から矢印Y2方向に分岐する冷媒供給ポート235(溶液供給部の一例)が設けられている。各々の冷媒供給ポート235は、熱交換器232内でU字状の内壁部232dにより内部通路232eから隔絶されたポート部屋235aを有する。したがって、冷媒供給ポート235は、熱交換器232に一体的に形成されている。この熱交換器232の内部に設けられた冷媒供給ポート235は、熱交換器232の伝熱面232bに冷媒(水)を供給する役割を有する。
また、冷媒供給ポート235(ポート部屋235a)に対応する熱交換器232の伝熱面232bの部分には、複数(片側の伝熱面232bに4個×3列=12個)の孔部235b(溶液供給孔の一例)が形成されている。個々の孔部235bは、ブラシ部材47(ブラシ49)の移動経路Q上の伝熱面232bに分散して配置されている。また、孔部235bは、各々の熱交換器232の一方側(X1側)の伝熱面232bおよび他方側(X2側)の伝熱面232bの両方に設けられており、両方の伝熱面232bに冷媒が供給されるように構成されている。また、複数の孔部235bの各々は、孔部235bから吐出される冷媒が表面張力により伝熱面232bから突出するような開口径Dに設定されている。
したがって、冷房運転時には、凝縮器20(図1参照)で凝縮された冷媒(凝縮水)が冷媒通路54および冷媒供給ポート235を流通して蒸発器230における熱交換器232の伝熱面232bに供給された状態で、モータ98の駆動とともに各々のブラシ部材47が伝熱面232bに沿って矢印R方向に回転移動される。この際、ブラシ49が冷媒供給ポート235の孔部235b上を通過する際に伝熱面232bから突出する孔部235b内の冷媒に接触する。そして、毛細管現象によりブラシ49に吸い出された冷媒が伝熱面232bに沿って塗布される。また、ブラシ49自身も冷媒貯留部231cに貯留された冷媒(凝縮水)を汲み上げて伝熱面232bに薄く塗布される。容器231内は真空状態なので冷媒が熱交換器232内の空調用循環水から蒸発潜熱を奪いながら蒸発して低温水蒸気になる。そして、蒸発した冷媒蒸気(低温水蒸気)は、容器231に接続された冷媒蒸気通路53を介して吸収器40(図3参照)に吸引される。
そして、吸収器40(図3参照)では、濃液供給路55aおよび濃液供給ポート45を経由して熱交換器42の伝熱面42bに吸収液(濃液)が供給されるとともに、回転移動するブラシ部材47によって濃液が伝熱面42bに塗布される。そして、伝熱面42bにおいて吸収液(濃液)に冷媒蒸気が吸収されて希液となり吸収液貯留部41cに貯留され循環通路部51に戻される。なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記のように、熱交換器232の伝熱面232bに冷媒を供給する冷媒供給ポート235を熱交換器232に設ける。これにより、伝熱面232bの配置方向に関係なく熱交換器232自体に設けられた冷媒供給ポート235を介して伝熱面232bに冷媒を確実に供給することができるので、冷媒の伝熱面232bへの濡れ面積(空調用循環水との有効な熱交換領域)を十分に確保することができる。すなわち、冷媒を十分な濡れ面積を有して空調用循環水と熱交換されるので、冷媒の蒸発性能を向上させることができる。この結果、熱交換器232の性能を維持しつつ、吸収式ヒートポンプ装置200の小型化を図ることができる。
また、第2実施形態では、吐出される冷媒の表面張力により伝熱面232bから突出するように孔部235bの開口径Dに設定する。これにより、各々の孔部235bにおいて、冷媒の表面張力を利用して伝熱面232bから冷媒の表面を曲面状に突出させた状態で、冷媒を一時的に保持することができる。したがって、各々の孔部235bの出口に保持された冷媒を、ブラシ49を用いて伝熱面232b全体に万遍なく塗布することができる。
また、第2実施形態では、熱交換器232の伝熱面232bに沿って移動するとともに冷媒供給ポート235の孔部235b上を通過する際に伝熱面232bから突出する孔部235b内の冷媒に接触することによって、毛細管現象により吸い出された冷媒を伝熱面232bに沿って塗布するブラシ49を備える。これにより、孔部235bから表面張力により凸形状を有して突出する冷媒を毛細管現象を利用してブラシ49に容易に含浸させることができる。そして、冷媒が含浸されたブラシ49の移動を利用して、冷媒を伝熱面232bに万遍なく薄膜状に塗布することができるので、冷媒の伝熱面232bへの濡れ面積(空調用循環水との有効な熱交換領域)を確実に確保することができる。
また、第2実施形態では、各々の平板状(円盤状)の熱交換器232の隣接する一方側および他方側の伝熱面232bの両方に冷媒を供給するように冷媒供給ポート235を構成する。これにより、平板状の熱交換器232を横方向に複数配置して蒸発器230を構成する場合であっても、冷媒を熱交換器232の両面(両方の伝熱面232b)から吐出)させることができる。したがって、小型化された蒸発器230においても、冷媒と空調用循環水との有効な熱交換領域を効率よく確保することができる。
また、第2実施形態では、複数の熱交換器232の各々に設けられた冷媒供給ポート235に対して共通の冷媒通路54を接続することにより、冷媒が共通の冷媒通路54を介して各々の熱交換器232の冷媒供給ポート235に分配されるように構成する。これにより、1本の冷媒通路54を介して冷媒を各々の熱交換器232の伝熱面232bに容易に供給することができるので、蒸発器230の内部構造を簡素化させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態では、ポート部屋45aを熱交換器42内の内壁部42dにより内部通路42eから隔絶して熱交換器42に一体的に形成し、上記第2実施形態では、ポート部屋235aを熱交換器232内の内壁部232dにより内部通路232eから隔絶して熱交換器232に一体的に形成したが、本発明はこれに限られない。濃液供給ポート45(冷媒供給ポート235)を熱交換器42(232)とは完全に別部品として構成しておき、熱交換部43(233)の組み立て時に互いに組み合わせてもよい。
また、上記第1実施形態では、濃液供給ポート45を有する濃液供給路55aを熱交換器42の高さ方向(Z軸方向)の中央部に配置したが、本発明はこれに限られない。すなわち、吸収液貯留部41cよりも上方であるならば、濃液供給路55aを熱交換器42の高さ方向の中央部以外の位置に配置してもよい。なお、上記第2実施形態の冷媒通路54についても、上記した構成(変形例)と同様に構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、蒸発器230の熱交換器232に空調用循環水を流通させたが、本発明はこれに限られない。たとえば、熱交換部233内部に空調用の空気を直接流通させて蒸発器230において冷媒(水)と空調用の空気とを熱交換させてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を、乗用車やバスなどの空調システムに適用したが、本発明はこれに限られない。車両のみならず商業施設向け(据置型)の吸収式ヒートポンプ装置にも、本発明を適用することができる。
また、上記第1および第2実施形態では、排気ガスの熱を利用して吸収液を加熱したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ハイブリッド自動車や電気自動車の空調用に、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。また、吸収液の加熱熱源に電気自動車のバッテリやモータ排熱や燃料電池における発電時の排熱を利用して、燃料電池システムを備えた乗用車の空調に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、冷媒および吸収液として、水および臭化リチウム水溶液を用いたが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷媒および吸収液として、それぞれ、アンモニアおよび水を用いて吸収式ヒートポンプ装置を構成してもよい。
30、230 蒸発器
40、140 吸収器
42、142、232 熱交換器
42b、142b、232b 伝熱面
42e、232e 内部通路
45、145、146 濃液供給ポート(溶液供給部)
45b、235b 孔部(溶液供給孔)
49 ブラシ(塗布部材)
54 冷媒通路(溶液供給路)
55a濃液供給路(溶液供給路)
100、200 吸収式ヒートポンプ装置
235 冷媒供給ポート(溶液供給部)

Claims (5)

  1. 吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、
    内部に熱交換流体が流通されるとともに、吸収液または冷媒からなる溶液と前記熱交換流体との熱交換を行う伝熱面を含む熱交換器と、
    前記熱交換器に設けられ、前記熱交換器の伝熱面に前記溶液を供給する溶液供給部と、を備え
    前記熱交換器は、前記熱交換流体が流通する内部通路を有して平板状に形成されているとともに、前記溶液供給部は、前記熱交換器の内部に設けられており、
    前記溶液供給部は、前記熱交換器の伝熱面に開口する溶液供給孔を含む、吸収式ヒートポンプ装置。
  2. 前記溶液供給孔は、前記熱交換器の伝熱面に複数設けられており、
    複数の前記溶液供給孔の各々は、前記溶液供給孔から吐出される前記溶液が表面張力により前記伝熱面から突出するような開口径に設定されている、請求項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
  3. 前記熱交換器の伝熱面に沿って移動するとともに前記溶液供給部の溶液供給孔上を通過する際に前記伝熱面から突出する前記溶液供給孔内の溶液に接触することによって、毛細管現象により吸い出された前記溶液を前記伝熱面に沿って塗布するように構成された塗布部材をさらに備える、請求項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
  4. 複数の前記溶液供給孔は、前記塗布部材の移動経路上の前記熱交換器の伝熱面に設けられている、請求項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
  5. 吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、
    内部に熱交換流体が流通されるとともに、吸収液または冷媒からなる溶液と前記熱交換流体との熱交換を行う伝熱面を含む熱交換器と、
    前記熱交換器に設けられ、前記熱交換器の伝熱面に前記溶液を供給する溶液供給部と、を備え、
    前記熱交換器は、前記伝熱面を対向させた状態で互いに所定の間隔を隔てて横方向に複数配置されており、
    前記溶液供給部は、各々の前記熱交換器が互いに隣接する一方側の伝熱面および他方側の伝熱面の両方に前記溶液を供給するように構成されている、吸収式ヒートポンプ装置。
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