以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100では、冷媒として水が用いられるとともに、吸収液として臭化リチウム(LiBr)水溶液が用いられる。また、吸収式ヒートポンプ装置100は、エンジン(内燃機関)90を備えた乗用車、バスおよびトラックなどの車輌に搭載され、車内の空調システムに適用されるように構成されている。
第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100は、図1に示すように、再生器10(図1の2点鎖線枠内の部分)と、凝縮器20と、蒸発器30と、吸収器40とを備えている。また、再生器10は、吸収液を加熱する加熱部11と、加熱された吸収液から冷媒蒸気(高温水蒸気)を分離する気液分離部12とを含んでいる。
再生器10における加熱部11は、プレート式熱交換器であり、エンジン90の排気ガスの熱を用いて吸収液を加熱する役割を有している。ここで、吸収液は、通常、LiBr濃液が冷媒(水)により希釈された状態で加熱部11を流通する。気液分離部12は、加熱部11により加熱された吸収液から冷媒蒸気(高温水蒸気)を分離する機能を有している。また、凝縮器20は、冷房運転時に、気液分離部12で分離された冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有している。また、蒸発器30は、冷房運転時に、凝縮水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させる役割を有している。また、吸収器40は、濃液状態で供給された吸収液に蒸発器30で気化した冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収させる役割を有している。なお、LiBr濃液は、本発明の「吸収液」の一例である。
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、図1に示すように、吸収液循環管路51aおよび51bからなる循環通路部51と、冷媒蒸気移送管路52a、52bおよび53と、冷媒移送管路54と、吸収液移送管路55および56と、冷媒供給管路57および58とを備えている。ここで、循環通路部51は、吸収液を吸収器40に流通させることなく吸収液を加熱部11と気液分離部12との間で矢印P方向に沿って循環させる役割を有する。吸収液循環管路51aには、冷媒蒸気分離後の気液分離部12に貯留された吸収液(濃液)を循環通路部51内で循環させるポンプ71が設けられている。また、吸収液循環管路51aから吸収器40側へ分岐する吸収液移送管路55には、循環通路部51を循環する吸収液が吸収器40側に流入するのを所定の運転制御に基づいて遮断する弁61が設けられている。
吸収液移送管路56には、吸収器40において冷媒蒸気が吸収された状態で貯留される吸収液(LiBr水溶液)を循環通路部51に供給するポンプ72と、この吸収液が循環通路部51に流入するのを所定の運転制御に基づいて遮断する弁62とが設けられている。冷媒供給管路57は、暖房運転時に蒸発器30に貯留された冷媒(凝縮水)を直接的に循環通路部51に供給するために設けられている。また、冷媒供給管路57には、蒸発器30に貯留された冷媒(凝縮水)を循環通路部51に供給するポンプ73と弁63とが設けられている。弁63は、冷房運転時にポンプ73が停止される際に閉じられることによって、循環通路部51を循環する吸収液が冷媒供給管路57を逆流して蒸発器30に流入(混入)するのを遮断する役割を有する。
したがって、吸収式ヒートポンプ装置100では、冷房運転開始直後に、弁61および弁62を閉じた状態でポンプ71が始動されることにより、吸収液を循環通路部51のみを循環させて加熱部11を用いて迅速に昇温させる。そして、気液分離部12で分離された冷媒蒸気(高温水蒸気)が所定温度に達したところで弁61および弁62が開かれるとともにポンプ72が始動される。これにより、昇温された吸収液の一部(気液分離部12に貯留されたLiBr濃液)が、吸収液移送管路55および56にも矢印Q方向に流通されて、通常の冷房サイクルが形成されるように構成されている。なお、暖房運転時には、運転期間中、弁61および弁62は常に閉じられており吸収器40は使用されない。一方、暖房運転開始直後に循環通路部51を循環させた吸収液の昇温動作は行われて、気液分離部12で分離された冷媒蒸気(高温水蒸気)が蒸発器30(この場合は凝縮器)に流入される。
冷媒蒸気移送管路52bは、気液分離部12で分離された冷媒蒸気を直接的に蒸発器30に流入させるために設けられている。具体的には、冷媒蒸気移送管路52bは、冷媒蒸気移送管路52aから分岐した後、蒸発器30および吸収器40を接続する冷媒蒸気移送管路53に接続されている。なお、冷媒蒸気移送管路53に対する冷媒蒸気移送管路52bの合流部分には、蒸発器30と吸収器40とを結ぶ第1流路と、気液分離部12と蒸発器30とを結ぶ第2流路とを切り換え可能な三方弁64が設けられている。これにより、三方弁64を第1流路側(冷房運転用)に切り換えた際には、蒸発器30の冷媒(凝縮水)が蒸発(気化)して生成された冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収器40に供給する冷媒蒸気移送管路53の経路が開かれる。また、三方弁64を第2流路側(暖房運転用)に切り換えた際には、気液分離部12で分離された冷媒蒸気(高温水蒸気)を蒸発器30(この場合は凝縮器)に直接的に流入させる冷媒蒸気移送管路52bの経路が開かれる。また、冷媒蒸気移送管路52aには、弁65が設けられている。弁65は、暖房運転時に、気液分離部12により分離された冷媒蒸気が凝縮器20に流入するのを遮断する役割を有する。
冷媒移送管路54には、弁66が設けられている。弁66は、冷房運転時には開かれる一方、暖房運転時には閉じられる。これにより、暖房運転時に三方弁64が気液分離部12と蒸発器30とを結ぶ第2流路(冷媒蒸気が冷媒蒸気移送管路52bを流通する流路)側に切り換えられ、かつ、弁65および弁66が共に閉じられた場合、凝縮器20がサイクルから切り離される。したがって、暖房運転時には、気液分離部12で分離された冷媒蒸気(高温水蒸気)のほぼ全てが冷媒蒸気移送管路52bから蒸発器30に流入されるように構成されている。
冷媒供給管路58は、凝縮器20に貯留された冷媒(凝縮水)を直接的に吸収器40に供給するために設けられている。また、冷媒供給管路58には、弁67が設けられており、弁67が冷房運転後の装置停止時に開かれることにより、凝縮器20の冷媒(水)の一部が吸収器40に供給されて吸収器40内に貯留される吸収液を含む全ての吸収液が希釈される。これにより、吸収式ヒートポンプ装置100が停止している場合においても、循環通路部51や吸収液移送管路55および56を含めた装置内各部に滞留する吸収液が結晶化するのが防止されている。
また、図1に示すように、吸収式ヒートポンプ装置100は、冷房運転時にのみ駆動される冷却水回路部80を備えている。冷却水回路部80は、凝縮器20における冷媒蒸気(高温水蒸気)の冷却と、吸収器40における冷媒(低温水蒸気)の吸収液(LiBr水溶液)への吸収時に発生する吸収熱の冷却(除熱)とを行う機能を有する。詳細には、冷却水回路部80は、不凍液からなる冷却水(クーラント)81(図2参照)が流通する循環管路82と、冷却水81を循環させるためのポンプ83と、凝縮器20内部に配置され、冷媒蒸気と冷却水81とを熱交換させて冷媒蒸気を冷却するための熱交換器84と、吸収器40内部に配置され、吸収熱が発生した吸収液と冷却水81とを熱交換させて吸収液を冷却するための熱交換器43と、冷却水81を再循環可能に冷却するための冷却水冷却部85とを含んでいる。冷却水冷却部85では、熱交換器85aを流通する冷却水81が送風機85bにより送風された空気(外気)によって冷却される。なお、熱交換器43は、本発明の「コイル型熱交換器」の一例であり、冷却水81は、本発明の「熱交換流体」の一例である。
ここで、第1実施形態では、冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収液(LiBr水溶液)に吸収させるための吸収器40は、次のように構成されている。具体的には、図2に示すように、吸収器40は、吸収液が貯留される液溜まり部41aを有する容器41と、容器41内に設置され、螺旋状(コイル状)に巻回される伝熱管42を有するとともに、伝熱管42の内部を冷却水81が流通する熱交換器43と、液溜まり部41aに貯留された吸収液を、コイル状に巻回された伝熱管42の表面42aに沿って塗布する4本のブラシ部材45とを備えている。なお、熱交換器43は、円筒状に形成されたたとえばCuなどの金属からなる伝熱管42が、中心線150(一点鎖線)まわりに螺旋状に巻回されることにより、全体として中心線150に沿ってX方向(長手方向)に延びるように形成されている。また、熱交換器43は、冷却水81が流入する入口部43aと冷却水81が流出する出口部43bとが、容器41の同じ側(X2側)に配置されるように伝熱管42が巻回されている。なお、ブラシ部材45は、本発明の「塗布部材」の一例である。
また、容器41内部の天井部(Z2側)には、蒸発器30(図1参照)と連通する冷媒移送管路54が接続されており、蒸発器30で蒸発した冷媒蒸気が容器41内部に供給(吸引)されるように構成されている。また、容器41の液溜まり部41aには、気液分離部12からの吸収液(濃液)を吸収器40に供給するための吸収液移送管路55と、吸収器40において冷媒が吸収された吸収液を加熱部11に供給するための吸収液移送管路56とがそれぞれ接続されている。また、熱交換器43は、入口部43aおよび出口部43bが、容器41のX2側の側壁部を貫通して外部の循環管路82(図1参照)に接続されている。
また、第1実施形態では、図2および図3に示すように、4本のブラシ部材45のうち、2本のブラシ部材45同士が、巻回された伝熱管42を挟むようにして設けられている。すなわち、2本のブラシ部材45は、中心線150まわりに巻回された伝熱管42の外周面42b(図3参照)に接触する1本の外周面側ブラシ部材46と、この巻回された伝熱管42の内周面42c(図3参照)に接触する1本の内周面側ブラシ部材47とによって構成されている。なお、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47は、共に中心線150と平行なままX方向に直線状(棒状)に延びている。また、吸収器40においては、一対のブラシ部材45が二組設けられている。なお、外周面42bは、図3に示すように、螺旋状に巻回された伝熱管42の表面42aのうち、中心線150(紙面垂直方向)を中心とした巻回の半径方向(Y方向およびZ方向)における伝熱管42の中心線160(一点鎖線)から外側の曲面状の管表面の部分に相当するとともに、内周面42cは、中心線160から内側の曲面状の管表面の部分に相当する。なお、外周面側ブラシ部材46は、本発明の「塗布部材」および「外周面側塗布部材」の一例である。また、内周面側ブラシ部材47は、本発明の「塗布部材」および「内周面側塗布部材」の一例である。
また、図2に示すように、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47は、一方側(X1側)の端部において所定の剛性を有する金属製の支持部材48に接続されている。ここで、外周面側ブラシ部材46は、所定の剛性を有する金属製の棒状(直線状)の芯材46aと、芯材46aに取り付けられ芯材46aから放射状(図3参照)に延びる樹脂繊維からなるブラシ46bとを有している。同様に、内周面側ブラシ部材47は、金属製の棒状(直線状)の芯材47aと、芯材47aに取り付けられ芯材47aから放射状に延びる樹脂繊維からなるブラシ47bとを有している。したがって、棒状の芯材46aおよび47aのX1側の端部が支持部材48により固定的に支持されることにより、外周面側ブラシ部材46と内周面側ブラシ部材47とが下方(Z1方向)に撓むことなくX1側からX2側に向かって水平方向に延びた状態で伝熱管42を挟み込むようにして伝熱管42の表面42a近傍に配置されている。
また、図3に示すように、外周面側ブラシ部材46と内周面側ブラシ部材47とによって、巻回された伝熱管42の一部分が挟み込まれている。すなわち、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47は、中心線150の延びる方向(紙面垂直方向)から見て、周状(円状)の伝熱管42の一部の表面42aにのみ接触するように構成されている。この場合、二組のブラシ部材45は、中心線150の延びる方向から見て、伝熱管42の巻回方向に沿って互いに180度の間隔を隔てて配置されている。
また、第1実施形態では、図2に示すように、熱交換器43は、中心線150まわりに巻回された伝熱管42の中心線150が液溜まり部41aの液面に沿った概略X方向に延びるように容器41内に設置されている。また、図3に示すように、熱交換器43は、巻回された伝熱管42の中心線150よりも下方(Z1側)の領域42eが液溜まり部41aに浸漬された状態で容器41内に設置されている。なお、吸収式ヒートポンプ装置100では、伝熱管42が吸収液に浸漬される領域42eが極力少なくなるように液溜まり部41aの液面高さが制御されるのが好ましい。すなわち、巻回された伝熱管42は、内周面側ブラシ部材47が最下端(Z1方向端)に位置した状態(図3の状態)で内周面側ブラシ部材47が吸収液を吸液可能な深さ分だけ吸収液に浸漬されていればよい。なお、領域42eは、本発明の「下部領域」の一例である。
また、容器41のX1側の壁部41cの外表面には、金属製の凹状のハウジング41bが取り付けられている。また、図示しないギアボックスを含む電動モータ49が取付部材41dを介してハウジング41bの内底面に取り付けられている。なお、電動モータ49が収容されるハウジング41b内は、容器41内と同様に外部に対して気密性が保たれる構造を有しており、容器41内と略同じ圧力(絶対圧力で1kPa以下の真空状態)に保たれる。そして、電動モータ49からの回転軸49aが、容器41の壁部41cを貫通して容器41内部にX2方向(水平方向)に延びるとともに、支持部材48の回転中心となるボス部48aに固定されている。なお、回転軸49aが壁部41cを貫通する部分には、円筒形状のシール材41eが回転軸49aと壁部41cとの隙間に嵌め込まれている。シール材41eは、液溜まり部41aの吸収液が壁部41cを乗り越えてハウジング41b内へ漏洩するのを防止する役割を有する。また、電動モータ49から引き出された配線49bがハウジング41bを貫通する部分には、シール材41fが設けられている。なお、電動モータ49は、本発明の「回転駆動部」の一例である。
吸収器40が、上記のように構成されることによって、吸収器40においては、以下のような動作を伴いながら、冷媒を吸収する吸収液と冷却水81との熱交換が行われるように構成されている。
すなわち、第1実施形態では、図3に示すように、各々のブラシ部材45が、螺旋状に巻回された伝熱管42の巻回方向に沿って移動されることによって、液溜まり部41aを通過して吸収液を吸液した後ブラシ部材45(ブラシ46bおよび47b)に吸液された吸収液を巻回された伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布することが可能に構成されている。この際、各々のブラシ部材45(ブラシ46bおよび47b)は、周状(円状)の伝熱管42の一部に接触した状態で、液溜まり部41aに貯留された吸収液を伝熱管42の表面42aに沿って周状に移動しながら順次塗布するように構成されている。また、ブラシ部材45が伝熱管42の巻回方向に沿って移動される際に、ブラシ部材45が液溜まり部41aに浸漬されながら液溜まり部41aの吸収液を吸液するとともに、熱交換器43の液溜まり部41aに浸漬されていない伝熱管42の領域42fに対応する表面42aに吸収液を順次塗布するように構成されている。なお、領域42fは、「液溜まり部に浸漬されていない伝熱管の部分」の一例である。
また、第1実施形態では、電動モータ49(図2参照)の駆動力により、支持部材48(図2参照)に固定された各々のブラシ部材45が、中心線150の延びる方向(図3における紙面垂直方向)から見て、支持部材48とともに伝熱管42の巻回方向に沿って矢印R方向に所定の移動速度で円状に回転移動されるように構成されている。この場合、支持部材48に固定された二組のブラシ部材45が、伝熱管42の巻回方向に沿って互いに180度の間隔を隔てて配置された状態で矢印R方向に円状に回転移動されるように構成されている。すなわち、一対のブラシ部材45においては、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47が伝熱管42の一部分を挟み込んだ状態で伝熱管42の巻回方向に沿って矢印R方向に回転移動されるように構成されている。
この際、第1実施形態では、各々のブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)が回転移動とともに液溜まり部41aを通過して吸収液を吸液した後、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)に吸液された吸収液が、巻回された伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布されるように構成されている。このようにして、液溜まり部41aに貯留された吸収液を伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布する動作が、4本のブラシ部材45の回転移動によって電動モータ49(図2参照)が駆動される期間中繰り返されるように構成されている。
ここで、図4および図5を参照して、ブラシ部材45の回転移動に伴って吸収液が伝熱管42の表面42aに塗布される際の状況について詳細に説明する。
まず、電動モータ49(図2参照)の駆動とともに支持部材48(図2参照)が矢印R方向に回動された場合、図4に示すように、液溜まり部41aを通過したブラシ部材45には吸収液が吸液される。なお、図4では、吸収液中を移動中のブラシ部材45(紙面におけるY2側の外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)が吸収液を吸液した状態で液面からZ2方向(上方)に離脱しつつある状態を示すとともに、回転移動方向(矢印R方向)に沿って180度反対側を回転移動中のブラシ部材45(紙面におけるY1側の外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)がZ1方向(下方)に移動される様子を示している。そして、吸収液を含有したブラシ部材45(ブラシ46bおよび47b)が伝熱管42の表面42aに沿って矢印R方向に移動される際、図4および図5に示すように、ブラシ部材45に含有された吸収液が伝熱管42の表面42aに順次塗布される。すなわち、ブラシ46bおよび47bによって吸収液(LiBr濃液)が表面42aに薄く塗り延ばされることにより、吸収液の伝熱管42の表面42aに対する濡れ性が良好な状態を保ちながら表面42aに広範囲に亘って厚みの薄い液膜(吸収液の液膜)が形成される。
また、第1実施形態では、図4および図5に示すように、ブラシ部材45(ブラシ46bおよび47b)は、伝熱管42の巻回方向(矢印R方向)に沿って移動される際に、伝熱管42の表面42aに残留する冷却水81との熱交換済みの吸収液(冷媒が相対的に多く吸収されて希釈された状態のLiBr水溶液)を表面42aから除去しながら、熱交換済みの吸収液が除去された伝熱管42の表面42aに、ブラシ部材45に吸液された吸収液(冷媒の吸収量が相対的に少ない状態のLiBr水溶液(濃液))を新たに塗布するように構成されている。なお、熱交換器43においては、塗布された吸収液に冷媒(低温水蒸気)が吸収される際に発生する吸収熱が、伝熱管42の表面42aを介して冷却水81に奪われる。したがって、塗布された吸収液の温度が比較的低温状態に保たれるので、塗布された吸収液へのさらなる冷媒(水)の吸収が促進される。そして、吸収液への冷媒の吸収とともに吸収液が希釈されてLiBr希液に近い濃度となった状態でブラシ部材45により表面42aから除去されて液溜まり部41aに落下する。吸収器40内ではこのような現象が連続的に繰り返されて、冷媒の吸収液への吸収と、吸収液の冷却とが行われる。なお、ブラシ部材45の移動速度(電動モータ49の回転速度)については、吸収式ヒートポンプ装置100の能力クラスによって調整可能であるように構成されている。すなわち、電動モータ49の回転速度は、伝熱管42の表面42aに塗布された吸収液が液膜の状態で冷却水81により効率よく冷却されるとともに冷媒蒸気が吸収液に適切に吸収されるような最適な速度に調整されるのが好ましい。また、空調の負荷変動が小さい範囲内においては電動モータ49の回転速度を一定速度に制御するのが好ましく、空調負荷が大幅に変動する場合には、空調負荷に応じて電動モータ49の回転速度を制御するように構成してもよい。
また、第1実施形態では、図6に示すように、熱交換器43において、巻回された隣接する伝熱管42同士の中心線150の延びるX方向(長手方向)における離間間隔Lは、ブラシ部材45のブラシ46bおよびブラシ47bが入り込める間隔に設定されている。これにより、ブラシ部材45(ブラシ46bおよびブラシ47b)に吸液された吸収液を、伝熱管42の芯材46a(芯材47a)と対向する外周面42b側および内周面42c側の表面42aのみならず、隣接する伝熱管42同士がX方向に対向する部分の表面42aに対しても液膜状に塗布することが可能に構成されている。
このようにして、冷房運転時には、蒸発器30において蒸発されるとともに冷媒蒸気移送管路53を介して吸引された冷媒蒸気(低温水蒸気)と吸収液(LiBr水溶液)とが吸収器40内で混ざり合って希液状態の吸収液が作られる。
また、蒸発器30は、図1に示すように、容器31内部に設置された熱交換部32と、容器31内部の天井部近傍に取り付けられた噴射器33とを含んでいる。また、蒸発器30の外部には、冷媒貯留部31aと噴射器33とを接続する冷媒移送管路34にポンプ35が設けられている。これにより、冷媒貯留部31aの冷媒(水)がポンプ35により汲み上げられて噴射器33から下方の熱交換部32に向けて霧状に噴射されるように構成されている。したがって、冷房運転時には、送風機36により送風された車内の熱交換前の空気(吸込空気)は、熱交換部32を通過する際に上方から噴霧された冷媒(水)が蒸発して冷媒蒸気(低温水蒸気)になる際の気化熱を利用して冷却される。そして、冷却された空気(冷風)は、車内に吹き出される。
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、吸収液移送管路55を流通する吸収液と、吸収液移送管路56を流通する吸収液との熱交換を図るための熱交換器(プレート式熱交換器)59を備えている。熱交換器59は、いわゆる「液液熱交換器」であり、冷房運転時に、気液分離部12から吸収器40に向かって流れる吸収液(濃液)の熱を、吸収器40から循環通路部51に向かって流れる吸収液(希液)に付与することにより、気液分離部12から吸収器40に向かって流れる吸収液の温度を低下させるとともに、吸収器40から循環通路部51に向かって流れる吸収液の温度を上昇させる役割を有している。
加熱部11は、LiBr濃液に冷媒(水)が吸収された吸収液を加熱する役割を有する。すなわち、加熱部11において、乗用車(図示せず)のエンジン90から引き回された排気ガス管91を流通する高温(約300℃〜約400℃)の排気ガスと、循環通路部51を流通する吸収液とが熱交換される。排気ガス管91は、加熱部11を経由する熱供給管路91aと、加熱部11を経由しない迂回管路91bとを含んでいる。また、エンジン90と加熱部11との間の熱供給管路91aには弁92が設けられている。冷房運転時および暖房運転時に弁92が開かれることによって、エンジン90から排出された排気ガスの一部が熱供給管路91aを経由して加熱部11に流通される。また、弁92が閉じられた場合には排気ガスは迂回管路91bを介して排出される。このようにして、吸収式ヒートポンプ装置100は構成されている。
第1実施形態では、上記のように、吸収器40においては、螺旋状に巻回される伝熱管42を有するコイル型の熱交換器43と、容器41の液溜まり部41aに貯留された吸収液を熱交換器43の巻回された伝熱管42の表面42a(外周面42bおよび内周面42c)に沿って塗布するブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)とを備えている。これにより、吸収液であるLiBr水溶液(濃液)は、ブラシ部材45によって伝熱管42の表面42aに沿って塗布されることにより、吸収液の伝熱面(表面42a)に対する濡れ性が改善されて表面42aに広範囲に亘って厚みの薄い液膜が形成されるので、伝熱管42の表面42aに塗布された厚みの薄い液膜により膜厚方向の熱伝達率を向上させて伝熱性能を向上させることができるとともに、広範囲に亘る液膜の形成により伝熱管42の有効伝熱面積をより増加させることができる。このため、熱交換性能を著しく向上させることができるので、その分、より小型化された熱交換器43を用いて従来と同等の熱交換量を確保することができる。
また、上記のように、螺旋状に巻回される伝熱管42を有するコイル型の熱交換器43を備えることによって、容器41内における単位体積あたりの伝熱面積を増加させることができるので、これによっても熱交換性能を向上させることができ、熱交換器43の小型化を図ることができる。また、液溜まり部41aに貯留された吸収液を、ブラシ部材45により熱交換器43の伝熱管42の表面42aに塗布することによって、容器41外部に設置した溶液ポンプにより液溜まり部41aに貯留された吸収液を吸引して容器41内の伝熱管42に上方から散布するような溶液循環回路を吸収式ヒートポンプ装置100内に別途設置する必要もない。これにより、吸収式ヒートポンプ装置100の小型化を図ることができる。これらの結果、吸収器40における熱交換器43の熱交換器性能を維持しつつ吸収式ヒートポンプ装置100の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、容器41の液溜まり部41aに貯留された吸収液をコイル型の熱交換器43の巻回された伝熱管42の表面42aに沿って塗布するブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を備えることによって、吸収液をブラシ部材45により伝熱管42の表面42aに沿って塗布する場合に、容易に厚みの薄い液膜を広範囲に亘って形成することができるので、吸収液にアルコール系の界面活性剤を添加して吸収液の表面張力を低下させる必要がなくなる。これにより、吸収式ヒートポンプ装置100において界面活性剤を吸収液に添加するメンテナンス作業を省略することができるので、その分、メンテナンス間隔を長期化させることができる。
また、第1実施形態では、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を螺旋状を有する伝熱管42の巻回方向に沿って移動させることによって、液溜まり部41aを通過して吸収液を吸液した後ブラシ部材45に吸液された吸収液を巻回された伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布するように構成する。これにより、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を伝熱管42の巻回方向に沿って移動させることにより、容易に、液溜まり部41aに貯留された吸収液を伝熱管42の表面42aに広範囲に亘って厚みの薄い液膜状に塗布することができるので、容易に熱交換器43の熱交換性能を向上させることができる。
また、第1実施形態では、熱交換器43は、中心線150(図3参照)まわりに伝熱管42が巻回されており、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を、中心線150の延びるX方向から見て、周状(円状)の伝熱管42の表面42aの一部に接触した状態で、液溜まり部41aに貯留された吸収液を伝熱管42の表面42aに沿って矢印R方向に周状に移動させながら順次塗布するように構成する。これにより、ブラシ部材45を周状(円状)の伝熱管42の表面42aの一部に接触させることにより、ブラシ部材45を周状の伝熱管42の全周(360度の全ての部分)に接触させる場合と異なり、ブラシ部材45が伝熱管42の表面42aに沿って矢印R方向に周状に移動する場合にも、ブラシ部材45が接触していない伝熱管42の表面42aを部分的に常に容器41内の雰囲気中に露出した状態にすることができるので、その伝熱管42の部分的に露出された領域(熱交換領域)に塗布された液膜状の吸収液を用いて、冷却水81との熱交換を行うことができる。このように、ブラシ部材45を周状(円状)に移動させたとしても、熱交換器43には熱交換領域が確実に確保されるので、熱交換器43の熱交換性能を確実に維持することができる。
また、第1実施形態では、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)が伝熱管42の巻回方向に沿って矢印R方向に移動される際に、伝熱管42の表面42aに残留する冷却水81との熱交換済みの吸収液(冷媒が相対的に多く吸収されて希釈された状態のLiBr水溶液)を表面42aから除去しながら、この熱交換済みの吸収液が除去された伝熱管42の表面42aに、ブラシ部材45に吸液された吸収液(冷媒の吸収量が相対的に少ない状態のLiBr水溶液(濃液))を新たに塗布するように構成する。これにより、ブラシ部材45による吸収液の塗布時に、ブラシ部材45を利用して既に熱交換済みの吸収液(希釈された状態のLiBr水溶液)を除去して伝熱管42の表面42a(伝熱面)を更新しながら、新たな吸収液(LiBr水溶液(濃液))をその更新された伝熱管42の表面42aに確実に塗布することができる。これにより、熱交換性能を落とすことなくコイル型の熱交換器43を機能させることができる。
また、第1実施形態では、一組のブラシ部材45として、巻回された伝熱管42の外周面42bに接触する外周面側ブラシ部材46と、内周面42cに接触する内周面側ブラシ部材47とを設けている。そして、外周面側ブラシ部材46と内周面側ブラシ部材47とによって、巻回された伝熱管42が挟み込まれており、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47を伝熱管42の巻回方向に沿って矢印R方向に移動させることによって、外周面側ブラシ部材46に吸液された吸収液および内周面側ブラシ部材47に吸液された吸収液が、それぞれ、巻回された伝熱管42の外周面42bおよび内周面42cに沿って順次塗布されるように構成する。これにより、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47を用いて、それぞれ、伝熱管42の外周面42b側および内周面42c側の表面42aに吸収液を液膜状に順次塗布することができる。すなわち、伝熱管42の表面42aのうち外周面42bおよび内周面42cの略全ての領域を介して吸収液と冷却水81との熱交換を行わせることができるので、熱交換器43が有する有効伝熱面積を最大限に使用して、熱交換器としての性能を発揮させることができる。これにより、熱交換性能をより効果的に向上させることができる。
また、第1実施形態では、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を一体的に矢印R方向に回転移動させるための電動モータ49を備え、熱交換器43は、中心線150まわりに伝熱管42が螺旋状に巻回されている。そして、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を、中心線150の延びるX方向から見て、伝熱管42の巻回方向に沿って円状に移動するように電動モータ49により回転移動させることによって、液溜まり部41aに貯留された吸収液を伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布する動作が繰り返されるように構成する。これにより、伝熱管42を中心線150まわりに螺旋状に巻回することにより、限られた容積(体積)の容器41内に収容される熱交換器43に、より多くの伝熱面積を効率よく確保することができるとともに、電動モータ49によりブラシ部材45を円状に回転移動させながら伝熱管42の円弧状の表面42a(伝熱面)に沿って吸収液を液膜状に繰り返し塗布することができる。このように、螺旋状に巻回された伝熱管42に沿うようにブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を回転移動させて吸収液を繰り返し伝熱面である表面42aに塗布することができるので、小型化された熱交換器43の性能を容易かつ効果的に発揮させることができる。
また、第1実施形態では、二組のブラシ部材45は、中心線150の延びるX方向から見て、伝熱管42の巻回方向に沿って互いに180度の間隔を隔てて配置されている。これにより、二組のブラシ部材45を電動モータ49により円状に移動させる際、伝熱管42の巻回方向に沿って一組のブラシ部材45(1本の外周面側ブラシ部材46および1本の内周面側ブラシ部材47)が円状に回転移動される場合と異なり、二組のブラシ部材45が180度の間隔を隔てて配置された状態で順次円状に回転移動されるので、各々のブラシ部材45の回転移動時の重量のアンバランスが生じるのを抑制することができ、その結果、重量のアンバランスに起因して容器41内に振動などが発生するのを抑制することができる。また、重量バランスが保たれる分、電動モータ49の負荷を低減させることができる。
また、第1実施形態では、熱交換器43は、中心線150まわりに巻回された伝熱管42の中心線150が液溜まり部41aの吸収液の液面に沿ったX方向に延びるとともに、巻回された伝熱管42の領域42eが液溜まり部41aに浸漬された状態で容器41内に設置されている。そして、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)が伝熱管42の巻回方向に沿って矢印R方向に移動される際に、ブラシ部材45が液溜まり部41aに浸漬されながら液溜まり部41aの吸収液を吸液するとともに、熱交換器43の液溜まり部41aに浸漬されていない伝熱管42の部分の表面42aに吸収液を順次塗布するように構成する。このように、液溜まり部41aの吸収液の液面に沿って、巻回された伝熱管42の中心線150が延びるように熱交換器43が配置されるように構成すれば、熱交換器43の長手方向(X方向)を水平方向にすることができるので、熱交換器43の伝熱面積を増加させながら、熱交換器43の高さ(Z方向)が大きくなるのを抑制することができる。また、伝熱管42の領域42eが浸漬される液溜まり部41aをブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)が通過する際に、貯留された吸収液がブラシ部材45によって攪拌されるので、液溜まり部41aの液温度または液濃度を均一化させることができる。これにより、容器41内における効率的な熱交換を図ることができるので、これによっても、熱交換性能を向上させることができる。
また、第1実施形態では、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47は、巻回された伝熱管42の表面42aに接触する樹脂繊維からなるブラシ46bおよび47bを含んでいる。そして、伝熱管42同士の中心線150の延びるX方向における離間間隔L(図6参照)は、ブラシ46bおよび47bが入り込める間隔に設定されている。これにより、外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47に吸液された吸収液(冷媒の吸収量が相対的に少ない状態のLiBr水溶液(濃液))を、芯材46aおよび芯材47aと対向する伝熱管42の外周面42b側および内周面42c側の表面42aのみならず、隣接する伝熱管42同士がX方向に対向する部分の表面42aに対しても液膜状に塗布することができる。これにより、熱交換器43の有効伝熱面積を容易に増加させることができる。
また、第1実施形態では、熱交換器43は、円筒状の伝熱管42を螺旋状に巻回することにより形成されている。このように、円筒状の伝熱管42を用いることにより、コイル型の熱交換器43(伝熱管42)の強度が向上される分、伝熱管42の肉厚を薄くすることができる。これにより、伝熱管42の肉厚が薄くなる分、吸収液と冷却水81とを隔てる伝熱壁の熱抵抗が少なくなるので熱交換性能を向上させることができる。
(第1実施形態の第1変形例)
次に、図2および図7を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例では、図7に示すように、吸収液移送管路55から供給される吸収液(LiBr濃液)が、容器141内部の天井部141b近傍から下方に向けて散布されるように吸収器140を構成した例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
すなわち、図7に示すように、吸収器140の容器141内部の天井部141b近傍には、下面に複数の小穴が開けられたヘッダ部を有する噴射器142が取り付けられている。そして、吸収液移送管路55から供給される吸収液(濃液)は、噴射器142から容器141内部に向けて液滴状または霧状に散布されるように構成されている。なお、容器141内部のブラシ部材45を含めた熱交換器43まわりの構造については、上記第1実施形態の吸収器40(図2参照)と同様に構成されている。
したがって、冷房運転時においては、気液分離部12から供給(吸引)された吸収液(濃液)が熱交換器43の上方から下方(Z1方向)に向けて散布された状態で、電動モータ49の駆動とともに4本のブラシ部材45が巻回された伝熱管42の表面42aに沿って回転移動されるように構成されている。これにより、液溜まり部141aに吸収液が少ない状態においては、噴射器142から散布された吸収液(濃液)が直接的にブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)に吸液されるとともに、ブラシ部材45に吸液された吸収液が、巻回された伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布される。また、ブラシ部材45に吸液されることなく液溜まり部141aまで自然に落下(滴下)した吸収液は、回転移動とともに液溜まり部141aを通過するブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)により吸液された後に伝熱管42の表面42aに塗布される。このようにして、噴射器142から散布された吸収液は、巻回された伝熱管42の表面42aに厚みの薄い液膜の状態で塗布される。
なお、第1実施形態の第1変形例による吸収式ヒートポンプ装置のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第1実施形態の第1変形例では、上記のように、容器141内部に噴射器142を設けるとともに、気液分離部12からの吸収液(濃液)を噴射器142を用いて熱交換器43に向けて散布するように吸収器140を構成する。これにより、吸収器140をこのように構成した場合であっても、噴射器142から散布された吸収液(濃液)が直接的にブラシ部材45に吸液されるとともに、吸液された吸収液が、巻回された伝熱管42の表面42aに沿って順次塗布することができるので、吸収液の伝熱面(表面42a)に対する濡れ性が改善されて表面42aに広範囲に亘って厚みの薄い液膜が形成される。これにより、伝熱管42の表面42aに塗布された厚みの薄い液膜により膜厚方向の熱伝達率を向上させて伝熱性能を向上させることができる。その結果、熱交換性能を向上させることができるので、熱交換器43の小型化を図ることができる。なお、第1実施形態の第1変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態)
図1、図8および図9を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、吸収器40に加えて、冷媒(水)を蒸発させる蒸発器230に対しても本発明を適用した例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置200では、図8に示すように、上記第1実施形態で用いた蒸発器30(図1参照)の代わりに、ブラシ部材45およびコイル型の熱交換器233を含む蒸発器230を備えている。また、熱交換器233を構成する螺旋状(コイル状)に巻回された伝熱管232は、容器231から外部に引き出された後、空調用の循環水管路282を介して熱交換部210に接続されている。熱交換部210では、送風機212により送風された空気(外気)が熱交換器(空気熱交)211を流通する空調用循環水281(図9参照)によって冷却される。そして、冷却された空気(冷風)は、車内に吹き出されるように構成されている。なお、熱交換器233は、本発明の「コイル型熱交換器」の一例であり、空調用循環水281は、本発明の「熱交換流体」の一例である。
したがって、第2実施形態では、図9に示すように、電動モータ239の駆動力により、支持部材48に固定された4本のブラシ部材45が円状に回転移動されることによって、容器231の液溜まり部231aに貯留された冷媒(水)が、コイル状に巻回された伝熱管232の表面232aに沿って塗布されるように構成されている。すなわち、各々のブラシ部材45は、螺旋状に巻回された伝熱管232の巻回方向に沿って矢印R方向に円状に移動されることによって、液溜まり部231aを通過して冷媒(水)を吸液した後ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)に吸液された冷媒(水)を巻回された伝熱管232の表面232aに沿って順次塗布することが可能に構成されている。すなわち、外周面側ブラシ部材46のブラシ46bおよび内周面側ブラシ部材47のブラシ47bによって冷媒(水)が表面232aに薄く塗り延ばされることにより、冷媒(水)の伝熱管232の表面232aに対する濡れ性が良好な状態を保ちながら表面232aに広範囲に亘って厚みの薄い液膜(水膜)が形成されるように構成されている。
なお、蒸発器230においては、伝熱管232の表面232aに薄膜(液膜)状に塗り延ばされた冷媒(水)は、気化熱を発生しながら盛んに蒸発されるとともに表面232aから消滅する。そして、ブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)の回転移動とともに液溜まり部231aから新たに吸液された冷媒(水)が直ちに伝熱管232の表面232aに塗布される。蒸発器230ではこのような動作が電動モータ239が駆動される期間中繰り返される。
なお、第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、蒸発器230においては、螺旋状に巻回される伝熱管232を有するコイル型の熱交換器233と、容器231の液溜まり部231aに貯留された冷媒(水)を熱交換器233の巻回された伝熱管232の表面232aに沿って塗布するブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)とを備えている。これにより、冷媒(水)は、ブラシ部材45によって伝熱管232の表面232aに沿って塗布されることにより、冷媒(水)の伝熱面(表面232a)に対する濡れ性が改善されて表面232aに広範囲に亘って厚みの薄い液膜(水膜)が形成されるので、伝熱管232の表面232aに塗布された厚みの薄い液膜により膜厚方向の熱伝達率を向上させて伝熱性能を向上させることができるとともに、広範囲に亘る液膜の形成により伝熱管232の有効伝熱面積をより増加させることができる。このため、熱交換性能を著しく向上させることができるので、その分、より小型化された熱交換器233を用いて従来と同等の熱交換量を確保することができる。
また、上記のように、螺旋状に巻回される伝熱管232を有するコイル型の熱交換器233を備えることによって、容器231内における単位体積あたりの伝熱面積を増加させることができるので、これによっても熱交換性能を向上させることができ、熱交換器233の小型化を図ることができる。また、液溜まり部231aに貯留された冷媒(水)を、ブラシ部材45により熱交換器233の伝熱管232の表面232aに塗布することによって、上記第1実施形態の蒸発器30(図1参照)のように、容器31外部に設置したポンプ35により冷媒貯留部31aに貯留された冷媒(水)を吸引して容器31内の熱交換部32に上方から噴霧(散布)するような冷媒移送管路34(図1参照)などを第2実施形態における吸収式ヒートポンプ装置200内に設置する必要がない。これにより、吸収式ヒートポンプ装置200の小型化を図ることができる。これらの結果、蒸発器230における熱交換器233の熱交換器性能を維持しつつ吸収式ヒートポンプ装置200の小型化を図ることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、流入する入口部43aおよび流出する出口部43bがX方向に延びる熱交換器43の一方側(X2側)に配置されるように伝熱管42を螺旋状に巻回して熱交換器43を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示す第2変形例のように、冷却水81が一方側(X2側)に設けられた入口部43aから流入されるとともに、一方側とは反対側の他方側(X1側)に設けられた出口部43bから流出されるように伝熱管42を螺旋状に巻回して熱交換器243を構成してもよい。また、このような熱交換器243を容器41内に設置する場合の吸収器240においては、上記第1実施形態で示した吸収器40(図2参照)おけるブラシ部材45の回転移動動作とは異なる動作が行われる。なお、熱交換器243は、本発明の「コイル型熱交換器」の一例である。
すなわち、第2変形例においては、図10に示すように、出口部43bでは、螺旋状に巻回された伝熱管42が直管状態となってX1方向に延びて容器41外部に引き出されるため、ブラシ部材45とともに中心線150まわりに回転する支持部材48を360度を越えて同一方向に回動させようとしても伝熱管42の直管部43cと干渉(接触)してしまう。そこで、図11および図12に示すように、電動モータ49(図10参照)の回転制御を行うことにより、回動する支持部材48(X1側から見た場合の外形を一点鎖線で示す)が伝熱管42の直管部43cに干渉(接触)しない回動角度範囲で支持部材48を矢印R1方向(図11参照)および矢印R2方向(図12参照)に交互に回動させて、ブラシ部材45を伝熱管42の外周面42bおよび内周面42cに沿って移動させるように構成することが可能である。
まず、図11においては、Z1側(下側)に配置された吸収液中の2本のブラシ部材45が、支持部材48が直管部43cに極力干渉しない位置から直管部43cと遠ざかる矢印R1方向(時計回り)に回動される。そして、吸収液を吸液した状態で液面から離脱して吸収液を塗布しながら伝熱管42の表面42a上を矢印R1方向に移動する。この場合、支持部材48が170度程度矢印R1方向に回動された状態で電動モータ49を一旦停止する。これにより、図11においてZ2側(上側)に配置された吸液されていない別な2本のブラシ部材45が、図12においては直管部43cの近傍まで下方に移動されて吸収液に浸漬される。そして、停止中の電動モータ49を上記とは反対方向(矢印R2方向)に回動させることにより、この吸収液に浸漬された2本のブラシ部材45が吸収液を吸液した状態で吸収液から離脱して吸収液を塗布しながら伝熱管42の表面42a上を矢印R2方向(反時計回り)に移動する。この場合も、支持部材48が170度程度矢印R2方向に回動された状態で電動モータ49を再び停止することにより、図11に示した状態に戻される。
第2変形例では、このような動作を繰り返すことにより、直管部43cを有する熱交換器243を用いても、4本のブラシ部材45により吸収液を伝熱管42の表面42aに薄く塗り延ばすことができるので、本発明の効果を得ることができる。また、第2変形例では、ブラシ部材45の回動が矢印R1方向と矢印R2方向とで交互に繰り返される。これにより、同一方向への塗布動作の繰り返しに起因してブラシ46b(47b)の先端部が所定の形状に変形したり早期に磨耗したりするのを効果的に抑制することができる。このようなブラシ部材45の劣化が抑制される分、ブラシ部材45の交換作業などのメンテナンス間隔を長期化させることができる。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、ブラシ部材45を常に矢印R方向に回転移動させるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記第2変形例の場合と同様に、ブラシ部材45を所定時間だけ矢印R方向に回転移動させた後、次の所定時間は矢印R方向と反対方向にブラシ部材45を回転移動させるとともにこの動作を周期的に繰り返すように電動モータ49を制御してもよい。これにより、同一方向への塗布動作の繰り返しに起因してブラシ46b(47b)の先端部が所定の形状に変形したり早期に磨耗したりするのを効果的に抑制することができる。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、4本のブラシ部材45(外周面側ブラシ部材46および内周面側ブラシ部材47)を、共に中心線150に対して平行なまま熱交換器43の延びるX方向に直線状(棒状)に延びるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図13に示す第3変形例のようなブラシ部材345を用いてもよい。なお、ブラシ部材345は、本発明の「塗布部材」の一例である。
具体的には、第3変形例によるブラシ部材345は、図13に示すように、外周面側ブラシ部材346は伝熱管42の外周面42bに沿って矢印R1方向に巻き付き(緩やかなねじれ)を伴いながらX2方向に沿って延びるとともに、内周面側ブラシ部材347も伝熱管42の内周面42cに沿って矢印R1方向に巻き付き(緩やかなねじれ)を伴いながらX2方向に沿って延びるように構成されている。すなわち、芯材346a(347a)自体がゆるい螺旋形状を有するとともにこの芯材346a(347a)にブラシ46b(47b)が放射状に取り付けられている。したがって、4本のブラシ部材345は、第1実施形態のブラシ部材45(図2参照)よりもねじれを伴う分全長が長い。そして、この状態で、4本のブラシ部材345は、X1側の端部が支持部材48(図2参照)に固定されるとともに、支持部材48と一体的に矢印R2方向に回転移動されるように構成されている。
これにより、外周面側ブラシ部材346を例にとって説明すると、外周面側ブラシ部材346が矢印R2方向に回転された際、領域A付近のブラシ46bから先に吸収液(図3参照)に着液され始め、その後、領域B、領域Cおよび領域D付近のブラシ46bの順に吸収液に着液される。また、ブラシ46bへの吸収液吸液後は、領域A、B、CおよびDの順に吸収液液面(図3参照)から上方(Z2方向)に離脱して伝熱管42の領域Aに対応する表面42aの部分、領域Bに対応する表面42aの部分、領域Cに対応する表面42aの部分および領域Dに対応する表面42aの部分の順に、順次、吸収液が塗布される。この動作が、内側および外側の合計4本のブラシ部材345の全てにおいて行われる。なお、第3変形例では、ブラシ部材345が螺旋形状を有するので、液溜まり部41a(図2参照)に貯留された吸収液は、ブラシ部材345の回転移動に伴いX方向(熱交換器43の長手方向)への流動が促進される。
第3変形例のように構成すれば、ブラシ部材345の全長をより長くすることができるので、ブラシ部材345全体としての吸収液の吸液量を増加させることができる。これにより、ブラシ部材345の1回転あたり伝熱管42への吸収液の塗布量を増加させることができるので、その分、ブラシ部材345(電動モータ49)の回転数を落とすことができる。また、ブラシ部材345が螺旋形状を有するので、ブラシ部材45(図2参照)のように吸収液への着液および吸収液からの離脱が全長方向に亘って同時に行われることなく領域A、B、CおよびDの順で徐々に行われるので、ブラシ部材345が吸収液中を通過する際の流体抵抗を抑えることができる。すなわち、電動モータ49に加わる負荷を抑制することができる。加えて、螺旋形状を有するブラシ部材345が回転されるので、熱交換器43の長手方向に沿った吸収液の流動を引き起こすことができるので、液溜まり部41aの吸収液を効率よく攪拌することができる。また、各々のブラシ部材345が螺旋形状を有して熱交換器43に巻き付けられているので、ブラシ部材345の一方端部のみが支持部材48に固定されていても、4本のブラシ部材345が支持部材48と一体となって伝熱管42から離脱することなく伝熱管42まわりを安定して回転移動することができる。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、本発明の「塗布部材」の一例として、棒状の芯材46aに放射状に延びる樹脂繊維からなるブラシ46bを取り付けて外周面側ブラシ部材46を構成するとともに、棒状の芯材47aに放射状に延びる樹脂繊維からなるブラシ47bを取り付けて内周面側ブラシ部材47を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図14に示す第4変形例のようなブラシ部材445(外形を一点鎖線450で示す)を用いてもよい。
具体的には、第4変形例によるブラシ部材445は、図14に示すように、所定の剛性を有して複数の芯材445aがメッシュ状に縦横に編み込まれて全体として短冊状に形成された芯材部445c(外形を太い一点鎖線460で示す)と、芯材部445cの上面側および下面側の両方の表面(X方向およびY方向)に沿って植毛されるように取り付けられた樹脂繊維などからなるブラシ445bとを有している。なお、芯材部445cは、伝熱管42(図3参照)の巻回形状(外周面42bまたは内周面42cの曲率)に対応するように若干の曲面形状を有して形成されるのが好ましい。これにより、この芯材部445cの曲面形状に沿って植毛された複数のブラシ445bは、伝熱管42の外周面42bまたは内周面42cに適切に接触することができるので、吸収液または冷媒を伝熱管42の表面42aに適切に塗布することができる。なお、ブラシ部材445は、本発明の「塗布部材」の一例である。なお、ブラシ部材445は、上記第1実施形態における吸収器40(図2参照)や、上記第2実施形態における蒸発器230(図9参照)のいずれにも使用することができる。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、樹脂繊維からなるブラシ46b(47b)を使用してブラシ部材45を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、吸液性が容易でかつ保持(吸液)された液体を容易に開放(流出)しながら伝熱管42の表面42aに塗布することが可能な材料を用いて、本発明の「塗布部材」を構成してもよい。たとえば、多孔質構造を有するスポンジ状の材料を用いて塗布部材を構成してもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、伝熱管42の外周面42b側に外周面側ブラシ部材46を配置するとともに伝熱管42の内周面42c側に内周面側ブラシ部材47を配置して伝熱管42を挟み込んだ状態で吸収液を塗布した例について示したが、本発明はこれに限られない。1本のブラシ部材45を伝熱管42の外周面42b側にのみ設けてもよいし、内周面42c側にのみ設けてもよい。この場合においても、伝熱管42同士の中心線150の延びるX方向における離間間隔L(図6参照)は、ブラシ部材45が入り込める間隔に設定されるのが好ましい。これにより、1本のブラシ部材45に吸液された吸収液を、伝熱管42の外周面42b側または内周面42c側の一方の表面42aのみならず、他方の表面42aに対してもブラシ部材45が入り込んで液膜状に塗布することができる。これにより、熱交換器43の有効伝熱面積を容易に増加させることができる。また、ブラシ部材45を伝熱管42の外周面42b側のみに設置する場合には、伝熱管42の下方を吸収液に浸漬せずにブラシ部材45が最下端に位置した状態で吸収液を吸液可能なようにブラシ部材45のみを吸収液に浸漬するようにしてもよい。これにより、熱交換器43が吸収液に浸漬されない分、伝熱管42の表面42aの全ての領域が有効伝熱面となって塗布された吸収液の冷却を行うことができるので、熱交換性能を最大限に発揮させることができる。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、二組のブラシ部材45を、中心線150の延びる方向から見て、伝熱管42の巻回方向に沿って互いに180度の間隔を隔てて配置した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、三組のブラシ部材45を伝熱管42の巻回方向に沿って互いに120度の間隔を隔てて配置してもよいし、四組のブラシ部材45を伝熱管42の巻回方向に沿って互いに90度の間隔を隔てて配置してもよい。ただし、各々のブラシ部材45が伝熱管42の表面42aの一部に接触する本数にとどめておく必要がある。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、電動モータ49からの回転軸49aを支持部材48のボス部48aに固定することによって支持部材48を回動させるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、容器41外部の電動モータ49の回転軸に磁気を帯びた回転子を取り付けるとともに、ブラシ部材45を固定する支持部材48にも磁石を取り付けるように構成する。そして、容器41の壁部を隔てて電動モータ49の回転子と支持部材48とを極力近づけるように各々を配置することにより、電動モータ49の回転子と支持部材48とが磁力によって引き合う際のトルクを利用して支持部材48を回転させるようにしてもよい。これにより、電動モータ49が容器41内部と完全に隔離されるので、容器41にシール材41eなどを設ける必要がなく、容器41の気密性(真空状態)をより確実に保つことができる。また、ギアボックスなどを含まず電動モータ49に回転軸49aを直結して支持部材48を回動させてもよいし、電動モータ49にベルトを介してベルト駆動方式で支持部材48を回動させるように構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、蒸発器230の熱交換器233に空調用循環水281を流通させて冷媒(水)と空調用循環水281とを熱交換させた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記第1実施形態の蒸発器30の使用方式と同様に、熱交換器233内部に空調用の空気を直接流通させることにより、蒸発器230において冷媒(水)と空調用の空気とを熱交換させるように吸収式ヒートポンプ装置を構成してもよい。このように構成しても、ブラシ部材45により伝熱管232の表面232aに塗布された冷媒(水)の効率的な蒸発とともに伝熱管232内部を流通する空調用の空気が効率的に冷却される。なお、熱交換器233を流通する空調用の空気は、本発明の「熱交換流体」の一例である。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、本発明の「吸収式ヒートポンプ装置」を、エンジン(内燃機関)を備えた乗用車、バスおよびトラックなどの車輌の空調システムに適用する例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ディーゼルエンジンを備えた列車や船舶などの空調システムに適用してもよい。また、本発明は、車輌のような移動体のみならず、ビル、工場、商業施設などの空調を行う据置型の吸収式ヒートポンプ装置に対しても広く適用することができる。また、空調システムの規模に応じて、本発明のコイル型熱交換器と塗布部材との組み合わせを、吸収器や蒸発器内に複数個設けるように構成してもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、エンジン(内燃機関)の排気ガスの熱を利用して吸収液を加熱する例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明の「吸収式ヒートポンプ装置」をエンジン駆動および電動モータ駆動を併用して走行するハイブリッド自動車や電動モータ駆動により走行する電気自動車の空調システムに適用してもよいし、燃料電池システムを備えた乗用車の空調システムに適用してもよい。すなわち、吸収液を加熱する熱源は、エンジンの排気ガスのみならず、たとえば電気自動車のバッテリやモータの排熱や燃料電池における発電時の排熱などを熱源としてもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の第1変形例および第2実施形態では、冷媒および吸収液として、それぞれ、水および臭化リチウム(LiBr)水溶液を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷媒および吸収液として、それぞれ、アンモニアおよび水を用いた吸収式ヒートポンプ装置に本発明を適用してもよい。