以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)および図1(b)は、実施形態に係る洗い場洗浄装置が設置された浴室を表す斜視図である。
実施形態に係る洗い場洗浄装置100は、吐水部10と、吐水部10の動作を制御する制御部30と、を有する。洗い場洗浄装置100は、吐水部10から洗浄水を吐水して、浴室の洗い場床520および洗い場排水口521(以下、排水口521)を洗浄する洗浄装置である。
図1(a)に表したように、洗い場洗浄装置100が設置される浴室500には、第1〜第4の壁541〜544、浴槽510、洗い場床520およびカウンタ530が設けられている。さらに、浴室500には、鏡、給水栓、シャワーホースなどが適宜設けられている。図1(b)は、カウンタ530の近傍を拡大した斜視図である。
浴槽510は、洗い場床520からみて第4の壁544側に設けられている。例えば、浴槽510は、第4の壁544と接するように配置される。洗い場床520は、浴槽510と第3の壁543との間に設けられている。
洗い場床520は、周囲に立設された壁面540に囲まれている。ここで「壁面」とは、第1〜第4の壁541〜544だけでなく、浴槽510の側面も含む。この例では、洗い場床520を囲む壁面540は、第1〜第3の壁541〜543および浴槽510の側面である。なお、第1〜第4の壁541〜544は、浴室のドアなどを含んでいてもよい。
本願明細書において、第2の壁542から第1の壁541へ向かう方向を「前方」とし、これと反対の方向を「後方」とする。また、前後方向および上下方向に対して垂直な方向を横方向とする。
洗い場床520には、排水口521が設けられている。排水口521は、洗い場床520の前後方向における中央付近であって、洗い場床520の浴槽510側の端に設けられている。洗い場床520には、排水口521へ向かって緩やかに下る排水勾配が設けられている。
カウンタ530、鏡、給水栓およびシャワーホースは、第2の壁542に取り付けられている。また、図1(b)に表したように、カウンタ530は、天板531と下カバー532とを有する。
カウンタ530は、洗い場床520から上方に離間して配置されている。支持材(不図示)が第2の壁542に取り付けられ、カウンタ本体は、この支持材に取り付けられている。カウンタ530は、上方から見たときに、横方向に長い略矩形状である。
吐水部10は、カウンタ530の下部であって、洗い場床520から離間した位置に設けられている。また、吐水部10は、洗い場床520の横方向における中央付近に設置されている。これにより、洗浄水を洗い場床520の全体に吐水しやすくなる。
浴室500の外部(例えば第2の壁542の後方)には、給水管51が設けられており、給水管51から洗い場洗浄装置100に水道水が供給される。そして、吐水部10は、吐水制御手段18を介して、給水管51と接続されている。
吐水制御手段18には、例えば、上流側(給水管51側)から順に、不図示のストレーナ、電磁弁、調圧弁、逆止弁および除菌水生成部等が設けられている。電磁弁、調圧弁等によって、下流側(吐水部10側)への水道水の供給(流量や水圧など)が調整される。
除菌水生成部は、吐水部10に供給される洗浄水に除菌成分を混入させて除菌水を生成する。例えば、除菌水生成部は、陽極と陰極とを有する電解槽である。除菌水生成部は、陽極と陰極との間に電圧を印加して、陽極と陰極との間を流れる水道水を電気分解する。これにより、除菌水生成部は、水道水を変性して除菌水を生成する。
除菌水は、例えば、次亜塩素酸を含む水である。水道水は、塩化物イオンを含んでいるため、その塩化物イオンを電気分解することによって、次亜塩素酸が生成される。その結果、電気分解された水は、次亜塩素酸を含む液に変化する。
除菌水は、金属イオン水(例えば、銀イオン、銅イオンまたは亜鉛イオンなどの金属イオンを含む水)またはオゾンを含む水であってもよい。例えば、水道水が電気分解される際、陰極においては酸(H+)が消費され、陰極の近傍ではpHが上昇する。すなわち、陰極の近傍では、アルカリ水が生成される。一方、陽極においてはアルカリ(OH−)が消費され、陽極の近傍ではpHが下降する。すなわち、陽極の近傍では、酸性水が生成される。除菌水生成部における流量を変化させることで、除菌水に含まれる成分の濃度を制御することができる。
なお、除菌水生成部は、電解槽に限定されるわけではない。例えば、除菌水は、除菌剤を水道水に溶解させて生成された除菌水であってもよい。また、実施形態において、洗い場洗浄装置100は、必ずしも除菌水生成部を有していなくてもよいし、吐水に際して除菌水生成部を動作させなくてもよい。すなわち、洗い場洗浄装置100は、水道水を吐水してもよい。
以上により、吐水部10に除菌水又は水道水が供給される。そして、吐水部10は、洗浄水として除菌水又は水道水を、洗い場床520や排水口521へ向けて吐水する。これにより、洗い場床520や排水口521を洗浄することができる。
また、吐水部10には、モータ17が設けられている。モータ17は、例えばステッピングモータである。モータ17によって吐水部10を回転させて、洗浄水が吐水される方向を変化させることができる。
制御部30は、例えば、マイコンなどの集積回路である。制御部30は、例えば、浴室500の外部に設けられており、吐水制御手段18(電磁弁、除菌水生成部)及び吐水部10(モータ17)と接続されている。制御部30は、吐水制御手段18および吐水部10の動作を制御することで、洗浄水の吐水形態(吐水方法、撒き方)を制御することができる。
例えば、吐水制御手段18は、制御部30からの信号に基づいて、電磁弁の開閉を行う。これにより、下流側への水道水の供給が制御される。また、吐水制御手段18は、制御部30からの信号に基づいて、除菌水生成部(電解槽)のON/OFFを切り替える。吐水部10は、制御部30からの信号に基づいて、回転角度や回転速度を変化させる。このようにして制御部30は、除菌水の濃度、吐水される洗浄水の瞬間流量(単位時間当たりの流量m3/s)、吐水される洗浄水の総量、および、洗浄水の吐水方向などの吐水方法を制御することができる。
また、図1(a)に表したように、制御部30と接続された操作部35(選択操作部)が、浴室500の外側(又は内側)に設けられる。洗い場洗浄装置100の使用者は、この操作部35を用いることにより、洗い場洗浄装置の動作を操作することができる。
図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る洗い場洗浄装置の吐水部を例示する側面図である。これらは、吐水部10が洗浄水を吐水する様子を表している。また、図2(b)は、図2(a)の吐水部10の近傍を拡大して表している。
吐水部10は、第1の吐水口11と、第2の吐水口12と、を有し、各吐水口から洗浄水が吐水される。第1の吐水口11は、洗い場床520のうち吐水部10から遠い範囲を受け持つ遠方用吐水口である。第2の吐水口12は、洗い場床520のうち吐水部10から近い範囲を受け持つ近傍用吐水口である。図2(b)に表したように、除菌水は、第1の吐水口11および第2の吐水口12から上下方向に広がって、吐水される。
また、吐水部10は、モータ17の動作により、回転軸10xを中心として回転しながら吐水することができる。回転軸10xは、鉛直方向に延び、上方から見たときに吐水部10の略中央に位置する。
吐水部10の回転角度に応じて第1の吐水口11および第2の吐水口12の向きが変化する。これにより、洗浄水が吐水される洗い場床520上の部位(吐水領域)を変えることができ、洗い場床520の略全体に洗浄水を撒くことができる。
なお、回転軸10xが延びる方向は、鉛直方向に限られない。また、吐水部10は、スライド動作(例えばカウンタ530の長手方向に沿った往復移動)可能であってもよい。吐水部10は、スライド動作、又は、吐水する洗浄水の流量の変化によって、吐水領域を変化させる構成であってもよい。
また、吐水口の形状によって、吐水される洗浄水の形態を調整することができる。例えば、洗浄水が除菌水の場合には、吐水口の径を小さくして除菌水を霧状とする。霧状の除菌水は、洗い場床上に滞留しやすいため、除菌水が洗い場床上の菌に作用する時間を確保することができる。これにより、より少ない量の除菌水で、洗い場床を除菌することができる。
図3は、実施形態に係る洗い場洗浄装置による、洗い場床の洗浄を例示する平面図である。
制御部30は、吐水部10の動作を制御して、洗い場を洗浄する本洗浄モードを実行する。本洗浄モードには、洗い場床520を洗浄する床洗浄モード(床吐水モード)と、排水口521を洗浄する排水口集中吐水モードと、が含まれる。図3は、床洗浄モードにおける吐水部10の動作を表している。なお、排水口集中吐水モードについては、図8に関して後述する。
本洗浄モード中のある時刻において、吐水部10は、洗い場床520上の一部の領域(吐水領域)に洗浄水を吐水する。例えば、ある時刻において、吐水部10は、図3に示す吐水方向Aに向けて洗浄水を吐水する。このとき、吐水された洗浄水は、扇状または三角形状の広がり210を有し、その広がり210に対応した床の一部(吐水領域)に洗浄水が撒かれる。なお、上方から見て、扇状又は三角形状の広がり210の中心角を二等分する方向として吐水方向を定義している。
床洗浄モードにおいて、制御部30は、吐水領域を変化させて、洗い場床520の全体に洗浄水を吐水する。この例では、制御部30は、吐水部10(吐水方向A)を角度θ1回転させながら洗浄水を吐水する。角度θ1は、例えば、180°以上360°以下程度である。これにより、洗い場床520の略全体に洗浄水が吐水される。
なお、本洗浄モードにおいて、吐水部10の回転は断続的であってもよい。すなわち、回転と、回転の停止と、を繰り返すことで、吐水部10を合計で角度θ1回転させてもよい。この場合、吐水部10は、回転の停止中にも洗浄水を吐水する。
洗い場床520の汚れ易さや除菌水の流れ易さは、洗い場床520の部位によって異なることがある。そこで、床洗浄モードにおいて、吐水部10の回転角度(洗浄水が吐水される方向)に応じて、洗浄水の吐水方法(撒き方)を変化させながら洗い場床520の略全体に洗浄水を吐水する。これにより、洗い場床520の部位に応じて最適な吐水を行うことができ、より少ない量の洗浄水で効率的に洗い場床520を洗浄することができる。なお、洗い場床520の部位に応じて洗浄水の撒き方を変える制御の具体例については、図10に関して後述する。
ところで、洗い場床には、LR違い、ノズル位置違い、サイズ違いなど多種の床タイプが存在する。
図4(a)〜図4(i)は、浴室の床タイプを例示する平面図である。
図4(a)及び図4(b)は、床タイプのLR違いを表す。図4(a)では、排水口521は、洗い場床520の長手方向に延在する縁部520a及び520bのうち、縁部520aに隣接するように設けられている。図4(b)では、排水口521は、縁部520bと隣接するように設けられている。すなわち、床タイプには、吐水部10からみて右側に排水口521が配置されるタイプ(Rタイプと称する)と、吐水部10からみて左側に排水口521が配置されるタイプ(Lタイプと称する)と、がある。LR違いによって、洗い場床520上の排水勾配の方向が異なる。
図4(c)〜図4(e)は、床タイプのノズル位置違いを表す。これらの例では、排水口521は、縁部520aに隣接するように設けられている。
そして、図4(c)では、吐水部10(ノズル)は、横方向において、洗い場床520の中央からみて縁部520a側に配置されている(左ノズルタイプと称する)。
図4(d)では、吐水部10は、横方向において、洗い場床520の中央付近に設けられている(中央ノズルタイプと称する)。
図4(e)では、吐水部10は、横方向において、洗い場床520の中央から見て縁部520b側に配置されている(右ノズルタイプと称する)。
このように、多種の床タイプには、洗い場床520上における吐水部10の位置が互いに異なるタイプが含まれる。
図4(f)〜図4(i)は、床タイプのサイズ違いを表す。これらの例では、排水口521は縁部520aに隣接するように設けられており、吐水部10は横方向において洗い場床520の中央付近に設けられているが、洗い場床520の大きさが互いに異なる。このように、多種の床タイプには、洗い場床520のサイズが互いに異なるタイプが含まれる。
図4(a)〜図4(i)に関して説明したように、浴室の洗い場床には多種の床タイプが存在し、床タイプが変わると、吐水部10と洗い場床520の各部位との相対的位置関係も変化する。このため、洗い場床520の部位に応じて洗浄水の撒き方を変える制御が、予め一通りに定まっている場合には、その制御を多種の床タイプに対応させることができない。
これに対して、実施形態においては、制御部30は、多種の洗い場床に対応するために、複数の床洗浄モード候補(シーケンス)を予め記憶している。複数の床洗浄モード候補は、所定の吐水領域(吐水部10の所定の回転角度)に対する洗浄水の吐水方法において、互いに異なる。例えば、複数の床洗浄モード候補は、洗い場床520のLR違いに応じて定められたシーケンス、及び、ノズル位置違い(洗い場床520又はカウンタ530に対する吐水部10の配置違い)に応じて定められたシーケンス、を選択肢として含む。
この例では、複数の床洗浄モード候補は、LR違い(Lタイプ用およびRタイプ用の2種類)と、ノズル位置違い(左ノズルタイプ用、中央ノズルタイプ用および右ノズルタイプ用の3種類)と、の組み合わせに応じて6つのシーケンスを含む。複数の床洗浄モード候補は、洗い場床520のサイズ違いに応じて定められたシーケンスを選択肢として含まない。
そして、使用者(洗い場洗浄装置100を浴室へ設置する現場作業者)は、操作部35を用いて、複数の床洗浄モード候補の中から1つを選択することができる。選択された1つが、図3に関して説明した床洗浄モードとして決定される。
図5は、実施形態に係る洗い場洗浄装置における、床洗浄モード候補の選択を例示する概念図である。
例えば、現場作業者が、操作部35に設けられた停止ボタンを長押しすることによって制御部30は、選択モードを実行する。選択モードにおいて、現場作業者は、操作部35に設けられた洗浄ボタンを押すことで、複数の床洗浄モード候補の中から1つを選択することができる。
選択モードにおいて、洗浄ボタンが押されると床洗浄モードの設定がリセットされ、洗浄ボタンを押した回数に応じて複数の床洗浄モード候補(シーケンス)のいずれかが選択及び設定される。これにより、現場の床タイプに応じて、床洗浄モードを設定することができる。
このように、実施形態においては、予め記憶されている複数の床洗浄モード候補の中から1つを選択して床洗浄モードを決定することにより、吐水部の回転角度に応じて洗浄水(除菌水)の撒き方を変える制御を、多種の床タイプに対応させることができる。
また、現場作業者が床洗浄モード候補を現場で選択することができるため、工場などにおける事前の設定を不要とすることができる。洗い場洗浄装置100の出荷の際には、多種の床タイプに対して共通の制御部30をセットしておけばよい。床タイプに応じた制御部30の設定を予め工場で行う場合には設定ミスや同梱ミス等による再発注が必要となる場合があるが、制御部30の設定を現場で行えば、このような問題は生じない。
ここで、操作部35を用いて複数の床洗浄モード候補から1つを選択するときに、現場で作業者が迷わないように、床洗浄モード候補の数を極力少なくすることが好ましい。前述した通り、床タイプには、LR違い、サイズ違い、ノズル位置違いなどがあり、全ての組み合わせに対して床洗浄モード候補を予め定めると、床洗浄モード候補の数が膨大になり、現場での選択作業が大変になる。
本願発明者らが検討した結果、洗い場床520の部位に応じて洗浄水の撒き方を変える制御を行う上で、LR違い及びノズル位置違いは、洗浄効率に大きな影響を及ぼすが、サイズ違いによる影響は、比較的小さいことが分かった。そこで、上記の例では、洗浄効率に与える影響が比較的小さく、且つ、床洗浄モード候補の数が膨大になる大きな要因であるサイズ違いを選択肢として考慮しないようにしている。これにより、候補数が少なくなり、現場での選択作業性を高めることができる。
なお、図5に関して説明した、選択モードにおける停止ボタン及び洗浄ボタンの操作は一例であり、実施形態はこれに限らない。選択モードに関する操作は、洗い場洗浄装置100の施工説明書に記載される。これにより、制御部30が多種の洗い場床に対応するために複数の洗浄モード候補を予め記憶していること、および、複数の床洗浄モード候補から床洗浄モードを選択する操作の方法を確認できる。
制御部30は、上記の選択モードにより、床タイプに応じた床洗浄モードを設定した後、床タイプ設定確認モードを行う。これにより、設定された床洗浄モードが正しいかどうか、すなわち、吐水部10と洗い場床520との相対位置設定が合っているかどうかを確認する。
図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る洗い場洗浄装置における、床タイプ設定確認モードを例示する平面図である。
床タイプ設定確認モードにおいて、制御部30は、吐水領域の移動を停止、または、床洗浄モードにおけるよりも狭い範囲で吐水領域を移動させて、洗い場床520の所定部にのみ洗浄水を吐水する。すなわち、床タイプ設定確認モードにおいて、吐水部10は、回転を停止、または、床洗浄モードよりも狭い回転範囲で回転しながら、吐水を行う。
図6(a)の例では、洗い場床520の所定部位として排水口521付近のみに洗浄水が吐水される。このとき、吐水部10は、吐水方向が排水口521へ向かう状態で回転を停止しながら洗浄水を吐水している、または、吐水方向が排水口521の周辺に向かう範囲内で回転しながら洗浄水を吐水している。
図6(b)の例では、洗い場床520の所定部位として洗い場床520の隅部C1付近のみに洗浄水が吐水される。このとき、吐水部10は、吐水方向が隅部C1へ向かう状態で停止しながら洗浄水を吐水している、または、吐水方向が隅部C1の周辺に向かう範囲内で回転しながら洗浄水を吐水している。
なお、「所定部位のみに洗浄水を吐水する」とは、吐水方向(吐水部10の回転角度)を表すものであり、所定の部位(例えば排水口521又は隅部C1)と吐水部10との間の領域にも洗浄水が吐水されていてもよい。
このように、床タイプ設定確認モードにおける吐水部10の動作は、選択された床タイプ(床洗浄モード)に対応して、洗い場床520の所定部位のみに洗浄水が吐水されるように設定されている。このため、選択された床タイプが、実際の床タイプに合っていれば、床タイプ設定確認モードにおいて、洗浄水が所定部位に吐水される。一方、選択された床タイプが、実際の床タイプに合っていない場合は、床タイプ設定確認モードにおいて洗浄水は所定部位に吐水されない。したがって、床タイプ設定確認モードにおいて、所定部位に洗浄水が吐水されているかどうかを確認するだけで、床タイプの選択が正しいがどうか、すなわち、洗い場床520に対する吐水部10(電動ノズル)の相対位置設定が合っているかどうかを判断できる。これにより、吐水部10の相対位置設定が合っているかを容易に確認することが可能である。
また、床タイプ設定確認モードにおいて洗浄水が吐水されている時間(例えば5秒程度)は、床洗浄モードにおいて洗浄水が吐水されている時間(例えば5分程度)よりも短い。これにより、吐水部の相対位置設定が合っているかを短時間で確認することができる。このように、床タイプ設定確認モードにおいて洗浄水の吐水時間を短くすることにより、節水することができる。
制御部30は、床タイプ設定確認モードを実行した後、さらに動作確認モードを実行する。
図7は、実施形態に係る洗い場洗浄装置における、動作確認モードを例示する平面図である。
動作確認モードにおいて制御部30は、床洗浄モードと同様に、例えば角度θ1程度の範囲を回転しながら洗い場床520の略全体に洗浄水を吐水するように吐水部10を制御する。但し、動作確認モードにおいて吐水部10が洗浄水を吐水する時間(例えば20秒程度)は、床洗浄モードにおいて吐水部10が洗浄水を吐水する時間よりも短い。つまり、動作確認モードにおける吐水部10の平均回転速度は、床洗浄モードにおける吐水部10の平均回転速度よりも高い。
床タイプ設定確認モードとは別に、動作確認モードを実行することによって、吐水部10が全体として正常に動作するかを確認できる。すなわち、動作確認モードによって、洗い場床520の全体に、設定通りに洗浄水が吐水されるかどうかを確認することができる。動作確認モードにおける吐水時間は、床洗浄モードにおける吐水時間よりも短いため、吐水部10が全体として正常に動作するかどうかの確認を短時間で行うことができる。
以上説明したように、制御部30は、選択モード、床タイプ設定確認モード及び動作確認モードを実行し、その後、本洗浄モード(床洗浄モード)を実行する。これにより、多種の床タイプに対応して、効率の良い洗浄を行うことができる。
次に、排水口集中吐水モードについて説明する。
図8は、実施形態に係る洗い場洗浄装置による、排水口の洗浄を例示する平面図である。
排水口集中吐水モードは、床洗浄モードよりも狭い範囲で吐水領域を変化させて、排水口521及びその近傍のみに洗浄水を吐水する。すなわち、制御部30は、排水口集中吐水モードにおいて、床洗浄モードよりも狭い回転範囲で回転しながら吐水するように吐水部10を制御して、排水口521及びその近傍のみに洗浄水を吐水する。
図8の例では、吐水方向Aが方向A1から方向A2までである角度θ2の範囲で吐水部10を回転させている。角度θ2は、図3に示す角度θ1よりも小さい。例えば、吐水方向Aが方向A1であるとき、及び、方向A2であるときに、洗浄水の広がり210は、上方から見て排水口521の少なくとも一部と重なる。すなわち、例えば、吐水部10の回転角度が、排水口集中吐水モードの回転範囲内であるとき、排水口521の少なくとも一部に洗浄水が直接吐水される。
床洗浄モードにおいて洗い場床520上に洗浄水を吐水すると、洗い場床520の排水勾配に従って、洗浄水は排水口521へ流れる。これにより、排水口521にも洗浄水が供給される。しかし、排水口521の洗浄の観点からは、洗い場床520上を流れた洗浄水ではなく、排水口521に洗浄水を直接、集中的に吐水することが好ましい。そこで、実施形態においては、床洗浄モードを実行した後に排水口集中吐水モードを行う。排水口集中吐水モードにおいても、洗浄水として水道水及び除菌水のいずれを用いてもよい。
既に述べたとおり、洗い場床520には多種の床タイプがあり、例えば床サイズが変わると、吐水部10と排水口521との相対位置関係が変化する。このため、床サイズが変わることによって、排水口521へ集中的に洗浄水が直接届きにくくなる場合がある。これに対して実施形態においては、排水口集中吐水モード時に吐水部10を回転させて吐水領域を変化させるようにしたため、床タイプに応じて吐水部10と排水口521との相対位置が変化した場合でも、洗浄水を排水口521の全体へ直接吐水することができる。これにより、様々な床サイズに対しても、洗い場床520を経由していないフレッシュな洗浄水を排水口の全体に満遍なく直接吐水することができる。
例えば、比較例の方法として、吐水部10の回転を停止させた状態で、排水口521を含む広い範囲に洗浄水を吐水する方法も考えられる。しかし、この方法では、大流量の洗浄水が必要となる。洗浄水の種類(例えば次亜塩素酸含有水)によっては、大流量の洗浄水を生成することが困難な場合もあるため、吐水部10の回転を停止させた状態で洗浄水を広範囲に吐水する方法は好ましくない。
また、別の比較例の方法として、床サイズに合うように制御部30の設定を調整する方法も考えられる。しかし、この方法では、調整作業が必要になるとともに、吐水部10の組み立て誤差などがあると洗浄水の吐水方向がずれるため、排水口521の一部に洗浄水が直接吐水されない恐れもある。このため、制御部30の設定を床サイズに合わせても、吐水部10の回転を停止させた状態で洗浄水を吐水する方法は好ましくない。
これらの比較例に対して、実施形態によれば、洗浄水の種類(流量)に依存せずに、吐水部10の組み立て誤差などにより洗浄水の吐水方向がずれた場合であっても確実に排水口521の全体にフレッシュな洗浄水を満遍なく直接吐水することができる。
また、制御部30は、排水口集中吐水モードにおいて、吐水領域を複数回、往復移動させて洗浄水を吐水する。例えば、吐水方向Aを方向A1から方向A2まで変化させ、再び方向A1に戻す回転動作を1往復とし、この回転運動を複数回実行させながら吐水部10に洗浄水を吐水させる。
図9(a)〜図9(f)は、排水口集中吐水モードにおける排水口を例示する平面図である。
図9(a)〜図9(c)、図9(e)、図9(f)は、それぞれ、排水口集中吐水モードを開始してから吐水部10が1〜5往復したときの排水口521の様子を表す。
図9(a)〜図9(f)に表したように、排水口521(排水トラップ)は、排水路へ繋がる孔521eを有する。排水口521へ流れてきた洗浄水は、孔521eを介して排水路へ排水される。図中の矢印は、洗浄水の流れる方向を模式的に表している。
また、この例では、吐水部10は、洗浄水として霧状の除菌水を吐水する。図中のグレーで表した領域は、除菌水が付着している領域を表す。洗浄水として除菌水を吐水する場合には、除菌水を排水口521付近に滞留させて、除菌水が菌に作用する時間を確保することが好ましい。しかし、排水口521に一度に供給される除菌水の量が多いと、除菌水は水膜を形成しやすい。水膜状の除菌水は、滞留せずに流れてしまいやすい。
これに対して、実施形態においては、吐水部10が複数回、吐水領域を往復移動させながら除菌水を吐水することにより、吐水部10が1往復する間に排水口521に供給される除菌水の量を抑えている。これにより、例えば、図9(a)及び図9(b)に示すように1及び2往復目では、除菌水は未だ水膜を形成せず、図9(c)に示すように3往復目で水膜が形成される。これにより、図9(a)〜図9(c)に示した3往復の間に吐水される除菌水の量と同じ量の除菌水が1往復で吐水される場合に比べて、除菌水を効率的に排水口521に滞留させることができる。これにより、より少ない量の除菌水で排水口を効率的に洗浄することができる。
また、排水口集中吐水モードにおいて除菌水が吐水されているときの吐水領域の移動速度を、床洗浄モード(床吐水モード)における吐水領域の移動速度よりも高くする。すなわち、排水口集中吐水モードにおいて吐水部10が1往復する間の吐水部10の平均回転速度は、床洗浄モードにおける吐水部10の平均回転速度よりも高い。このように、排水口集中吐水モード時は吐水部10を比較的高速で回転させることにより、1箇所に連続して除菌水が撒かれる時間を短くして、水膜が形成されるまでの時間を長くできる。したがって、除菌水を長時間、排水口521に滞留させることができる。これにより、排水勾配が洗い場床に比べて急な排水口521に対しても、より少ない量の除菌水で効率的に洗浄することができる。なお、排水口集中吐水モードにおいて、吐水部10が吐水をしている間は、除菌水の瞬間流量は例えば一定とされる。
また、制御部30は、排水口集中吐水モードの途中で、吐水部10からの除菌水の吐水を一時停止させる。この例では、図9(d)に示すように、3往復目と4往復目との間において、吐水部10からの吐水を停止させている。排水口521上に水膜が形成された状態では、吐水された除菌水は水膜と連結してすぐに流れてしまいやすい。これに対して、実施形態においては、吐水を一時停止させている間に水膜が孔521eへ流れる。これにより、吐水を再び開始したときに撒かれた除菌水が排水口521上に滞留しやすくなる。このように排水口集中吐水モードの途中で吐水を一時停止させることにより、一時停止を行わずに同じ量の除菌水を吐水する場合に比べて、除菌水を効率的に排水口521に滞留させることができる。これにより、より少ない量の除菌水で排水口521を効率的に洗浄することができる。
以下、床洗浄モードの具体例について説明する。
図10(a)および図10(b)は、実施形態に係る洗い場洗浄装置における床洗浄モードを例示する平面図である。
図10(a)は、吐水部10を例示する平面図であり、図10(b)は、洗い場床520を例示する平面図である。
図10(a)に表したように、この例では、吐水部10が回転した角度(回転角度)を、互いに異なる5つの範囲D1〜D5に分割している。図10(b)は、範囲D1〜D5のそれぞれに対応した、洗い場床520の領域R1〜R5を表している。吐水部10は、反時計回りに回転し、領域R1、R2、R3、R4、R5の順に各領域に洗浄水を吐水する。
回転角度が範囲D1内にある状態(状態ST1と称する)では、領域R1に洗浄水が吐水される。回転角度が範囲D2内にある状態(状態ST2と称する)では、領域R2に洗浄水が吐水される。
状態ST1における吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離は、状態ST2における吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離よりも短い。このとき、制御部30は、状態ST1において吐水される洗浄水の総量が、状態ST2において吐水される洗浄水の総量よりも少なくなるようにする。
同様にして、回転角度が範囲D3内にある状態(状態ST3と称する)では、領域R3に洗浄水が吐水される。状態ST3における吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離は、状態ST2における吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離よりも長い。このときには、制御部30は、状態ST3において吐水される洗浄水の総量を、状態ST2において吐水される洗浄水の総量よりも多くする。
このように、吐水部10と壁面540との間の距離が相対的に短い回転角度領域において吐水される洗浄水の総量は、吐水部10と壁面540との間の距離が相対的に長い回転角度領域において吐水される洗浄水の総量よりも少なくされる。
回転角度が範囲D4内にある状態(状態ST4と称する)では、領域R4に洗浄水が吐水される。状態ST4における吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離は、状態ST2における吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離と、同じである。また、領域R4と排水口521との間の距離は、領域R2と排水口521との間の距離よりも長い。すなわち、領域R4は、領域R2よりも洗い場床520の上流側に位置する。この場合には、制御部30は、状態ST2において吐水される洗浄水の総量が、状態ST4において吐水される洗浄水の総量よりも少なくなるようにする。
このように、吐水部10と壁面540との間の距離が同じ場合においては、洗い場床520の排水勾配の下流側に吐水される洗浄水の量は、洗い場床520の排水勾配の上流側に吐水される洗浄水の量よりも少なくされる。
吐水部10から吐水される洗浄水の瞬間流量(単位時間当たりの流量)は、一定である。そして、制御部30は、吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離に応じて、吐水部10の平均回転速度を変化させる。これにより、洗い場床の部位に応じて、吐水される洗浄水の総量を変化させることができる。例えば、状態ST1における吐水部10の平均回転速度は、状態ST3における吐水部10の平均回転速度よりも高い。これにより、状態ST1において吐水される洗浄水の総量は、状態ST3において吐水される洗浄水の総量よりも少なくなる。
吐水部10が回転と停止とを繰り返しながら洗浄水を吐水する領域(洗浄領域)を変化させる場合には、吐水部10が停止する時間の長さを変化させることで、平均回転速度を変化させることができる。例えば、吐水部10が一度に回転する角度および時間を一定とし、回転動作が行われる時間的な周期を変化させることで平均回転速度を変化させることができる。例えば、状態ST1における回転動作の周期は、状態ST3における回転動作の周期よりも短い。
以上説明したように、床洗浄モードでは、吐水部10を回転させることで洗浄領域を変化させて、洗い場床520の略全体に洗浄水を撒く。この際、吐水部10を回転させると、吐水方向に沿った吐水部10と壁面540との間の距離が変化する。このような状態において、全方向に同じように吐水を行うと、吐水方向に沿った吐水部10と壁面540との間の距離の変化に応じて、洗い場床520上では洗浄水が過剰に吐水される領域が発生してしまう。このため、大量の洗浄水が必要となってしまう。
一方、吐水部10から洗い場床520上に直接届く洗浄水だけでなく、壁面540に当たった後に洗い場床520上を流れる洗浄水も存在する。そこで、このような壁面540に当たって流れる洗浄水も利用して洗浄を行うことで、少量の洗浄水で洗い場床520の全体を洗浄することができる。
例えば、状態ST1のように、吐水方向に沿った吐水部10と壁面540との間の距離が短い場合には、吐水部10から吐水されて壁面540に当たってから洗い場床520上に流れる洗浄水の量が比較的多い。このため、状態ST1において吐水される洗浄水の総量を少なくしても、単位面積あたりに供給される洗浄水の総量を維持することができる。
したがって、実施形態によれば、洗浄水の吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離が短いときに、必要以上の洗浄水が吐水されることを防ぐことができる。これにより、洗い場床520の全体に吐水される洗浄水の総量を少なくすることができる。
さらに、実施形態においては、洗浄水の吐水方向に沿った吐水部10から壁面540までの距離が同じときには、洗い場床520の上流側に吐水される洗浄水の量を、洗い場床520の下流側に吐水される洗浄水の量よりも少なくしている。洗い場床520の上流側に吐水された洗浄水は、洗い場床520の下流側に流れる。このため、洗い場床520の上流側に吐水された洗浄水を利用して、洗い場床520の下流側も洗浄することが可能である。これにより、洗い場床520の下流側に吐水される洗浄水の量を少なくしても、洗い場床520の全体を洗浄することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、吐水部10、制御部30、吐水制御手段18、洗い場床520、排水口521などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。