以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態では、図1に示すように、助手席用エアバッグ装置Mに使用されるエアバッグ19を例に採り説明する。助手席用エアバッグ装置Mは、助手席の前方に配置され、図1に示すように、ウインドシールド4の下方におけるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2側の内部に搭載されるトップマウントタイプとされている。エアバッグ装置Mは、折り畳まれたエアバッグ19と、エアバッグ19に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ19及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ19及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ19の上方を覆うエアバッグカバー6と、を備えて構成されている。
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、展開膨張時のエアバッグ19に押されて前後両側に開く二枚の扉部6a,6bを備えて構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部6cが形成されている。連結壁部6cには、ケース12の係止爪12cを係止するための係止孔6dが形成されている。
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
収納部位としてのケース12は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部12bと、を備えて構成されている。周壁部12bの上端には、連結壁部6cの係止孔6dに挿入されて、連結壁部6cを係止する係止爪12cが形成されている。
そして、実施形態の場合、エアバッグ19とインフレーター8とは、エアバッグ19内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを、取付手段として、エアバッグ19における後述する流入用開口23の周縁の取付座22、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター8のフランジ部8cに、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。また、ケース12の底壁部12aには、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
エアバッグ19は、図1の二点鎖線や図2,3に示すように、膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウインドシールド4との間を塞ぐように配置可能な略袋状のバッグ部20と、バッグ部20から膨張用ガスGを排気させるようにバッグ部20の周壁21に開口した排気口27と、排気口27からの膨張用ガスGの排気の有無を調整する内圧調整機構30と、を備えて構成されている。
バッグ部20は、可撓性を有したポリアミド製の織布等のシート材からなる周壁21を備え、図2,3に示すように、膨張完了形状を、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状としている。膨張完了時の周壁21は、乗員側となる後壁部21a、後壁部21aの周縁の上下左右から前方に延びる上壁部21b、下壁部21c、左壁部21d、及び、右壁部21e、を備えて構成されている。バッグ部20の膨張完了時の前端付近における下壁部21cの左右方向の略中央には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口する流入用開口23が形成されている。流入用開口23の周縁は、ケース12の底壁部12aに取り付けられる取付座22として、リテーナ9のボルト9aを挿通させて、ケース12の底壁部12aに取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔24が、形成されている。なお、後壁部21aは、実施形態の場合、左右方向の中央に、前方側に凹む凹部21aaを上下方向に沿うように配設させている。
排気口27は、左右の左壁部21dと右壁部21eとの前部側に配設されており、それぞれ、上下方向に延びるように形成された細幅で縦長の長方形形状(スリット状)に開口されている。
なお、周壁21の左壁部21dと右壁部21eとの後部側には、別途、バッグ部20の膨張完了後における余剰の膨張用ガスGを排気するベントホール25も、開口されている。
内圧調整機構30は、共に、ポリアミドの織布等から形成された可撓性を有した二つのテザー32と、一対の対向シート部34(34F,34B)と、を備えて構成されている。なお、内圧調整機構30は、排気口27がバッグ部20の左壁部21dと右壁部21eとの二箇所に設けられており、実施形態の場合、二つの排気口27に対応して、二箇所に配設されている。
各テザー32は、取付基部32aから延びた先端32bを排気口27の周縁に結合させている。実施形態の場合、テザー32は、左右の排気口27にそれぞれ対応して、2本ずつ、配設され、共に、取付基部32aを、バッグ部20の下壁部21cにおける左右方向の中央付近における後壁部21a近傍の部位に、縫製により結合させている。左右の排気口27に対応した左右の2本ずつのテザー32の先端32bは、各排気口27の周縁における後述する延設シート部37に、縫製により結合されている。詳しくは、延設シート部37の先縁37bにおける幅方向の中央付近で、かつ、後述する対向縁部36の排気口27側の内側面36dと連なる延設シート部37の内側面37dに、先端32bが結合されている(図10のB参照)。
内圧調整機構30は、実施形態の場合、図4〜8に示すように、各テザー32の緩められている際、排気口27からの膨張用ガスGの排気を容易にする排気モードEMとし、テザー32の張られている際、排気口27からの膨張用ガスGの排気を抑制する排気抑制モードRMとするように調整している。具体的には、テザー32が張った状態は、バッグ部20の後壁部21aがインパネ1の後面3を越えて、取付基部32aが後面3より後方となる後退位置BPに配置された状態であり(図7のB参照)、その場合には、内圧調整機構30は、排気抑制モードRMとし、取付基部32aが後退位置BPより前方側、例えば、後面3付近では、テザー32は緩んだ状態となり(図6のB参照)、内圧調整機構30は、排気モードEMとなる。このテザー32が緩んだ状態は、取付基部32aが後退位置BPより前方側に位置すれば、バッグ部20の膨張途中でも維持され、図6のA,Bに示すように、後壁部21aが近接乗員IPに当たる場合では、テザー32は、張ることなく、緩んだ状態を維持される。
各テザー32は、先端32bを結合させる部位(延設シート部37の先縁37b)の幅方向より小さい幅寸法として、既述したように、それらの先縁37bの幅方向の中央に、結合させている。
内圧調整機構30の一対の対向シート部34(F,B)は、図4,5に示すように、バッグ部20の外周面20a側における排気口27の周縁28で相互に前後で対向した直線状に長い両縁28a,28bからそれぞれ延びるように配設されて、可撓性を有した部材から形成されている。一対の対向シート部34(F,B)は、それぞれ、排気口27の周縁28から排気口27を間にして相互に対向するように帯状に延びる対向縁部36と、対向縁部36から延びて幅方向の中央付近の先端側に、テザー32を結合させる延設シート部37と、を備えて構成されている。
一対の対向シート部34は、基本的な配置状態(基本配置状態、あるいは、初期結合状態)では、それぞれ、対向縁部36における排気口27側の内側面36d側に、延設シート部37を折り返して、対向縁部36と延設シート部37とを重ねた状態で、かつ、相互の延設シート部37を重ねた状態で、相互の対向縁部36の対向方向と直交する方向(幅方向)の両縁36aを、延設シート部37,37を介在させた状態で、相互に結合されている(図10参照)。この初期結合状態は、排気抑制モードRMの縦断面形状における膨らんだ対向縁部36から延設シート部37の内周側から、膨張用ガスGを抜いた状態と、略同様としている(図4のBと図10のBの括弧書きとを参照)。
なお、対向シート部34の排気口27の周縁からの長さ寸法としては、対向縁部36の長さ寸法L1より、延設シート部37の長さ寸法L2を短くして、対向縁部36の端部36bで折り返した延設シート部37の端部37bが、排気口27を経てバッグ部20内に進入しないように、設定されている(図9,10参照)。
また、対向シート部34の幅寸法としては、対向縁部36と延設シート部37との幅寸法W1は、膨らんでいない状態のバッグ部20の排気口27の長い側の上下方向の開口幅WVと、略同等としている(図9参照)。
一対の対向シート部34は、実施形態の場合、それぞれ、図9のAに示す対向シート用基布62から形成されている。対向シート用基布62は、バッグ部20の周壁21と同様に、可撓性を有したポリアミド等の織布から形成されている。対向シート用基布62は、排気口27の周縁28の前縁28aや後縁28bに対して、縫製により結合される取付縁部35と、取付縁部35の幅寸法W0より幅寸法W1を小さくして、取付縁部35から延びる帯状として幅方向に長い長方板形状の対向縁部36と、対向縁部36から延びる同じ幅寸法W1の延設シート部37と、を備えて構成されている。
一対の対向シート部34(F,B)を形成する工程は、図9のA,Bに示すように、各対向シート用基布62,62における取付縁部35の部位相互を重ね合わせ、かつ、対向縁部36の端部36bで延設シート部37側を折って、対向縁部36の内側面36d側に延設シート部37を重ねる(図10のBや括弧書き参照)。そして、重ねた一対の対向シート用基布62における対向縁部36や延設シート部37の幅方向の両縁36a,37aと、これらの縁から連なる取付縁部35の縁とを、縫合糸60を使用して結合し、結合部38を形成すれば、対向シート用部材63を、形成できる。なお、結合部38は、対向縁部36や延設シート部37の幅方向の両縁36a,37a側の直線部38aと、直線部38aの端末で、幅方向に広がるように円弧状として、取付縁部35の幅方向の側縁35b側に延びた曲線部38bと、を備えて構成されている。
そして、図9のB,Cに示すように、対向シート用部材63の取付縁部35,35を開いて、バッグ部20の排気口27の周縁28における上下の縁28c,28dも含めた前縁28a側と後縁28b側とに、縫合糸60を使用して、取付縁部35,35の周縁を結合し、結合部35a,35aを形成すれば、排気口27の周縁28に、一対の対向シート部34を形成することができる。なお、結合部35aは、結合部38の曲線部38bの部位にも重ねて、配設させている。
その後、図10のA,Bに示すように、各テザー32の先端32bを対応する延設シート部37の内側面37dに結合させれば、内圧調整機構30を形成することができて、エアバッグ19を製造することができる。
なお、各テザー32は、例えば、取付基部32aを予め周壁21の所定位置に結合させておいて、対向シート用部材63を周壁21に結合させた後に、排気口27を挿通させて、先端32b側を、既述のように、延設シート部37に結合させればよい。また、テザー32の配設前には、予め、バッグ部20には、流入用開口23や取付座22を形成しておく。
配設された各テザー32は、内圧調整機構30の排気抑制モードRMにおけるテザー32の張った状態では(図4参照)、延設シート部37をバッグ部20の外周面20a側に配設させた状態として、一対の対向シート部34(F,B)の対向縁部36から延設シート部37にわたるエリアを膨らませつつ、延設シート部37相互の先端(先縁)37b側を対向縁部36,36間に進入させ、かつ、延設シート部37における対向縁部36から折り返された表面側(外側面)37c相互を圧接可能として(実際の圧接状態は図4のBの括弧書きに示すように、表面側37c,37c相互が密着する状態となる)、延設シート部37を引っ張る長さ寸法LT(図7参照)としている。また、各テザー32は、内圧調整機構30の排気モードEMにおけるテザー32の緩んだ状態で(図5参照)、一対の対向シート部34の延設シート部37を、それぞれ、対向縁部36における排気口27側と逆側の背面36c側に配置させ、かつ、対向縁部36相互を離隔可能に、延設シート部37に結合される長さ寸法LTとしている。
バッグ部20に内圧調整機構30を取り付けてエアバッグ19を製造した後には、エアバッグ装置Mとして車両に搭載できるように、まず、各ボルト9aを取付孔24から突出させるようにして、リテーナ9をバッグ部20内に収納して、エアバッグ19のバッグ部20をテザー32と共に折り畳む。ついで、折り崩れしないように、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材により、エアバッグ19を包む。
なお、エアバッグ19を折り畳む際、内圧調整機構30は、図2の括弧書きや図5に示す排気モードEMの状態として折り畳む。すなわち、テザー32の先端32b側を排気口27から繰り出すようにして、対向縁部36の端部36bを折って、延設シート部37を、対向縁部36の背面36c側に、折り重ねておき、その状態で、エアバッグ19を折り畳んでおく。ちなみに、延設シート部37を対向縁部36の背面36c側に折り重ねた状態は、結合された縁36a,37aによって筒状に形成された対向縁部36,36の周囲を、反転された状態の筒状の延設シート部37,37が囲う状態となる。
そして、折り畳んだエアバッグ19をラッピング材で包んだ後には、各ボルト9aをケース12の底壁部12aから突出させるようにして、折り畳んだエアバッグ19をケース12内に収納させ、インフレーター8の本体部8aをケース12の底壁部12aの下方からケース12内に挿入させつつ、底壁部12aから突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させて、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、インフレーター8とともに、エアバッグ19をケース12に取り付けることができる。そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに対して、係止孔6dに係止爪12cを挿入させて、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の衝突時に、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ19は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開かせて、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、図1の二点鎖線に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウインドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
その際、内圧調整機構30は、図6のA,Bに示すように、バッグ部20の後壁部21aが近接乗員IPと干渉して、テザー32が、取付基部32aを後退位置BP(図7のB参照)に到達させずに、その前方側に待機させる状態となって、緩んでいれば、テザー32の先端32bを結合させた部位、すなわち、排気口27の周縁28における一対の対向シート部34の各延設シート部37を、テザー32が引っ張らない。そのため、図5に示すように、排気モードEMの状態を維持できる。すなわち、排気モードEMでは、一対の対向シート部34の延設シート部37が、それぞれ、対向縁部36における排気口27側と逆側の背面36c側に配置され、かつ、対向縁部36相互が離隔可能としており、膨張用ガスGは、排気口27から、離隔した一対の対向シート部34(F、B)の対向縁部36間を経て、バッグ部20外に排気される。
したがって、エアバッグ19は、初期膨張時、近接乗員IPと干渉(当接)しても、強く押圧せずに、排気口27から膨張用ガスGを排気し続けて、膨張完了形状まで到達せずに、エアバッグ装置Mの作動を完了させる。
また、インパネ1から離れた適正位置に乗員PPがいる状態で、エアバッグ装置Mが作動する場合には、エアバッグ19は、図7のA,Bに示すように、バッグ部20が流入した膨張用ガスGにより内圧を高めて膨張し、ついで、テザー32が張った状態となれば、図8のA,Bに示すように、テザー32が、先端32bを結合させた部位、すなわち、排気口27の周縁28における一対の対向シート部34の延設シート部37を、引っ張り、排気口27の逆側の背面36c側から排気口27側に反転させるようにして、対向縁部36,36間に進入させようとする。その際、膨張用ガスGの圧力を受けて、一対の対向シート部34(F,B)は、それぞれの対向縁部36から延設シート部37にわたるエリアを膨らませて、延設シート部37における対向縁部36から折り返された表面側(外側面)37c相互を圧接させ、それぞれの対向縁部36から延設シート部37にわたるエリア内に膨張用ガスGを留めるように、排気口27からの膨張用ガスGの排気を抑制する。この時、一対の対向シート部34は、排気口27の上下の両縁28c,28d側の部位での結合状態として、相互の対向縁部36,36間に、それぞれの延設シート部37,37を折り返して挿入させて、対向縁部36と延設シート部37とを重ねた状態として、対向縁部36,36相互の対向方向と直交方向の両縁36a,37a側で、相互に結合されている(図9のB参照)。そのため、相互に圧接された延設シート部37,37付近での横断面構造としては、図4のCに示すように、一対の対向シート部34(F,B)における対向縁部36,36相互に包まれた筒状の内周側で、相互に圧接された平面状の延設シート部37,37の部位と、その幅方向の両縁37a,37aの結合部位と、により、排気口27が閉塞される状態となって、従来のチューブ状部位を中心側に集めて排気口を閉塞する場合に比べて、シワが生じ難く、隙間を少なくできることから、膨張用ガスGの漏れを安定して抑制できる。
したがって、第1実施形態のエアバッグ19では、排気抑制モード時における安定した排気抑制状態を確保できる。また、内圧調整機構30は、共に可撓性を有したテザー32や対向シート部34から構成されており、バッグ部20とともに、容易に折り畳むことができて、エアバッグ19の折畳や収納性を阻害しない。
そして、第1実施形態では、バッグ部20の周壁21に設けた排気口27が、周縁28における一対の対向シート部34(F,B)の対向縁部36,36を設けた両縁28a,28bを、対向縁部36,36の対向方向と直交する両縁28c,28dに比べて、長く、かつ、直線状に形成した略縦長長方形の開口形状(実施形態では、スリット状)としている。
そのため、実施形態では、一対の対向シート部34(F,B)を、それぞれ、排気口27の周縁28の対向縁部36の元部36e側を縁28a,28bに沿わせた直線状に配置できることから、排気抑制モードRM時における反転して相互に圧接される延設シート部37,37の平面状(直線状の縁28a,28bに沿った平面状)の部位37eを、対向縁部36の元部36e側に接近させるように配置させる状態としても、安定して形成できる。すなわち、このような構成では、相互に圧接される延設シート部37,37の平面状の部位37eを、換言すれば、延設シート部37の所定の部位37eを、対向縁部36の元部36e側に接近させることができ、その結果、対向縁部36の排気口27の周縁28から延びる長さ寸法L1を短くできて、一対の対向シート部34を嵩張らずに形成できる。ちなみに、排気口27が円形に開口していれば、対向シート部34を配設させる縁28a,28bが円弧状となって、排気抑制モードRM時における反転して相互に圧接される延設シート部37,37の部位37eが、元部36eから距離を長く設けていないと、シワが生じて、平面度を確保して相互に圧接できなくなり、その結果、シワを生じさせないように、延設シート部37,37の部位37eを、平面状に圧接できるように、元部36eから距離を長く設ける必要が生じて、対向縁部36の排気口27の周縁28から延びる長さ寸法L1が長くなって、対向シート部が嵩張り、好ましくない。
勿論、上記の点を考慮しなければ、排気口27は、円形や長円形、あるいは、対向シート部34,39を設けない縁28c,28d側の長さ寸法を長くした長方形形状等の開口形状としてもよい。
一対の対向シート部の延設シート部にそれぞれにテザーを結合させる場合、図11〜14に示す第2実施形態のエアバッグ19Aの内圧調整機構30Aのように構成してもよい。
第2実施形態のエアバッグ19Aの内圧調整機構30Aは、第1実施形態の内圧調整機構30の一対の対向シート部34における延設シート部37を、長くし(図17のA参照)、そして、長く延設させた部位(先縁側部44)を、対向縁部36側に折り返した形状に形成されている(図18のBの括弧書き参照)。なお、第2実施形態のエアバッグ19Aは、一対の対向シート部39の延設シート部43が、第1実施形態の対向シート部34に比べて長く構成されて、先端側を反転させて対向縁部41側に折り返して、対向縁部41と結合される点が、第1実施形態と異なっているだけであり、バッグ部20、バッグ部20に設けられた排気口27、及び、テザー32は、第1実施形態と同様であり、また、第1実施形態と同様に、助手席用エアバッグ装置Mとして、車両に搭載されて使用される(図15参照)。
第2実施形態では、図18に示すように、排気口27の周縁28の前後の縁28a,28bに設けられる一対の対向シート部39の延設シート部43が、それぞれ、対向縁部41(F,B)の排気口27側に、対向縁部41の端部41bから折り返し、さらに、対向縁部41側に反転させるように、折り返してなる折重部50、を形成可能としている。
各折重部50は、対向縁部41の端部41bから延びる元側部48と、元側部48との間に反転部46を設けて、対向縁部41に接するように折り返されて、テザー32の先端32bを結合させる先縁側部44と、を備えている。テザー32の先端32bは、先縁側部44に対し、対向縁部41の排気口27側と逆側の背面41cから連続的に連なる外周44c側における幅方向の中央付近の先端44b側に、縫製により、結合されている。
そして、一対の対向シート部39は、基本的な配置状態(基本配置状態、あるいは、初期結合状態)では、各々の対向縁部41の排気口27側に折重部50を配置させるとともに、折重部50の元側部48相互を重ね合わせた状態で、かつ、各々の対向縁部41を折重部50と重ねた状態で、相互の対向縁部41の対向方向と直交する方向の両縁41a,41aを、折重部50の元側部48や先縁側部44の幅方向の両縁48a,44aを介在させて、相互に結合されている(図18参照)。この初期結合状態は、排気抑制モードRMの縦断面形状における膨らんだ対向縁部41から延設シート部43にわたるエリアの内周側から、膨張用ガスGを抜いた状態と、略同様としている(図13のBと図18のBの括弧書きとを参照)。
なお、対向シート部39の排気口27の周縁からの長さ寸法としては、図17に示すように、対向縁部41の長さ寸法L1より、延設シート部43の折重部50の長さ寸法L3を短くして、対向縁部41の端部41bで折り返した折重部50の端部50bが、排気口27を経てバッグ部20内に進入しないように、設定されている(図18のBの括弧書き参照)。延設シート部43の元側部48と先縁側部44とは、略同等の長さ寸法L4,L5としている。
また、対向シート部39の幅寸法としては、対向縁部36と延設シート部37との幅寸法W1は、膨らんでいない状態のバッグ部20の排気口27の長い側の上下方向の開口幅WVと、略同等としている。
一対の対向シート部39は、実施形態の場合、それぞれ、図17のAに示す対向シート用基布65から形成されている。対向シート用基布65は、バッグ部20の周壁21と同様に、可撓性を有したポリアミド等の織布から形成されている。対向シート用基布65は、排気口27の周縁28の前縁28aや後縁28bに対して、縫製により結合される取付縁部40と、取付縁部40の幅寸法W0より幅寸法W1を小さくして、取付縁部40から延びる帯状として幅方向に長い長方板形状の対向縁部41と、対向縁部41から延びる同じ幅寸法W1の延設シート部43と、を備えて構成されている。
一対の対向シート部39(F,B)を形成する工程は、図17のA,Bに示すように、各対向シート用基布65,65における取付縁部40の部位相互を重ね合わせ、かつ、延設シート部43の反転部46の部位で折って、延設シート部43の先縁側部44を、対向縁部41の排気口27側の内側面41dから連なる元側部48の内側面48b側に、重ね、さらに、対向縁部41の端部41bで折って、先縁側部44を対向縁部41の内側面41d側に接近させて、対向縁部41の排気口27側に折重部50を重ねる(図18のBや括弧書き参照)。そして、重ねた一対の対向シート用基布65における対向縁部41や折重部50の幅方向の両縁41a,44a,48aと、これらの縁から連なる取付縁部40の縁とを、縫合糸60を使用して結合し、結合部52を形成すれば、対向シート用部材66を、形成できる。なお、結合部52は、対向縁部41や延設シート部43(折重部50)の幅方向の両縁41a,44a,48a側の直線部52aと、直線部52aの端末で、幅方向に広がるように円弧状として、取付縁部40の幅方向の側縁40b側に延びた曲線部52bと、を備えて構成されている。
そして、図17のB,Cに示すように、対向シート用部材66の取付縁部40,40を開いて、バッグ部20の排気口27の周縁28における上下の縁28c,28dも含めた前縁28a側と後縁28b側とに、縫合糸60を使用して、取付縁部40,40の周縁を結合し、結合部40a,40aを形成すれば、排気口27の周縁28に、一対の対向シート部39を形成することができる。なお、結合部40aは、結合部52の曲線部52bの部位にも重ねて、配設させている。
その後、図18のA,Bに示すように、各テザー32の先端32bを対応する延設シート部43の先縁側部44の外周44c側に結合させれば、内圧調整機構30Aを形成することができて、エアバッグ19Aを製造することができる。
なお、各テザー32は、例えば、取付基部32aを予め周壁21の所定位置に結合させておいて、対向シート用部材66を周壁21に結合させた後に、排気口27を挿通させて、先端32b側を、既述のように、延設シート部43に結合させればよい。また、テザー32の配設前には、第1実施形態と同様に、予め、バッグ部20には、流入用開口23や取付座22を形成しておく。
配設された各テザー32は、内圧調整機構30Aの排気抑制モードRMにおけるテザー32の張った状態では(図13参照)、延設シート部43をバッグ部20の外周面20a側に配設させた状態として、一対の対向シート部39における対向縁部41から元側部48にわたるエリアを膨らませて、延設シート部43相互の先端(先縁)側(反転部46側)を対向縁部41間に進入させ、かつ、対向シート部39の対向縁部41から折り返された元側部48の表面側(外側面48c)相互を圧接可能として、先縁側部44を引っ張る長さ寸法LT(図15のB参照)としている。また、各テザー32は、内圧調整機構30Aの排気モードEMにおけるテザー32の緩んだ状態で(図14参照)、各々の対向シート部39の折重部50を、それぞれ、対向縁部41における排気口27側と逆側の背面41c側に配置させ、かつ、対向縁部41相互を離隔可能に、先縁側部44に結合される長さ寸法LTとしている。
テザー32を結合させて製造したエアバッグ19Aは、第1実施形態と同様に、リテーナ9を収納して折り畳んで、ケース12に収納して、インフレーター8を配設したエアバッグ装置Mとして組み立てて、車両に搭載することとなる。
なお、エアバッグ19Aを折り畳む際、内圧調整機構30Aは、図11の括弧書きや図14に示す排気モードEMの状態として折り畳む。すなわち、テザー32の先端32b側を排気口27から繰り出すようにして、対向縁部41の端部41bで折って、延設シート部43からなる折重部50を対向縁部41の背面41c側に、折り重ねておき、その状態で、エアバッグ19Aを折り畳んでおく。ちなみに、延設シート部43からなる折重部50を対向縁部41の背面41c側に折り重ねた状態は、結合された縁41a,44a,48aによって筒状に形成された対向縁部41,41の周囲を、反転された状態の延設シート部43,43の筒状の元側部48,48と、筒状の先縁側部44,44とが、順次、囲う状態となる。
第2実施形態のエアバッグ19Aでは、車両搭載後の作動時における膨張初期、収納当初から排気モードEMの状態としてテザー32が緩んだままであれば、図14や図16のAに示すように、テザー32の先端32bを結合させた部位、換言すれば、一対の対向シート部39の延設シート部43における先縁側部44を、テザー32が引っ張らないことから、各々の対向シート部39の折重部50が、それぞれ、対向縁部41における排気口27側と逆側の背面41c側に配置され、かつ、対向縁部41相互が離隔可能としており、膨張用ガスGは、排気口27から、離隔した一対の対向シート部39の対向縁部41,41間を経て、バッグ部20外に排気される。
その後、バッグ部20が流入した膨張用ガスGにより内圧を高めて膨張し、ついで、テザー32が張った状態となれば、テザー32が、各々の対向シート部39の延設シート部43における先縁側部44を、引っ張り、図16のA,B,Cに示すように、排気口27の逆側の背面41c側から排気口27側に反転させるようにして、対向縁部41,41間に先縁側部44や元側部48を進入させようとする。その際、膨張用ガスGの圧力を受けて、一対の対向シート部39は、それぞれの対向縁部41から延設シート部43にわたるエリアを膨らませて、延設シート部43における対向縁部41から折り返された元側部48の表面側である外側面48c相互を圧接させ、それぞれの対向縁部41から延設シート部43の元側部48にわたるエリア内に膨張用ガスGを留めるように、排気口27からの膨張用ガスGの排気を抑制する。この時、一対の対向シート部39は、排気口27の上下両縁28c,28d側の部位での結合状態として、相互の対向縁部41,41間に、それぞれ延設シート部43の折重部50,50を挿入させ、各折重部50が、対向縁部41から折り返された元側部48との間に反転部46を設け、対向縁部41に接するように折り返された先縁側部44を配設させるように、対向縁部41と延設シート部43の折重部50とを重ねた状態として、対向縁部41,41相互の対向方向と直交方向の両縁41a,44a,48a側で、相互に結合されている(図13のC,図17のB参照)。そのため、表面側としての外側面48c相互を圧接させた折重部50の元側部48と、元側部48から延びて反転部46で反転された先縁側部44と、の間にも膨張用ガスGが進入して、図16のB,Cに示すように、先縁側部44がテザー32に引っ張られていても、元側部48から先縁側部44の内周側48b,44bに作用する圧力により、結合状態に復帰するように、反転部46の部位で、先縁側部44が元側部48から反転する。この相互に圧接された元側部48付近での横断面構造としては、図13のCに示すように、一対の対向シート部39,39における対向縁部41,41相互に包まれた筒状の内周側で、相互に圧接された平面状の延設シート部43の元側部48の部位48dと、その幅方向の両縁48aの結合部位と、により、排気口27が閉塞される状態となって、従来のチューブ状部位を中心側に集めて排気口を閉塞する場合に比べて、シワが生じ難く、隙間を少なくできることから、膨張用ガスGの漏れを安定して抑制できる。
さらに、この構成では、相互に圧接された平面状の延設シート部43の元側部48の部位48dの外周側(対向縁部41側)に、反転部46で反転した先縁側部44が配設される状態となり、テザー32が緩んでも、反転した先縁側部44が、圧接された元側部48,48相互の間に進入するように、戻り難く、その結果、膨張用ガスGの漏れを生じさせない。
すなわち、このような第2実施形態の内圧調整機構30Aでは、テザー32が緩んでも、バッグ部20に内圧が発生していれば、排気口27から膨張用ガスGを排気させ難いことから、一層、安定した排気抑制モードRMを確保できる。
なお、第1・2実施形態では、テザー32の取付基部32a側を、バッグ部20における膨張時に突出する側の後壁部21aの近傍の周壁21(下壁部21c)側に取り付けたが、排気モードEMから排気抑制モードRMに移行できるように、テザー32が作用すれば、取付基部32a側は、バッグ部20の流入用開口23を有した取付座22側に結合させたり等して、適宜、変更することができる。
また、各実施形態では、バッグ部20に二つの排気口27を設け、それらの排気口27に、それぞれ、テザー32に結合される一対の対向シート部34,39を設けた構成を説明したが、バッグ部20に一つの排気口27を形成して、その一つの排気口27に、テザー32に結合される一対の対向シート部34,39を設けるようにしてもよい。勿論、逆に、バッグ部20に3個以上の排気口27を形成し、それらの排気口27の少なくとも一つに、テザー32に結合される一対の対向シート部34,39を設けるようにしてもよい。
さらに、各実施形態では、一対の対向シート部34,39を対向シート用部材63,66から形成して、バッグ部20の周壁21における排気口27の周縁28に対し、対向シート用部材63,66を取り付けて、一対の対向シート部34,39を排気口27の周縁28に配設させたが、周壁21自体から、一対の対向シート部34,39の少なくとも一方を形成するように構成してもよい。例えば、周壁21の排気口27の周縁28において、排気口27の前縁28a側と後縁28b側とで別体のバッグ用基布から形成されるような場合、対向シート部34,39をそれらのバッグ用基布の一部から延設させて形成すればよい。
また、各実施形態では、適正配置の乗員PPに対しては迅速に膨張を完了させ、近接乗員IPに対しては膨張させないように膨張用ガスGを排気させるように、助手席用エアバッグ装置Mのエアバッグ19,19Aに、内圧調整機構30,30Aを配設させる構成を例示したが、他の運転席用エアバッグ装置のエアバッグや膝保護用エアバッグ装置のエアバッグに、排気口を設けるとともに、本発明の内圧調整機構30,30Aを配設するように構成してもよい。
さらに、本発明のように、バッグ部に排気口と内圧調整機構とを設ける構成としては、エアバッグが、インナバッグと、インナバッグを覆うアウタバッグと、を備えた二重構造としている場合、インナバッグからアウタバッグに膨張用ガスを流入させる部位に、バッグ部としてのインナバッグに対し、排気口と内圧調整機構とを設けたり、アウタバッグに対し、排気口と内圧調整機構とを設けて、本発明を実施してもよい。勿論、エアバッグが、排気口としての連通口を有した区画壁で区画するように、複数のバッグ部を連結させて構成されるような場合、所定のバッグ部の連通口(排気口)に、本発明の内圧調整機構をテザーとともに設けて、本発明を実施しても良い。
また、排気モードEMにおいて、排気抑制モードRMで膨らんだ延設シート部37,43の部位や対向縁部36,41の部位に、膨張用ガスGを排気可能な開口(補助排気口)を設けて、排気口27の全開時より少ない排気量とした所定量の膨張用ガスGを排気させるように、構成してもよい。
さらに、各実施形態では、エアバッグ19,19Aの膨張初期に、円滑に排気モードEMとなるように、折畳時に、予め、排気モードEMの状態で、内圧調整機構30,30Aの対向シート部34,39とテザー32とを配置させたが、延設シート部37や延設シート部43の折重部50が、長さ寸法L2,L3,L4,L5を短くして、排気抑制モードRMから排気モードEMから移行する際に、テザー32が緩められて、対向縁部36,41間で反転し、かつ、対向縁部36,41間を相互に容易に離隔させて、排気口27を開口できれば、エアバッグ19,19Aの膨張当初に、テザー32を張った状態として、排気抑制モードRMとしておき、その後、テザー32に作用する張力、あるいは、機械的に取付状態を解除する取付解除手段等を利用し、テザー32の取付基部32a側を破断やリリースさせて、排気モードEMに移行するように構成してもよい。
また、各実施形態では、二つのテザー32を取付基部32a側で一体的に周壁21に結合させた場合を例示したが、図5のBや図14のBの二点鎖線に示すように、先端32b側で、相互に結合させた結合部32cを設けて、取付基部32a側で一体的に周壁21等に取り付けてもよい。