JP6675713B2 - グラフト化繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種繊維素材に親水性、疎水性、吸放湿性、静電防止性、接着性、抗菌性、温度応答性等の機能を耐久性よく付与したグラフト化繊維の製造方法に関し、特に電子線照射法により繊維素材にラジカル重合性化合物をグラフト重合してなるグラフト化繊維の製造方法に関する。
従来、電子線照射法により繊維素材にラジカル重合性化合物をグラフト重合してなるグラフト化繊維の製造方法としては、例えば、ラジカル重合性化合物溶液を接触させた繊維素材を、高分子フィルムの間に密封し、その高分子フィルム上から電子線を照射し、その後、加熱重合を行う方法が知られている(特許文献1参照。)。また、高分子材料からなる繊維素材に電子線を照射した後、ラジカル重合性化合物溶液を付与し、得られた前記繊維素材の両面をフィルムで密着し、0℃から130℃の範囲の温度設定の環境で重合を促進する方法(即ち重合前に電子線を照射する前照射法)が知られている(特許文献2参照。)。
前記のような方法によれば、開放系のグラフト重合と異なり、繊維素材とラジカル重合性化合物はフィルムにより空気中の酸素と遮断されており、空気雰囲気においても加熱処理することで重合が容易に進行する。これは、繊維素材とラジカル重合性化合物が空気中の酸素と遮断されるため、空気中の酸素によるラジカルの失活が起こり難くなるとともに、ラジカル重合性化合物の揮散が抑えられるからである。この重合によって、ラジカル重合性化合物が繊維素材に拡散浸透し、ラジカル重合性化合物が繊維素材に存在するラジカルと反応することで比較的高いグラフト率のグラフト化繊維を容易に製造することができる。しかしながら、繊維素材に更に高い機能を付与するためには、一層高いグラフト率を達成することが求められている。
特開2001−164467号公報 特開2005−060555号公報
本発明は、上記のような従来の電子線照射法によって得られるグラフト化繊維のグラフト率を、より一層向上させることを目的とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、繊維素材として、該繊維素材を構成する繊維の平均繊維直径が所定の値よりも小さいものを用い、電子線照射後にラジカル重合性化合物を付与した後、重合すること、即ち前照射法によること、更には前記ラジカル重合性化合物を付与した繊維素材の両面にフィルムを密着して重合することにより、電子線照射法により得られるグラフト化繊維におけるグラフト率が顕著に向上することの知見を得、本発明を完成させるに至った。また、本発明者らは、前記ラジカル重合性化合物を繊維素材に付与する際に用いるラジカル重合性化合物溶液の溶媒が乳化剤を含むことでも、グラフト率を向上させ得るとの知見を得た。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
(1)高分子材料からなる平均繊維直径が6μm以下である繊維素材に電子線を照射した後、溶媒にラジカル重合性化合物を溶解したラジカル重合性化合物溶液に浸漬して繊維素材にラジカル重合性化合物を付与した後、前記繊維素材の両面にフィルムを密着し、重合することを特徴とするグラフト化繊維の製造方法。
(2)前記溶媒が乳化剤を含むことを特徴とする(1)に記載のグラフト化繊維の製造方法。
(3)前記溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比〔ラジカル重合性化合物の濃度(重量%)/乳化剤の濃度(重量%)〕が4〜90である(2)に記載のグラフト化繊維の製造方法。
(4)前記溶媒中における乳化剤の濃度が0.1〜5重量%である(2)又は(3)に記載のグラフト化繊維の製造方法。
(5)前記溶媒中におけるラジカル重合性化合物の濃度が1〜40重量%である(2)〜(4)のいずれかに記載のグラフト化繊維の製造方法。
(6)前記乳化剤がソルビタン脂肪酸エステルとエチレンオキシドとの縮合物であることを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載のグラフト化繊維の製造方法。
(7)前記縮合物がポリソルベートであることを特徴とする(6)に記載のグラフト化繊維の製造方法。
(8)前記ラジカル重合性化合物を少なくとも2種類用いることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のグラフト化繊維の製造方法。
(9)前記ラジカル重合性化合物が、アクリル系モノマー、末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつオリゴマー及び末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(8)のいずれに記載のグラフト化繊維の製造方法。
(10)前記アクリル系モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル及びN−イソプロピルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である(9)に記載のグラフト化繊維の製造方法。
(11)前記高分子材料が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、レーヨン、ポリビニルアルコール及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(10)のいずれかに記載のグラフト化繊維の製造方法。
なお、上記(1)のグラフト化繊維の製造方法は、次の(1a)のように言い換えることができる。
(1a)電子線照射を利用するグラフト化繊維の製造方法であって、高分子材料からなる平均繊維直径が6μm以下である繊維素材、及び溶媒にラジカル重合性化合物を溶解したラジカル重合性化合物溶液を準備する工程と、前記繊維素材に電子線を照射する工程と、電子線が照射された前記繊維素材を前記ラジカル重合性化合物溶液に浸漬し、該繊維素材にラジカル重合性化合物を付与する工程と、ラジカル重合性化合物を付与した繊維素材の両面にフィルムを密着させ、ラジカル重合性化合物を繊維素材(より詳しくは繊維素材の表面及び/又は内部に存在するポリマーラジカル等の活性種)と重合させる工程と、を含むことを特徴とするグラフト化繊維の製造方法。
本発明によれば、所定の平均繊維直径を有する繊維素材を用い、所定の電子線照射法によりグラフト重合することで、従来に比べてグラフト率が格段に向上したグラフト化繊維が得られ、各種繊維素材に親水性、疎水性、吸放湿性、静電防止性、接着性、抗菌性、温度応答性等の機能を耐久性よく、且つ高度に付与することができる。
また、本発明方法において、繊維素材へラジカル重合性化合物を付与する際に用いる溶媒に乳化剤を含むことでも、グラフト率を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下に記載した実施の形態によって何ら限定されるものではない。
本発明に係るグラフト化繊維の製造方法は、高分子材料からなる平均繊維直径が6μm以下である繊維素材に電子線を照射した後、溶媒にラジカル重合性化合物を溶解したラジカル重合性化合物溶液に浸漬して繊維素材にラジカル重合性化合物を付与した後、前記繊維素材の両面にフィルムを密着し、重合することを特徴とする。
本発明のグラフト化繊維の製造方法では、予め繊維素材に電子線を照射して繊維素材の表面及び/又は内部にポリマーラジカルなどの活性種を発生させた後、該発生種が発生した繊維素材にラジカル重合性化合物を付与した後、グラフト重合性化合物の重合を促進させる。
本発明の製造方法において、ラジカル重合性化合物の繊維素材への付与とは、ラジカル重合性化合物の少なくとも一部が付着やその他の作用により繊維素材の表面に存在すること、及び/又は、ラジカル重合性化合物の少なくとも一部が繊維素材内部に浸透することを意味する。
電子線照射時の雰囲気温度は、低い温度の方がポリマーラジカルの生成効率は良好となるが、通常の室温でもよい。電子線の照射条件は、加速電圧100〜2000キロボルト(以下、「kV」と略記する。)、好ましくは120〜300kV及び電流1〜100mAの範囲において、繊維素材の厚みや目標グラフト率に応じて適宜照射条件を選定し電子線を照射する。
また、電子線の照射線量は、目的とする性能及び照射によって生ずる繊維の物性低下を考慮して適宜決定すればよく、通常10〜300キログレイ(以下、「kGy」と略記する。)程度が適当であり、好ましくは50〜200kGyである。照射線量が10kGy未満では充分なグラフト重合量に必要な活性種の生成が起こらず、300kGyを越えると、放射線耐性のあるポリエステル繊維においても主鎖の切断による物性低下が起こるので好ましくない。
なお、前記電子線照射雰囲気は、酸素濃度を300ppm以下に設定することが好ましく、窒素ガスなど不活性ガス雰囲気がより好ましいが、空気雰囲気でもよい。ただし、空気雰囲気では空気中の酸素により、素材が酸化される可能性がある。
次いで、前記電子線を照射して活性種を発生させた繊維素材をラジカル重合性化合物溶液に浸漬することでラジカル重合性化合物を付与する。例えば、窒素ガスを通気して溶存酸素を除去されたラジカル重合性化合物溶液の槽に繊維素材を浸漬通過させることにより所定時間滞留させて、繊維素材にラジカル重合性化合物を十分付与する。
なお、本発明において「浸漬」とは繊維素材がラジカル重合性化合物溶液に接触することを意味する。よって、繊維素材にラジカル重合性化合物を付与する方法としては、様々なコーティング方法を用いることができる。その中でも含浸コート、コンマダイレクトコート、コンマリバースコート、キスコート、グラビアコート等は効率良くコーティングできるため好ましい。
前記ラジカル重合性化合物の繊維素材への付与後、重合が終了するまでの間は、繊維素材の両面にフィルムを密着させておく。これにより、ラジカル重合性化合物の揮散を防ぐことができ、また均一にグラフト重合が開始され、更に、空気中の酸素によるラジカルなどの活性種の失活が抑制される。
なお、本発明において、「密着」とは、繊維素材とフィルムが接触していることを意味する。
前記繊維素材の両面にフィルムを密着させる具体的方法としては、例えば、前記ラジカル重合性化合物溶液の槽からラジカル重合性化合物が付与された繊維素材を取り出す時、2枚のフィルムの間に、ラジカル重合性化合物溶液と繊維素材を密封する。このとき、繊維素材両面をフィルムで挟み、該繊維素材及びフィルムを、表面がゴムで覆われた、圧力調整可能なニップロール2本の間を通す。これにより、繊維素材とフィルムが密着し、かつラジカル重合性化合物溶液の付与率を一定に制御できるとともに、繊維素材にラジカル重合性化合物を均一に付与できる。
前記フィルムとしては、0.01〜0.2mmの厚みを有する高分子フィルムであって、用いる電子線の透過力に応じて、適宜の厚さのものを使用すればよい。前記フィルムの材質はポリエステル系、ポリオレフィン系などが挙げられるが、酸素透過性の低いポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。なお、上側に位置するフィルムの厚みと下側に位置するフィルムの厚みとの比(上側に位置するフィルムの厚み/下側に位置するフィルムの厚み)は特に限定されないが、例えば、0.05〜1.00の範囲から選択される。
そして、前記ラジカル重合性化合物を付与した繊維素材の重合処理を実施する。例えば、空気雰囲気の所定温度の重合槽で、所定の時間、滞留させることでラジカル重合性化合物のグラフト重合を促進させる。その後、洗浄・乾燥することで、グラフト化繊維を得ることができる。重合温度は、好ましくは0℃〜130℃、より好ましくは40℃〜70℃とすることで、フィルム間の繊維素材とラジカル重合性化合物のグラフト重合反応は促進される。また、重合時間は、通常5〜600分程度が適当であり、好ましくは30〜120分である。重合時間が5分未満では充分なグラフト重合反応が進行せず、600分を越えるものは生産性が低いため好ましくない。
本発明に用いる繊維素材、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合性化合物溶液について、以下に説明する。
本発明に用いる繊維素材の高分子材料としては特に限定はなく、電子線照射によりラジカル反応の活性種が生成するものであればよい。高分子材料の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ナイロン等のポリアミド類、レーヨン、ポリビニルアルコール、又はセルロース等が挙げられる。
前記繊維素材の形態も特に限定されるものではなく、繊維そのもの、編物、織物などの織布、不織布等のいずれでもよい。本発明のグラフト化繊維を、例えばフィルター等に用いる場合には、織布や不織布が好ましく、より好ましくは不織布である。なお、ここで不織布とは、編織によらずに繊維又は繊維の集合体が、化学的、熱的、又は機械的に結合された布状のものをいう。繊維と繊維とが互いに接触することによる摩擦により、又は互いにもつれ合うことなどにより、一定の形状を保っている場合、機械的に結合されたものとする。また、繊維素材が織布、不織布等である場合、異なる高分子材料からなる複数種の繊維を含んでいてもよい。
そして、本発明の特徴は、前記のような高分子材料からなる繊維素材として、平均繊維直径が極めて小さいもの、具体的には、平均繊維直径が6μm以下の繊維素材を用いる点にある。これは、繊維素材を構成する繊維の平均直径が6μm以下であることと同じ意味である。本発明者らの知見によれば、このように平均繊維直径の小さい繊維素材を用いることで、従来法では高々数%〜数十%であったグラフト率が百%以上へと顕著に向上する。このグラフト率の向上率は、繊維直径が小さくなることによる繊維素材の表面積の増大率を遥かに凌ぐ顕著なものである。このグラフト率の顕著な向上効果の詳細な機構は現時点では解明できておらず、本発明者らにとっても予想外のものであった。
なお、本発明における平均繊維直径とは、以下の手順に従って求められる値をいう。即ち、繊維素材の一部をサンプリングし、走査電子顕微鏡写真を撮り、無作為に選択した100本以上の繊維の直径を測定し、それらを算術平均して得られた値である。
また、本発明におけるグラフト率とは、電子線照射前の繊維素材乾燥重量(W)とグラフト重合後の繊維素材乾燥重量(W)から以下のように算出した値である。
グラフト率=〔(W−W)/W〕×100(%)
本発明において、平均繊維直径は6μm以下であれば特に限定されないが、繊維や繊維素材の強度などの観点から、平均繊維直径は好ましくは0.1〜6μm、より好ましくは0.5〜6μm、さらに好ましくは1〜6μm、特に好ましくは1〜5.5μmである。
本発明で使用されるラジカル重合性化合物(モノマー・オリゴマー・ポリマー)は、電子線照射により繊維素材に生成した活性種(ポリマーラジカル)と結合を生じる化合物である。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの酸性基を有する不飽和化合物やこれらのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド、末端にグリシジル基や水酸基を有する不飽和化合物、ビニルホスホネート等の不飽和有機燐酸エステル、第4、第3アンモニウム塩などの塩基性基を有するメタクリル酸エステル、フルオロアクリレート、アクリロニトリルなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
本発明方法におけるグラフト重合は、繊維素材の表面とラジカル重合性化合物溶液との間の、固相−液相反応であり、かつ電子線照射後にラジカル重合性化合物を付与する前照射法を採用している。そのため、繊維素材にグラフト重合しないラジカル重合性化合物によるホモポリマーの生成が抑制される。また、前記ラジカル重合性化合物を2種以上用いた場合であっても、繊維素材にグラフト重合しないラジカル重合性化合物のみが重合反応してヘテロポリマーが生成したりすることがなく、グラフト鎖内に2種以上のラジカル重合性化合物が結合した複合素材を得ることができる。
前記ラジカル重合性化合物の中でも、本発明においては、反応性が高いためアクリル系モノマーを用いることが好ましい。前記アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸グリシジル及びN−イソプロピルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、機能性付与の点から好ましい。また、前記ラジカル重合性化合物の中でも、多様な機能付与が可能であるため末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつオリゴマー、末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつポリマーを用いることも好ましい。前記末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつオリゴマー及び末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつポリマーとしては、例えば、共栄社化学(株)製ライトエステルや日油(株)製ユニオックス(商標名)など、親水性重合体の末端に炭素−炭素二重結合をもつものが挙げられる。
6μm以下の繊維径の不織布の製造方法としては、メルトブローン方式を採用することが好ましい。該方式は熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、ダイスから集積スクリーン上に高速気流で吹き飛ばし、自己接着性のメルトブローン不織布を製造する方法である。押出機の条件として、使用する熱可塑性樹脂種類の融点温度から30℃以上高くなるような温度条件を採用し、目的とする繊維径に合わせて、樹脂吐出量を調整し、高速気流の流速と温度を最適化することにより、所望の繊維径を有する繊維を含む不織布が得られる。
ラジカル重合性化合物がアクリル酸の場合には、カルボキシ基を容易に化学修飾できるため新機能付与可能なグラフト化繊維が得られる。また、ラジカル重合性化合物がメタクリル酸グリシジルの場合には、エポキシ基を容易に化学修飾できるため、新機能付与可能なグラフト化繊維が得られる。更に、ラジカル重合性化合物がN−イソプロピルアクリルアミドの場合には、温度応答性が付与され、例えば細胞分離に好適なグラフト化繊維が得られる。
本発明では、上記のラジカル重合性化合物を溶媒に溶解させたラジカル重合性化合物溶液に、電子線照射後の繊維素材を浸漬して該繊維素材にラジカル重合性化合物を付与する。前記溶媒としては、ラジカル重合性化合物を溶解できかつ繊維素材を溶解しないものであれば特に限定されないが、水、低級アルコールのような有機溶剤又はこれらの混合溶媒を用いることができる。これらの中でも、水と低級アルコールとの混合溶媒が好ましく、水とメタノールとの混合溶媒、及び水とエタノールとの混合溶媒がより好ましく、水とエタノールとの混合溶媒がさらに好ましい。水と低級アルコールとの混合溶媒における水及び低級アルコールの重量基準の使用割合は、例えば、水:低級アルコール=5:5〜8:2の範囲から適宜選択できる。また、後述する乳化剤を用いる場合は、溶媒として水が好ましい。
前記溶媒中のラジカル重合性化合物の濃度は、希望するグラフト率により異なるが、1〜70重量%で調整することができる。また、繊維素材にグラフト重合しないホモポリマーが生成しやすいラジカル重合性化合物を用いる場合は、ラジカル重合性化合物溶液に、銅や鉄の金属塩を添加することで、ホモポリマーの生成を抑制してもよい。前記溶液中のラジカル重合性化合物の濃度の下限値としては、1重量%以上が好ましく、2.5重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、10重量%以上が特に好ましい。また、ラジカル重合性化合物の濃度の上限値としては、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましく、40重量%以下が特に好ましい。
溶媒中におけるラジカル重合性化合物の濃度は、前述のように1〜70重量%の範囲から適宜選択できるが、前記範囲において下限値を1重量%から2.5重量%、5重量%又は10重量%に変更してもよく、及び/又は、前記範囲において上限値を70重量%から60重量%、50重量%又は40重量%に変更してもよい。
なお、本発明における溶解とは溶質が溶媒に一部分でも溶けていることを意味する。そのため、不均一なラジカル重合化合物溶液を反応に用いてもよい。ただし、品質管理の点で均一な溶液を反応に用いることが好ましい。また、本発明では、ラジカル重合性化合物の溶媒への溶解性が十分ではない場合でも、該ラジカル重合性化合物を該溶媒中に略均一に分散させ得る場合には、その分散液を本発明のラジカル重合性化合物溶液の代替として用いることができる。
なお、ラジカル重合性化合物溶液は、予め窒素ガスなど不活性ガスを吹き込むことで、溶存酸素を除去しておくことが望ましい。
また、本発明者らは、前記ラジカル重合性化合物溶液に用いる溶媒が、グラフト率に影響するとの知見も得た。即ち、繊維素材をラジカル重合性化合物溶液に浸漬して繊維素材にラジカル重合性化合物を付与する際に、前記溶媒として、乳化剤を含む溶媒を用いることで、グラフト率が向上する。
本発明において、ラジカル重合性化合物溶液に用いる溶媒が乳化剤を含むことによるグラフト率の向上効果の詳細な機構は現時点では解明できていないが、繊維素材とラジカル重合性化合物溶液との固相−液相反応において、固相である繊維素材に対する液相中のラジカル重合性化合物の浸透圧や、溶媒に対するラジカル重合性化合物の溶解性に、乳化剤が影響を与えることなどが想定される。
前記のような乳化剤を含む溶媒を用いる場合には、前記溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比〔ラジカル重合性化合物の濃度(重量%)/乳化剤の濃度(重量%)〕が4〜90の範囲となるように調整することが好ましい。前記重量比が4未満のものはラジカル重合性化合物溶液が二相分離する場合があるため前記重量比の下限値は、4以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましく、40以上がより一層好ましい。一方、前記重量比が90を越えるものは、乳化剤による効果が得られにくいため、前記重量比の上限値は90以下が好ましく、80以下がより好ましい。前記重量比を前記範囲内に調整することで、グラフト率を向上させることができる。上記重量比は好ましくは4〜90の範囲であるが、前記範囲において下限値を4から10、20又は40に変更してもよく、及び/又は、前記範囲において上限値を90から80に変更してもよい。
また、前記の場合において、溶媒中における乳化剤の濃度は0.1〜5重量%の範囲となるように調整することが好ましい。前記乳化剤濃度が0.1重量%未満のものは、乳化剤による効果が得られ難くラジカル重合性化合物が溶媒に分散しづらい場合があるため、前記乳化剤濃度の下限値は、0.1重量%が好ましく、0.25重量%が更に好ましい。一方、前記乳化剤濃度が5重量%を越えるものはラジカル重合性化合物溶液が二相分離するため、前記乳化剤濃度の上限値は5重量%が好ましく、0.75重量%が更に好ましい。前記乳化剤の濃度を前記範囲内に調整することで、グラフト率を向上させることができる。上記乳化剤濃度は好ましくは0.1〜5重量%の範囲であるが、前記範囲において下限値を0.1重量%から0.25重量%に変更してもよく、及び/又は、前記範囲において上限値を5重量%から0.75重量%に変更してもよい。
前記乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステルとエチレンオキシドとの縮合物、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。特にソルビタン脂肪酸エステルとエチレンオキシドとの縮合物は優れた乳化性、分散性、起泡性、湿潤性を有するためより好ましい。該縮合物の具体例としては例えばポリソルベートが挙げられる。ポリソルベートとしては、ポリソルベート20、60、65、80等が挙げられるが、これらの中でも親水性が高いポリソルベート20がより好ましい。市販品としては、例えば、ツイン20(Tween20、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、ツイン80(Tween80、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)等が挙げられる。乳化剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明方法により製造されるグラフト化繊維は、その表面及び/又は内部にグラフト重合したラジカル重合性化合物由来のグラフト鎖の存在により、親水性、疎水性、吸放湿性、静電防止性、接着性、抗菌性、温度応答性等の各種機能が耐久性よく付与されており、前記付与された機能に応じて、例えば、吸水性繊維、抗菌性繊維、細胞分離フィルター、金属回収フィルターなどの各種用途に有用に適用されうる。
以下において、ラジカル重合性化合物を、単に「重合性化合物」と呼ぶことがある。
(実施例1)
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
水とエタノールを1:1(重量比)の割合で混合した溶媒に、メタクリル酸グリシジルを溶解し、モノマー濃度20重量%のメタクリル酸グリシジル溶液を調製した。該メタクリル酸グリシジル溶液に窒素ガスを通気することで溶存酸素を除去し、ラジカル重合性化合物溶液とした。
<電子線照射>
縦14cm×横20cm×厚み0.43mmのポリプロピレン不織布(平均繊維直径3μm、目付40g/m)に加速電圧250kV、照射線量50kGyとなる条件で、窒素ガス雰囲気下、室温で電子線照射を行った。
<グラフト重合>
電子線照射後の不織布を、前記ラジカル重合性化合物溶液に浸漬し、不織布に重合性化合物を付与した。該重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルム(上側のフィルム厚み:25μm、下側のフィルム厚み:50μm)を密着させた。該フィルムを密着させた不織布を、フィルムごとオーブン内で50℃、30分間加熱して、重合反応を促進させた。その後、不織布両面のフィルムを剥離し、水、メタノールで不織布を洗浄した後、乾燥し、グラフト化不織布を得た。
<評価>
電子線照射前の不織布乾燥重量(W)とグラフト重合後の不織布乾燥重量(W)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、166%であった。
(実施例2)
不織布を、平均繊維直径5μm、目付50g/mのポリプロピレン不織布(縦14cm×横20cm×厚み0.43mm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてグラフト化不織布を得、グラフト率を算出した。グラフト率は、135%であった。
(比較例1)
不織布を、平均繊維直径17μm、目付50g/mのポリプロピレン不織布(縦14cm×横20cm×厚み0.60mm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてグラフト化不織布を得、グラフト率を算出した。グラフト率は、8%であった。
実施例1〜2、比較例1のグラフト化繊維の製造条件と結果を表1に示す。
Figure 0006675713
表1に示すとおり、不織布(繊維素材)の繊維平均直径が本発明の範囲内にある実施例1、2は、比較例1に較べてグラフト率が極めて高い。
(実施例3)
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
水とエタノールを1:1(重量比)の割合で混合した溶媒に、メタクリル酸グリシジルを溶解し、モノマー濃度10重量%のメタクリル酸グリシジル溶液を調製した。該メタクリル酸グリシジル溶液に窒素ガスを通気することで溶存酸素を除去し、ラジカル重合性化合物溶液とした。
<電子線照射>
縦7.2cm×横7.2cm×厚み0.24mmのポリプロピレン不織布(平均繊維直径1μm、目付20g/m)に加速電圧250kV、照射線量100kGyとなる条件で、窒素ガス雰囲気下、室温で電子線照射を行った。
<グラフト重合>
電子線照射後の不織布を、前記ラジカル重合性化合物溶液に浸漬し、不織布に重合性化合物を付与した。該重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルム(上側のフィルム厚み:25μm、下側のフィルム厚み:50μm)を密着させた。該フィルムを密着させた不織布を、フィルムごとオーブン内で50℃、30分間加熱して、重合反応を促進させた。その後、不織布両面のフィルムを剥離し、水、メタノールで不織布を洗浄した後、乾燥し、グラフト化不織布を得た。
<評価>
電子線照射前の不織布乾燥重量(W)とグラフト重合後の不織布乾燥重量(W)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、96%であった。
(比較例2)
重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルムを密着することなく重合反応を促進させた以外は、実施例3と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、6%であった。
(実施例4)
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
濃度0.5重量%のTween20水溶液を溶媒とし、これにメタクリル酸グリシジルを溶解し、モノマー濃度5重量%のメタクリル酸グリシジル溶液を調製した。該メタクリル酸グリシジル溶液に窒素ガスを通気することで溶存酸素を除去し、ラジカル重合性化合物溶液とした。
<電子線照射>
縦7.2cm×横7.2cm×厚み0.24mmのポリプロピレン不織布(平均繊維直径1μm、目付20g/m)に実施例3と同じ条件で電子線照射を行った。
<グラフト重合>
電子線照射後の不織布を、前記ラジカル重合性化合物溶液に浸漬し、不織布に重合性化合物を付与した。該重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルム(上側のフィルム厚み:25μm、下側のフィルム厚み:50μm)を密着させた。該フィルムを密着させた不織布を、実施例3と同じ条件で加熱して、重合反応を促進させた。その後、不織布両面のフィルムを剥離し、水、メタノールで不織布を洗浄した後、乾燥し、グラフト化不織布を得た。
<評価>
電子線照射前の不織布乾燥重量(W)とグラフト重合後の不織布乾燥重量(W)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、240%であった。
(比較例3)
重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルムを密着させることなく重合反応を促進させた以外は、実施例4と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、51%であった。
実施例3、4、比較例2、3のグラフト化繊維の製造条件と結果を表2に示す。
(0058)
Figure 0006675713
表2に示すとおり、繊維素材にラジカル重合性化合物を付与した後、加熱して重合を促進する際に繊維素材の両面にフィルムを密着することにより、グラフト率が顕著に向上する。また、ラジカル重合性化合物溶液の溶媒が乳化剤を含むことにより、グラフト率が更に顕著に向上する。
(実施例5)
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
水とエタノールを7:3(重量比)の割合で混合した溶媒に、アクリル酸を溶解し、モノマー濃度20重量%のアクリル酸溶液を調製した。該アクリル酸溶液に窒素ガスを通気することで溶存酸素を除去し、ラジカル重合性化合物溶液とした。
<電子線照射>
縦7.2cm×横7.2cm×厚み0.43mmのポリプロピレン不織布(平均繊維直径3μm、目付40g/m)に加速電圧250kV、照射線量100kGyとなる条件で、窒素ガス雰囲気下、室温で電子線照射を行った。
<グラフト重合>
電子線照射後の不織布を、前記ラジカル重合性化合物溶液に浸漬し、不織布に重合性化合物を付与した。該重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルム(上側のフィルム厚み:25μm、下側のフィルム厚み:50μm)を密着させた。該フィルムを密着させた不織布を、フィルムごとオーブン内で50℃、30分間加熱して、重合反応を促進させた。その後、不織布両面のフィルムを剥離し、水、メタノールで不織布を洗浄した後、乾燥し、グラフト化不織布を得た。
<評価>
電子線照射前の不織布乾燥重量(W)とグラフト重合後の不織布乾燥重量(W)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、46%であった。
(実施例6)
ラジカル重合性化合物溶液を、水とエタノールを7:3(重量比)の割合で混合した溶媒にN−イソプロピルアクリルアミドを溶解した、モノマー濃度22.6重量%のN−イソプロピルアクリルアミド溶液に変更し、重合時間を120分間に変更した以外は、実施例5と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、32%であった。
(実施例7)
ラジカル重合性化合物溶液を、水とエタノールを7:3(重量比)の割合で混合した溶媒にアクリル酸およびN−イソプロピルアクリルアミドを溶解した、アクリル酸濃度10重量%、N−イソプロピルアクリルアミド濃度10重量%のアクリル酸/N−イソプロピルアクリルアミド溶液に変更した以外は、実施例5と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、68%であった。
(実施例8)
ラジカル重合性化合物溶液を、水とエタノールを7:3(重量比)の割合で混合した溶媒にN−イソプロピルアクリルアミド及びメタクリル酸グリシジルを溶解した、N−イソプロピルアクリルアミド濃度17重量%、メタクリル酸グリシジル濃度7.1重量%のN−イソプロピルアクリルアミド/メタクリル酸グリシジル溶液に変更し、重合時間を120分間に変更した以外は、実施例5と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、51%であった。
(実施例9)
ラジカル重合性化合物溶液のN−イソプロピルアクリルアミド及びメタクリル酸グリシジルの濃度を、N−イソプロピルアクリルアミド濃度11.3重量%、メタクリル酸グリシジル濃度14.2重量%に変更した以外は、実施例8と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、93%であった。
(実施例10)
ラジカル重合性化合物溶液のN−イソプロピルアクリルアミド及びメタクリル酸グリシジルの濃度を、N−イソプロピルアクリルアミド濃度5.7重量%、メタクリル酸グリシジル濃度21.3重量%に変更した以外は、実施例8と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、78%であった。
実施例5〜10のグラフト化繊維の製造条件と結果を表3に示す。
Figure 0006675713
表3に示すとおり、ラジカル重合性化合物としてアクリル酸(実施例5)、N−イソプロピルアクリルアミド(実施例6)をそれぞれ用いた場合にも、グラフト率の高いグラフト化不織布が得られる。また、実施例7〜10のように、2種のラジカル重合性化合物を用いた場合にも、グラフト率の高いグラフト化不織布が得られる。
(実施例11)
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
濃度0.5重量%のTween20水溶液を溶媒とし、これにメタクリル酸グリシジルを溶解し、モノマー濃度2.5重量%のメタクリル酸グリシジル溶液を調製した。溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比〔ラジカル重合性化合物の濃度(重量%)/乳化剤の濃度(重量%)〕は5である。該メタクリル酸グリシジル溶液に窒素ガスを通気することで溶存酸素を除去し、ラジカル重合性化合物溶液とした。
<電子線照射>
縦7.2cm×横7.2cm×厚み0.43mmのポリプロピレン不織布(平均繊維直径3μm、目付40g/m)に加速電圧250kV、照射線量50kGyとなる条件で、窒素ガス雰囲気下、室温で電子線照射を行った。
<グラフト重合>
電子線照射後の不織布を、前記ラジカル重合性化合物溶液に浸漬し、不織布に重合性化合物を付与した。該重合性化合物を付与した不織布の上下にポリエステルフィルム(上側のフィルム厚み:25μm、下側のフィルム厚み:50μm)を密着させた。該フィルムを密着させた不織布を、フィルムごとオーブン内で50℃、30分間加熱して、重合反応を促進させた。その後、不織布両面のフィルムを剥離し、水、メタノールで不織布を洗浄した後、乾燥し、グラフト化不織布を得た。
<評価>
電子線照射前の不織布乾燥重量(W)とグラフト重合後の不織布乾燥重量(W)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、10%であった。
(実施例12)
ラジカル重合性化合物溶液のメタクリル酸グリシジルの濃度を5重量%(溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比が10)に変更した以外は、実施例11と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、32%であった。
(実施例13)
ラジカル重合性化合物溶液のメタクリル酸グリシジルの濃度を10重量%(溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比が20)に変更した以外は、実施例11と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、84%であった。
(実施例14)
ラジカル重合性化合物溶液のメタクリル酸グリシジルの濃度を20重量%(溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比が40)に変更した以外は、実施例11と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、111%であった。
(実施例15)
ラジカル重合性化合物溶液のメタクリル酸グリシジルの濃度を40重量%(溶媒中におけるラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比が80)に変更した以外は、実施例11と同様にしてグラフト化不織布を得た。グラフト率は、139%であった。
実施例11〜15のグラフト化繊維の製造条件と結果を表4に示す。
Figure 0006675713
表4に示すとおり、溶媒中におけるラジカル重合性化合物の濃度、及びラジカル重合性化合物と乳化剤の重量比〔ラジカル重合性化合物の濃度(重量%)/乳化剤の濃度(重量%)〕が所定の範囲内で、かつその値が大きくなるほどグラフト率が向上する。

Claims (11)

  1. 高分子材料からなる平均繊維直径が6μm以下である不織布に電子線を照射した後、溶媒にラジカル重合性化合物を溶解したラジカル重合性化合物溶液に浸漬して前記不織布に前記ラジカル重合性化合物を付与した後、前記不織布の両面にフィルムを密着し、重合することを特徴とするグラフト化繊維の製造方法。
  2. 前記溶媒が乳化剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  3. 前記溶媒中における前記ラジカル重合性化合物と前記乳化剤の重量比〔前記ラジカル重合性化合物の濃度(重量%)/前記乳化剤の濃度(重量%)〕が40〜90である請求項2に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  4. 前記溶媒中における前記乳化剤の濃度が0.1〜5重量%である請求項2又は3に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  5. 前記溶媒中における前記ラジカル重合性化合物の濃度が20〜40重量%である請求項2〜4のいずれか1項に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  6. 前記乳化剤がソルビタン脂肪酸エステルとエチレンオキシドとの縮合物であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  7. 前記縮合物がポリソルベートであることを特徴とする請求項6に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  8. 前記ラジカル重合性化合物を少なくとも2種類用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  9. 前記ラジカル重合性化合物が、アクリル系モノマー、末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつオリゴマー及び末端に少なくとも1つのラジカル重合性官能基をもつポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  10. 前記アクリル系モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル及びN−イソプロピルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のグラフト化繊維の製造方法。
  11. 前記高分子材料が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、レーヨン、ポリビニルアルコール及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜10のいずれか1項に記載のグラフト化繊維の製造方法。

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