以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1および図2に示すように、断熱箱体1は、詳細は後述するが、鋼板製の外箱2と合成樹脂製の内箱3との間(の空間部)に断熱材を有して構成されており、内部に複数の貯蔵室が設けられている。具体的には、図2に示すように、断熱箱体1内には、上段から順に、冷蔵室4、野菜室5が設けられ、その下方に製氷室6と小冷凍室(図示せず)が左右に並べて設けられ、これらの下方に冷凍室7が設けられている。製氷室6内には、自動製氷装置8が設けられている。
冷蔵室4および野菜室5は、いずれも冷蔵温度帯(例えば、1〜4℃のプラス温度帯)の貯蔵室であり、それらの間は、合成樹脂製の仕切壁9により上下に仕切られている。冷蔵室4の前面開口部には、ヒンジ開閉式の断熱扉4aが設けられ、野菜室5の前面開口部には、引出し式の断熱扉5aが設けられている。この断熱扉5aの背面部には、貯蔵容器を構成する下部ケース10が連結されている。下部ケース10の上部には、下部ケース10よりも小形の上部ケース11が設けられている。冷蔵室4内の最下部(仕切壁9の上部)には、チルド室12が設けられている。このチルド室12内には、チルドケース13が出し入れ可能に設けられている。
前記製氷室6、小冷凍室、並びに冷凍室7は、いずれも冷凍温度帯(例えば、−10〜−20℃のマイナス温度帯)の貯蔵室であり、前記野菜室5と製氷室6および小冷凍室との間は、断熱仕切壁14により上下に仕切られている。製氷室6の前面開口部には、引出し式の断熱扉6aが設けられており、その断熱扉6aの背面部に貯氷容器15が連結されている。小冷凍室の前面開口部にも、図示はしないが、貯蔵容器が連結された引出し式の断熱扉が設けられている。冷凍室7の前面開口部にも、下側の貯蔵容器7bおよび上側の貯蔵容器7cが連結された引出し式の断熱扉7aが設けられている。
断熱箱体1内には、各貯蔵室を冷却するための冷凍サイクル16(図3参照)が組み込まれている。詳細は後述するが、冷凍サイクル16は、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)を冷却するための冷蔵用冷却器17と、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室6、小冷凍室、冷凍室7)を冷却するための冷凍用冷却器18とを含んで構成されている。図2に示すように、断熱箱体1の下端部背面側には、機械室19が設けられている。この機械室19内に、冷凍サイクル16を構成する圧縮機20や凝縮器21(図3参照)およびこれらを冷却するための冷却ファン(図示せず)や後述する除霜水蒸発皿35などが配設されている。
断熱箱体1の冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)の奥部には、冷蔵用冷却器17、この冷蔵用冷却器17により生成された冷気を冷蔵室4(および野菜室5)内に供給するための冷気供給ダクト30、前記冷気を循環させるための冷蔵側送風ファン31などが、以下のようにして配設されている。即ち、断熱箱体1の背部断熱壁には、冷蔵室4の最下段のチルド室12の後方に位置して、送風ダクト兼用の冷蔵側冷却器室32が設けられている。この冷蔵側冷却器室32の前方側の下部には、野菜室5内に上方から臨む吸込み口37が設けられている。そして、冷蔵用冷却器17は、この冷蔵側冷却器室32内に配設されている。
冷蔵側冷却器室32の後方側の下部には、冷蔵用冷却器17からの除霜水を受ける冷蔵側水受部33が設けられている。この冷蔵側水受部33は、後述するように配置される排水用の配管たる冷蔵側排水ホース34を介して、機械室19内に設けられた除霜水蒸発皿35に連通されている。これにより、冷蔵側水受部33で受けられた除霜水は、冷蔵側排水ホース34を通って除霜水蒸発皿35に導かれて、該除霜水蒸発皿35で蒸発するようになっている。
前記チルド室12の後方には、冷蔵側送風ファン31が配設されているとともに、送風ダクト36が設けられている。送風ダクト36は、下端部が冷蔵側冷却器室32の後方上部に連通され、上端部が冷蔵室4の背部断熱壁を一定の幅で上方に伸びるように設けられた冷気供給ダクト30の下端部に連通されている。冷気供給ダクト30には、冷蔵室4内で開口する複数の冷気供給口30aが設けられている。なお、特に図には示さないが、冷蔵室4の底板を構成する仕切壁9の後部の左右の両隅部には、連通口が形成されている。この連通口の一方は、冷蔵室4とこれの下方の野菜室5とを連通させ、他方は、冷蔵室4と冷蔵側冷却器室32の前方側とを連通させている。
この構成において、冷蔵側送風ファン31が駆動されると、図2の矢印で示すように、野菜室5内の空気が吸込み口37から冷蔵側冷却器室32内に吸い込まれ、その吸い込まれた空気は、送風ダクト36側へ吹き出される。送風ダクト36側へ吹き出された空気は冷気供給ダクト30を通り、複数の冷気供給口30aから冷蔵室4内に吹き出される。冷蔵室4内に吹き出された空気の一部は、前記連通口を通して野菜室5内にも供給され、最終的に冷蔵側送風ファン31により冷蔵側冷却器室32を経て送風ダクト36内に吸い込まれるという循環が行なわれる。この過程で、冷蔵側冷却器室32内を通る空気が冷蔵用冷却器17により冷却されて冷気となり、その冷気が冷蔵室4および野菜室5に供給されることによって、冷蔵室4および野菜室5が冷蔵温度帯の温度に冷却される。
断熱箱体1の冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室6、小冷凍室、冷凍室7)の奥部には、送風ダクト兼用の冷凍側冷却器室38が設けられている。この冷凍用冷却器室38の下部に位置して、冷凍用冷却器18や除霜用ヒータ(図示せず)などが配設されている。また、冷凍側冷却器室38の上部に位置して、冷凍側送風ファン39が配設されている。冷凍側冷却器室38の前面の中間部には、冷気吹出口38aが設けられ、下端部には、戻り口38bが設けられている。
冷凍用冷却器18の下方に位置させて、冷凍用冷却器18の除霜時の除霜水を受ける冷凍側水受部40が設けられている。この冷凍側水受部40は、断熱箱体1の底部断熱壁を通る冷凍側排水ホース41を介して機械室19内に設けられた除霜水蒸発皿35に連通されている。これにより、冷凍側水受部40で受けられた除霜水も、冷凍側排水ホース41を通って除霜水蒸発皿35に導かれて、該除霜水蒸発皿35で蒸発するようになっている。
この構成において、冷凍側送風ファン39が駆動されると、冷凍用冷却器18により生成された冷気が、前記冷気吹出口38aから製氷室6、小冷凍室、冷凍室7内に供給された後、前記戻り口38bから冷凍側冷却器室38内に戻されるといった循環を行なうようになっている。これにより、それら製氷室6、小冷凍室および冷凍室7が冷却される。
次に、冷凍サイクル16の構成について詳述する。冷凍サイクル16は、図3に示すように、冷媒の流れ順に、圧縮機20と、凝縮器21と、ドライヤ22と、三方弁23と、キャピラリチューブ24および25と、冷却器17および18とが環状に接続されて構成される。圧縮機20の高圧吐出口には、凝縮器21とドライヤ22とが順に接続パイプ26を介して接続されている。ドライヤ22の吐出側には、三方弁23が接続されている。三方弁23は、ドライヤ22が接続される1つの入口と、2つの出口とを有している。三方弁23の2つの出口のうち、一方の出口には、接続用の配管である冷蔵側キャピラリチューブ24と冷蔵用冷却器17とが順に接続されている。この冷蔵用冷却器17は、接続用の配管である冷蔵側サクションパイプ27を介して圧縮機20に接続されている。
三方弁23の2つの出口のうち、他方の出口には、接続用の配管である冷凍側キャピラリチューブ25と冷凍用冷却器18とが順に接続されている。この冷凍用冷却器18は、接続用の配管である冷凍側サクションパイプ28を介して圧縮機20に接続されている。なお、冷凍用冷却器18と圧縮機20との間には、冷蔵用冷却器17からの冷媒が冷凍用冷却器18側に逆流しないための逆止弁29が設けられている。
次に、断熱箱体1の具体的構成について、図1、図3ないし図5をも参照しながら説明する。
鋼板製の外箱2は、左側板50、右側板51、天板52、底板53および背板54を有するもので、前面が開口する。左側板50、右側板51、天板52は、一枚の長尺な鋼板をほぼU字状に折曲することにより形成されている。底板53には、機械室19を形成するための段差部53aが折曲形成されている。また、左側板50および右側板51において、前端部には、内方に突出するフランジ部50aおよび51a(図1参照)が形成され、後端部には、前方に指向するフランジ部50bおよび51b(図1参照)が形成されている。更に、背板54の左右の両端部には、前記左側板50および右側板51のフランジ部50bおよび51bに挿入係合されるフランジ部54aおよび54b(図1参照)が形成されている。なお、背板54の左右両側部の中央部には、注入孔55(図4参照)がそれぞれ形成されている。
合成樹脂製の内箱3は、真空成形機で一体成形されたもので、外箱2の左側板50、右側板51、天板52、底板53および背板54と対応する左側板56、右側板57、天板58、底板59および背板60を有するもので、前面が開口する。底板59には、外箱2の底板53の段差部53aに対応して機械室19を形成するための段差部59aが形成されている。左側板56および右側板57の前端部には、前記外箱2の左側板50および右側板51のフランジ部50aおよび51aに挿入係合されるフランジ部56aおよび57aが形成されている。また、背板60とこれに連なる他の板たる左側板56、右側板57および天板58とのなすコーナ部には、該コーナ部よりも内箱3の内方に突出する状態になる収納凹部としての面取り部61、62および63(図1、図2および図4参照)が形成されている。そして、内箱3の背板60の左右の両側部には、基端部が面取り部61若しくは62に位置して左側板50,56間若しくは右側板51,57間に連なるようにして内箱3の内方に突出する複数の凹部64が形成されている。なお、各凹部64の先端部には、ガス抜き孔64a(図1参照)が形成されている。
そして、冷凍サイクル16の冷蔵側キャピラリチューブ24および冷蔵側サクションパイプ27は、図5に示すように、内箱3内の背板60側から面取り部62側に導かれて、その面取り部62外方に導出され、互いに例えばロー付けされて熱交換可能に一体化されてパイプ体65を構成する(図1および図2参照)。更に、このパイ体65は、内箱3の面取り部62の外面に沿って上昇し、更に、面取り部63の外面に沿って左側板56方向に指向し、左側板56側でUターンして右側板57方向に指向した後、面取り部62の外面に沿って下降するように配置される。
ここで、冷凍サイクル16の冷蔵側キャピラリチューブ24および冷蔵側サクションパイプ27を熱交換可能に一体化するのは、冷蔵側キャピラリチューブ24の熱により冷蔵側サクションパイプ27内の冷媒の気化を促進して冷凍サイクルの16の運転効率をよくし、電力使用量の節減を図るためである。なお、この実施形態では、冷凍側キャピラリチューブ25および冷凍側サクションパイプ28についても同様の配置がなされるが、ここでは図示を省略する。また、冷蔵側水受部33の冷蔵側排水ホース34は、図5に示すように、内箱3内の背板60側から面取り部62側に伸ばされて、その面取り部62の外方に導出され、更に、この面取り部62の外面に沿って下降するように配置される。
しかして、図1、図2および図4に示すように、外箱2の左側板50および右側板51の内面には、両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤によりそれぞれ断熱材としての真空断熱パネル66および67の裏面が接着され、内箱3の天板58および底板59の外面には、両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤によりそれぞれ断熱材としての真空断熱パネル68および69の表面が接着され、外箱2の背板54の内面には、両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤により断熱材としての真空断熱パネル70の裏面が接着されている。そして、図1に示すように、外箱2内に内箱3を配置して、内箱3の左側板56および右側板57のフランジ部56aおよび57aを外箱2の左側板50および右側板51のフランジ部50aおよび51aに挿入係合させ、底板53を外箱2の左側板50および右側板51に取り付け、更に、背板54を外箱2の左側板50、右側板51、天板62および底板53に取り付けて、真空断熱パネル70の表面を内箱3の背板60の外面に圧接させる。
その後、図4に示すように、外箱2および内箱3の前面開口部が下側になるようにし、内箱3内に発泡治具を嵌め込んだ状態にして、その外箱2の背板54の注入孔55から発泡ウレタンからなる発泡断熱材の原液を注入する。注入孔55から外箱2と内箱3との間に注入された発泡断熱材の原液は、外箱2および内箱3の前面開口部のフランジ部50a、51aおよび56a、57aで受けられた後、発泡により膨張して外箱2および内箱3の左側側板50および56間、右側板51および57間並びに天板52および58間を上昇して充填され、断熱材としての発泡断熱材71が構成される。
上記断熱材として真空断熱パネル66ないし70と発泡断熱材71との併用による断熱箱体1において、図1に示すように、左側板50、56、真空断熱パネル66および発泡断熱材71aは、左側部断熱壁を構成し、右側板51、57、真空断熱パネル67および発泡断熱材71bは、右側部断熱壁を構成し、図2に示すように、天板52、58、真空断熱パネル68および発泡断熱材71cは、天部断熱壁を構成し、底板53、59、真空断熱パネル69および発泡断熱材71dは、底部断熱壁を構成し、図1および図2に示すように、背板54、60および真空断熱パネル70は、背部断熱壁を構成する。この場合、断熱箱体1において、真空断熱パネル66ないし70は、ほぼ等しい厚さ寸法に設定されており、発泡断熱材71aないし71dは、ほぼ等しい厚さ寸法に設定されているが、その発泡断熱材71aないし71dの厚さ寸法は、真空断熱パネル66ないし70の厚さ寸法と同等以下例えばほぼ等しく設定されている。
また、断熱箱体1において、図1に示すように、外箱2の左側板50および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル66の後面部と、板真空断熱パネル70の左側面部と、内箱3の面取り部61とで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71eが充填され、右側板51および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル67の後面部と、板真空断熱パネル70の右側面部と、内箱3の面取り部62とで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71fが充填されている。図2に示すように、外箱2の天板52および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル68の後面部と、真空断熱パネル70の上面部と、内箱3の面取り部63とで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71gが充填され、底板53および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル70の下面部と、段差部53aおよび59aとで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71hが充填されている。そして、外箱2の背板54の内面に裏面が接着された真空断熱パネル70とこれに圧接された内箱3の背板60との間には、左側板50、56間或いは右側板51、57間を上昇する発泡断熱材が複数の凹部64内に流入することにより発泡断熱材71iが充填され(図1参照)以て、発泡断熱材71iにより真空断熱パネル70の表面が内箱3の背板60の外面(裏面)に接着される。
上記の場合、断熱箱体1においては、左側板50、56、真空断熱パネル66および発泡断熱材71aからなる左側部断熱壁と、右側板51、57、真空断熱パネル67および発泡断熱材71bからなる右側部断熱壁と、天板52、58、真空断熱パネル68および発泡断熱材71cからなる天部断熱壁と、底板53、59、真空断熱パネル69および発泡断熱材71dからなる底部断熱壁とは、背板54、60および真空断熱パネル70からなる背部断熱壁以外の他の断熱壁たる側部断熱壁を構成するものである。そして、左側部断熱壁および右側部断熱壁では、内箱3とこれに対応する真空断熱パネル66および67の表面との間に発泡断熱材71aおよび71bが存在し、天部断熱壁および底部断熱壁では、外箱2とこれに対応する真空断熱パネル68および69の裏面との間に発泡断熱材71cおよび71dが存在するが、背部断熱壁では、内箱3とこれに対応する真空断熱パネル70の表面とが当接しており、これらの間に部分的に接着用の発泡断熱材71iが存在するのみである。従って、背部断熱壁において真空断熱パネル70の内箱3に対応する表面および外箱2に対応する裏面における発泡断熱材がない面積は、他の側部断熱壁たる左側部断熱壁、右側部断熱壁、天部断熱壁および底部断熱壁のそれよりも広くなるように設定されている。換言すれば、背部断熱壁における発泡断熱材の使用量は、他の側部断熱壁たる左側部断熱壁、右側部断熱壁、天部断熱壁および底部断熱壁の発泡断熱材の使用量よりも著しく少ないのである。
また、上記の場合、断熱箱体1においては、内箱3の右側板57と背板60とがなすコーナ部および天板58と背板60となすコーナ部に面取り部62および63が形成されていて、面取り部62および63が内箱4の内方に突出する分だけ面取り部62および63の外方に空間が生じてこれが収納凹部となって、ここにも発泡断熱材71fおよび71gが充填されてその厚さが増すようになり、この実施形態では、図1および図2に示すように、その増加した発泡断熱材71fおよび71gの部分にパイプ体65が埋設されるとともに、図1に示すように、冷蔵側排水ホース34が発泡断熱材71f部分に埋設される。
このように第1の実施形態によれば、内箱3の背板60とこれに連なる左側板56、右側板57および天板58とのなすコーナ部には、該コーナ部よりも内箱3の内方に突出する状態になる収納凹部としての面取り部61、62および63が形成され、これらのいずれかとしての面取り部62および63の外方に発泡断熱材71fおよび71gが充填されてその厚さが増すようになり、その増加した発泡断熱材71fおよび71gの部分に接続用の配管たるパイプ体65が埋設されるとともに、排水用の配管たる冷蔵側排水ホース34が発泡断熱材71f部分に埋設されるので、外箱2の背板54と内箱3の背板60との間にパイプ体65および冷蔵側排水ホース34を配置する必要はなくなり、外箱2の背板54と内箱3の背板60との間に厚さ寸法の小なる真空断熱パネル70を容易に配置させることができる。即ち、内箱3の背板60の真空断熱パネル70と接近する部分たる背板60の外面側には、配管たるパイプ体65および冷蔵側排水ホース34は存在しないのである。
そして、外箱2の背板54と内箱3の背板60との間に真空断熱パネル70を配置し、外箱2と内箱3との間に発泡断熱材の原液を注入して発泡充填させたときに、発泡断熱材が真空断熱パネル70と内箱3の背板60との間にほとんど流入充填されないようにしたので、発泡断熱材が背板54と背板60との間に流入するような発泡圧を得るべく必要な発泡倍率以上の原液を注入する必要はなく、発泡断熱材の使用量の節減を図ることができる。
また、内箱3の背板60には内方に突出する複数の凹部64を形成して、これらの凹部64に発泡断熱材を流入させて発泡断熱材71iを充填させるようにしたので、発泡断熱材71iを接着剤として利用して真空断熱パネル70を内箱3の背板60に接着することができ、従って、発泡断熱材の発泡充填前に断熱パネル70を内箱3の背板60に接着しておく必要はなくなり、組立て作業が簡単になる。この場合、凹部64の先端部にガス抜き孔64aが形成されているので、凹部64の幅(発泡断熱材が流通する溝幅)が細くても、発泡断熱材71iを充分に流入充填させることができる。
(第2の実施形態)
図6および図7は第2の実施形態を示し、以下、前記第1の実施形態と異なる部分について説明する。
この第2の実施形態においては、内箱3の背板60には、複数の凹部64は形成されていない(図6参照)。即ち、この第2の実施形態では、真空断熱パネル70は発泡断熱材の発泡充填前に内箱3の背板60に接着される。
具体的には、外箱2の背板54の内面に真空断熱パネル70が両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤により接着された上で、背板54が真空断熱パネル70の表面側が上になるように配置され、図7に示すように、その真空断熱パネル70の表面(図7では上面)にロールコータ72により接着剤としてホットメルトが塗布される。
ロールコータ72は、真空断熱パネル70の表面に接してホットメルトを塗布するコーティングロール73と、背板54の外面(図7では下面)に接するバックアップロール74と、前記コーティングロール73にホットメルトを供給するピックアップロール75とが、支持体(図示せず)に回転可能に支持されて構成されて、背板54が図7において右方向に移動されることにより真空断熱パネル70の表面にホットメルトが塗布される。この場合、背板54のフランジ部54a、54bの高さ寸法(突出寸法)Lbは、真空断熱パネル70の高さ寸法(真空断熱パネル70の厚さ寸法+背板54の板厚寸法)Laより小(Lb<La)になるように設定され、背板54が移動されたときにフランジ部54a、54bがコーティングロール73に接触して傷を付けることを防止するようになっている。
しかして、この第2の実施形態においては、上述したように表面にホットメルトが塗布された真空断熱パネル70を有する背板54が、フランジ部54aおよび54bを左側板50および右側板51のフランジ部50bおよび51bに挿入係合させた上で外箱2に取り付けられると、真空断熱パネル70の表面側が内箱3の背板60の裏面(外面)に圧接されてホットメルトにより接着される。
その後に、外箱2と内箱3との間に発泡断熱材の原液を注入して発泡させるのであるが、それまでの間は、内箱3は外箱2に対して前面開口部のフランジ部56aおよび57aがフランジ部50aおよび51aに挿入係合されて取り付けられただけの不安定な状態にあるので、機械的強度の弱い内箱3が変形する虞がある。しかしながら、この第2の実施形態では、外箱2の背板54と内箱3の背板60とは両者に接着された真空断熱パネル70により一体化されて、内箱3の強度が増すようになり、従って、発泡断熱材が発泡充填されるまでの間に時間があっても内箱3が変形することはない。
ところで、前述したように、外箱2に背板54を取り付けて真空断熱パネル70を内箱3の背板60に接着する場合、内箱3は、前述したように、外箱2に対して前面開口部のフランジ部56aおよび57aがフランジ部50aおよび51aに挿入係合されて取り付けられただけの不安定な状態にあるので、真空断熱パネル70が内箱3の背板60の正規位置に接着されるか否は定かでない。仮に、内箱3が正規位置からずれていて、真空断熱パネル70が内箱3の背板60の正規位置からずれた位置に接着されたとすると、外箱2と内箱3との間に発泡断熱材の原液を注入して発泡充填させるべく内箱3内に発泡治具が嵌め込まれると、内箱3はこれにより強制的に正規位置に移動されるので、発泡断熱パネル70を介して外箱2および内箱3に応力が作用し、この結果、機械的強度が弱い内箱3に皺、歪が発生する虞がある。
これに対して、この第2の実施形態においては、内箱3の背板60とこれに連なる左側板56、右側板57および天板58とがなすコーナ部に面取り部61、62および63を形成するようにしたので、前述したような真空断熱パネル70の接着位置ずれに起因する応力を面取り部61、62、63で吸収して内箱3に皺、歪が発生することを防止することができる。なお、内箱3の面取り部61、62および63は、直線状が好ましいが、若干の円弧状であってもよい。
(第3の実施形態)
図8は第3の実施形態を示し、以下、前記第1の実施形態と異なる部分について説明する。以下の説明では、説明の便宜上図2をも参照する。
この第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、内箱3の背板60に複数の凹部64は形成されていない。代わりに、内箱3の背板60には、送風ダクトとして機能する冷蔵側冷却器室32の裏側に位置して内箱3の内方に突出する収納凹部76が形成されている。この収納凹部76は、背板60上下の中央位置から面取り部62の位置まで水平に伸びるように形成されている。更に、内箱3の背板60には、冷蔵側冷却器室32の近傍たる下部の裏側に位置して内箱3の内方に突出する収納凹部77が形成されている。この収納凹部77も、背板60上下の中央位置から面取り部62の位置まで水平に伸びるように形成されている。
そして、パイプ体65は、内箱3の背板60の中央位置から収納凹部76内に導出され、収納凹部76内をこれに沿って面取り部62の外面まで案内され、その後は、面取り部62の外面に沿って上方に案内され、面取り部63の外面に沿って左側板56方向に案内され、更に、面取り部61の外面に沿って下方に案内され、以って、門形に配置される。また、冷蔵側排水ホース34は、内箱3の背板60の中央位置から収納凹部77内に導出され、収納凹部77内をこれに沿って面取り部62の外面まで案内され、その後は、面取り部62の外面に沿って下方に案内される。
そして、その後、内箱3の背板60には、第2の実施形態と同様にして、真空断熱パネル70が接着されるが、配管たるパイプ体65および冷蔵側排水ホース34は収納凹部76および77内に収納されているので、真空断熱パネル70がパイプ体65および冷蔵側排水ホース34に乗り上げて浮き上がるようなことはない。しかる後、外箱2と内箱3との間には、発泡断熱材の原液が注入されて発泡充填されるが、この発泡充填に際して、発泡断熱材が面取り部62部分から収納凹部76および77内に流入するようになり、パイプ体65および冷蔵側排水ホース34は発泡断熱材に埋設される。
この第3の実施形態によれば、パイプ体65および冷蔵側排水ホース34を内箱3の背板60の中央部から内箱3外に導出せざるを得ない構造的若しくは技術的事情があった場合でも、内箱3の背板60に内方に突出する収納凹部76および77を形成して、これらの収納凹部76および77内にパイプ体65および冷蔵側排水ホース34を導出して収納するようにしたので、真空断熱パネル70を内箱3の底板に接着したときに真空断熱パネル70がパイプ体65および冷蔵側排水ホース34に乗り上げて浮き上がるなどの変形を防止することができ、真空断熱パネル70の絶縁性能に悪影響を及ぼすことはない。しかも、パイプ体65は、内箱3の面取り部61、62、63の全部に配置されて門形をなすので、パイプ体65の距離を充分に確保することができる。
(第4の実施形態)
図9および図10は第4の実施形態を示し、以下、前記第1の実施形態と異なる部分について説明する。以下の説明では、説明の便宜上図2をも参照する。この第4の実施形態では、第2の実施形態と同様に、内箱3の背板60に複数の凹部64は形成されていない。
図2に示すように、冷凍室7の奥部には、冷凍用冷却器18および冷凍側送風ファン39が配設された送風ダクト兼用の冷凍側冷却器室38が設けられているが、図9に示すように、その冷凍側冷却器室38の左右の両端部側は食品の収納が不可能な無駄空間(デッドスペース)になっている。この第4の実施形態では、冷凍側冷却器室38の左右の両端部側のデッドスペースのうちの一方たる右側のデッドスペースを利用すべく内箱3の背板60に内箱3の内方に突出する収納凹部78が形成されている。
そして、冷凍用冷却器18に接続される冷凍側キャピラリチューブ25および冷凍側サクションパイプ28は、内箱3内から収納凹部78内に導出され、互いに例えばロー付けされて熱交換可能に一体化されて接続用の配管たるパイプ体79を構成する。更に、このパイプ体79は、図10に示すように、収納凹部78内でU字状に2回曲成された後下方に指向するように配置される。
そして、その後、第2の実施形態と同様に、内箱3の背板60に真空断熱パネル70が接着され、しかる後、外箱2と内箱3との間に発泡断熱材の原液が注入されて発泡されると、図9に示すように、収納凹部78内にも発泡断熱材71fが充填され、パイプ体79が発泡断熱材71fに埋設される。
この第4の実施形態によれば、冷凍室7内の冷凍側冷却器室38の左右の両端部側に生じるデッドスペースのうちの一方のデッドスペースに突出するように収納凹部78を形成して、この収納凹部78内にパイプ体79を収納配置するようにしたので、冷凍室7内のデッドスペースを巧みに利用してパイプ体79を配置することができる。
なお、冷凍室7内の冷凍側冷却器室38の左右の両端部側に生じるデッドスペースのうちの他方のデッドスペースに突出するように収納凹部を形成して、この収納凹部内に冷蔵用冷却器17のパイプ体65(図1参照)を収納配置するようにしてもよい。
(第5の実施形態)
図11および図12は第5の実施形態を示し、以下、前記第1の実施形態と異なる部分について説明する。この第5の実施形態では、第2の実施形態と同様に、内箱3の背板60に複数の凹部64は形成されていない。
この第5の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、外箱2の底板53および内箱3の底板59に段差部53aおよび59aは形成されておらず、代わりに、外箱2の天板52に機械室19を形成するための段差部52aが形成され、内箱3の天板58に天板52の段差部52aに対応して内箱3の内方に突出する収納凹部としての段差部58aが形成されている。そして、内箱3の面取り部62の外面に沿って上昇するように配置されたパイプ体65は、段差部58aの外面の水平部分に左側板56方向に案内されるように配置され、更に、Uターンされて右側板57方向に案内され、再度Uターンされて左側板56方向に案内され、左側板56に近傍で上方に指向するように配置される。即ち、パイプ体65は、段差部58aの水平部分に、2ターンのU字状に配置されている。
そして、その後、第2の実施形態と同様に、内箱3の背板60に真空断熱パネル70が接着され、しかる後、外箱2と内箱3との間に発泡断熱材の原液が注入されて発泡されると、図11に示すように、天板52の段差部52aと天板58の段差部58aとの間にも発泡断熱材71gが充填され、パイプ体65が発泡断熱材71gに埋設される。
なお、機械室19内には、圧縮機20や凝縮器21(図3参照)およびこれらを冷却するための冷却ファン(図示せず)などが配設されている。また、内箱3の天板58が段差部58aを有する関係から、冷気供給ダクト30は、段差部58aに沿う延長ダクト部30bを備えており、その上端部に冷気供給口30aが設けられている。
この第5の実施形態によれば、圧縮機20を断熱箱体1の上部に配設する形式の冷蔵庫の場合、圧縮機20などを配設するための機械室19を形成すべく外箱2の天板52および内箱3の天板58に段差部52aおよび58aが形成されるので、この段差部52aおよび58a間に必然的に形成される空間部を利用してパイプ体65を配置収納するものである。
(第6の実施形態)
図13は第6の実施形態を示し、以下、前記第5の実施形態と異なる部分について説明する。
前記第5の実施形態では、内箱3の天板58における段差部58aの水平部分に、パイプ体65が2ターンのU字状に配置されるようにしたが、この第6の実施形態では、パイプ体65が、段差部58aの水平部分に1ターンのU字状に配置され、更に、段差部58aの垂直部分に移行して2ターンのU字状に配置された後、上方に指向するように配置されている。
この第6の実施形態によれば、冷蔵側キャピラリチューブ24および冷蔵側サクションパイプ27(図3参照)を熱交換可能に一体化してなるパイプ体65の長さ(距離)を第5の実施形態よりも大にすることができるので、冷蔵側キャピラリチューブ24および冷蔵側サクションパイプ27間の熱交換を充分に行なうことができて、一層の節電を図ることができる。
(第7の実施形態)
図14は第7の実施形態を示し、以下、前記第5の実施形態と異なる部分について説明する。
前記第5の実施形態では、内箱3の天板58(いずれも図12参照)における段差部58aの水平部分に、パイプ体65が2ターンのU字状に配置されるようにしたが、この第7の実施形態では、パイプ体65が、段差部58aの水平部分に渦巻状に配置された後、その中心部から引き出されて上方に指向するようになっている。なお、このパイプ体65の渦巻状部は、段差部58aの水平部分に複数並置されるように設けられるようにしてもよく、或いは、段差部58aの垂直部分に設けられるようにしてもよい。
(その他の実施形態)
第1ないし第3の実施形態において、冷凍側キャピラリチューブ25および冷凍側サクションパイプ28が熱交換可能に一体化された配管たるパイプ体を、内箱3の底板59の収納凹部としての段差部59a(の外面側)に収納配置する構成としてもよい。
第1の実施形態において、内箱3の背板60に、送風ダクト36の上端部と天板58との間に位置するようにして内方に突出する収納凹部を形成して、この収納凹部にパイプ体65を配置するようにしてもよい。
第5の実施形態において、内箱3の背板60に、送風ダクトたる冷凍側冷却器室38の下端部と底板59との間に位置するようにして内方に突出する収納凹部を形成して、この収納凹部にパイプ体79(図9参照)を配置するようにしてもよい。
第1ないし第3の実施形態に第4の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
断熱箱体1の各部の断熱壁は、真空断熱パネルを併用しなくても、発泡断熱材のみにて構成してもよい。
以上のように、本実施形態の冷蔵庫によれば、左側板、右側板、天板、底板および背板を有する外箱と、この外箱内に配置され、前記外箱の左側板、右側板、天板、底板および背板に対応する左側板、右側板、天板、底板および背板を有する内箱と、この内箱と前記外箱との間に配置されて各部の断熱壁を構成する断熱材とを備え、内部に貯蔵室を有する断熱箱体と、この断熱箱体の貯蔵室の奥部に設けられ、内部に前記貯蔵室に冷気を供給するための冷凍サイクルの冷却器および送風ファンが配置された送風ダクトとを具備する。そして、前記内箱の背板の断熱材と接近する部分に配管が存在せず、該内箱に内方へ突出する収納凹部が形成されていて、この収納凹部に配管が配置されている。これにより、配管の影響を受けることなく背部断熱壁における断熱材の薄形化を図ることができる。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。