以下に、本願発明を具体化した実施形態について、農作業用トラクタを図面に基づき説明する。図1〜図6に示す如く、トラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持されている。左右一対の後車輪4が後方走行部に相当するものである。走行機体2の前部にディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)を搭載し、後車輪4または前車輪3をエンジン5で駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面にはキャビン(運転部)7が設置される。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、前車輪3を操向操作する操縦ハンドル9とが配置されている。運転部7の左右外側には、オペレータが乗降するステップ(乗降ステップ)10が設けられている。エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11がキャビン7底部の下側に設けられている。
走行機体2は、前バンパー12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とにより構成されている。前車軸ケース13の左右両端側から外向きに、前車軸16を回転可能に突出させている。前車軸ケース13の左右両端側に前車軸16を介して前車輪3を取り付けている。機体フレーム15の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前後四輪3,3,4,4に伝達するためのミッションケース17を連結している。左右の機体フレーム15及びミッションケース17の下面側には、左右外向きに張り出した底面視矩形枠板状のタンクフレーム18をボルト締結している。
実施形態の燃料タンク11は、左右2つに分かれている。タンクフレーム18の左右張り出し部の上面側に、左右の燃料タンク11を振り分けて搭載している。ミッションケース17の左右外側面には、左右の後車軸ケース19を外向きに突出するように装着している。左右の後車軸ケース19には左右の後車軸20を回転可能に内挿している。ミッションケース17に後車軸20を介して後車輪4を取り付けている。左右の後車輪4の上方は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。
ミッションケース17の後部には、例えばロータリ耕耘機などの対地作業機(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取付けている。前記対地作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構111を介してミッションケース17の後部に連結される。ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機等の作業機にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸25を後ろ向きに突設している。
エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)には、フライホイル26を直結するように取付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27と、ミッションケース17前面側から前向きに突出した主変速入力軸28とを連結している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由してミッションケース17の主変速入力軸28に伝達される。ミッションケース17の前面下部から前向きに突出した前車輪出力軸30には、前車輪駆動軸31を介して、前車軸ケース13から後向きに突出した前車輪伝達軸508を連結している。
キャビン(運転部)7では、操縦座席8の前方にステアリングコラム32を配置している。ステアリングコラム32は、運転部7内部の前面側に配置したダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設している。ステアリングコラム32上面から上向きに突出したハンドル軸の上端側に、平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。ステアリングコラム32の右側には、走行機体2を制動操作するための左右一対のブレーキペダル35と、左右両後車輪4を制動状態に維持する操作を実行するための駐車ブレーキレバー43とを配置している。ステアリングコラム32の左側には、走行機体2の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー36(リバーサレバー)と、動力継断用のクラッチを遮断操作するためのクラッチペダル37とを配置している。キャビン7内にある操縦座席8前方の床板(搭乗ステップ)40においてステアリングコラム32の右側には、エンジン5の回転速度または車速などを制御するアクセルペダル41を配置している。なお、床板40上面の略全体は平坦面に形成している。
操縦座席8を挟んで左右両側にはサイドコラム42を配置している。操縦座席8と左サイドコラム42との間には、トラクタ1の走行速度(車速)を強制的に大幅に低減させる超低速レバー44(クリープレバー)と、ミッションケース17内の走行副変速ギヤ機構の出力範囲を切換えるための副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切換え操作するためのPTO変速レバー46とを配置している。操縦座席8の下方には、左右両後車輪4の差動駆動をオンオフするためのデフロックペダル47を配置している。操縦座席8の後方左側には、PTO軸25を車速同調駆動させる操作か又は逆転駆動させる操作を実行する副PTOレバー48を配置している。
操縦座席8と右サイドコラム42との間には、操縦座席8に着座したオペレータの腕や肘を載せるためのアームレスト49を設けている。アームレスト49は、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー50と、ロータリ耕耘機などの対地作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル51(昇降ダイヤル)とを備えている。なお、アームレスト49は、後端下部を支点として複数段階に跳ね上げ回動可能な構成になっている。
右サイドコラム42には、前側から順に、エンジン5の回転速度を設定保持するスロットルレバー52と、PTO軸25からロータリ耕耘機等の作業機への動力伝達を継断操作するPTOクラッチスイッチ53と、ミッションケース17の上面側に配置する油圧外部取出バルブ430を切換操作するための複数の油圧操作レバー54(SCVレバー)とを配置している。ここで、油圧外部取出バルブ430は、トラクタ1に後付けされるフロントローダ等の作業機の油圧機器に作動油を供給制御するためのものである。
さらに、キャビン7の前側を支持する左右の前部支持台96と、キャビン7の後部を支持する左右の後部支持台97を備える。左右の機体フレーム15の機外側面のうち前後中間部に前部支持台96をボルト締結させ、前部支持台96の上面側に防振ゴム体98を介してキャビン7の前側底部を防振支持すると共に、左右方向に水平に延設させる左右の後車軸ケース19の上面のうち左右幅中間部に後部支持台97をボルト締結させ、後部支持台97の上面側に防振ゴム体99を介してキャビン7の後側底部を防振支持している。また、後車軸ケース19の上面側に後部支持台97を配置し、後車軸ケース19の下面側に振れ止めブラケット101を配置し、後部支持台97と振れ止めブラケット101をボルト締結すると共に、前後方向に延設したロワーリンク23の中間部と振れ止めブラケット101とに、伸縮調節可能なターンバックル付き振れ止めロッド体103の両端部を連結し、ロワーリンク23の左右方向の揺振を防止している。
トラクタ1は、無人運転による自律走行を実行するために、外部との通信を可能とするアンテナユニット80を備えている。アンテナユニット80は、キャビン7の屋根体前方に設置されており、測位システムに基づいて自ら(の機体)の位置情報を取得するために必要な測位アンテナ81及び測位測量装置353や、遠隔操作装置370などと無線通信を行う無線通信アンテナ82及び無線通信ルータ(小電力データ通信装置)354を内蔵している。
図7に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)を制御するための制御部として、車両バス回線318を介して相互に通信可能としたエンジン制御装置315及び本機制御装置316を備える。エンジン制御装置315の出力側が、エンジン5に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置341と電気的に接続されている。一方、エンジン制御装置315の入力側が、エンジン5の回転速度を検出する回転速度センサ331などと電気的に接続している。また、本機制御装置316の出力側が、エンジン5からの動力を変速させる主変速油圧切換弁624や左右のオートブレーキ電磁弁631などと電気的に接続されている。一方、本機制御装置316の入力側が、後輪4の回転速度を検出する車速センサ332、走行機体2の傾斜角及び傾斜角速度を検出する傾斜角センサ333などと電気的に接続されている。
上述のような制御装置315,316を備えるトラクタ1は、キャビン7内に搭乗したオペレータの各種操作に基づき、制御装置315,316が車両バス回線318を介して相互に通信して、トラクタ1の各部を制御することで、圃場内を走行しながら農作業を実行可能に構成されている。加えて、実施形態のトラクタ1は、例えばオペレータが搭乗しなくても、遠隔操作装置370により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行させることが可能となっている。
具体的には、トラクタ1は、自律走行制御装置351、操舵制御装置352、測位測量装置353、無線通信ルータ(小電力データ通信装置)354、操舵アクチュエータ343、測位アンテナ81、及び無線通信アンテナ82,83等を備える。自律走行制御装置351及び操舵制御装置352は、車両バス回線318を介して、エンジン制御装置315及び本機制御装置316それぞれと相互に通信可能に構成されている。また、自律走行制御装置351は、車両バス回線318による操縦用通信系統とは別系統となる自律走行用通信系統における自律走行バス回線356を介して、測位測量装置353及び無線通信ルータ354それぞれと相互通信可能となっている。
操舵アクチュエータ343は、例えば、操縦ハンドル9の回転軸(ステアリング軸)の中途部に設けられ、操縦ハンドル9の回動角度(操舵角)を調整するものである。予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、操舵制御装置352は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するように操縦ハンドル9の適切な回動角度を算出し、算出した回動角度で操縦ハンドル9が回動するように操舵アクチュエータ343を制御する。このとき、操舵制御装置352は、操縦ハンドル9の回動角度(操舵角)を検出する操舵角センサ334からの信号が入力されることで、操縦ハンドル9を適切に回動させる。
また、操舵制御装置352は、車両バス回線318を介して、エンジン制御装置315及び本機制御装置316それぞれと通信することで、トラクタ1の車速に応じた操舵を実行できる。なお、操舵アクチュエータ343は操縦ハンドル9の回動角度を調整するものではなくトラクタ1の前輪3の操舵角を調整するものであってもよく、その場合、旋回走行を行ったとしても操縦ハンドル9は回転しない。
操舵制御装置352は、駐車ブレーキレバー43の回動位置を検出する位置検出センサ762からの信号が入力されることにより、駐車ブレーキレバー43が制動位置又は非制動位置のいずれに位置しているかを認識する。また、操舵制御装置352は、電動油圧シリンダ785と電気的に接続しており、電動油圧シリンダ785を電気的に制御することで、電動油圧シリンダ785のロッド786を往復道させる。
無線通信アンテナユニット80内の測位アンテナ81は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星363からの信号を受信するものである。測位アンテナ81で受信された信号は、測位測量装置353に入力されて、測位測量装置353でトラクタ1(厳密には、測位アンテナ81)の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該測位測量装置353で算出された位置情報は、自律走行制御装置351により取得されて、トラクタ1の制御に利用される。
測位測量装置353は、無線通信アンテナユニット80内で、無線通信アンテナ83と電気的に接続しており、特定小電力無線による第1無線通信ネットワーク(例えば、920MHz帯の無線通信ネットワーク)を通じて、基準局360と通信を行う。測位測量装置353は、無線通信アンテナ83を介して、圃場近接位置に基準局360と通信することで、基準局360からの補正情報によりトラクタ1(移動局)の衛星測位情報を補正して、トラクタ1の現在位置を求める。例えば、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
無線通信アンテナ82と接続された無線通信ルータ354は、第2無線通信ネットワーク(2.4GHz帯の小電力データ通信システム)を通じて、トラクタ1外部のオペレータにより操作される画像表示可能な遠隔操作装置370と通信を行う。無線通信ルータ354は、遠隔操作装置370からの制御信号を受信し、自律走行バス回線356を介して自律走行制御装置351に送信する。遠隔操作装置370は、具体的には、タッチパネルを備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。オペレータは、遠隔操作装置370のタッチパネルに表示された情報(例えば、自律走行を行うときに必要な圃場の情報等)を参照して確認することができる。
また、オペレータは、遠隔操作装置370を操作して、トラクタ1の自律走行制御装置351に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信する。なお、実施形態の遠隔操作装置370はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、有人のトラクタ(図示省略)を無人のトラクタ1に随伴して走行させる場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置を遠隔操作装置とすることもできる。
次に、図4〜図9を参照して、ミッションケース17、油圧式昇降機構22及び3点リンク機構111の取付け構造について説明する。前記ミッションケース17は、主変速入力軸28等を有する前部変速ケース112と、後車軸ケース19などを有する後部変速ケース113と、前部変速ケース112の後側に後部変速ケース113の前側を連結させる中間ケース114を備えている。中間ケース114の左右側面に左右の上下機体連結軸体115,116を介して左右の機体フレーム15の後端部を連結する。即ち、2本の上機体連結軸体115と、2本の下機体連結軸体116にて、中間ケース114の左右両側面に左右の機体フレーム15の後端部を連結させ、機体フレーム15とミッションケース17を一体的に連設して、走行機体2の後部を構成すると共に、左右の機体フレーム15の間に前部変速ケース112または動力伝達軸29などを配置して、前部変速ケース112などを保護するように構成している。左右の後車軸ケース19は、後部変速ケース113の左右両側に外向きに突出するように取り付けている。実施形態では、中間ケース114及び後部変速ケース113を鋳鉄製にする一方、前部変速ケース112をアルミダイキャスト製にしている。
さて、油圧式昇降機構22は、作業部ポジションダイヤル51等の操作にて作動制御する左右の油圧リフトシリンダ117と、ミッションケース17のうち後部変速ケース113上面側に設ける開閉可能な上面蓋体118にリフト支点軸119を介して基端側を回動可能に軸支する左右のリフトアーム120と、左右のロワーリンク23に左右のリフトアーム120を連結させる左右のリフトロッド121を有している。右のリフトロッド121の一部を油圧制御用の水平シリンダ122にて形成し、右のリフトロッド121の長さを水平シリンダ122にて伸縮調節可能に構成している。
なお、上面蓋体118の背面側にトップリンクヒンジを固着し、トップリンクヒンジ123にヒンジピンを介してトップリンク24を連結する。トップリンク24と左右のロワーリンク23に対地作業機を支持した状態下で、水平シリンダ122のピストンを伸縮させて、右のリフトロッド121の長さを変更した場合、前記対地作業機の左右傾斜角度が変化するように構成している。
次に、ミッションケース17の内部構造及びトラクタ1の動力伝達系統について説明する。ミッションケース17は、主変速入力軸28等を有する前部変速ケース112と、後車軸ケース19等を有する後部変速ケース113と、前部変速ケース112の後側に後部変速ケース113の前側を連結させる中間ケース114を備えている。ミッションケース17は全体として中空箱形に形成されている。
ミッションケース17の前面、すなわち前部変速ケース112の前面に前蓋部材491を配置している。前蓋部材491は前部変速ケース112の前面に複数のボルトで着脱可能に締結している。ミッションケース17の後面、すなわち後部変速ケース113の後面に後蓋部材492を配置している。後蓋部材492は後部変速ケース113の後面に複数のボルトで着脱可能に締結している。中間ケース114内の前面側には、前部変速ケース112と中間ケース114との間を仕切る中間仕切り壁を一体的に形成している。後部変速ケース113の前後中途部には、後部変速ケース113内を前後に仕切る後部仕切り壁を一体的に形成している。従って、ミッションケース17内部は、中間及び後部仕切り壁によって、前室、後室及び中間室の三つの室に区画されている。
ミッションケース17の前室内(前部変速ケース112内)には、油圧無段変速機500と、後述する前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503と、前後車輪3,4の二駆と四駆とを切り換える二駆四駆切換機構504とを配置している。ミッションケース17の中間室内(中間ケース114及び後部変速ケース113前側の内部)には、油圧無段変速機500からの回転動力を正転又は逆転方向に切り換える前後進切換機構501を配置している。エンジン5からの回転動力を適宜変速してPTO軸25に伝達するPTO変速機構505と、クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した回転動力を左右の後車輪4に伝達する後輪用差動ギヤ機構506とを配置している。クリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503は、前後進切換機構501経由の変速出力を多段変速する走行変速ギヤ機構に相当するものである。後部変速ケース113の左外面前部には、エンジン5の回転動力で駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容したポンプケース480を取付けている。
エンジン5の後側面から後向きに突設するエンジン5の出力軸(クランク軸)にはフライホイル26を連結している。フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27に、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、ミッションケース17前面(前蓋部材491)側から前向きに突出した主変速入力軸28を連結している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由してミッションケース17(前部変速ケース112)の主変速入力軸28に伝達され、油圧無段変速機500とクリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503とによって変速されてから、後輪用差動ギヤ機構506に伝達され、左右の後車輪4を駆動させる。クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した変速動力は、二駆四駆切換機構504から前車輪出力軸30、前車輪駆動軸31及び前車輪伝達軸508を介して、前車軸ケース13内の前輪用差動ギヤ機構507に伝達され、左右の前車輪3を駆動するように構成している。
油圧無段変速機500は、可変容量形の油圧ポンプ部521と、当該油圧ポンプ部521から吐出する高圧の作動油によって作動する定容量形の油圧モータ部522とを備えている。油圧ポンプ部521には、傾斜角を変更可能して作動油供給量を調節するポンプ斜板523を設けている。ポンプ斜板523には、入力伝達軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角を変更調節する主変速油圧シリンダ524を連動連結している。主変速油圧シリンダ524の駆動でポンプ斜板523の傾斜角を変更することによって、油圧ポンプ部521から油圧モータ部522に供給される作動油量を変更調節し、油圧無段変速機500の主変速動作が行われる。すなわち、主変速レバー50の操作量に比例して主変速油圧シリンダ524を駆動させると、これに伴い入力伝達軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角が変更される。
主変速入力軸28の後部側に、前進高速ギヤ機構である遊星歯車機構526と、前進低速ギヤ機構である低速ギヤ対525とを配置している。前後進切換レバー36を前進側に操作すると、前進低速油圧クラッチ537又は前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、主変速出力軸512から低速ギヤ対525又は遊星歯車機構526を介して、前進低速又は前進高速の回転動力が伝達される。前後進切換レバー36を後進側に操作すると、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、主変速出力軸512から後進の回転動力が伝達される。なお、前後進切換レバー36の前進側操作によって、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のどちらが動力接続状態になるかは、主変速レバー50の操作量に応じて決定される。また、前後進切換レバー36が中立位置のときは、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略零(主クラッチ切りの状態)になる。
前部変速ケース112内には、前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503を配置している。超低速レバー44を入り切り操作することによって、クリープシフタ549がスライド移動して、伝達ギヤ547及びクリープギヤ548が走行カウンタ軸545に択一的に連結される。また、副変速レバー45を操作することによって、副変速シフタ557がスライド移動して、低速ギヤ555及び高速ギヤ556が副変速軸546に択一的に連結される。
超低速レバー44を入り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、クリープギヤ548及び低速ギヤ555が選択され、超低速の走行駆動力が前車輪3や後車輪4に向けて出力される。なお、超低速レバー44と副変速レバー45とは牽制機構を介して連動連結していて、超低速レバー44を入り操作した状態では副変速レバー45を高速側に操作できないように構成している。超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、伝達ギヤ547及び低速ギヤ555が選択され、低速の走行駆動力が前車輪3や後車輪4に向けて出力される。超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を高速側に操作すると、伝達ギヤ547及び高速ギヤ556が選択去れ、高速の走行駆動力が前車輪3や後車輪4に向けて出力される。
後部変速ケース113後側の内部には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝達する後輪用差動ギヤ機構506を配置している。後輪用差動ギヤ機構506には、副変速軸546のピニオン558に噛み合うリングギヤ559と、リングギヤ559に設けた差動ギヤケース560と、左右方向に延びる一対の差動出力軸561とを備えている。差動出力軸561がファイナルギヤ562等を介して後車軸20に連結している。後車軸20の先端側に後車輪4を取付けている。
左右の差動出力軸561にはブレーキ機構563をそれぞれ配置している。ブレーキ機構563は、ブレーキペダル35の操作と自動制御という2つの系統によって、左右の後車輪4にブレーキを掛けるものである。すなわち、各ブレーキ機構563は、ブレーキペダル35の踏み込み操作の引き上げ操作によって、対応する差動出力軸561ひいては後車輪4にブレーキが掛かるように構成している。操縦ハンドル9の操舵角が所定角度以上になれば、旋回内側の後車輪4に対するオートブレーキ電磁弁631の切換作動によってブレーキシリンダ630が作動し、旋回内側の後車輪4に対するブレーキ機構563が自動的に制動作動するように構成している(いわゆるオートブレーキ)。このため、トラクタ1はUターン(圃場の枕地での方向転換)等の小回り旋回走行を簡単に実行できる。
なお、後輪用差動ギヤ機構506には、自身の差動を停止(左右の差動出力軸561を常時等速で駆動)させるデフロック機構585を設けている。デフロックペダル47の踏み込み操作によって、デフロック機構585を構成するデフロックピンを差動ギヤケース560の差動ギヤに係合させると、差動ギヤが差動ギヤケース560に固定され、差動ギヤの差動機能が停止し、左右の差動出力軸561が等速で駆動する。
次に、図9を参照しながら、トラクタ1の油圧回路620構造について説明する。トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を備えている。実施形態では、ミッションケース17が作業油タンクとして利用されていて、ミッションケース17内の作動油が作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482に供給される。走行用油圧ポンプ482は、パワーステアリング用のコントロール弁機構621を介して操縦ハンドル9によるパワーステアリング用の操舵油圧シリンダ622に接続すると共に、油圧無段変速機500の油圧ポンプ部521と油圧モータ部522とをつなぐ閉ループ油路623に接続している。エンジン5の駆動中は、走行用油圧ポンプ482からの作動油が閉ループ油路623に常に補充される。
また、走行用油圧ポンプ482は、油圧無段変速機500の主変速油圧シリンダ524に対する主変速油圧切換弁624と、倍速油圧クラッチ573に対する倍速油圧切換弁625と、四駆油圧クラッチ575に対する四駆油圧切換弁626と、PTO油圧クラッチ590に対するPTOクラッチ電磁弁627及びこれによって作動する切換弁628とに接続している。
更に、走行用油圧ポンプ482は、左右一対のオートブレーキ用のブレーキシリンダ630をそれぞれ作動させる切換弁としての左右のオートブレーキ電磁弁631と、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632と、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633と、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634と、前記各クラッチ電磁弁への作動油供給を制御するマスター制御電磁弁635とに接続している。
作業機用油圧ポンプ481は、ミッションケース17の上面後部側にある油圧式昇降機構22の上面に積層配置した複数の油圧外部取出バルブ430と、左右後車輪4間のトレッド(車輪間距離)を調節する左右のトレッド調節油圧シリンダ645への作動油供給を制御する左右のトレッド調節電磁弁646と、右リフトロッド121に設けた水平シリンダ122への作動油供給を制御する傾斜制御電磁弁647と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117への作動油供給を制御する上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と、上昇油圧切換弁648を切換作動させる上昇制御電磁弁650と、下降油圧切換弁649を作動させる下降制御電磁弁651とに接続している。
左右両後輪4をジャッキアップして地面から浮かせた状態で、左右のトレッド調節電磁弁646を切換駆動させると、左右のトレッド調節油圧シリンダ645が伸縮動して左右の後車軸ケース19を左右方向に伸縮動させる。その結果、左右後車輪4間のトレッドが長くなったり短くなったりする。傾斜制御電磁弁647を切換駆動させると、水平シリンダ122が伸縮動して、前部側にあるロワーリンクピンを支点にして右側のロワーリンク23が上下動する。その結果、左右両ロワーリンク23を介して対地作業機が走行機体2に対して左右に傾動し、対地作業機の左右傾斜角度が変化する。上昇制御電磁弁によって上昇油圧切換弁を切換作動させるか又は下降制御電磁弁によって下降油圧切換弁を切換作動させると、油圧リフトシリンダ117が伸縮動し、リフトアーム120及び左右両ロワーリンク23が共に上下動する。その結果、対地作業機が昇降動し、対地作業機の昇降高さ位置が変化する。
トラクタ1の油圧回路620は、前述の作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482以外に、エンジン5の回転動力で駆動する潤滑油ポンプ518も備えている。潤滑油ポンプ518には、PTO油圧クラッチ590の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給するPTOクラッチ油圧切換弁641と、油圧無段変速機500を軸支する入力伝達軸511の潤滑部と、前進低速油圧クラッチ537の潤滑部に作動油を供給する前進低速クラッチ油圧切換弁642と、前進高速油圧クラッチ539の潤滑部に作動油を供給する前進高速クラッチ油圧切換弁643と、後進油圧クラッチ541の潤滑部に作動油を供給する後進クラッチ油圧切換弁644とに接続している。なお、油圧回路620には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
次に、主として図8〜図21を参照しながら、左右のブレーキ機構563を作動させる構造の詳細について説明する。運転部7内部の前面側には、ダッシュボード33に左右横長のブレーキペダル軸720を支持させている。ブレーキペダル軸720には左右のブレーキペダル35の基端ボス部35aを被嵌している。ブレーキ操作軸720の左端部と右ブレーキペダル35の基端ボス部35aには、前向きに突出するペダル軸アーム721を固着している。
ダッシュボード33の左右下部側には、左右一対で横向きのブレーキ操作軸722それぞれに、三つのアーム724〜726を備えたブレーキ操作ボス体723が回動可能に被嵌されている。三つのアーム724〜726のうち左右中央に位置する中央アーム724は、上下長手のリンクロッド727を介して対応するペダル軸アーム721に連結し、左右外側に位置する外側アーム725には、前後長手のブレーキロッド728の前端側を回動可能に枢着し、左右内側に位置する内側アーム726には、索条部材としてのプッシュプルワイヤー(索条部材)731の前端側を回動可能に枢着している。
なお、後部変速ケース113の左右外側面には、左右のブレーキ機構563を制動作動させる制動アーム729を前後回動可能に設けており、ブレーキロッド728の後端側は、制動アーム729の先端側に回動可能に枢着している。後部変速ケース113の上面前部にのうちブレーキ制御ケース664の左方(ブレーキシリンダ630側)には、各ブレーキシリンダ630に対応して設けた左右の中継リンク732を配置している。そして、プッシュプルワイヤー731の後端側は、対応する中継リンク732の左端側(一端側)に回動可能に枢着している。
左右のブレーキペダル35を共に踏み込み操作することによって、左右のリンクロッド727を介して左右のブレーキロッド728が略同時に後方に押し出されて、左右の制動アーム729が後向きに回動する。その結果、左右のブレーキ機構563が略同時に作動して、左右両後車輪4にブレーキが掛かることになる。また、操縦ハンドル9の操舵角が所定角度以上になれば、旋回内側の後車輪4に対するオートブレーキ電磁弁631の切換作動によってブレーキシリンダ630が突出動し、対応する中継リンク732を介してプッシュプルワイヤー731を後方に引っ張る。そうすると、ブレーキ操作ボス体723を介してブレーキロッド728が略同時に後方に押し出されて、制動アーム729が後向きに回動する。その結果、旋回内側の後車輪4に対するブレーキ機構563が自動的に制動作動して、旋回内側の後車輪4にブレーキが掛かることになる(いわゆるオートブレーキ)。
左右のブレーキロッド728によるブレーキリンク体730と左右のブレーキペダル35との間に、ブレーキシリンダ630によるブレーキ機構563の作動時(オートブレーキ作動時)にブレーキペダル35を追従作動させない第一融通部材733を設けている。また同様に、左右のブレーキリンク体730と左右のプッシュプルワイヤー731との間に、ブレーキペダル35によるブレーキ機構563の作動時にブレーキシリンダ630を追従作動させない第二融通部材736を設けている。
実施形態の第一融通部材733は、リンクロッド727の下端側とブレーキ操作ボス体723の中央アーム724とを回動可能に枢着する中央融通ピン734と、リンクロッド727の下端側に形成した縦長の第一長穴735とで構成している。リンクロッド727の第一長穴735に中央融通ピン734を遊嵌している。実施形態の第二融通部材736は、プッシュプルワイヤー731の前端側とブレーキ操作ボス体723の内側アーム726とを回動可能に枢着する内側融通ピン737と、プッシュプルワイヤー731の前端保持部に形成した前後長手の第二長穴738とで構成している。プッシュプルワイヤー731側の第二長穴738に内側融通ピン737を遊嵌している。
この場合、旋回内側の後車輪4に対応したブレーキシリンダ630によるブレーキ機構563の作動時(オートブレーキ作動時)には、ブレーキ操作ボス体723を介してブレーキロッド728が略同時に後方に押し出されるが、中央アーム724の中央融通ピン734は第一長穴735内を上向きに移動するだけであり、リンクロッド727ひいてはブレーキペダル35を動かすことはない。すなわち、オートブレーキ作動時に、旋回内側の後車輪4に対する片側のブレーキペダル35が不用意に追従作動することがない。
また、左右両ブレーキペダル35によるブレーキ機構563の作動時には、左右のリンクロッド727を介して左右のブレーキロッド728が略同時に後方に押し出されるが、内側アーム726の内側融通ピン737は第二長穴738内を後方に移動するだけであり、左右のプッシュプルワイヤー731ひいては両ブレーキシリンダ630を追従作動させることはない。従って、左右のブレーキペダル35の踏み込み操作時にブレーキシリンダ630に不要な負荷がかかって、ブレーキシリンダ630が破損するおそれはない。
次いで、図10〜図21などを参照して、駐車ブレーキレバー43などの駐車ブレーキ機構の構造について説明する。キャビン7の座席フレーム体767の上面に操作レバー支点フレーム体768をボルト締結する。操作レバー支点フレーム体768の各支点軸に、超低速レバー44、副変速レバー45、PTO変速レバー46の各基端側を、前後方向に傾動操作可能に軸支させると共に、左サイドコラム42にて操作レバー支点フレーム体768上部を覆い、左サイドコラム42の上面側に超低速レバー44、副変速レバー45、PTO変速レバー46の各操作部を突設させている。なお、キャビン7の座席フレーム体767の上面に操縦座席8を載置させている。
さらに、操作レバー支点フレーム体768に隣接した座席フレーム体767上面に駐車ブレーキフレーム体771を立設させる。駐車ブレーキフレーム体771は、座席フレーム体767上面に着脱可能にボルト770締結すると共に、駐車ブレーキフレーム体771にブレーキレバー支点フレーム体(ラチェットプレート)772をボルト773締結させる。ブレーキレバー支点フレーム体772にブレーキレバー支点軸774を介して駐車ブレーキレバー43の基端側を回動可能に軸支する。
駐車ブレーキレバー43は、オペレータによって把持される把持部750先端に操作ボタン751を有しており、操作ボタン751と連結したロッド762がブレーキレバー支点フレーム体772に向かってブレーキレバー43内を延長されている。駐車ブレーキレバー43は、ブレーキレバー支点軸774よりも操作ボタン751側(ブレーキレバー43先端側)に軸支されたラチェット爪(係止爪)753を有し、ラチェット爪753が、ロッド752を介して操作ボタン751と連結している。
ブレーキレバー支点フレーム体772は、駐車ブレーキレバー43の把持部750(ブレーキレバー43先端)側に鋸羽状のラチェット部754を有するとともに、円弧状のブレーキレバー43の回動範囲を規制する長穴755が穿設されている。ラチェット爪753は、中途部が駐車ブレーキレバー43に軸支されており、その一端がロッド752と連結されるとともに、その他端にブレーキレバー支点フレーム体772のラチェット部754に係止する爪が設けられている。
駐車ブレーキレバー43は、固定体となるブレーキレバー支点フレーム体772に対して、回動可能に構成されており、ラチェット爪753とラチェット部754との係止により、駐車ブレーキレバー43は、傾斜した状態で固定される。これにより、駐車ブレーキレバー43の把持部750が引き上げられると、駐車ブレーキレバー43が回動して制動位置で固定される。また、操作ボタン751が押動されたとき、ロッド752を介してラチェット爪753が回動して、ラチェット爪753とラチェット部754との係止が解除される。これにより、操作ボタン751を押しながら、駐車ブレーキレバー43を押し下げることで、駐車ブレーキレバー43が回動して非制動位置に戻される。すなわち、ブレーキレバー支点フレーム体772に駐車ブレーキレバー43が制動位置または非制動位置に解除可能にロックされ、駐車ブレーキレバー43が制動位置または非制動位置に支持されるように構成している。
操作レバー支点フレーム体771のブレーキレバー支点軸774には、レバー側中継部材(リンクボス体)756が嵌装されている。レバー側中継部材756は、外周面に複数のアーム757,758を放射状に突設しており、アーム757,758は、レバー側中継部材756外周面の異なる位相位置に配置されるとともに、レバー側中継部材756の長手方向に沿って異なる位置に配置される。レバー側中継部材756に設けられたアーム757,758のうち、駐車ブレーキレバー43に近接させた内側アーム(レバー固定アーム)757が、駐車ブレーキレバー43と連結し、駐車ブレーキレバー43と離れた位置の外側アーム(操作用リンク固定アーム)758が、操作用連結部材となるレバー操作ワイヤ759の一端に取り付けられた操作用リンク760と連結する。レバー操作ワイヤ759は、座席フレーム体767下側から上方に延設されて、操作用リンク760を介して外側アーム758と連結するとともに、駐車ブレーキフレーム体771の底板に把持されている。
内側アーム757は、駐車ブレーキレバー43側に突設した固定ピン761を有している。内側アーム757の固定ピン761は、ブレーキレバー支点フレーム体772の長穴755を挿通して駐車ブレーキレバー43に連結されるとともに、後述する駐車ブレーキワイヤ775にイコライザ体776を介して接続されるワイヤ連係リンク778とも連結している。このとき、駐車ブレーキレバー43を回動させたとき、駐車ブレーキレバー43と内側アーム757で連結されたレバー側中継部材756が、ブレーキレバー支点軸774を中心に回動する。これにより、内側アーム757の固定ピン761が、ブレーキレバー支点フレーム体772の長穴755内を移動すると同時に、ワイヤ連係リンク778を変位させる。このとき、ブレーキレバー支点フレーム体772の長穴755内における固定ピン761の移動範囲により、駐車ブレーキレバー43の回動範囲が規制される。
外側アーム758は、外周側の一端(後端)に、操作用リンク760が連結される一方で、外周側の他端(前端)に、駐車ブレーキレバー43の回動位置を検出する位置検出センサ762のセンサアーム763がセンサリンク764を介して連結される。位置検出センサ762は、センサ固定プレート765を介して、駐車ブレーキフレーム体771に固定される。後述するように、駐車ブレーキレバー43を非制動位置から制動位置に引き上げるように、レバー操作ワイヤ759により操作用リンク760が下方に引き下げられると、操作用リンク760と外側アーム758で連結されたレバー側中継部材756が、ブレーキレバー支点軸774を中心に回動する。これにより、外側アーム758と連結するセンサアーム63が連動して、位置検出センサ762が、センサアーム63の移動位置に基づき、駐車ブレーキレバー43の回転位置を検出する。
加えて、左右の制動アーム729に左右の駐車ブレーキワイヤ775の一端側を連結させ、イコライザ体776の両端側に左右の駐車ブレーキワイヤ775の他端側を連結させると共に、イコライザ体776の中間にイコライザワイヤ777の一端側を連結させ、駐車ブレーキレバー43にワイヤ連係リンク778を介してイコライザワイヤ777の他端側を連結する。即ち、単一の駐車ブレーキレバー43に左右の制動アーム729を連結させるためのイコライザ体776とイコライザワイヤ777を設けるものであり、単一の駐車ブレーキレバー43の操作力が左右の制動アーム729に略均等に作用するように構成している。駐車ブレーキワイヤ775が、席フレーム体767上面に立設されたアウタ受け体780に把持されており、アウタ受け体780は、連結プレート766を介して駐車ブレーキフレーム体771と連結している。
一方、駐車ブレーキカバー体779にて駐車ブレーキフレーム体771上部を覆い、左サイドコラム42右側面(機体内側面)と駐車ブレーキカバー体779左側面の間に、駐車ブレーキフレーム体771、ブレーキレバー支点フレーム体772、イコライザ体776、左右の駐車ブレーキワイヤ775のアウタ受け体780などの駐車ブレーキ操作機構781を配置している。駐車ブレーキカバー体779は、取付けブラケット782などを介して座席フレーム体767上面に着脱可能に配置する。即ち、座席フレーム体767の上面のうち、操縦座席8と左サイドコラム42間の座席フレーム体767上面に、駐車ブレーキカバー体779を介して駐車ブレーキレバー43が配置される。
電動油圧シリンダ785は、ロッド786を往復動させる油圧シリンダ787と、油圧シリンダ787に対して作動油の供給又は排出を行う電動ポンプ788とを備えており、キャビン7の床板40下方に配置されている。電動油圧シリンダ785は、座席フレーム体767下側で固定されるデフロックペダル47の右側であって、右サイドコラム42下方に配置されている。電動油圧シリンダ785は、キャビン7の骨組みを構成するキャビンフレーム300に固定されることで、ミッションケース17の右側であって後車軸ケース19上方に配置される。
電動油圧シリンダ785のロッド786は、リンク中継機構789を介して、操作用連結部材であるレバー操作ワイヤ759と連結している。リンク中継機構789は、デプロックペダル47の基端側を軸支するデフロック支持フレーム790及びキャビンフレーム300と連結して、右サイドコラム42下方で、デフロック支持フレーム790とキャビンフレーム300との間に配置される。また、デフロック支持フレーム790は、操縦座席8と右サイドコラム42間の座席フレーム体767にボルト締結されている。
キャビンフレーム300は、操縦座席8の下方から後方を覆う位置に、防振ゴム体99を介して後部支持台97に上載される底フレーム311と、前後方向に延設された底フレーム311の後端部分から上方に向かって後方に傾斜させた後下部フレーム310とを備える。電動油圧シリンダ785の後端側が、シリンダ固定プレート791及びシリンダ固定ブラケット792により、後下部フレーム310に固定されている。また、シリンダ固定プレート791は、シリンダ固定ブラケット792と連結して、後下部フレーム310に固定される一方、プレート固定ブラケット793と連結して、底フレーム311にも固定される。
電動油圧シリンダ785の後端側が、シリンダ固定ブラケット792に固定されており、シリンダ固定ブラケット792とシリンダ固定プレート791とが後下部フレーム310を狭持してボルト締結されることで、電動油圧シリンダ785後端が後下部フレーム310に固定される。これにより、電動油圧シリンダ785の前後位置が決定される。また、シリンダ固定プレート791は、底フレーム311に向かって延びた形状を有しており、プレート固定ブラケット793と底フレーム311を狭持するようにしてボルト締結されることで、シリンダ固定プレート791の前端部分が底フレーム311に固定される。これにより、電動油圧シリンダ785の上下位置が固定される。
リンク中継機構789は、底フレーム311に連結プレート794を介して固定されるリンクフレーム795に、ロッド786の往復動を駐車ブレーキワイヤ775に伝達させるシリンダ側中継部材796を回動可能に設置している。リンクフレーム795は、デフロックペダル47側に位置する左側面板797を上方に突設させた形状を有しており、左側面板797が、連結プレート798を介してデフロック支持フレーム790と連結することで、デフロック支持フレーム790と一体となるように固定されている。
シリンダ側中継部材796は、リンクフレーム795の左側面板797上方で固定される支点軸799が嵌挿されており、支点軸799を中心に回動する。シリンダ側中継部材796の外周面には、位相の異なる位置に、ロッド786と連結するロッド用アーム800と、レバー操作ワイヤ759とシリンダ用リンク802を介して連結するワイヤ用アーム801とが放射状に突設されている。ワイヤ用アーム801が、ロッド用アーム830より長くなるように、シリンダ側中継部材796が構成されている。従って、ロッド786のストローク量を短くできるため、トラクタ1への停止指令からトラクタ1が停止するまでの応答時間を短縮し、トラクタ1の緊急停止を短時間で実行できる。
支点軸799は、その左端(デフロックペダル47側の端部)が左側面板797に固定される一方、その右端がリンクフレーム795の右側面で固定される軸固定プレート803に固定される。すなわち、支点軸799は、リンクフレーム795の左側面板797と軸固定プレート803とで狭持固定されている。
また、リンクフレーム795は、前方から挿入されるレバー操作ワイヤ759と連結するシリンダ用リンク802を、シリンダ側中継部材796下方位置で内包しており、シリンダ用リンク802の上方位置には、シリンダ側中継部材796の回動を規制する基準用プレート804を有している。基準用プレート804は、シリンダ側中継部材796に挿入されている支点軸799と平行となるように、シリンダ側中継部材796のワイヤ用アーム801の前方位置でリンクフレーム795に架設されている。
従って、レバー操作ワイヤ759が、駐車ブレーキレバー43側となる操作用リンク760側に引っ張られたとき、ワイヤ用アーム801が基準用プレート804に当接することで、シリンダ側中継部材796の回転が規制される。これにより、駐車ブレーキレバー43を押し下げたとき、駐車ブレーキレバー43の回動位置を、基準位置として予め設定された非制動位置に常に固定できるとともに、電動油圧シリンダ785のロッド786先端位置を基準位置に常に戻すことができる。
また、ワイヤ用アーム801とシリンダ用リンク802との連結部分には、ワイヤ用アーム801に設けた長穴805にワイヤ用アーム801に固定される融通ピン806を遊嵌させた融通機構807を設けている。レバー操作ワイヤ759とリンク中継機構789との連結部分に融通機構807を設けることにより、駐車ブレーキレバー43を手動で引き上げたときであっても、融通ピン806に対してシリンダ用リンク802が移動できる。そのため、キャビン7に搭乗したオペレータが、電動油圧シリンダ785を停止状態としたままで、駐車ブレーキレバー43を制動位置まで回動でき、オペレータの手動によりトラクタ1を停止させることができる。
上述したように、走行機体2に操縦座席8を有するキャビン7が搭載されており、駐車ブレーキレバー43がキャビン7内であってキャビン7の左側方に配置される一方、前記電動油圧シリンダ785がキャビン7の下側であって操縦座席8の右側方に配置される。そのため、駐車ブレーキレバー43と電動油圧シリンダ785とを走行機体2において効率的に配置できるだけでなく、キャビン7下方にレバー操作ワイヤ(操作用連結部材)758を配置することができるため、操縦座席8上のオペレータの操作の妨げとならない。
次いで、駐車ブレーキ機構によるトラクタ1の制動動作について、以下に説明する。遠隔操作装置370から緊急停止信号を無線通信ルータ354が受信した場合や、自律走行制御装置351がトラクタ1に異常を検出した場合に、自律走行中のトラクタ1の緊急停止を実行するべく、自律走行制御装置351が、操舵制御装置352に停止指令信号を送信する。なお、例えば、トラクタ1が自律走行中であって、エンジン制御装置315がエンジン7の停止を検出した場合や、本機制御装置316が傾斜角センサ333などにより走行機体2の傾斜角が所定角を超えた場合などに、自律走行制御装置351は、トラクタ1に異常が発生したものと判定する。
操舵制御装置352は、自律走行制御装置351から停止指令信号を受けると、電動油圧シリンダ785に信号を送出し、電動ポンプ788を駆動することで、ロッド786を前方に延びる方向に動作させる。これにより、シリンダ側中継部材796が回転することで、ロッド用アーム80が前方に向かって変位する一方、ワイヤ用アーム801が後方に向かって変位することとなり、結果、レバー操作ワイヤ759のシリンダ用リンク802側端部が後方に引かれる。これに伴い、レバー操作ワイヤ759の操作用リンク760が下方に引かれることとなるため、レバー側中継部材756の外側アーム758が下方に向かって変位することで、レバー側中継部材756が回動する。
レバー側中継部材756の回動により、内側アーム757は前方に向かって変位することで、内側アーム757と連結する駐車ブレーキレバー43が回転し、駐車ブレーキレバー43先端(操作ボタン751側端部)が制動位置まで引き上げられる。同時に、レバー側中継部材756の内側アーム757と連結するワイヤ連係リンク778が前方に変位するため、イコライザ体776を介して連結する2本の駐車ブレーキワイヤ775が引かれることとなり、結果、左右の制動アーム729が前傾してブレーキ機構563による制動作用が機能する。
また、レバー側中継部材756の外側アーム758の回動に合わせて、外側アーム758と連結するセンサアーム763先端が後方に変位することで、位置検出センサ762が、駐車ブレーキレバー43の回動量を検出し、操舵制御装置352に送出する。自律走行制御装置351は、駐車ブレーキレバー43の回動量が操舵制御装置352から通知されるとともに、エンジン制御装置315から車速センサ332で検出された走行車両2の車速が通知される。
自律走行制御装置351は、通知された走行車両2の車速に基づいて、走行車両2が停止したことを確認すると、操舵制御装置352を通じて、電動油圧シリンダ785を停止させる。これにより、ロッド786の伸長動作が停止することで、駐車ブレーキレバー43及び制動アーム729は制動位置で停止し、ブレーキ機構563による制動作用を維持させる。このとき、自律走行制御装置351は、操舵制御装置352から受けた駐車ブレーキレバー43の回動量を確認し、駐車ブレーキレバー43の引き上げ量が大きい場合、ブレーキ機構563におけるブレーキ板の摩耗量が多いことを検出できる。
上記のように、自律走行中のトラクタ1を駐車ブレーキ機構により停止させた場合、オペレータがトラクタ1のキャビン7に搭乗して、駐車ブレーキレバー43を制動位置から非制動位置に押し下げるまで、駐車ブレーキレバー43が制動位置で固定されたままとなるため、トラクタ1の停止状態が維持される。従って、トラクタ1の停止状態を解除する場合に、オペレータは駐車ブレーキレバー43の操作が必要であることを認識できるため、トラクタ1の停止状態を不用意に解除することなく、安全な状態でトラクタ1の走行を再開できる。
トラクタ1の停止状態を解除すべく、オペレータが、操作ボタン751を押しながら、駐車ブレーキレバー43を非制動位置に押し下げると、内側アーム757により駐車ブレーキレバー43と連結したレバー側中継部材756が回動する。同時に、イコライザ体776及び駐車ブレーキワイヤ775などを介して駐車ブレーキレバー43と連結した左右の制動アーム729が後方に向かって傾動し、ブレーキ機構563による制動作用が解除される。
レバー側中継部材756が回転することにより、外側アーム758と操作用リンク760を介して連結されるレバー操作ワイヤ759を引き上げるため、レバー操作ワイヤ759のシリンダ用リンク802側端部が前方に引かれる。結果、レバー操作ワイヤ759とシリンダ用リンク802を介して連結されるワイヤ用アーム801先端を前方に変位させ、シリンダ側中継部材796を回動させる。これに伴い、シリンダ側中継部材796のロッド用アーム80が後方に向かって変位するため、ロッド786が油圧シリンダ787内に収納される。そして、ワイヤ用アーム801が基準用プレート804に当接したとき、ロッド786が基準位置で停止する。
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。