以下、図面を参照しながら本実施形態に係る苗移植機である八条植え用の乗用田植機1について説明する。図1は、本実施形態に係る苗移植機としての乗用田植機1の側面図、図2は、同乗用田植機1の平面図である。また、図3は、乗用田植機1の植付装置200の説明図である。
図1に示すように、乗用田植機1は、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4を備えた四輪駆動可能な走行車体2と、この走行車体2の後側に昇降リンク装置30を介して昇降可能に連結された植付装置200とを備える。また、走行車体2の後部上側には、施肥装置40の本体部分が設けられる。
また、走行車体2のメインフレーム6の上にエンジン5が搭載されており、エンジン5の回転動力が、HSTと呼ばれる静油圧式無段階変速機等を介してトランスミッションケース7内の副変速機構(図示省略)等に伝達される。トランスミッションケース7内で変速された回転動力は、走行系等に用いる走行動力と、植付装置200等に用いる外部取出動力とに分離して出力される。
走行動力は、一部が左右一対の前輪ファイナルケース8に伝達されて前輪3を駆動し、残りが左右後輪ギヤケース9L、9Rに伝達されて後輪4を駆動する。また、左後輪ギヤケース9Lに伝達された回転動力は、その一部が、整地ロータ駆動軸101に伝達され、後述する整地ロータ100を回動させる。
また、エンジン5の上部はエンジンカバー13で覆われており、そのエンジンカバー13の上に操縦席10が設置される。操縦席10の前方には、前輪3を操向操作するステアリングハンドル11が設けられており、その前側は、フロントカバー12で覆われている。また、エンジンカバー13及びフロントカバー12の下端の左右両側には水平状のフロアステップ14が設けられている。
また、ステアリングハンドル11及びフロントカバー12の左右両側には、多数枚の苗トレイ50を積載しておくことができる補給用苗載枠15が配置されている。したがって、かかる補給用苗載枠15に予め載置しておいた苗トレイ50を、植付作業中に作業者が取出しながら、後部に連結された植付装置200の苗トレイ搬送部210へ運び、搬送路201の始端部から順次補給することができる。図1に示すように、搬送路201の上流側をなし、始端部を含む上手側搬送路201aの先端部分には、回動端部2010が上下回動自在に設けられている。
なお、搬送路201は、二条の植付条当たり一枚の苗トレイ50を順次搬送して、後述する苗植付部220毎にポット苗を供給して二条植えが行える構成である。そのため、八条植え用の乗用田植機1では、搬送路201や苗植付部220等は、平面視で左右幅方向に4つずつ設けられる(図2参照)。
すなわち、植付装置200は、苗トレイ搬送部210と、苗植付部220と、空状態の苗トレイ50を順次回収する苗トレイ回収部300とを備える。苗トレイ搬送部210は、順次供給される苗トレイ50を、搬送路201の上流側から下流側、すなわち上手側搬送路201aから下手側搬送路201b(図5参照)に向けて搬送する。苗植付部220は、苗トレイ搬送部210の途中に設けられ、搬送されてくる苗トレイ50からポット苗を取り出して圃場に植え付ける。苗トレイ回収部300については、詳しくは後述するが、苗植付部220でポット苗が取り出され、苗トレイ搬送部210の終端部から送り出されてくる空状態の苗トレイ50を順次回収する。
ここで、苗トレイ50の構成について、図4および図5を参照しながら説明する。図4は、乗用田植機1で用いられる苗トレイ50の説明図、図5は苗トレイ搬送部210の説明図である。
苗トレイ50は、図4に示すように、多数の育苗ポット51が縦横方向にマトリックス状に配列された平面視で長方形状の板状部材である。苗トレイ50は、可撓性を有する合成樹脂製であり、図5に示すように、搬送路201上において側面視で略U字状の湾曲が可能である。
育苗ポット51は、苗トレイ50一側面に円形の開口部51aを有し、他側面に底部51bが突き出したポット状の部材であり、その内部にポット苗を育苗するための空間部が形成されている。なお、苗植付部220には、育苗ポット51内のポット苗を押し出すための押し出しピン(図示省略)が設けられており、この押し出しピンが育苗ポット51の底部51b側から開口部51a側に向けて挿入できるように、育苗ポット51の底部51bには所定形状のスリット孔51b1が形成されている。
本実施形態に係る乗用田植機1では、ポット苗が育苗ポット51内で育苗された状態にある苗トレイ50を、植付装置200の苗トレイ搬送部210へ供給することにより、植付作業が行われる。
また、図4(a)における苗トレイ50の長手方向が搬送方向(矢印A参照)に対応しており、苗トレイ50の短手方向の幅の左右両側縁部には、略正方形状の送り孔52が、左右両側の長辺53L、53Rに沿って一定間隔で形成されている。
図5に示すように、苗トレイ搬送部210に設けられた繰出フック211が送り孔52に係合し、所定のタイミングで上下動することにより(矢印B参照)、苗トレイ50の搬送が、各育苗ポット51の横列ごとに間欠的に行われる。
また、苗植付部220によるポット苗の植付けは、以下のように行われる。すなわち、苗トレイ50の横1列の各育苗ポット51に対して、育苗ポット51の各底部51b側から前述の押し出しピンが同時に挿入してポット苗を押し出す。押し出された横1列分のポット苗は、左右の苗送りベルト(図示省略)により、右半分のポット苗は右方向に、左半分のポット苗は左方向に搬送され、苗送りベルトの左右両側の下方にそれぞれ回動可能に配置された植付爪221が回動することにより、苗送りベルトにより左右両側に搬送されてくる各ポット苗を圃場に順次植え付ける。
また、図1および図2に示すように、各苗植付部220の下方には、フロート230が設けられる。これらフロート230が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付爪221によりポット苗が植え付けられる。
ここで、図5を用いて、苗トレイ搬送部210の下流側をなす下手側搬送路201bの構成について説明する。
図5に示すように、下手側搬送路201bは、苗トレイ50を支持する搬送支持バー212と、搬送ガイドバー213を備えている。搬送支持バー212は、搬送されてくる苗トレイ50をその開口部51a側の面と接触することにより支持することができ、苗トレイ50の左右幅の中央位置と左右両側近傍の3か所に配置される。搬送ガイドバー213は、苗トレイ50の底部51b側の面の左右幅の中央位置において長手方向に亘り設けられたガイドバー挿入用スペース54(図4参照)に挿入可能に配置される。
搬送支持バー212と搬送ガイドバー213とは、図示するように、側面視で所定の間隔を保った状態で概ね平行に配置されるとともに、苗トレイ50を苗トレイ回収部300側に案内するために、苗トレイ回収部300側に向けて前側斜め上方側に湾曲している。さらに、搬送支持バー212の終端部212bは、上手側搬送路201aに一端側が固定された回収装置支持ステー310に固定されており、搬送ガイドバー213の終端部213bは、上手側搬送路201aに一端側が固定された搬送ガイドバー支持ステー214に固定されている。
次に、苗トレイ回収部300について、図1および図3、さらには図5〜図9を用いてさらに説明する。図6は、乗用田植機1におけるレール部330が第2の位置L2にある状態を示す説明図、図7は、乗用田植機1におけるレール部330が第1の位置L1にある状態を示す説明図である。また、図8は、苗トレイ50がレール部330に支持された状態を示す説明図、図9は、乗用田植機1における案内ローラ320の説明図である。
苗トレイ回収部300は、図1、図3および図5に示すように、苗トレイ搬送部210の下手側搬送路201bの後端側、すなわち機体進行方向の前方側であって、上手側搬送路201aの下方に配置されている。そして、図5に示すように、下手側搬送路210bの終端部から送り出されてくる空状態の苗トレイ50を順次回収することができる。
また、苗トレイ回収部300は、図5に示すように、苗トレイ50を前方へ案内する案内ローラ320と、左右一対のレール部330(330L,330R)と、空の苗トレイ50を受け取る籠部350とを備える。かかる籠部350は、断面が円形の線材により籠状に形成され、落下する苗トレイ50を順次受け止めて収容可能となっている。そして、収容した苗トレイ50を前方から抜き出せるように、少なくとも前側が開放された構成となっている。
かかる籠部350には、苗トレイ50が所定数収納されたことを検出する検出部であるトレイセンサSが設けられている。本実施形態に係る乗用田植機1では、トレイセンサSは籠部350の後部側に設けられており、苗トレイ50の収容枚数が規定容量に達したことをトレイセンサSが検出すると、空の苗トレイ50の回収を作業者に促すためのブザー音が鳴るように構成されている。すなわち、図1に示すように、走行車体2のステアリングハンドル11の近傍にブザー装置BZが設けられている。ブザー装置BZは、検出部であるトレイセンサSによる検出結果に応じて報知する報知部の一例であり、報知部としては、作業者が認識できるものであれば、音以外であっても、光、映像などを用いる構成であっても構わない。
案内ローラ320は、苗トレイ搬送部210の下手側搬送路201bの終端から受け渡される苗トレイ50を前方へ案内するように、回収装置支持ステー310の前側に回転自在に設けられている。また、案内ローラ320は、苗トレイ50の幅方向の両端部に相当する側から、苗トレイ50の幅方向の中央部に相当する側に向けて漸次縮径されている。また、案内ローラ320は、下手側搬送路201bの搬送支持バー212の終端部212bから送り出されてくる苗トレイ50の開口部51aと係合する多数の円錐形状突起321が表面に配設されており、繰出フック211の上下動のタイミングと同期して間欠的に回転駆動することで、空状態の苗トレイ50を苗トレイ回収部300側に搬送することができる。
レール部330は、長手方向に直行する方向の断面が略T字状の長板形状を成した左右一対のレール体330L、330Rを備える構成であり、案内ローラ320により案内された苗トレイ50を摺動自在に支持可能な第1の位置L1と、苗トレイ50の底部との接触が解除される第2の位置L2との間を、軸体333の回りに回動可能に設けられる。すなわち、下手側搬送路201bの搬送支持バー212の終端部212bへやってきた苗トレイ50を終端部212bから前方へ案内し、案内されてきた苗トレイ50を、レール部330が第2の位置L2に回動したタイミングで落下可能としている。
レール部330を構成する左右一対のレール体330L、330Rは、その長板形状の長手方向の両端部の内、前側を左右一対の前側支持ステー341L、341Rに回動可能に支持されるとともに、後側を左右一対の後側支持ステー342L、342Rに回動可能に支持されている。
なお、図5に示すように、前側支持ステー341L,341Rの上端部は、苗トレイ搬送部210の上流側の搬送路201aの下面に固定され、後側支持ステー342L,342Rは、回収装置支持ステー310に固定される。
以下、苗トレイ回収部300について、さらに詳しく説明する。先ず、レール部330を構成する左右一対のレール体330L、330Rについて説明する。各レール体330L,330Rは、図6に示すように、長方形状の平板部材331に、長手方向に直行する方向の断面が略L字状のL字状レール部材332が溶接固定され、平板部材331の一方側の長辺端部に、この長辺の長さより長く、断面が円形状の棒状部材からなる軸体333が溶接固定されている。そして、軸体333の両端部のうち、前側の端部が前側支持ステー341L(341R)により回動可能に支持され、後側の端部が後側支持ステー342L(342R)により回動可能に支持される。
なお、軸体333は、図6に示すように、前側支持ステー341L(341R)および後側支持ステー342L(342R)に、ベアリング336を介して回動自在にすることが好ましいが、軸体333の回動に支障がなければベアリング336を廃止しても構わない。
L字状レール部材332は、断面が略L字状の部位のうち、平板部材331に溶接固定された第1レール部材332aと、この第1レール部材332aに対して直角に折り曲げられた第2レール部材332bとを備える。なお、L字状レール部材332は、両端が前側支持ステー341L(341R)および後側支持ステー342L(342R)に近接する程度の長さを有するように形成している。したがって、L字状レール部材332と前側支持ステー341L(341R)および後側支持ステー342L(342R)との間にストッパ部材などを設ける必要がない。
また、第2レール部材332bの後端部には、側面視で、一旦、弧を描いて急峻に立ち下がった後、後方に向かうに従って緩やかカーブで立ち上がる湾曲状に形成された作用部334が、苗トレイ50の搬送路側に突き出すように連接されている。かかる作用部334に苗トレイ50が当接することにより、レール部330全体を、第1の位置L1と第2の位置L2との間で回動させることができる。
レール部330は、第1の位置L1と第2の位置L2との間を軸体333の回りに回動可能に設けられており、レール部330を構成する左右一対のレール体330L、330RのそれぞれのL字状レール部材332は、第1の位置L1では、苗トレイ50を支持できる第1姿勢をとり、第2の位置L2では、苗トレイ50を支持できない第2姿勢をとる。
左右一対のレール体330L、330RのそれぞれのL字状レール部材332が第1の位置L1にあるとき、図7(b)に示すように、第1レール部材332aが、苗トレイ50の開口部51a側の面のうちの左右両側の長辺53L、53Rに沿った長辺端部53aを下方側から支持する(参照)。このとき、第2レール部材332bが、苗トレイ50の開口部51a側の面のうちの左右両側の長辺53L、53Rに沿った長辺端縁部53bを左右側方側から支持する。こうして、レール部330は、苗トレイ50をしっかりと支持しながら前方へと案内することができる。
また、図6に示すように、レール体330L、330RのそれぞれのL字状レール部材332の後端部と、後側支持ステー342L、342Rとは、トルクスプリング335を介して回動可能に連結される。具体的には、トルクスプリング335の中央の孔部に軸体333の後側端部が挿入されるとともに、トルクスプリング335の前端部335aが平板部材331の後端部に固定され、かつ、トルクスプリング335の後端部335bが左の後側支持ステー342L(右の後側支持ステー342R)に固定される。
このように、トルクスプリング335を設けたことにより、左右一対のレール体330L、330RのそれぞれのL字状レール部材332は、苗トレイ50からの押圧力により、苗トレイ50を支持できない第2姿勢から支持可能な第1姿勢に移行させられると、L字状レール部材332に対して第1姿勢から第2姿勢に戻ろうとする回転トルク、すなわち、L字状レール部材332に対して第1姿勢から第2姿勢に戻ろうとする付勢力が生じる。
なお、各L字状レール部材332は、苗トレイ50からの押圧力を受けていないときは、図6に示す第2姿勢を保持する。
ところで、図7に示すように、レール部330は、苗トレイ50の摺動抵抗を軽減するローラ370を備えている。すなわち、左右一対のレール体330L、330RのそれぞれのL字状レール部材332のうち、苗トレイ50の底部51bに当接する支持面となる第1レール部材332aには、長手方向に所定間隔をあけて複数の長孔359を形成し、各長孔359の中央には、回転軸371を介して回転するローラ370を設けている。
かかるローラ370により、苗トレイ50の搬送抵抗を減じることができ、苗トレイ50を搬送している間に詰まってしまうことを防止することができる。
次に、案内ローラ320について説明を加える。案内ローラ320は、図9に示すように、それぞれ截頭円錐形の左右一対の第1案内ローラ320Lと第2案内ローラ320Rとを備える。そして、第1案内ローラ320Lと第2案内ローラ320Rとの小径側端部324同士を対向させて配置して構成される。
かかる構成により、案内ローラ320を介して搬送される苗トレイ50は、上方湾曲した形状になって、上方湾曲せずに平たい状態で搬送されるよりも、比較的にピンと張った状態での搬送が可能となる。したがって、例えば、苗トレイ50の前側部が案内ローラ320によって垂れ下がってしまい、籠部350に載置されている苗トレイ50を押し出して落下させたりするようなことがなく、効率良く、整列した状態で苗トレイを籠部に回収することができる。
また、図9に示すように、側面投影視で台形状となる截頭円錐形の2つのローラ(第1案内ローラ320Lと第2案内ローラ320R)を用いることで、苗トレイ50の幅方向の中央部に相当する部分が凹んだ形状の案内ローラ320を、容易かつ低コストで構成することができる。
上述した構成の苗トレイ回収部300の動作について、主として、図5〜図9を用いて説明する。
図5に示す繰出フック211の上下動により、苗トレイ50が下流側に搬送され、図6に示すように、苗トレイ50の左右両側の先端部55が、搬送支持バー212の終端部212bに接近する。このとき、苗トレイ50の先端部55は、湾曲状に形成された作用部334の後端下面334aに当接する。
そして、苗トレイ50がさらに下流側(図6の矢印A方向)に押し出されることによって、作用部334が矢印A方向に押圧され、軸体333を回動軸として、矢印C方向(図6(c))に回動し始める。このとき、第1レール部材332a及び第2レール部材332bも軸体333を回動軸として、矢印C方向に回動し始める。
なお、図6(a)〜図6(c)は、苗トレイ50の左右両側の先端部55が作用部334に当接する直前の状態を示す。すなわち、第1レール部材332a及び第2レール部材332bが回動を開始する直前の状態を示しており、このときの作用部334は、退避できない姿勢をとっているとともに、第1レール部材332a及び第2レール部材332bは、第2の位置L2にある第2姿勢をとっている。
すなわち、この第2姿勢においては、左右両側の第1レール部材332aの平面部分は概ね垂直状態にあり、苗トレイ50を下方から支持することのできる姿勢ではない。
その後、苗トレイ50がさらに下流側に押し出されると、図7に示すように、作用部334の緩やかなカーブをなす根元部分334bが、苗トレイ50の左右両端の育苗ポット51の外側面に常時当接する。この様に、育苗ポット51の外側面と作用部334の根元部分334bとが常時当接することにより、作用部334は、軸体333を回動軸として、矢印C方向(図6(c))にさらに回動し、図7に示す退避姿勢をとる。このとき、第1レール部材332a及び第2レール部材332bは、第2姿勢から第1姿勢に移行し、かつ、その第1姿勢を維持する。
すなわち、左右両側の第1レール部材332aの平面部分が、第2姿勢の状態から、軸体333を回動中心として矢印C方向に概ね90°回動した状態が第1姿勢であり、この第1姿勢では、苗トレイ50を下方から支持できる姿勢である。苗トレイ50が、レール部330の上を搬送される間は、第1レール部材332a及び第2レール部材332bは第1姿勢を維持することになる。
こうして、図5に示すように、下手側搬送路201bの搬送支持バー212の終端部212bから送り出されてきた苗トレイ50は、すでに第1姿勢をとっている左右一対のL字状レール部材332に向けて、案内ローラ320によって間欠的に搬送される(図7参照)。
左右一対のL字状レール部材332は第1姿勢をとっているため、図7に示すように、第1レール部材332aが苗トレイ50の長辺端部53a(図4参照)を下方側から支持し、第2レール部材332bが苗トレイ50の長辺端縁部53b(図4参照)を左右側方側から支持することで苗トレイ50を前方へ案内する。
そして、苗トレイ50の搬送が進み、苗トレイ50の全体が左右一対のレール体330L、330R上に位置すると、図7に示すように、苗トレイ50の左右両端の育苗ポット51の外側面と作用部334の根元部分334bとの当接状態が解除される。このとき、作用部334は、L字状レール部材332に第1姿勢を維持させることができなくなるとともに、苗トレイ50の自重と、トルクスプリング335の回転トルク(付勢力)との作用により、L字状レール部材332は、図6(c)に示した矢印C方向とは逆方向に回動し、第1姿勢から第2姿勢に瞬時に移行する。
これにより、空状態の苗トレイ50は落下を開始し、籠部350内に収容される。同様にして、苗トレイ50が順次落下していくと、複数の苗トレイ50が縦方向に整列された状態で収容されていく。
このとき、図5に示すように、籠部350にはトレイセンサS(図1、図3を参照)が設けられているため、籠部350に規定枚数の苗トレイ50が収容されたことが検出されると、走行車体2ではブザー音が鳴るため、作業者は空の苗トレイ50の回収タイミングを逃すことがない。
また、前述したように、苗トレイ50を案内する案内ローラ320は、苗トレイ50の幅方向の中央部に相当する側に向けて漸次縮径されているため(図9)、苗トレイ50の前側部が、従来に比べて垂れ下がりにくくなっている。そのため、籠部350に既に収容されている苗トレイ50を前方に押し出し難くなるので、籠部350からの苗トレイ50の落下を抑制できる。したがって、苗トレイ50を、効率良く、整列した状態で籠部350に回収することができる。
また、前述したように、上手側搬送路201aの先端部分には、回動端部2010が上下回動自在に設けられているため、籠部350の前方から苗トレイ50を取り出す場合、回動端部2010を上方へ跳ね上げておけば、苗トレイ50を取り出す空間が拡張するため、作業性が向上する。
さらに、籠部350に既に収容されている苗トレイ50を前方に押し出しにくいので、例えば、籠部350から苗トレイ50を取り出した後は、互いに位置ずれした状態で積層された苗トレイ50の位置ずれを整えて並べなおす必要も無くなる。
また、本実施形態に係る乗用田植機1では、図5に示すように、苗トレイ搬送部210の終端部をなす下手側搬送路201bと苗トレイ回収部300との間に、清浄装置360を設けている。本実施形態では、清浄装置360として、苗トレイ50に付着した泥土を除去するブラシ361と、苗トレイ50に洗浄水を噴出するノズル362とを、進行方向に沿うように並設しているが、いずれか一方を設ける構成であってもよい。
このように、レール部330の手前で苗トレイ50に付着した泥などを清浄装置360により除去することができる。そのため、レール部330を構成する左右一対のレール体330L、330Rの回動の妨げを防止でき、苗トレイ50を籠部350の中に円滑に整列させることができる。
また、このとき、レール部330の第1レール部材332aには、ローラ370を設けるための複数の長孔359が形成されている。そのため、ノズル362からの洗浄水で洗い流された泥も、ブラシ361により除去された泥も、長孔359から外方へ流し出されるため、レール体330L、330Rの泥貯まりを防止し、回動の妨げになることを未然に防止することができる。
以上説明したことから明らかなように、本実施形態では、苗トレイ50の左右両端の育苗ポット51の外側面が、左右一対の作用部334に当接している間は、それぞれの作用部334は退避姿勢をとり(図7参照)、苗トレイ50の左右両側の先端部55及び左右両端の育苗ポット51の外側面の何れの部位も、左右一対の作用部334に当接していない間は、それぞれの作用部334は、非退避姿勢をとる(図6参照)。そして、左右一対の作用部334が退避姿勢をとっている間は、左右一対のL字状レール部材332は第1姿勢をとり続け、左右一対の作用部334が非退避姿勢をとると、左右一対のL字状レール部材332は第2姿勢をとる。このようにレール部330の回動を、苗トレイ50が作用部334へ接触することを利用しているため、籠部350内へ苗トレイ50を円滑に落下させ、かつ落下した苗トレイ50を、籠部350内にきちんと整列させることができる。
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。図10は、乗用田植機1における苗トレイ回収部300の第1の変形例を示す説明図である。
第1の変形例に係る苗トレイ回収部300は、籠部350を着脱自在に取付ける取付部を備えており、籠部350は、レール部330が備える軸体333を支持する支持体351aと、苗トレイ50を受ける底部352とを有する籠本体351とが一体的に形成されている。
すなわち、上手側搬送路201aに一端側が固定された回収装置支持ステー310を籠部350を着脱自在に取付ける取付部として兼用するとともに、籠部350を構成する断面円形の線材で形成した籠本体351に、一体的に支持体351aを連接し、かかる支持体351aによりレール部330の軸体333を支持可能に構成している。なお、籠部350を構成する材料としては断面円形の線材に限定するものではなく、板状のパネル材を組み合わせて構成することもできる。
かかる構成により、第1の変形例によれば、籠部350が取り外し容易な構成となり、回収された苗トレイ50を籠部350ごと一体で持ち運べることができ、作業性が向上する。また、籠部350でレール部330を支持することができるため、例えば、オプション設定や苗トレイ回収部300の後付けも容易に行える。
図11は、乗用田植機1における苗トレイ回収部300の第2の変形例を示す説明図である。図示するように、第2の変形例に係る苗トレイ回収部300は、籠部350の前側部に、細長い帯板などにより、ルーバ状に形成された、あるいはブラシ状または刷毛状に形成された抵抗部材353が設けられている。
かかる抵抗部材353は、レール部330から落下する苗トレイ50の前端部に抵抗を付与することができるため、レール部330から落下した苗トレイ50が籠部350に入る際に、下向きになることなく安定した姿勢で落下させることが可能となるため、苗トレイ50を良好な姿勢で整列させることができる。また、苗トレイ50を、高さ方向へ隙間なく重ねて収容することができるため、回収量の増加が期待できる。
図12は、乗用田植機1における苗トレイ回収部300の第3の変形例を示す説明図である。図示するように、第3の変形例に係る苗トレイ回収部300は、籠部350を構成する線材のうち、側面側の少なくとも一部に開口部380を設けるようにして、かかる開口部380から苗トレイ50を取り出させるようにしている。
この種の籠部350の構成では、苗トレイ50の取り出しは、通常、前方からのみであったが、枚数が多い場合には、施肥装置40の本体部分(ホッパなど)に当たってしまい、取出作業に支障をきたすおそれがあったが、本変形例の構成により、かかる課題が解消され、作業性を向上させることができる。
図13は、乗用田植機1における苗トレイ回収部300の第4の変形例を示す説明図である。図示するように、第4の変形例に係る苗トレイ回収部300は、籠部350の前側部に、苗トレイ50の前方への移動を規制するストッパ面356と、当該ストッパ面356の下端部から後方に延在するトレイ支持面358とを有するL字部材355が回動自在、すなわち、前後揺動自在に設けられている。図13中、符号357は、L字部材355の回動軸を示す。
かかる構成により、苗トレイ50が籠部350の前方側へはみ出したりするおそれがなく、整列されやすくなるとともに、L字部材355を前方へ回動させると、籠部350に溜まった苗トレイ50を取り出す取出し口が容易に形成されることになる。しかも、苗トレイ50は、図示するように、上方へ回動したトレイ支持面358によって、斜め前方へ引き上げられた姿勢となるため、作業者にとってより取り出しやすくなる。
図14は、乗用田植機1における苗トレイ回収部300の第5の変形例を示す説明図である。図示するように、第5の変形例に係る苗トレイ回収部300は、籠部350の底部352に、複数のローラ390を設けている。
かかるローラ390を設けることにより、例えば、籠部350内に重なるように収容された複数の苗トレイ50をまとめて引き出す際に、底部352との摩擦が大きく軽減されて、作業性が向上する。
また、この第5の変形例では、苗トレイ50の底部51bに当接する支持面となる第1レール部材332aに、ローラ370は設けていないものの、長手方向に所定間隔をあけて複数の長孔359を形成している。かかる長孔359は、前述したように、レール体330L、330Rの泥貯まりを防止し、回動の妨げになることを未然に防止することができる。
上述した実施形態から以下の乗用田植機1が実現する。
(1)走行車体2の後部に取付けられ、ポット苗を収容した苗トレイ50を始端部から終端部に向けて搬送する苗トレイ搬送部210と、苗トレイ搬送部210の中途に設けられ、苗トレイ50からポット苗を取り出し、取り出したポット苗を圃場に植え付ける苗植付部220と、苗トレイ搬送部210の終端部に近接して設けられ、苗植付部220によりポット苗が取り出されて空になった苗トレイ50を回収する苗トレイ回収部300とを備え、苗トレイ回収部300は、苗トレイ搬送部210の終端から受け渡される苗トレイ50を前方へ案内する案内ローラ320と、案内ローラ320により案内された苗トレイ50を摺動自在に支持可能な第1の位置L1と、苗トレイ50の底部51bとの接触が解除される第2の位置L2との間を軸体333回りに回動可能に設けられた左右一対のレール部330と、レール部330が第2の位置L2に回動したタイミングで落下する苗トレイ50を受け取る籠部350とを有し、案内ローラ320は、苗トレイ50の幅方向の両端部に相当する側から、苗トレイ50の幅方向の中央部に相当する側に向けて漸次縮径されている乗用田植機1。
(2)上記(1)の構成において、案内ローラ320は、それぞれ截頭円錐形の左右一対の第1案内ローラ320Lと第2案内ローラ320Rとを有し、第1案内ローラ320Lと第2案内ローラ320Rとの小径側端部324同士を対向させて配置した乗用田植機1。
(3)上記(1)または(2)の構成において、レール部330は、苗トレイ50の進行方向に平行に設けられた軸体333回りに回転可能に構成されるとともに、基端側には、湾曲状に形成されて苗トレイ搬送部210により搬送される苗トレイ50が当接することによってレール部330全体を回動する作用部334が連接されている乗用田植機1。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの構成において、レール部330は、苗トレイ50の摺動抵抗を軽減するローラ370を備える乗用田植機1。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、レール部330は、苗トレイ50の底部51bに当接する支持面に、長孔359が形成されている乗用田植機1。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの構成において、苗トレイ搬送部210の終端部と苗トレイ回収部300との間に清浄装置360を備え、清浄装置360は、苗トレイ50に付着した泥土を除去するブラシ361と、苗トレイ50に向けて洗浄水を噴出するノズル362とのうち、いずれか一方または両方を備える乗用田植機1。
(7)上記(1)から(6)のいずれかの構成において、籠部350の前側部に設けられ、レール部330から落下する苗トレイ50の前端部に抵抗を付与する抵抗部材353と、籠部350へ苗トレイ50が所定数収納されたことを検出する検出部Sと、検出部Sによる検出結果に応じて報知する報知部Bとを備える乗用田植機1。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにの構成において、籠部350を着脱自在に取付ける取付部310を備え、籠部350は、レール部330が備える軸体333を支持する支持体351aと籠本体351とが一体的に形成されている乗用田植機1。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにの構成において、籠部350の前部に、苗トレイ50の前方への移動を規制するストッパ面356と、当該ストッパ面356の下端部から後方に延在するトレイ支持面358とを有するL字部材355が回動自在に設けられた乗用田植機1。
上述してきた各実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した実施形態から導かれるさらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。