次に、図面を参照しながら本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の制御装置により制御されるハイブリッド車両1の概略構成図である。同図に示すハイブリッド車両1は、4輪駆動車両であり、エンジン10と、モータジェネレータMGと、動力伝達装置20と、トランスファ40と、第1クラッチとしてのクラッチC0と、第2クラッチとしてのクラッチC2とを含む。更に、ハイブリッド車両1は、高圧蓄電装置(以下、単に「蓄電装置」という)50と、補機バッテリ(低圧バッテリ)55と、モータジェネレータMGを駆動する電力制御装置(以下、「PCU」という)60と、車両全体を制御する本開示の制御装置であるハイブリッド電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを含む。
エンジン10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気を複数の燃焼室内で爆発燃焼させることによりクランクシャフト11から動力を出力する内燃機関である。図示するように、エンジン10は、当該エンジン10をクランキングして始動させるスタータ(エンジン始動装置)12や、当該エンジン10により駆動されて電力を発生するオルタネータ13等を有する。更に、エンジン10のクランクシャフト11は、フライホイールダンパ14に連結される。
エンジン10は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであるエンジン電子制御装置(以下、「エンジンECU」という)15により制御される。エンジンECU15は、HVECU70からの指令信号や各種センサからの信号に基づいて、エンジン10に要求されるトルクが得られるように吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火時期制御等を実行する。また、エンジンECU15は、スタータ12といったエンジン10の補機を制御する。更に、エンジンECU15は、図示しないクランク角センサの出力信号に基づいてエンジン10(クランクシャフト11)の回転数Neを算出する。
モータジェネレータMGは、永久磁石が埋設されたロータや、三相コイルが巻回されたステータを有する同期発電電動機(三相交流電動機)である。モータジェネレータMGは、蓄電装置50からの電力により駆動されて動力を発生する電動機として動作すると共に、ハイブリッド車両1の制動時に回生制動トルクを出力する。また、モータジェネレータMGは、負荷運転されるエンジン10からの動力の少なくとも一部を用いて電力を生成する発電機としても機能する。そして、モータジェネレータMGは、PCU60を介して蓄電装置50と電力をやり取りする。
動力伝達装置20は、多板式あるいは単板式のロックアップクラッチ22やトルクコンバータ(流体伝動装置)、ダンパ装置(図示省略)等を有する発進装置21や、機械式オイルポンプ23、変速機構(自動変速機)24、油圧制御装置30等を含む。発進装置21は、伝達軸17およびトルクコンバータのポンプインペラに一体に回転するように連結(固定)されたフロントカバーを有し、ロックアップクラッチ22は、当該フロントカバーと変速機構24の入力軸26とを互いに接続すると共に両者の接続を解除する。機械式オイルポンプ23は、エンジン10からの動力により駆動されて図示しないオイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引し、油圧制御装置30へと圧送する。
変速機構24は、例えば4段〜10段変速式の変速機として構成されており、複数の遊星歯車や、それぞれ複数のクラッチおよびブレーキ(摩擦係合要素)を有する。変速機構24は、伝達軸17からトルクコンバータあるいはロックアップクラッチ22を介して入力軸26に伝達された動力を複数段階に変速して出力軸27から出力する。
油圧制御装置30は、複数の油路が形成されたバルブボディや、複数のレギュレータバルブ、複数のリニアソレノイドバルブ等を有し、機械式オイルポンプ23からの油圧を調圧してロックアップクラッチ22や変速機構24のクラッチおよびブレーキに供給する。油圧制御装置30は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータである変速電子制御装置(以下、「TMECU」という)25により制御される。これにより、ロックアップクラッチ22や変速機構24のクラッチおよびブレーキがハイブリッド車両1の状態に応じて作動するように制御されることになる。また、ハイブリッド車両1は、機械式オイルポンプ23に加えて、TMECU25により制御される電動オイルポンプ29を有している。電動オイルポンプ29は、補助的に用いられるものであり、例えばエンジン10の運転停止に伴って機械式オイルポンプ23から油圧が出力されなくなる際に、電動オイルポンプ29からの油圧が油圧制御装置30に供給される。
トランスファ40は、センターデファレンシャルおよびセンターデファレンシャルをロックするデフロック機構(何れも図示省略)を含み、変速機構24の出力軸27からの動力を前側プロペラシャフト41(第1の軸)と後側プロペラシャフト42(第2の軸)とに分配して伝達可能なものである。トランスファ40により前側プロペラシャフト41に出力された動力は、前側デファレンシャルギヤ43を介して前側駆動輪Wfに伝達され、トランスファ40により後側プロペラシャフト42に出力された動力は、後側デファレンシャルギヤ44を介して後側駆動輪Wrに伝達される。
クラッチC0は、エンジン10のクランクシャフト11と伝達軸17とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。本実施形態において、クラッチC0は、フライホイールダンパ14を介してクランクシャフト11に常時連結されたクラッチハブ、伝達軸17に常時連結されたクラッチドラム、ピストン、それぞれ複数の摩擦プレートおよびセパレータプレート、それぞれ作動油が供給される係合油室および遠心油圧キャンセル室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)である。ただし、クラッチC0は、単板摩擦式油圧クラッチであってもよい。また、本実施形態において、クラッチC0は、係合油室内の油圧の低下に伴って解放されると共に係合油室内の油圧が高まるのに伴って係合する、いわゆるノーマリーオープン式(常開型)のクラッチである。クラッチC0が係合すると、エンジン10(クランクシャフト11)は、フライホイールダンパ14、クラッチC0、伝達軸17、動力伝達装置20、トランスファ40等を介して前側駆動輪Wfおよび後側駆動輪Wrに連結される。
クラッチC2は、モータジェネレータMGのロータと伝達軸17とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。本実施形態において、クラッチC2は、油圧式のドグクラッチである。ただし、クラッチC2は、多板摩擦式油圧クラッチであってもよく、単板摩擦式油圧クラッチであってもよい。また、本実施形態において、クラッチC2は、油圧サーボに油圧が供給されていないときに係合すると共に油圧サーボに油圧が供給されることで解放される、いわゆるノーマリークローズ式(常閉型)のクラッチである。クラッチC2が係合すると、モータジェネレータMG(ロータ)は、エンジン10とは並列に、クラッチC2、伝達軸17、動力伝達装置20、トランスファ40等を介して前側駆動輪Wfおよび後側駆動輪Wrに連結される。
本実施形態において、クラッチC0およびC2は、図1に示すように、モータジェネレータMGのステータの内部に配置される。また、上記油圧制御装置30は、元圧としてのライン圧を調圧してクラッチC0またはC2の油圧サーボに供給する2つのリニアソレノイドバルブを有しており、クラッチC0,C2に対応したリニアソレノイドバルブは、HVECU70からの指令信号に応じてTMECU25により制御される。
蓄電装置50は、例えば定格出力電圧が200〜300V程度であるリチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池である。蓄電装置50は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータである電源管理電子制御装置(図示省略、以下、「電源管理ECU」という)により管理される。電源管理ECUは、蓄電装置50の電圧センサからの端子間電圧や、電流センサからの充放電電流、温度センサからの電池温度等に基づいて、蓄電装置50のSOC(充電率)や許容充電電力、許容放電電力等を算出する。なお、蓄電装置50は、キャパシタであってもよく、二次電池およびキャパシタの双方を含んでもよい。補機バッテリ55は、例えば12Vの定格出力電圧を有する鉛蓄電池であり、上記オルタネータ13からの電力により充電される。補機バッテリ55は、エンジン10のスタータ12や電動オイルポンプ29、油圧制御装置30といった補機や、ECU等の電子機器に電力を供給する。
PCU60は、システムメインリレーSMRを介して蓄電装置50と接続されると共に、補機バッテリ55に接続される。また、PCU60は、モータジェネレータMGを駆動するインバータや、昇圧コンバータ、DC/DCコンバータ等を含む(何れも図示省略)。インバータは、例えばスイッチング素子としての6個のトランジスタと、これらのトランジスタに逆方向に並列接続された6個のダイオードとを有する。昇圧コンバータは、例えば2個のトランジスタと、これらのトランジスタに逆方向に並列接続された2個のダイオードと、リアクトルとを有する(何れも図示省略)。昇圧コンバータは、蓄電装置50からの電圧を昇圧してインバータに供給すると共に、インバータからの電圧を降圧して蓄電装置50に供給することができる。DC/DCコンバータは、いずれも図示しないスイッチング素子やトランス等を有し、スイッチング素子をオンオフすることにより蓄電装置50を含む高電圧系からの電力を降圧して低電圧系すなわち補機バッテリ55や各種補機等に供給可能なものである。
PCU60は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであるモータ電子制御装置(以下、「MGECU」という)65により制御される。MGECU65は、HVECU70からの指令信号や、昇圧コンバータの昇圧前電圧VLおよび昇圧後電圧VH、モータジェネレータMGのロータの回転位置を検出するレゾルバの検出値、モータジェネレータMGに印加される相電流等を入力する。MGECU65は、これらの入力信号に基づいてインバータや昇圧コンバータをスイッチング制御する。また、MGECU65は、図示しないレゾルバの検出値に基づいてモータジェネレータMGのロータの回転数Nmを算出する。
HVECU70は、図示しないCPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むマイクロコンピュータであり、ネットワーク(CAN)を介してECU15,25,65等と各種信号をやり取りする。更に、HVECU70は、例えばスタートスイッチからの信号や、図示しないアクセルペダルポジションセンサにより検出されるアクセル開度Acc、図示しない車速センサにより検出される車速V、エンジンECU15からのエンジン10の回転数Ne、MGECU65からのモータジェネレータMGの回転数Nm等を入力する。また、HVECU70は、システムメインリレーSMRを開閉制御する。
上述のように構成されるハイブリッド車両1では、システム停止により機械式オイルポンプ23および電動オイルポンプ29が油圧を発生していないとき(駐車中)に、クラッチC0が解放されることでエンジン10と伝達軸17との接続が解除されると共に、クラッチC2の係合によりモータジェネレータMGと伝達軸17とが接続される。そして、ハイブリッド車両1は、システム起動後、クラッチC0が解放されると共にクラッチC2が係合した状態で、モータジェネレータMGからの動力により発進する。この際、クラッチC0によりエンジン10と伝達軸17との接続が解除されていることから、エンジン10の連れ回りを防止してハイブリッド車両1における効率(燃費)を向上させることができる。
また、HVECU70は、ハイブリッド車両1の走行状態に応じてクラッチC0およびC2の係合指令(ON指令)や解放指令(OFF指令)をTMECU25に送信する。具体的には、ハイブリッド車両1の発進後に予め定められたエンジン始動条件が成立すると、HVECU70は、クラッチC0の係合指令をTMECU25に送信する。当該係合指令を受信したTMECU25は、クラッチC0が係合するように油圧制御装置30を制御し、クラッチC0の係合ショックが発生しないように当該クラッチC0のスリップ制御を適宜実行する。クラッチC0の係合後、HVECU70は、エンジンECU15およびMGECU65との協働により、エンジン10をクランキングするようにモータジェネレータMGを制御すると共に燃料噴射や点火を開始させて当該エンジン10を始動させる。このようにクラッチC0が係合させられると共にエンジン10が始動された後には、蓄電装置50のSOCに応じて、エンジン10を最適燃費ライン付近の動作点で作動させながら、モータジェネレータMGにより発電される電力で蓄電装置50を充電したり、当該蓄電装置50からの電力によりモータジェネレータMGを駆動してエンジン10およびモータジェネレータMGの双方から前側および後側駆動輪Wf,Wrにトルクを出力したりすることができる。これにより、ハイブリッド車両1の燃費をより向上させることが可能となる。
なお、クラッチC0の係合後、モータジェネレータMGによりエンジン10をクランキングすることで、補機バッテリ55の放電を抑制することができるが、エンジン10の始動に際して、当該エンジン10は、スタータ12によりクランキングされてもよいことはいうまでもない。この場合、スタータ12のクランキングによりエンジン10を始動させた後、スリップ制御しながらクラッチC0を係合させるとよい。
更に、車速Vが高まるのに伴って予め定められたクラッチC2の解放条件が成立すると、HVECU70は、クラッチC2の解放指令をTMECU25に送信し、TMECU25は、クラッチC2が解放されるように油圧制御装置30を制御する。このように、ハイブリッド車両1の高速巡航時にクラッチC2を解放してモータジェネレータMGを伝達軸17から切り離すことで、モータジェネレータMGの連れ回りを防止してハイブリッド車両1における効率(燃費)を向上させることができる。
次に、図2から図4を参照しながら、ハイブリッド車両1におけるクラッチC0およびC2の異常判定手順について説明する。
図2は、運転者によりスタートスイッチがオンされてハイブリッド車両1がシステム起動された際に、例えばHVECU70により実行されるクラッチ異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。図2のクラッチ異常判定ルーチンは、運転者によりシフトポジションがパーキングポジションまたはニュートラルポジションにセットされた状態でスタートスイッチがオンされてシステムメインリレーが閉成(オン)された直後にHVECU70により実行される。図2のクラッチ異常判定ルーチンが実行される間、エンジン10の運転は停止される。
図2のルーチンの開始に際して、HVECU70(図示しないCPU)は、まず、クラッチC0の解放指令およびクラッチC2の係合指令をTMECU25に送信する(ステップS100)。次いで、ハイブリッド車両1を前進させない程度のトルクを出力するようにモータジェネレータMGのトルク指令を設定し、設定したトルク指令をMGECU65に送信する(ステップS110)。更に、HVECU70は、MGECU65によりPCU60が制御されてモータジェネレータMGからトルクが出力されたタイミングでエンジンECU15からエンジン10(クランクシャフト11)の回転数Neを入力し(ステップS120)、回転数Neが値0であるか否かを判定する(ステップS130)。
ここで、ステップS100にて解放指令がなされたにも拘わらずクラッチC0が係合すなわち係合状態で固着(ON固着)している場合、モータジェネレータMGからクラッチC2を介して伝達軸17に伝達されたトルクがクランクシャフト11に伝達され、回転数Neが値0よりも高くなる。このため、ステップS130にて回転数Neが値0ではないと判定した場合(ステップS130:NO)、HVECU70は、クラッチC0が係合状態で固着しているとみなし、図示しないインストルメントパネルに設けられた所定の警告灯を点灯させるように図示しないメータ制御装置に指令信号を送信する(ステップS135)。また、このようにクラッチC0が係合状態で固着している場合、エンジン10からの動力を伝達軸17等を介して前側および後側駆動輪Wf,Wrに伝達することができる。このため、HVECU70は、ステップS135の処理の後、クラッチC2を解放させた状態でエンジン10のみからの動力によりハイブリッド車両1を走行させるエンジン退避走行を実行させるべくエンジン退避走行フラグをオンし(ステップS137)、本ルーチンを終了させる。本ルーチンの終了後、他のREADY−ON許可条件が成立した時点で、図示しないインストルメントパネルに設置されたREADYランプが点灯させられ、ハイブリッド車両1のエンジン退避走行が許可される。
一方、ステップS100にて発せられた解放指令に応じてクラッチC0が解放されており、かつステップS100にて発生された係合指令に応じてクラッチC2が係合していれば、モータジェネレータMGからクラッチC2を介して伝達軸17に伝達されたトルクがクランクシャフト11に伝達されることはなく、エンジン10の回転数Neは、本来値0となる。ただし、クラッチC2が解放状態で固着(OFF固着)している場合には、クラッチC0が係合状態で固着していたとしても、モータジェネレータMGからのトルクがクランクシャフト11に伝達されず、回転数Neは、値0となる。
このため、ステップS130にて回転数Neが値0であると判定した場合、HVECU70は、更にクラッチC0,C2の異常の有無を判定すべく、クラッチC2に対して解放指令を与えることなく、クラッチC0の係合指令をTMECU25に送信する(ステップS140)。次いで、HVECU70は、クラッチC0の係合に要する時間が経過した時点で、ハイブリッド車両1を前進させない程度のトルクを出力するようにモータジェネレータMGのトルク指令を設定し、設定したトルク指令をMGECU65に送信する(ステップS150)。更に、HVECU70は、MGECU65によりPCU60が制御されてモータジェネレータMGからトルクが出力されたタイミングでエンジンECU15からエンジン10の回転数Neを入力し(ステップS160)、回転数Neが値0よりも高いか否かを判定する(ステップS170)。
係合指令に応じてクラッチC0が係合し、かつモータジェネレータMGから伝達軸17にトルクが出力されれば、当該モータジェネレータMGのトルクがクランクシャフト11に伝達され、回転数Neが値0よりも高くなる。そして、回転数Neが値0よりも高くなった場合、クラッチC0が係合指令に応じて係合しており、かつクラッチC2が係合していることになる(ただし、クラッチC2が係合状態で固着している可能性は残されている)。すなわち、この場合には、クラッチC0を解放させると共にクラッチC2を係合させた状態でモータジェネレータMGからの動力によりハイブリッド車両1を発進させることができる。このため、ステップS170にて回転数Neが値0よりも高いと判定した場合、HVECU70は、クラッチC2,C0に異常がある場合にオンされるクラッチ異常フラグをオフする(ステップS180)。更に、HVECU70は、モータジェネレータMGからの動力によりハイブリッド車両1を発進させるために、クラッチC0の解放指令をTMECU25に送信し(ステップS190)、本ルーチンを終了させる。
これに対して、ステップS170にて回転数Neが値0よりも高くなっていないと判定された場合、すなわち回転数Neが値0であると判定された場合には、モータジェネレータMGからのトルクがエンジン10のクランクシャフトに伝達されていないことになる。すなわち、この場合には、クラッチC0またはクラッチC2の解放状態での固着が発生していることになる。このため、ステップS170にて回転数Neが値0よりも高くなっていないと判定した場合、HVECU70は、上記警告灯を点灯させるように図示しないメータ制御装置に指令信号を送信すると共に、上記クラッチ異常フラグをオンする(ステップS185)。更に、HVECU70は、クラッチC0の解放指令をTMECU25に送信し(ステップS190)、本ルーチンを終了させる。上述のような図2のクラッチ異常判定ルーチンがハイブリッド車両1のシステム起動後に実行されることで、ハイブリッド車両1の走行開始前に、クラッチC0の係合状態での固着やクラッチC0またはC2の解放状態での固着の発生を判別することが可能となる。
図3は、ハイブリッド車両1の発進時に実行されるクラッチ異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。図3のクラッチ異常判定ルーチンは、図2のステップS185にてクラッチ異常フラグがオンされた後に運転者によりシフトポジションがドライブポジションまたはリバースポジションにセットされるとHVECU70により実行される。図3のクラッチ異常判定ルーチンが実行される間、エンジン10の運転は停止される。
図3のルーチンの開始に際して、HVECU70は、アクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度Accを入力し(ステップS200)、アクセル開度Accが0%を上回っているか、すなわち運転者によりアクセルペダルが踏み込まれたか否かを判定する(ステップS210)。ステップS200およびS210の処理を繰り返し実行して、アクセル開度Accが0%を上回っていると判定した場合、HVECU70は、車速センサから車速Vを入力し(ステップS220)、車速Vが値0を上回っているか否かを判定する(ステップS230)。
上述のように、本実施形態のハイブリッド車両1は、クラッチC0を解放させると共にクラッチC2を係合させた状態でモータジェネレータMGからの動力により発進する。また、図2のステップS185にてクラッチ異常フラグがオンされるのは、クラッチC0およびC2の何れか一方に解放状態での固着が発生している場合である。従って、ステップS230にて車速Vが値0を上回っていると判定された場合には、クラッチC2が係合指令に応じて正常に係合していることでモータジェネレータMGからのトルクが伝達軸17や動力伝達装置20等を介して前側および後側駆動輪Wf,Wrに伝達される一方、クラッチC0が解放状態で固着していることになる。このため、ステップS230にて車速Vが値0を上回っていると判定した場合、HVECU70は、エンジン10の運転を禁止した状態でクラッチC2を係合させてモータジェネレータMGのみからの動力によりハイブリッド車両1を走行させるモータ退避走行を実行させるべくモータ退避走行フラグをオンし(ステップS240)、本ルーチンを終了させる。
これに対して、ステップS230にて車速Vが値0を上回っていないと判定された場合、すなわち車速Vが値0であると判定された場合には、クラッチC0が正常に解放されている一方、クラッチC2が解放状態で固着していることでモータジェネレータMGからのトルクが伝達軸17に伝達されていないことになる。このため、ステップS230にて車速Vが値0を上回っていないと判定した場合、HVECU70は、上述のエンジン退避走行を実行させるべくエンジン退避走行フラグをオンし(ステップS250)、本ルーチンを終了させる。この場合、本ルーチンの終了後、エンジン退避走行の実行に先立って、クラッチC0が係合させられると共に、スタータ12によるクランキングが実行されてエンジン10が始動させられる。上述のような図3のクラッチ異常判定ルーチンがハイブリッド車両1の発進に際して実行されることで、クラッチC0およびC2の何れにおいて解放状態での固着が発生しているのかを判別し、クラッチC0またはC2の異常に応じた適正な退避走行を実行することが可能となる。
図4は、ハイブリッド車両1の走行中に実行されるクラッチ異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。図4のクラッチ異常判定ルーチンは、ハイブリッド車両1の走行開始後にクラッチC0が係合させられると共にエンジン10が始動され、当該エンジン10からのトルクが伝達軸17等を介して前側および後側駆動輪Wf,Wrに出力されている間にHVECU70により所定時間おきに実行される。
図4のルーチンの開始に際して、HVECU70は、ハイブリッド車両1の走行状態を示す例えば車速Vといった情報や各種フラグの値を入力する(ステップS300)。次いで、HVECU70は、ステップS300にて入力した情報等に基づいて、ハイブリッド車両1の走行状態がクラッチC2を解放することができる状態であるか否かを判定する(ステップS310)。ステップS310では、例えばハイブリッド車両1が高速巡航している場合、クラッチC2を解放可能であると判定される。ステップS310にてクラッチC2を解放可能であると判定した場合、HVECU70は、クラッチC2の解放指令をTMECU25に送信した上で(ステップS320)、エンジン10の回転数NeとモータジェネレータMGの回転数Nmとの回転数差ΔNについての判定処理(ステップS330)を実行する。ステップS330の処理は、エンジン10の回転数NeからモータジェネレータMGの回転数Nmを減じて得られる回転数差ΔN(=Ne−Nm)が予め定められた閾値ΔNref1(例えば、300rpm前後の値)未満となる状態が所定時間(例えば数十mSec)以上継続したか否かを判定するものである。
ここで、エンジン10からのトルクが伝達軸17に伝達されている状態で、ステップS320にて発せられた解放指令に応じてクラッチC2が正常に解放された場合、モータジェネレータMGと伝達軸17との連結が解除されることで、エンジン10の回転数Neがさほど変化しないのに対して、モータジェネレータMGの回転数Nmが低下していく。一方、エンジン10からのトルクが伝達軸17に伝達されている状態で、解放指令がなされたにも拘わらずクラッチC2が係合したままになっている場合、モータジェネレータMGと伝達軸17との連結が維持されることで、エンジン10の回転数NeとモータジェネレータMGの回転数Nmとが概ね一致する。このため、HVECU70は、回転数差ΔNが閾値ΔNref1未満となる状態が上記所定時間以上継続したと判定した場合(ステップS340:YES)、クラッチC2が係合状態で固着しているとみなし、上記警告灯を点灯させるように図示しないメータ制御装置に指令信号を送信し(ステップS350)、本ルーチンを終了させる。この場合、本ルーチンの終了後、例えば最高車速の制限といった必要なフェールセーフ処理が実行される。また、ステップS340にて否定判断がなされた場合には、クラッチC2の係合状態での固着が発生していないことになる。
一方、ステップS310にてクラッチC2を解放させることができないと判定した場合や、ステップS340にて回転数差ΔNが閾値ΔNref1未満となる状態が所定時間以上継続していないと判定した場合、HVECU70は、上記ステップS300と同様にしてハイブリッド車両1の走行状態を示す例えば車速Vといった情報や各種フラグの値を入力する(ステップS360)。更に、HVECU70は、ステップS360にて入力した情報等に基づいて、ハイブリッド車両1の走行状態がクラッチC2を係合させることができる状態であるか否かを判定する(ステップS370)。ステップS370にてクラッチC2を係合可能ではないと判定した場合、HVECU70は、その時点で本ルーチンを終了させる。
ステップS370にてクラッチC2を係合可能であると判定した場合、HVECU70は、クラッチC2の係合指令をTMECU25(およびMGECU65)に送信する(ステップS380)。なお、ハイブリッド車両1の走行中におけるクラッチC2の係合に際しては、MGECU65により回転数Nmが伝達軸17の回転数すなわちエンジン10の回転数Neに同期するようにモータジェネレータMGが制御される。更に、HVECU70は、エンジン10の回転数NeとモータジェネレータMGの回転数Nmとの回転数差ΔNについての判定処理(ステップS390)を実行する。ステップS390の処理は、エンジン10の回転数NeからモータジェネレータMGの回転数Nmを減じて得られる回転数差ΔNが予め定められた閾値ΔNref2(例えば、300rpm前後の値)以上となる状態が所定時間(例えば数十mSec)以上継続したか否かを判定するものである。
エンジン10からのトルクが伝達軸17に伝達されている状態で、ステップS380にて発せられた係合指令に応じてクラッチC2が正常に係合した場合、モータジェネレータMGと伝達軸17とが連結されることで、エンジン10の回転数NeとモータジェネレータMGの回転数Nmとが概ね一致する。一方、エンジン10からのトルクが伝達軸17に伝達されている状態で、係合指令がなされたにも拘わらずクラッチC2が解放されたままになっている場合、モータジェネレータMGの回転数Nmがエンジン10の回転数Neに一致することはなく、回転数Nmは当該回転数Neよりも大幅に低くなる。
このため、HVECU70は、回転数差ΔNが閾値ΔNref2以上となる状態が所定時間以上継続したと判定した場合(ステップS400:YES)、クラッチC2が解放状態で固着しているとみなし、上記警告灯を点灯させるように図示しないメータ制御装置に指令信号を送信し(ステップS410)、本ルーチンを終了させる。この場合、本ルーチンの終了後、必要なフェールセーフ処理が実行されると共に、上述のエンジン退避走行を実行させるべくエンジン退避走行フラグがオンされる。また、ステップS400にて否定判断がなされた場合には、クラッチC2の解放状態での固着が発生していないことになる。上述のような図4のクラッチ異常判定ルーチンが実行されることで、ハイブリッド車両1の走行中にクラッチC2の係合状態での固着や解放状態での固着の発生の有無を判別することが可能となる。
以上説明したように、本開示の制御装置としてのHVECU70は、クラッチC0を介して前側および後側駆動輪Wf,Wrに連結されるエンジン10と、エンジン10とは並列にクラッチC2を介して前側および後側駆動輪Wf,Wrに連結されるモータジェネレータMGとを含むハイブリッド車両1を制御するものである。そして、HVECU70は、クラッチC0に解放指令または係合指令が与えられ、かつクラッチC2に係合指令または解放指令が与えられた状態でのモータジェネレータMGまたはエンジン10のトルクの出力に応じた車両状態の変化に基づいて、クラッチC0およびC2の異常を判定する異常判定手段(ステップS100〜S190,S200〜S250,S300〜S410)として機能する。
すなわち、ハイブリッド車両1において、クラッチC0およびC2の何れかに異常が発生している場合、モータジェネレータMGやエンジン10からのトルクが、クラッチC0およびC2に対する係合指令および解放指令の組み合わせに応じて定まる要素へと伝達されなくなったり、本来想定されていない要素に伝達されたりしてしまう。従って、クラッチC0およびC2の何れかに異常が発生している場合、モータジェネレータMGまたはエンジン10からトルクが出力された際の例えば回転数Neや車速V、エンジン10とモータジェネレータMGとの回転数差ΔNといった車両状態は、クラッチC0およびC2に対する係合指令および解放指令の組み合わせに応じて定まる本来のものから変化する。これを踏まえて、ハイブリッド車両1では、HVECU70により、上述のようなステップS100〜S190,S200〜S250,S300〜S410の処理が実行される。これにより、クラッチC0およびC2の異常を精度よく判定すると共に、クラッチC0,C2で発生している異常に応じて、適切な退避走行やフェールセーフ処理を実行することが可能となる。
なお、図2のステップS130およびS170では、エンジン10の回転数Neと閾値とを比較する代わりに、回転数Neの変化量と閾値とを比較してもよい。また、図3のルーチンが実行されても、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれないとクラッチC0およびC2の異常の有無を判定し得なくなってしまう。従って、図3のルーチンは、例えばドライブポジション等の選択後に所定時間が経過するまでに運転者によりアクセルペダルが踏み込まれない場合に、ハイブリッド車両1を僅かに前進または後進させる(車速Vが2〜3km/h程度で走行させる)トルクをモータジェネレータMGに出力させてから、ステップS220以降の処理が実行されるように改変されてもよい。更に、図2および図3のルーチンは、ハイブリッド車両1の駐車後、運転者によりスタートスイッチがオフされる前、あるいはスタートスイッチがオフされた後に実行されてもよい。この場合、ステップS137,S240およびS250にて設定されるエンジン退避走行フラグやモータ退避走行フラグは、ハイブリッド車両1の次回発進時まで有効にされるとよい。また、上記ハイブリッド車両1は、複数のECU15,25,65,70等を含むものであるが、これらのECUのすべてまたは一部は、単一のECUに統合されてもよい。更に、ハイブリッド車両1が前輪駆動車両または後輪駆動車両として構成されてもよいことはいうまでもない。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。