図1は実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。
図1において、画像形成装置100は、例えばカラープリンタであり、トナー像を形成する画像形成ユニットを備えたものである。画像形成装置100は、給紙カセット13と、給紙ローラ14と、搬送ローラ15、17と、レジストローラ16と、画像形成ユニット9と、転写ローラ10と、転写ベルト11と、定着装置12と、排出ローラ18とを有している。
給紙カセット13は、印刷媒体20を積層して収容するものである。
給紙ローラ14は、給紙カセット13に収容された最上位の印刷媒体20に接触して回転することにより印刷媒体20を1枚ずつ繰り出し、搬送ローラ15へ搬送するものである。
搬送ローラ15は、給紙ローラ14により搬送された印刷媒体20を挟持して図中矢印Aが示す媒体搬送方向へ搬送し、レジストローラ16へと搬送するものである。
レジストローラ16は、搬送ローラ15で搬送された印刷媒体20の斜行を矯正するとともに、印刷媒体20を挟持して画像形成ユニット9へ搬送するものである。
画像形成ユニット9は、4色の現像剤としてのトナーを扱う4つの画像形成ユニット9(K)、9(Y)、9(M)、9(C)により構成され、媒体搬送方向における上流側からブラックのトナーを扱う画像形成ユニット9(K)、イエローのトナーを扱う画像形成ユニット9(Y)、マゼンタのトナーを扱う画像形成ユニット9(M)、シアンのトナーを扱う画像形成ユニット9(C)の順で配設されている。
画像形成ユニット9は、それぞれのトナーを使用して現像剤像としてのトナー像を感光体ドラム1の表面に形成する。
転写ローラ10は、転写ベルト11を介してそれぞれの画像形成ユニット9の感光体ドラム1に対向配置されたものであり、転写電圧が印加されて感光体ドラム1に形成されたトナー像を転写ベルト11で搬送される印刷媒体20に転写するものである。
転写ベルト11は、それぞれの画像形成ユニット9とそれぞれの転写ローラ10との間に回転可能に配設され、レジストローラ16で搬送された印刷媒体20を画像形成ユニット9の感光体ドラム1と接触させながら定着装置12へ搬送するものである。
印刷媒体20は、それぞれの画像形成ユニット9の感光体ドラム1と、転写ベルト11との間を通過するときに、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1の反対側に対向配置された転写ローラ10との接触部において感光体ドラム1上に形成されたトナー像が画像形成ユニット9毎に転写される。
定着装置12は、転写ベルト11により搬送され、トナー像が転写された印刷媒体20に熱と圧力でトナー像を定着させるとともに搬送ローラ17へ搬送するものである。
搬送ローラ17は、定着装置12でトナー像が定着された印刷媒体20を挟持して排出ローラ18へ搬送するものである。
排出ローラ18は、搬送ローラ17により搬送された印刷媒体20を挟持して搬送し、排出部19へ排出するものである。
図2は実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略側断面図である。
図2において、画像形成ユニット9は、トナーカートリッジ7と、ドラムカーリッジ8とから構成されている。また、ドラムカートリッジ8は、感光体ドラム(OPC)1と、帯電ローラ2(CH)と、現像ローラ(DD)4と、現像ブレード21と、スポンジローラ5と、クリーニングブレード6と、除電装置23とを有している。なお、画像形成ユニット9(K)、9(Y)、9(M)、9(C)は、取り扱うトナーは異なるが、構成は同じであるため1つの画像形成ユニットの構成を説明する。
トナーカートリッジ7は、内部にトナーが充填されたトナー収容部である。
像担持体としての感光体ドラム1は、露光LEDヘッド3により選択的に照射された光により静電潜像が形成され、その静電潜像にトナーが供給されることによりトナー像が現像されるものである。
帯電部材としての帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面を一様に帯電させるものである。
現像剤担持体としての現像ローラ4は、静電潜像をトナーで現像するものであり、感光体ドラム1上に形成された静電潜像にトナー22を搬送してトナー像を現像するものである。現像ローラ4は、電源制御部により所定の現像バイアス電圧が印加される。
現像ブレード21は、現像ローラ4上に均一なトナー層を形成するものである。
スポンジローラ5は、トナー収容部のトナー22を攪拌し、帯電させるものである。
クリーニングブレード6は、トナー像を転写した後、感光体ドラム1上に残留したトナーを除去するものである。
除電装置23は、感光体ドラム1上の電位をリセットするものである。
露光手段としての露光LEDヘッド3は、図1に示す画像形成装置100の本体に取り付けられ、ドラムカートリッジ8の所定の位置から感光体ドラム1の表面を露光できるように配設されている。露光LEDヘッド3は、感光体ドラム1の表面を露光して静電潜像を形成する。
転写ベルト11により図中矢印Aが示す媒体搬送方向に搬送された印刷媒体20には、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1と対向配置された転写ローラ10との接触部において感光体ドラム1上の静電潜像に現像されたトナーが転写される。
ここで、本実施例で使用するトナー22について説明する。
トナー22は、非磁性一成分の不帯電性トナーであり、少なくとも結着樹脂を含有するトナー母粒子に無機微粉体や有機微粉体などの外部添加剤(以下、「外添剤」という。)が添加されたものである。
この結着樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはスチレン−ブタジエン系樹脂が好ましい。この結着樹脂には、離型剤、着色剤等が添加され、その他に帯電制御剤、導電性調整剤、流動性向上剤またはクリーニング性向上剤等の添加剤が適宜添加されていても良い。また、結着樹脂としては複数の種類の混合でも良く、本実施例では、複数の非晶性ポリエステル系樹脂の他に結晶構造を持った結晶性ポリエステルを用いた。
トナー22の平均粒径は6.0μm、円形度0.96である。なお、平均粒径の測定には、ベックマン・コールター社製コールターマルチサイザー3を使用し、円形度の測定は、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を使用した。
離型剤としては、特に限定されるものはないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなど公知のものが挙げられる。そして含有量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜12重量部添加されるのが効果的であり、また複数のワックスを併用することも好ましい。
着色剤としては、特に限定されるものではないが、従来のブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を単独もしくは複数種併用して使用することができ、例えばカーボンブラック、酸化鉄、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ピグメントブルー15:3、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジアゾイエロー等が挙げられる。この着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して2〜25重量部、好ましくは2〜15重量部添加される。
帯電制御剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、負帯電性のトナーの場合には、アゾ系錯体帯電制御剤、サリチル酸系錯体帯電制御剤、カリックスアレン系帯電制御剤などが挙げられる。この帯電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部添加される。
トナー22の外添剤は、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上のために添加され、公知のものを用いることができる。外添剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜8重量部添加される。本実施例では、母粒子100重量部に、平均粒径14μmのシリカを数種類(帯電極性が正のものと、負のもの)と、平均粒径110μmのコロイダルシリカ(負帯電)、平均粒径200μmのメラミン(正帯電)を添加し、その総量は、上記の範囲に収まるようにした。
次に、現像ローラ4について説明する。
本実施例で使用した現像ローラ4は、軸としての導電性の芯金上に、弾性層を配した構成となっている。弾性層のロール状態でのゴム強度は、一般的にアスカ―C硬度60〜80度が好ましい。弾性層は、ポリエーテル系ポリオールおよび脂肪酸系イソシアネートをベースポリマーとして形成した。また、弾性層の抵抗値調整のため、導電剤として、例えばアセチレンブラックおよびケッチェンブラック等のカーボンブラックが添加されている。本実施例においては、弾性層のアスカ―C硬度は76度とした。
また、トナー22を現像ローラ4の表面に適切に担持させるため、現像ローラ4の弾性層の表面を覆う表面層として、イソシアネート処理を施した。イソシアネート処理液は、イソシアネート化合物を酢酸エチル等の有機溶剤に溶解させた後に、アセチレンブラックおよびケッチェンブラック等のカーボンブラックを添加したものである。イソシアネート化合物には、例えばジフェニルメタンイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート等が用いられる。イソシアネート処理液が乾燥した後、現像ローラ4の表面を有機溶剤のイソプロピルアルコールに漬けた布等で払拭することにより、現像ローラ4表面の帯電性を均一に向上させることができる。
現像ローラ4の電気抵抗値は、−100V印加時で、1×104〜1×107Ωcmの範囲が好ましく、本実施例では、1×106Ωcmとした。
次に、クリーニングブレード6について説明する。
本実施例で使用したクリーニングブレード6は、板状弾性体と、それを保持するための導電性の板状の保持具とからなる。
板状弾性体の形成材料としては、特に限定されるものではないが、感光体ドラム1表面に摺接して残留トナーを掻き取る際、感光体ドラム1表面を傷つけることがないよう、弾性体組成物を用いるのが一般的である。例えばポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素ゴム等に、適宜の添加剤を配合した組成物が挙げられる。なかでも、機械的強度や弾性圧接性等に優れる点でポリウレタン組成物が好適である。
上記ポリウレタン組成物は、通常ポリイソシアネートとポリオールと硬化剤と触媒とを用いて得ることができる。
上記ポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではなく、例えば4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、3,3´−トリレン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添加MDI)、カルボジイミド変性MDI、オルトトルイジンジイソシアネート、キレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル等のトリイソシアネート、ポリメリックMDI等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性の観点から、MDIが好ましい。
また、ポリイソシアネートとともに用いられるポリオールとしては、特に限定されるものでなく、例えばポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキシレンアジペート等のポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性に優れる点で、PBAが好ましい。
上記ポリイソシアネートおよびポリオールとともに用いられる硬化剤としては、特に限定されるものではなく、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール等の、分子量300以下のポリオールが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上併せて用いられる。
次に、感光体ドラム1を図3の実施例における感光体ドラムの構成を示す説明図に基づいて説明する。なお、図3(a)は感光体ドラムの斜視図、図3(b)は表層の断面図である。
図3において、感光体ドラム1は、駆動源に接続されたドラムギア24と、軸方向におけるドラムギア24に反対側の端部に設けられたドラムフランジ25とを有している。また、感光体ドラム1は、円筒型に加工された導電性支持体27の表面から順に、下引き層28、電荷発生層29、電荷輸送層30が積層された構造になっている。また、電荷発生層29および電荷輸送層30は、感光層26として構成されている。
導電性支持体27と感光層26との間に、接着性、ブロッキング性等の改善のため、下引き層28を設けることができる。
下引き層28としては、例えば樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層28は、単一層であっても、複数層として設けても良い。下引き層28に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いても良い。
これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理が施されていても良い。これらの処理は、いずれか1種でも良く、2種以上が施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、例えばルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれかを用いることができる。なお、酸化チタン粒子は、その結晶型が1種のみであっても良く、2種以上の結晶型が任意の比率および組み合わせで含まれていても良い。金属酸化物粒子の平均粒径は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、下引き層28の原料であるバインダー樹脂等の特性および溶液の安定性の観点から、平均一次粒径が、通常10nm以上、また通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。この平均一次粒径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)写真により測定することができる。
下引き層28は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散したもので形成することが好ましい。このような下引き層28は、例えばバインダー樹脂を溶解した溶液に金属酸化物粒子を分散させ、この金属酸化物粒子を分散させた溶液(以下、適宜「下引き層形成用塗布液」という。)を塗布することにより形成することが好ましい。
下引き層28に用いられるバインダー樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いても良い。また、硬化剤とともに硬化した形状で使用しても良い。なかでも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性および塗布性を示し、好ましい。
感光層26の構成は、公知の電子写真感光体に適用可能ないかなる構成も採用することが可能である。具体例を挙げると、光導電性材料をバインダー樹脂中に溶解または分散させた単層の感光層(即ち、単層型感光層)を有する、いわゆる単層型感光体と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層してなる複数の層からなる感光層(即ち、積層型感光層)を有する、いわゆる積層型感光体等が挙げられる。一般に、光伝導性材料は、単層型でも積層型でも、機能としては同等の性能を示すことが知られている。
本実施例の電子写真感光体の有する感光層26は、公知のいずれの形態であっても構わないが、電子写真感光体の機械的物性、電気特性、製造安定性等を総合的に勘案して、積層型の電子写真感光体が好ましい。特に、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを、この順に積層した順積層型感光体がより好ましい。
電荷発生層と電荷輸送層とを有する機能分離型感光体(即ち、積層型感光体)の電荷輸送層および単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のため、通常、化合物を分散させるためバインダー樹脂が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散させて得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。また、単層型感光体は、電荷発生物質、電荷輸送物質および各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散させて得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。
機能分離型感光体における電荷発生層に通常用いられるバインダー樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることができるが、これらのポリマーに限定されるものではない。また、これらのバインダー樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いても良い。
次に、層形成方法を説明する。
感光体ドラム1を構成する各層は、通常、各層を構成する材料を含有する塗布液を、導電性支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布、乾燥の工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
バインダー樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジンアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状、分岐および環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状および環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられ、下引き層28を溶解しないものが好ましく用いられる。なお、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いても良い。
層形成用の塗布液は、単層型感光体および積層型感光体の電荷輸送層の場合には、固形分濃度が、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、またその上限は、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下である。また、塗布液の粘度は、通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、またその上限は、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下である。
積層型感光体の電荷発生層の場合には、固形分濃度を、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、またその上限は、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。また塗布液の粘度は、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、またその上限は、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下である。
塗布液の塗布方法としては、例えば浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラ―コーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。なお、これらの方法は、1種を単独で利用しても良く、2種以上を任意に組み合わせて利用しても良い。塗布液の乾燥は、室温(通常25℃)における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、通常1分以上、2時間以下の間、無風または送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行っても良い。
単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、またその上限は、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。また、順積層型感光体の電荷輸送層の膜厚は、通常5μm以上、50μm以下の範囲で用いられるが、好ましくは10μm以上、45μm以下、高解像度の観点からより好ましくは10μm以上、30μm以下である。
次に、感光体ドラム1の寿命について説明する。
感光体ドラム1の電荷輸送層30は、18〜24μmで成膜され、印刷動作する際に接触部材に擦られることで摩耗が発生する。この摩耗により、電荷輸送層30が10μm以下になると、帯電ローラ2からの帯電が保持できず、静電潜像の電位が低下し、非印刷領域にトナーが供給されるため印刷汚れが発生する。
そのため、電荷輸送層30の摩耗特性が良いと長寿命の感光体ドラム1となる。摩耗特性は、電荷輸送層30のマルテンス硬度が低いほど良い傾向がある。
図4に示すように、30K枚以上印刷可能な感光体ドラム1は、マルテンス硬度が170N/mm2以下であることがわかる。しかし、マルテンス硬度が130N/mm2以下になると、摩耗量が少なく感光層のオゾン劣化が蓄積する。そうすると、電荷輸送能力の低下によりトナー濃度の低下が発生する。
そのため、本実施例の感光体ドラム1が有する電荷輸送層30のマルテンス硬度は130N/mm2以上、170N/mm2以下としている。
次に、感光体ドラム1が有する電荷輸送層30の硬度およびマルテンス硬度を130N/mm2以上、170N/mm2以下に調整する方法を説明する。
まず、電荷輸送層30の樹脂について説明する。
電荷輸送層30の樹脂は、樹脂の平均分子量を高くすると低硬度となり、粘度平均分子量を低くすると高硬度となる。樹脂の粘度平均分子量は塗布前の液体時に調整する。例えば、ポリアリレート樹脂を使用した場合、粘度平均分子量は10000〜300000で使用される。より好ましくは粘度平均分子量が20000〜100000である。
粘度平均分子量が過度に小さいと、感光層の機械的強度が低下し実用的ではない。また、粘度平均分子量が過度に大きいと、感光層を適当な膜厚に塗布形成することが困難である。
ポリアリレートの樹脂の構造を以下に例示する。なお、本例示、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限り、例示される構造に限定されるものではない。
感光層に含まれるポリアリレート樹脂は、例えば下記の化学式1で表される繰り返し構造を含むものであり、二価ヒドロキシアリール成分とジカルボン酸成分とにより製造することができる。
マルテンス硬度を上げるために添加剤(Mwが500以下の化合物)を感光層またはそれを形成する各層に含有させることにより、電気特性に影響を与えず、かつ弾性変形率を低下させることなく、マルテンス硬度を所定の値に調整することができる。その構造に特に制限はないが、Mwが500以下、好ましくは400以下、さらに好ましくは300以下、最も好ましくは250以下である。添加剤のMwが小さいとバインダー樹脂との相溶性が高くなり、マルテンス硬度を増加させる効果がより顕著に現れる。
電気特性に影響を与えず、かつ弾性変形率を低下させることなく、マルテンス硬度を調整するものとして、下記の化学式2(一般式)に示す添加剤を感光層またはそれを形成する各層に含有させることがより好ましい。本発明のマルテンス硬度に調整するため、感光層中に含まれる添加剤は、結着樹脂100重量部に対して通常50重量部以下であり、好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下である。
なお、化学式2中、R9、R10は、それぞれ独立しており、置換または非置換の炭素数6〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアラルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアシル基、置換または非置換の炭素数6〜30のシクロアルキル基を示し、Zは窒素原子以外のヘテロ原子、nは1〜8の整数を表している。
次に、感光体ドラム1の最表面層の物性の測定方法について説明する。
感光体ドラム1は、スクラッチ試験を行い、荷重1.9mNに到達した位置のスクラッチ残留深さが通常100nm以下、またその下限は通常50nm以上であることが好ましい。スクラッチ残留深さは、浅いほど最表面層の耐傷性が良化し、トナーから脱離した外添剤のクリーニングがし易くなる。ただし、スクラッチ残留深さが50nm以下になる場合、感光体ドラム1の最表面層のマルテンス硬度を170N/mm2以下に調整することが困難となり、印刷可能枚数が少なくなってしまう。
本実施例におけるスクラッチ残留深さとマルテンス硬度は、Agilent Technologies社製微小硬度計Nano Indenter G200を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定した値である。測定には対面角145°のプリマウント型バーコビッチ−ダイヤモンド圧子を用いる。スクラッチ残留深さはスクラッチ試験により測定し、マルテンス硬度は押込み試験により測定する。
ここでスクラッチ試験を図5の実施例におけるスクラッチ試験の説明図に基づいて説明する。なお、図5(a)はスクラッチ試験の測定器の概略構成を示し、図5(b)はスクラッチ試験の動作を示している。
スクラッチ試験機は、図5(a)に示すように、感光体ドラム1を水平方向にスライドするホルダー33で固定し、圧子32が感光体ドラム1の表面に垂直に加重するものである。
スクラッチ試験の動作は、図5(b)に示すように、圧子32が感光体ドラム1の表面に図中矢印B1が示す方向に働く荷重0.03mNで触れており、図中矢印B2が示す水平(軸)方向にホルダー33がスライドすることによりスクラッチする。
スクラッチ試験では、次の3回の操作で表面物性を測定している。まず始めに、0.03mN加重した圧子32で試料表面の初期状態A(スクラッチ深さ(μm))を測定する。
次に、指定した条件で圧子32によるスクラッチ荷重(mN)を徐々に加重させながらホルダー33を水平方向へスライドさせ、試料表面に傷をつける。このとき、試料表面にできた初期の傷の深さをスクラッチ深さ(μm)Bとして測定する。
最後に、0.03mN加重した圧子32で試料表面に残された除荷直後のスクラッチ残留深さ(μm)Cを測定する。
このとき、圧子32がスクラッチした感光体ドラム1の位置(スクラッチを開始した位置からの相対位置)をスクラッチ位置(μm)とし、そのスクラッチ位置(μm)をX軸、スクラッチ荷重(mN)をY軸にプロットした図6(b)に示すプロファイルを取得する。
次に、スクラッチ位置(μm)と、初期状態A、指定スクラッチ荷重(mN)下におけるスクラッチ深さB、および除荷直後の残留深さCとを連続的に読取り、それぞれX軸、Y軸にプロットした図6(a)に示すプロファイルを取得する。なお、スクラッチ深さは負符号で表している。
測定条件は、以下の通りに設定してスクラッチ試験を行った。
(測定条件)
許容熱移動率 1nm/s
水平方向へのスクラッチ距離 400μm
水平方向へのスクラッチ速さ 20μm/s
初期荷重 0mN
最大到達荷重 4mN
また、スクラッチ残留深さは、荷重が1,9mNに到達した位置に残された傷の深さの値である。この深さの測定方法を説明する。
まず、図6(b)に示すプロファイルからスクラッチ試験の中で荷重1.9mNに到達したスクラッチ位置(μm)を読み取る。次に、図6(a)に示すプロファイルから荷重が1.9mNに到達したスクラッチ位置(μm)の除荷直後の残留深さ(初期状態A−除荷直後の残留深さC)の値を測定する。この除荷直後の残留深さ(初期状態A−除荷直後の残留深さC)の値がスクラッチ残留深さとなる。
荷重1.9mN時のスクラッチ傷の深さを測定する理由を説明する。
クリーニングブレード6は、凝縮した外添剤(シリカ)や紙粉等によって大きな粒径(〜100μm)を掻き取るときに傷が発生する。その場合、線ではなく点で負荷が加わる。この点に加わる荷重をブレード線圧から求める。クリーニングブレード6の設定線圧は19gf/cmであるので、粒径100μmをクリーニングすると、感光体ドラム1に与える荷重は1.9mNになると算出される。この状態の傷の深さを測定する手段としてスクラッチ試験が有効である。本実施例では、荷重1.9mNに到達した位置のスクラッチ残留深さがクリーニング時に生じた傷の深さとして測定できる。
なお、荷重1.9mNの算出過程は、
19[gf/cm]×100×(10−4)[cm]×9.8[mN/gf]=1.88[mN]≒1.9[mN]
となる。
このように、本実施例では、上述したスクラッチ試験において、感光体ドラム1の表面に対して垂直に押圧する圧子の荷重が1.9mNに到達したときに、感光体ドラム1の表面に残された傷の深さをスクラッチ残留深さとし、50nm以上、100nm以下とした。
図7に示すように、感光体ドラム1に傷がつきにくいほど、帯電ローラ2への外添剤の付着量が減少する。これは、傷が浅いほどクリーニングブレード6で外添剤を除去しやすくなるため、帯電ローラ2への外添剤付着量が減少する。なお、図7において、「◎」、は付着量が少ないことを表し、「〇」は付着量がやや少ないことを表し、「×」は付着量が多いことを表している。
次に、押込み試験について説明する。
測定条件を以下の通り設定し、圧子32にかかる荷重とその荷重下における押込み深さを連続的に読取り、それぞれY軸、X軸にプロットした図8に示すようなプロファイルを取得する。なお、図8において、点91から点92は圧子32にかかる荷重が増加する状態を示し、点92から点93は圧子32による最大押込み荷重を保持している状態を示し、点93から点94は圧子32による荷重を除荷している状態を示している。
(測定条件)
許容熱移動率 1nm/s
最大押込み荷重 4mN
負荷所要時間 25s
荷重保持時間 30s
除荷所要時間 25s
本実施例において、マルテンス硬度は、圧子32を押込み荷重4mNまで押し込んだときの圧子32により形成された押込み深さから算出されたキズの表面積に基づいて導出される値であり、
マルテンス硬度(N/mm2)=試験荷重(押込み荷重)(N)/試験荷重(押込み荷重)下でのビッカース圧子(圧子32)で形成されたキズの表面積(mm2)
で定義される値である。
次に、感光体ドラム1の露光電位測定について説明する。
沖データ社製C531dnの装置を用い、現像位置の感光体ドラム1の帯電電位(帯電電位V0、露光後電位VL)を測定した。測定にはトレックジャパン社製表面電位計Model344を使用した。帯電電位V0は露光されていない白紙印刷部を印刷するときの感光体ドラム1の未露光部の表面電位、即ち帯電ローラ2によって帯電された表面電位であり、露光後電位VLは100%濃度を印刷するときの感光体ドラム1の露光部の表面電位、即ち露光LEDヘッド3で露光された表面電位である。測定方法は、帯電電位V0を−500Vに帯電させたときの露光後電位VLを測定した。
露光後電位VLの調整方法は、電荷輸送物質の含有量を調整することにより調整する。電荷輸送物質の含有量が多いほど、露光後電位VLは低くなり、含有量が少ないほど露光後電位VLは高くなる。
上述した構成の作用について説明する。
まず、画像形成装置が行う印刷動作を図1に基づいて説明する。
給紙カセット13に収容された印刷媒体20は、給紙ローラ14の回転によって1枚ずつ装置内へと給紙される。給紙された印刷媒体20は、搬送ローラ15、レジストローラ16の順に搬送されて転写ベルト11と画像形成ユニット9との間に搬送される。画像形成ユニット9では、画像データに応じたトナー画像が感光体ドラム1の表面に形成される。転写ベルト11の内側に配設される転写ローラ10には所定の電位が印加され、感光体ドラム1表面上のトナー画像が転写ローラ10との間に発生する静電気力等により印刷媒体20上に転写される。
印刷媒体20は、転写ベルト11上に吸着された状態で各画像形成ユニット9を順次通過する。トナー画像を載せた印刷媒体20は、回転する転写ベルト11により、定着装置12へと搬送される。定着装置12は、内部に熱源を有する加熱ローラと、所定の圧力で加熱ローラに押圧されている加圧ローラとを有し、加熱ローラと加圧ローラとは互いに接触するように配設され、互いに逆方向に回転する。
印刷媒体20は、加熱ローラと加圧ローラに引き込まれ、加熱ローラの熱により印刷媒体20上のトナーが溶融し定着される。トナーが定着された印刷媒体20は、搬送ローラ17によって搬送され、排出ローラ18によって排出部19へ排紙される。
このようにして画像形成装置100は印刷動作を行う。
次に、画像形成ユニットが行う画像形成動作を図2に基づいて説明する。
画像形成ユニット9では、帯電ローラ2で帯電された感光体ドラム1の表面上に、露光LEDヘッド3の発光素子が露光することで静電潜像が形成される。そして、トナーカートリッジ7内にあるトナー22はトナー搬送機構によりドラムカートリッジ8に搬送され、スポンジローラ5によって現像ローラ4へ供給される。現像ローラ4には所定の現像バイアス電圧が印加され、現像ローラ4上のトナー22は、現像ブレード21によって薄層化された後、静電潜像が形成された感光体ドラム1表面に供給されてトナー画像が現像される。このような現像工程を経てトナー画像が形成される。
転写ベルト11の内側に配設された転写ローラ10には、所定の電位が印加され、感光体ドラム1表面上のトナー画像が転写ローラ10との間に発生する静電気力等により印刷媒体20上に転写される。
トナー画像が印刷媒体20上に転写された後、感光体ドラム1上にはトナー22や紙粉等が付着しているが、クリーニングブレード6によって感光体ドラム1表面の付着物が除去される。感光体ドラム1の付着物を除去した後、除電装置23が感光体ドラム1を均一に除電し、電位をリセットすることで次回の画像形成動作において帯電が均一に行われる。
このようにして画像形成ユニット9は現像を行い、トナー画像を形成する。
次に、図2に示すクリーニングブレード6をすり抜けた外添剤に起因する感光体ドラム1の1周分の周期で現れるポジ残像について図9を使用して説明する。
図9(a)は、感光体ドラムの1周分の周期(以下、「感光体ドラム周期」という。)で現れるポジ残像の有無を確認するための印刷パターンの例である。この印刷パターンでは、印刷媒体107の上端部に、例えば印刷ドットの面積比率が100%のベタパターンでボールド文字126と、ボールド文字126から感光体ドラムの1周分の位置に、例えば印刷ドットの面積比率が30%のハーフトーンのパターン127とを配したものとなっている。
感光体ドラム周期のポジ残像が発生しない場合、図9(a)に示すように、ハーフトーンのパターン127にボールド文字126の残像は発生しない。
一方、クリーニングブレードをすり抜ける外添剤の量が多くなると、図9(b)に示すように、ハーフトーンのパターン129の印刷濃度が低下し、ボールド文字128から感光体ドラムの1周期後の部分に残像130が発生する。
ハーフトーンのパターン129の印刷濃度が低下するのは、感光体ドラムの未露光部分に付着してクリーニングブレードをすり抜けた正帯電の外添剤が、次の帯電、露光、現像工程において影響を及ぼしているためである。具体的には、クリーニングブレードをすり抜けた外添剤の一部は、帯電ローラに付着して感光体ドラムの帯電電位が上昇する。そして、帯電ローラに付着しなかった外添剤は、露光LEDヘッドの露光を妨げ、露光後電位が下がりきらず、さらに現像工程においてトナーの現像効率の低下を引き起こしていると考えられる。これらの影響はいずれも印刷濃度が低下する方向に作用する。
このように、感光体ドラム上に付着した外添剤が現像工程でのトナー現像効率を低下させてポジ残像が発生する。
この場合、図11に示すように、現像ローラ4に印加するバイアス電圧(以下、「現像バイアス」という。)を高く(例えば、−130Vから−170Vに高く)することにより、トナー22と現像ローラ4間の反発力が高まり、外添剤の付着によるトナー現像効率の低下を少なくし、ポジ残像の発生を抑制することができる。なお、図11において、感光体ドラム1の表面の露光後電位VLは、感光体ドラム1表面の測定用プローブで所定領域の電位を測定したものであり、例えばボールド文字126の静電潜像が形成された領域の電位は、−40V(現像バイアスが−130V)や−80V(現像バイアスが−170V)となり、ハーフトーンのパターン129の静電潜像が形成された領域の電位は−300Vとなる。
しかし、現像バイアスを高くし過ぎると、図12に示すように、ポジ残像部の濃度段差が小さくなり、印刷媒体に汚れが発生してしまう。これは、現像効率が過剰になり、非現像部にもトナー22が現像され、印刷媒体に汚れが発生してしまうためである。
本実施例では、感光ドラム周期のポジ残像のレベルの良否を表す指標として、残像部とハーフトーンのパターン(以下、「背景部」という。)の印刷濃度段差を用いた。
図10に印刷濃度を測定した位置を示す。図10に示す残像部131と、その近傍の背景部132との濃度をエックスライト社製X−Rite528で測定した。
ここで、感光体ドラム1の感光層の摩耗が進み、ポジ残像が発生する理由を説明する。
感光体ドラム1の感光層の膜厚が減少していくと帯電電位V0が上昇する。帯電電位V0が上昇すると、除電装置での除電が不十分になり、感光体ドラム表面の帯電を均一にできなくなる。この状態で感光体ドラムが帯電されると、露光部が未露光部と比較して低く帯電するため、図13に示すように、ポジ残像部の濃度段差が大きくなり、ポジ残像が発生する。
そのため、長期使用でも帯電電位V0の上昇を抑制し、ポジ残像の発生を抑制するためには、感光体ドラムの摩耗特性を良好にする必要がある。
しかし、感光体ドラムの摩耗が少なすぎると画像形成ユニット内で発生するオゾンによる感光層劣化が進行し、電気特性を著しく悪化させてしまう。
評価実験は、沖データ社製カラープリンタC531dnの図2に示す画像形成ユニット9の感光体ドラム1のみを変更した本実施例の画像形成ユニット9で行った。実験で使用した感光体ドラム1の条件は以下のとおりである。
(評価条件)
マルテンス硬度 120〜240MPa(N/mm2)
露光後電位 −30V〜−120V
(前提条件)
スクラッチ残留深さが50〜100nmの範囲であるもの
(印刷試験条件)
印刷速度:A4縦方向26ppm(枚/分)相当
1日の連続印刷枚数:1500枚(この印刷を10日間行い、計15000枚を印刷、印刷モードは1印刷ジョブ当たり3枚の連続印刷とした)
連続印刷時の印刷パターン:印刷領域が0.3%の印刷パターン(未露光部分の面積を大きくすることで正帯電の外添剤が感光体ドラム1の表面に付着しやすい状態にする)
帯電ローラの印加電圧:−1040V
環境:温度24℃、相対湿度50%
このように、マルテンス硬度および露光後電位を変化させた感光体ドラム1で評価実験を行った。
本評価実験では、感光体ドラム周期のポジ残像のレベルと、帯電ローラへの外添剤付着の影響とを確認するため、1日1500枚の連続印刷を行う前と、連続印刷を行った後に、図9に示すボールド文字126およびハーフトーンのパターン127を印刷媒体107前面に配したテストパターンの印刷を行った。ハーフトーンを形成するドットの面積比率は30%とした。
本評価において、連続印刷前と連続印刷後で感光体ドラム周期のポジ残像(図10における残像部131と背景部132)の印刷濃度段差が0.007以下を維持しているとき、良好と判定する。なお、印刷濃度が0.007以下であれば残像が目視で目立たないレベルである。
本評価実験を行った結果を図14および図15に示す。図14および図15において、良好と判定されたものは「〇」、良好と判定されなかったものは「×」としている。なお、図14は評価結果を表す表であり、図15は評価結果を表すグラフである。
なお、図14に示す「ポジ残像」は連続印刷前のポジ残像の評価であり、「評価試験連続後ポジ残像」は連続印刷後ポジ残像の評価である。また、「紙面汚れ」はテストパターンの印刷で紙面に汚れが発生したか否かを目視で確認した。さらに、「オゾン劣化」はテストパターンの印刷で画像に乱れ(例えば、にじんだ画像)が発生したか否かを目視で確認した。
図14および図15に示すように、露光後電位VLが−65〜−100Vの間では、現像バイアスが高めに設定されるため、トナーと現像ローラ間の反発力が高まり、現像効率が高くなる。そのため、感光体ドラム表面に付着した外添剤によるトナー現像効率の低下を小さくすることができ、ポジ残像の発生を抑制することができる。
また、図14および図15に示すように、マルテンス硬度が170MPaより高い場合、連続印刷を続けることにより感光層が摩耗し、膜厚がより薄くなり、表面電位が上昇するため、ポジ残像が悪化する。また、マルテンス硬度が130MPaより低い場合、感光層オゾン劣化による濃度低下が発生したため、好適ではない。
また、現像バイアス電位差ΔVを0〜200Vの間で変化させて上記の評価実験を行った。
図16は本評価実験において現像バイアス電位差ΔVの良好範囲を表す表である。なお、現像バイアス電位差ΔVは、現像バイアスの電位と感光体ドラムの露光後電位VLの電位差を示し、また表中「〇」は良好、「×」は不良を示している。
図16より電位差ΔVは、露光後電位VLが−60V、−80V、−100Vの各電位において、60〜140Vが良好範囲であり、その良好範囲であると画像の不具合がなく、外添剤起因のポジ残像を抑制することができる。
現像バイアス電位差ΔVが60Vより小さい場合、現像ローラとトナー間の反発力が弱く、外添剤付着部によるトナー現像効率が低下し、その影響を受けてポジ残像が発生した。
一方、現像バイアス電位差ΔVが140Vより大きい場合、現像ローラとトナー間の反発力が強くなりすぎ、非現像部にもトナーが現像され、紙面の汚れが発生した。
以上の評価結果により、感光体ドラムの感光層表面のスクラッチ後残留深さが50nm以上、100nm以下であり、感光体ドラムの感光層表面のマルテンス硬度が130MPa以上、170MPa以下であり、感光体ドラムの露光後電位VLが−65V以下、−100V以上である場合、トナーの外添剤に起因する感光体ドラム周期のポジ残像の発生を長期間にわたって抑制することができる。したがって、画像品質の低下を抑制することができる。
さらに、感光体ドラムの露光後電位が−65V以下、−100V以上において、現像ローラの現像バイアスと感光体ドラムの露光後電位の電位差ΔVが60V以上、140V以下の場合、トナーの外添剤に起因する感光体ドラム周期のポジ残像の発生を長期間にわたって抑制することができる。
このように、本実施例では、感光体ドラムの感光層表面のスクラッチ後残留深さを50nm以上、100nm以下とし、感光体ドラムの感光層表面のマルテンス硬度を130MPa以上、170MPa以下にしたことにより、感光体ドラムの耐久性を高くすることができるとともに、感光体ドラムの感光層の膜厚の減少による帯電電位V0の上昇を抑え、ポジ残像の発生を抑制する。
また、感光体ドラムの露光後電位VLを−65V以下、−100V以上(帯電電位V0は、−500V)とすることにより、現像バイアスを高めに設定することができるようになり、トナーと現像ローラの反発力を高め、ハーフトーン上の現像効率を高めることができる。したがって、外添剤の付着部と未付着部での現像効率の差を小さくすることができる。
さらに、現像バイアスと感光体ドラムの露光後電位の電位差を60V以上、140V以下とすることにより、画像の不具合がなく、外添剤起因のポジ残像を抑制することができる。
以上説明したように、本実施例では、感光体ドラムの感光層表面のスクラッチ後残留深さが50nm以上、100nm以下であり、感光体ドラムの感光層表面のマルテンス硬度が130MPa以上、170MPa以下であり、感光体ドラムの露光後電位が−65V以下、−100V以上としたことにより、画像品質の低下を抑制することができるという効果が得られる。
なお、本実施例では、画像形成装置を直接転写方式のプリンタとして説明したが、それに限られることなく、中間転写体を用いた中間転写方式のプリンタとしても良い。また、画像形成装置をプリンタとして説明したが、複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)等としても良い。