以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.現像装置(ドラム装置を含む。)
1−1.全体構成
1−2.感光体ドラムの詳細な構成
1−3.クリーニングブレードの詳細な構成
1−4.感光体ドラムの物性
1−5.クリーニングブレードの物性
1−6.使用態様
1−7.動作
1−8.作用および効果
2.画像形成装置
2−1.構成
2−2.動作
2−3.作用および効果
3.変形例
<1.現像装置(ドラム装置を含む。)>
まず、本発明の一実施形態の現像装置に関して説明する。
ここで説明する現像装置は、例えば、現像処理、すなわち静電潜像に現像剤を付着させる処理を行うために、電子写真方式のフルカラープリンタなどに用いられる。ただし、現像装置の使用用途は、上記した電子写真方式のフルカラープリンタに限られない。
なお、本発明の一実施形態のドラム装置は、ここで説明する現像装置の一部を構成するため、そのドラム装置に関しては、以下で併せて説明する。
<1−1.全体構成>
図1は、現像装置の平面構成を表している。
この現像装置は、例えば、図1に示したように、ドラム部100と、そのドラム部100部を用いて現像処理を行う現像処理部200とを含んでいる。
[ドラム部]
ドラム部100は、本発明の一実施形態のドラム装置であり、例えば、感光体ドラム101を備えている。
感光体ドラム101は、主に、静電潜像を形成するために用いられる。この感光体ドラム101は、例えば、図1の紙面と交差する方向に延在する回転体(有機系感光体)であり、その方向に延在する回転軸を中心として回転可能である。なお、感光ドラム101の詳細な構成に関しては、後述する(図2および図3参照。)。
ただし、ドラム部100は、上記した感光体ドラム101と共に、他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の構成要素の種類は、特に限定されないが、例えば、帯電ローラ102およびクリーニングブレード103などである。
帯電ローラ102は、主に、感光体ドラム101の表面に静電潜像を形成可能にするために、その感光体ドラム101の表面を帯電させる。この帯電ローラ102は、例えば、感光体ドラム101の延在方向と同様の方向に延在する回転体であり、その感光体ドラム10と同様に回転可能である。
具体的には、帯電ローラ102は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを含んでいる。この帯電ローラ102は、感光体ドラム101の表面を帯電させるために、その感光体ドラム101に圧接されている。
クリーニングブレード103は、主に、感光体ドラム101の表面に残留した不要な現像剤などを掻き取る板状部材であり、その感光体ドラム101の延在方向と同様の方向に延在している。このクリーニングブレード103は、上記した不要な現像剤などを掻き取るために、感光体ドラム101に圧接されている。なお、クリーニングブレード103の詳細な構成に関しては、後述する(図4参照。)。
[現像処理部]
現像処理部200は、例えば、現像ローラ201を含んでいる。
現像ローラ201は、主に、現像剤を担持すると共に、感光体ドラム101の表面に形成された静電潜像に現像剤を付着させる現像体である。この現像ローラ201は、例えば、感光体ドラム101の延在方向と同様の方向に延在する回転体であり、その感光体ドラム101と同様に回転可能である。具体的には、現像ローラ201は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性ウレタンゴム層とを含んでいる。
ただし、現像処理部200は、上記した現像ローラ201と共に、他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の構成要素の種類は、特に限定されないが、例えば、供給ローラ202および現像ブレード203などである。
供給ローラ202は、主に、現像ローラ201の表面に現像剤を供給する。この供給ローラ202は、例えば、感光体ドラム101の延在方向と同様の方向に延在する回転体であり、その感光体ドラム101と同様に回転可能である。具体的には、供給ローラ202は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性発泡シリコンスポンジ層とを含んでいる。この供給ローラ202は、現像ローラ201の表面に現像剤を供給するために、その現像ローラ201に圧接されている。
現像ブレード203は、主に、現像ローラ201の表面に供給された現像剤の厚さを制御する。この現像ブレード203は、例えば、感光体ドラム101の延在方向と同様の方向に延在していると共に、現像ローラ201から所定の間隔を隔てた位置に配置されている。現像ローラ201と現像ブレード203との間隔に基づいて、現像剤の厚さが制御される。また、現像ブレード203は、例えば、ステンレスなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
<1−2.感光体ドラムの詳細な構成>
図2は、感光体ドラム101の斜視構成を表していると共に、図3は、感光体ドラム101のうちの一部の断面構成を表している。ただし、図3では、図2に示した部分Aの断面を拡大している。
感光体ドラム101は、例えば、図2に示したように、ドラム本体110と、そのドラム本体110の一端部に取り付けられたドラムギア120と、そのドラム本体110の他端部に取り付けられたドラムフランジ130とを含んでいる。
[ドラム本体]
ドラム本体110は、例えば、円筒状の導電性支持体である。このドラム本体110は、例えば、図3に示したように、円筒状の支持体111と、その支持体111の外周面を被覆する下引き層112と、その下引き層112の表面を被覆する感光層113とを含んでいる。
[支持体]
支持体111は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属パイプである。
[下引き層]
下引き層112は、主に、感光層113の接着性およびブロッキング性などを向上させる。この下引き層112は、例えば、高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、下引き層112は、単層でもよいし、多層でもよい。
高分子化合物は、例えば、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂(例えば、ニトロセルロースなど)、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、有機ジルコニウム化合物(例えば、ジルコニウムアルコキシドなど)、チタニルキレート化合物、有機チタニル化合物(例えば、チタニルアルコキシドなど)およびシランカップリング剤などである。これらの高分子化合物は、硬化剤を用いて硬化反応されてもよい。
中でも、高分子化合物は、アルコール可溶性の共重合体ポリアミドおよび変性ポリアミドなどであることが好ましい。優れた溶解性および分散性が得られるため、塗布法を用いて下引き層112を形成しやすいからである。
ただし、下引き層112は、上記した高分子化合物と共に、他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の構成要素の種類は、特に限定されないが、例えば、複数の粒子などである。
複数の粒子は、例えば、高分子化合物中に分散されることにより、その高分子化合物により保持されている。具体的には、複数の粒子のそれぞれは、金属酸化物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この金属酸化物は、例えば、1種類の金属元素だけを構成元素として含んでいてもよいし、2種類以上の金属元素を構成元素として含んでいてもよい。
1種類の金属元素だけを構成元素として含んでいる金属酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛および酸化鉄などである。2種類以上の金属元素を構成元素として含んでいる金属酸化物は、例えば、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウムおよびチタン酸バリウムなどである。
中でも、金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどであることが好ましく、酸化チタンであることがより好ましい。誘電率が高いと共に、分散性に優れているからである。この酸化チタンの表面は、例えば、無機酸化物および有機酸化物などのうちのいずれか1種類または2種類以上により被覆されていてもよい。無機酸化物は、例えば、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウムおよび酸化ケイ素などである。有機酸化物は、例えば、ステアリン酸、ポリオールおよびシリコーンなどである。
なお、下引き層112は、例えば、有機溶剤などの溶媒により高分子化合物などが溶解または分散された溶液を支持体111の外周面に塗布したのち、その溶液を乾燥させることにより形成される。この溶媒の種類は、例えば、後述する感光層113を形成するために用いられる溶媒の種類と同様である。
[感光層]
感光層113は、例えば、単層構造または多層構造を有している。
具体的には、単層構造を有する感光層113は、例えば、電荷発生材料のうちのいずれか1種類または2種類以上と、電荷輸送材料のうちのいずれか1種類または2種類以上とを含んでいる。すなわち、単層構造を有する感光層113は、電荷発生層兼電荷輸送層である。
単層構造を有する感光層113の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm、より好ましくは5μm〜10μmである。
ただし、単層構造を有する感光層113は、上記した電荷発生材料および電荷輸送材料と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、電荷発生材料および電荷輸送材料などを分散させると共に保持する高分子化合物などである。
電荷発生材料は、例えば、電荷発生物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この電荷発生物質は、単独で用いられてもよいし、染顔料のうちのいずれか1種類または2種類以上と混合された状態で用いられてもよい。電荷発生物質の種類は、特に限定されないが、例えば、無機系光導電材料および有機系光導電材料などである。無機系光導電材料は、例えば、セレニウム、セレニウム合金および硫化カドミウムなどである。有機系光導電材料は、例えば、有機顔料などである。有機顔料は、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料およびベンズイミダゾール顔料などである。中でも、電荷発生物質は、有機系光導電材料であることが好ましく、有機顔料などであることがより好ましい。また、混合状態で用いられる電荷発生物質は、光感度などの観点から、フタロシアニン顔料およびアゾ顔料などであることが好ましい。電荷発生物質として有機顔料を用いる場合には、例えば、一般的に、有機顔料の微粒子と共に高分子化合物(各種のバインダ樹脂)を含む分散層が用いられる。この分散層中では、有機顔料の微粒子がバインダ樹脂を介して結着されている。分散層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm〜10μm、好ましくは0.15μm〜0.6μmである。
電荷輸送材料は、例えば、電荷輸送物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電荷輸送物質の種類は、特に限定されないが、例えば、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、アニリン誘導体およびエナミン誘導体などである。この他、電荷輸送物質は、例えば、上記した芳香族アミン誘導体のうちのいずれか1種類または2種類以上が結合された化合物でもよい。また、電荷輸送物質は、例えば、上記した芳香族アミン誘導体などからなる基を主鎖または側鎖として有する重合体(電子供与性材料)などでもよい。中でも、電荷輸送物質は、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、エナミン誘導体およびそれらのうちのいずれか1種類または2種類以上が結合された化合物であることが好ましく、芳香族アミン誘導体とエナミン誘導体とが結合された化合物であることがより好ましい。
高分子化合物は、例えば、ポリビニルアセタール係樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル係ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂および有機光導電性樹脂などである。塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体および塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体などである。有機光導電性樹脂は、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンおよびポリビニルペリレンなどである。
なお、単層構造を有する感光層113は、例えば、塗布法を用いて形成される。この場合には、例えば、有機溶剤などの溶媒により電荷発生材料および電荷輸送材料などが溶解または分散された溶液を下引き層112の表面に塗布したのち、その溶液を乾燥させる。
この溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、飽和脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン化芳香族系溶媒、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、脂肪族多価アルコール類、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、含窒素化合物、鉱油および水などである。
飽和脂肪族系溶媒は、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタンおよびノナンなどである。芳香族系溶媒は、例えば、トルエン、キシレンおよびアニソールなどである。ハロゲン化芳香族系溶媒は、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびクロロナフタレンなどである。アミド系溶媒は、例えば、ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンなどである。アルコール系溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびベンジルアルコールなどである。脂肪族多価アルコール類は、例えば、グリセリンおよびポリエチレングリコールなどである。ケトン系溶媒は、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンおよび4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどである。エステル系溶媒は、例えば、ギ酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸n−ブチルなどである。ハロゲン化炭化水素系溶媒は、例えば、塩化メチレン、クロロホルムおよび1,2−ジクロロエタンなどである。エーテル系溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブおよびエチルセルソルブなどである。非プロトン性極性溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォランおよびヘキサメチルリン酸トリアミドなどである。含窒素化合物は、例えば、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミンおよびトリエチルアミンなどである。鉱油は、例えば、リグロインなどである。
感光層113を形成するために用いられる塗布法の種類は、任意のコーティング法のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。具体的には、塗布法は、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラコーティング法、エアーナイフコーティング法およびカーテンコーティング法などである。
塗布後の乾燥条件は、特に限定されない。乾燥方法としては、例えば、常温(25℃)における指触乾燥ののち、30℃〜200℃で加熱乾燥する。乾燥時間は、例えば、1分間〜2時間である。乾燥時には、無風でもよいし、高温送風してもよい。加熱乾燥する場合には、加熱温度を一定にしてもよいし、加熱温度を変化させてもよい。
一方、多層構造を有する感光層113は、例えば、電荷発生層と、その電荷発生層の上に形成された電荷輸送層とを含んでいる。すなわち、多層構造を有する感光層113では、下引き層112に近い側に電荷発生層が配置されていると共に、その下引き層112から遠い側に電荷輸送層が配置されている。電荷発生層は、電荷発生材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいると共に、電荷輸送層は、電荷輸送材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電荷発生材料および電荷輸送材料のそれぞれに関する詳細は、例えば、単層構造を有する感光層113に関して説明した場合と同様である。
電荷発生層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm〜10μmである。電荷輸送層の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm〜50μmである。多層構造を有する感光層113の厚さ(総厚)は、特に限定されないが、例えば、5μm〜50μm、好ましくは10μm〜45μm、より好ましくは10μm〜30μmである。
ただし、電荷発生層は、上記した電荷発生材料と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。また、電荷輸送層は、上記した電荷輸送材料と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、電荷発生材料または電荷輸送材料などを分散させると共に保持する高分子化合物などである。高分子化合物に関する詳細は、例えば、単層構造を有する感光層113に関して説明した場合と同様である。
なお、多層構造を有する感光層113は、例えば、塗布法を用いて形成される。この場合には、例えば、有機溶剤などの溶媒により電荷発生材料などが溶解または分散された溶液を下引き層112の表面に塗布したのち、その溶液を乾燥させることにより、電荷発生層を形成する。こののち、例えば、有機溶剤などの溶媒により電荷輸送材料などが溶解または分散された溶液を電荷発生層の表面に塗布したのち、その溶液を乾燥させることにより、電荷輸送層を形成する。溶媒の種類、塗布法の種類および塗布後の乾燥条件などに関する詳細は、例えば、単層構造を有する感光層113の形成方法に関して説明した場合と同様である。
<1−3.クリーニングブレードの詳細な構成>
図4は、クリーニングブレード103の斜視構成を表している。なお、図4では、図3において感光体ドラム101を見ている方向と同じ方向から見たクリーニングブレード101の状態を示している。
クリーニングブレード103は、例えば、図4に示したように、感光体ドラム101に圧接される先端(圧接)部103Aと、その先端部103Aを支持する支持部103Bとを含んでいる。
[先端部]
先端部103Aは、ポリウレタンなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。このポリウレタンは、例えば、ポリオールのうちのいずれか1種類または2種類以上と、イソシアネートのうちのいずれか1種類または2種類以上と、硬化剤のうちのいずれか1種類または2種類以上とを用いて製造される。
ポリオールの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートおよびポリエチレンブチレンアジペートなどである。
イソシアネートの種類は、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよびそれらの異性体などである。
硬化剤の種類は、特に限定されないが、例えば、高分子量ポリオールと低分子量ジオールと低分子量トリオールとの混合物などである。高分子ポリオールの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンアジペート(重量平均分子量=2000)などである。低分子量ジオールの種類は、特に限定されないが、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールなどである。低分子量トリオールの種類は、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパンおよびトリイソプロパノールアミンなどである。
高分子化合物としてポリウレタンを用いる場合における先端部103Aの製造方法は、例えば、以下の通りである。最初に、脱水処理されたポリオールとイソシアネートとを混合したのち、その混合物を反応(反応温度=70℃〜140℃,反応時間=10分間〜120分間)させることにより、プレポリマーを得る。続いて、プレポリマーと硬化剤とを混合したのち、その混合物を遠心成型機の金型(予熱温度=150℃)に注入する。続いて、混合物を硬化反応(反応時間=25分間〜50分間)させることにより、硬化物(ポリウレタン)を得る。最後に、金型から硬化物を取り出したのち、その硬化物を短冊状に切断することにより、先端部103Aが完成する。
なお、先端部103Aの状態は、特に限定されないが、中でも、tanδ(1Hz)のピーク温度は、10℃以上であることが好ましい。tanδのピーク温度よりも低温側では高分子化合物がガラス状態になると共に、そのtanδのピーク温度よりも高温側では高分子化合物がゴム状態になるからである。先端部103Aの形成材料として、ゴム状態である高分子化合物を用いることにより、その先端部103Aが感光体ドラム101に追随しやすくなるため、クリーニングブレード103が不要な現像剤などを掻き取りやすくなる。
[支持部]
支持部103Bは、例えば、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)などの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
<1−4.感光体ドラムの物性>
この現像装置では、感光体ドラム101の表面近傍部分の変形特性を適正化するために、その感光体ドラム10は、特定の物性を有している。
[第1条件]
具体的には、感光体ドラム10の物性は、以下で説明する第1条件を満たしている。すなわち、下記の<試験条件1>において感光体ドラム101のスクラッチ試験を行うと、そのスクラッチ試験により測定されるスクラッチ残留深さは、110nm以下である。
<試験条件1>
試験環境の温度=25℃,試験環境の湿度=50%,試験用の圧子=プリマウント型バーコビッチ圧子,スクラッチ方向=水平方向,スクラッチ速度=20μm/秒,初期荷重=0mN,最大到達荷重=4mN,スクラッチ残留深さの測定時の荷重=1.9mN
ここで説明する感光体ドラム101に関するスクラッチ試験は、上記したように、その感光体ドラム101のうちの最上層(感光層113)に関して行われる。このため、感光層113が単層構造を有している場合には、スクラッチ試験において電荷発生層兼電荷輸送層が削られるため、その電荷発生層兼電荷輸送層に関してスクラッチ残留深さが測定される。一方、感光層113が多層構造を有している場合には、スクラッチ試験において電荷輸送層が削られるため、その電荷輸送層に関してスクラッチ残留深さが測定される。
感光体ドラム101の物性が第1条件を満たしているのは、主に、感光体ドラム101の変形時における復元力の観点から、その感光体ドラム101の表面近傍部分の変形特性が適正化されるからである。これにより、フィルミングの発生に起因して感光体ドラム101の表面に異物が付着しても、その異物がクリーニングブレード103により掻き取られるやすくなるため、画像中において白抜けが発生しにくくなる。この感光体ドラム101の物性が第1条件を満たしている理由の詳細に関しては、後述する(図15および図16参照。)。
[スクラッチ試験]
上記したスクラッチ試験に関する詳細は、例えば、以下の通りである。図5は、スクラッチ試験の手順を説明するために、図2に対応する斜視構成を表している。
スクラッチ試験を行う場合には、最初に、例えば、図5に示したように、温度=25℃および湿度=50%の試験環境中において、ホルダ300を用いて感光体ドラム101を固定すると共に、その感光体ドラム101(感光層113)に対向するように圧子301を配置する。
ホルダ300は、感光体ドラム101を挟んで保持(固定)する治具であり、その感光体ドラム101を保持しながら水平方向(感光体ドラム101の延在方向に沿った方向)に移動可能である。圧子301としては、プリマウント型バーコビッチ圧子(対面角=145°)を用いる。このプリマウント型バーコビッチ圧子の材質は、例えば、ダイヤモンドである。
続いて、感光体ドラム101に対して圧子301を押し当てながら、ホルダ300を水平方向に移動させる。
この場合には、ホルダ300の移動速度(スクラッチ速度)を20μm/秒に設定すると共に、感光体ドラム101に対して圧子301を押し当てる力(荷重)を0mN(初期荷重)から4mN(最大到達荷重)まで次第に増加させる。この他、例えば、許容熱移動率を1nm/秒に設定すると共に、ホルダ300の移動距離(スクラッチ距離)を400μmに設定する。なお、荷重を初期荷重から最大到達荷重まで増加させる速度(mN/秒)は、感光体ドラム101に対して圧子301が押し当てられている間に荷重が初期荷重から最大到達荷重まで到達することができる速度であれば、任意でよい。
最後に、荷重が1.9mNに到達した時点において、感光体ドラム101から圧子301を離間させたのち、その圧子301が押し当てられていた場所において感光体ドラム101に形成された窪みの深さ(スクラッチ残留深さ)を測定する。
このスクラッチ試験を行うことにより、スクラッチ残留深さを測定するためには、例えば、微小硬度計を用いればよい。この微小硬度計は、例えば、Aglient Technologies社製の微小硬度計Nano Indenre G200 である。微小高度計を用いることにより、スクラッチ残留深さを自動的に測定することができる。
微小硬度計を用いる場合には、例えば、以下の手順により、スクラッチ残留深さを測定することができる。図6は、スクラッチ試験における荷重の設定手順を説明するためのグラフであると共に、図7は、スクラッチ試験の試験結果(スクラッチ深さのプロファイル)表すグラフである。
微小硬度計を用いてスクラッチ試験を行う場合には、最初に、例えば、図6に示したように、圧子301に付与される荷重を設定する。図6において、横軸は、感光体ドラム101の表面上の位置(スクラッチ位置:μm)を示していると共に、縦軸は、圧子301に付与される荷重(mN)を示している。
図6では、例えば、感光体ドラム101の表面上において、スクラッチ位置=0μmからスクラッチ位置=500μmまで圧子301が移動する場合において、そのスクラッチ位置=500μmにおいて荷重が最大(=4mN)になる場合を示している。図6から明らかなように、スクラッチ深さは、スクラッチ位置が大きくなるにしたがって次第に増加する。
なお、図6において、スクラッチ位置=約90μm以降においてスクラッチ荷重が0mNよりも大きくなっているのは、例えば、感光体ドラム101が水平方向に移動しながら、その感光体ドラム101に対して圧子301が次第に接近する結果、スクラッチ位置=約90μmにおいて圧子301が感光体ドラム101に接触することを意味している。
また、図6において、スクラッチ位置=500μmにおいてスクラッチ荷重が4mNから0mNまで減少しているのは、例えば、その位置において感光体ドラム101から圧子301が次第に離間されるため、荷重が次第に減少することを意味している。
図6では、例えば、スクラッチ位置=約280μmにおいて、スクラッチ荷重がスクラッチ残留深さを測定すべき状態(スクラッチ荷重=1.9mN)に到達する場合を示している。
続いて、微小硬度計を用いてスクラッチ試験を行うことにより、図7に示したように、スクラッチ残留深さのプロファイルが得られる。図7において、横軸は、スクラッチ位置(μm)を示していると共に、縦軸は、スクラッチ深さ(nm)を示している。
図7では、例えば、上記したように、スクラッチ位置=約90μmにおいて圧子301が感光体ドラム101に接触したため、そのスクラッチ位置=約90μm以降においてスクラッチ深さが次第に大きくなっている。
微小硬度計を用いたスクラッチ試験では、最初に、圧子301が感光体ドラム101に接触した際に、スクラッチ深さを測定するための基準深さ(スクラッチ深さD1=0μm)を測定(特定)する。このスクラッチ深さD1を測定する際の荷重は、例えば、0.03mNとする。
続いて、圧子301を用いて感光体ドラム101(感光層113)に傷を付けることにより、その圧子301により感光体ドラム101の表面に形成された窪みの深さ(スクラッチ深さD2)を測定する。このスクラッチ深さD2は、感光体ドラム101と圧子301とが接触している状態において測定される窪みの深さである。
続いて、スクラッチ深さD2を測定した場所において、スクラッチ荷重=0.03mNになるまで圧子301を感光体ドラム101から離間させることにより、その圧子301の離間直後における窪みの深さ(スクラッチ深さD3)を測定する。
この場合には、スクラッチ深さD2を測定したのち、スクラッチ深さD3を測定するために圧子301を感光体ドラム101から離間させると、その圧子301に起因する外力が除去されたことに起因して、感光体ドラム101が復元する。これにより、窪みの深さが小さくなるため、スクラッチ深さD3はスクラッチ深さD2よりも小さくなる。
続いて、感光体ドラム101を水平方向に移動させると共に、圧子301に付与される荷重を次第に増加させながら、上記したスクラッチ深さD2,D3の測定手順を繰り返すことにより、図7に示したスクラッチ深さのプロファイルが完成する。
図7では、例えば、図6を参照しながら説明したように、スクラッチ位置=約280μmにおいて、スクラッチ荷重がスクラッチ残留深さを測定すべき状態(スクラッチ荷重=1.9mN)に到達している。
最後に、スクラッチ深さのプロファイルに基づいて、スクラッチ荷重が1.9mNに到達した際のスクラッチ深さD3(スクラッチ残留深さ)を特定する。これにより、スクラッチ残留深さを測定することができる。
なお、スクラッチ残留深さを測定する際のスクラッチ荷重を1.9mNに設定している理由は、以下の通りである。
後述するように、フィルミングの発生に起因して感光体ドラム101の表面に異物が付着すると、クリーニングブレード103を用いて異物を掻き取ろうとした際に、そのクリーニングブレード103(先端部103A)に傷が発生する。この異物の粒径は、例えば、100μm以下である。クリーニングブレード103に傷が発生する場合には、そのクリーニングブレード103は、異物の存在に起因して、2次元的(線状態)ではなく1次元的(点状態)に負荷を受ける。
そこで、クリーニングブレード103の線圧に基づいて、そのクリーニングブレード103が1次元的に受ける荷重を見積もる。クリーニングブレード103の線圧=19gf/cmおよび異物の粒径=100μmとすると、クリーニングブレード103が受ける荷重は、下記の式(1)で表される計算により、1.9mNであると算出される。この荷重(=1.9mN)は、クリーニングブレード103と異物との接触点に発生する荷重であるため、感光体ドラム101と異物との接触点においても同様の荷重が発生すると考えられる。
荷重=19gf/cm×100μm×10-4cm×9,8mN/gf=1.88mN≒1.9mN ・・・(1)
すなわち、感光体ドラム101に対して1.9mNの荷重が付与される状態は、異物の存在に起因して感光体ドラム101に対して付与される荷重が最大になる状態であると考えられる。よって、感光体ドラム101の表面近傍部分の変形特性を適正化するために、言い替えれば、第1条件を既定するために、スクラッチ残留深さを測定する際のスクラッチ荷重を1.9mNに設定している。
[スクラッチ残留深さの調整方法]
スクラッチ残留深さを調整するためには、例えば、感光層113に含まれる高分子化合物の種類および組成などを変更すればよい。
[第2条件]
感光体ドラム101の物性が上記した第1条件を満たしている場合には、さらに、下記の第2条件を満たしていることが好ましい。具体的には、下記の<試験条件2>において感光体ドラム101の押し込み試験を行うと、その押し込み試験により測定されるマルテンス硬度は、100N/mm2 〜170N/mm2 である。
<試験条件2>
試験環境の温度=25℃,試験環境の湿度=50%,試験用の圧子=プリマウント型バーコビッチ圧子,最大荷重=4mN,負荷所要時間=30秒間,ピーク負荷保持時間=25秒間、徐荷所要時間=30秒間
ここで説明する感光体ドラム101に関する押し込み試験は、上記した感光体ドラム101に関するスクラッチ試験と同様に、その感光体ドラム101の最上層(感光層113)に関して行われる。すなわち、感光層113が単層構造を有している場合には、電荷発生層兼電荷輸送層に関してマルテンス硬度が測定されると共に、感光層113が多層構造を有している場合には、電荷輸送層に関してマルテンス硬度が測定される。
感光体ドラム101の物性が第2条件を満たしているのは、主に、感光体ドラム101の摩耗耐性の観点から、その感光体ドラム101の表面近傍部分の変形特性が適正化されるからである。これにより、感光体ドラム101の帯電不良が抑制されるため、画像中において印画汚れが発生しにくくなる。
詳細には、現像装置を繰り返して使用すると、感光体ドラム101と現像ローラ201などとの接触に起因して、その感光体ドラム101が現像ローラ201などにより継続的に擦られる。これにより、感光体ドラム101(感光層113)が摩耗するため、その感光層113の厚さが減少する。この場合には、感光層113の厚さが減少しすぎると、その感光層113が帯電ローラ102から付与される電荷を保持しにくくなるため、静電潜像の電位が低下することに起因して、その静電潜像に現像剤が付着されにくくなる。これにより、感光体ドラム101の表面では、静電潜像が形成されていない領域にまで意図せずに現像剤が付着しやすくなるため、画像中に印画汚れが発生し得る。
マルテンス硬度が170N/mm2 よりも大きい場合には、感光層113が硬すぎるため、その感光層113が弾性変形しにくくなる。よって、感光層113が摩耗しやすくなるため、印画汚れが発生しやすくなる。
これに対して、マルテンス硬度が170N/mm2 以下である場合には、感光層113が適度に軟らかいため、その感光層113が弾性変形しやすくなる。よって、感光層113が摩耗しにくくなるため、印画汚れが発生しにくくなる。
ただし、マルテンス硬度が100N/mm2 よりも小さい場合には、感光層113を形成する際に、その感光層113の形成材料(高分子化合物)として高分子量の高分子化合物を用いる必要が生じるため、塗布法を用いて感光層113を形成する際に、その高分子化合物が溶解または分散された溶液の粘度は高くなる。よって、塗布法を用いて感光層113を均一に形成(成膜)することが困難になるため、印画汚れを考慮する以前に、その感光層113を根本的に形成しにくくなる可能性がある。
よって、感光層113を容易かつ安定に形成しつつ、印画汚れが発生することを抑制するために、マルテンス硬度は、100N/mm2 〜170N/mm2 であることが好ましい。
[押し込み試験]
上記した押し込み試験に関する詳細は、例えば、以下の通りである。
押し込み試験を行う場合には、最初に、例えば、図5に示したように、温度=25℃および湿度=50%の試験環境中において、ホルダ300を用いて感光体ドラム101を固定すると共に、その感光体ドラム101に対向するように圧子301を配置する。この圧子301に関する詳細は、例えば、スクラッチ試験に関して説明した場合と同様である。
続いて、感光体ドラム101に対して圧子301を押し当てたのち、その感光体ドラム101から圧子301を離間させながら、その圧子301が押し当てられた場所において感光体ドラム101に形成された窪みの深さ(押し込み深さ)を測定する。
この場合には、感光体ドラム101に対して圧子301を押し当てる力(押し込み荷重)を4mN(最大荷重)まで増加させる。ただし、荷重が最大荷重に到達するまでに要する時間(負荷所要時間)を30秒間に設定すると共に、その荷重を除荷するために要する時間(徐荷所要時間)を30秒間に設定する。また、ピーク負荷保持時間を25秒間に設定する。
最後に、押し込み深さが最大になった際の押し込み荷重(最大押し込み荷重)を求めたのち、下記の式(2)で表される計算式に基づいて、マルテンス硬度(N/mm2 )を算出する。
マルテンス硬度(N/mm2 )=押し込み深さが最大になった際の押し込み荷重(N)/押し込み深さが最大になった際の押し込み荷重下における圧子301の表面積(mm2 ) ・・・(2)
この押し込み試験を行うことにより、マルテンス硬度を測定するためには、例えば、スクラッチ試験を行った場合と同様に、微小硬度計を用いればよい。この微小硬度計の機種は、例えば、スクラッチ試験を行うために用いた機種と同様である。微小高度計を用いることにより、押し込み深さが最大になる際の押し込み荷重(最大押し込み荷重)を自動的に測定することができるため、上記したように、式(2)に示した計算式を用いてマルテンス硬度を算出することができる。
図8は、押し込み試験の試験結果(押し込み深さのプロファイル)を表すグラフである。図8において、横軸は、押し込み深さ(μm)を示していると共に、縦軸は、荷重(mN)を示している。
図8から明らかなように、感光体ドラム101に対して圧子301を押し当てたのち、その感光体ドラム101から圧子301を離間させると、押し込み深さは、荷重に応じて変化する。具体的には、押し込み深さは、荷重が増加したのちに減少すると、押し込み深さD4から押し込み深さD5まで増加したのち、押し込み深さD6まで減少する。なお、圧子301が押し当てられた場所において感光体ドラム101は復元しようとするが、その圧子301が離間されても感光体ドラム101は初期状態(圧子301が押し当てられる前の状態)まで復元しきれないため、押し込み深さD6は、押し込み深さD5よりも大きくなる。
マルテンス硬度を求めるためには、押し込み深さのプロファイルに基づいて、押し込み深さの最大値(押し込み深さD5)を求めたのち、その押し込み深さD5に対応する荷重を求める。図8では、例えば、押し込み深さが最大になった際の荷重が約6.5mNである場合を示している。よって、上記した式(1)に示した計算式に基づいて、マルテンス硬度を算出することができる。
[マルテンス硬度の調整方法]
マルテンス硬度を調整する方法は、特に限定されない。
具体的には、マルテンス硬度を調整するためには、例えば、感光層113の形成材料(高分子化合物)の粘度平均分子量を変更すればよい。すなわち、高分子化合物の粘度平均分子量を大きくすると、マルテンス硬度が高くなると共に、高分子化合物の粘度平均分子量を小さくすると、マルテンス硬度が低くなる。塗布法を用いて感光層113を形成する場合には、例えば、高分子化合物が溶解または分散された溶液の調製時において、その高分子化合物の粘度平均分子量を調整することができる。
ここで、例えば、高分子化合物としてポリアリレート樹脂を用いる場合には、粘度平均分子量を10000〜300000、好ましくは20000〜100000とすることにより、100N/mm2 〜170N/mm2 となるようにマルテンス硬度を制御することができる。逆に言えば、粘度平均分子量を10000よりも小さくすると、マルテンス硬度が100N/mm2 よりも低くなると共に、粘度平均分子量を100000よりも大きくすると、マルテンス硬度が170N/mm2 よりも高くなる。
なお、粘度平均分子量が10000よりも小さいと、マルテンス硬度が100N/mm2 よりも低くなるだけでなく、感光層113の物理的強度が低下し得る。また、粘度平均分子量が100000よりも大きいと、マルテンス硬度が170N/mm2 よりも高くなりやすいだけでなく、塗布法を用いて所望の厚さとなるように感光層113を形成しにくくなる可能性がある。
ポリアリレート樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、下記の式(1)により表される。式(1)に示したポリアリレート樹脂は、例えば、2価のヒドロキシアリール成分とジカルボン酸成分とを用いて製造される。
(X1〜X4のそれぞれは、アリーレン基および置換基を有するアリーレン基のうちのいずれかである。Yは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−CR1R2−および−O−R3−O−のうちのいずれかである。Zは、酸素原子、硫黄原子および−CR4R5−のうちのいずれかである。kは、0〜5の整数のうちのいずれかである。R1およびR2のそれぞれは、水素原子(H−)、アルキル基およびアリール基のうちのいずれかであり、R1とR2とは、互いに結合されることにより環を形成していてもよい。R3は、アルキレン基、アリーレン基および−R6−X5−R7−のうちのいずれかである。R6およびR7のそれぞれは、アルキレン基であり、X5は、アリーレン基である。R4およびR5のそれぞれは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基およびアリール基のうちのいずれかであり、R4とR5とは、互いに結合されることにより環を形成していてもよい。ただし、YおよびZのそれぞれはなくてもよい。k=0である場合、X3およびX4のうちのいずれか一方は、置換基を有するアリーレン基である。)
置換基の種類は、特に限定されない。アリーレン基の種類は、特に限定されないが、例えば、フェニレン基などである。アルキル基の種類は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基およびプロピル基などである。アリール基の種類は、特に限定されないが、例えば、フェニル基などである。アルキレン基の種類は、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基およびプロピレン基などである。アルコキシ基の種類は、特に限定されないが、例えば、メトキシ基およびエトキシ基などである。Yがない場合には、X1とX2とが互いに結合されると共に、Zがない場合には、X3とX4とが互いに結合される。
また、マルテンス硬度を調整するためには、例えば、特定の条件を満たす添加剤を感光層113中に含有させればよい。この添加剤は、例えば、重量平均分子量が500以下である低分子量化合物などである。感光層113中に低分子量化合物を含有させることにより、電気特性および弾性変形率などに大きな影響を及ぼさずに、マルテンス硬度を変化させることができる。低分子量化合物の重量平均分子量は、500以下であれば、特に限定されないが、中でも、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましい。低分子量化合物の重量平均分子量が小さくなると、感光層113中の高分子化合物に対する低分子量化合物の相溶性が向上するため、マルテンス硬度が高くなる。
低分子量化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、下記の式(2)により表される。
(R11およびR12のそれぞれは、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アラルキル基、置換基を有するアラルキル基、アシル基、置換基を有するアシル基、シクロアルキル基および置換基を有するシクロアルキル基のうちのいずれかである。Wは、窒素原子以外のヘテロ原子である。nは、1〜8の整数のうちのいずれかである。)
アルキル基、アリール基および置換基のそれぞれに関する詳細は、例えば、式(1)に示したポリアリレート樹脂に関して説明した場合と同様である。アラルキル基は、例えば、ベンジル基などである。アシル基は、例えば、アセチル基などである。シクロアルキル基は、例えば、シクロヘキシル基などである。ヘテロ原子は、例えば、酸素原子(O)および硫黄原子(S)などである。
アルキル基および置換基を有するアルキル基のそれぞれの炭素数は、特に限定されないが、例えば、6〜30である。アリール基および置換基を有するアリール基のそれぞれの炭素数は、特に限定されないが、例えば、6〜30である。アラルキル基および置換基を有するアラルキル基のそれぞれの炭素数は、特に限定されないが、例えば、6〜30である。アシル基および置換基を有するアシル基のそれぞれの炭素数は、特に限定されないが、例えば、6〜30である。シクロアルキル基および置換基を有するシクロアルキル基のそれぞれの炭素数は、特に限定されないが、例えば、3〜12である。
<1−5.クリーニングブレードの物性>
感光ドラム101の物性が上記した第1条件を満たしている場合には、さらに、クリーニングブレード103は、特定の物性を有していることが好ましい。
[第3条件]
具体的には、クリーニングブレード103の物性は、以下で説明する第3条件を満たしていることが好ましい。すなわち、下記の<試験条件3>において先端部103Aの押し込み試験を行うと、その押し込み試験により測定される表面ヤング率は、18MPa〜30MPaであると共に、同条件の押し込み試により測定される塑性変形量は、1N・mm〜4N・mmである。
<試験条件3>
試験環境の温度=25℃,試験環境の湿度=50%,試験用の圧子=プリマウント型バーコビッチ圧子,最大荷重=5mN,負荷所要時間=30秒間,ピーク負荷保持時間=25秒間、徐荷所要時間=30秒間
クリーニングブレード103の物性が第3条件を満たしているのは、主に、上記した感光体ドラム101の物性(第1条件)との関係において、先端部103Aの変形特性および摩耗特性などが適正化されるからである。これにより、フィルミングの発生に起因して感光体ドラム101の表面に異物が付着しても、クリーニングブレード103が異物をより掻き取りやすくなるため、画像中において白抜けがより発生しにくくなる。
詳細には、現像装置を使用すると、感光体ドラム101に対してクリーニングブレード103が接触するため、先端部103AにおいてStick-Slip現象が発生する。このStick-Slip現象とは、感光体ドラム101と先端部103Aとの接触面(摩擦面)において微視的な摩擦面の付着および滑りが繰り返されることに起因して誘発される自励振動現象である。Stick-Slip現象が発生すると、フィルミングの発生に起因して感光体ドラム10の表面に異物が付着しても、クリーニングブレード103が異物を掻き取りにくくなるため、画像中に白抜けが発生しやすくなる。
クリーニングブレード103の物性が第3条件を満たしていない場合には、先端部103Aの表面ヤング率が適正でないため、その先端部103Aが十分に硬くならない。この場合には、Stick-Slip現象が発生すると、振動運動に起因する先端部103Aの移動距離が大きくなるため、クリーニングブレード103が異物を掻き取りにくくなる。よって、フィルミングが発生すると、感光体ドラム103の表面に異物が残留しやすくなるため、白抜けが発生し得る。
しかも、先端部103Aの塑性変形量が適正でないため、Stick-Slip現象が発生すると、感光体ドラム101との接触(摩擦)に起因して先端部103Aが摩耗しやすくなる。よって、現像装置を繰り返して使用すると、クリーニングブレード103が異物をより掻き取りにくくなるため、白抜けが継続的に発生しやすくなる。
特に、先端部103Aが摩耗しやすいと、場合によっては先端部103Aが部分的に欠損する可能性もあるため、画像中の広範囲において白抜けが発生する可能性もある。
これに対して、クリーニングブレード103の物性が第3条件を満たしている場合には、先端部103Aの表面ヤング率が適正であるため、その先端部103Aが十分に硬くなる。この場合には、Stick-Slip現象が発生しても、振動運動に起因する先端部103Aの移動距離が小さくなるため、クリーニングブレード103が異物を掻き取りやすくなる。よって、フィルミングが発生しても、感光体ドラム101の表面に異物が残留しにくくなるため、白抜けが発生しにくくなる。
しかも、先端部103Aの塑性変形量が適正であるため、Stick-Slip現象が発生しても、感光体ドラム101との接触に起因して先端部103Aが摩耗しにくくなる。よって、現像装置を繰り返して使用しても、クリーニングブレード103が異物を掻き取りやすくなるため、白抜けが継続的に発生しにくくなる。この場合には、先端部103Aが部分的に欠損する可能性も低下するため、画像中の広範囲において白抜けが発生しにくくなる。
特に、クリーニングブレード103の物性が第3条件を満たしている場合には、先端部103Aの表面ヤング率が大きすぎないため、その先端部103Aの弾性が確保される。よって、先端部103Aが部分的に欠損する可能性は著しく低下するため、その先端部103Aの部分的欠損に起因して現像剤がクリーニングブレード103をすり抜ける現象は発生しにくくなる。
しかも、先端部103Aの塑性変形量が大きすぎないため、やはり、その先端部103Aの弾性が確保される。よって、感光体ドラム101の回転に起因して先端部103Aが引っ張られた際に、その先端部103Aが弾性を利用して適正に変形(伸張)するため、先端部103Aが千切れるように欠損することは抑制される。また、先端部103Aの塑性変形量が小さすぎないため、異物の衝突に起因して先端部103Aに亀裂が発生しにくくなると共に、その先端部103Aが部分的に欠損しにくくなる。よって、先端部103Aの部分的欠損に起因して現像剤がクリーニングブレード103をすり抜ける現象は発生しにくくなる。
なお、現像装置では、感光ドラム101の物性が第1条件を満たしている場合において、クリーニングブレード103の物性が第3条件を満たしていてもよいし、感光ドラム101の物性が第1条件および第2条件を満たしている場合において、クリーニングブレード103の物性が第3条件を満たしていてもよい。ただし、より高品質な画像を得るためには、前者よりも後者が好ましい。
[押し込み試験]
押し込み試験に関する詳細は、例えば、測定項目および試験条件などが異なることを除き、感光体ドラム101の物性(第2条件)に関して説明した場合と同様である。この押し込み試験を行うことにより、表面ヤング率および塑性変形量を測定するためには、例えば、感光体ドラム101の物性(第2条件)に関して説明した場合と同様に、微小硬度計を用いればよい。この微小硬度計の種類(機種)は、例えば、上記した通りである。
[表面ヤング率および塑性変形量の調整方法]
表面ヤング率および塑性変形量のそれぞれを調整する方法は、特に限定されない。
具体的には、表面ヤング率および塑性変形量のそれぞれを調整するためには、例えば、先端部103Aの形成材料(高分子化合物)の種類および組成などを変更すればよい。具体的には、先端部103Aの形成材料としてポリウレタンを用いる場合には、例えば、硬化剤に含まれている高分子量ポリオール、低分子量ジオールおよび低分子量トリオールのそれぞれの種類を変更すると共に、それらの混合物の混合比を変更すればよい。
<1−6.使用態様>
図9は、現像装置の使用態様の一例を説明するために、図1に対応する平面構成を表している。
ここで説明する現像装置は、例えば、図9に示した態様で使用される。この現像装置には、例えば、発光ダイオード(LED)ヘッド401およびカートリッジ402が着脱可能に装着されている。
LEDヘッド401は、主に、感光体ドラム101の表面を露光することにより、その感光体ドラム101の表面に静電潜像を形成する露光装置である。このLEDヘッド401は、例えば、ドラム部100に対して着脱可能に装着されており、LED素子およびレンズアレイなどを含んでいる。LED素子およびレンズアレイなどは、例えば、そのLED素子から出力された光(照射光)が感光体ドラム101の表面において結像するように配置されている。
カートリッジ402は、現像剤を収納しており、例えば、現像処理部200に対して着脱可能に装着されている。カートリッジ402に収納されている現像剤の種類(色)は、例えば、画像を形成するために必要な色の組み合わせに応じて決定される。
一例を挙げると、フルカラーの画像を形成するために用いられる現像剤の種類は、以下の通りである。イエローの画像を形成するために用いられるカートリッジ402には、イエローの現像剤が収納されている。マゼンタの画像を形成するために用いられるカートリッジ402には、マゼンタの現像剤が収納されている。シアンの画像を形成するために用いられるカートリッジ402には、シアンの現像剤が収納されている。ブラックの画像を形成するために用いられるカートリッジ402には、ブラックの現像剤が収納されている。すなわち、フルカラーの画像を形成するためには、例えば、4種類(4色)の現像剤が用いられる。
なお、現像剤に関する詳細は、例えば、以下の通りである。ただし、ここで説明する現像剤は、例えば、一成分現像方式の現像剤であり、より具体的には、例えば、負帯電の現像剤である。
一成分現像方式とは、現像剤に電荷を付与するためのキャリア(磁性粒子)を用いずに、その現像剤自身に適切な帯電量を付与する方式である。これに対して、二成分現像方式とは、上記したキャリアと現像剤とを混合することにより、そのキャリアと現像剤との摩擦を利用して現像剤に適切な帯電量を付与する方式である。
現像剤は、例えば、複数の粒子状であり、その現像剤は、例えば、着色剤を含んでいる。この着色剤は、主に、画像を着色するために用いられる。
イエローの現像剤は、例えば、着色剤として、イエローの顔料およびイエローの染料(色素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。イエローの顔料は、例えば、ピグメントイエロー74などである。イエローの染料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー74およびカドミウムイエローなどである。
マゼンタの現像剤は、例えば、着色剤として、マゼンタの顔料およびマゼンタの染料(色素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。マゼンタの顔料は、例えば、キナクリドンなどである。マゼンタの染料は、例えば、C.I.ピグメントレッド238などである。
シアンの現像剤は、例えば、着色剤として、シアンの顔料およびシアンの染料(色素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。シアンの顔料は、例えば、フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3)などである。シアンの染料は、例えば、ピグメントブルー15:3などである。
ブラックの現像剤は、例えば、着色剤として、ブラックの顔料およびブラックの染料(色素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ブラックの顔料は、例えば、カーボンなどである。ブラックの染料は、例えば、カーボンブラックなどであり、そのカーボンブラックは、例えば、ファーネスブラックおよびチャンネルブラックなどである。
ただし、現像剤は、上記した着色剤と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、結着剤、離型剤、帯電制御剤および外添剤などである。
結着剤は、主に、着色剤などを結着させる。この結着剤は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン−ブタジエン系樹脂などの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
中でも、結着剤は、ポリエステル系樹脂を含んでいることが好ましい。ポリエステル系樹脂は、紙などの媒体に対して高い親和性を有するため、結着剤としてポリエステル系樹脂を含む現像剤は、その媒体に定着しやすくなるからである。また、ポリエステル系樹脂は、比較的分子量が小さい場合においても高い物理的強度を有するため、結着剤としてポリエステル系樹脂を含む現像剤は、優れた耐久性を有するからである。
このポリエステル系樹脂は、例えば、1または2以上のアルコールと1または2以上のカルボン酸との反応物(縮重合体)である。
アルコールの種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のアルコールおよびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のアルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ソルビトールおよびグリセリンなどである。
カルボン酸の種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のカルボン酸およびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸およびドデセニル無水コハク酸などである。
離型剤は、主に、現像剤の定着性および耐オフセット性などを向上させる。この離型剤は、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物などのワックスのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この他、離型剤は、例えば、上記した一連のワックスのブロック共重合物などでもよい。
脂肪族炭化水素系ワックスは、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスなどである。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物は、例えば、酸化ポリエチレンワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスは、例えば、カルナバワックスおよびモンタン酸エステルワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物は、その脂肪酸エステル系ワックスのうちの一部または全部が脱酸化されたワックスであり、例えば、脱酸カルナバワックスなどである。
帯電制御剤は、主に、現像剤の摩擦帯電性などを制御する。負帯電の現像剤に用いられる帯電制御剤は、例えば、アゾ系錯体、サリチル酸系錯体およびカリックスアレン系錯体などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
外添剤は、主に、現像剤同士の凝集などを抑制することにより、その現像剤の流動性を向上させる。ただし、外添剤は、例えば、現像剤の環境安定性、帯電安定性、現像性、保存性およびクリーニング性などを向上させる役割も果たす。
この外添剤は、例えば、複数の粒子状であり、着色剤などを含む母粒子の表面に定着されている。具体的には、外添剤は、例えば、無機材料および有機材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機材料は、例えば、疎水性シリカなどである。有機材料は、例えば、メラミン樹脂などである。
なお、現像剤の製造方法は、特に限定されない。具体的には、現像剤は、例えば、粉砕法を用いて製造されてもよいし、重合法を用いて製造されてもよいし、それら以外の方法を用いて製造されてもよい。この重合法は、例えば、溶解懸濁法などである。もちろん、現像剤は、上記した一連の製造方法のうちの2種類以上を用いて製造されてもよい。
<1−7.動作>
この現像装置は、例えば、現像処理を行うために、以下で説明するように動作する。以下では、例えば、図9に示した使用態様で用いられる現像装置の動作に関して説明する。
最初に、感光体ドラム101が回転すると、帯電ローラ102が回転しながら感光体ドラム101の表面に直流電圧を印加する。これにより、感光体ドラム101の表面が均一に帯電する。
続いて、画像信号に応じて、LEDヘッド401が感光体ドラム101の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム101の表面では、光の照射部分において表面電位が減衰(光減衰)するため、その感光体ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
続いて、カートリッジ402に収納されていた現像剤は、供給ローラ202に向けて放出される。
続いて、供給ローラ202に電圧が印加されたのち、その供給ローラ202が回転する。これにより、カートリッジ402から現像剤が供給ローラ202の表面に供給される。
続いて、現像ローラ201に電圧が印加されたのち、その現像ローラ201が供給ローラ202に圧接されながら回転する。これにより、供給ローラ202の表面に供給された現像剤が現像ローラ201の表面に吸着するため、その現像剤が現像ローラ201の回転を利用して搬送される。この場合には、現像ローラ201の表面に吸着されている現像剤の一部が現像ブレード203により除去されるため、その現像ローラ201の表面に吸着された現像剤の厚さが均一化される。
最後に、現像ローラ201に圧接されながら感光体ドラム101が回転したのち、その現像ローラ201の表面に吸着されていた現像剤が感光体ドラム101の表面に移行する。これにより、感光体ドラム101の表面(静電潜像)に現像剤が付着するため、その現像剤により画像(現像剤像)が形成される。よって、現像処理が完了する。
なお、現像装置が現像処理を行う場合には、感光体ドラム101の表面に不要な現像剤などが残留する場合がある。この不要な現像剤は、例えば、後述する1次転写処理において用いられた現像剤の一部などであり、後述する中間転写ベルト41に転写されずに感光体ドラム101の表面に残留した現像剤などである。
そこで、現像装置は、現像処理を行いながら、クリーニングブレード103を用いてクリーニング処理を行う。
具体的には、クリーニングブレード103に圧接されている状態において感光体ドラム101が回転するため、その感光体ドラム101の表面に残留している現像剤などがクリーニングブレード103により掻き取られる。これにより、感光体ドラム101の表面から不要な現像剤などが除去される。
<1−8.作用および効果>
この現像装置では、感光体ドラム101の物性が上記した第1条件を満たしている。すなわち、<試験条件1>において感光体ドラム101のスクラッチ試験により測定されるスクラッチ残留深さは、110nm以下である。この場合には、以下で説明する理由により、高品質な画像を安定して得ることができる。
図10〜図14は、感光体ドラム101の物性が第1条件を満たしていない場合において、現像装置の動作に関する問題点を説明するために、感光体ドラム101およびその周辺部の平面構成を模式的に表している。図15および図16は、感光体ドラム101の物性が第1条件を満たしている場合において、現像装置の動作に関する利点を説明するために、図10〜図14に対応する平面構成を表している。
なお、図10〜図16では、図示内容を簡略化するために、現像ローラ201の輪郭の一部を曲線状に示しているのに対して、感光体ドラム101の輪郭の一部を直線状に示している。また、矢印R1は、現像ローラ201の回転方向を表していると共に、矢印R2は、感光体ドラム101の回転方向、すなわち現像ローラ201に対して感光体ドラム101が相対的に移動する方向を表している。
現像装置の使用時には、図10に示したように、感光体ドラム101に対して現像ローラ201が圧接されている。これにより、現像ローラ201の表面に担持されている現像剤501は、感光体ドラム101の表面に供給される。
現像装置を繰り返して使用すると、図11に示したように、感光体ドラム101の表面に異物502が付着する現象、すなわちフィルミングが発生しやすくなる。この異物502は、例えば、脱落物および微粉などの堆積物である。脱落物とは、例えば、現像剤501から脱落した外添剤および離型剤などである。微粉とは、例えば、後述する媒体M(図17参照)の一部などであり、例えば、媒体Mが紙である場合には、紙粉などである。
フィルミングが発生すると、上記したように、感光体ドラム101の表面に異物502が付着する。こののち、感光体ドラム101の回転に応じて、その感光体ドラム101と現像ローラ201との接触点の近傍まで異物502が搬送されると、その異物502は、現像ローラ201により感光ドラム101に対して押し当てられる。これにより、異物502の存在に起因して感光体ドラム101が表面近傍において凹むように変形するため、その感光体ドラム101の表面に窪み503が形成される。
感光体ドラム101の物性が第1条件を満たしていない場合には、その感光体ドラム101の変形時における復元力が十分でないため、図12に示したように、窪み503が現像ローラ201から遠ざかると共にクリーニングブレード103に近づくように感光体ドラム101が回転すると、その窪み503がほぼそのまま維持される。具体的には、感光体ドラム101と現像ローラ201との接触点(図11参照)から離れるように窪み503が移動すると、その窪み503の近傍において感光体ドラム101が僅かに復元するため、その窪み503の深さは僅かに減少する。しかしながら、窪み503の深さは、クリーニングブレード103を用いて異物502を掻き取ることができる程度まで十分に減少しないため、異物503のうちの大部分は、窪み503の内部に収容されたままである。
よって、図13に示したように、感光体ドラム101がさらに回転すると、窪み503の内部に収容された異物502を掻き取ることができないまま、その窪み503の近傍をクリーニングブレード103が通過する。これにより、感光体ドラム101の表面に異物502が定着してしまう。この場合には、窪み503およびその近傍部分において静電潜像に現像剤が付着されにくくなるため、画像中に白抜けが発生しやすくなる。この白抜けは、特に、いわゆるベタ画像中において顕在化するため、大きな問題となる。これにより、高品質な画像を安定して得ることが困難である。
この場合には、特に、ひとたび窪み503が形成されると、現像ローラ201により異物503が感光体ドラム101に対して継続的に押し当てられるため、図14に示したように、窪み503が広がると共に、その窪み503の内部に収容される異物502の数が増加する。これにより、画像中において白抜けの発生範囲が拡大してしまう。
これに対して、感光体ドラム101の物性が第1条件を満たしている場合には、図10および図11に示したように、窪み503が形成されたのち、感光体ドラム101が回転すると、その感光体ドラム101の変形時における復元力が十分であるため、図15に示したように、その感光体ドラム101の変形が緩和される。すなわち、窪み503の近傍において感光体ドラム101が十分に復元するため、その窪み503の深さは著しく減少する。この窪み503の深さは、クリーニングブレード103を用いて異物502を掻き取ることができる程度まで十分に減少するため、異物502のうちの大部分は、窪み503の外部に露出する。
よって、図16に示したように、感光体ドラム101がさらに回転すると、クリーニングブレード103により異物502が掻き取られる。この場合には、窪み503およびその近傍部分においても静電潜像に現像剤が付着されやすくなるため、画像中に白抜けが発生しにくくなる。これにより、高品質な画像を安定して得ることができる。
特に、感光体ドラム101の物性が上記した第2条件を満たしており、すなわち<試験条件2>において感光体ドラム101の押し込み試験により測定されるマルテンス硬度が100N/mm2 〜170N/mm2 であれば、上記したように、感光体ドラム101(感光層113)が摩耗しにくくなるため、その感光体ドラム101の帯電不良が抑制される。この場合には、画像中において印画汚れが発生しにくくなるため、より高品質な画像が安定して得られる。よって、より高い効果を得ることができる。
また、クレーニングブレード103の物性が上記した第3条件を満たしており、すなわち<試験条件3>において先端部103Aの押し込み試験により測定される表面ヤング率が18MPa〜30MPaであると共に塑性変形量が1N・mm〜4N・mmであれば、上記したように、先端部103Aの変形特性および摩耗特性が適正化される。この場合には、フィルミングの発生に起因して感光体ドラム101の表面に異物502が付着しても、クリーニングブレード103が異物502をより掻き取りやすくなる。これにより、画像中において白抜けがより発生しにくくなるため、より高品質な画像が安定して得られる。よって、より高い効果を得ることができる。
<2.画像形成装置>
次に、上記した現像装置を用いた画像形成装置に関して説明する。
ここで説明する画像形成装置は、例えば、電子写真方式のフルカラープリンタであり、画像形成用の媒体Mの表面に画像を形成する。この媒体Mの材質は、特に限定されないが、例えば、紙およびフィルムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
<2−1.構成>
図17は、画像形成装置の平面構成を表している。この画像形成装置は、例えば、図17に示したように、筐体1の内部に、1または2以上のトレイ10と、1または2以上の送り出しローラ20と、1または2以上の現像部30と、転写部40と、定着部50と、搬送ローラ61〜67と、搬送路切り替えガイド71,72とを備えている。この他、画像形成装置は、図1および図9に示した感光体ドラム101に対応する1または2以上の感光体ドラムを備えている。
なお、筐体1には、画像が形成された媒体Mを排出するためのスタッカ部2が設けられており、その媒体Mは、搬送経路R1〜R5に沿って搬送される。
[トレイおよび送り出しローラ]
トレイ10は、媒体Mを収納しており、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されている。このトレイ10には、例えば、複数の媒体Mが積層された状態で収納されており、その複数の媒体Mは、送り出しローラ20によりトレイ10から1つずつ取り出される。
ここでは、画像形成装置は、例えば、2つのトレイ10(11,12)と、2つの送り出しローラ20(21,22)とを備えている。なお、2つのトレイ11,12は、例えば、互いに重なるように配置されている。
[現像部]
現像部30は、現像剤(いわゆるトナー)を用いて現像処理を行う。具体的には、現像部30は、静電潜像を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像に現像剤を付着させることにより、現像剤像(いわゆるトナー像)を形成する。
ここでは、画像形成装置は、例えば、4つの現像部30(30Y,30M,30C,30K)を備えている。これに伴い、画像形成装置は、例えば、4つの感光体ドラムを備えている。
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されていると共に、後述する中間転写ベルト41の移動経路に沿って配列されている。ここでは、現像部30Y,30M,30C,30Kは、例えば、中間転写ベルト41の移動方向において、上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、カートリッジ402(図9参照)に収納されている現像剤の種類が異なることを除き、図9に示した使用態様の現像装置(感光体ドラム101を除く。)と同様の構成を有している。また、感光体ドラムは、例えば、図9に示した感光体ドラム101と同様の構成を有している。
[転写部]
転写部40は、現像部30により現像処理された現像剤を用いて転写処理を行う。具体的には、転写部40は、現像部30により静電潜像に付着された現像剤を媒体Mに転写させる。
この転写部40は、例えば、中間転写ベルト41と、駆動ローラ42と、従動ローラ(アイドルローラ)43と、バックアップローラ44と、1または2以上の1次転写ローラ45と、2次転写ローラ46と、クリーニングブレード47とを含んでいる。
中間転写ベルト41は、媒体Mに現像剤が転写される前に、その現像剤が一時的に転写される中間転写媒体である。この中間転写ベルト41は、例えば、無端の弾性ベルトであり、ポリイミドなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、中間転写ベルト41は、駆動ローラ42、従動ローラ43およびバックアップローラ44により張架された状態において、その駆動ローラ42の回転に応じて移動可能である。
駆動ローラ42は、モータなどの駆動源を介して時計回りに回転可能である。従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれは、駆動ローラ42の回転に応じて、その駆動ローラ42と同様に時計回りに回転可能である。
1次転写ローラ45は、現像部30から供給される現像剤を中間転写ベルト41に転写(1次転写)させる。この1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41を介して現像部30(後述する感光体ドラム31)に圧接されている。なお、1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41の移動に応じて時計回りに回転可能である。
ここでは、転写部40は、例えば、4つの現像部30(30Y,30M,30C,30K)に対応して、4つの1次転写ローラ45(45Y,45M,45C,45K)を含んでいる。また、転写部40は、1つのバックアップローラ44に対応して、1つの2次転写ローラ46を含んでいる。
2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41に転写された現像剤を媒体Mに転写(2次転写)させる。この2次転写ローラ46は、バックアップローラ44に圧接されており、例えば、金属製の芯材と、その芯材の外周面を被覆する発泡ゴム層などの弾性層とを含んでいる。なお、2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41の移動に応じて反時計回りに回転可能である。
クリーニングブレード47は、中間転写ベルト41に圧接されており、その中間転写ベルト41の表面に残留した不要な現像剤を掻き取る。
[定着部]
定着部50は、転写部40により媒体Mに転写された現像剤を用いて定着処理を行う。具体的には、定着部50は、転写部40により媒体Mに転写された現像剤を加熱しながら加圧することにより、その現像剤を媒体Mに定着させる。
この定着部50は、例えば、加熱ローラ51と、加圧ローラ52とを含んでいる。
加熱ローラ51は、現像剤像を加熱する回転体であり、時計回りに回転可能である。この加熱ローラ51は、例えば、中空円筒状の金属芯と、その金属芯の表面に形成された樹脂コートとを含んでいる。金属芯は、例えば、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。樹脂コートは、例えば、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子化合物を含んでいる。
加熱ローラ51(金属芯)の内部には、例えば、ハロゲンランプなどのヒータが設置されている。この加熱ローラ51の表面温度は、例えば、その加熱ローラ51から離れた位置に配置されたサーミスタにより検出される。
加圧ローラ52は、現像剤像を加圧する回転体であり、加熱ローラ51に圧接されながら反時計回りに回転可能である。この加圧ローラ52は、例えば、金属棒である。金属棒は、例えば、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。
[搬送ローラ]
搬送ローラ61〜67のそれぞれは、媒体Mの搬送経路R1〜R5を介して互いに対向するように配置された一対のローラを含んでおり、送り出しローラ20により取り出された媒体Mを搬送させる。具体的には、例えば、媒体Mの片面だけに画像が形成される場合には、その媒体Mは、搬送経路R1,R2に沿って搬送ローラ61〜63により搬送される。また、例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、その媒体Mは、搬送経路R1〜R5に沿って搬送ローラ61〜67により搬送される。
[搬送路切り替えガイド]
搬送路切り替えガイド71,72は、媒体Mに形成される画像の様式(媒体Mの片面だけに画像が形成されるか、媒体Mの両面に画像が形成されるか)などの条件に応じて、その媒体Mの搬送方向を切り替える。
<2−2.動作>
この画像形成装置は、例えば、媒体Mの表面に画像を形成するために、以下で説明するように動作する。
ここでは、図9および図17を参照しながら、媒体Mの片面に画像が形成される場合に関して説明する。この場合には、トレイ11に収納されている媒体Mが用いられることとする。
この画像形成装置は、例えば、以下で説明するように、現像処理、転写処理、定着処理およびクリーニング処理を行う。
[現像処理]
トレイ11に収納された媒体Mは、送り出しローラ21により取り出される。この媒体Mは、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により矢印F1の方向に搬送される。
現像処理では、現像部30Yが上記した現像装置と同様に動作する。これにより、感光体ドラム101の表面に静電潜像が形成されると共に、その静電潜像にイエローの現像剤が付着されるため、イエローの現像剤像が形成される。
[1次転写処理]
転写部40において、駆動ローラ42が回転すると、その駆動ローラ42の回転に応じて従動ローラ43およびバックアップローラ44が回転する。これにより、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する。
1次転写処理では、1次転写ローラ45Yに電圧が印加されている。この1次転写ローラ45Yは、中間転写ベルト41を介して感光体ドラム101に圧接されているため、上記した現像処理において感光体ドラム101の表面(静電潜像)に付着されたイエロー用現像剤は、中間転写ベルト41に転写される。
こののち、イエローの現像剤が転写された中間転写ベルト41は、引き続き矢印F5の方向に移動する。これにより、現像部30M,30C,30Kおよび1次転写ローラ45M,45C,45Kにおいて、上記した現像部30Yおよび1次転写ローラ45Yと同様の手順により現像処理および1次転写処理が順に行われる。よって、中間転写ベルト41に各色の現像剤が順次転写されるため、各色の現像剤像が形成される。
すなわち、現像部30Mおよび1次転写ローラ45Mにより、中間転写ベルト41の表面にマゼンタの現像剤が転写されるため、マゼンタの現像剤像が形成される。続いて、現像部30Cおよび1次転写ローラ45Cにより、中間転写ベルト41の表面にシアンの現像剤が転写されるため、シアンの現像剤像が形成される。続いて、現像部30Kおよび1次転写ローラ45Kにより、中間転写ベルト41の表面にブラックの現像剤が転写されるため、ブラックの現像剤像が形成される。
もちろん、実際に現像部30Y,30M,30C,30Kおよび1次転写ローラ45Y,45M,45C,45Kのそれぞれにおいて現像処理および転写処理が行われるかどうかは、画像を形成するために必要な色(現像剤の種類およびその組み合わせ)に応じて決定される。
[2次転写処理]
搬送経路R1に沿って搬送される媒体Mは、バックアップローラ44と2次転写ローラ46との間を通過する。
2次転写処理では、2次転写ローラ46に電圧が印加されている。この2次転写ローラ46は、媒体Mを介してバックアップローラ44に圧接されるため、上記した1次転写処理において中間転写ベルト41に転写された現像剤は、媒体Mに転写される。
[定着処理]
2次転写処理において媒体Mに現像剤が転写されたのち、その媒体Mは、引き続き搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送されるため、定着部50に投入される。
定着処理では、加熱ローラ51の表面温度が所定の温度となるように制御されている。加熱ローラ51に圧接されながら加圧ローラ52が回転すると、その加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を通過するように媒体Mが搬送される。
これにより、媒体Mの表面に転写された現像剤が加熱されるため、その現像剤が溶融する。しかも、溶融状態の現像剤が媒体Mに圧接されるため、その現像剤が媒体Mに強固に付着する。よって、媒体Mの表面に画像が形成される。
画像が形成された媒体Mは、搬送経路R2に沿って搬送ローラ73により矢印F2の方向に搬送されるため、スタッカ部2に送出される。
なお、ここでは詳細に説明しないが、媒体Mの搬送手順は、その媒体Mの表面に形成される画像の様式に応じて変更される。
例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3〜R5に沿って搬送ローラ64〜67により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド71,72により制御される。これにより、媒体Mの裏面(未だ画像が形成されていない面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が再び行われる。
また、例えば、媒体Mの片面に複数回に渡って画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3,R5に沿って搬送ローラ64〜66により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド71,72により制御される。これにより、媒体Mの表面(既に画像が形成されている面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が再び行われる。
[クリーニング処理]
この画像形成装置では、任意のタイミングにおいてクリーニング処理が行われる。
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、上記した現像装置と同様に動作することにより、クリーニング処理を行う。
また、転写部40では、1次転写処理において中間転写ベルト41の表面に移行した現像剤の一部が2次転写処理において媒体Mの表面に移行されずに、その中間転写ベルト41の表面に残留する場合がある。
そこで、転写部40では、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する際に、その中間転写ベルト41の表面に残留した現像剤がクリーニングブレード47により掻き取られる。これにより、中間転写ベルト41の表面から不要な現像剤が除去される。
<2−3.作用および効果>
この画像形成装置では、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが上記した現像装置と同様の構成を有しているので、高品質な画像を安定して得ることができる。これ以外の作用および効果は、上記した現像装置に関して説明した場合と同様である。
<3.変形例>
なお、図17に示した画像形成装置は、4種類の色に対応する4つの現像部30(30Y,30M,30C,30K)を備えているが、その現像部30の数は、特に限定されない。現像部30の数は、画像の形成に用いる色の数などの条件に応じて任意に設定可能である。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
また、画像形成装置では、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが現像装置と同様の構成を有するようにしたが、現像部30Y,30M,30C,30Kのうちの一部(任意の1種類、2種類または3種類)が現像装置と同様の構成を有するようにしてもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。ただし、イエローの現像剤像、マゼンタの現像剤像、シアンの現像剤像およびブラックの現像剤の全てにおいて白抜けの発生などを抑制するためには、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれが現像装置と同様の構成を有していることが好ましい。
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.感光体ドラムの物性(第1条件)の評価
2.感光体ドラムの物性(第2条件)の評価
3.クリーニングブレードの物性(第3条件)の評価
<1.感光体ドラムの物性(第1条件)の評価>
(実験例1−1〜1−22)
まず、感光体ドラムの物性(スクラッチ残留深さに関する第1条件)が画像の品質に与える影響を調べるために、画像形成装置を用いて画像を形成したのち、その画像の品質を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
画像を形成する場合には、画像形成装置として、株式会社沖データ製のカラープリンタC710dn改造機(印画速度=45ppm)を用いると共に、画像形成用の媒体として、株式会社沖データ製のカラープリンタ用紙 エクセレントホワイトA4を用いた。
感光体ドラムとして、スクラッチ残留深さが異なる複数の感光体ドラム(外径=30mm)を用いた。この場合には、感光層の形成材料(高分子化合物)の種類および組成を変更することにより、表1に示したように、スクラッチ残留深さを変化させた。なお、スクラッチ残留深さの測定手順は、上記した通りである。
クリーニングブレード(先端部)の寸法は、厚さ=1.5mm〜2.0mm、長さ=6.5mm〜7.8mm、公差=±0.15mmとした。この他、感光体ドラムに対するクリーニングブレードの圧接角度(感光体ドラムの外周面の接線とその感光体ドラムに対する先端部の圧接方向との角度)=10°、線圧=20gf/cmとした。
スクラッチ残留深さ以外の感光体ドラムの物性(第2条件)としては、マルテンス硬度=145N/mm2 とした。クリーニングブレードの物性(第3条件)としては、表面ヤング率=18MPaおよび組成変形量=3.6N・mmとした。
画像の品質を評価するためには、フィルミングの発生が画像の品質に与える影響を厳しく評価するために、画像形成装置を用いて形成された画像ではなく、その画像の形成に用いられた感光体ドラムの表面状態を調べた。
この場合には、最初に、シアンの現像剤を用いて、25000枚の媒体に連続的に画像を形成した。具体的には、常温環境中(温度=25℃,湿度=50%)において、12500枚の媒体に連続的に画像を形成したのち、低温低湿環境中(温度=10℃,湿度=10%)において、12500枚の媒体に連続的に画像を形成した。画像の印画条件は、印画duty=0.3%(印画可能領域のうちの0.3%に相当する領域に印画される条件)とした。画像のパターンは、矩形状(A4サイズ)の媒体のうち、4つの角部の近傍に正方形が印画されると共に、短手方向における中央領域に太線が長手方向に延在するように印画されるパターンとした。
続いて、顕微鏡を用いて感光体ドラムの表面を観察したのち、その観察結果(観察画像)に基づいてフィルミング占有率(%)を調べた。顕微鏡としては、株式会社キーエンス製の形状測定レーザマイクロスコープVK−8500を用いると共に、観察条件としては、倍率=200倍、測定モード=白黒超深度とした。フィルミング占有率とは、観察画像中において複数の異物が占める割合であり、フィルミング占有率(%)=(各異物の面積の総和/観察画像の面積)×100により算出される。このフィルミング占有率を求めるためには、二値化処理を利用して、観察画像中において複数の異物の存在領域とそれ以外の領域とを区別することにより、各異物の面積を算出したのち、各異物の面積の総和を算出した。
最後に、フィルミング占有率に基づいて、感光体ドラムの表面状態を判定した。具体的には、フィルミング占有率が3%よりも小さい場合には、感光体ドラムの表面に異物が存在していないことにより、画像中に白抜けが発生しないため、「A」と判定した。フィルミング占有率が3%〜4%である場合には、感光体ドラムの表面に少数の異物が存在していたが、画像中に白抜けが発生したとしても、その白抜けの発生状況は画像の品質にほとんど影響を与えないような許容レベルであるため、「B」と判定した。フィルミング占有率が4%よりも大きい場合には、感光体ドラムの表面に多数の異物が存在していたことにより、画像の品質に深刻な影響を及ぼす白抜けが発生するため、「C」と判定した。
表1に示したように、フィルミング占有率は、スクラッチ残留深さに応じて変化した。この場合には、スクラッチ残留深さが110nm以下であると、フィルミング占有率が十分に小さくなった。特に、スクラッチ残留深さが100nm以下であると、フィルミング占有率がより小さくなった。
<2.感光体ドラムの物性(第2条件)の評価>
(実験例2−1〜2−21)
次に、感光体ドラムの物性(スクラッチ残留深さに関する第1条件)が満たされている場合において、その感光体ドラムの物性(マルテンス硬度に関する第2条件)が画像の品質に与える影響を調べるために、画像形成装置を用いて画像を形成したのち、その画像の品質を評価したところ、表2に示した結果が得られた。
画像を形成する場合には、感光体ドラムとして、マルテンス硬度が異なる複数の感光体ドラムを用いたことを除き、実験例1−4と同様の手順を用いた。この場合には、多層構造を有する感光層のうち、電荷輸送層中の形成材料(高分子化合物であるポリアリレート樹脂)に含有される低分子量化合物(式(2)に示した化合物)の種類および組成を変更することにより、表2に示したように、マルテンス硬度を変化させた。なお、マルテンス硬度の測定手順は、上記した通りである。
画像の品質を評価するためには、25000枚の媒体に連続的に画像を形成しながら、各画像を状態を目視で確認することにより、感光体ドラムの帯電不良に起因して印画汚れが発生しているかどうかを調べると共に、その印画汚れが発生せずに画像が形成された媒体の枚数(印画可能枚数)をカウントした。この印画可能枚数に基づいて、画像の形成状況(画像形成装置の寿命)を判定した。具体的には、印画可能枚数が25000枚である場合には、印画汚れが発生せずに、全ての媒体に画像が正常に形成されたため、「A」と判定した。印画可能枚数が20000枚以上25000未満である場合には、大部分の媒体に画像が正常に形成されたことにより、その媒体の使用枚数に関して大幅なロスが生じないような許容レベルであったため、「B」と判定した。印画可能枚数が20000枚未満である場合には、画像が正常に形成されなかった媒体の枚数が多くなったことにより、その媒体の使用枚数に関して大幅なロスが生じたため、「C」と判定した。
表2に示したように、印画可能枚数は、マルテンス硬度に応じて変化した。この場合には、マルテンス硬度が100N/mm2 〜170N/mm2 であると、十分な印画可能枚数が得られた。
<3.クリーニングブレードの物性(第3条件)の評価>
(実験例3−1〜3−25)
次に、感光体ドラムの物性(スクラッチ残留深さに関する第1条件およびマルテンス硬度に関する第2条件)が満たされている場合において、クリーニングブレードの物性(表面ヤング率および塑性変形量に関する第3条件)が画像の品質に与える影響を調べるために、画像形成装置を用いて画像を形成したのち、その画像の品質を評価したところ、表3に示した結果が得られた。
画像を形成する場合には、表面ヤング率および塑性変形量が異なるクリーニングブレード(先端部)を用いたことを除き、実験例1−4と同様の手順を用いた。この場合には、先端部の形成材料(高分子化合物であるポリウレタン)の組成、より具体的には硬化剤に含まれる高分子量ポリオール、低分子量ジオールおよび低分子量トリオールのそれぞれの種類およびそれらの混合比を変更することにより、表3に示したように、表面ヤング率および塑性変形量を変化させた。なお、表面ヤング率および塑性変形量の測定手順は、上記した通りである。
具体的には、シアンの現像剤を用いて、30000枚の媒体に連続的に画像を形成した。この場合には、常温環境中(温度=25℃,湿度=50%)において、12500枚の媒体に連続的に画像を形成したのち、低温低湿環境中(温度=10℃,湿度=10%)において、17500枚の媒体に連続的に画像を形成した。画像の印画条件および画像のパターンは、上記した通りである。
画像の品質を評価するためには、フィルミングの発生が画像の品質に与える影響を厳しく評価するために、そのフィルミングの発生原因となる異物(フィルミング物質)の掻き取り状況を調べた。すなわち、画像形成装置を用いて形成された画像ではなく、クリーニングブレードを通過した異物の付着に起因する帯電ローラの表面状態(汚れ状況)を調べた。
帯電ローラの汚れ状況を調べる場合には、帯電ローラの表面を目視で確認することにより、その表面の汚れ状況を判定した。具体的には、帯電ローラの表面に異物がほとんど付着していないため、その帯電ローラの表面が汚れていない場合には、「A」と判定した。帯電ローラの表面に異物が付着しているため、その帯電ローラの表面が汚れている場合を「C」と判定した。
表3に示したように、帯電ローラの汚れ状況は、表面ヤング率および塑性変形量に応じて変化した。この場合には、表面ヤング率が18MPa〜30MPaであると共に、塑性変形量が1N・mm〜4N・mmであると、帯電ローラの表面がほとんど汚れていなかった。すなわち、クリーニングブレードにより感光体ドラムの表面が十分に掻き取られたため、フィルミングの発生が抑制された。
これに対して、表面ヤング率および塑性変形量のそれぞれが上記した条件を満たしていないと、帯電ローラの表面が汚れていた。すなわち、クリーニングブレードにより感光体ドラムの表面が十分に掻き取られなかったため、フィルミングが発生した。この場合には、主に、現像剤から脱落した外添剤などを含む異物が帯電ローラの表面に対して全面的に付着し、または異物が帯電ローラの表面に対してリング状に付着した。これらの原因は、帯電ローラの表面に異物が付着すると、感光体ドラムの表面が正常に帯電しにくくなることに起因して、本来は現像剤が付着すべきでない領域にまで意図せずに現像剤が付着するからであると考えられる。特に、帯電ローラの表面に対して異物がリング状に付着すると、印画ムラなどの画質不良が発生しやすくなる。
これらのことから、感光体ドラムの物性が第1条件を満たしていると、高品質な画像が安定して得られた。この場合には、感光体ドラムの物性がさらに第2条件を満たしていると、より高品質な画像が得られた。また、クリーニングブレードの物性が第3条件を満たしていると、より高品質な画像が得られた。
以上、一実施形態を挙げながら本発明を説明したが、本発明は上記した一実施形態において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置の画像形成方式は、中間転写ベルトを用いた中間転写方式に限られず、他の画像形成方式でもよい。