以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
図において、10はプリンタ、11は、該プリンタ10の本体、すなわち、装置本体の下部に配設された媒体収容部としての用紙カセットであり、該用紙カセット11に媒体としての用紙Pが収容される。そして、前記用紙カセット11の前端に隣接させて給紙機構が配設され、該給紙機構は、回転させられて用紙カセット11から用紙Pを媒体搬送路Rt1に繰り出すためのピックアップローラ31を備える。給紙機構によって給紙された用紙Pは、給紙機構の上方に配設された第1〜第3の搬送部材としての搬送ローラ対34〜36によって媒体搬送路Rt1を矢印A方向に搬送される。
前記装置本体の上部には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びホワイトの各色の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wが用紙Pの搬送方向における下流側から上流側にかけて並べて配設され、該各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wに配設された像担持体としての各感光体ドラム21より上方に、感光体ドラム21と対向させて、露光装置(露光部)としてのLEDヘッド24が配設される。該LEDヘッド24は、印刷データに対応するパターンの光を感光体ドラム21の表面に照射し、潜像としての静電潜像を形成する。なお、前記画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20W及びLEDヘッド24によって画像形成部が構成される。
各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wは、前記感光体ドラム21、現像剤としてのトナー(有色トナー)を収容する現像剤収容部としてのトナーカートリッジ22、前記感光体ドラム21に当接させて回転自在に配設され、感光体ドラム21の回転に対して連れ回りで回転させられ、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる帯電装置としての帯電ローラ23、前記感光体ドラム21に当接させて回転自在に配設され、非磁性一成分接触現像方式によって静電潜像を現像して、現像剤像としてのトナー像を形成する現像剤担持体としての現像ローラ26、後述される一次転写が行われた後の感光体ドラム21上に残留した現像剤、すなわち、残留現像剤としての残留トナーを掻き取ることによって除去し、感光体ドラム21をクリーニングするクリーニング部材としてのクリーニングブレード28等を備える。
前記帯電ローラ23には、図示されない電源によって帯電バイアスが印加され、前記現像ローラ26には、前記電源によって現像バイアスが印加される。
そして、画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wの下方には転写ユニットu1が配設される。該転写ユニットu1は、画像形成ユニット20Wの近傍において回転自在に配設され、駆動部としての図示されないモータと連結され、該モータからの回転を受けて回転させられる第1のローラとしての駆動ローラ41、画像形成ユニット20Yの近傍において回転自在に配設され、前記駆動ローラ41の回転に伴って回転させられる第2のローラとしての従動ローラ42、前記駆動ローラ41及び従動ローラ42より下方において回転自在に配設され、駆動ローラ41の回転に伴って回転させられる第3のローラとしての、かつ、バックアップローラとしての二次転写バックアップローラ43、前記駆動ローラ41、従動ローラ42及び二次転写バックアップローラ43によって走行自在に張設され、駆動ローラ41、従動ローラ42及び二次転写バックアップローラ43の回転に伴って画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wに沿って矢印B方向に走行させられる転写媒体としての中間転写ベルト44、該中間転写ベルト44を介して各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wの感光体ドラム21にそれぞれ当接させて、すなわち、各感光体ドラム21との間にニップを形成して配設された第1の転写部材としての、かつ、第1の転写ローラとしての一次転写ローラ45、用紙P及び中間転写ベルト44を介して前記二次転写バックアップローラ43に当接させて、すなわち、二次転写バックアップローラ43との間にニップを形成して配設された第2の転写部材としての、かつ、第2の転写ローラとしての二次転写ローラ46、前記中間転写ベルト44の走行方向(矢印B方向)における二次転写ローラ46より下流側において、中間転写ベルト44と対向させて配設されたクリーニング装置48等を備える。
なお、前記画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wは、中間転写ベルト44の走行方向における上流側から下流側にかけて並べて配設され、画像形成ユニット20Yが最も上流側に、画像形成ユニット20Wが最も下流側に配設される。
前記各一次転写ローラ45は、各感光体ドラム21上に形成された各色のトナー像を順次重ねて中間転写ベルト44に転写(一次転写)し、中間転写ベルト44上にカラーのトナー像を形成する。前記各一次転写ローラ45と各感光体ドラム21との間に第1の転写部、本実施の形態においては、一次転写部が構成される。そして、前記一次転写ローラ45には、前記電源によって、第1の転写バイアスとしての一次転写バイアスが印加される。
なお、前記一次転写ローラ45は、中間転写体ベルト44の走行方向において数〔mm〕程度感光体ドラム21より下流側に配設するのが望ましい。
本実施の形態においては、各一次転写ローラ45が、中間転写ベルト44を介して各感光体ドラム21に当接させられるようになっているが、所定の一次転写ローラ45、例えば、画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Wと対向する一次転写ローラ45を中間転写ベルト44から離間させることによって、白黒の画像を形成することができる。
また、前記二次転写ローラ46は、中間転写ベルト44上に形成されたカラーのトナー像を用紙Pに転写(二次転写)し、用紙Pにカラーのトナー像を形成する。そして、二次転写ローラ46と二次転写バックアップローラ43との間に第2の転写部、本実施の形態においては、二次転写部が構成される。前記二次転写ローラ46には、前記電源によって、第2の転写バイアスとしての二次転写バイアスが印加される。
前記クリーニング装置48は、一定の圧力で先端を中間転写ベルト44に押し付けて配設されたクリーニング部材としてのクリーニングブレード49を備える。該クリーニングブレード49は、二次転写後に中間転写ベルト44上の残留トナーを掻き取ることによって除去し、中間転写ベルト44をクリーニングする。
また、前記媒体搬送路Rt1における二次転写部より下流側に、定着装置(定着ユニット)としての定着器50が配設される。該定着器50は、ハロゲンランプ等の熱源としての図示されないヒータが内臓され、回転自在に配設された第1の定着部材としての加熱ローラ51、及び該加熱ローラ51に当接させて回転自在に配設された第2の定着部材としての加圧ローラ52を備え、二次転写部から送られた用紙P上のカラーのトナー像を加熱し、加圧することによって用紙Pに定着させ、カラーの画像を形成する。
そして、前記媒体搬送路Rt1における定着器50より下流側に、搬送部材としての図示されない搬送ローラ対が配設され、該搬送ローラ対より下流側に排出部材としての図示されない排出ローラ対が配設される。
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
まず、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wにおいて、感光体ドラム21が回転させられ、これにより、帯電ローラ23、現像ローラ26等が回転させられる。
そして、帯電ローラ23に帯電バイアスが印加されると、感光体ドラム21の表面が一様に帯電させられ、続いて、LEDヘッド24が印刷データに応じて感光体ドラム21の表面を露光すると、感光体ドラム21上に静電潜像が形成される。前記感光体ドラム21上の、静電潜像が形成された部分が現像ローラ26と対向する位置に到達すると、現像ローラ26に現像バイアスが印加され、これにより、現像ローラ26上のトナーが感光体ドラム21に付着させられ、静電潜像が現像され、各感光体ドラム21上にトナー像が形成される。
感光体ドラム21上のトナー像は、一次転写部において一次転写ローラ45によって中間転写ベルト44に順次重ねて転写され、中間転写ベルト44上にカラーのトナー像が形成される。なお、転写後に感光体ドラム21の表面に残留した残留トナーはクリーニングブレード28によって掻き取られることにより除去される。
一方、用紙カセット11に収容された用紙Pは、ピックアップローラ31によって1枚ずつ分離させられて媒体搬送路Rt1に繰り出され、搬送ローラ対34〜36によって媒体搬送路Rt1を矢印A方向に搬送され、二次転写部に送られる。該二次転写部において、二次転写ローラ46によって、中間転写ベルト44上のカラーのトナー像が用紙Pに転写される。
そして、カラーのトナー像が転写された用紙Pは定着器50に送られ、該定着器50において、トナー像が、加熱ローラ51によって加熱され、加圧ローラ52によって加圧されて用紙P上に定着させられ、カラーの画像が形成される。
カラーの画像が形成された用紙Pは、搬送ローラ対によって搬送された後、排出ローラ対によって装置本体外に排出され、積載される。
次に、前記感光体ドラム21について詳細に説明する。
感光体ドラム21は、アルミニウム、ステンレス鋼等から成る軸芯、及び該軸芯の外周に形成され、有機感光体(OPC:Organic Photoconductor)等から成る感光層を備える。
該感光層は、電荷発生物質及びバインダ樹脂を主成分とする電荷発生層、並びに電荷輸送物質及びバインダ樹脂を主成分とする電荷輸送層を積層することによって形成される。
電荷発生物質としては、各種の有機顔料、染料等が使用されるほかに、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又は該各金属の酸化物、塩化物等を配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料等が使用される。
そして、電荷発生物質の微粒子を、例えば、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール等の各樹脂、及びフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各樹脂から成るバインダ樹脂で結着することによって形成された分散層により、電荷発生層が形成される。
また、電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール等の複素環化合物、及びアニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、若しくはこれらの化合物から成る基を主鎖、又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質が使用される。
そして、電荷輸送物質の微粒子を、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド等の各樹脂、並びにフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーンゴム、及びこれらの物質の共重合体、部分的架橋硬化物等を単独又は混合物として使用したバインダ樹脂で結着することによって電荷輸送層が形成される。なお、バインダ樹脂として、特に、ポリカーボネートを使用するのが好ましい。また、必要に応じて、電荷輸送層に酸化防止剤、増感剤等の各種の添加剤を添加することができる。
本実施の形態においては、軸芯として、アルミニウム管の表面にアルマイト処理を施したものが使用され、電荷発生層の電荷発生物質としてフタロシアニン類が使用され、電荷発生層のバインダ樹脂としてポリビニルアセタール系の樹脂が使用され、電荷輸送層の電荷輸送物質としてヒドラゾン化合物が使用され、電荷輸送層のバインダ樹脂としてポリカーボネートが使用される。そして、電荷輸送層に酸化防止剤が添加される。感光ドラム21の電荷輸送層の膜厚は20〔μm〕にされ、感光ドラム21の外径は30.0〔mm〕にされる。
次に、中間転写ベルト44について詳細に説明する。
本実施の形態において、中間転写ベルト44は、一層又は複数層の樹脂層から成り、押出成形、インフレーション成形、射出成形、遠心成形、ディップ成形等によって成形された基層を備える。該基層の表面に、スプレー塗装、ローラ塗装、ディップ塗装等によって表層が形成される。該表層の膜厚は、塗布する材料の濃度、塗布量等によって調整される。
前記基層を形成する材料としては、中間転写ベルト44の耐久性及び機械的特性の観点から、中間転写ベルト44を走行させたときの張力の変化による変形が一定の範囲に収まる材料であり、中間転写ベルト44の蛇行防止用の部材との摺動によって、側縁が摩耗、折れ、割れ等の損傷を受けにくい材料であることから、例えば、ポリアミド (PA) 、ポリビニリデンフルオライド (PVDF) 、ポリブチレンテレフタレート (PBT) 、ポリカーボネート(PC) 、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS) 、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニル、ポリ六フッ化エチレンプロピレン、ポリ三フッ化エチレン、ポリアミドイミド、ポリイミド等が使用される。本実施の形態においては、基層を形成する材料としてポリアミドイミドが使用される。
また、表層を形成する材料としては、ポリアクリル、ポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリアミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、スチレン化合物、ナフタレン化合物等が使用される。本実施の形態において、表層は形成されない。
そして、中間転写ベルト44は、導電性を有するように、基層及び表層の少なくとも一方に導電剤が添加される。導電剤としては、イオン導電剤及び電子導電剤のうちの少なくとも一方が使用される。イオン導電剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、テトラフルオロボラン酸リチウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、有機リン塩、ホウ素酸塩等が使用される。また、電子導電剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が単独で使用されるか、又は2種以上のカーボンブラックが併せて使用される。本実施の形態においては、電子導電剤として、ファーネスブラック、チャンネルブラック等に、酸化処理、グラフト処理等の、酸化による劣化を防止する処理を施したもの、溶媒への分散性を向上させる処理を施したもの等が使用される。
このようにして形成された中間転写ベルト44の体積抵抗率ρvは、106 〔Ω・cm〕以上、かつ、1014〔Ω・cm〕以下にされ、好ましくは、109 〔Ω・cm〕以上、かつ、1012〔Ω・cm〕以下にされる。また、表面抵抗値ρsは107 〔Ω/□〕以上、かつ、1014〔Ω/□〕以下にされ、好ましくは、109 〔Ω/□〕以上、かつ、1012〔Ω/□〕以下にされる。本実施の形態において、中間転写ベルト44の、体積抵抗率ρvは1010〔Ω・cm〕にされ、表面抵抗値ρsは1010.5〔Ω/□〕にされる。
そして、基層の膜厚は、中間転写ベルト44の耐久性及び機械的特性の観点から、基層を形成する材料の弾性率の大小によって決定されるが、60〔μm〕以上、かつ、200〔μm〕以下にするのが好ましい。本実施の形態において、基層の膜厚は100〔μm〕にされる。
次に、トナーについて詳細に説明する。
トナーは、ベースとなるトナー粒子に外添剤を添加することによって形成される。本実施の形態において、トナーは、非磁性一成分の負帯電特性を有する重合トナーであり、乳化重合法によって製造されたスチレンアクリル共重合樹脂、着色剤及びワックスを混合し、凝集させることによって形成されたトナー粒子に、外添剤として、シリカ及び酸化チタンの微粉末を添加し、混合することによって形成される。
本実施の形態においては、トナー粒子として、円形度が0.94以上、かつ、0.98以下であり、平均粒径が7〔μm〕程度であるものが使用され、外添剤として、粒径が50〔nm〕以上、かつ、200〔nm〕以下であるものが使用される。これにより、転写効率を高くすることができ、定着器50において離散剤の使用が不要になる。そして、現像時にドット再現性及び解像度を高くすることによって、画像品位を向上させることができる。
次に、一次転写ローラ45について詳細に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態における一次転写ローラの斜視図、図3は本発明の第1の実施の形態における一次転写ローラの断面図である。
図において、45は一次転写ローラ、61は電源に接続された導電性支持体としての軸芯、62は、該軸芯61の外周に形成され、導電性を有する弾性層としての導電層62である。
前記一次転写ローラ45は、中間転写ベルト44(図1)を介して感光体ドラム21に当接させられ、感光体ドラム21との間に副走査方向において均一なニップが形成されるように、前記導電層62が、ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂等から成り、導電性を有する非発泡性の弾性体、すなわち、ソリッド弾性体によって形成される。
導電層62は単層構造で形成することができるが、2層以上の多層構造で形成することによって、導電層62の抵抗値、硬度等を調整することができ、中間転写ベルト44が汚れるのを防止することができる。
例えば、導電層62の表面に表面処理、コーティング等を施すことによって表層を形成することにより、導電層62の抵抗値を調整することができる。また、導電層62の表面に紫外線照射を施すことによって導電層62の表面を酸化させ、酸化膜を形成することにより、中間転写ベルト44が汚れるのを防止することができる。
前記導電層62を形成する弾性体として、エピクロルヒドリンゴム (CO、ECO、GCO、GECO) 、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) 、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM) 、クロロプレンゴム (CR) 、ブタジエンゴム (BR) 、スチレンブタジエンゴム(SBR) 、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム、天然ゴム等が単独で、又は2種以上を混合して使用される。特に、エピクロルヒドリンゴムは主成分として使用されることが好ましい。
エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体 (CO) 、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体(ECO) 、エピクルロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体 (GCO) 、エピクルロヒドリンとプロピレンオキサイドとの共重合体、エピクルロヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GECO) 、エピクルロヒドリンとプロピレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体、エピクルロヒドリンとエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体等が単独で、又は2種以上を混合して使用される。特に、エチレンオキサイドを含む共重合体を使用するのが好ましく、特に、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体、又はエピクルロヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体を使用するのが一層好ましい。
導電層62に表面処理、コーティング等を施すための材料としては、例えば、イソシアネート、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びシリコーンゴム、並びにそれらが変性された樹脂が単独で、又は2種以上を混合して使用される。
また、導電層62において所定の導電性が得られるように、前記弾性体に導電剤が添加される。該導電剤としては、イオン導電剤及び電子導電剤のうちの少なくとも一方が使用される。前記イオン導電剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、テトラフルオロボラン酸リチウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、有機リン塩、ホウ素酸塩等が使用される。また、前記電子導電剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が単独で使用されるか、又は2種以上のカーボンブラックが併せて使用される。電子導電剤にファーネスブラック、チャンネルブラック等を使用する場合、導電層62に、酸化処理、グラフト処理等の酸化による劣化を防止する処理、又は溶媒への分散性を向上させる処理が施される。
導電層62の抵抗値を調整するために、前記イオン導電剤及び電子導電剤のほかに、カーボンブラック、金属酸化物等の導電剤が添加される。さらに、必要に応じて、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、難燃剤等が適宜添加される。
なお、導電剤としては、前述されたように、イオン導電剤及び電子導電剤のいずれも使用することができるが、導電層62の抵抗値にむらが生じると、トナー像の転写むらが生じるので、一般的に、イオン導電剤が使用される。
このようにして形成された導電層62の抵抗値は、体積抵抗率ρvで109 〔Ω・cm〕以下、好ましくは、108 〔Ω・cm〕以上、かつ、109 〔Ω・cm〕以下にされる。
次に、導電層62の抵抗値を測定するための抵抗値測定装置について説明する。
図4は抵抗値測定装置を示す図である。
図において、45は一次転写ローラ、61は軸芯、62は導電層、63は抵抗値測定装置(アジレント・テクノロジー社製「4339B」)、64は、直径が30〔mm〕の金属製、本実施の形態においては、SUS製のドラム、65は測定部としてのハイレジスタンスメータである。
ドラム64を、50〔gf/cm〕の線圧で一次転写ローラ45に押し付け、矢印C方向に回転させると、一次転写ローラ45が矢印D方向に回転させられ、その状態でハイレジスタンスメータ65によって導電層62の抵抗値が測定される。なお、ドラム64及びハイレジスタンスメータ65は接地させられる。
ところで、一次転写ローラ45には、前記電源によって一次転写バイアスが印加され、一次転写ローラ45の表面に形成された電位により、感光体ドラム21のトナー像が中間転写ベルト44に転写されるようになっている。この場合、一次転写ローラ45の表面に形成された電位は、トナー像が中間転写ベルト44に転写されるのに伴って低くなり、残留電位として一次転写ローラ45の表面に残るが、前記残留電位が高いほどトナー像の転写を良好に行うことができる。
次に、一次転写ローラ45の表面における残留電位を測定するための残留電位測定装置について説明する。
図5は残留電位測定装置を示す図である。
図において、45は一次転写ローラ、61は軸芯、62は導電層、68は残留電位測定装置(Quality−Engineering−Associates社製「誘電緩和測定器DRA−2000L」)である。
該残留電位測定装置68は、一次転写ローラ45の走査方向に移動自在に配設されたキャリヤ71、コロナ放電電極72、表面電位計73等を備え、該表面電位計73は、本体74、及び該本体74とケーブル75を介して接続されたプローブ76から成り、キャリヤ71に、コロナ放電電極72及びプローブ76が、一次転写ローラ45と対向させて23〔mm〕の間隔を置いて搭載される。一次転写ローラ45の軸芯61は、1〔MΩ〕の抵抗r1を介して、表面電位計73の本体74は直接、接地させられる。
コロナ放電電極72に6.0〔kV〕のコロナ放電電圧を印加してコロナ放電を行い、一次転写ローラ45を帯電し、キャリヤ71を矢印E方向に230〔mm/秒〕の速度で移動させると、
23〔mm〕/230〔mm/秒〕=0.1〔秒〕
であるので、一次転写ローラ45を帯電した後、0.1〔秒〕が経過したときの一次転写ローラ45の表面電位を測定することができる。
本実施の形態においては、コロナ放電電極72に6.0〔kV〕のコロナ放電電圧を印加することを第1の測定条件とし、一次転写ローラ45を帯電した後、0.1〔秒〕が経過したときの一次転写ローラ45の表面電位を測定することを第2の測定条件として、表面電位が残留電位とされる。
ところで、前記一次転写部及び二次転写部における転写条件、本実施の形態においては、一次転写部における転写条件を十分に画像パターンに対応させることができないと、用紙P上に形成される画像の画像品位が低くなってしまう。
そこで、一次転写部において転写条件を異ならせた実施例1〜10について印刷試験を行い、用紙P上に形成された画像品位について評価を行った。
なお、各実施例においては、いずれも、一次転写ローラ45として、外径が12.0〔mm〕であり、軸芯61の径が8〔mm〕であり、導電層62の長さ(ゴム長)が132〔mm〕のものを使用した。
〔実施例1〜4〕
実施例1〜4においては、一次転写ローラ45を製造するために、表面にコーティングが施された導電層62が使用され、弾性体として、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体) との混合物をベースポリマー(基材)とし、ベースポリマーと架橋剤及び架橋助剤とを混合したものを使用した。
なお、一次転写ローラ45の弾性体に、導電剤、受酸剤、酸化防止剤、劣化防止剤、加工助剤、充填剤、顔料、難燃剤、中和剤等のうちの少なくとも1種の添加剤を添加した。
実施例1〜4において、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとの混合物をベースポリマーとして使用し、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとの混合比を、それぞれ7:3、6:4、5:5、4:6にすることによって導電層62の抵抗値を調整し、抵抗値の大きい方から順に実施例1〜4とした。
なお、ベースポリマーに混合される架橋剤として、エピクロルヒドリンゴムを架橋させるための、チオウレア系の架橋剤及びその促進剤と、アクリロニトリルブタジエンゴムを架橋させるための、硫黄及び含硫黄系の架橋剤から成る少なくとも1種の架橋剤並びに含硫黄系の促進剤とを併用することが好ましい。
続いて、ベースポリマーに架橋剤を混合したものを混練し、押出成形によって押出加工をし、加硫し、研磨することによってロール形状の成形物であるロール体を作成した。次に、該ロール体に付着した研磨屑を除去し、清掃した後、ロール体を軸芯61に被覆することによって、導電層62を形成し、該導電層62の表面にコーティングを施すことによって、一次転写ローラ45を形成した。
なお、導電層62の表面にコーティングを施す方法には、スプレー塗布、ロールコーター、ディッピング等の方法があるが、各実施例においてはスプレー塗布を使用した。
コーティングを施すための材料、すなわち、コーティング剤には、溶媒として酢酸エチル100〔重量部〕を使用し、酢酸エチルに、ベースとしてイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート:HDI)20〔重量部〕を加えたものを表面処理液として使用した。
続いて、前記導電層62の表面に表面処理液をスプレー塗布した後、オーブンによって導電層62を加熱し、溶媒を乾燥させた。
このとき、イソシアネートは、導電層62の表面の近傍に浸漬して硬化し、表層を形成する。本実施の形態においては、表面処理液が導電層62の表面において深さ数十〔μm〕にわたって浸漬し、表面に近いほどイソシアネートの濃度が高くなるが、表層は他の層との間に境界を形成するような明らかな層にはならない。
導電層62の表面にコーティングが施された一次転写ローラ45のゴム硬度は、ゴム硬度測定装置(高分子計器社製のマイクロゴム硬度計「MD1−capa」)で測定したところ、62〔度〕であった。
〔実施例5〜7〕
実施例5〜7においては、実施例1〜4の導電層62と同様に、弾性体として、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体) との混合物をベースポリマーとし、ベースポリマーに架橋剤及び架橋助剤を混合したものを使用した。
また、弾性体に、導電剤、受酸剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、充填剤、顔料、難燃剤、中和剤等のうちの少なくとも1種の添加剤を添加した。
この場合、前記ベースポリマーにおけるアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとの混合比を、それぞれ5.5:4.5、5:5、4:6にすることによって導電層62の抵抗値を調整し、抵抗値の大きい方から順に実施例5〜7とした。
導電層62の表面にコーティングを施す方法はスプレー塗布とし、コーティング剤には、溶媒として酢酸エチル100〔重量部〕を使用し、酢酸エチルに、ベースとしてイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート) 20〔重量部〕を加え、離型剤としてポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレン(PTFE)1〔重量部〕を添加したものを表面処理液として使用した。
ポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレンは導電層62の表面に浸漬しやすいので、イソシアネートは導電層62の表面の近傍に一層浸漬する。これにより、導電層62の表面の近傍のイソシアネートの濃度を一層高くすることができる。
一次転写ローラ45のゴム硬度は、ゴム硬度測定装置(高分子計器社製のマイクロゴム硬度計「MD1−capa」)で測定したところ、56〔度〕であった。
〔実施例8〜10〕
実施例8〜10においては、一次転写ローラ45を製造するために、表面にコーティングが施された導電層62を使用し、導電性を有するシリコーンゴム(Si)を弾性体として、かつ、ベースポリマーとして使用した。この場合、シリコーンゴムの組成物に半導電性硬化物層(シリコーンゴム層) を形成し、半導電性硬化物層によって導電層62の抵抗値を調整した。
前記シリコーンゴムの組成物は、加圧成形、移送成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形等の成形方法によって成形し、硬化剤の種類に応じて硬化させ、半導電性硬化物層を形成した。
電子導電剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等を単独で、又は2種以上のカーボンブラックを併せて使用することができる。
この場合、シリコーンゴムの組成物の表面を研磨することによってロール形状の成形物であるロール体を作成した。次に、ロール体に付着した研磨屑を除去し、清掃した後、ロール体を軸芯61に被覆することによって、導電層62を形成し、導電層62の表面にコーティングを施すことによって、一次転写ローラ45を形成した。
導電層62の表面にコーティングを施す方法はスプレー塗布とし、コーティング剤には、溶媒として酢酸エチル100〔重量部〕を使用し、酢酸エチルに、ベースとして、イソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート:MDI) 15〔重量部〕を加え、離型剤としてポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレン0.5〔重量部〕を添加したものを表面処理液として使用した。
続いて、前記導電層62の表面に表面処理液をスプレー塗布した後、オーブンによって導電層62を加熱し、溶媒を乾燥させた。なお、このとき、イソシアネートは、導電層62の表面の近傍に浸漬して硬化し、表層を形成する。
一次転写ローラ45のゴム硬度は、ゴム硬度測定装置(高分子計器社製のマイクロゴム硬度計「MD1−capa」)で測定したところ、45〔度〕であった。
なお、イソシアネートは、体積抵抗率が12〔LogΩ/cm〕以上であるので、導電層62の表面に表層を形成することによって、導電層62の抵抗値を高くすることができる。なお、イソシアネート以外でも、体積抵抗率が8〔LogΩ/cm〕以上のコーティング剤を使用し、コーティング剤の材料に応じて表層の膜厚を調整することによって、導電層62の抵抗値を高くすることができる。
各実施例1〜10の一次転写ローラ45について、導電層62において使用されるベースポリマー及びコーティング剤、並びに導電層62のゴム硬度、抵抗値及び残留電位を表1に示す。
また、各実施例の一次転写ローラ45について、導電層62のゴム硬度、並びに感光体ドラム21との間に形成されるニップのニップ量を表す、ニップ線圧、ニップ幅及びニップ圧を表2に示す。
ニップ量は、図6及び7に示されるニップ量測定装置(インストロン社製「力学変位計インストロン5500」)を使用して測定した。
図6はニップ量測定装置を示す側面図、図7はニップ量測定装置を示す断面図である。
図において、45は一次転写ローラ45、61は軸芯、62は導電層、80はニップ量測定装置、81は軸受としてのVブロック、82は押圧部材としての平板である。
軸芯61の両端をVブロック81で支持した状態で導電層62の長手方向における中央部に、縦50〔mm〕×横50〔mm〕の平板82を当て、上方から一定の荷重Fで導電層62を押し、圧縮した。
このときの平板82の押込量dに基づいてニップ幅wを算出することができるので、導電層62に等分布荷重が加わると仮定すると、単位面積当たりのニップ圧pは、
p=F/(w×50)〔gf/mm2 〕
になる。
なお、荷重Fは一次転写ローラ45のニップ線圧から算出することができる。前記ニップ量測定装置80において、ニップ線圧を、それぞれ、8.9〔gf/cm〕、11.2〔gf/cm〕、15.8〔gf/cm〕、25.7〔gf/cm〕及び34.9〔gf/cm〕とした。
続いて、各実施例1〜10の一次転写ローラ45をプリンタ10に搭載し、印刷試験を行ったときの画像品位の良否を判断した。
この場合、一次転写ローラ45の長さを132〔mm〕とし、中間転写ベルト44を介して感光ドラム21に当接させ、感光ドラム21との間にニップを形成した。用紙Pの幅は130〔mm〕とし、印刷可能範囲の幅は122〔mm〕とした。
印刷試験の条件は、以下のとおりとした。
印刷環境はHH(高温度・高湿度)とし、プリンタ10を28〔℃〕の温度下及び80〔%RH〕の湿度下に置いた。また、印刷速度を2.3〔inch/秒〕とし、感光体ドラム21の表面電位を、白紙パターン印刷時において500〔V〕程度になるように、ベタ濃度を、O.D.値で1.6程度になるように調整した。
また、転写条件について、一次転写ローラ45に印加される一次転写バイアスを、白紙印刷時に5〔μA〕程度の転写電流が流れるように、各一次転写ローラ45ごとに調整し、一次転写ローラ45のニップ線圧を、前述されたように、それぞれ、8.9〔gf/cm〕、11.2〔gf/cm〕、15.8〔gf/cm〕、25.7〔gf/cm〕及び34.9〔gf/cm〕とした。
そして、印刷試験において形成される画像を、図8の画像パターンで示されるようなものとした。
図8は印刷試験において形成される画像の画像パターンを示す図である。
図において、Pは副走査方向(矢印G方向)に搬送される用紙、tnは印刷試験において形成される画像の画像パターンである。該画像パターンtnにおいて、長方形の形状を有するマゼンタのベタ画像q1の中央に長方形の形状を有する無地の領域Ar1が形成される。該領域Ar1の寸法は、縦40〔mm〕×横102〔mm〕とした。
なお、各実施例においては、中間転写ベルト44の走行方向においてイエローの画像形成ユニット20Yが最も上流側に配設されているが、画像品位を目視で判断する場合、マゼンタの画像の画像品位の良否を判断しやすいことから、画像パターンtnにおいてマゼンタのベタ画像q1を形成した。
ところで、図8に示される画像パターンtnの画像を形成すると、走査方向(用紙Pの幅方向)において印刷幅が狭い部分、すなわち、印刷幅が10〔mm〕の部分q2、q3において、濃度段差が形成されてしまうことがある。
図9は印刷結果の例を示す第1の図、図10は印刷結果の例を示す第2の図である。
図において、Pは副走査方向に搬送される用紙、rnは印刷試験において用紙Pに形成された画像である。該画像rnにおいて、長方形の形状を有するマゼンタのベタ画像q1の中央に長方形の形状を有する無地の領域Ar1が形成された。
図9に示される画像においては、走査方向において印刷幅が狭い部分q2、q3の濃度が他の部分と同じであるが、図10に示される画像においては、部分q2、q3の濃度が他の部分より低く、濃度段差が形成された。
これは、印刷幅の広い部分と狭い部分q2、q3とで、一次転写が行われる際のトナー像の逆転写の量が異なるからと考えられる。
図11は本発明の第1の実施の形態における逆転写を説明するための第1の図、図12は本発明の第1の実施の形態における逆転写を説明するための第2の図である。
図において、20Cはシアンの画像形成ユニット、20Bkはブラックの画像形成ユニット、21は矢印J方向に回転させられる感光体ドラム、26は現像ローラ、28はクリーニングブレード、44は中間転写ベルト、45は矢印K方向に回転させられる一次転写ローラである。
すなわち、中間転写ベルト44が矢印B方向に走行させられるのに伴って、各一次転写部においてトナー像Tが中間転写ベルト44に転写されるが、用紙Pの搬送方向における上流側の一次転写部において転写されたシアンのトナー像が下流側の一次転写部を通過する際に、一部のトナーt1が巻き上げられ、逆転写によって感光体ドラム21に付着する。これに伴って、中間転写ベルト44に転写されたトナー像Tに残留するトナーt2の量が少なくなる。
この逆転写によって感光体ドラム21に付着するトナーの量、すなわち、逆転写量は、走査方向において印刷幅が異なる画像パターンの画像を形成する際に、印刷幅が異なる部分を境に変化し、これにより、濃度段差が形成される。
すなわち、用紙Pが搬送されるのに伴って、印刷幅が広い部分から印刷幅が狭い部分q2、q3になると、画像の濃度が低くなり、印刷幅が狭い部分q2、q3から印刷幅が広い部分になると、画像の濃度が高くなる。その結果、用紙Pに形成される画像の画像品位が低下してしまう。
上流側の色のトナー像ほど、下流側の一次転写部を通過する回数が多いので、逆転写量が多くなり、濃度段差が形成されやすい。
各実施例においては、画像品位を目視で判断し、その判定基準を以下のとおりとした。
○:良 形成される濃度段差が非常に小さく、色差がΔE0以上、かつ、ΔE1.0未満である。
◇:可 形成される濃度段差が小さく、色差がΔE1.0以上、かつ、ΔE2.0未満である。
×:不可 形成される濃度段差が大きく、色差がΔE2.0以上である。
各実施例の印刷試験においてニップ圧及び残留電位を異ならせたときの画像品位の判断結果を表3〜5及び図13に示す。
図13は印刷試験において形成された画像の画像品位の判断結果を示す図である。図において、横軸にニップ圧pを、縦軸に残留電位Vを採ってある。
図に示されるように、破線で包囲された領域Q1で濃度段差が小さく、画像品位は可であり、領域Q1のうちの一点鎖線で包囲された領域Q2で濃度段差が非常に小さく、画像品位は良である。
領域Q1:
ニップ圧p:〔2.1gf/mm2 〕以上、かつ、7.3〔gf/mm2 〕以下
残留電位V:V≦84〔V〕
であり、
13.04p−20.06〔V〕≦V
領域Q2:
ニップ圧p:2.1〔gf/mm2 〕以上、かつ、4.4〔gf/mm2 〕以下
残留電位V:V≦84〔V〕
であり、
13.04p−20.06〔V〕≦V
なお、領域Q1におけるニップ圧pと残留電位Vとの関係は、表5の実施例10におけるニップ圧p及び残留電位V
p=2.14〔gf/mm2 〕
V=7.9〔V〕
の各値と、表4の実施例5におけるニップ圧p及び残留電位V
p=4.24〔gf/mm2 〕
V=35.2〔V〕
の各値とから求めた。また、領域Q2におけるニップ圧pと残留電位Vとの関係は、表5の実施例10におけるニップ圧p及び残留電位V
p=2.53〔gf/mm2 〕
V=7.9〔V〕
の各値と、表4の実施例5におけるニップ圧p及び残留電位V
p=7.04〔gf/mm2 〕
V=35.2〔V〕
の各値とから求めた。
ニップ圧pが高くなると、逆転写量が多くなる傾向があり、中間転写ベルト44上に残留するトナーt2の量がその分少なくなることが分かった。
また、図に示される画像品位の判断結果から、残留電位Vが低いと濃度段差が大きくなる傾向が見られた。
このことから、濃度段差が大きくなるのを防止するためには、ニップ圧pが高いほど残留電位Vが高くなるようにするのが好ましいことが分かる。
そこで、一次転写ローラ45の導電層62の表面の抵抗値を大きくすることによって、残留電位Vを84〔V〕より高くすることが考えられるが、残留電位Vが84〔V〕より高くなるように導電層62の表面の抵抗値を大きくすると、導電層62の表面が絶縁化し、導電層62の抵抗値を調整することができなくなってしまう。
したがって、一次転写ローラ45に印加される一次転写バイアスを高くする必要が生じ、消費電力が大きくなり、電源のコストが高くなってしまう。
また、一次転写ローラ45の円周方向において抵抗値にムラが生じ、転写されるトナー像にカスレが生じたり、一次転写部において発生する放電チリ等によって転写不良が生じたりしてしまう。その結果、形成される画像の画像品位が低くなってしまう。
さらに、ニップ圧を上限値より高くすると、中間転写ベルト44又は一次転写ローラ45にニップ痕が生じる恐れがある。また、印刷幅に関係なく逆転写量が多くなるので、画像の濃度が全体的に低くなり、画像品位が低下してしまう。
さらに、ニップ圧を下限値より低くすると、導電層62の弾性体が軟質化し、一次転写ローラ45の長手方向における寸法精度が低下してしまう。この場合、感光体ドラム21との間に均一なニップを形成するのが困難になり、転写されるトナー像に斑、カスレ等が生じ、画像品位が低下してしまう。
本実施の形態においては、一次転写ローラ45のニップ圧pが2.1〔gf/mm2 〕以上、かつ、7.3〔gf/mm2 〕以下に、好ましくは、2.1〔gf/mm2 〕以上、かつ、4.4〔gf/mm2 〕以下にされ、残留電位Vが、
V≦84〔V〕
であって、
6.06p−7.48〔V〕≦V
に、好ましくは、
13.04p−20.06〔V〕≦V
にされるので、一次転写部における残留電位V及びニップ圧pの転写条件を十分に画像パターンに対応させることができる。
したがって、印刷幅が異なる画像パターンの画像を形成する際に印刷幅が異なる部分を境に濃度が変化することがないので、画像品位を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bk、20Wの感光体ドラム21に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト44に順次重ねて転写し、中間転写ベルト44上にカラーのトナー像を形成し、該カラーのトナー像を用紙Pに転写するようにした中間転写方式のプリンタ10について説明したが、本発明を、画像形成ユニットの感光体ドラムに形成されたトナー像を用紙に転写するようにした直接転写方式のプリンタに適用することができる。
次に、画像形成ユニットの感光体ドラムに形成されたトナー像を用紙に転写するようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図14は本発明の第2の実施の形態における直接転写方式のプリンタの概念図である。
本実施の形態においては、画像形成装置としてのプリンタ10の装置本体の上部に、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkが媒体としての、かつ、転写媒体としての用紙Pの搬送方向における上流側から下流側にかけて並べて配設され、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkに像担持体としての各感光体ドラム21が配設される。
そして、前記画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkの下方には転写ユニットu1が配設される。該転写ユニットu1は、駆動部としての図示されないモータと連結され、該モータからの回転を受けて回転させられる第1のローラとしての駆動ローラ41、該駆動ローラ41の回転に伴って回転させられる第2のローラとしての従動ローラ42、前記駆動ローラ41及び従動ローラ42によって走行自在に張設され、駆動ローラ41及び従動ローラ42の回転に伴って走行させられる搬送部材としてのベルト144、該ベルト144を介して各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkの各感光体ドラム21にそれぞれ当接させて、すなわち、各感光体ドラム21との間にニップを形成して配設された転写部材としての転写ローラ145、前記ベルト144の走行方向における従動ローラ42より下流側において、ベルト144と対向させて配設されたクリーニング装置48等を備える。なお、前記各転写ローラ145と各感光体ドラム21との間に転写部が形成される。
この場合、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkにおいて、感光体ドラム21が回転させられ、これにより、帯電装置としての帯電ローラ、現像剤担持体としての現像ローラ26等が回転させられる。
そして、帯電ローラによって感光体ドラム21の表面が一様に帯電させられ、続いて、露光装置としてのLEDヘッド24が感光体ドラム21の表面を露光すると、感光体ドラム21に潜像としての静電潜像が形成され、現像ローラ23上のトナーが感光体ドラム21に付着させられると、静電潜像が現像され、各感光体ドラム21に現像剤像としてのトナー像が形成される。
一方、媒体収容部としての用紙カセット11に収容された転写媒体としての用紙Pは、ピックアップローラ31によって媒体搬送路Rt1に繰り出され、搬送部材としての搬送ローラ対34、35によって媒体搬送路Rt1を搬送され、各転写部に送られる。該転写部において、転写ローラ145によって、各感光体ドラム21上のトナー像が順次重ねて用紙Pに転写され、用紙P上にカラーのトナー像が形成される。
そして、カラーのトナー像が形成された用紙Pは、定着装置としての定着器50に送られ、該定着器50において、カラーのトナー像が定着させられ、カラーの画像が形成される。
本実施の形態においては、転写ローラ145のニップ圧pが2.1〔gf/mm2 〕以上、かつ、7.3〔gf/mm2 〕以下に、好ましくは、2.1〔gf/mm2 〕以上、かつ、4.4〔gf/mm2 〕以下にされ、残留電位Vが、
V≦84〔V〕
であって、
6.06p−7.48〔V〕≦V
に、好ましくは、
13.04p−20.06〔V〕≦V
にされる。
なお、本実施の形態においては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkが、ベルト144の走行方向に沿って配設されるようになっているが、第1の実施の形態と同様に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びホワイトの画像形成ユニットを配設することができる。
また、本実施の形態においては、各転写ローラ145がベルト144を介して画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkの各感光体ドラム21に当接させられるようになっているが、各転写ローラ145を画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkの各感光体ドラム21と直接対向させることができる。
前記各実施の形態においては、画像形成装置としてのプリンタ10について説明したが、本発明を複合機、ファクシミリ、複写機等に適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。