JP6661556B2 - ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(i)の調製プロセス - Google Patents

ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(i)の調製プロセス Download PDF

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Description

(序論)
本発明の主題は、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、RhH(CO)(PPh(以下、「Rh−ヒドリド」とも呼ぶ)の調製プロセスである。「Ph」は、フェニル基の略称として以下で使用する。
本プロセスは、いかなる中間体単離又は洗浄工程も省略する改善された単一工程手順によって特徴付けられる。したがって、本プロセスは、いわゆるワンポット合成である。本出願では、いくつかのプロセス工程を含んでもよいが中間体単離工程を伴わずに単一容器内で行われるプロセスもまた、「単一工程」と呼ばれ、上述のワンポット合成の意味に解釈されるべきである。
この単一工程プロセスを用いて、Rh−ヒドリドは、高収率かつ非常に高品質で調製することができる。本プロセスによって調製されたRh−ヒドリドの塩化物含有量は、(生成物に対して)500ppm未満であり、収率は、99%よりも高い。更に、本明細書に提示されたプロセスによるRh−ヒドリドの調製における容積収量は、先行技術から既知のプロセスによる調製の場合よりも大幅に高い。この高い容積収量は、本プロセスが工業規模で採算性があることを意味する。この文脈での容積収量は、反応器中で単位体積当たり生産された生成物の量を意味する。
調製されたRh−ヒドリドは、例えば、ヒドロホルミル化反応などでの均一触媒反応用の触媒として特に好適である。
RhH(CO)(PPhを調製するための多数の一段階及び複数段階プロセスは、先行技術から既知である。様々な既知の合成をダイアグラム形式で以下に示す。
Figure 0006661556
国際公開第2005/005448(A1)号は、塩化Rh(III)溶液(1a及び1b)をトリフェニルホスフィンを用いて変換することによるクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(2)の調製プロセスを説明している。RhCl(PPhは、当業者には「ウィルキンソン触媒」の名称で既知である。国際公開第2005/005448(A1)号によると、生成物(2)の品質は、反応中の温度制御に直接かつ再現性よく影響される。反応溶液は、非常に小さなほとんどろ過不可能なウィルキンソン触媒結晶が生成することとならないように、徐々に加熱しなければならない。国際公開第2005/005448号(A1)号に開示されたプロセスは、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(2)を大きな結晶の形状で生じさせる。
この方法で生成したRhCl(PPh(2)は、中間体工程5又は3を経由するヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(4)の合成の限定された範囲にのみ好適である。大きな結晶は、容易には溶解しないため、中間生成物及び生成物への完全変換は、達成できない。得られるのは、反応物質(2)、中間生成物(5及び3)、及び生成物(4)の混合物である。これは、非常に希釈された(2)の溶液を使用する必要があることを意味する。生成物(4)の容積収量は、低い。
塩化ロジウム(III)水和物(1a)からのカルボニルクロロビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(5)の調製は、“D.Evans,JA Osborn,G Wilkinson,trans−Carbonylchlorobis(triphenylphosphine)rhodium and related Complexes”,Inorg Synth 1990,28,79−80に開示されている。この文献では、RhCl・3HO(1a)のエタノール溶液は、過剰量のPPhと混合され、その後、ホルムアルデヒド水溶液が素早く加えられる。RhCl(CO)(PPh)2(5)の収率(85%)及び容積収量(約12g/L)は、低く、反応生成物は、非常に難溶性である。
塩化ロジウム(III)水和物RhCl・3HO(1a)からヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、RhH(CO)(PPh(4)を調製するためのワンポット反応は、N Ahmad,SD Robinson,MZ Uttley,“Transition−metal Complexes Containing Phosphorus Ligands.Part VII.New and Improved Syntheses for Some Triphenylphosphine Complexes of Rhodium,Iridium,Ruthenium,and Osmium,”J Chem Soc Dalton Trans 1972,843−847、及びN Ahmad,JJ Levison,SD Robinson,MF Uttley,“Hydrodo Phosphine Complexes of Rhodium,”Inorganic Synth 1990,28,81−83に開示されている。大過剰のモル数のトリフェニルホスフィン、ホルムアルデヒド水溶液、及びエタノール性KOHは、塩化ロジウム(III)水和物RhCl・3HOのエタノール溶液に加えられ、RhH(CO)(PPhを生じる。中間体工程としてRhCl(CO)(PPh(5)が生じる。このワンポット反応の1つの欠点は、工業規模には適さないことである。使用される物質は、中間体工程のRhCl(CO)(PPh(5)が完全に変換されず、生成物が過剰のClを含有することとならないように、低濃度である必要がある。非常に高い塩素含有量は、最終生成物RhH(CO)(PPh(4)の触媒特性に悪影響を与えることとなる。更に、試薬は、副生成物の生成を防止するために素早く連続して加える必要がある。しかし、大規模な工業生産設備では、試薬をそのように素早く加えることは不可能であり、このプロセスを工業規模には適さないものにしている。加えて、容積収量は、低く(約6g/L)、このプロセスを非経済的にする。
N Ahmad,SD Robinson,MZ Uttley,“Transition−metal Complexes Containing Phosphorus Ligands.Part VII.New and Improved Syntheses for Some Triphenylphosphine Complexes of Rhodium,Iridium,Ruthenium,and Osmium,”J Chem Soc Dalton Trans 1972,843−847 及びN Ahmad,JJ Levison,SD Robinson,MF Uttley,“Hydrido Phosphine Complexes of Rhodium,”Inorganic Syntheses Vol.28,1990,81−83に、ヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(3b)を調製をするために、塩化ロジウム水和物RhCl・3HO(1a)がトリフェニルホスフィンを用いてエタノール性KOHに変換されるプロセスが開示されている。この文献でも同様に、成分は、素早く加えなければならず、容積収量は、低く(約9g/L)、このプロセスを工業規模には適さないものにしている。
JJ Levison,SD Robinson,“Transition−metal Complexes containing Phosphorus Ligands.Part III.Convenient Syntheses of Some Triphenylphosphine Complexes of the Platinum Metals,”J Chem Soc A 1970,2947−2954に、ヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(3b)及びヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(4)のいくつかの調製プロセスが開示されている。両方の場合で、反応物質は、塩化ロジウム(III)水和物RhCl・3HO(1a)である。RhCl・3HOをPPh及びNaBHを用いてエタノール中で変換すると、RhH(PPhを生じる。PPh、NaBH、及びエタノールに加えてホルムアルデヒド水溶液もまたRhCl・3HOに加えられる場合、RhH(CO)(PPh(4)が得られることとなる。両方のプロセスで、反応物質は、素早く加えなければならず、容積収量は、低く(約6g/L)、したがって、これらのプロセスを工業規模には適さないものにしている。
KC Dewhirst,W Keim,CA Reilly,“The Preparation and Nuclear Magnetic Resonance Spectra of Hydridophosphine Complexes of Ruthenium and Rhodium,”Inorg Chem 1968,7,546−551では、RhH(CO)(PPh(4)の複数段階合成が説明されている。第1の工程で、ウィルキンソン触媒(2)は、ヒドリド(トリフェニルホスフィン)ロジウム(3a)又は(3b)に変換される。第2の工程で、それらからカルボニル錯体RhH(CO)(PPhが調製される。ジエチルエーテル及びn−ヘキサン中でのRhCl(PPh(2)のトリイソプロピルアルミニウムとの反応は、RhH(PPh(3a)を生じる。この反応生成物(3a)をPPhを用いてトルエン中で変換すると、RhH(PPh(3b)が得られる。ベンゼン−エタノール混合物中でのRhCl(PPh(2)のPPh及びヒドラジンとの反応もまた、RhH(PPh(3b)を生成する。次いで(3a)がエタノール中で一酸化炭素を用いて変換されるとき、又は次いで(3b)がベンゼン中で一酸化炭素を用いて変換されるとき、RhH(CO)(PPh(4)が生成される。Dewhirstらによって説明されたプロセスの欠点は、これらのプロセスがワンポットプロセスではないことである。非常に空気に敏感な中間生成物RhH(PPh3〜4(3a)及び(3b)は、単離しなければならない。加えて、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、トリイソプロピルアルミニウム、及びヒドラジンなどの高引火性又は非常に毒性の溶媒又は試薬を使用する。生成物の収率は、著しく低い(約50%)。
欧州特許第0055487(B1)号は、例えば、RhCl(CO)(PPh(5)であってもよい、ハロカルボニルビス(三置換有機リン)ロジウム化合物の調製プロセスを開示している。この特許では、(a)ロジウム錯体濃縮物、(b)ハロゲン化物イオン供給源、(c)一酸化炭素ガス又は一酸化炭素供給源、及び(d)遊離三置換有機リン配位子(例えば、PPh)からなる溶液が変換されている。ロジウム錯体濃縮物は、ロジウムを含有する使用済みヒドロホルミル化反応媒質からなる。プロセスを開始する前に、ヒドロホルミル化反応媒質を濃縮する必要がある。次いで、得られたハロカルボニルビス(三置換有機リン)ロジウム化合物は、金属水素化物及び三置換有機リン配位子を用いるワンポットプロセスで任意選択的に変換することができる。金属水素化物は、水素化ホウ素が有利となり、三置換有機リン配位子は、PPhが有利となる。金属水素化物及び三置換有機リン配位子を用いる変換に続いて、RhH(CO)(PPh(4)などのヒドリドカルボニルトリス(三置換有機リン)ロジウム(I)化合物が得られる。
欧州特許第0083094(B1)号は、例えば、RhCl(CO)(PPh(5)であってもよい、ヒドリドカルボニルトリス(三置換有機リン)ロジウム化合物を調製するための一段階プロセスを説明している。この特許では、(a)ロジウム錯体濃縮物、(b)水素ガス又は水酸化アルカリ若しくは水酸化アルカリ土類の形式での水素供給源、(c)1〜10個の炭素原子を有するアルコール、(d)COガス又はCO供給源、及び(e)PPhなどの遊離三置換有機リン配位子からなる溶液が変換されている。ロジウム錯体濃縮物は、ロジウムを含有する使用済みヒドロホルミル化反応媒質からなる。プロセスを開始する前に、ヒドロホルミル化反応媒質を濃縮する必要がある。この事例での生成物は、不純物を非常に多く含む生成物を示唆する黄緑色懸濁液として説明されている。別の欠点は、この貴金属に対して13%〜75%の中程度から不十分な収率であることである。
米国特許第2644446号は、液体反応媒質中のロジウムを、水酸化アルカリ金属又はアルカリ金属アルコキシド、水素又は一酸化炭素などの還元剤、及びアルコールと、配位子存在下で混合し、0℃〜150℃で反応させるプロセスを説明している。
反応生成物の融点は、RhCl(CO)(PPhの実際の融点とは顕著に異なり、不純物を非常に多く含む生成物を示唆しており、反応物質と比較すると、大量の溶媒を使用しなければならない。物質を加えるための具体的な順序又は反応の具体的な温度プロファイルは、記載されていない。
容積収量は、欧州特許第0055487(B1)号及び米国特許第2644446号だけではなく、欧州特許第0083094(B1)号においても比較的低い。
塩化ロジウム三水和物(1a)からのアセチルアセトナトジカルボニルロジウム(I)(6)の調製は、JG Leipoldt,SS Basson,LDC Bok,TLA Gerber,“The Crystal Structure of Acetylacetonatocarbonyltriphenylphosphanerhodium(I),”Inorg Chim Acta 1978,26,L35−L37で説明されている。この場合の第1の工程で、[RhCl(CO)]の溶液は、塩化ロジウム(III)水和物RhCl・3HOのジメチルホルムアミド溶液を還流するまで加熱することによって調製された。第2の工程で、アセチルアセトンを加えて、Rh(CO)(acac)(6)を生成させた。ここで「acac」は、アセチルアセトン基を表す。
YS Varshavskii,TG Cherkasova,IS Podkorytov,AA Korlyukov,VN Khrustalev and AB Nikol’skii:“Rh(I)Carbonyl Carboxylato Complexes:Spectral and Structural Characteristics.Some Reactions of Coordinated Formate Group,”Russ J Coord Chem 2005,31,121−131に、ジカルボニル(アセチルアセトナト)ロジウム(I)(6)からのヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(4)の調製が開示されている。第1の工程で、Rh(CO)(acac)(6)は、ジエチルエーテル中で無水ギ酸を用いて変換され、[Rh(CO)(HCOO)](7)を生じさせる。第2の別個の工程で、ギ酸錯体(7)は、1:10(mol/mol)の割合のトリフェニルホスフィンPPhを用いて2−プロパノール中で変換され、RhH(CO)(PPh(4)を生じさせる。この合成は、第1の工程で高引火性のジエチルエーテルを使用し、第2の工程で大過剰のPPhを必要とするため、大規模での適用には適していない。更に、この合成は、手間のかかる複数段階合成である。
国際公開第2005/005448(A1)号 欧州特許第0055487(B1)号 欧州特許第0083094(B1)号 米国特許第2644446号
"D.Evans,JA Osborn,G Wilkinson,trans−Carbonylchlorobis(triphenylphosphine)rhodium and related Complexes",Inorg Synth 1990,28,79−80 N Ahmad,SD Robinson,MZ Uttley,"Transition−metal Complexes Containing Phosphorus Ligands.Part VII.New and Improved Syntheses for Some Triphenylphosphine Complexes of Rhodium,Iridium,Ruthenium,and Osmium,"J Chem Soc Dalton Trans 1972,843−847 N Ahmad,JJ Levison,SD Robinson,MF Uttley,"Hydrodo Phosphine Complexes of Rhodium,"Inorganic Synth 1990,28,81−83 JJ Levison,SD Robinson,"Transition−metal Complexes containing Phosphorus Ligands.Part III.Convenient Syntheses of Some Triphenylphosphine Complexes of the Platinum Metals,"J Chem Soc A 1970,2947−2954 KC Dewhirst,W Keim,CA Reilly,"The Preparation and Nuclear Magnetic Resonance Spectra of Hydridophosphine Complexes of Ruthenium and Rhodium,"Inorg Chem 1968,7,546−551 JG Leipoldt,SS Basson,LDC Bok,TLA Gerber,"The Crystal Structure of Acetylacetonatocarbonyltriphenylphosphanerhodium(I),"Inorg Chim Acta 1978,26,L35−L37 YS Varshavskii,TG Cherkasova,IS Podkorytov,AA Korlyukov,VN Khrustalev and AB Nikol’skii:"Rh(I)Carbonyl Carboxylato Complexes:Spectral and Structural Characteristics.Some Reactions of Coordinated Formate Group,"Russ J Coord Chem 2005,31,121−131
ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)のこれまでの既知の調製プロセスには、多数の欠点がある。一部のプロセスは、多段階工程を有し、中間生成物の手間のかかる単離を必要とする。他のプロセスは、一段階のみを有してはいるが、反応物質を素早く加えなければならず、大規模設備で基質を加えることができる速度は制限されるため、これらのプロセスは、工業規模では使用できない。すべての既知のプロセスの共通点とは、容積収量、すなわち、溶媒の単位体積当たりの生成物の質量は、比較的低いことであり、これは、大量の溶媒を使用する必要があり、次いで、除去しなければならないことを意味する。
したがって、本発明の課題は、RhHCO(PPhの調製における先行技術の欠点を克服すること、及び単一工程で進行するだけではなく顕著に改善された容積収量を伴って工業規模で実施可能なプロセスを提供することである。
この課題は、RhH(CO)(PPhを調製するための単一工程プロセスによって解決され、このプロセスは、
(a)不活性化された反応容器内でのトリフェニルホスフィンPPhのアルコール懸濁液の調製工程と、
(b)PPhアルコール懸濁液を30〜40℃の温度で塩化Rh(III)前駆体と混合する工程と、
(c)PPh懸濁液と塩化Rh(III)前駆体との反応混合物を昇温下で、一実施形態では1.5〜3時間撹拌する工程であって、
−アルコールの沸点が85℃未満の場合、撹拌は、還流下で行われ、
−アルコールの沸点が85℃以上の場合、撹拌は、75℃〜85℃の内温を有する反応容器で行われる、工程と、
(d)工程(c)からの懸濁液を35〜50℃まで、特に40〜50℃まで冷却する工程と、
(e)水酸化アルカリアルコール溶液を加える工程と、
(f)反応懸濁液を35〜50℃で、特に40〜50℃で撹拌する工程であって、1.5〜3時間継続することがほとんどの場合に十分である、工程と、
(g)COガスを用いて、ほとんどの場合2〜16時間、スパージングする工程と、
(h)ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)錯体を分離し、可能な場合は洗浄し、乾燥させる工程と、を含む。
課題の解決は、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を調製するための一段階プロセスの提供を含む。このプロセスは、使用される化学物質、プロセス制御、高い生成物品質、及び容積収量を含む高収率が達成可能であることから、環境に優しくかつ経済的である。
本発明の意義の範囲内での一段階プロセスは、中間生成物のいかなる単離も行わないヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の調製を含む。したがって、本発明は、費用がかかりかつ時間を浪費する中間体単離工程又は中間体洗浄工程を用いずに、目的の生成物を単一の反応器内でその場で出発物質から調製するプロセスを説明する。中間体単離工程又は中間体洗浄工程を用いない単一反応器内でのその場での調製は、以下、「ワンポット合成」と呼ぶ。
このプロセスは、プロセス条件が意図的に選択されているため、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の容易な単離を可能にし、目的化合物は、反応混合物から直接沈殿する。したがって、このプロセスは、沈殿として分離可能な化合物を含有する懸濁液の生成を含む。したがって、時間を浪費する又は費用がかかる単離は、例えば、分離するとき、濃縮するとき、又は他のプロセスにおいて、必要ではない。
ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の調製プロセスは、以下で説明され、本発明は、以下に列挙されたすべての実施形態を、単独で又は互いに組み合わせて含む。
本明細書に記載されたプロセスの工程(a)では、トリフェニルホスフィンPPhのアルコール懸濁液を調製する。この懸濁液を調製するために、1〜5個の炭素原子を有する一級又は二級アルコールを使用する。アルコールは、1種又は2種以上の一級アルコール、1種又は2種以上の二級アルコール、又は少なくとも1種の一級アルコールと少なくとも1種の二級アルコールとの混合物であってもよい。
本明細書において、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール(イソブタノール)、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、及びこれらのアルコールの混合物から選択される。トリフェニルホスフィンの懸濁液を調製するために使用されるアルコールは、以下、「アルコール」と呼ぶ。本明細書において、「アルコール」は、単一のアルコール又は数種のアルコールの混合物を表し得る。
具体的な一実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及び2−プロパノール、並びに少なくとも2種のこれらのアルコールの混合物から選択される。エタノールが非常に好適である。
アルコールで満たす前に、反応容器を不活性化する。本明細書において、「不活性化(inerting)」は、アルゴン又は窒素などの不活性ガスによって容器内の酸素を排除することであると理解される。PPhとアルコールとの混合物は、アルコール1リットル当たり100〜250gのPPh、特に1リットル当たり150〜220gのPPhを有利に含有することとなる。
アルコールを不活性化された反応容器内に入れ、PPhを加え、このアルコール−PPh混合物を加熱する。アルコールの沸点が85℃未満の場合、アルコールの沸点まで加熱する。85℃以上の沸点を有するアルコールの場合は、反応容器の内温が75℃〜85℃となるまで加熱する。上記アルコールの沸点は、当業者には知られている。
この温度に到達すると、加熱がアルコールの沸点まで予め達成されていた場合は、15〜60分間、有利には30分間、還流での撹拌を行う。使用するアルコールの沸点が85℃を超える場合、反応容器の内温が75℃〜85℃に到達すると、この温度で15〜60分間、有利には30分間、撹拌を行う。アルコール1リットル当たりの使用するPPhの量及びアルコールの種類に応じて、PPhのすべて又は大部分が、アルコールに溶解することとなる。次いで、反応混合物を、30℃〜40℃の内温Tinternalまで、有利には35℃まで冷却する。このとき、一部のPPhは、微細粉末として再度沈殿し得る。反応混合物が30℃〜40℃まで冷えると、その結果、PPh懸濁液が生じる。
教科書によると、分散は、相互に混合しない少なくとも2つの相の混合物であり、少なくとも2つの相のうち1つは、液体である。第2の相又は更なる相の凝集状態に応じて、分散は、エアロゾル、エマルション、及び懸濁液に分けられ、第2の相又は更なる相は、エアロゾルの場合は気体であり、エマルションの場合は液体であり、懸濁液の場合は固体である。このプロセスでは、反応混合物が30℃〜40℃まで冷えると、その結果、PPh懸濁液が生じる。
このプロセスの工程(b)では、PPhアルコール懸濁液を、塩化Rh(III)前駆体と混合する。塩化Rh(III)前駆体は、塩化ロジウム(III)水和物RhCl・xHO、及び塩化ロジウム(III)溶液H[RhCl]・(HO)、RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)の水溶液及びアルコール溶液並びにこれらの混合物から選択される。用語「アルコール」は、PPh懸濁液に対して与えられた定義のとおりに本明細書で使用される。用語「RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)の水溶液及びアルコール溶液並びにこれらの混合物」は、本明細書では以下を含む。
(a)物質RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)のいずれか一方又は両方を含有する水溶液、
(b)物質RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)のいずれか一方又は両方を含有するアルコール溶液、
(c)水と、アルコールと、物質RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)のいずれか一方又は両方と、を含有する溶液
具体的な一実施形態では、(b)で定義した溶液を使用する。
別の具体的な実施形態では、(c)で定義した溶液を使用する。
溶液が(b)又は(c)に従ったアルコールを含有する場合、1種の単一のアルコール又は少なくとも2種のアルコールの混合物であり得る。別の実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及び2−プロパノール、並びにこれらの混合物から選択される。エタノールが非常に好適である。
塩化Rh(III)水和物及び塩化Rh(III)溶液は、正確な化学量論的組成を有する定義された化合物ではないことは、当業者には既知である。したがって、式RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)は、理想的な組成を表している。存在している錯体化合物は、化合物のハロゲン化物及び水の含有量に応じて変化する。塩化ロジウム(III)水和物及びその市販されている水溶液は、混合クロロ−アコ錯体として通常存在しており、これが、理想的な式中の含水量が「xHO」として与えられている理由である。塩化ロジウム(III)水和物及び塩化ロジウム(III)溶液の調製プロセスに応じて、より多い又はより少ないアコ配位子又はクロリド配位子がロジウム(III)錯体に結合している。塩化Rh(III)水和物の固相の調製では、配位子は、蒸発の度合に依存し、溶液の調製では、酸含有量(HCl)及びこの溶液の濃度に依存する。
使用する塩化Rh(III)前駆体、塩化ロジウム(III)水和物RhCl・xHO、及び塩化ロジウム(III)溶液H[RhCl]・(HO)nは、市販されている。一般的に、すべての塩化ロジウム(III)水和物及び塩化ロジウム(III)溶液は、それらの対応する水又は塩化物含有量(Rh/Cl比)とは無関係に、これらの塩化ロジウム水和物がアルコール、水、又はこれらの混合物に完全に溶解するならば、このプロセスに使用することができる。
有利な一実施形態では、塩化ロジウム(III)前駆体は、40%の最大ロジウム含有量を有する塩化ロジウム(III)水和物、並びに約20%のロジウム含有量及び4:1〜6:1の塩素/ロジウム比を有する塩化ロジウム(III)溶液から選択される。
更に具体的な実施形態では、塩化Rh(III)前駆体は、RhCl・3HOである。この化合物は、以下、「塩化ロジウム(III)水和物」とも呼ばれる。
更に具体的な実施形態では、塩化Rh(III)前駆体は、以下で「塩化ロジウム(III)溶液」と呼ばれるH[RhCl]・(HO)である。通常、30重量%未満のロジウム含有量を有する塩化ロジウム(III)水溶液が使用されるが、これは、これらの水溶液が市販されているため、かつ、例えば、ロジウム金属を濃塩酸及び塩素ガス存在下で溶解することによって調製して得られるためである。しかし、好適な塩化ロジウム(III)溶液はまた、貴金属リサイクル又は工業的貴金属化学でのプロセスストリームから転用されてもよい。更に、塩化ロジウム(III)溶液の使用は、通常使用される固体塩化ロジウム(III)水和物とは対照的に、より費用効率的かつより早い処理を提供する利点を有するが、これは、上流での蒸発、塩化ロジウム(III)水和物としての単離、及び出発量を決定するための分析を必要としないためである。
本発明の有利な一実施形態では、PPhアルコール懸濁液を、予め溶媒と混合させたRh(III)前駆体を用いずに、本プロセスの工程(b)のとおりにRh(III)前駆体と混合する。理想的な組成RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)を有するRh(III)前駆体は、それら自体が一定の含水量を有しているが、本明細書において言及した実施形態では、PPh懸濁液との混合を行う前にこの水に対して更なる溶媒は加えられない。
更なる実施形態では、Rh(III)前駆体は、本プロセスの工程(b)に従ってPPh懸濁液と混合する前に溶媒に加えられる。この溶媒は、上記定義に従って、水、アルコール、又はこれらの混合物である。Rh(III)前駆体が塩化ロジウム(III)溶液である場合、具体的な一実施形態での前駆体は、アルコールと混合される。
準備されたRh(III)前駆体溶液は、10〜30重量%、又は15〜20重量%のロジウム含有量を有利に有し、この数字は、純粋なロジウムに関する。本発明では、用語「純粋ロジウム」は、化合物中のロジウム又はロジウムイオンにのみ関連し、化合物中に含まれる他の元素は無視される。
PPh懸濁液及び塩化Rh(III)前駆体を、0.5〜3時間の間、特に0.5〜1時間混合する。
そのようにすると、PPh懸濁液及び塩化Rh(III)前駆体は、PPh及び純粋ロジウムの量に対して4:1〜10:1(mol/mol)又は4:1〜6:1の割合で混ざり合う。混合は、この場合、連続的又は非連続的であり得る。連続混合は、PPh懸濁液及び塩化Rh(III)前駆体を、1〜3時間の間にわたって、混合容器に同時に加えることと理解される。非連続混合は、まず1つの混合成分をすべて加え、その後、別の混合成分を加えることと理解される。
有利な一実施形態では、塩化Rh(III)前駆体を、既に存在するPPh懸濁液に加える。
上述のすべての連続的及び非連続的な混合プロセスでは、混合は、不活性化された反応器内で行われる。
PPh懸濁液及び塩化Rh(III)前駆体が混合されると、生じた反応混合物を、本プロセスの工程(c)に従って、1.5〜3時間、又は2時間、還流で撹拌する。次いで、反応混合物を、工程(d)に従って、35℃〜50℃まで、又は40℃〜50℃まで、特に45℃まで冷却する。ここで、工程(a)と同様のことを適用する、つまり、アルコールの沸点が85℃未満の場合は、アルコールの沸点まで加熱し、次いで、還流下で撹拌を行う。85℃を超える沸点を有するアルコールの場合は、反応容器の内温が75℃〜85℃となるまで加熱する。上記アルコールの沸点は、当業者には知られている。沸点温度に到達すると、又は内温が75℃〜85℃に到達すると、この温度で、指定された時間、混合物を撹拌する。
工程(d)が完了したら、次いで、水酸化アルカリアルコール溶液を、工程(e)で指定されたとおりに35℃〜50℃のこの温度で加える。この添加は、0.5〜3時間、特に1時間の間にわたって行ってもよい。好適なアルコールは、メタノール、エタノール、及び2−プロパノール、並びにそれらの混合物であり、特にエタノールである。好適な水酸化アルカリは、NaOH及びKOHであり、有利にはKOHである。KOHがエタノールに対して高溶解性であるため、水酸化アルカリアルコール溶液は、水酸化カリウムエタノール溶液であることが特に有利である。アルコール溶液中の水酸化アルカリの濃度は、有利には3.8〜6mol/L又は4〜5mol/Lである。
有利には、7〜12当量の水酸化アルカリが純粋ロジウム当量当たりに加えられる。当業者は、その専門知識に基づいて、必要な水酸化アルカリの量は、塩化ロジウム(III)前駆体の酸含有量に依存することを理解できる。つまり、含有量がより多くなると、より多い水酸化アルカリが必要となる。
水酸化アルカリアルコール溶液がすべて加えられると、工程(f)に従って、反応混合物を再び35℃〜50℃で撹拌する。この撹拌は、1.5〜3時間の間行ってもよい。
PPhアルコール懸濁液及び水酸化アルカリアルコール溶液を調製するために、同一の又は異なるアルコールを使用することができる。両方のアルコール溶液の調製に同一のアルコールを使用することは、効果的であることが判明している。PPh懸濁液を加える前に塩化Rh(III)前駆体をアルコールに溶解する場合、PPh懸濁液及び水酸化アルカリアルコール溶液の調製に関しては、有利には、同一のアルコールをその溶解のためにも使用することができる。
次いで、懸濁液は、一酸化炭素を用いてスパージングされる。COスパージングは、常圧で又は加圧下で行うことができる。加圧下でのスパージングの場合、約0.1MPa(1bar)の圧力が推奨される。スパージング時間は、2〜16時間である。当業者は、その専門知識に基づいて、必要なスパージング時間は、選択された圧力に依存することを理解できる。つまり、圧力がより高くなると、必要なスパージング時間はより短くなる。スパージングが常圧の場合、8〜16時間のCOガススパージング時間が有利である。約0.1MPa(1bar)の圧力でのスパージングのとき、2〜4時間のスパージング時間で十分である。加圧下のCOスパージングの場合、圧力は、その後解除される。
COスパージングが完了したら、COがなくなるまで不活性ガスを反応容器に流す。好適な不活性ガスは、例えば、アルゴン及び窒素である。次いで、反応生成物RhH(CO)(PPhを分離し、洗浄し、かつ乾燥させる。分離は、ろ過によって、特に減圧での吸引による抜き取りによって、行われるのがよい。有利には、抜き取りは、不活性雰囲気下で行われる。
有利には、次いで、生成物をアルコールを用いて、特にメタノール、エタノール、2−プロパノール、又はこれらの混合物を用いて、洗浄する。特に、洗浄に使用するアルコールは、PPhの溶液及び水酸化アルカリアルコール溶液の調製にも使用したものと同一のアルコールである。前述の2つの溶液の調製に2種以上のアルコールを使用する場合、例えば、PPhに対してエタノールが使用され、かつ水酸化アルカリに対してメタノールが使用された場合、最終生成物の洗浄には、エタノール又はメタノールを使用し、2−プロパノールなどの任意の他のアルコールは使用しないことが有利である。
最後に、脱塩水を用いて、塩化物がなくなるまで反応生成物RhH(CO)(PPhを洗浄する。
言い換えると、最終生成物RhH(CO)(PPhは、アルコール、水、又はこれらの組み合わせを用いて洗浄することができる。次いで、生成物を乾燥させる。
このプロセスを用いれば、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)は、一段階プロセスで高い容積収量を伴って調製することができる。従来より既知のプロセスとは異なり、新規なプロセスは、大規模な反応容器での生産における前提条件である、難溶性中間生成物が生成されず、かつ、物質を徐々に加えることができるため、工業規模でのRhH(CO)(PPhを調製するのに好適である。
実施例1:10L規模での塩化Rh溶液からのカルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の調製
理想的な反応式は、以下のとおりである。
[RhCl]・(HO)+4PPh→RhCl(PPh+5HCl+OPPh
RhCl(PPh+KOH+CHCHOH+PPh→RhH(PPh+KCl+CHCHO+H
RhH(PPh+CO→RhH(CO)(PPh+PPh
二段撹拌棒、還流冷却器、及び気体導入口を有する10Lの二重ジャケット式反応器を、不活性ガスを用いて不活性化する。撹拌棒を150rpmで回転させながら、6Lのエタノールを加える。その後、1.2kg(4.575mol)のトリフェニルホスフィン(少なくとも99.5%、BASF製)を反応器内に移す。PPh容器を、50mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。撹拌速度を260rpmに設定し、冷却水を流し、反応器を還流するまで加熱する。混合物を還流で30分間撹拌する。PPhは、完全に溶解する。次いで、溶液をTinternal:35℃まで冷却すると、PPhは、微細粉末として再度一部が沈殿し得る。その後、105gのロジウム(1.02mol)を、約525gの塩化Rh(III)水溶液(Umicore製品番号68.2565.2720、Rh含有量は約20重量%)の形態で加える。塩化ロジウム溶液の容器は、100mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。次いで、反応混合物をもう一度還流するまで加熱し(Tinternal:76〜78℃)、還流で2時間維持する。その結果、微細沈殿を伴う赤色懸濁液となる。
2時間終了時に、反応懸濁液をTinternal:45℃まで冷却する。この温度で、(10.3当量、591gの純粋KOHに相当する10.5molの水酸化カリウムペレットを2.2Lのエタノールに溶解した)水酸化カリウムエタノール溶液を、等圧滴下漏斗を用いて0.5時間かけて加える。KOH−EtOH容器及び滴下漏斗は、0.5Lのエタノールですすいで、反応器に入れる。このとき黄色の懸濁液を、Tinternal:45℃で2時間撹拌する。次いで、COガスを常圧で反応混合物上に導入する。スパージングは、8〜16時間継続する。この時間の間に、反応器をTinternal:20℃まで冷却する。
変換に続いて、COスパージングを中断し、COがなくなるまでアルゴン又は窒素を反応器に流す。黄色懸濁液をD4ガラス漏斗フィルタ上に不活性下で流し出し、吸引によって乾燥させる。次いで、懸濁液を、0.5Lのエタノールで洗浄する。エタノールを減圧での吸引によって除去した後、ろ過ケーキを、(脱塩)水を用いて塩化物がなくなるまで洗浄する。次いで、固体物質を、真空乾燥庫内で40℃で恒量に達するまで乾燥させる。
その結果、ロジウムを約11.2%含む927gの黄色結晶性固体が得られる。これは、〜99%の金属基準収率及び約104g/Lの容積収量と等価である。
生成物RhH(CO)(PPhの同一性は、トルエン中でのH−及び31P−NMR分光法によって確認され、またIRスペクトルによっても確認される。純度は、CHN元素分析によって、かつ31P−NMR定量分析によって決定される。ロジウム及びリンの含有量は、ICP−OESによって決定される。全塩素含有量は、200ppm未満である(塩素分析器)。
実施例2:塩化ロジウム(III)水和物からのカルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の調製
理想的な反応式は、以下のとおりである。
RhCl・xHO+4PPh→RhCl(PPh+2HCl+OPPh
RhCl(PPh+KOH+CHCHOH+PPh→RhH(PPh+KCl+CHCHO+H
RhH(PPh+CO→RhH(CO)(PPh+PPh
二段撹拌棒、還流冷却器、及び気体導入口を有する10Lの二重ジャケット式反応器を、不活性ガスを用いて不活性化する。撹拌棒を150rpmで回転させながら、6Lのエタノールを加える。その後、936g(3.57mol)のトリフェニルホスフィン(少なくとも99.5%、BASF製)を反応器内に移す。PPh容器を、50mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。撹拌速度を260rpmに設定し、冷却水を流し、反応器を還流するまで加熱する。混合物を還流で30分間撹拌する。PPhは、完全に溶解する。次いで、溶液をTinternal:35℃まで冷却すると、PPhは、微細粉末として再度一部が沈殿し得る。その後、85gのロジウム(0.83mol)を、約224gの塩化ロジウム(III)水和物(Umicore製品番号68.2562.1138、Rh含有量は約38重量%)の形態で加える。塩化ロジウム溶液の容器は、50mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。次いで、反応混合物をもう一度還流するまで加熱し(Tinternal:76〜78℃)、還流で2時間維持する。その結果、微細沈殿を伴う赤色懸濁液となる。2時間終了時に、反応懸濁液をTinternal:45℃まで冷却する。この温度で、(8.3当量、386gの純粋KOHに相当する6.9molの水酸化カリウムペレットを1.4Lのエタノールに溶解した)水酸化カリウムエタノール溶液を、等圧滴下漏斗を用いて0.5時間かけて徐々に加える。KOH−EtOH容器及び滴下漏斗は、1.4Lのエタノールですすいで、反応器に入れる。このとき黄色の懸濁液を、Tinternal:45℃で2時間撹拌する。次いで、COガスを常圧で反応混合物上に導入する。スパージングは、8〜16時間継続する。この時間の間に、反応器をTinternal:20℃まで冷却する。COによる変換はまた、圧力反応器内で加圧下で行うこともできる。この場合、(連続的に、言い換えると、再調整が必要である)約0.1MPa(1bar)で約2〜4時間が推奨される。その後、圧力解除に続いて、手順は、以下のとおりである。変換に続いて、COスパージングを中断し、COがなくなるまでアルゴン又は窒素を反応器に流す。黄色懸濁液をD4ガラス漏斗フィルタ上に不活性下で流し出し、吸引によって乾燥させる。次いで、懸濁液を、0.5Lのエタノールで洗浄する。エタノールを減圧での吸引によって除去した後、ろ過ケーキを、(脱塩)水を用いて塩化物がなくなるまで洗浄する。次いで、固体物質を、真空乾燥庫内で40℃で恒量に達するまで乾燥させる。
その結果、ロジウムを約11.2%含む754gの黄色結晶性固体が得られる。これは、〜99%の金属基準収率及び約85g/Lの容積収量と等価である。
生成物RhH(CO)(PPhの同一性は、トルエン中でのH−及び31P−NMR分光法によって確認され、またIRスペクトルによっても確認される。純度は、CHN元素分析によって、かつ31P−NMR定量分析によって決定される。ロジウム及びリンの含有量は、ICP−OESによって決定される。全塩素含有量は、150ppm未満である(塩素分析器)。
実施例3:イソプロピルアルコール(2−プロパノール)中1L規模での塩化ロジウム溶液からのカルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の調製
理想的な反応式は、以下のとおりである。
[RhCl]・(HO)+4PPh→RhCl(PPh+5HCl+OPPh
RhCl(PPh+KOH+CH7OH+PPh→RhH(PPh+KCl+CO+H
RhH(PPh+CO→RhH(CO)(PPh+PPh
二段撹拌棒、還流冷却器、及び気体導入口を有する1Lの二重ジャケット式反応器を、不活性ガスを用いて不活性化する。撹拌棒を150rpmで回転させながら、650mLのイソプロピルアルコールを加える。その後、107g(0.4mol)のトリフェニルホスフィン(少なくとも99.5%、BASF製)を反応器内に移す。PPh容器を、5mLのイソプロピルアルコールですすいで、反応器に入れる。撹拌速度を260rpmに設定し、冷却水を流し、反応器を還流するまで加熱する。混合物を還流で30分間撹拌する。PPhは、完全に溶解する。次いで、溶液をTinternal:35℃まで冷却すると、PPhは、微細粉末として一部が沈殿する。その後、9.25gのロジウム(0.090mol)を、約47gの塩化Rh(III)水溶液(Umicore製品番号68.2565.2720、Rh含有量は約20重量%)の形態で加える。塩化ロジウム溶液の容器は、10mLのイソプロピルアルコールですすいで、反応器に入れる。次いで、反応混合物をもう一度還流するまで加熱し(Tinternal:78.5℃)、還流で2時間維持する。その結果、微細沈殿を伴う赤色懸濁液となる。
2時間終了時に、反応懸濁液をTinternal:45℃まで冷却する。この温度で、(10.3当量、52gの純粋KOHに相当する1.05molの水酸化カリウムペレットを230mLのエタノールに溶解した)水酸化カリウムエタノール溶液を、等圧滴下漏斗を用いて0.5時間かけて加える。KOH−EtOH容器及び滴下漏斗は、50mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。このとき黄色の懸濁液を、Tinternal:45℃で2時間撹拌する。次いで、COガスを常圧で反応混合物上に導入する。スパージングは、8〜16時間継続する。この時間の間に、反応器をTinternal:20℃まで冷却する。
変換に続いて、COスパージングを中断し、COがなくなるまでアルゴン又は窒素を反応器に流す。黄色懸濁液をD4ガラス漏斗フィルタ上に不活性下で流し出し、吸引によって乾燥させる。次いで、懸濁液を、50mLのエタノールで洗浄する。エタノールを減圧での吸引によって除去した後、ろ過ケーキを、(脱塩)水を用いて塩化物がなくなるまで洗浄する。次いで、固体物質を、真空乾燥庫内で40℃で恒量に達するまで乾燥させる。
その結果、ロジウムを約11.2%含む80gの黄色結晶性固体が得られる。これは、〜97%の金属基準収率及び約80g/Lの容積収量と等価である。
生成物RhH(CO)(PPhの同一性は、トルエン中でのH−及び31P−NMR分光法によって確認され、またIRスペクトルによっても確認される。純度は、CHN元素分析によって、かつ31P−NMR定量分析によって決定される。ロジウム及びリンの含有量は、ICP−OESによって決定される。全塩素含有量は、200ppm未満である(塩素分析器)。
実施例4:加圧下スパージングを用いる1L規模での塩化ロジウム溶液からのカルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)の調製
理想的な反応式は、以下のとおりである。
[RhCl]・(HO)+4PPh→RhCl(PPh+5HCl+OPPh
RhCl(PPh+KOH+CHCHOH+PPh→RhH(PPh+KCl+CHCHO+H
RhH(PPh+CO→RhH(CO)(PPh+PPh
二段撹拌棒、還流冷却器、及び気体導入口を有する1Lの二重ジャケット式反応器を、不活性ガスを用いて不活性化した。撹拌棒を150rpmで回転させながら、600mLのエタノールを加える。その後、120g(0.4575mol)のトリフェニルホスフィン(少なくとも99.5%、BASF製)を反応器内に移す。PPh容器を、5mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。撹拌速度を260rpmに設定し、冷却水を流し、反応器を還流するまで加熱する。混合物を還流で30分間撹拌する。PPhは、完全に溶解する。次いで、溶液をTinternal:35℃まで冷却すると、PPhは、微細粉末として再度一部が沈殿し得る。その後、10.5gのロジウム(0.102mol)を、約52.5gの塩化Rh(III)水溶液(Umicore製品番号68.2565.2720、Rh含有量は約20重量%)の形態で加える。塩化ロジウム溶液の容器は、10mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。次いで、反応混合物をもう一度還流するまで加熱し(Tinternal:76〜78℃)、還流で2時間維持する。その結果、微細沈殿を伴う赤色懸濁液となる。
2時間終了時に、反応懸濁液をTinternal:45℃まで冷却する。この温度で、(10.3当量、59.1gの純粋KOHに相当する1.05molの水酸化カリウムペレットを220mLのエタノールに溶解した)水酸化カリウムエタノール溶液を、等圧滴下漏斗を用いて0.5時間かけて加える。KOH−EtOH容器及び滴下漏斗は、50mLのエタノールですすいで、反応器に入れる。このとき黄色の懸濁液を、Tinternal:45℃で2時間撹拌する。次いで、0.1MPa(1bar)の過圧COガスを反応物上に加圧する。圧力は、COガスの調整によって、0.1MPa(1bar)で2〜4時間維持する。スパージングの終了後(ただし4時間以内)、反応器をTinternal:20℃まで冷却する。CO供給を中断し、圧力を反応器から解除する。次に、COがなくなるまでアルゴン又は窒素を反応器に流す。
黄色懸濁液をD4ガラス漏斗フィルタ上に不活性下で流し出し、吸引によって乾燥させる。次いで、懸濁液を、50mLのエタノールで洗浄する。エタノールを減圧での吸引によって除去した後、ろ過ケーキを、(脱塩)水を用いて塩化物がなくなるまで洗浄する。次いで、固体物質を、真空乾燥庫内で40℃で恒量に達するまで乾燥させる。
その結果、ロジウムを約11.2%含む92.7gの黄色結晶性固体が得られる。これは、〜99%の金属基準収率及び約104g/Lの容積収量と等価である。
生成物RhH(CO)(PPhの同一性は、トルエン中でのH−及び31P−NMR分光法によって確認され、またIRスペクトルによっても確認される。純度は、CHN元素分析によって、かつ31P−NMR定量分析によって決定される。ロジウム及びリンの含有量は、ICP−OESによって決定される。全塩素含有量は、200ppm未満である(塩素分析器)。

Claims (13)

  1. RhH(CO)(PPhを調製するための一段階プロセスであって、
    (a)不活性化された反応容器内でのトリフェニルホスフィンPPhのアルコール懸濁液の調製工程と、
    (b)前記PPhのアルコール懸濁液を30℃〜40℃の温度で塩化Rh(III)前駆体と混合する工程と、
    (c)PPh懸濁液と塩化Rh(III)前駆体との反応混合物を昇温下で撹拌する工程であって、
    前記アルコールの沸点が85℃未満の場合、撹拌は、還流下で行われ、
    前記アルコールの前記沸点が85℃以上の場合、撹拌は、75℃〜85℃の内温を有する前記反応容器で行われる、工程と、
    (d)工程(c)からの前記懸濁液を35℃〜50℃まで冷却する工程と、
    (e)水酸化アルカリのアルコール溶液を加える工程と、
    (f)反応懸濁液を35℃〜50℃で撹拌する工程と、
    (g)COガスを用いてスパージングする工程と、
    (h)ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)錯体RhH(CO)(PPhを分離し、洗浄及び乾燥させる又は洗浄及び乾燥させない工程と、を含み、
    前記塩化Rh(III)前駆体は、塩化ロジウム(III)水和物RhCl・xHOと、塩化ロジウム(III)溶液H[RhCl]・(HO)と、RhCl・xHO及び/又はH[RhCl]・(HO)の水溶液及び/又はアルコール溶液並びにこれらの混合物とから成る群から選択されることを特徴とする、プロセス。
  2. 工程(d)において、工程(c)からの前記懸濁液が40℃〜50℃まで冷却される、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記反応懸濁液を撹拌する、工程(f)は、40℃〜50℃で行われる、請求項1に記載のプロセス。
  4. RhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)のアルコール溶液、並びにRhCl・xHO及びH[RhCl]・(HO)の水溶液とアルコール溶液との混合物を調製するための前記アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール及び2−プロパノール並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
  5. 前記PPhのアルコール懸濁液及び前記水酸化アルカリの溶液を調製するための前記アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
  6. 前記水酸化アルカリは、水酸化カリウムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
  7. 前記PPh懸濁液及び前記塩化Rh(III)前駆体溶液は、工程(b)に従って非連続的に混合され、ここで該塩化Rh(III)前駆体溶液は、既に存在する該PPh懸濁液に加えられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
  8. COガスを用いてスパージングする工程は、標準圧力で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
  9. PPh懸濁液と塩化Rh(III)前駆体との前記反応混合物を昇温下で撹拌する、工程(c)は、1.5時間〜3時間の間行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
  10. 前記反応懸濁液を撹拌する、工程(f)は、40℃〜50℃の温度で1.5時間〜3時間の間行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
  11. COガスを用いてスパージングする、工程(g)は、2時間〜16時間の間行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
  12. 工程(h)において、最終生成物RhH(CO)(PPhは、アルコール、水、又はこれらの組み合わせを用いて洗浄される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
  13. 前記トリフェニルホスフィンPPhのアルコール懸濁液を調製するための前記アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
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