以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
(プリンタの全体構成)
図1を用いて、本開示の実施形態の液体吐出ヘッド2を含むカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1と称する)について説明する。
プリンタ1は、記録媒体Pを搬送ローラ74aから搬送ローラ74bへと搬送することにより、記録媒体Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部76は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、記録媒体Pに液滴を着弾させて、記録媒体Pに印刷を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、記録媒体Pとほぼ平行になるように平板状のヘッド搭載フレーム70が固定されている。ヘッド搭載フレーム70には20個の孔(不図示)が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔に搭載されている。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(b)に示すように細長い長尺形状をなしている。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。隣り合う液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、記録媒体Pの幅方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、記録媒体Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録媒体Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクからインクが供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド
群で4色のインクを印刷している。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。
なお、プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数、あるいはヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度、すなわち搬送速度を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、記録媒体Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、記録媒体Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体Pに印刷を行なう。記録媒体Pは、搬送ローラ74aに巻き取られた状態になっており、2つの搬送ローラ74cの間を通った後、ヘッド搭載フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通る。その後2つの搬送ローラ74dの間を通り、最終的に搬送ローラ74bに回収される。
記録媒体Pとしては、印刷用紙以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、記録媒体Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙、裁断された布、木材、あるいはタイルなどであってもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や、化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部76が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出量や吐出速度などの吐出特性が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
(液体吐出ヘッドの全体構成)
次に、図2〜9を用いて本開示の実施形態に係る液体吐出ヘッド2について説明する。なお、図5,6では図面を分かりやすくするために、他の部材の下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。また、図5(a)では、第2流路部材6の一部を透過して示しており、図5(b)では、第2流路部材6の全部を透過して示している。また、図9においては、従来の液体の流れを破線で示し、吐出ユニット15の液体の流れを実線で示し、第2個別流路14から供給された液体の流れを長破線で示している。
なお、図面には、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3、第4方向D4、第5方向D5、および第6方向D6を図示している。第1方向D1は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の一方側であり、第4方向D4は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の他方側である。第2方向D2は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の一方側であり、第5方向D5は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の他方側である。第3方向D3は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の一方側であり、第6方向D6は
、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の他方側である。
液体吐出ヘッド2においては、第1流路として第1個別流路12、第2流路として第2個別流路14、第3流路として第3個別流路16を用いて説明する。
図2,3に示すように、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、筐体50と、放熱板52と、配線基板54と、押圧部材56と、弾性部材58と、信号伝達部60と、ドライバIC62とを備えている。なお、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aを備えていればよく、筐体50、放熱板52、配線基板54、押圧部材56、弾性部材58、信号伝達部60、およびドライバIC62は必ずしも備えていなくてもよい。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aから信号伝達部60が引き出されており、信号伝達部60は、配線基板54に電気的に接続されている。信号伝達部60には、液体吐出ヘッド2の駆動を制御するドライバIC62が設けられている。ドライバIC62は、弾性部材58を介して押圧部材56により放熱板52に押圧されている。なお、配線基板54を支持する支持部材の図示は省略している。
放熱板52は、金属あるいは合金により形成することができ、ドライバIC62の熱を外部に放熱するために設けられている。放熱板52は、螺子あるいは接着剤により筐体50に接合されている。
筐体50は、ヘッド本体2aの上面に載置されており、筐体50と放熱板52とにより、液体吐出ヘッド2を構成する各部材を覆っている。筐体50は、第1開口50aと、第2開口50bと、第3開口50cと、断熱部50dとを備えている。第1開口50aは、第3方向D3および第6方向D6に対向するようにそれぞれ設けられている。放熱板52が第1開口50aに配置されることにより、第1開口50aは封止されている。第2開口50bは、下方に向けて開口しており、第2開口50bを介して配線基板54および押圧部材56が筐体50の内部に配置される。第3開口50cは、上方に向けて開口しており、配線基板54に設けられたコネクタ(不図示)が収容される。
断熱部50dは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように設けられており、放熱板52とヘッド本体2aとの間に配置されている。それにより、放熱板52に放熱された熱が、ヘッド本体2aに伝わる可能性を低減することができる。筐体50は、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。
図4(a)に示すように、ヘッド本体2aは、第2方向D2から第5方向D5に向けて長い平板形状をなしており、第1流路部材4と、第2流路部材6と、圧電アクチュエータ基板40とを有している。ヘッド本体2aは、第1流路部材4の上面に、圧電アクチュエータ基板40および第2流路部材6が設けられている。圧電アクチュエータ基板40は、図4(a)に示す破線の領域に載置される。圧電アクチュエータ基板40は、第1流路部材4に設けられた複数の加圧室10(図8参照)を加圧するために設けられており、複数の変位素子48(図8参照)を有している。
(流路部材の全体構成)
第1流路部材4は、内部に複数の流路が形成されており、第2流路部材6から供給された液体を、下面に設けられた吐出孔8(図8参照)まで導いている。第1流路部材4は、上面が加圧室面4−1となっており、加圧室面4−1に開口20a,24a,28c,28dが形成されている。開口20aは、複数設けられており、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されている。開口20aは、加圧室面4−1の第3方向D3における端
部に配置されている。開口24aは、複数設けられており、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されている。開口24aは、加圧室面4−1の第6方向D6における端部に配置されている。開口28cは、開口20aよりも第2方向D2における外側および第5方向D5における外側に設けられている。開口28dは、開口24aよりも第2方向D2における外側および第5方向D5における外側に設けられている。
第2流路部材6は、内部に複数の流路が形成されており、液体タンクから供給された液体を第1流路部材4まで導いている。第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1の外周部上に設けられており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域の外側にて、接着剤(不図示)を介して、第1流路部材4と接合されている。
(第2流路部材(統合流路))
第2流路部材6は、図4,5に示すように、貫通孔6aと、開口6b,6c,6d,22a,26aとが形成されている。貫通孔6aは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域よりも外側に配置されている。貫通孔6aには、信号伝達部60が挿通している。
開口6bは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材の第2方向D2における端部に配置されている。開口6bは、液体タンクから第2流路部材6に液体を供給している。開口6cは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材の第5方向D5における端部に配置されている。開口6cは、第2流路部材6から液体タンクに液体を回収している。開口6dは、第2流路部材6の下面に設けられており、開口6dにより形成された空間に圧電アクチュエータ基板40が配置されている。
開口22aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口22aは、第2流路部材6の第3方向D3における端部に形成され、貫通孔6aよりも第3方向D3側に設けられている。
開口22aは、開口6bと連通しており、開口22aが第1流路部材4により封止されることにより、第1統合流路22を形成している。第1統合流路22は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口20aおよび開口28cに液体を供給する。
開口26aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口26aは、第2流路部材6の第6方向D6における端部に形成され、貫通孔6aよりも第6方向D6側に設けられている。
開口26aは、開口6cと連通しており、開口26aが第1流路部材4により封止されることにより、第2統合流路26を形成している。第2統合流路26は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口24aおよび開口28dから液体を回収する。
以上の構成により、液体タンクから開口6bに供給された液体は、第1統合流路22に供給され、開口22aを介して第1共通流路20に流れ込み、第1流路部材4に液体が供給される。そして、第2共通流路24により回収された液体は、開口26aを介して第2統合流路26に流れ込み、開口6cを介して外部へ液体が回収される。なお、第2流路部材6は、必ずしも設けなくてもよい。
なお、液体の供給および回収は、適宜な手段によって実現されてよい。例えば、図3(a)において点線で示すように、プリンタ1は、第1統合流路22、第1流路部材4の流
路および第2統合流路26を含む循環流路78と、第1統合流路22から第1流路部材4の流路を経由して第2統合流路26へ向かう流れを形成する流れ形成部79とを有していてよい。
流れ形成部79の構成は、適宜なものとされてよい。例えば、流れ形成部79は、ポンプを含み、開口6cからの吸引および/または開口6bへの吐出を行う。また、例えば、流れ形成部79は、開口6cから回収された液体を貯留する回収空間と、開口6bへ供給される液体を貯留する供給空間と、回収空間から供給空間へ液体を送出するポンプと、を有し、供給空間の液面を回収空間の液面よりも高くすることにより、第1統合流路22と第2統合流路26との間に圧力差を生じさせるものであってもよい。
循環流路78のうち第1流路部材4および第2流路部材6の外側に位置する部分、ならびに流れ形成部79は、液体吐出ヘッド2の一部であってもよいし、液体吐出ヘッド2の外部に設けられていてもよい。
(第1流路部材(共通流路および吐出ユニット))
図5〜8に示すように、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4mが積層されて形成されており、積層方向に断面を見たときに、上側に設けられた加圧室面4−1と、下側に設けられた吐出孔面4−2とを有している。加圧室面4−1上には、圧電アクチュエータ基板40が裁置されており、吐出孔面4−2に開口した吐出孔8から、液体が吐出される。複数のプレート4a〜4mは、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。なお、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4mを積層せずに、樹脂により一体形成してもよい。
第1流路部材4は、複数の第1共通流路20と、複数の第2共通流路24と、複数の端部流路28と、複数の吐出ユニット15と、複数のダミー吐出ユニット17とが形成されている。
第1共通流路20は、第1方向D1から第4方向D4に延びるように設けられており、開口20aと連通するように形成されている。また、第1共通流路20は、第2方向D2から第5方向D5に複数配列されている。なお、第1統合流路22および複数の第1共通流路20は、マニホールドとして捉えることができ、1本の第1共通流路20は、マニホールドの1本の分岐流路として捉えることができる。
第2共通流路24は、第4方向D4から第1方向D1に延びるように設けられており、開口24aと連通するように形成されている。また、第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に複数配列されており、隣り合う第1共通流路20同士の間に配置されている。そのため、第1共通流路20および第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に向けて、交互に配置されている。なお、第2統合流路26および複数の第2共通流路24は、マニホールドとして捉えることができ、1本の第2共通流路24は、マニホールドの1本の分岐流路として捉えることができる。
第1流路部材4の第2共通流路24にダンパ30が形成されており、ダンパ30を介して、第2共通流路24と面した空間32が配置されている。ダンパ30は、第1ダンパ30aと、第2ダンパ30bとを有している。空間32は、第1空間32aと、第2空間32bとを有している。第1空間32aは、第1ダンパ30aを介して液体が流れる第2共通流路24の上方に設けられている。第2空間32bは、第2ダンパ30bを介して液体が流れる第2共通流路24の下方に設けられている。
第1ダンパ30aは、第2共通流路24の上方の略全域に形成されている。そのため、
平面視すると、第1ダンパ30aは、第2共通流路24と同形状をなしている。また、第1空間32aは、第1ダンパ30aの上方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第1空間32aは、第2共通流路24と同形状をなしている。
第2ダンパ30bは、第2共通流路24の下方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第2ダンパ30bは、第2共通流路24と同形状をなしている。また、第2空間32bは、第2ダンパ30bの下方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第2空間32bは、第2共通流路24と同形状をなしている。
第1流路部材4は、第2共通流路24にダンパ30が設けられていることにより、第2共通流路24の圧力変動を緩和することができ、流体クロストークが生じ難くなる。
第1ダンパ30aおよび第1空間32aは、プレート4d,4eにハーフエッチングにより溝を形成し、溝同士が対向するように接合することにより形成することができる。この際、プレート4eのハーフエッチングにより残った残部が、第1ダンパ30aとなる。第2ダンパ30bおよび第2空間32bも同様に、プレート4k,4lにハーフエッチングにより溝を形成することで作製することができる。
端部流路28は、第1流路部材4の第2方向D2の端部、および第5方向D5の端部に形成されている。端部流路28は、幅広部28aと、狭窄部28bと、開口28c,28dとを有している。開口28cから供給された液体は、幅広部28a、狭窄部28b、幅広部28aおよび開口28dをこの順に流れることにより、端部流路28を流れることとなる。それにより、端部流路28に液体が存在するとともに、端部流路28を液体が流れることとなり、端部流路28の周囲に位置する第1流路部材4の温度が液体により均一化される。それゆえ、第1流路部材4は、第2方向D2の端部および第5方向D5の端部から放熱される可能性が低減することとなる。
(吐出ユニット)
図6,7を用いて、吐出ユニット15について説明する。吐出ユニット15は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路(第1流路)12と、第2個別流路(第2流路)14と、第3個別流路(第3流路)16とを有している。なお、液体吐出ヘッド2では、第1個別流路12および第2個別流路14から加圧室10へ液体を供給し、第3個別流路16が加圧室10から液体を回収している。なお、詳細は後述するが、第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。
吐出ユニット15は、隣り合う第1共通流路20と第2共通流路24との間に設けられており、第1流路部材4の平面方向にマトリクス状に形成されている。吐出ユニット15は、吐出ユニット列15aと、吐出ユニット行15bとを有している。吐出ユニット列15aでは、吐出ユニット15が第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。吐出ユニット行15bでは、吐出ユニット15が第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
加圧室10は、加圧室列10cと、加圧室行10dとを有している。また、吐出孔8は、吐出孔列8aと、吐出孔行8bとを有している。吐出孔列8aおよび加圧室列10cも同様に、第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。また、吐出孔行8bおよび加圧室行10dも同様に、第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
第1方向D1および第4方向D4と、第2方向D2および第5方向D5とが成す角度は直角からずれている。このため、第1方向D1に沿って配置されている吐出孔列8aに属する吐出孔8同士は、その直角からのずれの分、第2方向D2にずれて配置される。そし
て、吐出孔列8aが第2方向D2に並んで配置されるので、異なる吐出孔列8aに属する吐出孔8は、その分、第2方向D2にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、第2方向D2に一定間隔で並んで配置されている。これにより、吐出した液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
図6において、吐出孔8を第3方向D3および第6方向D6に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に記録媒体Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。
ダミー吐出ユニット17は、最も第2方向D2側に位置する第1共通流路20と、最も第2方向D2側に位置する第2共通流路24との間に設けられている。また、ダミー吐出ユニット17は、最も第5方向D5側に位置する第1共通流路20と、最も第5方向D5側に位置する第2共通流路24との間にも設けられている。ダミー吐出ユニット17は、最も第2方向D2または第5方向D5側に位置する吐出ユニット列15aの吐出を安定させるために設けられている。ダミー吐出ユニット17は、基本的な構造は吐出ユニット15と同じであるが、吐出孔8は存在しない。また、ダミー吐出ユニットの加圧室本体10aは、プレート4bに設けられた孔の上側をプレート4aで塞ぐことにより構成している。このような構成にすることにより、圧電アクチュエータ基板40は、ダミー吐出ユニット17が配置されている領域までの大きさにする必要がなくなり、圧電アクチュエータ基板40を小さくできる。
加圧室10は、図7,8に示すように、加圧室本体10aと部分流路10bとを有している。加圧室本体10aは、平面視して、円形状をなしており、加圧室本体10aから下方に向けて部分流路10bが延びている。加圧室本体10aは、加圧室本体10a上に設けられた変位素子48から圧力を受けることにより、部分流路10b中の液体を加圧する。
加圧室本体10aは、略円板形状であり、平面形状は円形状をなしている。平面形状が円形状であることにより、変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくすることができる。部分流路10bは、直径が加圧室本体10aより小さい略円柱形状であり、平面形状は円形状である。また、部分流路10bは、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に収納されている。
なお、部分流路10bは、吐出孔8側に向かって断面積の小さくなる円錐状あるいは円錐台状であってもよい。それにより、第1共通流路20および第2共通流路24の幅を大きくでき、上述の圧力損失の差を小さくできる。
加圧室10は、第1共通流路20の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12および第2個別流路14を介して接続されている。
また、加圧室10は、第2共通流路24の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第2共通流路24とその両側に並んでいる加圧室10とは、第3個別流路16を介して接続されている。
図7を用いて、第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16について説明する。
第1個別流路12は、第1共通流路20と加圧室本体10aとを接続している。第1個
別流路12は、第1共通流路20の上面から上方へ向けて延びた後、第5方向D5に向けて延び、第4方向D4に向けて延びた後、再び上方へ向けて延びて加圧室本体10aの下面に接続されている。
第2個別流路14は、第1共通流路20と部分流路10bとを接続している。第2個別流路14は、第1共通流路20の下面から第5方向D5へ向けて延び、第1方向D1に向けて延びた後、部分流路10bの側面に接続されている。
第3個別流路16は、第2共通流路24と部分流路10bとを接続している。第3個別流路16は、第2共通流路24の側面から第2方向D2に向けて延び、第4方向D4に向けて延びた後、部分流路10bの側面に接続されている。
そして、第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。第2個別流路14の流路抵抗を、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くするには、例えば、第2個別流路14が形成されるプレート4lの厚みを、第1個別流路12が形成されるプレート4cの厚みよりも厚くすればよい。また、平面視して、第2個別流路14の幅を、第1個別流路12の幅よりも広くしてもよい。また、平面視して、第2個別流路14の長さを、第1個別流路12の長さよりも短くしてもよい。
以上のような構成により、第1流路部材4では、開口20aを介して第1共通流路20に供給された液体は、第1個別流路12および第2個別流路14を介して加圧室10に流れ込み、一部の液体は吐出孔8から吐出される。そして、残りの液体は、加圧室10から、第3個別流路16を介して第2共通流路24に流れ込み、開口24aを介して、第1流路部材4から第2流路部材6に排出される。
(圧電アクチュエータ)
図7(c),8を用いて圧電アクチュエータ基板40について説明する。第1流路部材4の上面には、変位素子48を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子48が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群と略同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、第1流路部材4の加圧室面4−1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a、40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a、40bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電セラミック層40a、40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。
これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる。なお、圧電セラミック層40bは、振動板として働いており、必ずしも圧電体である必要はなく、代わりに、圧電体でない他のセラミック層、金属板または樹脂板を用いてもよい。振動板は、第1流路部材4の一部を構成する部材に兼用されているかのような構成とされてもよい。例えば、振動板は、図示の例とは異なり、加圧室面4−1全体に亘る広さを有するとともに、開口20a,24a,28c,28dと対向する開口を有していてもよい。
圧電アクチュエータ基板40には、共通電極42と、個別電極44と、接続電極46とが形成されている。共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。そして、個別電極44は、圧
電アクチュエータ基板40の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている。
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子48となっている。そのため、圧電アクチュエータ基板40は、複数の変位素子48を有している。
共通電極42は、Ag−Pd系などの金属材料により形成することができ、共通電極42の厚さは2μm程度とすることができる。共通電極42は、圧電セラミック層40aを貫通して形成されたビアホールを介して圧電セラミック層40a上の共通電極用表面電極(不図示)と繋がっており、共通電極用表面電極を介して接地され、グランド電位に保持されている。
個別電極44は、Au系などの金属材料により形成されており、個別電極本体44aと、引出電極44bとを有している。図7(c)に示すように、個別電極本体44aは、平面視して、略円形状に形成されており、加圧室本体10aよりも小さく形成されている。引出電極44bは、個別電極本体44aから引き出されており、引き出された引出電極44b上に接続電極46が形成されている。
接続電極46は、例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。接続電極46は、信号伝達部60に設けられた電極と電気的に接合されている。
液体吐出ヘッド2は、制御部76の制御により、ドライバIC62などを介して、個別電極44に供給される駆動信号に従って、変位素子48を変位させる。駆動方法としては、いわゆる引き打ち駆動を用いることができる。
(吐出ユニットの詳細および作用)
図9を用いて液体吐出ヘッド2の吐出ユニット15を詳細に説明する。
吐出ユニット15は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路(第1流路)12と、第2個別流路(第2流路)14と、第3個別流路(第3流路)16とを備えている。第1個別流路12および第2個別流路14は、第1共通流路20(図8参照)に接続されており、第3個別流路16は、第2共通流路24(図8参照)に接続されている。
第1個別流路12は、加圧室10のうち加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されている。第2個別流路14は、加圧室10のうち部分流路10bの第4方向D4側に接続されている。第3個別流路16は、加圧室10のうち部分流路10bの第1方向D1側に接続されている。
第1個別流路12から供給された液体は、加圧室本体10aを通って部分流路10bを下方に向けて流れ、一部が吐出孔8から吐出される。吐出孔8から吐出されなかった液体は、第3個別流路16を介して、吐出ユニット15の外部に回収される。
第2個別流路14から供給された液体は、一部が吐出孔8から吐出される。吐出孔8から吐出されなかった液体は、部分流路10b内を上方へ向けて流れ、第3個別流路16を介して、吐出ユニット15の外部に回収される。
図9に示すように、第1個別流路12から供給された液体は、加圧室本体10a、および部分流路10bを流れて吐出孔8から吐出される。従来の吐出ユニットにおける液体の
流れは破線で示すように、加圧室本体10aの中央部から吐出孔8に向けて一様に略直線状に流れている。
このような流れが生じると、加圧室10のうち、第2個別流路14が接続された部位と反対側に位置する領域80付近には液体が流れにくい構成となり、例えば、領域80付近に液体の滞留する領域が生じるおそれがある。
これに対して、吐出ユニット15では、第1個別流路12および第2個別流路14が加圧室10に接続されており、これらの流路から加圧室10に液体が供給される。
そのため、第1個別流路12から吐出孔8へ供給される液体の流れに対して、第2個別流路14から加圧室10へ供給された液体の流れを衝突させることができる。それにより、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れが、一様に略直線状に流れにくくなり、加圧室10内に液体が滞留する領域を生じにくくすることができる。
すなわち、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れにより生じた液体の滞留点の位置が、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れとの衝突により移動することになり、加圧室10内に液体の滞留する領域を生じにくくすることができる。
また、加圧室10が、加圧室本体10aおよび部分流路10bを有しており、第1個別流路12が加圧室本体10aに接続され、第2個別流路14が部分流路10bに接続されている。そのため、第1個別流路12が、加圧室10全体を流れるように液体を供給するとともに、第2個別流路14から供給された液体の流れにより、部分流路10bに液体の滞留する領域が生じにくくなる。
また、第3個別流路16は、部分流路10bに接続されている。そのため、第2個別流路14から第3個別流路16に向けて流れる液体の流れが、部分流路10bの内部を横断する構成となる。その結果、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れを横切るように、第2個別流路14から第3個別流路16へ向けて流れる液体を流すことができる。それゆえ、さらに部分流路10b内に液体の滞留する領域が生じにくくなる。
(個別流路等の詳細および作用)
また、第3個別流路16は、部分流路10bに接続されており、第2個別流路14よりも加圧室本体10a側に接続されている。そのため、吐出孔8から部分流路10bの内部に気泡が侵入した場合においても、気泡の浮力を利用して第3個別流路16に気泡を排出することができる。それにより、部分流路10b内に気泡が滞留することにより、液体への圧力伝幡に影響を与える可能性を低減することができる。
また、平面視したときに、第1個別流路12が加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されており、第2個別流路14が部分流路10bの第4方向D4側に接続されている。
そのため、平面視したときに、吐出ユニット15には、第1方向D1および第4方向D4の両側から液体が供給されることとなる。そのため、供給された液体は、第1方向D1の速度成分、および第4方向D4の速度成分を有することとなる。それゆえ、加圧室10に供給された液体が、部分流路10bの内部の液体を撹拌することとなる。その結果、さらに部分流路10b内に、液体の滞留する領域が生じにくくなる。
また、第3個別流路16が部分流路10bの第1方向D1側に接続されており、吐出孔8が部分流路10bの第4方向D4側に配置されている。それにより、部分流路10bの第1方向D1側にも液体を流すことができ、部分流路10bの内部に、液体の滞留する領
域が生じにくくなる。
なお、第3個別流路16が部分流路10bの第4方向D4側に接続され、吐出孔8が部分流路10bの第1方向D1側に配置されるように構成してもよい。その場合においても同様の効果を奏することができる。
また、図8に示すように、第3個別流路16が、第2共通流路24の加圧室本体10a側に接続されている。それにより、部分流路10bから排出された気泡を第2共通流路24の上面に沿って流すことができる。それにより、第2共通流路24から開口24a(図6参照)を介して気泡を外部に排出しやすい。
また、第3個別流路16の上面と、第2共通流路24の上面とが面一であることが好ましい。それにより、部分流路10bから排出された気泡は、第3個別流路16の上面、および第2共通流路24の上面に沿って流れることとなり、さらに外部に排出しやすい。
また、第2個別流路14は、第3個別流路16よりも部分流路10bの吐出孔8側に接続されている。それにより、吐出孔8の近傍にて第2個別流路14から液体が供給されることとなる。それゆえ、吐出孔8の近傍の液体の流速を早めることができ、液体に含まれる顔料等が沈降することが抑制され、吐出孔8につまりが生じにくくなる。
また、図7(b)に示すように、平面視したときに、第1個別流路12が、加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されており、部分流路10bの面積重心が、加圧室本体10aの面積重心よりも第4方向D4側に位置している。すなわち、部分流路10bが、加圧室本体10aの第1個別流路12から遠い側に接続されている。
それにより、加圧室本体10aの第1方向D1側に供給された液体は、加圧室本体10aの全域に広がった後、部分流路10bに供給されることとなる。その結果、加圧室本体10aの内部に、液体の滞留する領域が生じにくい。
また、平面視したときに、第2個別流路14と第3個別流路16との間に吐出孔8が配置されている。それにより、吐出孔8から液体が吐出された際に、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れと、第2個別流路14から供給された液体の流れとが衝突する位置を移動させることができる。
すなわち、吐出孔8からの液体の吐出量は、印画される画像により異なることとなり、液体の吐出量の増減に伴って、部分流路10bの内部の液体の挙動が変化することとなる。そのため、液体の吐出量の増減により、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れと、第2個別流路14から供給された液体の流れとが衝突する位置が移動することとなり、部分流路10bの内部に液体が滞留する領域が生じにくい。
また、吐出孔8の面積重心が、部分流路10bの面積重心よりも第4方向D4側に位置している。それにより、部分流路10bに供給された液体は、部分流路10bの全域に広がった後、吐出孔8に供給されることとなり、部分流路10bの内部に液体の滞留する領域が生じにくくなる。
ここで、吐出ユニット15は、第1個別流路12(第1流路)および第2個別流路14(第2流路)を介して第1共通流路20と接続されている。そのため、加圧室本体10aに加えられた圧力の一部は、第1個別流路12および第2個別流路14を介して第1共通流路20に伝幡することとなる。
第1共通流路20には、第1個別流路12および第2個別流路14から圧力波が伝幡して、第1共通流路20の内部に圧力差が生じると、第1共通流路20の液体の挙動が不安定になるおそれがある。そのため、第1共通流路20に伝幡する圧力波の大きさは均一であることが好ましい。
液体吐出ヘッド2は、断面視して、第2個別流路14が第1個別流路12よりも下方に配置されている。そのため、加圧室本体10aからの距離が、第2個別流路14のほうが第1個別流路12よりも長くなり、第2個別流路14まで伝幡する際に、圧力減衰が生じることとなる。
そして、第2個別流路14の流路抵抗が第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっていることから、第2個別流路14を流れる際の圧力減衰を、第1個別流路12を流れる際の圧力減衰よりも小さくすることができる。その結果、第1個別流路12および第2個別流路14から伝幡した圧力波の大きさを均一に近づけることができる。
つまり、加圧室本体10aから第1個別流路12または第2個別流路14までの圧力減衰と、第1個別流路12または第2個別流路14を流れる際の圧力減衰との合計を、第1個別流路12と第2個別流路14とで均一に近づけることができ、第1共通流路20に伝幡する圧力波の大きさを均一に近づけることができる。
また、断面視して、第3個別流路16が、第2個別流路14よりも高く配置されており、かつ第1個別流路12よりも低く配置されている。言い換えると、第3個別流路16は、第1個別流路12と第2個別流路14との間に配置されている。そのため、加圧室本体10aに加圧された圧力は、第3個別流路16に伝幡する際に、一部が第3個別流路16に伝幡する。
これに対して、第2個別流路14の流路抵抗が、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。そのため、第2個別流路14に到達する圧力波が減少していても、第2個別流路14での圧力減衰が小さくなるため、第1個別流路12および第2個別流路14から伝幡した圧力波の大きさを均一に近づけることができる。
第1個別流路12の流路抵抗は、第2個別流路14の流路抵抗の1.03〜2.5倍とすることができる。
なお、第2個別流路14の流路抵抗を、第1個別流路12の流路抵抗よりも大きくしてもよい。その場合、第1共通流路20から第2個別流路14を介した圧力伝幡を生じにくくすることができる。その結果、吐出孔8に不要な圧力が伝幡する可能性を低減することができる。
第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗の1.03〜2.5倍とすることができる。
(加圧室の共振周期および駆動信号の例)
吐出ユニット15は、液体の圧力変動に関して種々の振動モードの共振周期(固有周期)を有している。そのうち、加圧室10の共振周期T0(加圧室振動モードの共振周期)は、変位素子48(共通電極42および個別電極44)に印加する電圧の駆動信号の設定に利用されている。
加圧室10の共振周期T0は、例えば、イナータンス、音響抵抗およびコンプライアンスを用い、適宜な仮定(値が相対的に小さい要素を無視するなど)のもとで吐出ユニット
15をモデル化したときに、2π×(M×C)1/2で表わされる。ここで、Cは、加圧室10のコンプライアンスであり、例えば、振動板の変形に起因するコンプライアンスと、インクの圧縮に起因するコンプライアンスとの和である。Mは、例えば、インク供給側から加圧室10へのイナータンスと加圧室10から吐出孔8へのイナータンスとの並列合成イナータンスである。また、より簡便には、共振周期T0は、圧力波が絞りから加圧室10を経由して吐出孔8に至るまでの時間の2倍として捉えられ、例えば、加圧室10の入口から吐出孔8までの長さを音速で割った値を2倍することによって算出可能である。なお、共振周期T0の1/2は、AL(Acoustic Length)といわれる。
加圧室10の共振周期T0は、例えば、実測またはシミュレーション計算によって求められてよい。例えば、実測においては、適宜な波形(例えば複数周期に亘って続く正弦波または矩形波)の駆動信号を変位素子48に対して印加してそのときの吐出孔8における液体の振動を測定する。この測定を駆動信号の周波数を変化させて行う。これにより、液体の振幅が最大となるときの駆動信号の周期が共振周期T0として得られる。また、1パルスの駆動信号を変位素子48に印加して、そのときの液滴の速度が最大となるパルス幅に基づいて共振周期T0が求められてもよい。また、シミュレーション計算においては、上記のような実測と同様の状況を再現すればよい。
加圧室10の共振周期T0には、吐出ユニット15の構成に加えて、液体の物性(密度、粘度および体積圧縮率(体積弾性率))が影響する。既に液体が充填されている液体吐出ヘッド2について共振周期T0を求めるに際しては、その充填されている液体の物性値を用いればよい。まだ液体が充填されていない液体吐出ヘッド2については、例えば、その液体吐出ヘッド2に係るパンフレット、仕様書または説明書から特定される、利用が想定または許容されている液体の物性値を用いればよい。利用が想定または許容されている液体として複数の種類が存在する場合においては、そのうちの任意のものを選択してよい。液体の物性は、温度等の環境(別の観点では液体の状態)に影響を受ける。液体吐出ヘッド2が現に使用されている場合においては、その使用環境下で共振周期T0が求められてよい。液体吐出ヘッド2が使用されていない場合においては、例えば、パンフレット、仕様書もしくは説明書において特定される、想定または許容されている環境で共振周期T0が求められてよい。
また、駆動信号は、通常、共振周期T0(別の観点ではAL)に基づいて設定されているから、ドライバIC62等を備えた製品においては、変位素子48に印加される駆動信号から逆算的に共振周期T0が特定されてもよい。
液体吐出ヘッド2における駆動信号の一例として、いわゆる引き打ちの駆動信号を用いた吐出方法を説明する。制御部76がドライバIC62を介して共通電極42および個別電極44に印加する印荷電圧をvとし、加圧室本体10a内の液体の圧力をpとして説明する。電圧vは、変位素子48が加圧室本体10a側に撓む方向の電圧が高いとする。圧力pは、詳細には、加圧室本体10aの変位素子48に面した領域の面積重心付近の圧力である。
制御部76は、吐出ユニット15から液滴を吐出しない状態においては、印加電圧vとして所定の電圧v1を印加している。これにより、変位素子48は加圧室本体10a側へ撓んでいる。このときの圧力pを基準圧力p0とする。
吐出を行なう際には、まず、印荷電圧vを、電圧v0まで下げる。v0は、例えば0(ゼロ)[V]である。印荷電圧vを変える始める時点を時間的基準として、この時点をt=0(ゼロ)とする。印荷電圧vが電圧v0になったことで、変位素子48の加圧室本体10a側への撓みは小さくなろうとする。印荷電圧vを、0(ゼロ)[V]とすれば、変
位素子48は、ほぼ撓みのない状態に戻ろうとし、印荷電圧vを、v1と符号が逆の電圧にすれば、変位素子48は、加圧室本体10aとは逆側に撓もうとする。
t=0(ゼロ)での印荷電圧vの変化により、圧力pは低くなる。基準圧力p0よりも圧力pが低くなった加圧室本体10aは、吐出孔8も含まれる加圧室本体10aに繋がっている流路から液体を引き込み、圧力pはp0に戻っていく。t=T0/4の時点で、圧力pはp0に戻る。t=T0/4を過ぎても、加圧室本体10aに繋がっている流路からの液体の流入は続くため、流入した液体により、圧力pはp0よりも高くなっていく。
t=T0/2の時点で、圧力pは、t=0(ゼロ)からこの時点までの間でもっとも高くなる。このときに、制御部76は、印荷電圧vを上げる。例えば、印荷電圧vをv1に戻す。印荷電圧vを上げる前に高くなっていた圧力に、印荷電圧vを上げたことで生じた圧力が足されるので、圧力pはさらに高くなる。この時点の圧力pは、2回分の電圧変化の圧力が足された状態になっている。より詳細には、t=T0/2の時点の基準圧力p0からの圧力pの変化の絶対値(|p−p0|)は、t=0(ゼロ)の時点の基準圧力p0からの圧力pの変化の絶対値(|p−p0|)の約2倍となっている。
この約2倍になった圧力pは、加圧室本体10aから、加圧室本体10aに繋がっている流路に、圧力波として伝わっていく。この圧力波のうち、吐出孔8に達した圧力波によって、吐出孔8の内側の液体の一部が外部に押し出されて、液滴として吐出される。液滴の吐出後も、加圧室10においては振動が続いている。これを残留振動という。残留振動は、徐々に減衰していく。この残留振動の周期は、概ね共振周期T0である。
引き打ち以外の吐出方法としては、例えば、いわゆる押し打ちがある。押し打ちでは、例えば、印荷電圧vを0(ゼロ)[V]にして、変位素子48が平らな状態にして待機する。吐出を行なう際には、まず、t=0の時点で、印荷電圧vを所定の電圧v2に上げる。これにより、変位素子48は、加圧室本体10a側に撓み始め、圧力pは高くなる。この圧力が、加圧室本体10aから、加圧室本体10aに繋がっている流路に、圧力波として伝わっていく。この圧力波のうち、吐出孔8に達した圧力波によって、吐出孔8の内側の液体の一部が外部に押し出されて、液滴として吐出される。
t=T0/2の時点で、で印荷電圧vは、0(ゼロ)[V]に戻される。これにより、印荷電圧vは、次の吐出が行なえる状態に戻るとともに、変位素子48は平らにもどり始め、圧力pは小さくなる。このとき生じる圧力変動は、t=0(ゼロ)の印荷電圧vの変化で生した圧力変動と逆位相になるので、圧力変動は打消しあって、残留振動は小さくなる。ただし、残留振動は、完全になくなることはない。
他の吐出方法で吐出したとしても、吐出動作を終了した時点で、圧力pおよび加圧室本体10aの容積の両方を基準状態にしておくことは難しいため、吐出動作を終了した時点における、基準状態からずれた、圧力pおよび加圧室本体10aの容積を元にして、残留振動が生じる。この残留振動の周期は、概ね共振周期T0である。残留振動は、減衰するものの、例えば、連続する画素を印刷する場合などには、通常、次の吐出動作を行なうまで残る。次の吐出動作を開始する時点で、残留振動により、圧力pおよび加圧室本体10aの容積が標準状態からずれていれば、電圧変化を加えた際の圧力pの挙動が変り、吐出される液体の、吐出量や吐出速度などの吐出特性が変動することになる。
(駆動周期、および駆動周波数)
制御部76は、所定の周期毎に駆動信号を吐出ユニット11に送る。吐出を行なう際に送られる駆動信号は、例えば、上述の引き打ちの駆動信号である。吐出を行わない際に送られる駆動信号は、例えば、電圧の変化しない駆動信号である。また、吐出を行わない際
には、液体が吐出されない程度の圧力を加える駆動信号を送って、加圧室10内等の液体に固着および沈降等が起き難いようにしてもよい。
吐出を行なう駆動信号は、複数の液滴を吐出する駆動信号であってもよい。複数の液滴は、後から吐出された液滴の速度を速くして、飛翔中に1つの液滴になるようにしてもよいし、記録媒体Pに着弾した後に、濡れ広がることなどにより、1つの画素となるようにしてもよい。
制御部76は、記録媒体Pの搬送速度に合わせて、記録媒体Pに所定の間隔で画素が形成できるように、画素を形成する駆動信号、あるいは吐出しないことで画素を形成しない駆動信号を吐出ユニット15に送る。1つの画素を形成する駆動信号、あるいはそれに対応する画素を形成しない駆動信号が送れる周期を駆動周期と言う。また、駆動周期の逆数を駆動周波数と言う。駆動周波数は、例えば、1kHzから200kHz程度である。
(流路抵抗とインピーダンス)
第1個別流路12、第2個別流路14、第3個別流路16、および加圧室本体10aの流路抵抗を、それぞれR1、R2、R3、Rcとする。また、第1個別流路12、第2個別流路14、第3個別流路16、および加圧室本体10aのインピーダンスを、それぞれZ1、Z2、Z3、Zcとする。インピーダンスは、駆動周波数における値である。流路抵抗およびインピーダンスは、本実施形態のような直方体状、あるいは緩やかに曲がっている直方体状の流路であれば、液体が流れる方向に直交する断面の形状および液体の流れに沿った長さの直方体の流路で近似して計算できる。複雑な流路形状あってもシミュレーション等で算出できる。
第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16は、加圧室本体10aに生じた圧力の多くを吐出孔8に伝えるためには圧力波が伝わり難い方がよい。また、液体の供給および回収の圧力が低くても、循環ができるように、液体が流れやすい方はよい。また、液体が流れやすくないと、液体吐出ヘッド2を使用するために液体を充填する際に、流路内の気泡が排出され難いので、充填に時間がかかったり、排出しきれなかった気泡のために、吐出不良が生じ易くなるおそれがある。
圧力波の伝搬し易さは、駆動周波数におけるインピーダンスで評価できる。循環の液体の流れや、最初に液体を充填する際の液体の流れは、完全に一定ではないが、時間的に短い変動は少なく、インピーダンスにおける周波数が影響する成分(以下で周波数成分と言うことがある)は無視できるので、実質上、流路抵抗で評価できる。つまり、第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16は、インピーダンスを高くし、流路抵抗を低くするのが好ましい。
一方、流路ユニット15を配置する体積の制約から、流路の長さを際限なく大きくすることはできなく、部材の加工精度の制約から、流路の断面積を際限なく小さくすることもできないので、1kHzから200kHz程度の駆動周波数では、周波数成分の寄与によって、インピーダンスが流路抵抗の数十倍になることはない。流路の形状を変えても、インピーダンスと流路抵抗を独立して設計するのは難しい。より詳細には、第1個別流路12および第2個別流路14の両方のインピーダンスを高くするとともに、両方の流路抵抗を低くするのは難しい。
そこで、第1個別流路12および第2個別流路14を次のように設計する。一方の流路は、インピーでンスを高くすることで、圧力波の伝達を小さくする。インピーダンスを高くした流路の流路抵抗が高いと、循環流の流れる速度が遅くなったり、液体の充填時に気泡が排出され難くなるので、インピーダンスに対する流路抵抗の割合を、もう一方の流路
と比較して小さくする。具体的は、Z1≧Z2、R1/Z1≦R2/Z2とするか、Z2≧Z1、R2/Z2≦R1/Z1とするかのいずれかにする。さらに、Z1>Z2、R1/Z1<R2/Z2とするか、Z2>Z1、R2/Z2<R1/Z1とするかのいずれかにするのがより好ましい。これにより、圧力波が逃げるのを抑制しつつ、充填時の気泡の排出が容易になる。
第1個別流路12を通る循環の流れと、第2個別流路14を通る循環の流れに流量の差が大きいと、流量が少ない方に詰まり等が起き易くなるおそれがあるので、流路抵抗の差は小さい方がよい。具体的には、R2/5≦R1≦5×R2であることが好ましく、さらに、R2/3≦R1≦3×R2、特にR2/2≦R1≦2×R2であることが好ましい。
設計上の制約から、実際には、インピーダンスに対する流路抵抗の割合は、あまり小さくできないので、Z1≧Z2、R1/Z1≦R2/Z2とした場合は、R1≧R2となることが多く、Z2≧Z1、R2/Z2≦R1/Z1とした場合は、R2≧R1となることが多い。吐出孔8付近の循環の流れを速くして、詰まりなどを起き難くするには、R2<R1であるのが良いので、Z1≧Z2、R1/Z1≦R2/Z2、R2<R1とするのが好ましい。
駆動周波数が低いと、R1/Z1とR2/Z2との差を大きくするのが難しいため、駆動周波数は20kHz以上にするのが好ましい。
また、R2/5≦R3≦5×R2であることが好ましく、さらに、R2/3≦R3≦3×R2、特にR2/2≦R3≦2×R2であることが好ましい。
循環流の観点から、加圧室本体10aのインピーダンスおよび流路抵抗を含めて設計してもよい。この場合、部分流路10bを中心に考えて、上の説明における第1個別流路12を、第1個別流路12および加圧室本体10aを合わせた流路に置き換えて考えればよい。
第1個別流路12および加圧室本体10aの合計の流路抵抗をR1cとし、合計のインピーダンスをZ1cとする。つまり、R1c=R1+Rcである。また、|Z1c|=|Z1+Zc|であり、これは一般的には|Z1c|=|Z1|+|Zc|ではない。
上述の場合と同様に理由により、Z1c≧Z2、R1c/Z1c≦R2/Z2とするか、Z2≧Z1c、R2/Z2≦R1c/Z1cとするかのいずれかにする。さらに、Z1c>Z2、R1c/Z1c<R2/Z2とするか、Z2>Z1c、R2/Z2<R1c/Z1cとするかのいずれかにするのがより好ましい。
また、R2/5≦R1c≦5×R2であることが好ましく、さらに、R2/3≦R1c≦3×R2、特にR2/2≦R1c≦2×R2であることが好ましい。
さらに、Z1c≧Z2、R1c/Z1≦R2/Z2、R2<R1cとするのが好ましい。
(環状流路の長さ)
図10を参照して流路の長さについて説明する。各吐出ユニット15に関して、加圧室10、第1個別流路12、第1共通流路20(マニホールドの分岐流路の1本)および第2個別流路14は、この列挙順につながって環状流路25を構成している。この環状流路25の1周の長さL1(P1、P3およびP4を経由する環状の線の長さ)は、加圧室本体10aから第3個別流路16を経由して第2共通流路24に到達するまでの長さL2(
P1からP2まで延びる線の長さ)の2倍よりも長くなっている。なお、長さL1は第1長さの一例であり、長さL2は第2長さの一例である。
ここで、液滴の吐出のために変位素子48によって加圧室本体10aが加圧されると、圧力波が生じ、この圧力波は、第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16それぞれへ伝搬する。流路同士が接続される位置においては圧力抵抗が変化していることから、圧力波は、流路同士の接続位置において、一部が反射し、他の一部が透過する。従って、第1個別流路12および/または第2個別流路14に伝搬した圧力波の一部は、環状流路25を1周して加圧室本体10aに戻ってくる。また、第3個別流路16へ伝搬した圧力波の一部は、第3個別流路16の第2共通流路24との接続位置において反射して加圧室本体10aに戻ってくる。
長さL1が長さL2の2倍よりも長いことによって、環状流路25を1周した圧力波が加圧室本体10aに戻ってくる時期は、第3個別流路16を往復した圧力波が加圧室本体10aに戻ってくる時期に対して遅れる。これにより、これら2つの圧力波が加圧室本体10aにおいて重畳されるおそれが低減される。すなわち、吐出後に残留する圧力変動が加圧室本体10aにおいて大きくなるおそれが低減される。その結果、例えば、残留する圧力変動が次の液滴の吐出に及ぼす影響が低減され、吐出の精度が向上する。長さL2の2倍を長さL1よりも長くするのではなく、長さL1を長さL2の2倍よりも長くすることから、例えば、第1共通流路20において長さL1の長さを確保することができる。その結果、長さL1を長くすることが容易であるとともに、長さL1の第1共通流路20における長さが比較的長いことによる効果(後述)が奏される。
長さL1および長さL2は、具体的には、例えば、以下のように測定されてよい。第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16それぞれにおいては、流路の中心線における長さを測定する。これらの流路は横断面の面積が比較的小さく、圧力波は概ね流路に沿って伝搬することから、流路の平均的(代表的)な長さを測定すればよいことからである。なお、流路の中心線は、流路に直交する横断面の面積重心を連ねてなる線である。加圧室10および第1共通流路20においては、基本的に最短距離で長さを測定する。これらの空間においては、圧力波は、四方に広がりつつ、基本的に最短距離で、個別流路へ伝搬し、および/または個別流路から伝搬するからである。
また、長さL1および長さL2の加圧室10における長さを測定する経路は、その経路上に、加圧室本体10aの上面(変位素子48に加圧される面。圧電アクチュエータ基板40の撓みは無視してよい。)の面積重心P1を含むものとする。例えば、長さL1の加圧室10における長さは、面積重心P1から第1個別流路12までの最短距離と、面積重心P1から第2個別流路14までの最短距離との和である。長さL2の加圧室10における長さは、面積重心P1から第3個別流路16までの最短距離である。面積重心P1は、圧力波が生じる範囲を代表する位置であるとともに、圧力波が戻ってくることによって次の液滴の吐出に影響が生じる範囲を代表する位置であり、この位置を基準として長さを規定することによって、上述した2つの圧力波による圧力変動が次の吐出に及ぼす影響を低減する効果がより確実に奏されるからである。なお、面積重心は、確認的に記載すると、そのまわりでの1次モーメントが0になる位置である。
上記のように、長さL1および長さL2の加圧室10および第1共通流路20における長さは最短距離であるところ、この最短距離は、障害物の有無によって、直線距離であったり、屈曲する経路の距離であったりする。図10の例では、以下のようになっている。面積重心P1から第1個別流路12までの長さは、直線距離となっている。面積重心P1から第2個別流路14までの長さは、面積重心P1から、部分流路10bの第1方向D1側かつ上方の縁部まで直線で延び、当該縁部から第2個別流路14まで直線で延びる経路
の長さとなっている。面積重心P1から第3個別流路16までの長さは、面積重心P1から部分流路10bの第1方向D1側かつ上方の縁部まで直線で延び、当該縁部から第3個別流路16まで直線で延びる経路の長さとなっている。長さL1の第1共通流路20における長さは、直線距離となっている。
なお、図示の例とは異なり、例えば、面積重心P1から第2個別流路14までの最短距離、または面積重心P1から第3個別流路14までの最短距離が直線距離になってもよい。また、例えば、第1共通流路20の幅が部分流路10bの配置位置で狭くなることなどによって、長さL1の第1共通流路20における最短距離が直線距離でなくなってもよい。長さL1および長さL2は、個別流路の端部を経由する必要はない。例えば、本実施形態では、第2個別流路14は、第1共通流路20の底面において溝を形成するように延びているから(図8(a))、長さL1の第1共通流路20における長さは、第2個別流路14の第1共通流路20側の端部よりも手前の位置P3から第1個別流路12までの長さとされている。
上記のように長さL1が長さL2の2倍よりも長い構成において、長さL1の第1共通流路20における長さ(位置P3から位置P4までの長さ)は、例えば、長さL1の3割以上を占める。すなわち、第1共通流路20が長さL1に占める割合は比較的大きい。
ここで、第1個別流路12または第2個別流路14から第1共通流路20へ伝搬した圧力波は、これらの個別流路よりも横断面の面積が広い第1共通流路20において散乱して減衰する。従って、例えば、第1共通流路20の割合が大きくされることによって、環状流路25を1周して加圧室本体10aに戻ってくる圧力波を小さくすることができる。その結果、例えば、加圧室本体10aに戻ってくる時期を遅らせることによる圧力変動の低減の効果と相俟って、吐出の精度を向上させることができる。また、例えば、相対的に長い長さL1を横断面の面積が広い第1共通流路20において確保することによって、第1個別流路12または第2個別流路14が長くなることによる流路抵抗の増加を抑制できる。長さL1は、加圧室10、第1個別流路12、第1共通流路20および第2個別流路14の4つにおいて確保されているから、第1共通流路20における長さが長さL1を4等分した長さよりも大きいことによって、第1共通流路20における減衰の影響を十分に大きくすることができるといえる。
また、本実施形態では、吐出孔8の開口方向において、第3個別流路16は第1個別流路12と第2個別流路14との間に位置している。
従って、環状流路25を構成する第1個別流路12および第2個別流路14は、3本の個別流路のうち、上下方向において互いに最も離れた2つとなる。従って、加圧室10および/または第1共通流路20において、環状流路25の長さを上下方向に確保することが容易化される。すなわち、長さL1を長くすることが容易化される。また、第1共通流路20において環状流路25の長さを確保できるから、第1共通流路20の長さが長さL1に占める割合を大きくすることも容易化される。
また、本実施形態では、第1共通流路20は、吐出孔8の開口方向に直交する方向(第1方向D1)に延びている。吐出孔8の開口方向に見て、同一の加圧室10に接続されている第1個別流路12および第2個別流路14は、第1共通流路20から、第1共通流路20の幅方向に関して互いに同一側(第5方向D5側)に延びている。
従って、例えば、第1個別流路12から第1共通流路20への圧力波の伝搬方向と、第1共通流路20から第2個別流路14への圧力波の伝搬方向とは逆になりやすい。その結果、圧力波が第1個別流路12から第2個別流路14へ伝搬しにくくなる。上記とは逆方
向の圧力波の伝搬についても同様である。すなわち、環状流路25における圧力波の伝搬を低減できる。
また、本実施形態では、第1共通流路20は、吐出孔8の開口方向に直交する方向(第1方向D1)に延びている。吐出孔8の開口方向に見て、同一の加圧室10に接続されている第1個別流路12および第2個別流路14は、加圧室10から、第1共通流路20の流路方向に関して互いに逆側(第1方向D1側および第4方向D4側)へ延びてから第1共通流路20の幅方向に関して互いに同一側(第2方向D2側)に延び、第1共通流路20の流路方向に関して互いに異なる位置にて第1共通流路20に対して接続されている。
従って、例えば、平面視において、環状流路25は、加圧室10を横切るとともに、第1共通流路20をその流路方向に延びることになる。その結果、例えば、長さL1を加圧室10および第1共通流路20において確保することが容易化される。また、そのような長さの確保を第1個別流路12および第2個別流路14それぞれの長さを短くしつつ実現できる。従って、例えば、第1共通流路20の長さが長さL1に占める割合を大きくすることが容易化される。
なお、吐出孔8の開口方向において、第3個別流路16が第1個別流路12と第2個別流路14との間に位置している構成と、第1個別流路12と第2個別流路14とが加圧室10から第1共通流路20の流路方向において互いに逆側へ延びている構成とが組み合わされると、環状流路25の長さが加圧室10および第1共通流路20においてより確保されやすくなる。
また、本実施形態では、第2共通流路24は、第1共通流路20と並列に延びている。吐出孔8の開口方向に見て、同一の加圧室10に接続されている第2個別流路14および第3個別流路16は、加圧室10から、第1共通流路20の流路方向に関して互いに逆側(第1方向D1側および第4方向D4側)へ延びてから第1共通流路20の幅方向に関して互いに逆側(第2方向D2側および第5方向D5側)へ延びている。
従って、例えば、第2個別流路14と第3個別流路16は、平面視において回転対称のような形状となっており、第2個別流路14を含む環状流路25の長さL1と、第3個別流路16を含む経路の長さL2との比較が容易である。