以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。既に説明した実施形態の構成に対応する(類似する)構成について、既に説明した実施形態の構成とは異なる符号を付した場合においても、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
<第1の実施形態>
(プリンタの全体構成)
図1を用いて、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含むカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1と称する)について説明する。
プリンタ1は、記録媒体Pを搬送ローラ74aから搬送ローラ74bへと搬送することにより、記録媒体Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部76は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、記録媒体Pに液滴を着弾させて、記録媒体Pに印刷を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、記録媒体Pとほぼ平行になるように平板状のヘッド搭載フレーム70が固定されている。ヘッド搭載フレーム70には20個の孔(不図示)が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔に搭載されている。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(b)に示すように細長い長尺形状をなしている。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。隣り合う液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、記録媒体Pの幅方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、記録媒体Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録媒体Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクからインクが供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群で4色のインクを印刷している。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。
なお、プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数、あるいはヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度、すなわち搬送速度を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、記録媒体Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、記録媒体Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体Pに印刷を行なう。記録媒体Pは、搬送ローラ74aに巻き取られた状態になっており、2つの搬送ローラ74cの間を通った後、ヘッド搭載フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通る。その後2つの搬送ローラ74dの間を通り、最終的に搬送ローラ74bに回収される。
記録媒体Pとしては、印刷用紙以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、記録媒体Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙、裁断された布、木材、あるいはタイルなどであってもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や、化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部76が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
(液体吐出ヘッドの全体構成)
次に、図2〜9を用いて第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2について説明する。なお、図5,6では図面を分かりやすくするために、他の部材の下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。また、図5(a)では、第2流路部材6の一部を透過して示しており、図5(b)では、第2流路部材6の全部を透過して示している。また、図9(a)においては、従来の液体の流れを破線で示し、吐出ユニット15の液体の流れを実線で示し、第2個別流路14から供給された液体の流れを長破線で示している。
なお、図面には、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3、第4方向D4、第5方向D5、および第6方向D6を図示している。第1方向D1は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の一方側であり、第4方向D4は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の他方側である。第2方向D2は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の一方側であり、第5方向D5は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の他方側である。第3方向D3は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の一方側であり、第6方向D6は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の他方側である。
液体吐出ヘッド2においては、第1流路として第2個別流路14、第2流路として第3個別流路16、第3流路として第1個別流路12を用いて説明する。
図2,3に示すように、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、筐体50と、放熱板52と、配線基板54と、押圧部材56と、弾性部材58と、信号伝達部60と、ドライバIC62とを備えている。なお、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aを備えていればよく、筐体50、放熱板52、配線基板54、押圧部材56、弾性部材58、信号伝達部60、およびドライバIC62は必ずしも備えていなくてもよい。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aから信号伝達部60が引き出されており、信号伝達部60は、配線基板54に電気的に接続されている。信号伝達部60には、液体吐出ヘッド2の駆動を制御するドライバIC62が設けられている。ドライバIC62は、弾性部材58を介して押圧部材56により放熱板52に押圧されている。なお、配線基板54を支持する支持部材の図示は省略している。
放熱板52は、金属あるいは合金により形成することができ、ドライバIC62の熱を外部に放熱するために設けられている。放熱板52は、螺子あるいは接着剤により筐体50に接合されている。
筐体50は、ヘッド本体2aの上面に載置されており、筐体50と放熱板52とにより、液体吐出ヘッド2を構成する各部材を覆っている。筐体50は、第1開口50aと、第2開口50bと、第3開口50cと、断熱部50dとを備えている。第1開口50aは、第3方向D3および第6方向D6に対向するようにそれぞれ設けられている。放熱板52が第1開口50aに配置されることにより、第1開口50aは封止されている。第2開口50bは、下方に向けて開口しており、第2開口50bを介して配線基板54および押圧部材56が筐体50の内部に配置される。第3開口50cは、上方に向けて開口しており、配線基板54に設けられたコネクタ(不図示)が収容される。
断熱部50dは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように設けられており、放熱板52とヘッド本体2aとの間に配置されている。それにより、放熱板52に放熱された熱が、ヘッド本体2aに伝わる可能性を低減することができる。筐体50は、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。
図4(a)に示すように、ヘッド本体2aは、第2方向D2から第5方向D5に向けて長い平板形状をなしており、第1流路部材4と、第2流路部材6と、圧電アクチュエータ基板40とを有している。ヘッド本体2aは、第1流路部材4の上面に、圧電アクチュエータ基板40および第2流路部材6が設けられている。圧電アクチュエータ基板40は、図4(a)に示す破線の領域に載置される。圧電アクチュエータ基板40は、第1流路部材4に設けられた複数の加圧室10(図8参照)を加圧するために設けられており、複数の変位素子48(図8参照)を有している。
(流路部材の全体構成)
第1流路部材4は、内部に複数の流路が形成されており、第2流路部材6から供給された液体を、下面に設けられた吐出孔8(図8参照)まで導いている。第1流路部材4は、上面が加圧室面4−1となっており、加圧室面4−1に開口20a,24a,28c,28dが形成されている。開口20aは、複数設けられており、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されている。開口20aは、加圧室面4−1の第3方向D3における端部に配置されている。開口24aは、複数設けられており、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されている。開口24aは、加圧室面4−1の第6方向D6における端部に配置されている。開口28cは、開口20aよりも第2方向D2における外側および第5方向D5における外側に設けられている。開口28dは、開口24aよりも第2方向D2における外側および第5方向D5における外側に設けられている。
第2流路部材6は、内部に複数の流路が形成されており、液体タンクから供給された液体を第1流路部材4まで導いている。第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1の外周部上に設けられており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域の外側にて、接着剤(不図示)を介して、第1流路部材4と接合されている。
(第2流路部材(統合流路))
第2流路部材6は、図4,5に示すように、貫通孔6aと、開口6b,6c,6d,22a,26aとが形成されている。貫通孔6aは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域よりも外側に配置されている。貫通孔6aには、信号伝達部60が挿通している。
開口6bは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材の第2方向D2における端部に配置されている。開口6bは、液体タンクから第2流路部材6に液体を供給している。開口6cは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材の第5方向D5における端部に配置されている。開口6cは、第2流路部材6から液体タンクに液体を回収している。開口6dは、第2流路部材6の下面に設けられており、開口6dにより形成された空間に圧電アクチュエータ基板40が配置されている。
開口22aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口22aは、第2流路部材6の第3方向D3における端部に形成され、貫通孔6aよりも第3方向D3側に設けられている。
開口22aは、開口6bと連通しており、開口22aが第1流路部材4により封止されることにより、第1統合流路22を形成している。第1統合流路22は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口20aおよび開口28cに液体を供給する。
開口26aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口26aは、第2流路部材6の第6方向D6における端部に形成され、貫通孔6aよりも第6方向D6側に設けられている。
開口26aは、開口6cと連通しており、開口26aが第1流路部材4により封止されることにより、第2統合流路26を形成している。第2統合流路26は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口24aおよび開口28dから液体を回収する。
以上の構成により、液体タンクから開口6bに供給された液体は、第1統合流路22に供給され、開口22aを介して第1共通流路20に流れ込み、第1流路部材4に液体が供給される。そして、第2共通流路24により回収された液体は、開口26aを介して第2統合流路26に流れ込み、開口6cを介して外部へ液体が回収される。なお、第2流路部材6は、必ずしも設けなくてもよい。
なお、液体の供給および回収は、適宜な手段によって実現されてよい。例えば、図3(a)において点線で示すように、プリンタ1は、第1統合流路22、第1流路部材4の流路および第2統合流路26を含む循環流路78と、第1統合流路22から第1流路部材4の流路を経由して第2統合流路26へ向かう流れを形成する流れ形成部79とを有していてよい。
流れ形成部79の構成は、適宜なものとされてよい。例えば、流れ形成部79は、ポンプを含み、開口6cからの吸引および/または開口6bへの吐出を行う。また、例えば、流れ形成部79は、開口6cから回収された液体を貯留する回収空間と、開口6bへ供給される液体を貯留する供給空間と、回収空間から供給空間へ液体を送出するポンプと、を有し、供給空間の液面を回収空間の液面よりも高くすることにより、第1統合流路22と第2統合流路26との間に圧力差を生じさせるものであってもよい。
循環流路78のうち第1流路部材4および第2流路部材6の外側に位置する部分、ならびに流れ形成部79は、液体吐出ヘッド2の一部であってもよいし、液体吐出ヘッド2の外部に設けられていてもよい。
(第1流路部材(共通流路および吐出ユニット))
図5〜8に示すように、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4mが積層されて形成されており、積層方向に断面を見たときに、上側に設けられた加圧室面4−1と、下側に設けられた吐出孔面4−2とを有している。加圧室面4−1上には、圧電アクチュエータ基板40が裁置されており、吐出孔面4−2に開口した吐出孔8から、液体が吐出される。複数のプレート4a〜4mは、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。なお、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4mを積層せずに、樹脂により一体形成してもよい。
第1流路部材4は、複数の第1共通流路20と、複数の第2共通流路24と、複数の端部流路28と、複数の吐出ユニット15と、複数のダミー吐出ユニット17とが形成されている。
第1共通流路20は、第1方向D1から第4方向D4に延びるように設けられており、開口20aと連通するように形成されている。また、第1共通流路20は、第2方向D2から第5方向D5に複数配列されている。
第2共通流路24は、第4方向D4から第1方向D1に延びるように設けられており、開口24aと連通するように形成されている。また、第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に複数配列されており、隣り合う第1共通流路20同士の間に配置されている。そのため、第1共通流路20および第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に向けて、交互に配置されている。
第1流路部材4の第2共通流路24にダンパ30が形成されており、ダンパ30を介して、第2共通流路24と面した空間32が配置されている。ダンパ30は、第1ダンパ30aと、第2ダンパ30bとを有している。空間32は、第1空間32aと、第2空間32bとを有している。第1空間32aは、第1ダンパ30aを介して液体が流れる第2共通流路24の上方に設けられている。第2空間32bは、第2ダンパ30bを介して液体が流れる第2共通流路24の下方に設けられている。
第1ダンパ30aは、第2共通流路24の上方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第1ダンパ30aは、第2共通流路24と同形状をなしている。また、第1空間32aは、第1ダンパ30aの上方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第1空間32aは、第2共通流路24と同形状をなしている。
第2ダンパ30bは、第2共通流路24の下方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第2ダンパ30bは、第2共通流路24と同形状をなしている。また、第2空間32bは、第2ダンパ30bの下方の略全域に形成されている。そのため、平面視すると、第2空間32bは、第2共通流路24と同形状をなしている。
第1流路部材4は、第2共通流路24にダンパ30が設けられていることにより、第2共通流路24の圧力変動を緩和することができ、流体クロストークが生じ難くなる。
第1ダンパ30aおよび第1空間32aは、プレート4d,4eにハーフエッチングにより溝を形成し、溝同士が対向するように接合することにより形成することができる。この際、プレート4eのハーフエッチングにより残った残部が、第1ダンパ30aとなる。第2ダンパ30bおよび第2空間32bも同様に、プレート4k,4lにハーフエッチングにより溝を形成することで作製することができる。
端部流路28は、第1流路部材4の第2方向D2の端部、および第5方向D5の端部に形成されている。端部流路28は、幅広部28aと、狭窄部28bと、開口28c,28dとを有している。開口28cから供給された液体は、幅広部28a、狭窄部28b、幅広部28aおよび開口28dをこの順に流れることにより、端部流路28を流れることとなる。それにより、端部流路28に液体が存在するとともに、端部流路28を液体が流れることとなり、端部流路28の周囲に位置する第1流路部材4の温度が液体により均一化される。それゆえ、第1流路部材4は、第2方向D2の端部および第5方向D5の端部から放熱される可能性が低減することとなる。
(吐出ユニット)
図6,7を用いて、吐出ユニット15について説明する。吐出ユニット15は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路(第3流路)12と、第2個別流路(第1流路)14と、第3個別流路(第2流路)16とを有している。なお、液体吐出ヘッド2では、第1個別流路12および第2個別流路14から加圧室10へ液体を供給し、第3個別流路16が加圧室10から液体を回収している。なお、詳細は後述するが、第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。
吐出ユニット15は、隣り合う第1共通流路20と第2共通流路24との間に設けられており、第1流路部材4の平面方向にマトリクス状に形成されている。吐出ユニット15は、吐出ユニット列15aと、吐出ユニット行15bとを有している。吐出ユニット列15aでは、吐出ユニット15が第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。吐出ユニット行15bでは、吐出ユニット15が第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
加圧室10は、加圧室列10cと、加圧室行10dとを有している。また、吐出孔8は、吐出孔列8aと、吐出孔行8bとを有している。吐出孔列8aおよび加圧室列10cも同様に、第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。また、吐出孔行8bおよび加圧室行10dも同様に、第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
第1方向D1および第4方向D4と、第2方向D2および第5方向D5とが成す角度は直角からずれている。このため、第1方向D1に沿って配置されている吐出孔列8aに属する吐出孔8同士は、その直角からのずれの分、第2方向D2にずれて配置される。そして、吐出孔列8aが第2方向D2に並んで配置されるので、異なる吐出孔列8aに属する吐出孔8は、その分、第2方向D2にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、第2方向D2に一定間隔で並んで配置されている。これにより、吐出した液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
図6において、吐出孔8を第3方向D3および第6方向D6に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に記録媒体Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。
ダミー吐出ユニット17は、最も第2方向D2側に位置する第1共通流路20と、最も第2方向D2側に位置する第2共通流路24との間に設けられている。また、ダミー吐出ユニット17は、最も第5方向D5側に位置する第1共通流路20と、最も第5方向D5側に位置する第2共通流路24との間にも設けられている。ダミー吐出ユニット17は、最も第2方向D2または第5方向D5側に位置する吐出ユニット列15aの吐出を安定させるために設けられている。
加圧室10は、図7,8に示すように、加圧室本体10aと部分流路10bとを有している。加圧室本体10aは、平面視して、円形状をなしており、加圧室本体10aから下方に向けて部分流路10bが延びている。加圧室本体10aは、加圧室本体10a上に設けられた変位素子48から圧力を受けることにより、部分流路10b中の液体を加圧する。
加圧室本体10aは、略円板形状であり、平面形状は円形状をなしている。平面形状が円形状であることにより、変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくすることができる。部分流路10bは、直径が加圧室本体10aより小さい略円柱形状であり、平面形状は円形状である。また、部分流路10bは、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に収納されている。
なお、部分流路10bは、吐出孔8側に向かって断面積の小さくなる円錐状あるいは円錐台状であってもよい。それにより、第1共通流路20および第2共通流路24の幅を大きくでき、上述の圧力損失の差を小さくできる。
加圧室10は、第1共通流路20の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12および第2個別流路14を介して接続されている。
また、加圧室10は、第2共通流路24の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第2共通流路24とその両側に並んでいる加圧室10とは、第3個別流路16を介して接続されている。
図7を用いて、第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16について説明する。
第1個別流路12は、第1共通流路20と加圧室本体10aとを接続している。第1個別流路12は、第1共通流路20の上面から上方へ向けて延びた後、第5方向D5に向けて延び、第4方向D4に向けて延びた後、再び上方へ向けて延びて加圧室本体10aの下面に接続されている。
第2個別流路14は、第1共通流路20と部分流路10bとを接続している。第2個別流路14は、第1共通流路20の下面から第5方向D5へ向けて延び、第1方向D1に向けて延びた後、部分流路10bの側面に接続されている。
第3個別流路16は、第2共通流路24と部分流路10bとを接続している。第3個別流路16は、第2共通流路24の側面から第2方向D2に向けて延び、第4方向D4に向けて延びた後、部分流路10bの側面に接続されている。
そして、第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。第2個別流路14の流路抵抗を、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くするには、例えば、第2個別流路14が形成されるプレート4lの厚みを、第1個別流路12が形成されるプレート4cの厚みよりも厚くすればよい。また、平面視して、第2個別流路14の幅を、第1個別流路12の幅よりも広くしてもよい。また、平面視して、第2個別流路14の長さを、第1個別流路12の長さよりも短くしてもよい。
以上のような構成により、第1流路部材4では、開口20aを介して第1共通流路20に供給された液体は、第1個別流路12および第2個別流路14を介して加圧室10に流れ込み、一部の液体は吐出孔8から吐出される。そして、残りの液体は、加圧室10から、第3個別流路16を介して第2共通流路24に流れ込み、開口24aを介して、第1流路部材4から第2流路部材6に排出される。
(圧電アクチュエータ)
図7(c),8を用いて圧電アクチュエータ基板40について説明する。第1流路部材4の上面には、変位素子48を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子48が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群と略同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、第1流路部材4の加圧室面4−1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a、40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a、40bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電セラミック層40a、40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。
これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる。なお、圧電セラミック層40bは、振動板として働いており、必ずしも圧電体である必要はなく、代わりに、圧電体でない他のセラミック層、金属板または樹脂板を用いてもよい。振動板は、第1流路部材4の一部を構成する部材に兼用されているかのような構成とされてもよい。例えば、振動板は、図示の例とは異なり、加圧室面4−1全体に亘る広さを有するとともに、開口20a,24a,28c,28dと対向する開口を有していてもよい。
圧電アクチュエータ基板40には、共通電極42と、個別電極44と、接続電極46とが形成されている。共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。そして、個別電極44は、圧電アクチュエータ基板40の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている。
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子48となっている。そのため、圧電アクチュエータ基板40は、複数の変位素子48を有している。
共通電極42は、Ag−Pd系などの金属材料により形成することができ、共通電極42の厚さは2μm程度とすることができる。共通電極42は、圧電セラミック層40aを貫通して形成されたビアホールを介して圧電セラミック層40a上の共通電極用表面電極(不図示)と繋がっており、共通電極用表面電極を介して接地され、グランド電位に保持されている。
個別電極44は、Au系などの金属材料により形成されており、個別電極本体44aと、引出電極44bとを有している。図7(c)に示すように、個別電極本体44aは、平面視して、略円形状に形成されており、加圧室本体10aよりも小さく形成されている。引出電極44bは、個別電極本体44aから引き出されており、引き出された引出電極44b上に接続電極46が形成されている。
接続電極46は、例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。接続電極46は、信号伝達部60に設けられた電極と電気的に接合されている。
液体吐出ヘッド2は、制御部76の制御により、ドライバIC62などを介して、個別電極44に供給される駆動信号に従って、変位素子48を変位させる。駆動方法としては、いわゆる引き打ち駆動を用いることができる。
(吐出ユニットの詳細および作用)
図9(a)を用いて液体吐出ヘッド2の吐出ユニット15を詳細に説明する。
吐出ユニット15は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路(第3流路)12と、第2個別流路(第1流路)14と、第3個別流路(第2流路)16とを備えている。第1個別流路12および第2個別流路14は、第1共通流路20(図8参照)に接続されており、第3個別流路16は、第2共通流路24(図8参照)に接続されている。
第1個別流路12は、加圧室10のうち加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されている。第2個別流路14は、加圧室10のうち部分流路10bの第4方向D4側に接続されている。第3個別流路16は、加圧室10のうち部分流路10bの第1方向D1側に接続されている。
第1個別流路12から供給された液体は、加圧室本体10aを通って部分流路10bを下方に向けて流れ、一部が吐出孔8から吐出される。吐出孔8から吐出されなかった液体は、第3個別流路16を介して、吐出ユニット15の外部に回収される。
第2個別流路14から供給された液体は、一部が吐出孔8から吐出される。吐出孔8から吐出されなかった液体は、部分流路10b内を上方へ向けて流れ、第3個別流路16を介して、吐出ユニット15の外部に回収される。
図9(a)に示すように、第1個別流路12から供給された液体は、加圧室本体10a、および部分流路10bを流れて吐出孔8から吐出される。従来の吐出ユニットにおける液体の流れは破線で示すように、加圧室本体10aの中央部から吐出孔8に向けて一様に略直線状に流れている。
このような流れが生じると、加圧室10のうち、第2個別流路14が接続された部位と反対側に位置する領域80付近には液体が流れにくい構成となり、例えば、領域80付近に液体の滞留する領域が生じるおそれがある。
これに対して、吐出ユニット15では、第1個別流路12および第2個別流路14が加圧室10に接続されており、これらの流路から加圧室10に液体が供給される。
そのため、第1個別流路12から吐出孔8へ供給される液体の流れに対して、第2個別流路14から加圧室10へ供給された液体の流れを衝突させることができる。それにより、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れが、一様に略直線状に流れにくくなり、加圧室10内に液体が滞留する領域を生じにくくすることができる。
すなわち、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れにより生じた液体の滞留点の位置が、加圧室10から吐出孔8へ供給される液体の流れとの衝突により移動することになり、加圧室10内に液体の滞留する領域を生じにくくすることができる。
また、加圧室10が、加圧室本体10aおよび部分流路10bを有しており、第1個別流路12が加圧室本体10aに接続され、第2個別流路14が部分流路10bに接続されている。そのため、第1個別流路12が、加圧室10全体を流れるように液体を供給するとともに、第2個別流路14から供給された液体の流れにより、部分流路10bに液体の滞留する領域が生じにくくなる。
また、第3個別流路16は、部分流路10bに接続されている。そのため、第2個別流路14から第3個別流路16に向けて流れる液体の流れが、部分流路10bの内部を横断する構成となる。その結果、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れを横切るように、第2個別流路14から第3個別流路16へ向けて流れる液体を流すことができる。それゆえ、さらに部分流路10b内に液体の滞留する領域が生じにくくなる。
(個別流路等の詳細および作用)
また、第3個別流路16は、部分流路10bに接続されており、第2個別流路14よりも加圧室本体10a側に接続されている。そのため、吐出孔8から部分流路10bの内部に気泡が侵入した場合においても、気泡の浮力を利用して第3個別流路16に気泡を排出することができる。それにより、部分流路10b内に気泡が滞留することにより、液体への圧力伝幡に影響を与える可能性を低減することができる。
また、平面視したときに、第1個別流路12が加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されており、第2個別流路14が部分流路10bの第4方向D4側に接続されている。
そのため、平面視したときに、吐出ユニット15には、第1方向D1および第4方向D4の両側から液体が供給されることとなる。そのため、供給された液体は、第1方向D1の速度成分、および第4方向D4の速度成分を有することとなる。それゆえ、加圧室10に供給された液体が、部分流路10bの内部の液体を撹拌することとなる。その結果、さらに部分流路10b内に、液体の滞留する領域が生じにくくなる。
また、第3個別流路16が部分流路10bの第1方向D1側に接続されており、吐出孔8が部分流路10bの第4方向D4側に配置されている。それにより、部分流路10bの第1方向D1側にも液体を流すことができ、部分流路10bの内部に、液体の滞留する領域が生じにくくなる。
なお、第3個別流路16が部分流路10bの第4方向D4側に接続され、吐出孔8が部分流路10bの第1方向D1側に配置されるように構成してもよい。その場合においても同様の効果を奏することができる。
また、図8に示すように、第3個別流路16が、第2共通流路24の加圧室本体10a側に接続されている。それにより、部分流路10bから排出された気泡を第2共通流路24の上面に沿って流すことができる。それにより、第2共通流路24から開口24a(図6参照)を介して気泡を外部に排出しやすい。
また、第3個別流路16の上面と、第2共通流路24の上面とが面一であることが好ましい。それにより、部分流路10bから排出された気泡は、第3個別流路16の上面、および第2共通流路24の上面に沿って流れることとなり、さらに外部に排出しやすい。
また、第2個別流路14は、第3個別流路16よりも部分流路10bの吐出孔8側に接続されている。それにより、吐出孔8の近傍にて第2個別流路14から液体が供給されることとなる。それゆえ、吐出孔8の近傍の液体の流速を早めることができ、液体に含まれる顔料等が沈降し、吐出孔8につまりが生じにくくなる。
また、図7(b)に示すように、平面視したときに、第1個別流路12が、加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されており、部分流路10bの面積重心が、加圧室本体10aの面積重心よりも第4方向D4側に位置している。すなわち、部分流路10bが、加圧室本体10aの第1個別流路12から遠い側に接続されている。
それにより、加圧室本体10aの第1方向D1側に供給された液体は、加圧室本体10aの全域に広がった後、部分流路10bに供給されることとなる。その結果、加圧室本体10aの内部に、液体の滞留する領域が生じにくい。
また、平面視したときに、第2個別流路14と第3個別流路16との間に吐出孔8が配置されている。それにより、吐出孔8から液体が吐出された際に、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れと、第2個別流路14から供給された液体の流れとが衝突する位置を移動させることができる。
すなわち、吐出孔8からの液体の吐出量は、印画される画像により異なることとなり、液体の吐出量の増減に伴って、部分流路10bの内部の液体の挙動が変化することとなる。そのため、液体の吐出量の増減により、加圧室本体10aから吐出孔8へ供給される液体の流れと、第2個別流路14から供給された液体の流れとが衝突する位置が移動することとなり、部分流路10bの内部に液体が滞留する領域が生じにくい。
また、吐出孔8の面積重心が、部分流路10bの面積重心よりも第4方向D4側に位置している。それにより、部分流路10bに供給された液体は、部分流路10bの全域に広がった後、吐出孔8に供給されることとなり、部分流路10bの内部に液体の滞留する領域が生じにくくなる。
ここで、吐出ユニット15は、第1個別流路12(第3流路)および第2個別流路14(第1流路)を介して第1共通流路20と接続されている。そのため、加圧室本体10aに加えられた圧力の一部は、第1個別流路12および第2個別流路14を介して第1共通流路20に伝幡することとなる。
第1共通流路20には、第1個別流路12および第2個別流路14から圧力波が伝幡して、第1共通流路20の内部に圧力差が生じると、第1共通流路20の液体の挙動が不安定になるおそれがある。そのため、第1共通流路20に伝幡する圧力波の大きさは均一であることが好ましい。
液体吐出ヘッド2は、断面視して、第2個別流路14が第1個別流路12よりも下方に配置されている。そのため、加圧室本体10aからの距離が、第2個別流路14のほうが第1個別流路12よりも長くなり、第2個別流路14まで伝幡する際に、圧力減衰が生じることとなる。
そして、第2個別流路14の流路抵抗が第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっていることから、第2個別流路14を流れる際の圧力減衰を、第1個別流路12を流れる際の圧力減衰よりも小さくすることができる。その結果、第1個別流路12および第2個別流路14から伝幡した圧力波の大きさを均一に近づけることができる。
つまり、加圧室本体10aから第1個別流路12または第2個別流路14までの圧力減衰と、第1個別流路12または第2個別流路14を流れる際の圧力減衰との合計を、第1個別流路12と第2個別流路14とで均一に近づけることができ、第1共通流路20に伝幡する圧力波の大きさを均一に近づけることができる。
また、断面視して、第3個別流路16が、第2個別流路14よりも高く配置されており、かつ第1個別流路12よりも低く配置されている。言い換えると、第3個別流路16は、第1個別流路12と第2個別流路14との間に配置されている。そのため、加圧室本体10aに加圧された圧力は、第3個別流路16に伝幡する際に、一部が第3個別流路16に伝幡する。
これに対して、第2個別流路14の流路抵抗が、第1個別流路12の流路抵抗よりも低くなっている。そのため、第2個別流路14に到達する圧力波が減少していても、第2個別流路14での圧力減衰が小さくなるため、第1個別流路12および第2個別流路14から伝幡した圧力波の大きさを均一に近づけることができる。
第1個別流路12の流路抵抗は、第2個別流路14の流路抵抗の1.03〜2.5倍とすることができる。
なお、第2個別流路14の流路抵抗を、第1個別流路12の流路抵抗よりも大きくしてもよい。その場合、第1共通流路20から第2個別流路14を介した圧力伝幡を生じにくくすることができる。その結果、吐出孔8に不要な圧力が伝幡する可能性を低減することができる。
第2個別流路14の流路抵抗は、第1個別流路12の流路抵抗の1.03〜2.5倍とすることができる。
(第3個別流路の入口および部分流路の突出部)
図8(a)、図8(b)および図9(a)に示すように、第3個別流路16は、部分流路10bの途中に接続されている。すなわち、第3個別流路16は、部分流路10bの途中において部分流路10bの壁面に開口する入口16aを有している。
部分流路10bの途中は、例えば、部分流路10bの加圧室本体10a側の流路端面(加圧室本体10aへの開口面。図示の例ではプレート4bの上面)から部分流路10bの内部側へ離れているとともに、吐出孔8側の流路端面(吐出孔8が開口する面。図示の例ではプレート4lの下面)から部分流路10bの内部側へ離れている位置である。入口16aと流路端面との、流路方向(図示の例ではプレートの積層方向)における距離は、適宜に設定されてよい。例えば、当該距離は、加圧室本体10a側および吐出孔8側のいずれについても、部分流路10bの流路方向における長さの1/10以上に設定されてよい。また、例えば、入口16aは、部分流路10bの流路方向の中央位置よりも加圧室本体10a側に位置している。
また、別の観点では、部分流路10bの途中は、例えば、部分流路10bの加圧室本体10a側の端部を構成するプレート4bよりも吐出孔8側、かつ部分流路10bの吐出孔8側の端部を構成するプレート4lよりも加圧室本体10a側に位置するプレート4c〜4kのいずれか(図示の例ではプレート4f)の位置である。入口16aが形成されるプレートは、部分流路10bの端部を構成するプレート4bまたは4lに隣接してもよいし、1枚以上離れていていてもよい。
第3個別流路16を部分流路10bの途中と接続することによって、例えば、設計の自由度が向上し、好適な流路構造が得られる。具体的には、例えば、第2共通流路24の上に加圧室本体10aを重ならせることによって複数の加圧室本体10aの高密度化および/または第2共通流路24の拡幅化を図り、その一方で、第3個別流路16の第2共通流路24に対する接続位置を第2共通流路24の側面上端とすることにより、気泡を第2共通流路24の上面に沿って流すことができる。
第1流路部材4は、部分流路10bの壁面において、入口16aに対して加圧室本体10a側に隣接し、部分流路10b内に突出する突出部81を備えている。突出部81は、例えば、第3個別流路16を構成しているプレート4fに対して加圧室本体10a側に重ねられているプレート4eによって構成されている。具体的には、例えば、以下のとおりである。
プレート4b〜4lはそれぞれ、部分流路10bを構成する孔82を備えている。プレート4eの孔82の縁部のうち入口16a側(第1方向D1側)の部分は、例えば、部分流路10bを構成する他の全てのプレート4b〜4dおよび4f〜4lの孔82の縁部のうち入口16a側の部分よりも部分流路10bの内部側(ここでは第4方向D4側)に位置している。これにより、突出部81が構成されている。従って、突出部81の、プレートの積層方向(部分流路10bの流路方向)における大きさは、プレート4eの厚みと同一である。
図9(b)は、プレート4eのうち部分流路10bおよびその周囲を加圧室本体10a側から見た平面図である。同図では、プレート4fも点線で示している。
プレート4b〜4lの孔82の平面形状は、例えば、概ね円形である。プレート4eの孔82の直径は、例えば、他のプレート4b〜4dおよび4f〜4lの孔82の直径よりも小さくされている。そして、プレート4eの孔82の中心(面積重心)は、他のプレートの孔82の中心(面積重心)よりも入口16aとは反対側(第4方向D4側)に位置している。これにより、プレート4eの孔82の縁部のうち入口16a側の部分は、他のプレートの孔82の縁部のうち入口16a側の部分よりも入口16aとは反対側に位置している。
従って、突出部81は、平面視において入口16a側に弧状に形成されている。突出部81の突出量(弧の内縁と外縁との距離)は、入口16a付近において最大となっている。なお、入口16aとは反対側において、プレート4eの孔82の縁部の位置と、他のプレートの孔82の縁部の位置とは、例えば、一致している。ただし、いずれか一方が他方に対して入口16a側へずれていてもよい。
平面視において、突出部81は、例えば、第3個別流路16の幅(第1方向D1に直交する方向における長さ)全体に亘っている。具体的には、例えば、第3個別流路16の幅は、プレート4fの孔82の直径(部分流路10bの、第3個別流路16の高さにおける直径)よりも小さく、孔82の半周未満である一方で、突出部81は、プレート4fの孔82の半周以上に亘っている。
突出部81の突出量は、適宜に設定されてよい。例えば、突出部81の突出量の最大値(入口16a付近における突出量)は、1μm以上、2μm以上、5μm以上または10μm以上とされてよい。また、別の観点では、例えば、突出部81の突出量の最大値は、プレート4fの孔82の直径の1/3000以上または1/300以上とされてよい。この大きさであれば、例えば、突出部81が形成されていることを確認することができる。また、例えば、突出量の最大値は、プレート4fの孔82の直径の1/20以上1/5以下とされてよい。1/20以上であれば、後述する流れの衝突の効果が大きく、また、1/5以下であれば、吐出のための加圧室本体10aから吐出孔8への圧力伝搬に突出部81が悪影響を及ぼすおそれが低減される。
以上のとおり、本実施形態では、液体吐出ヘッド2は、第1流路部材4と、複数の変位素子48(加圧部)と、を有している。第1流路部材4は、複数の吐出孔8、複数の吐出孔8にそれぞれ接続されている複数の加圧室10、複数の加圧室10にそれぞれ接続されており、複数の加圧室10に液体を供給する複数の第1流路(例えば第2個別流路14)、および複数の加圧室10にそれぞれ接続されており、複数の加圧室10の液体を回収する複数の第3個別流路16(第2流路)を備えている。複数の変位素子48は、複数の加圧室10をそれぞれ加圧する。加圧室10は、加圧室本体10aと、加圧室本体10aおよび吐出孔8を接続している部分流路10bと、を備えている。第3個別流路16は、部分流路10bの途中において部分流路10bの壁面に開口している入口16aを備えている。部分流路10bの壁面は、入口16aに対して部分流路10bの流路方向において隣接している突出部81を備えている。
従って、例えば、入口16a付近において、部分流路10bの流路方向における液体の流れを突出部81に衝突させることができる。突出部81に対して下から上へ(別の観点では部分流路10bの流路方向において入口16a側から突出部81側へ)流れが衝突する場合(図9(a)の第2個別流路14からの長破線の矢印参照)においては、例えば、衝突によって入口16aへの流れが生じる。その結果、例えば、効率よく液体を循環させることができる。また、例えば、気泡を第2共通流路24へ排出することも容易化される。突出部81に対して上から下へ流れが衝突する場合においては、例えば、流れを攪拌させることができる。これにより、部分流路における液体の流れを好適にできる。
また、本実施形態では、突出部81は、入口16aに対して流路方向の加圧室本体10a側に位置している。
従って、例えば、液体の吐出後に吐出孔8から入口16aへの流れによって液体を回収するときに、液体を突出部81に衝突させることによって入口16aへの流れを生じさせることができる。その結果、例えば、液体の回収を円滑化させ、加圧室本体10aへ気泡が逆流するおそれを低減できる。また、例えば、液体の吐出時に加圧室本体10aからの圧力波が突出部81によって遮られることによって、当該圧力波が第3個別流路16および第2共通流路24を介して他の第3個別流路16および他の加圧室10へ伝搬するおそれが低減される。
また、本実施形態では、突出部81は、入口16aに対して流路方向の第2個別流路14とは反対側に位置している。
従って、例えば、第2個別流路14から部分流路10bに液体が供給されることによる流れが突出部81に衝突する。その結果、例えば、入口16aへの流れが生じる。入口16aへの流れによって、例えば、液体の循環の効率化および気泡の排出の容易化が図られる。
また、本実施形態では、第1流路部材4は、吐出孔8側から加圧室本体10a側へ積層されている複数のプレート4b〜4lを備えている。部分流路10bは、複数のプレート4b〜4lを貫通する複数の孔82がプレートの積層方向に繋がることによって構成されている。複数の孔82のうち入口16aが内周面に開口する第1孔(プレート4fの孔82)に対して、複数の孔82のうち第1孔に重なる第2孔(プレート4eの孔82)が小さいことによって突出部81が構成されている。
従って、例えば、平面視において孔82が円形またはこれに類する形状である場合において、突出部81は、入口16a側ほど突出量が大きくなる弧状となる。その結果、例えば、入口16a付近で衝突の影響を大きくでき、その一方で、衝突の影響を入口16aから離れるにつれて徐々に小さくして、予測困難な3次元流れが生じるおそれを抑制できる。また、例えば、孔82の径等を適宜に設定するだけで突出部81を形成することができ、形成が容易である。具体的には、例えば、第1流路部材4内の各種の流路は、プレート4a〜4mの孔(孔82を含む)および/または溝(貫通溝もしくは凹溝)によって形成されているところ、この孔および/または貫通溝は、例えば、プレートに対してエッチングを施すことによって形成される。エッチングは、例えば、ウェットエッチングである。従って、例えば、エッチングマスクのパターンを適宜に設定するだけで、突出部81を形成することができる。
また、本実施形態では、第1流路部材4は、複数の加圧室10にそれぞれ接続されており、複数の加圧室10に液体を供給する複数の第1個別流路12(第3流路)をさらに備えている。第1個別流路12は、加圧室本体10aに接続されている。第2個別流路14は、入口16aよりも部分流路10bの流路方向の吐出孔8側において部分流路10bに接続されている。
従って、まず、第1個別流路12、第2個別流路14および第3個別流路16の3本の個別流路が設けられ、これらの個別流路の加圧室10に対する接続位置が好適に設定されていることによって、図9(a)を参照して説明した種々の作用および効果が奏される。例えば、第1個別流路12(加圧室本体10a)からの流れに第2個別流路14からの流れを衝突させ、部分流路10bの端部における液体の滞留のおそれを低減できる。そして、突出部81は、部分流路10bの途中に位置する入口16aに隣接していることから、3本の個別流路による部分流路10bの端部付近における滞留低減の効果が突出部81によって減じられてしまうおそれを低減しつつ、入口16aへの液体の流れを容易化することができる。
<第2実施形態>
図10(a)および図10(b)は、第2実施形態に係る液体吐出ヘッド202の吐出ユニット215の構成を示す、図9(a)および図9(b)に相当する図である。
吐出ユニット215は、部分流路10bの壁面に凹部83が設けられている点が第1実施形態の吐出ユニット15と相違する。その他は、概ね第1実施形態と同様である。なお、以降の実施形態において、部分流路10bおよびプレート4e等は、突出部および/または凹部によってその形状が第1実施形態とは異なるが、便宜上、第1実施形態と同様の符号を用いる。
凹部83は、部分流路10bを挟んで突出部81と対向している。対向方向は、例えば、部分流路10bの流路方向に直交する方向および/またはプレートに平行な方向である(本実施形態では両者は同じ)。凹部83は、部分流路10bの流路方向(プレートの積層方向)、および/または第3個別流路16の幅方向(平面視において第1方向D1に直交する方向)において、突出部81と同等の大きさを有していてもよいし、突出部81よりも大きくてもよいし、突出部81よりも小さくてもよい。
凹部83は、例えば、突出部81とは逆に、プレート4eの孔82の縁部のうち入口16aとは反対側(第4方向D4側)の部分が、部分流路10bを構成する他の全てのプレート4b〜4dおよび4f〜4lの孔82の縁部のうち入口16aとは反対側の部分よりも部分流路10bの外部側(ここでは第4方向D4側)に位置していることによって構成されている。従って、凹部83の、プレートの積層方向(部分流路10bの流路方向)における大きさは、プレート4eの厚みと同一である。
具体的には、プレート4b〜4lの孔82の平面形状は、例えば、第1実施形態と同様に、概ね円形である。プレート4eの孔82の直径は、例えば、第1実施形態とは異なり、他のプレート4b〜4dおよび4f〜4lの孔82の直径と概ね同等である。そして、プレート4eの孔82(中心、面積重心)は、他のプレートの孔82(中心、面積重心)よりも入口16aとは反対側(第4方向D4側)に位置している。これにより、突出部81とともに凹部83が構成されている。
従って、突出部81および凹部83は、平面視において第1方向D1に直交する不図示の対称軸に対して線対称の形状である。また、突出部81および凹部83は、それぞれ平面視において半円状の弧状に形成されている。平面視において突出部81の突出量(弧の内縁と外縁との距離)は、概ね入口16a付近において最大となっている。同様に、平面視において凹部83の深さ(弧の内縁と外縁との距離)は、概ね入口16aに対向する位置付近において最大となっている。
なお、第1実施形態では、プレート4eの孔82の径をプレート4fの孔82の径よりも小さくしたのに対して、第2実施形態では、プレート4eの孔82の径をプレート4fの孔82の径と同等としているから、第1実施形態の突出部81と第2実施形態の突出部81とでは、寸法または形状(例えば孔82の円周方向の大きさ等)が若干異なる。それ以外の点については、第1実施形態における突出部81についての説明は、第2実施形態の突出部81の説明に適用されてよい。
突出部81の突出量については、第1実施形態において例示したとおりである。凹部83は、突出部81と同等の大きさとされてよいから、突出量についての説明は、そのまま凹部83の深さに適用されてよい。
以上のとおり、本実施形態の液体吐出ヘッド202においても、部分流路10bの壁面は、部分流路10bの流路方向において入口16aに対して隣接している突出部81を備えていることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、部分流路10bの流路方向における液体の流れを突出部81に衝突させることができ、その結果、入口16aへの流れを生じさせることができる。
また、本実施形態では、部分流路10bの壁面は、部分流路を挟んで突出部81に対向している凹部83を備えている。
従って、例えば、突出部81を設けて種々の効果を得る一方で、部分流路10bの流路断面積を確保することができる。その結果、例えば、部分流路10b内の液体を効率的に流すことができる。
また、本実施形態では、複数の孔82のうち入口16aが内周面に開口する第1孔(プレート4fの孔82)に対して、複数の孔のうち第1孔に重なる第2孔(プレート4eの孔82)がプレートに平行な方向(第4方向D4)へずれていることによって突出部81および凹部83が構成されている。
従って、例えば、平面視において孔82が円形またはこれに類する形状である場合において、突出部81は、入口16a側ほど突出量が大きくなる弧状となり、凹部83は、入口16aとは反対側ほど深くなる弧状となる。その結果、例えば、入口16a付近で衝突の影響を大きくでき、また、その反対側で流路断面積を大きく確保できる。その一方で、突出部81から凹部83に至るまでにおけるこれらの部位が流れに及ぼす影響の変化を緩やかにして、予測困難な3次元流れが生じるおそれを抑制できる。また、例えば、孔82の位置等を適宜に設定するだけで突出部81および凹部83を形成することができ、形成が容易である。具体的には、例えば、プレートのエッチングに用いられるエッチングマスクのパターンを適宜に設定するだけでよい。
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係る液体吐出ヘッド302の吐出ユニット315の構成を示す、図9(a)に相当する図である。
吐出ユニット315は、入口16aの加圧室本体10a側だけでなく、入口16aの吐出孔8側にも突出部84および凹部85が設けられている点が第2実施形態の吐出ユニット215と相違する。その他は、概ね第2実施形態と同様である。
突出部84は、部分流路10bの流路方向における入口16aに対する位置が吐出孔8側であることを除いては、突出部81と同様のものである。従って、第1または2実施形態における突出部81についての説明は、加圧室本体10a側を吐出孔8側に、プレート4eをプレート4g(図8(a)参照)に置き代えて、突出部84に適用されてよい。
同様に、凹部85は、部分流路10bの流路方向における入口16aに対する位置が吐出孔8側であることを除いては、凹部83と同様のものである。従って、第2実施形態における凹部85についての説明は、加圧室本体10a側を吐出孔8側に、プレート4eをプレート4gに、突出部81を突出部84に置き代えて、凹部85に適用されてよい。
確認的に概略を述べると、入口16aを有するプレート4eの孔82、およびプレート4eに対して吐出孔8側に重なるプレート4gの孔82は、例えば、概ね同等の径を有する概ね円形に形成されている。そして、プレート4eの孔82に対してプレート4gの孔82がプレートに平行な方向において入口16aとは反対側にずらされていることによって、突出部84および凹部85が構成されている。
突出部84の突出量は、突出部81の突出量に対して、小さくてもよいし、同等であってもよいし(図示の例)、大きくてもよい。また、突出部84のプレートの積層方向における大きさは、突出部81の前記積層方向における大きさに対して、小さくてもよいし、同等であってもよいし、大きくてもよい(図示の例)。凹部85と凹部83との大小関係についても同様である。
以上のとおり、本実施形態の液体吐出ヘッド302においても、部分流路10bの壁面は、部分流路10bの流路方向において入口16aに対して隣接している突出部81および/または84を備えていることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。
例えば、加圧室本体10a側からの流れが突出部81に衝突することによって、および/または吐出孔8側からの流れが突出部84に衝突することによって、液体の攪拌が生じる。この攪拌は、例えば、滞留の低減に利用可能である。また、例えば、突出部81が突出部84よりも突出していれば、吐出孔8側(別の観点では第2個別流路14)からの流れを突出部81に衝突させて入口16aへの流れを生じさせることができる。
また、本実施形態では、部分流路10bの壁面は、入口16aに対して部分流路10bの流路方向(本実施形態ではプレートの積層方向と同じ)の加圧室本体10a側に隣接している突出部81と、入口16aに対して前記流路方向の吐出孔8側に隣接している突出部84とを備えている。
従って、例えば、加圧室本体10a側(第1個別流路12)からの流れおよび吐出孔8側(第2個別流路14)からの流れのいずれも攪拌することができる。また、例えば、加圧室本体10aからの流れおよび吐出孔8側からの流れのいずれについても、突出部81または84への衝突によって、入口16a付近における、部分流路10bの壁面に沿う方向の流速が減じられる。その結果、例えば、ベルヌーイの定理に従って、入口16a付近における圧力低下が抑制される。これにより、例えば、第3個別流路16における液体の逆流のおそれを低減できる。
また、本実施形態では、部分流路10bの壁面は、部分流路10bを挟んで突出部84に対向している凹部85を備えている。
従って、例えば、凹部83が設けられた場合と同様に、突出部84による部分流路10bの流路断面積の減少が補償される。また、凹部83および85とが併設されると、これらの凹部間に突出部が形成されることになる。その結果、例えば、凹部間の突出部が圧力波を受けて振動することによって、顔料の凹部壁面への付着のおそれを低減できる。
また、本実施形態では、複数の孔82のうち入口16aが内周面に開口する第1孔(プレート4fの孔82)に対して、複数の孔82のうち第1孔に重なる第3孔(プレート4gの孔82)がプレートに平行な方向へずれていることによって突出部84および凹部85が構成されている。
従って、例えば、突出部81および凹部83と同様に、流れの好適化および形成の容易化等の効果が奏される。また、上記の構成と、プレート4fの孔82に対してプレート4eの孔82をずらして構成された突出部81および凹部83とを組み合わせた場合においては、プレート4e〜4gの3枚のみに着目すると、入口16aを有するプレート4fの孔82をその上下のプレート4eおよび4gの孔82に対して入口16a側へずらしたことになる。従って、例えば、プレート4fの孔82が、プレート4e〜4gの3枚以外のプレートの孔82に対して入口16a側へずれたとしても、突出部81、凹部83、突出部84および凹部85は構成される。その結果、例えば、設計の自由度が大きくなる、または加工精度を緩和することができる。
<第4実施形態>
図12,13を用いて第4の実施形態に係る液体吐出ヘッド402について説明する。液体吐出ヘッド402は、吐出ユニット415が液体吐出ヘッド2と異なっている。なお、図13では、実際の液体の流れを実線で示し、第2個別流路414から供給された液体の流れを破線で示している。
吐出ユニット415は、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路(第3流路)12と、第2個別流路(第1流路)414と、第3個別流路(第2流路)416とを備えている。第1個別流路12および第2個別流路414は、第1共通流路20に接続されており、第3個別流路416は、第2共通流路24に接続されている。そのため、吐出ユニット415は、第1個別流路12および第2個別流路414から液体が供給され、第3個別流路416から液体が回収されている。
第1個別流路12は、加圧室本体10aから下方へ向けて延び、第1方向D1に引き出された後、第2方向D2に引き出され、第1共通流路20の側面に接続されている。第2個別流路414は、部分流路10bから第1方向D1に引き出された後、第2方向D2に引き出され、第1共通流路20の側面に接続されている。第3個別流路416は、部分流路10bから第4方向D4に引き出された後、第5方向D5に引き出され、第2共通流路24の側面に接続されている。
液体吐出ヘッド402は、平面視したときに、第1個別流路12が加圧室本体10aの第1方向D1側に接続されており、第2個別流路414が部分流路10bの第1方向D1側に接続されており、第3個別流路416が部分流路10bの第4方向D4側に接続されている。
そのため、平面視したときに、吐出ユニット415には、第1方向D1から液体が供給され、第4方向D4から液体が回収されることとなる。それにより、部分流路10bの内部の液体を第1方向D1から第4方向D4に効率よく流すことができ、部分流路10bの内部に液体の滞留する領域が生じにくくなる。
第1共通流路20にはダンパ30が形成されており、ダンパ30を介して、第1共通流路20と面した空間32が配置されている。そのため、第1共通流路20にダンパ30が設けられていることにより、第1共通流路20の圧力変動を緩和することができ、流体クロストークが生じ難くなる。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、部分流路10bの壁面は、第3個別流路416の入口416aの加圧室本体10a側に隣接する突出部81を有している。突出部81は、第4方向D4側に位置していることを除いては、第1実施形態の突出部81と同様でよい。
なお、本実施形態では、上述のような第1個別流路12、第2個別流路414および第3個別流路416に対して、第1実施形態のように、入口416aに対して加圧室本体10a側に隣接する突出部81のみを組み合わせる態様について例示した。ただし、他の実施形態が組み合わされてもよい。例えば、突出部81に対向する凹部83が設けられたり、入口416aに対して吐出孔8側に隣接する突出部84が設けられたり、突出部84に対向する凹部85が設けられたりしてもよい。
<第5実施形態>
図14は、第5実施形態に係る液体吐出ヘッド502の吐出ユニット515の構成を示す、図9(a)に相当する図である。
吐出ユニット515は、第2個別流路14が設けられていない点、および突出部84のみが設けられている点が第1〜第3実施形態と相違する。その他は、概ね第1〜第3実施形態と同様である。
このような構成においても、突出部84によって、他の実施形態と同様の効果が奏される。例えば、第1個別流路12(加圧室本体10a)からの流れを突出部84に衝突させて、入口16aへの流れを生じさせることができる。
なお、本実施形態では、上述のような第2個別流路14が設けられていない構成に対して、入口16aに対して吐出孔8側に隣接する突出部84のみを組み合わせる態様について例示した。ただし、第1〜第3実施形態の突出部または凹部が組み合わされてもよい。例えば、入口16aに対して加圧室本体10a側に隣接する突出部81のみが設けられたり、突出部81に対向する凹部83が設けられたり、突出部84に対向する凹部85が設けられたりしてもよい。
<エッチングの影響>
図15(a)〜図15(c)はそれぞれ、エッチングによって孔82を形成した場合における突出部81付近の拡大断面図である。なお、図15(a)〜図15(c)は、エッチングの向き等が互いに異なる。
図15(a)は、図示したプレート4d〜4hに対して下面(吐出孔8側の面)から片面エッチングを施した場合における断面図である。この場合、アンダーカット(サイドエッチング)に起因して、孔82は、吐出孔8側ほど径が大きくなる。各プレートにおいて、孔82の最大径と最小径との差は、プレートの厚みが大きいほど大きい。
このような場合、例えば、点線および矢印y1で示すように、孔82の最も径が小さい部分(図15(a)ではプレートの上面)を基準として複数のプレート間で孔82の縁部の位置を比較し、突出部81の有無を判定してよい。孔82の径が小さい部分と径が大きい部分とでは、部分流路10b内へ突出している方が部分流路10b内の流れに及ぼす影響が大きいからである。
図示の例では、プレート4eの下面における孔82の縁部(突出部81の下面の先端縁部)は、他のプレートの上面における孔82の縁部よりも部分流路10bの内部側(紙面右側)へ位置している。ただし、突出部81の下面の先端縁部は、他のプレートの上面における孔82の縁部よりも部分流路10bの外部側(紙面左側)に位置していてもよい。例えば、図示の例とは異なり、突出部81が形成されるプレート4eが他のプレートに比較して厚い場合においては、突出部81の突出量(上面を基準)を十分に確保しても、下面の縁部が他のプレートの上面の縁部よりも部分流路10bの外部側へ位置し得る。
このことから理解されるように、プレートの積層構造によって部分流路10bが構成される態様においては、突出部81が入口16aに対して部分流路10bの流路方向において隣接するという場合、必ずしも第3個別流路16の上面(プレート4eの下面)が突出していなくてもよい。入口16aに隣接するプレートの一部(プレート4eの上面)が突出していればよい。
なお、プレートに対して下面から片面エッチングを施した場合について説明したが、プレートに対して上面から片面エッチングを施した場合も、上下が逆であることを除いて同様である。
図15(b)は、図示したプレート4d〜4hに対して片面エッチングを施し、かつその方向がプレート間で異なる場合の断面図である。具体的には、図示の例では、プレート4eは上面からエッチングされており、他のプレートは下面からエッチングされている。
このような場合においても、図15(a)の例と同様に、例えば、孔82の最も径が小さい部分(プレートの上面または下面)を基準として複数のプレート間で孔82の縁部の位置を比較し、突出部81の有無を判定してよい。また、突出部は、基準位置の比較において突出していれば、他の位置において突出していなくてもよい。
なお、図15(b)のようにプレート4eの表裏のうち孔82の径が小さい側を入口16a側とすれば、図15(a)に比較して、突出部81のうち突出量が大きい側を入口16aに近づけることができる。その結果、例えば、下方からの流れを衝突させて入口16aへの流れを形成しやすい。
プレート4gが突出部84を構成しない場合において、特に図示しないが、プレート4gの表裏のうち孔82の径が大きい側を入口16a側としてもよい。この場合、例えば、下方からの流れを円滑に入口16aへ導くことができる。
図15(c)は、図示したプレート4d〜4hに対して両面からエッチングを施した場合における断面図である。この場合、アンダーカットに起因して、孔82は、プレートの両面側ほど径が大きくなる。各プレートにおいて、孔82の最大径と最小径との差は、プレートの厚みが大きいほど大きい。また、当該差は、同一厚みのプレートに対する片面エッチングと比較すると、一般には小さい。
このような場合においても、図15(a)の例と同様に、例えば、孔82の最も径が小さい部分(ここではプレートの厚み方向中央側)を基準として複数のプレート間で孔82の縁部の位置を比較し、突出部81の有無を判定してよい。また、突出部81は、基準位置の比較において突出していれば、他の位置において突出していなくてもよい。
両面エッチングが行われる場合、一方の面を覆うエッチングマスクと、他方の面を覆うエッチングマスクとで、孔82に対応する開口の径および位置は、例えば、互いに同一である。ただし、径および/または位置が互いに異なっていてもよい。
図15(a)〜図15(c)を参照して突出部81について述べたが、突出部84についても、入口16aに対する上下関係が逆であることを除いて、図15(a)〜図15(c)と同様である。
突出部と同様に、凹部83および凹部85についても、これら凹部を有するプレートの上面と下面とで深さが異なる。凹部についても、各プレートにおいて孔82の径が最も小さい部分(部分流路10bの内部側に位置している部分)を基準として複数のプレート間で孔82の縁部を比較し、凹部の有無を判定してよい。
なお、以上の実施形態において、第2個別流路14および414はそれぞれ第1流路の一例である。第3個別流路16および416はそれぞれ第2流路の一例である。第1個別流路12は第3流路の一例である。変位素子48は加圧部の一例である。突出部81は第1突出部の一例である。凹部83は第1凹部の一例である。突出部84は第2突出部の一例である。凹部85は第2凹部の一例である。プレート4fの孔82は第1孔の一例である。プレート4eの孔82は第2孔の一例である。プレート4gの孔82は第3孔の一例である。搬送ローラ74a〜74dは搬送部の一例である。
上記とは異なり、第1個別流路12を第1流路の一例と捉えてもよい。突出部84を第1突出部の一例と捉えてもよい。凹部85を第1凹部の一例と捉えてもよい。プレート4gの孔82を第2孔の一例と捉えてもよい。
本開示の態様は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
加圧室に接続され、液体の供給または回収に供される流路の構成は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、図9(a)において、第3個別流路16が部分流路10bの第4方向D4側の側面に接続されたり、図13において、第3個別流路16が部分流路10bの第1方向D1側の側面に接続されたり、図14において、第3個別流路16が部分流路10bの第4方向D4側の側面に接続されたりしてもよい。
第1流路および第3流路(第2個別流路14および第1個別流路12)は、互いに別個の共通流路から液体が供給されてもよい。逆に、第1流路および/または第3流路に液体を供給する共通流路と、第2流路(第3個別流路16)から液体を回収する共通流路とは同一のものであってもよい。
実施形態では、平面視において、第2個別流路14および第3個別流路16の幅(第1方向D1に直交する方向)は、部分流路10bの直径よりも小さくされた。ただし、第2個別流路14および第3個別流路16の幅は、部分流路10bとの接続部分において広くされることなどにより、部分流路10bの直径と同等以上とされてもよい。
実施形態では、平面視において、突出部81および84は、入口16aの幅全体に亘る大きさを有した。ただし、突出部81および84は、入口16aの幅の一部にのみ亘る大きさであってもよい。
1つの突出部または1つの凹部は、2枚以上のプレートによって構成されてもよい。例えば、図8(a)において、プレート4eの孔82の縁部のうち入口16a側の部分だけでなく、プレート4dの孔82の縁部のうち入口16a側の部分も部分流路10bの内部側へ位置し、プレート4eおよびプレート4dによって突出部が構成されてよい。このように1つの突出部が2枚以上のプレートによって構成されている場合において、突出量は、前記2枚以上のプレート間において同等であってもよいし、互いに異なっていてもよく、また、異なる場合において、プレート4eにおける突出量は、最大であってもよいし、最大でなくてもよい。
上記を別の観点で捉えると、プレート4eは、他の全てのプレートに比較して、孔82の縁部のうち入口16a側の部分が部分流路10bの内部側に位置していなくてもよい。例えば、部分流路10bを構成し、かつプレート4eよりも上に位置するプレート4b〜4dの少なくともいずれか1つ、および、入口16aを有するプレート4fと比較して、孔82の縁部のうち入口16a側の部分が部分流路10bの内部側に位置していればよい。入口16aの上の突出部を例に挙げたが、入口16aの下の突出部についても上下が逆であることを除いて同様である。突出部に対向する凹部についても、部分流路10bの内外の方向が逆であることを除いて同様である。
なお、入口16aを有するプレート4fの孔82の縁部は、入口16aによって一部が途切れている。従って、突出部81の有無の判断に際して、入口16aの位置において、プレート4eの孔82の縁部とプレート4fの孔82の縁部とを直接的に比較することはできない。そこで、例えば、実施形態のように入口16aの幅(平面視において第1方向D1に直交する方向)がプレート4fの孔82の直径に比較して小さい場合、および/または、孔82の縁部の形状が、入口16aによって一部が途切れた円形である場合は、プレート4fの孔82の縁部を入口16aまで延長する仮想線を用いることにより、プレート4eの孔82の縁部とプレート4fの孔82の縁部とを比較してよい。また、そのような仮想線の想定が困難な場合においては、例えば、プレート4fよりも下に位置し、部分流路10bを構成するプレート4g〜4lと比較して、突出部81の有無を判定してよい。例えば、プレート4g〜4lの全てと比較して、孔82の縁部が部分流路10bの内部側に位置していれば、突出部81が設けられていることは明らかである。また、突出部84が設けられることがあることを考慮すると、プレート4g〜4lの少なくともいずれか1つと比較して、孔82の縁部が部分流路10bの内部側に位置していればよい。突出部81を例に挙げたが、突出部84についても、上下が逆であることを除いて同様である。
突出部(および凹部)を構成するための孔82の径および/または位置についてのプレート間の相違は、種々の態様が可能である。例えば、プレート4fの孔82の径に対してプレート4eの孔82の径を小さくするとともに、これらの孔82の中心の位置をずらさないようにしてもよい。この場合、全周に亘って突出部81が構成される。また、例えば、プレート4fの孔82の径とプレート4eの孔82の径とを互いに異ならせ、かつ突出部81および凹部83が構成されるように2つの孔82の中心をずらしてもよい。この場合、第2実施形態とは異なり、突出部81と凹部83とは非対称になる。また、例えば、突出部81はプレート1枚で構成し、凹部83はプレート2枚で構成するなど、互いに対向する突出部と凹部との厚さを互いに異ならせることも可能である。
突出部(および凹部)を構成する方法は、孔の径を異ならせたり、孔の位置をずらしたりする方法に限定されない。例えば、プレート4fおよびプレート4eのうち一方のプレートの孔82の平面形状を円形にし、他方のプレートの孔82の平面形状を円形以外の形状にするなど、孔82の平面形状を互いに異ならせてもよい。
プレート間で孔82(中心)の位置がずれている場合において、そのずれの方向および大きさと、プレートの外縁同士のずれの方向および大きさとは、異なっていてもよいし、同一であってもよい。別の観点では、例えば、プレートの外縁に対する孔82の形成位置をプレート間でずらす一方でプレートの外縁同士を揃えることによって孔82同士をずらしてもよいし、プレートの外縁に対する孔82の形成位置をプレート間で揃える一方でプレートの外縁同士をずらすことによって孔82同士をずらしてもよい。プレートの外縁に対する孔82の形成位置をプレート間でずらすとともにプレートの外縁同士をずらすことによって、孔82同士のずれを大きく、または小さく調整してもよい。
第1流路部材4に圧電アクチュエータ基板40を接着する前に、突出部となる部材を部分流路10bの壁面に接着したり、部分流路の壁面を削って凹部を形成したりしてもよい。別の観点では、流路部材は、複数のプレートによって構成されていなくてもよい。