JP6658937B2 - 円筒型スパッタリングターゲット、スパッタリングターゲット材、及び、円筒型スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Description
このため、最近では、円筒型スパッタリングターゲットに対するニーズが増加する傾向にある。
このIn酸化物層が厚く形成された場合には、スパッタ成膜時にIn酸化物層を起点としてクラックが生じ、スパッタリングターゲット材がバッキングチューブから外れてしまうおそれがあった。このため、安定してスパッタ成膜を行うことができないといった問題があった。
また、前記金属層は、前記金属酸化物を構成する前記金属の単相のみでなく、前記金属とInとの合金相を含んでいてもよいものとする。
また、金属層の厚さが35μm以下とされているので、金属層の内部でクラックが発生することを抑制できる。
よって、スパッタリングターゲット材がバッキングチューブから外れてしまうことを抑制でき、安定してスパッタ成膜を行うことができる。
この場合、前記スパッタリングターゲット材が前記金属酸化物として酸化銅を含有しているので、前記スパッタリングターゲット材と前記接合層との界面において、Cu単体相および/またはCu−In合金相からなる金属層の厚さが2μm以上35μm以下の範囲内とされると、この金属層によって前記In酸化物層が厚く形成されることを抑制することが可能となる。また、上述の円筒型スパッタリングターゲットによって、酸化銅膜を効率良く、かつ、安定して成膜することができる。
この場合、前記金属層である金属銅層によって、スパッタリングターゲット材の酸素が接合層側に移動することを抑制できる。また、スパッタ成膜によって酸化銅膜を成膜することができる。
また、金属層の厚さを35μm以下に制限しているので、In又はIn合金からなるはんだ材を用いてはんだ接合した後に形成される金属層の厚さを35μm以下に抑制することができ、金属層内部でのクラックの発生を抑制することができる。
よって、スパッタリングターゲット材がバッキングチューブから外れてしまうことを抑制でき、安定してスパッタ成膜を行うことが可能な円筒型スパッタリングターゲットを製造することができる。
この場合、円筒形状のスパッタリングターゲット材の内周面に還元剤となるカーボン含有材を確実に配設することができ、上述の金属層を比較的均一な厚さで形成することが可能となる。なお、カーボン含有材の塗布厚さを調整することで、形成される金属層の厚さを制御することができる。
この場合、前記スパッタリングターゲット材が前記金属酸化物として酸化銅を含有しているので、前記金属層形成工程において、前記スパッタリングターゲット材の内周面に、金属層として金属銅層が形成されることになり、この金属層(金属銅層)によって前記In酸化物層が厚く形成されることを抑制できる。
そして、円筒形状のスパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12は、In又はIn合金からなる接合層13を介して接合されている。
このように、金属銅相と酸化銅相とを有する組織とすることにより、スパッタリングターゲット材11の導電性が確保されることになり、DC(直流)スパッタによって酸化銅膜を成膜することが可能となる。
200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属として、銅以外の金属が含まれる場合においても、スパッタリングターゲット材11は、金属相と酸化金属相とを有し、酸化金属相の含有量が80体積%以上であり、残部が金属相であることが好ましい。金属相と酸化金属相における金属は、200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属である。
本実施形態では、金属酸化物として酸化銅を含有しているので、金属層27は、金属銅層となる。
このため、バッキングチューブ12としては、機械的強度、電気伝導性及び熱伝導性に優れていることが求められており、例えばSUS304等のステンレス鋼、チタン等で構成されている。
ここで、このバッキングチューブ12のサイズは、例えば外径DBが119.5mm≦DB≦139.5mmの範囲内、内径dBが110mm≦dB≦130mmの範囲内、軸線O方向長さLBが0.50m≦LB≦3.00mの範囲内とされている。
接合層13を構成する接合材は、In又はIn合金からなるはんだ材とされている。接合層13は、接合材からなり、詳細にはIn又はIn合金からなる。なお、接合層13の厚さtは、0.5mm≦t≦4mmの範囲内とされている。
200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属として、銅以外の金属がスパッタリングターゲット材11に含まれる場合においても、金属層17は、金属単体相と、金属−In合金相を含む。金属単体相と金属−In合金相における金属は、200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属である。
なお、金属層27は、第1の金属層とも言い、スパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12とが接合層13を介して接合される前の金属層である。金属層17は、第2の金属層とも言い、スパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12とが接合層13を介して接合された後の金属層である。
本実施形態である円筒型スパッタリングターゲット10において、スパッタリングターゲット材11と接合層13の接合界面に形成される金属層17の厚さが2μm未満であると、スパッタリングターゲット材11の酸素が接合層13に移動することを十分に抑制することができず、In酸化物層18が厚く形成されてしまい、In酸化物層18においてクラックが生じるおそれがある。
一方、金属層17の厚さが35μmを超えると、比較的脆いCu−In合金相が厚く形成され、金属層17の内部でクラックが生じるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、スパッタリングターゲット材11と接合層13の接合界面に形成される金属層17の厚さを、2μm以上35μm以下の範囲内に設定している。
一方、金属層17の内部でのクラックの発生をさらに抑制するためには、金属層17の厚さの上限を30μm以下とすることが好ましく、20μm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態である円筒型スパッタリングターゲット10において、スパッタリングターゲット材11と接合層13の接合界面に形成されるIn酸化物層18の厚さが5μmを超えると、In酸化物層18においてクラックが生じるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、スパッタリングターゲット材11と接合層13の接合界面に形成されるIn酸化物層18の厚さを5μm以下に制限している。
また、In酸化物層18の厚さの下限には特に制限はなく、In酸化物層18が形成されていなくてもよい。
まず、図4に示すように、スパッタリングターゲット材11の内周面に、スパッタリングターゲット材11に含まれる金属酸化物を還元して金属層27を形成する。
ここで、形成する金属層27の厚さは、2μm以上35μm以下の範囲内としている。
本実施形態では、スパッタリングターゲット材11が、金属酸化物として酸化銅を含有しているので、金属層27は金属銅で構成されることになる。すなわち、金属層27は金属銅からなる。
なお、熱処理条件は、大気雰囲気下で、熱処理温度を600℃以上900℃以下の範囲内、熱処理温度での保持時間を30min以上90min以下の範囲内とすることが好ましい。ここで、カーボン含有材の塗布厚さを調整することにより、形成される金属層27の厚さを制御することが可能となる。カーボン含有材の塗布厚さは、1μm以上が好ましい。
なお、上述の本実施形態では炭素粉末をスプレー塗布したが、炭素粉末のスプレー塗布だけに限らず、カーボン含有材としてカーボンを含む有機物系の材料がスパッタリングターゲット材11に塗布されていれば同様の効果が得られる。例えば、カーボン含有材として、有機バインダーなども適用可能である。
次に、スパッタリングターゲット材11の内周面、及び、バッキングチューブ12の外周面に、溶融したIn又はIn合金からなるはんだ材を塗布して、それぞれはんだ下地層を形成する。
このはんだ下地層形成工程S02においては、スパッタリングターゲット材11及びバッキングチューブ12を加熱しておき、ヒータを搭載した超音波コテ等で超音波振動を加えながら溶融したIn又はIn合金からなるはんだ材を塗布することにより、はんだ下地層を形成する。なお、このはんだ下地層形成工程S02における加熱温度は170℃以上250℃以下の範囲内とされている。ここで、このはんだ下地層形成工程S02においては、特開2014−037619号公報(特許文献3)に記載された方法で、はんだ下地層を形成することが好ましい。
次に、はんだ下地層を形成した状態で、スパッタリングターゲット材11及びバッキングチューブ12を組み立てるために、一旦、室温にまで冷却する。
次に、はんだ下地層を形成したスパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12とを位置合わせして組み立てる。このとき、スペーサ等を用いて、スパッタリングターゲット材11の内周面とバッキングチューブ12の外周面との間に所定の寸法の隙間を形成しておく。なお、この組み立て工程S04においては、特開2014−037619号公報(特許文献3)に記載された方法で、スパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12とを組み立てることが好ましい。
次に、組み立てたスパッタリングターゲット材11の内周面とバッキングチューブ12の外周面との隙間に、溶融したはんだ材を流し込み、スパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12とをはんだ接合する。これにより、In又はIn合金からなる接合層13が形成される。
なお、このはんだ接合工程S05においては、特開2014−037619号公報(特許文献3)に記載された方法で、スパッタリングターゲット材11とバッキングチューブ12との隙間にはんだ材を流し込むことが好ましい。
また、スパッタリングターゲット材11の酸素が接合層13側に移動することで、In酸化物層18が形成される。このとき、上述の金属層27によって酸素の移動が阻害され、In酸化物層18が厚く形成されることが抑制され、In酸化物層の厚さが5μm以下となる。
本実施形態である円筒型スパッタリングターゲット10の製造方法において、金属層形成工程S01で形成される金属層27の厚さが2μm未満であると、はんだ接合工程S05においてスパッタリングターゲット材11の酸素が接合層13に移動することを十分に抑制できない。このため、In酸化物層18が厚く形成されてしまい、In酸化物層18においてクラックが生じるおそれがある。
一方、金属層27の厚さが35μmを超えると、はんだ接合工程S05後に形成される金属層17の厚さが厚くなり、金属層17の内部でクラックが生じるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、金属層形成工程S01で形成される金属層27の厚さを、2μm以上35μm以下の範囲内に設定している。
一方、はんだ接合工程S05に形成される金属層17の内部でのクラックの発生をさらに抑制するためには、金属層27の厚さの上限を30μm以下とすることが好ましく、20μm以下とすることがさらに好ましい。
熱処理温度を600℃以上、かつ、熱処理温度での保持時間を30min以上とすることにより、酸化銅の還元反応を促進させることができ、金属層27を効率良く形成することが可能となる。
一方、熱処理温度を900℃以下、かつ、熱処理温度での保持時間を120min以下とすることにより、金属層27が必要以上に厚く形成されることを抑制できる。
以上のことから、本実施形態では、熱処理温度を600℃以上900℃以下の範囲内、熱処理温度での保持時間を30min以上120min以下の範囲内に設定している。
一方、金属層27が必要以上に厚く形成されることをさらに抑制するためには、金属層形成工程S01における熱処理温度の上限を850℃以下とすることが好ましく、830℃以下とすることがさらに好ましい。また、熱処理温度での保持時間の上限を90min以下とすることが好ましく、60min以下とすることがさらに好ましい。
また、金属層17の厚さが35μm以下とされているので、金属層17の内部でクラックが発生することを抑制できる。
よって、スパッタリングターゲット材11がバッキングチューブ12から外れてしまうことを抑制でき、安定してスパッタ成膜を行うことができる。
よって、スパッタリングターゲット材11がバッキングチューブ12から外れてしまうことを抑制でき、安定してスパッタ成膜を行うことが可能な円筒型スパッタリングターゲット10を製造することができる。
本実施形態では、図1に示す円筒型スパッタリングターゲットを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、円筒形状をなすスパッタリングターゲット材と、この円筒形状のスパッタリングターゲット材の内周側に接合層を介して接合されたバッキングチューブと、を備えた円筒型スパッタリングターゲットであればよい。
さらに、本実施形態では、金属層形成工程における熱処理条件を上述のように規定しているが、これに限定されることはなく、厚さが2μm以上35μm以下の範囲内とされた金属層を形成するものであればよい。
得られた原料粉末を篩分けし、次いで円筒形状用の成形型に充填し、200kgf/cm2の加圧下で、焼結温度を800℃として5時間保持した。
得られた焼結体を機械加工し、円筒形状のスパッタリングターゲット材((外径φ155mm−内径φ135mm)×長さL150mm)を製造した。
なお、得られたスパッタリングターゲット材の組成は、配合組成と同等であることを確認した。
次に、表1に示すはんだ材を用いて、SUS製のバッキングチューブ((外径φ133mm−内径φ125mm)×長さL640mm)に、4本のスパッタリングターゲット材を連ねて、はんだ接合し、接合層を形成した。
また、スパッタリングターゲット材とバッキングチューブとの接合界面を、超音波探傷装置を用いて観察し、未接合部の面積率を測定した。測定結果を表1に示す。
スパッタリングターゲット材の金属層の厚さが1μmとされた比較例2においては、はんだ接合後に形成されるIn酸化物層の厚さが10μmと厚く、未接合部の面積率が30%となった。In酸化物層でクラックが生じたためと推測される。
スパッタリングターゲット材の金属層の厚さが75μmとされた比較例3においては、はんだ接合後に形成される金属層の厚さが75μmと厚く、未接合部の面積率が30%となった。はんだ接合後に形成される金属層でクラックが生じたためと推測される。
また、本発明例12では金属酸化物として酸化コバルトを含むものとし、本発明例13では金属酸化物として酸化ニッケルを含むものとしたが、これらについても、同様の作用効果が得られることが確認された。
11 スパッタリングターゲット材
12 バッキングチューブ
13 接合層
17 金属層
18 In酸化物層
27 金属層
Claims (7)
- 円筒形状をなすスパッタリングターゲット材と、このスパッタリングターゲット材の内周側に、In又はIn合金からなる接合層を介して接合されたバッキングチューブと、を備えた円筒型スパッタリングターゲットであって、
前記スパッタリングターゲット材は、200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属で構成された金属酸化物を含有し、
前記スパッタリングターゲット材と前記接合層との界面において、前記スパッタリングターゲット材側に前記金属酸化物を構成する前記金属を含む金属層が形成され、前記接合層側にIn酸化物層が形成されており、前記スパッタリングターゲット材と前記金属層、前記金属層と前記In酸化物層、前記In酸化物層と接合層が、それぞれ直接接する状態で位置しており、
前記金属層の厚さが2μm以上35μm以下の範囲内とされるとともに、前記In酸化物層の厚さが5μm以下とされていることを特徴とする円筒型スパッタリングターゲット。 - 前記スパッタリングターゲット材は、前記金属酸化物として酸化銅を含有していることを特徴とする請求項1に記載の円筒型スパッタリングターゲット。
- 円筒形状をなし、その内周側にIn又はIn合金からなる接合層を介してバッキングチューブが接合されるスパッタリングターゲット材であって、
200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属で構成された金属酸化物を含有し、
その内周面に、前記金属酸化物を構成する前記金属を含む金属層が形成されており、
前記金属層の厚さが2μm以上35μm以下の範囲内とされていることを特徴とするスパッタリングターゲット材。 - 前記金属酸化物として酸化銅を含有しており、前記金属層が金属銅層とされていることを特徴とする請求項3に記載のスパッタリングターゲット材。
- 円筒形状をなすスパッタリングターゲット材と、このスパッタリングターゲット材の内周側に、In又はIn合金からなる接合層を介して接合されたバッキングチューブと、を備えた円筒型スパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記スパッタリングターゲット材は、200℃における酸化物生成自由エネルギーがInよりも高い金属で構成された金属酸化物を含有しており、
前記スパッタリングターゲット材の内周面に、前記金属酸化物を構成する前記金属を含む金属層を形成する金属層形成工程と、
前記スパッタリングターゲット材と前記バッキングチューブとを、In又はIn合金からなるはんだ材を用いてはんだ接合するはんだ接合工程と、
を備えており、
前記金属層形成工程において形成される前記金属層の厚さを2μm以上35μm以下の範囲内とすることを特徴とする円筒型スパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記金属層形成工程では、前記スパッタリングターゲット材の内周面にカーボン含有材を塗布し、その後、熱処理することによって、前記金属層を形成することを特徴とする請求項5に記載の円筒型スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記スパッタリングターゲット材は、前記金属酸化物として酸化銅を含有しており、前記金属層として金属銅層を形成することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の円筒型スパッタリングターゲットの製造方法。
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