以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、圧電アクチュエータ1は、交流電圧が印加されて変位することによって、被駆動体100(例えば、ローター)を移動させる機能を有している。図1、図2(a)及び図2(b)に示されるように、圧電アクチュエータ1は、圧電素子3と、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12と、接着剤層14と、を備えている。圧電素子3は、印加される電圧によって縦振動モードと屈曲振動モードとが合成された振動モードを発生させる。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、被駆動体100に接触して被駆動体100との間に摩擦力を生じさせ、被駆動体100を移動させる。
圧電素子3は、積層体2を有している。積層体2は、直方体形状を呈している。積層体2は、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e、2fと、を有している。主面2c,2dは、長方形状を呈している。本実施形態では、一対の端面2a,2bの対向方向が、積層体2(圧電素子3)の長手方向である。一対の主面2c,2dの対向方向が、積層体2(圧電素子3)の高さ方向である。一対の側面2e,2fの対向方向が、積層体2(圧電素子3)の幅方向である。一対の主面2c,2dの長辺方向は、一対の端面2a,2bの対向方向と一致している。一対の主面2c,2dの短辺方向は、一対の側面2e,2fの対向方向と一致している。
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように、積層体2の高さ方向に延びている。一対の端面2a,2bは、一対の側面2e,2fの間を連結するように、積層体2の幅方向にも延びている。一対の主面2c,2dは、一対の端面2a,2bの間を連結するように、積層体2の長さ方向に延びている。一対の主面2c,2dは、一対の側面2e,2fの間を連結するように、積層体2の幅方向にも延びている。一対の側面2e,2fは、一対の端面2a,2bの間を連結するように、積層体2の長さ方向に延びている。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように、積層体2の高さ方向にも延びている。本実施形態では、主面2dは、図1に示されるように、被駆動体100に実装する際、被駆動体100と対向する実装面として規定される。
積層体2は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb、La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)などが挙げられる。本実施形態では、積層体2は、圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体である複数の圧電体層20a〜20f(図3参照)を積層することによって形成されている。積層体2では、複数の圧電体層20a〜20fの積層方向が一対の側面2e,2fの対向方向と一致する。実際の積層体2では、各圧電体層20a〜20fは、各圧電体層20a〜20fの間の境界が視認できない程度に一体化されている。本実施形態では、圧電体層20aの外表面が積層体2の側面2fを構成しており、圧電体層20fの外表面が積層体2の側面2eを構成している。
図3に示されるように、圧電素子3は、第1内部電極22と、第2内部電極24と、第3内部電極26と、第4内部電極28と、第5内部電極30と、第6内部電極32と、第7内部電極34と、第8内部電極36と、第9内部電極38と、備えている。各内部電極22,24,26,28,30,32,34,36,38は、積層型の電子素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(例えば、Ni、Pt又はPdなど)からなる。各内部電極22,24,26,28,30,32,34,36,38は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
圧電体層20b上には、第1内部電極22、第2内部電極24、第3内部電極26及び第4内部電極28が配置されている。第1内部電極22及び第2内部電極24は、圧電体層20b上において、互いに電気的に絶縁されている(離間している)。第3内部電極26及び第4内部電極28は、圧電体層20b上において、互いに電気的に接続されている。
第1内部電極22は、圧電体層20b上において、積層体2の端面2aと主面2cとが形成する角部側に配置されている。第1内部電極22は、主電極部22aと、接続部22bと、を有している。主電極部22aと接続部22bとは、一体に形成されている。接続部22bは、主電極部22aから積層体2の主面2c側に延在し、積層体2の主面2cに露出している。具体的には、接続部22bは、積層体2の端面2a側寄りの位置において主面2cに露出している。
第2内部電極24は、圧電体層20b上において、第1内部電極22が配置された角部と対角の角部、すなわち積層体2の端面2bと主面2dとが形成する角部側に配置されている。第2内部電極24は、主電極部24aと、接続部24bと、を有している。主電極部24aと接続部24bとは、一体に形成されている。接続部24bは、主電極部24aから積層体2の主面2d側に延在し、積層体2の主面2dに露出している。具体的には、接続部24bは、積層体2の他方の端面2b側寄りの位置において主面2dに露出している。
第3内部電極26は、圧電体層20b上において、積層体2の端面2bと主面2cとが形成する角部側に配置されている。第3内部電極26は、主電極部26aと、接続部26bと、を有している。主電極部26aと接続部26bとは、一体に形成されている。接続部26bは、主電極部26aから積層体2の主面2c側に延在し、積層体2の主面2cに露出している。具体的には、接続部26bは、積層体2の他方の端面2b側寄りの位置において主面2cに露出している。
第4内部電極28は、圧電体層20b上において、第3内部電極26が配置された角部と対角の角部、すなわち積層体の端面2aと主面2dとが形成する角部側に配置されている。第4内部電極28は、主電極部28aと、接続部28bと、を有している。主電極部28aと接続部28bとは、一体に形成されている。接続部28bは、主電極部28aから積層体2の主面2d側に延在し、積層体2の主面2dに露出している。具体的には、接続部28bは、積層体2の端面2a側寄りの位置において主面2dに露出している。
第3内部電極26と第4内部電極28とは、接続部材29により電気的に接続されている。具体的には、第3内部電極26の主電極部26aと第4内部電極28の主電極部28aとが、接続部材29により電気的に接続されている。接続部材29は、所定の間隔をあけて対角に配置された第1内部電極22と第2内部電極24との間に配置されている。接続部材29は、導電性材料(例えば、Ni、Pt又はPdなど)からなる。接続部材29は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
圧電体層20c上には、第5内部電極30が配置されている。第5内部電極30は、主電極部30aと、接続部30b,30cと、を有している。主電極部30aは、積層体2の長手方向を当該主電極部30aの長手方向とする長方形状を呈している。主電極部30aは、圧電体層20bを介して、第1内部電極22(主電極部22a)、第2内部電極(主電極部24a)、第3内部電極26(主電極部26a)及び第4内部電極(主電極部28a)と対向している。
接続部30bは、主電極部30aの長手方向に沿う一方の側面から積層体2の主面2c側に延在し、積層体2の主面2cに露出している。具体的には、接続部30bは、積層体2の長手方向の中央の位置において主面2cに露出している。接続部30cは、主電極部30aの長手方向に沿う他方の側面から積層体2の主面2d側に延在に、積層体2の主面2dに露出している。具体的には、接続部30cは、積層体2の長手方向の中央の位置において主面2dに露出している。
圧電体層20d上には、第6内部電極32、第7内部電極34、第8内部電極36及び第9内部電極38が配置されている。第6内部電極32及び第7内部電極34は、圧電体層20d上において、互いに電気的に接続されている。第8内部電極36及び第9内部電極38は、圧電体層20d上において、互いに電気的に絶縁されている。
第6内部電極32は、圧電体層20d上において、積層体2の端面2aと主面2cとが形成する角部側に配置されている。第6内部電極32は、主電極部32aと、接続部32bと、を有している。主電極部32aと接続部32bとは、一体に形成されている。接続部32bは、主電極部32aから積層体2の主面2c側に延在し、積層体2の主面2cに露出している。具体的には、接続部32bは、積層体2の端面2a側寄りの位置において主面2cに露出している。
第7内部電極34は、圧電体層20d上において、第6内部電極32が配置された角部と対角の角部、すなわち積層体2の端面2bと主面2dとが形成する角部側に配置されている。第7内部電極34は、主電極部34aと、接続部34bと、を有している。主電極部34aと接続部34bとは、一体に形成されている。接続部34bは、主電極部34aから積層体2の主面2d側に延在し、積層体2の主面2dに露出している。具体的には、接続部34bは、積層体2の他方の端面2b側寄りの位置において主面2dに露出している。
第8内部電極36は、圧電体層20d上において、積層体2の端面2bと主面2cとが形成する角部側に配置されている。第8内部電極36は、主電極部36aと、接続部36bと、を有している。主電極部36aと接続部36bとは、一体に形成されている。接続部36bは、主電極部36aから積層体2の主面2c側に延在し、積層体2の主面2cに露出している。具体的には、接続部36bは、積層体2の他方の端面2b側寄りの位置において主面2cに露出している。
第9内部電極38は、圧電体層20d上において、第8内部電極36が配置された角部と対角の角部、すなわち積層体2の端面2aと主面2dとが形成する角部側に配置されている。第9内部電極38は、主電極部38aと、接続部38bと、を有している。主電極部38aと接続部38bとは、一体に形成されている。接続部38bは、主電極部38aから積層体2の主面2d側に延在し、積層体2の主面2dに露出している。具体的には、接続部38bは、積層体2の端面2a側寄りの位置において主面2dに露出している。
第6内部電極32と第7内部電極34とは、接続部材40により電気的に接続されている。具体的には、第6内部電極32の主電極部32aと第7内部電極34の主電極部34aとが、接続部材40により電気的に接続されている。接続部材40は、所定の間隔をあけて対角に配置された第8内部電極36と第9内部電極38との間に配置されている。
圧電体層20e上には、第5内部電極30が配置されている。圧電体層20f上には、第1内部電極22、第2内部電極24、第3内部電極26及び第4内部電極28が配置されている。第3内部電極26と第4内部電極28とは、接続部材29により電気的に接続されている。
図2(a)及び図2(b)に示されるように、圧電素子3は、第1外部電極4と、第2外部電極5と、第3外部電極6と、第4外部電極7と、第5外部電極8と、第6外部電極9と、を備えている。第1外部電極4は、積層体2の主面2cに配置されている。具体的には、第1外部電極4は、主面2c上において、端面2a側に配置されている。第1外部電極4は、矩形状を呈している。本実施形態では、第1外部電極4は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第1外部電極4は、主面2cに露出する接続部22b及び接続部32bと直接的に接続されている。これにより、第1外部電極4は、第1内部電極22及び第6内部電極32と電気的に接続されている。
第1外部電極4は、積層体2の主面2cに導電性ペーストを付与した後に所定温度(例えば、700℃程度)にて焼き付けることにより形成される。導電性ペーストの焼き付けにより得られた焼付電極層に、電気めっきを施してめっき層を更に形成してもよい。導電性ペーストとしては、Agを主成分とした導電材料を含む導電性ペーストを用いることができる。めっき層としては、Ni/Auめっき層などが挙げられる。
第1外部電極4は、スパッタリング法、蒸着法などにより形成されてもよい。この場合、第1外部電極4を構成する膜構造は、Cr/Ni、NiCu/Ag、SnAg、又はAuなどが挙げられる。以下、第2外部電極5、第3外部電極6、第4外部電極7、第5外部電極8及び第6外部電極9についても、第1外部電極4と同様に形成される。
第2外部電極5は、積層体2の主面2cに配置されている。具体的には、第2外部電極5は、主面2c上において、他方の端面2b側に配置されている。第2外部電極5は、矩形状を呈している。本実施形態では、第2外部電極5は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第2外部電極5は、主面2cに露出する接続部26b及び接続部36bと直接的に接続されている。これにより、第2外部電極5は、第3内部電極26及び第8内部電極36と電気的に接続されている。
第3外部電極6は、積層体2の主面2cに配置されている。具体的には、第3外部電極6は、主面2c上において、積層体2の長手方向の中央部に配置されている。すなわち、第3外部電極6は、積層体2の長手方向において、第1外部電極4と第2外部電極5との間に配置されている。第3外部電極6は、矩形状を呈している。本実施形態では、第3外部電極6は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第3外部電極6は、主面2cに露出する接続部30bと直接的に接続されている。これにより、第3外部電極6は、第5内部電極30と電気的に接続されている。
第4外部電極7は、積層体2の主面2dに配置されている。具体的には、第4外部電極7は、主面2d上において、端面2a側に配置されている。第4外部電極7は、第1外部電極4と積層体2の高さ方向において対向する位置に配置されている。第4外部電極7は、矩形状を呈している。本実施形態では、第4外部電極7は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第4外部電極7は、主面2dに露出する接続部28b及び接続部38bと直接的に接続されている。これにより、第4外部電極7は、第4内部電極28及び第9内部電極38と電気的に接続されている。
第5外部電極8は、積層体2の主面2dに配置されている。具体的には、第5外部電極8は、主面2d上において、他方の端面2b側に配置されている。第5外部電極8は、第2外部電極5と積層体2の高さ方向において対向する位置に配置されている。第5外部電極8は、矩形状を呈している。本実施形態では、第5外部電極8は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第5外部電極8は、主面2dに露出する接続部24b及び接続部34bと直接的に接続されている。これにより、第5外部電極8は、第2内部電極24及び第7内部電極34と電気的に接続されている。
第6外部電極9は、積層体2の主面2dに配置されている。具体的には、第6外部電極9は、主面2d上において、積層体2の長手方向の中央部に配置されている。すなわち、第6外部電極9は、積層体2の長手方向において、第4外部電極7と第5外部電極8との間に配置されている。第6外部電極9は、第3外部電極6と積層体2の高さ方向において対向する位置に配置されている。第6外部電極9は、矩形状を呈している。本実施形態では、第6外部電極9は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第6外部電極9は、主面2dに露出する接続部30cと直接的に接続されている。これにより、第6外部電極9は、第5内部電極30と電気的に接続されている。
第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、積層体2の主面2dに配置されている。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、被駆動体100(図1参照)に接触して被駆動体100との間に摩擦力を生じさせる。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、ジルコニア、アルミナなどから構成されている。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、例えば円柱状を呈し、軸方向が積層体2の幅方向に沿うように設けられている。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12の軸方向の長さは、圧電素子3の幅と同等である。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、側面2eから側面2fにわたって形成されている。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、円柱状部材に限られず、断面楕円形状又は断面半円形状などを呈する柱状部材であってもよいし、球状部材又は半球状部材であってもよい。断面半円形状の柱状部材の場合、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、平面状の側面が主面2dと対向するように、主面2dに配置される。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、主面2dから離間しているが、主面2dに当接していてもよい。
第1摩擦部材10は、後述する圧電素子3の腹P1〜P6以外の位置で、かつ、圧電素子3の長手方向の長さをLとした場合に、端面2aからの距離が1/3L未満となる位置に配置されている。本実施形態では、図4に示されるように、第1摩擦部材10は、積層体2の端面2aからの距離がL3の位置に配置されている。圧電素子3の長手方向の長さをLとした場合、第1摩擦部材10は、積層体2の端面2aからの距離が1/12Lの位置に配置されている。すなわち、圧電素子3の長手方向の中心Cから端面2aまでの長さをL1(1/2L)とした場合、第1摩擦部材10は、積層体2の端面2aからの距離が1/6L1の位置に配置されている。本実施形態では、第1摩擦部材10は、第4外部電極7よりも端面2a側の位置(第4外部電極7と重ならない位置)に配置されている。
第2摩擦部材12は、後述する圧電素子3の腹P1〜P6以外の位置で、かつ、圧電素子3の長手方向の長さをLとした場合に、他方の端面2bからの距離が1/3L未満となる位置に配置されている。本実施形態では、第2摩擦部材12は、積層体2の他方の端面2bからの距離がL4の位置に配置されている。第1摩擦部材10は、積層体2の端面2bからの距離が1/12Lの位置に配置されている。すなわち、圧電素子3の長手方向の中心Cから端面2bまでの長さをL2(1/2L)とした場合、第2摩擦部材12は、積層体2の端面2bからの距離が1/6L2の位置に配置されている。本実施形態では、第2摩擦部材12は、第5外部電極8よりも端面2b側の位置(第5外部電極8と重ならない位置)に配置されている。
接着剤層14は、例えば、エポキシ系接着剤などの接着剤が硬化されてなる。接着剤層14は、第1摩擦部材10の側面10a及び第2摩擦部材12の側面12aを主面2dに接着している。接着剤層14は、圧電素子3よりも硬い。接着剤層14の弾性率は、例えば、圧電素子3の発生力Fの30倍以上である。圧電素子3の発生力Fは、圧電定数d31、弾性定数S11E、圧電素子3の高さ方向(一対の主面2c,2dの対向方向)の幅W、印加される電圧V、及び積層数nを用い、下記の式(1)で示される。
F=(d31/S11E)×(W/2)×V×n (1)
上記構成を有する圧電アクチュエータ1の動作について、図5(a)及び図5(b)を参照して説明する。圧電アクチュエータ1は、駆動時においては2つの共振モードを有している。具体的には、圧電アクチュエータ1は、図5(a)に示されるように、圧電素子3の長手方向に振動する縦振動モードと、図5(b)に示されるように、圧電素子3の高さ方向への屈曲振動モードとの重ね合わせによって振動する。
圧電アクチュエータ1では、第3外部電極6及び第6外部電極9をグランドに接続すると共に、第1外部電極4及び第5外部電極8と、第2外部電極5及び第4外部電極7とに、位相を90°ずらした電圧をそれぞれ印加して圧電素子3を駆動させると、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12にそれぞれ位相が180°ずれた楕円運動が生じる。これにより、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12と被駆動体100(図1参照)との間に交互に摩擦力が作用して、被駆動体100が移動することとなる。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12の楕円運動は、同じ軌跡となってもよいし、異なる軌跡となってもよい。
本実施形態では、圧電素子3は、圧電素子3の幅方向(一対の側面2e,2fの対向方向)から見て、圧電素子3の長手方向(一対の端面2a,2bの対向方向)の中心Cを通り、かつ、圧電素子3の高さ方向(一対の主面2c,2dの対向方向)に沿った直線に対して非対称である位置に、振動の腹(振動において振幅が最大となる位置)を有する。具体的には、図4に示されるように、圧電素子3の振動の腹は、例えば、P1〜P6で示す位置となる。圧電アクチュエータ1では、圧電素子3の振動の節(振動において振幅を生じない位置)に、第1外部電極4〜第6外部電極9が配置されている。
上述の振動の腹P1〜P6の位置は、縦振動モードの共振周波数と、屈曲振動モードの共振周波数とをずらすことにより実現されている。縦振動モードの共振周波数及び屈曲振動モードの共振周波数は、圧電素子3の長手方向と幅方向との寸法比により調整される。したがって、圧電素子3の寸法比を調整することにより、縦振動モードの共振周波数と屈曲振動モードの共振周波数とをずらすことができる。
また、上述の振動の腹P1〜P6の位置は、第1内部電極22〜第4内部電極28、及び、第6内部電極32〜第9内部電極38の構成により実現されている。具体的には、本実施形態では、圧電体層20b上及び圧電体層20f上のそれぞれにおいて、第3内部電極26と第4内部電極28とを接続部材29により電気的に接続し、圧電体層20d上において、第6内部電極32と第7内部電極34とを接続部材40により電気的に接続している。圧電素子3では、内部電極において最大寸法となる部分(領域)において変位が生じる。例えば、圧電体層20b上においては、第3内部電極26と第4内部電極28とが接続部材29により電気的に接続されているため、対角に位置する第3内部電極26及び第4内部電極28にわたって変位が生じる。これに対して、対角において孤立する第1内部電極22及び第2内部電極24は、それぞれの最大寸法となる部分で変位が生じる。このように、同一の圧電体層20b上において、変位量に差が生じる。これにより、圧電素子3の振動の腹P1〜P6は、圧電素子3の幅方向から見て、圧電素子3の長手方向の中心Cを通り、かつ、圧電素子3の高さ方向に沿った直線に対して非対称となる。
以上説明したように、本実施形態に係る圧電アクチュエータ1では、接着剤層14が圧電素子3よりも硬い。したがって、接着剤層14が圧電素子13よりも柔らかい場合に比べて、接着剤層14がひずみ難く、圧電素子3の振動(変形)が第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12に伝達され易い。圧電素子3よりも硬い接着剤層14によれば、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12と主面2dとが、第1摩擦部材10の側面10aのうち接着剤層14と接触する部分、及び第2摩擦部材12の側面12aのうち接着剤層14と接触する部分と、主面2dのうち接着剤層14と接触する部分とにより、実質的に面接触している状態となる。これにより、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12と主面2dとが点接触又は線接触している場合に比べて、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12と主面2dとの接触面積が実質的に広くなる。この結果、駆動特性の向上を図ることができる。
圧電アクチュエータ1では、接着剤層14の弾性率は、圧電素子3の発生力の30倍以上である。これにより、駆動特性の更なる向上を図ることができる。
圧電アクチュエータ1では、電圧が印加されて縦振動モード及び屈曲振動モードが合成された振動モードが発生すると、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12のそれぞれに楕円運動が生じる。第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、楕円運動の加速部分(楕円の長手方向の成分)において高い駆動力が得られる。圧電素子3の腹P1〜P6は、圧電素子3の幅方向から見て、圧電素子3の長手方向の中心Cを通りかつ高さ方向に沿った直線に対して非対称となる位置である。また、圧電アクチュエータ1では、第1摩擦部材10を、圧電素子3の腹P1〜P6以外の位置で、かつ、端面2aからの距離が1/3L未満となる位置に配置し、第2摩擦部材12を、圧電素子3の腹P1〜P6以外の位置で、かつ、他方の端面2bからの距離が1/3L未満となる位置に配置している。この構成により、圧電アクチュエータ1では、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12の楕円運動において、楕円の長手方向の成分が圧電素子3の長手方向に沿うように、楕円の長手方向の成分を傾けることができる(楕円の長手方向の成分と圧電素子3の長手方向とが成す角度を小さくできる)。これにより、圧電アクチュエータ1では、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12は、楕円運動の加速部分において被駆動体100と接触する。したがって、圧電アクチュエータ1では、駆動力を確保することができる。その結果、圧電アクチュエータ1では、駆動特性の向上を図ることができる。
続いて、種類の異なる4種類の接着剤A,B,C,Dを用いて実施形態に係る圧電アクチュエータを作製し、圧電アクチュエータ(圧電素子)のモータ特性を測定した結果について説明する。表1は、圧電アクチュエータの発生力に対する接着剤層の弾性率の大きさ、モータ特性、及びモータ特性の平均値を接着剤ごとに示す表である。圧電アクチュエータの発生力に対する接着剤層の弾性率の大きさは、接着剤層の弾性率が圧電アクチュエータの発生力の何倍であるかで示され、接着剤層の硬さの指標となる値である。圧電アクチュエータのモータ特性は、以下のようにして測定した値である。まず、測定器に測定サンプルの圧電アクチュエータをセットし、駆動電圧の周波数を変化させながら駆動速度(被駆動体の移動速度)を計測した。続いて、最も駆動速度が低い周波数で1万サイクルのエージングを行い、特性変化がないことを確認した後、最終的な駆動速度をモータ特性として記録した。
図6は、圧電アクチュエータの発生力に対する接着剤層の弾性率の大きさとモータ特性との関係を示すグラフである。図6の横軸は、圧電アクチュエータの発生力に対する接着剤層の弾性率の大きさを示し、縦軸はモータ特性を示す。図6には、接着剤ごとのモータ特性の平均値が白丸でプロットされている。図6に示されるように、接着剤層の弾性率が圧電素子の発生力の30倍以上である場合、モータ特性が向上する。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上記実施形態では、積層体2の主面2cに矩形状を呈する第1外部電極4〜第3外部電極6が配置されており、積層体2の主面2dに矩形状を呈する第4外部電極7〜第6外部電極9が配置されている形態を一例に説明した。しかし、外部電極の構成はこれに限定されない。
上記実施形態では、圧電体層20a〜20fが積層されることで積層体2が形成される形態を一例に説明した。しかし、圧電体層の積層数はこれに限定されず、設計に応じて適宜設定される。
上記実施形態では、図3に示される構成(形状)の第1内部電極22〜第9内部電極38を一例に説明した。しかし、内部電極の構成はこれに限定されない。内部電極は、圧電素子3が、積層体2の一対の側面2e,2fの対向方向から見て、圧電素子3の長手方向の中心Cを通りかつ一対の主面2c,2dの対向方向に沿った直線に対して非対称となる位置に、屈曲振動モードにより最大振幅を生じる腹を有する構成を実現できる構成であればよい。
上記実施形態では、第1摩擦部材10及び第2摩擦部材12を備える形態を一例に説明した。しかし、摩擦部材を更に(3以上)備えていてもよい。
上記実施形態では、第1摩擦部材10が、圧電素子3の長手方向の長さをLとした場合、積層体2の端面2aから1/12Lの位置に配置されている形態を一例に説明した。しかし、第1摩擦部材10は、圧電素子3の長手方向の長さをLとした場合に、端面2aからの距離が1/3L未満となる位置に配置されていればよい。第2摩擦部材12についても同様である。
上記実施形態では、第1摩擦部材10が、圧電素子3の積層体2の主面2dにおいて、積層体2の幅方向に沿って連続して延在する形態を一例に説明した。しかし、第1摩擦部材10は、積層体2の幅方向において断続的に配置されていてもよい。