JP6658005B2 - 基材用不織布およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂の接着性に優れており、裁断時や使用中に樹脂の剥がれが発生しない基材用不織布およびその製造方法に関するものである。
現在、多岐にわたる分野で不織布の特性や生産性が評価され、従来の織物や編み物あるいはフィルム等が使用されている用途でも、不織布単体で代替したり、不織布を基材として樹脂等を塗布し、樹脂特性に応じた機能性や構造的な機能性を発現させることにより、代替したりする取り組みが行われている。
このような取り組みの一例として、スパイラル型分離膜エレメントの流路材が挙げられる。近年、海水およびかん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術において、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントとしては様々な形態があるが、例えば、逆浸透ろ過には、原水に圧力を付与することができ、透過流体を多く取り出すことができるという利点から、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。
スパイラル型分離膜エレメントは、一般的に、中心管とその中心管の周囲に巻き付けられた積層体とを備えている。積層体は、原水(すなわち被処理水)を分離膜表面に供給する供給側流路材、原水に含まれる成分を分離する分離膜、および分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材が積層されることにより形成されるものである。従来、透過側流路材としては、分離膜の落ち込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、間隔の細かいトリコットと呼ばれる編み物部材が使用されている。
近年、造水コストの低減への要求の高まりから、分離膜エレメントの高性能化が求められており、分離膜エレメントの分離性能の向上および単位時間あたりの透過流体量の増大のために、流路部材等の分離膜エレメント部材の性能向上が提案されている。
例えば、断面が凹凸構造の布帛の表面に平坦な布帛を積層した透過側流路材を適用した液体分離膜モジュールが提案されている(特許文献1参照。)。この提案で用いられている透過側流路材では、運転中の逆浸透圧による流路チャンネル陥没の抑制は期待できるものの、断面が凹凸構造の布帛として従来と同じくトリコット編み物を使用しているため、初期の流動抵抗は従来と同等であった。
これに対し別に、分離膜の基材となる不織布の裏面側に、ストライプ柄またはドット柄の透過側流路材を配した分離膜エレメントが提案されている(特許文献2参照。)。この提案で用いられる透過側流路材であれば、確かに従来のトリコット編み物を用いた流路材と比較して透過流体の流動抵抗を低減させ、単位時間あたりの透過流体量の増大効果が期待できる。
特開2000−342941号公報 特開2015−226908号公報
しかしながら、本発明者等は、特許文献2の提案では、従来の分離膜支持体となる不織布を基材として樹脂による流路材加工を施しているため、基材が当該加工に適したものではなく、不織布へ樹脂の接着加工を行う際に基材である不織布と樹脂の接着性が不十分であり、裁断時や使用中に樹脂の剥がれが発生しやすいという課題があることを見出した。
そこで本発明の目的は、機械的強度が高く樹脂塗布時の加工性が良好であり、かつ表層のみの樹脂塗布でも樹脂の接着性に優れており、裁断時にも樹脂構造体の剥がれが発生しない基材用不織布およびその製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、流動抵抗が小さく、高圧下でも使用中に樹脂剥離のない流路材を提供することにある。
本発明は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維からなる不織布であって、前記の不織布は少なくとも一方の表面のISO25178に準じて測定した面の算術平均高さが3〜10μmであり、かつ非圧着部の空隙率が50〜85%であることを特徴とする基材用不織布である。
本発明の基材用不織布の好ましい態様によれば、前記の基材用不織布の低荷重時(荷重2kPa)に対する高荷重時(荷重200kPa)の厚さ変化率は、20%以下である。
本発明の基材用不織布の好ましい態様によれば、前記の基材用不織布のエンボス圧着率は、3〜40%である。
本発明の基材用不織布の好ましい態様によれば、前記の繊維の平均繊維径は1〜20μmである。
本発明の基材用不織布の好ましい態様によれば、前記の不織布は長繊維からなるスパンボンド不織布である。
本発明の基材用不織布の好ましい態様によれば、前記の基材用不織布の少なくとも一方の表面に樹脂構造体が接着した不織布加工品とすることができる。
本発明において、「樹脂構造体」とは不織布に接着させ、固化した状態の樹脂を意味しており、以降で単に「樹脂」と記載する場合は、不織布に接着させる前の固化状態あるいは溶融状態の樹脂を示すものである。
本発明の不織布加工品の好ましい態様によれば、樹脂構造体が接着した面において基材用不織布の表面の一部が露出しており、前記の不織布表面を高さ0mmとしたときの樹脂構造体の高さは、0.15mm以上である。
本発明の好ましい態様によれば、前記の不織布加工品を用いて、液体用流路材とすることができる。
本発明の基材用不織布の製造方法は、上下一対のフラットロールまたは少なくとも上下一方のロールが所定の凹凸パターンを有するエンボスロールにより、繊維表面を構成する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも60〜90℃低い温度で、線圧98N/cm以上3920N/cm以下で熱圧着した後、上下一対のフラットロールまたは少なくとも上下一方のロールが所定の凹凸パターンを有するエンボスロールにより、繊維表面を構成する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも5〜60℃低い温度で、線圧196N/cm以上4900N/cm以下で熱圧着する工程を有することを特徴とする前記の基材用不織布の製造方法である。
本発明によれば、機械的強度が高く樹脂塗布時の加工性が良好であり、かつ表層のみの樹脂塗布でも樹脂の接着性に優れており、裁断時にも接着した樹脂構造体の剥がれが発生しない基材用不織布が得られる。
また、本発明の基材用不織布は、基材浸透性の低い樹脂でも十分な接着性が得られることから、使用する樹脂量を低減したり、高粘度の樹脂を用いて表面に緻密な構造や深い凹凸形状を形成させたりすることが可能となる。特に、本発明の基材用不織布に樹脂を塗布することにより、流動抵抗が小さく、高圧下でも使用中に樹脂剥離のない流路材が得られる。
本発明の基材用不織布は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維からなる不織布であって、前記の不織布は少なくとも一方の表面のISO25178に準じて測定した算術平均高さが3〜10μmであり、かつ非圧着部の空隙率が50〜85%であることを特徴とする基材用不織布である。
本発明の基材用不織布は、少なくとも一方の表面のISO25178に準じて測定した面の算術平均高さが3〜10μmであることが重要である。基材用不織布の少なくとも一方の表面のISO25178に準じて測定した算術平均高さを3〜10μmとし、好ましくは4〜10μmとし、より好ましくは5〜10μmとすることにより、基材用不織布の表面に樹脂を接着させる際に、樹脂に対する繊維の食い込みが小さい場合や、表層のみしか樹脂が含浸していない場合でも、樹脂の接着性に優れ、裁断時にも接着した樹脂構造体の剥がれが発生しないようにすることができる。
上記の面の算術平均高さは、ISO25178に準じて、形状解析レーザ顕微鏡や3D形状測定機等の非接触式の形状測定機器を使用し、高さ方向の測定分解能が0.1μm以下で、面方向の測定分解能が0.1μm以下で測定したものである。接触式の測定機器では、接触針の先端径が分解能の限界であり、不織布を構成する繊維により形成された表面の微細孔には追従できないという課題がある。
また、接触式の形状測定機は、二次元の表面形状に基づいて粗さ(線粗さ)を評価するものであり、不織布のように構造が不均一で、測定箇所により測定値にばらつきが生じやすい観察対象では、特性値を正確に把握しにくいという課題がある。
本発明では、樹脂の接着性のように局所構造のばらつきにより影響を受けやすい特性を評価するため、非接触式の形状測定機を使用している。また、高さ方向の測定分解能が0.1μm以下で、面方向の測定分解能が0.1μm以下とすることにより、繊維により形成された微細孔の影響まで考慮した面の算術平均高さの測定が可能となり、不織布に対する樹脂の接着性を適切に評価することができる。
面の算術平均高さの一回の測定における測定面は、一辺の長さが0.1mm以上であり、面積が0.04mm以上である。また、一つの試料について測定位置を変えて複数回測定を行い、測定面積の合計が1mm以上となるように測定を行う。このようすることにより、不織布のように構造が不均一で、かつ測定箇所により測定値にばらつきが生じやすい観察対象では、特性値を正確に把握することができる。また、不織布に貫通孔がある場合は、貫通孔の部分を除いた繊維部分のみで面の算術平均高さを測定する。繊維部分または貫通孔を抽出する画像処理の一例として、RGB0〜255階調またはこれらの合計765階調を利用する処理方法等が挙げられる。
また面積が0.04mm以上の測定面について、幅方向および高さ方向の測定分解能が0.1μm以下で測定を行うため、非接触式の形状測定機器により、好ましくは測定倍率500倍以上3000倍以下の倍率で、より好ましくは1000倍以上2000倍以下の倍率で3D形状測定し、面の算術平均高さを算出することが好ましい。
本発明の基材用不織布は、非圧着部の空隙率が50〜85%であることが重要である。非圧着部の空隙率を50%以上とし、好ましくは60%以上とし、より好ましくは65%以上とすることにより、不織布表面に樹脂が含浸しやすい適度な空隙を確保し、高粘度の樹脂を用いた場合でも十分な接着性を発現することができる。また、非圧着部の空隙率を85%以下とし、好ましくは83%以下とし、より好ましくは80%以下とすることにより、樹脂接着加工をする際に不織布表面に存在する繊維の本数が適度となり、樹脂膜を表層のみで熱圧着する場合でも十分な接着性を得ることができるとともに、加圧環境下でも不織布の変形が少なくなり、表面に接着した樹脂構造体が剥離しにくくすることができる。なお以降では、不織布に接着させる前の固化状態あるいは溶融状態の樹脂を単に「樹脂」と記載し、不織布に接着させ、固化した状態の樹脂を「樹脂構造体」と記載する。
本発明の基材用不織布は、低荷重時(荷重2kPa)に対する高荷重時(荷重200kPa)の厚さ変化率が0%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上17%以下であり、さらに好ましくは0%以上15%以下である。このようにすることにより、圧力がかかる環境下でも不織布の変形が少なくなり、表面に接着した樹脂構造体が剥離しにくくすることができる。また、樹脂により不織布表面に液体あるいは気体の流路を形成するような加工を施す場合には、加圧環境下で不織布表面に接着した樹脂構造体が食い込むことを抑制し、流路の形成状態を維持することが可能となる。
本発明の基材用不織布は、機械的強度を向上させることができ、また毛羽立ちを抑制することができることから、部分的に圧着部を有することが好ましい。
圧着加工の方法としては、上下に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いたり、上側または下側のみに所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用い、もう一方の側にフラットロールを用いて熱圧着加工を施す方法や、超音波により熱融着させる方法が好ましく用いられる。
エンボスロールによる熱圧着加工を採用する場合には、上下両方のエンボスロールの凸部により加圧され、繊維が凝集し融着している部分が圧着部となる。また一方がフラットロールである場合には、上下片方のエンボスロールの凸部により加圧され、繊維が凝集し融着している部分が圧着部となる。また、本発明の基材用不織布は、搬送性の改善や厚さを調整すること等を目的に、上記圧着加工の前および後の工程において上下一対のフラットロールによる熱圧着加工を施してもよく、当該加工により圧着部の定義が変わるものではない。なお、本発明における非圧着部とは、上記のエンボスロールを用いた熱圧着部や超音波による融着部以外の部分を指すものである。
圧着部の形状は、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形等が好ましく用いられる。圧着部は、基材用不織布の長手方向と幅方向のいずれにも一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、不織布内の強度のばらつきを低減するとともに、樹脂を接着加工する基材として用いる際に、樹脂の接着にムラが生じることを防ぐことができる。また、不織布全体に織り目柄等の模様を付与したり、長手方向あるいは幅方向に連続した圧着部を有するエンボスパターンを用いることもできる。
本発明の基材用不織布の表面における圧着部の面積率、すなわち圧着率は3〜40%であることが好ましい。圧着率を3%以上とし、より好ましくは5%以上とし、さらに好ましくは8%以上とすることにより、不織布に十分な強度を付与し、また表面に毛羽立ちが発生することを抑制することができる。また、圧着率を40%以下とし、より好ましくは35%以下とし、さらに好ましくは30%以下とすることにより、樹脂を接着加工する基材として用いる際に、圧着部を起点に樹脂構造体が剥離することを抑制することができる。
本発明の基材用不織布を構成する繊維の平均繊維径は、3〜20μmであることが好ましい。平均繊維径を好ましくは3μm以上とし、より好ましくは5μm以上とし、さらに好ましくは7μm以上とすることにより、不織布製造時に紡糸性が低下することが少なく、また不織布内部の空隙を維持できるため、樹脂を接着加工する基材として使用する際に樹脂が基材内部に浸透しやすくなり、樹脂の接着性を向上させることができる。一方、繊維の平均繊維径を好ましくは20μm以下とし、より好ましくは17μm以下とし、さらに好ましくは15μm以下とすることにより、不織布の目付のムラが悪化したり、表面の平滑性が低下したりすることを抑制し、樹脂を接着加工する基材として使用する際に、接着性が低下することを防ぐことができる。
本発明の基材用不織布の製造方法としては、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、湿式法、カード法およびエアレイド法等を挙げることができる。
中でも、スパンボンド法により製造されるスパンボンド不織布は好ましい態様の一例である。熱可塑性フィラメントから構成された長繊維不織布であるスパンボンド不織布は、生産性に優れる他、樹脂を接着加工する基材として使用する際に短繊維不織布を用いたときに起こりやすい毛羽立ちを抑制することができ、部分的に接着不良や加工不良が発生することを防ぐことができる。また、スパンボンド不織布は、機械的強度により優れていて、基材として使用した際に耐久性に優れる加工品を得ることもできるという観点からも好ましく用いられる。
本発明の基材用不織布は、接着剤なしでも樹脂加工時の接着性に優れていることから、表面に樹脂層を設ける基材として好ましく用いられる。樹脂を接着加工する方法としては、フィルム等の樹脂膜や所定の形状を有する樹脂材を基材用不織布と重ね合わせ、加熱下でラミネート加工する方法や溶融樹脂をダイから吐出して直接基材に塗布する方法、あるいは溶媒により流動性を付与した高分子化合物溶液をダイから吐出し、貧溶媒に浸漬して樹脂を固着させる方法等を用いることができる。また、ディップ加工にように不織布全体に樹脂を含浸させ、固着させることもできる。
加工する樹脂の成分は、目的とする用途に応じて適宜選択されるものであるが、熱可塑性樹脂は成形が容易であり、均一な形状の構造体を形成することができることから、好ましく用いられる。
樹脂加工は、本発明の基材用不織布全体に施しても良く、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形あるいは正八角形等の形状を有する樹脂突起物が独立して存在するように加工することもできる。また、樹脂を基材用不織布の表面上に、直線状や曲線状あるいは不規則な縞模様を形成するように加工することもできる。
本発明の基材用不織布に樹脂接着加工を施した加工品は、分離膜エレメント等の透過側あるいは流入側流路材として好ましく用いられる。
従来、分離膜エレメントの流路材として広く用いられているトリコットは、編み物であり、本発明の基材用不織布に樹脂加工を施した流路材と比較して、生産性に劣る。また、トリコットは立体的に交差した糸条で構成されており、トリコットにより形成される流路の高さはトリコットの厚みよりも小さくなる。これに対し、本発明の基材用不織布に樹脂加工を施した流路材は、加工した樹脂構造体の高さ(すなわち厚さ)を全て、流路の高さとして活用することができ、流路の断面積がより大きくなるため、トリコットよりも流動抵抗の小さい流路材を得ることができる。
また、従来の不織布では、十分な流路の高さを確保するために、高粘度の樹脂を用いて加工すると、樹脂の含浸が浅くなるため、実用に供しうる剥離強度の樹脂加工品を得ることができなかったが、本発明の基材用不織布では樹脂の含浸が浅くても十分なアンカー効果を発揮し、優れた接着性を得ることできる。
本発明の基材用不織布の樹脂加工品を流路材として使用する場合は、加工する樹脂として、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンや共重合ポリオレフィンなどの樹脂を用いることが好ましく、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などのポリマーも選択できる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてポリマーアロイとして用いることもできる。
本発明の基材用不織布の樹脂加工品を流路材として使用する場合は、樹脂をストライプ状またはドット状に加工することが好ましい態様である。中でも、不織布の長手方向または幅方向に連続したストライプ状であることが特に好ましく、このようにすることにより、分離膜エレメントに供給または分離膜エレメントから排出される液体を一方向に流し、流動抵抗を小さくすることができる。また、連続して途切れずに樹脂構造体が設けられることで、加圧ろ過時にろ過膜が流路に落ち込んで流路を狭める膜の落ち込みを抑制することができる。樹脂構造体の形状は、直柱状、台形状、曲柱状あるいはそれらを組み合わせて構成することができる。
また、本発明の基材用不織布の樹脂加工品を流路材として使用する場合は、樹脂構造体が接着してなる樹脂加工面において、基材用不織布の表面の一部が露出していることが好ましい。基材用不織布の表面が露出した部分では、樹脂構造体の高さをすべて流路の高さとすることができるため、流動抵抗を小さくすることができる。
基材用不織布の表面から樹脂構造体の外表面(不織布との接着面とは反対側の表面)までの高さ、すなわち流路の高さは、0.15mm以上であることが好ましい。このようにすることにより、流動抵抗を小さくし、流路材として十分な通水量を確保することができる。一方、流路材の高さが高すぎると、1つの分離膜エレメント当たりに充填されるろ過膜の数が少なくなり、製水量が低下することから、流路材の高さは、0.35mm以下であることが好ましい。したがって、流路材の高さは好ましくは0.15mm以上0.35mm以下であり、より好ましくは、0.20mm以上0.35mm以下である。
樹脂をストライプ状に接着させる場合は、個々の樹脂構造体の幅方向の間隔は0.05mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上2mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.8mm以下である。こうすることにより、流路材に重ね合わせた濾過膜の落ち込みを抑えながら、流動抵抗を小さくすることができる。
また、樹脂をストライプ状に接着させる場合は、個々の樹脂構造体の幅は、好ましくは0.20mm以上であり、より好ましくは0.3mm以上である。樹脂接着物の幅が0.20mm以上であることにより、分離膜エレメントの運転時に流路材に高い圧力がかかっても流路材の形状を保持することができ、流路が安定的に形成される。また、樹脂構造体の幅は、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下である。樹脂構造体の幅を2mm以下とすることにより、流路を十分確保し、流動抵抗を小さくすることができる。
樹脂構造体の形状としては、流路の流動抵抗を少なくし、高い圧力がかかる環境下でも流路を安定化させるような形状が選択され得る。これらの点で、樹脂構造体の断面形状は、長方形や平行四辺形、台形、半円形あるいはそれらを組み合わせて構成することができる。
本発明の基材用不織布は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維からなる。本発明において、主成分とするとは、当該成分を90質量%以上含有し、当該成分のみからなる場合も含まれることを意味する。
主成分である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカ1ラクタム(ナイロン11)、ポリドデカ1ラクタム(ナイロン12)等のポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン、塩素化ポリエチレン(CPE)等のハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル重合体であるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリメチルペンテン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、およびフッ素樹脂等が挙げられる。
中でも、ポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂は、繊維の曳糸性に優れており、かつ剛性にも優れることから好ましく用いられる。上記の熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてポリマーアロイとして用いることもできる。
また、熱可塑性樹脂には、結晶核剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤および親水剤等を添加することができる。
本発明の基材用不織布を構成する繊維は、単一成分からなる繊維でも、複数成分からなる複合型繊維でも、複数種の繊維を混合したいわゆる混繊型の繊維でもよいが、樹脂を接着加工する基材として使用する際に、熱のかかる接着方法でも基材の寸法安定性を維持できることから、単一成分からなる繊維が好ましく用いられる。
単一成分からなる繊維を用いる場合、繊維の主成分である熱可塑性樹脂の融点は、本発明の基材用不織布を基材として樹脂接着加工する際に、樹脂層を形成するときの加工性が良好であり、耐久性に優れる加工品を得ることができるという観点から、160℃以上320℃以下であることが好ましい。繊維の主成分である熱可塑性樹脂の融点を、好ましくは160℃以上とし、より好ましくは170℃以上とし、さらに好ましくは180℃以上とすることにより、樹脂の接着加工時に熱が加わる工程を通過しても寸法安定性に優れ、耐久性に優れる基材用不織布とすることができる。一方、高融点重合体の融点を好ましくは320℃以下とし、より好ましくは300℃以下とし、さらに好ましくは280℃以下とすることにより、不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下することを抑制することができる。
また、複数成分からなる複合型繊維では、機械的強度を向上させることができるため、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型繊維も好ましく用いられる。
上記の複合型繊維を構成する高融点重合体と低融点重合体との融点差は、10℃以上140℃以下であることが好ましい。融点差を好ましくは10℃以上とし、より好ましくは20℃以上とし、さらに好ましくは30℃以上とすることにより、中心部に配した高融点重合体の強度を損なうことなく、機械的強度の向上に資する熱接着性を得ることができる。一方、融点差を好ましくは140℃以下とし、より好ましくは120℃以下とし、さらに好ましくは100℃以下とすることにより、熱ロールを用いた熱圧着時に該ロールに低融点重合体成分が融着して生産性が低下することを抑制することができる。また、不織布使用時にかかる熱に対する変形を抑制することができる。
高融点重合体の融点は、本発明の基材用不織布を基材として樹脂接着加工する際に、樹脂層を形成するときの加工性が良好であり、耐久性に優れる加工品を得ることができるという観点から、160℃以上320℃以下であることが好ましい。高融点重合体の融点を好ましくは160℃以上とし、より好ましくは170℃以上とし、さらに好ましくは180℃以上とすることにより、樹脂の接着加工時に熱が加わる工程を通過しても寸法安定性に優れ、耐久性に優れる基材用不織布とすることができる。一方、高融点重合体の融点を好ましくは320℃以下とし、より好ましくは300℃以下とし、さらに好ましくは280℃以下とすることにより、不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下することを抑制することができる。
高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型繊維中に含まれる高融点重合体は、50質量%以上90質量%以下の範囲で含まれてなることが好ましい。複合型繊維中に含まれる高融点重合体を好ましくは50質量%以上とし、より好ましくは70質量%以上とし、さらに好ましくは75質量%以上とすることにより、不織布使用時にかかる熱に対する変形を抑制することができる。一方、複合型繊維中に含まれる高融点重合体を90質量%以下とし、より好ましくは85質量%以下とし、さらに好ましくは80質量%以下とすることにより、不織布の機械的強度の向上に資する熱接着性を得ることができる。
また、高融点重合体および低融点重合体の組み合わせ(高融点重合体/低融点重合体)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリ乳酸、およびポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエチレンテレフタレート等の組み合わせを挙げることができる。また、ここに共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、イソフタル酸等が好ましく用いられ、中でも特に、ポリエチレンテレフタレート/イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの組み合わせが好ましく用いられる。
複合型繊維の複合形態としては、効率的に繊維同士の熱接着点を得られる点から、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型等の複合形態を挙げることができる。また、不織布を構成する繊維の横断面形状としては、円形断面、扁平断面、楕円形断面、多角形断面、多葉断面および中空断面等を挙げることができる。中でも、複合形態としては、同心芯鞘型を、繊維の横断面形状としては円形断面や扁平断面とすることが好ましく、このような複合形態とすることにより、熱圧着により繊維同士を強固に接着させることができる。
本発明の基材用不織布の目付は、15g/m以上150g/m以下であることが好ましい。目付を好ましくは15g/m以上とし、より好ましくは20g/m以上とし、さらに好ましくは25g/m以上とすることにより、基材用不織布を樹脂接着加工の基材として使用する際に、ハンドリング性を損なうことなく、高い機械的強度を有し耐久性に優れた樹脂加工品を得ることができる。一方、目付を好ましくは150g/m以下とし、より好ましくは120g/m以下とし、さらに好ましくは90g/m以下とすることにより、不織布に樹脂を接着させて流路材として使用する際に、流路材の厚さを低減し、分離膜エレメントのユニットあたりの分離膜面積を増大させることができる。
本発明の基材用不織布の厚さは、0.03mm以上0.20mm以下であることが好ましい。不織布の厚さを好ましくは0.03mm以上とし、より好ましくは0.04mm以上とし、さらに好ましくは0.05mm以上とすることにより、不織布を樹脂接着加工の基材として使用する際に、実用上十分な剛性を保持し、高い機械的強度を有し耐久性に優れた樹脂加工品を得ることができる。一方、不織布の厚さを好ましくは0.20mm以下とし、より好ましくは0.16mm以下とし、さらに好ましくは0.12mm以下とすることにより、不織布に樹脂を接着させて流路材として使用する際に、流路材の厚さを低減し、分離膜エレメントのユニットあたりの分離膜面積を増大させることができる。
次に、樹脂接着加工の基材として好適に用いられる本発明の基材用不織布の製造方法について、例示説明する。
本発明において、不織布を構成する繊維として芯鞘型等の複合型繊維を用いる場合、複合型繊維の製造には通常の複合方法を採用することができる。
不織布を製造する方法として、スパンボンド法の場合は、溶融した熱可塑性重合体をノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸して紡糸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとし、さらに連続的に熱圧着等を施すことにより一体化して、長繊維不織布を製造することができる。
このとき、熱圧着時に繊維が過度に収縮することによるシワ等が発生せず良好な加工性を得ることができ、また不織布の機械的強度に資する繊維の強度も向上するという観点から、繊維ウェブを構成する繊維をより高度に配向結晶化させるため、紡糸速度は3000m/分以上とすることが好ましく、紡糸速度はより好ましくは3500m/分以上であり、さらに好ましくは4000m/分以上である。また、繊維の過度の配向結晶化を抑制することにより、不織布の機械的強度の向上に資する熱接着性を得ることができることから、紡糸速度は5500m/分以下であることが好ましく、より好ましくは5000m/分以下であり、さらに好ましくは4500m/分以下である。
本発明の基材用不織布は、上下一対のフラットロールまたは少なくとも上下一方のロールが所定の凹凸パターンを有するエンボスロールにより、繊維表面を構成する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも60〜90℃低い温度で、かつ線圧98N/cm以上3920N/cm以下で熱圧着した後、上下一対のフラットロールまたは少なくとも上下一方のロールが所定の凹凸パターンを有するエンボスロールにより、繊維表面を構成する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも5〜60℃低い温度で、かつ線圧196N/cm以上4900N/cm以下で熱圧着する工程により製造される。
本発明の基材用不織布は、少なくとも一方の表面のISO25178に準じて測定した算術平均高さが3〜10μmであり、かつ非圧着部の空隙率が50〜85%であることが重要であり、不織布の面の算術平均高さや空隙率をより精密にコントロールすることが可能であることから、2段階以上の熱圧着方法を用いることが重要である。2段階以上の熱圧着方法とは、上下一対のフラットロールによる全面熱圧着と、上下両方あるいは一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いた部分的熱圧着とを組み合わせて、計2回以上の熱圧着を施すことである。
2段階以上の熱圧着方法における熱圧着の回数は、製造工程が煩雑化することを防ぎ、エネルギーコストを削減することができることから、2回が好ましい。また不織布に十分な強度を付与することができることから、少なくとも1回は上下両方あるいは一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いた部分的熱圧着を施すことが好ましい。例えば、捕集コンベア上に捕集した捕集ウェブを、上下両方あるいは一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いて部分的熱圧着した後、上下一対のフラットロールにより全面熱圧着する方法、捕集コンベア上に捕集した捕集ウェブを、上下両方あるいは一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いて2回部分的熱圧着する方法、あるいは捕集コンベア上に捕集した捕集ウェブをまず上下1対のフラットロールにより全面を仮熱圧着した後、上下両方あるいは一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いて部分的熱圧着する方法が好ましい熱接着方法である。これらのうち、不織布の面の算術平均高さおよび非圧着部の空隙率の調整がしやすいことから、捕集コンベア上に捕集した捕集ウェブをまず上下1対のフラットロールにより全面を仮熱圧着した後、上下両方あるいは一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを用いて部分的熱圧着する方法がより好ましく用いられる。
また2段階の熱圧着方法では、1回目と2回目の熱圧着が連続工程であっても良く、熱圧着した不織布を巻き取った後に、それをもう1度巻き出して熱圧着するような分割された工程とすることもできる。
2段階以上の熱圧着方法では、不織布の面の算術平均高さおよび非圧着部の空隙率は、複数回の熱圧着の製造条件を調整し、最終的に目標とする範囲となるよう調整されることが好ましい。そのようにすることにより、安定的に目標とする構成の不織布を得ることができる。
熱圧着に使用されるフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム等や、これらの混合物からなる樹脂製ロール等が挙げられる。
また部分的熱圧着では、上下両方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを使用するか、上下一方に所定のパターンの凹凸を有するエンボスロールを使用し、もう一方にフラットロールを使用することが好ましい。部分的熱圧着では、エンボス圧着部で十分な熱圧着効果を得て、かつ上下一方のロールのエンボスパターンがもう一方のロールに転写するのを防ぐため、金属製ロールと金属製ロールを対にすることが好ましい。
1回目の熱圧着を行うロールの温度は、繊維の構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択され、線圧とともに適宜調整されるものであるが、繊維表面に存在する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも60〜90℃低い温度であることが重要であり、60〜80℃低い温度であることがより好ましい態様である。繊維表面に存在する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも60〜90℃低い温度とすることにより、後工程における十分な工程搬送性や2回目以降の熱圧着の際にシワ等が発生することのない良好な加工性を得ることができるとともに、1回目の熱圧着の段階で繊維の熱結晶化が過度に進行することを抑制し、2回目以降の熱圧着の際に十分な熱接着性を得ることができる。
また、1回目の熱圧着の線圧は、98N/cm以上3920N/cm以下であることが重要であり、より好ましくは294N/cm以上1960N/cm、さらに好ましくは490N/cm以上980N/cm以下である。上記の1回目の熱圧着を行うロールの温度の好ましい範囲において、線圧を98N/cm以上3920N/cm以下の範囲で適宜調整することにより、不織布の面の算術平均高さを3〜10μmの範囲にコントロールし、さらに非圧着部の空隙率を50〜85%の範囲に調整することができる。また不織布の低荷重時(荷重2kPa)に対する高荷重時(荷重200kPa)の厚さ変化率が0%以上20%以下とすることができる。
2回目以降の熱圧着を行うロールの温度は、繊維の構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択して調整されるものであるが、繊維表面に存在する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも5〜60℃低い温度であることが重要であり、10〜50℃低い温度であることがより好ましく、10〜40℃低い温度であることが特に好ましい態様である。繊維表面に存在する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも5〜80℃低い温度とすることにより、熱圧着の際に繊維が溶融したり、過度に熱圧着が進行して部分的圧着部に穴があいたり、あるいは過接着状態となり引裂強力が低下したりすることを防ぎ、かつ熱接着が不十分となり、機械的強度が低下することを抑制することができる。
また、2回目以降の熱圧着の線圧は、196N/cm以上4900N/cm以下であることが重要である。線圧を196N/cm以上とし、より好ましくは392N/cm以上とし、さらに好ましくは490N/cm以上とすることにより、樹脂接着加工の基材として十分実用に供しうる機械的強度を有する不織布を得ることができる。一方、線圧を4900N/cm以下とし、より好ましくは2940N/cm以下とし、さらに好ましくは980N/cmとすることにより、繊維が過度に融着して部分的圧着部に穴があいたり、過接着状態となり引裂強力が低下したりすることを防ぐことができる。また上記の2回目以降の熱圧着を行うロールの温度の好ましい範囲において、線圧を196N/cm以上4900N/cm以下の範囲で適宜調整することにより、不織布の面の算術平均高さを3〜10μmの範囲にコントロールし、さらに非圧着部の空隙率を50〜85%の範囲に調整することができる。また不織布の低荷重時(荷重2kPa)に対する高荷重時(荷重200kPa)の厚さ変化率が0%以上20%以下とすることができる。
本発明の基材用不織布は、機械的強度が高く樹脂塗布時の加工性が良好であり、かつ表層のみの樹脂塗布でも樹脂の接着性に優れ、裁断時にも樹脂の剥がれが発生しないことから、高粘度の樹脂を用いて表面に緻密な構造や深い凹凸形状を形成させたりすることが可能であり、樹脂接着加工の基材として好適に用いることができる。また、本発明の基材用不織布にストライプ状に樹脂を塗布することにより、流動抵抗が小さく、高圧下でも使用中に樹脂剥離のない流路材を得ることができる。
次に、実施例に基づき本発明の基材用不織布について、具体的に説明する。
[測定方法]
(1)固有粘度(IV):
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは、次の方法で測定した。オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを、下記式により求めた。
・η=η/η=(t×d)/(t×d
(ここで、ηはポリマー溶液の粘度、ηはオルソクロロフェノールの粘度、tは溶液の落下時間(秒)、dは溶液の密度(g/cm)、 t:はオルソクロロフェノールの落下時間(秒)、dはオルソクロロフェノールの密度(g/cm)を、それぞれ表す。)
次いで、上記の相対粘度ηから、下記式により固有粘度IVを算出した。
・IV=0.0242η+0.2634。
(2)融点(℃):
使用した熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量計(TA Instruments社製Q100)を用いて、次の条件で測定し、吸熱ピーク頂点温度の平均値を算出して、測定対象の融点とした。繊維形成前の樹脂において吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側のピーク頂点温度とする。また、繊維を測定対象とする場合には、同様に測定し、複数の吸熱ピークから各成分の融点を推定することができる。
・測定雰囲気:窒素流(150ml/分)
・温度範囲 :30〜350℃
・昇温速度 :20℃/分
・試料量 :5mg。
(3)平均単繊維径(μm):
平均単繊維直径は、基材用不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の単繊維の直径を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
(4)基材用不織布の圧着率(%):
基材用不織布の圧着率は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡を用いて20〜50倍の倍率で、各サンプルから1枚ずつ、1枚の写真の中に少なくとも5個以上の圧着部が入るよう計10枚の写真を撮影し、各写真から圧着部の面積とエンボスの繰り返しパターンの最小単位の面積を求め、それらを平均した。その後、下記式を用いて圧着率を算出し、小数点以下第一位を四捨五入した。
・圧着率=(圧着部の面積)×(繰り返しパターンの最小単位に含まれる圧着部の個数)/(繰り返しパターンの最小単位の面積)。
(5)基材用不織布の目付(g/m):
基材用不織布の目付は、JIS L1913(2010年版)6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、30cm×50cmの試験片を、試料の幅1mあたり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1mあたりの質量(g/m)で表した。
(6)基材用不織布(非圧着部)の厚さ(mm):
不織布(非圧着部)の厚さは、JIS L1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第四位を四捨五入した。
(7)低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率(%):
低荷重時の厚さについて、面積200mmの加圧子を使用し、荷重2kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第四位を四捨五入した。続いて、高荷重時の厚さについて、面積200mmの加圧子を使用し、荷重200kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第四位を四捨五入した。
このようにして求めた低荷重時の厚さ(mm)と高荷重時の厚さ(mm)から、下記式により低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率(%)を求め、小数点以下第二位を四捨五入した。
・厚さ変化率(%)=(低荷重時の厚さ−高荷重時の厚さ)/低荷重時の厚さ×100。
(8)非圧着部の空隙率(%):
上記の(5)と(6)で、それぞれ求めた基材用不織布の目付(g/m)、基材用不織布(非圧着部)の厚さ(mm)、およびポリマー密度(g/cm)から、下記式を用いて非圧着部の空隙率を算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。
・充填率 = 目付÷厚さ÷10÷ポリマー密度
・空隙率(%)=(1−充填率)×100
ここで、本発明の実施例におけるポリエチレンテレフタレート樹脂と共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂のポリマー密度は、1.37g/cmとした。
(9)基材用不織布の面の算術平均高さ(μm):
基材用不織布の面の算術平均高さは、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、ISO25178に準じてキーエンス社製形状解析レーザ顕微鏡VK−X250(高さ方向の測定分解能:0.5nm、面方向の測定分解能:1nm)を用いて、1000倍の倍率(測定範囲:0.28mm×0.20mm)で、各サンプルから非圧着部を3点ずつ、計30点の3Dスキャンを行い、3Dスキャン画像からそれぞれ面の算術平均高さを測定し、それらの平均値を小数点以下第二位を四捨五入して求めた。
(10)基材用不織布の樹脂塗布加工性:
ポリプロピレン(MFR1000g/10分(温度230℃、荷重2.16kgf/cm)、80質量%)/スチレン系エラストマー(JSR社製“DYNARON・SEBS・8630P”、10質量%)を温度210℃で溶融し、バックアップロールを20℃に温度調節しながら、スリット幅0.5mmでピッチ0.9mmの櫛歯状シムを装填したノズルを用いて、得られた基材用不織布に加工速度5.5m/分で塗布し、不織布の長手方向に連続した線状の樹脂突起物が、幅方向に0.9mmのピッチで並んだストライプ模様を形成させた。このとき樹脂の剥離が発生した本数をカウントした。表1には樹脂塗布加工の加工性について、下記の5段階の基準で評価し、4点以上を合格とした。
1:加工時に樹脂の剥離が発生し、その割合が50%以上100%未満である。
2:加工時に樹脂の剥離が発生し、その割合が50%未満である。
3:加工時に樹脂の剥離はないが、シートを屈曲させると樹脂の剥離が発生する。
4:加工時やシート屈曲時に樹脂の剥離はないが、樹脂の蛇行が発生している。
5:加工時やシート屈曲時に樹脂の剥離はなく、樹脂が直線状に固着している。
(11)樹脂接着性:
上記の樹脂塗布加工性評価が3以上であった樹脂加工品について、片刃を用いて幅方向に速度5m/minで裁断し、裁断時に剥離した突起物の本数のカウントする作業を10回繰り返した。表1には樹脂の接着性について、下記の5段階の基準で評価し、4点以上を合格とした。
1:裁断時に樹脂の剥離が発生し、その割合が75%以上100%未満である。
2:裁断時に樹脂の剥離が発生し、その割合が50%以上75%未満である。
3:裁断時に樹脂の剥離が発生し、その割合が25%以上50%未満である。
4:裁断時に樹脂の剥離が発生し、その割合が25%未満である。
5:裁断時に樹脂の剥離が発生しない。
(12)樹脂突起物の高さ(mm):
樹脂塗布加工後の試料について、基材用不織布と樹脂突起物を合わせた厚さJIS L1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点の厚さを、0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入して、不織布と樹脂突起物を合わせた厚さを求めた。このようにして得られた不織布と樹脂突起物を合わせた厚さから、上記の(6)で測定した不織布(非圧着部)の厚さを差し引き、樹脂突起物の高さを求めた。
(13)樹脂突起物の幅(mm):
樹脂突起物の幅は、樹脂塗布加工後の試料からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で20〜50倍の写真を撮影し、各サンプルから3本ずつ、計30本の樹脂突起物の幅(mm)を測定し、それらの平均値を、小数点以下第三位を四捨五入して求めた。
[実施例1]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IVが0.65で、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を295℃の温度で溶融し、口金温度300℃で細孔から紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上下1対の金属製フラットロール間を通し、ロールの表面温度を190℃とし、線圧が490N/cmの条件で熱圧着した。その後、上ロールがドット柄の凸部が規則的に配列したエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、温度を240℃とし、線圧が588N/cmの条件で部分的熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が10.6μmで、目付が30g/mで、厚さが0.077mmで、空隙率が71.6%で、圧着率が28.0%で、面の算術平均高さが6.3μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が16.7%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施し、不織布の長手方向に連続した線状の樹脂突起物が、幅方向に0.9mmのピッチで並んだストライプ模様を形成させた。樹脂突起物を基材用不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.18mmであり、樹脂突起物の幅は0.40mmであった。基材のハンドリング性や樹脂塗布の加工性は良好であり、得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断しても樹脂の剥離は発生せず、接着性にも優れていた。
(流路材性能)
得られた樹脂接着後のシートを透過側の流路材として使用した分離膜エレメントを作製し、供給水として濃度1000mg/LとpH6.5のNaCl水溶液を用いて、運転圧力を1.5MPaとし、温度を25℃とした条件下で運転した。その結果、トリコット編み物(厚さ0.26mm、溝幅0.4mm、畦幅0.3mm、溝深さ0.105mm、ポリエチレンテレフタレート製)を透過側流路材として使用し、それ以外の部材をまったく同じ構成とした分離膜エレメントと比較して、単位時間と単位面積あたりの透過水量(m/hr)は8.3%増加した。また、100時間運転した後、分離膜エレメントを解体して流路材の状態を観察した結果、樹脂の剥離は見られなかった。結果を表1に示す。
[実施例2]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
実施例1と同じ樹脂を使用し、実施例1と同じ条件で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
実施例1と同じ条件で、フラットロールによる熱圧着とエンボスロールによる部分的熱圧着を行った。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が10.6μmで、目付が20g/mで、厚さが0.054mmで、空隙率が73.0%で、圧着率が28.0%で、面の算術平均高さが5.6μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率は12.7%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を基材用不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.18mmであり、樹脂突起物の幅は0.40mmであった。基材のハンドリング性や樹脂塗布の加工性は良好であり、得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断しても樹脂の剥離は発生せず、接着性にも優れていた。結果を表1に示す。
[実施例3]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度がIV0.65で、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を295℃の温度で溶融し、口金温度300℃で細孔から紡出した後、エジェクターを用いて、紡糸速度4500m/分で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
実施例1と同じ条件で、フラットロールによる熱圧着とエンボスロールによる部分的熱圧着を行った。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が14.9μmで、目付が30g/mで、厚さが0.090mmで、空隙率が75.7%で、圧着率が28.0%で、面の算術平均高さが7.4μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が16.7%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を基材用不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.18mmであり、樹脂突起物の幅は0.40mmであった。基材のハンドリング性や樹脂塗布の加工性は良好であり、得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断しても樹脂の剥離は発生せず、接着性にも優れていた。結果を表1に示す。
[実施例4]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度がIV0.65で、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度がIV0.66で、イソフタル酸共重合率11モル%で融点が230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と270℃の温度で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分とし、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分として、口金温度を300℃、芯:鞘=80:20の質量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上下1対の金属製フラットロール間を通し、ロールの表面温度150℃、線圧が490N/cmの条件で熱圧着した。その後、上ロールがドット柄の凸部が規則的に配列したエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、温度190℃、線圧が588N/cmの条件で部分的熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は、繊維の単繊維径が10.6μmで、目付が30g/mで、厚さが0.104mmで、空隙率が78.9%で、圧着率が28.0%で、面の算術平均高さが8.5μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が19.2%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を基材用不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.17mmであり、樹脂突起物の幅は0.40mmであった。基材のハンドリング性や樹脂塗布の加工性は良好であり、得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断しても樹脂の剥離は発生せず、接着性にも優れていた。結果を表1に示す。
[実施例5]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
実施例1と同じ樹脂を使用し、実施例1と同じ条件で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上ロールが円形柄の凹凸を有するエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、ロールの表面温度190℃、線圧が490N/cmの条件で部分的熱圧着した。その後、上下1対の金属製フラットロール間を通し、温度240℃、線圧が588N/cmの条件で熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は繊維径が10.6μmで、目付が30g/mで、厚さが0.115mmで、空隙率が81.0%で、圧着率が16.0%で、面の算術平均高さが9.4μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が41.7%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.17mmであり、樹脂突起物の幅は0.40mmであった。基材のハンドリング性や樹脂塗布の加工性は良好であった。得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断すると、裁断時に一部の樹脂で剥離が発生したが、接着性は概ね良好であった。結果を表1に示す。
[実施例6]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
水分率を50ppm以下に乾燥した固有粘度IVが0.65で、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IVが0.66で、イソフタル酸共重合率が11モル%で融点が230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と270℃の温度で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分とし、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分として、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の質量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4800m/分で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上下1対の金属製フラットロール間を通し、ロールの表面温度150℃、線圧が490N/cmの条件で熱圧着した。その後、上ロールがダイヤ柄の凸部が規則的に配列したエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、温度190℃、線圧が588N/cmの条件で部分的熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が16.4μmで、目付が40g/mで、厚さが0.160mmで、空隙率が81.8%で、圧着率が8.0%で、面の算術平均高さが9.7μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が21.4%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.16mmであり、樹脂突起物の幅は0.41mmであった。基材のハンドリング性は良好であり、加工時にごく一部でわずかな樹脂の蛇行が発生したが、樹脂の剥離はなかった。得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断しても樹脂の剥離は発生せず、接着性にも優れていた。結果を表1に示す。
Figure 0006658005
[比較例1]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
実施例1と同じ樹脂を使用し、実施例1と同じ条件で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上下1対の金属製フラットロール間を通し、ロールの表面温度を165℃とし、線圧が490N/cmの条件で熱圧着した。その後、上ロールがドット柄の凸部が規則的に配列したエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、温度が240℃で、線圧が539N/cmの条件で部分的熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が10.6μmで、目付が30g/mで、厚さが0.150mmで、空隙率が85.4%で、圧着率が28.0%で、面の算術平均高さが10.4μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率は27.7%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を基材用不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.16mmであり、樹脂突起物の幅は0.41mmであった。基材のハンドリング性は良好であり、加工時に樹脂の剥離はなかったが、加工後のシートを屈曲させると一部で樹脂の剥離が発生した。得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断すると、半数近くの樹脂で剥離が発生し、接着性は弱めであった。結果を表2に示す。
[比較例2]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
実施例1と同じ樹脂を使用し、実施例3と同じ条件で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
比較例1と同じ条件でフラットロールによる熱圧着とエンボスロールによる部分的熱圧着を行った。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が14.9μmで、目付が30g/mで、厚さが0.121mmで、空隙率が81.9%で、圧着率が28.0%で、面の算術平均高さが12.1μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が29.0%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。樹脂突起物を不織布の幅方向に切断した際の断面形状は半円形であり、樹脂突起物の高さは0.16mmであり、樹脂突起物の幅は0.41mmであった。基材のハンドリング性は良好であり、加工時に樹脂の剥離はなかったが、加工後のシートを屈曲させると一部で樹脂の剥離が発生した。得られた樹脂接着後のシートを幅方向に裁断すると、半数以上の樹脂で剥離が発生し、接着性不良であった。結果を表2に示す。
[比較例3]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
実施例1と同じ樹脂を使用し、実施例3と同じ条件で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上ロールが円形柄の凹凸を有するエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、ロールの表面温度240℃、線圧が160N/cmの条件で部分的熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が14.9μmで、目付が30g/mで、厚さが0.190mmで、空隙率が88.5%で、圧着率が16.0%で、面の算術平均高さが11.1μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が47.2%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。基材のハンドリング性は良好であったが、加工時に半数以上の樹脂で剥離が発生し、加工性不良であった。結果を表2に示す。
[比較例4]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
水分率を50ppm以下に乾燥した固有粘度がIV0.65で、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を295℃で溶融し、口金温度300℃で細孔から紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4800m/分で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上ロールが円形柄の凹凸を有するエンボスロールであり、下ロールがフラットロールである上下1対の金属製ロール間に通し、ロールの表面温度が240℃で、線圧が160N/cmの条件で部分的熱圧着した。得られたスパンボンド不織布は、繊維径が22.0μmで、目付が30g/mで、厚さが0.124mmで、空隙率が82.3%で、圧着率が16.0%で、面の算術平均高さが16.4μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が23.4%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。基材のハンドリング性は良好であったが、加工時に半数以上の樹脂で剥離が発生し、加工性不良であった。結果を表2に示す。
[比較例5]
(紡糸と繊維ウェブ捕集)
実施例4と同じ樹脂を使用し、実施例4と同じ条件で紡糸し、移動するネットコンベア上に繊維ウェブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集された繊維ウェブを、上下1対の金属製フラットロール間に通し、各フラットロール表面温度が130℃で、線圧が490N/cmの条件で熱圧着した。その後、上が硬度(Shore D)91の樹脂製の弾性ロールで、中が金属ロールで、下が硬度(Shore D)75の樹脂製の弾性ロールの1組の3本フラットロールの中−下間に通して熱圧着し、さらにその不織布を折り返して上−中間を通し熱圧着した。このときの3本フラットロールの表面温度は、上を130℃、中を195℃、下を140℃とし、線圧は1862N/cmとした。得られたスパンボンド不織布は、繊維の単繊維径が10.6μm、目付が72g/mで、厚さが0.086mmで、空隙率が38.9%で、圧着率が100.0%(フラットロールのみによる全面圧着)で、面の算術平均高さが2.1μmで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化率が6.3%であった。
(樹脂接着加工)
得られた基材用不織布に、上記の(10)に記載した方法で樹脂塗布加工を施した。基材のハンドリング性は良好であったが、加工時に全面で樹脂の剥離が発生し、加工性不良であった。結果を表2に示す。
Figure 0006658005
<まとめ>
表1に示されるように、面の算術平均高さが3〜10μmであり、かつ非圧着部の空隙率が50〜85%である基材用不織布は、樹脂塗布加工の加工性や樹脂の接着性が良好であり、基材として優れたものであった。一方、表2に示されるように、面の算術平均高さおよび空隙率が上記範囲外となる比較例1〜5の不織布は、樹脂塗布加工の加工性や樹脂の接着性に劣るものであった。

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維からなる不織布であって、前記不織布の少なくとも一方の表面のISO25178に準じて測定した面の算術平均高さが3〜10μmであり、かつ非圧着部の空隙率が50〜85%であり、さらにエンボス圧着率が3〜40%であることを特徴とする基材用不織布。
  2. 低荷重時(荷重2kPa)に対する高荷重時(荷重200kPa)の厚さ変化率が、20%以下であること特徴とする請求項1記載の基材用不織布。
  3. 繊維の平均単繊維径が1〜20μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の基材用不織布
  4. 不織布が長繊維からなるスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材用不織布。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の基材用不織布の少なくとも一方の表面に、樹脂構造体が接着してなることを特徴とする不織布加工品。
  6. 樹脂構造体が接着した面において基材用不織布の表面の一部が露出しており、不織布表面を高さ0mmとしたときの樹脂構造体の高さが0.15mm以上であることを特徴とする請求項記載の不織布加工品。
  7. 請求項に記載の不織布加工品を用いてなる液体用流路材。
  8. 上下一対のフラットロールまたは少なくとも上下一方のロールが所定の凹凸パターンを有するエンボスロールにより、繊維表面を構成する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも60〜90℃低い温度で、かつ線圧98N/cm以上3920N/cm以下で熱圧着した後、上下一対のフラットロールまたは少なくとも上下一方のロールが所定の凹凸パターンを有するエンボスロールにより、繊維表面を構成する最も低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも5〜60℃低い温度で、かつ線圧196N/cm以上4900N/cm以下で熱圧着する工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材用不織布の製造方法。
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