以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係るエレベーター装置の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。各図において、共通の部材には同一の符号を付している。また、本実施形態は、以下の順で説明する。
1.エレベーター装置の全体構成
2.かご側ドアユニットの構成
3.建屋側ドア側ユニットの構成
4.かご側ドア及び建屋側ドアの開戸動作
5.変形例
1.エレベーター装置の全体構成
まず、本実施形態に係るエレベーター装置の全体の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るエレベーター装置の全体の構成を示す概略構成図である。図2は、本実施形態に係るエレベーター装置の乗りかごが任意の階に停止した状態を示す側面図である。
本実施形態のエレベーター装置1は、建物構造物内に形成された昇降路100の上方に機械室を有しない、いわゆる機械室レスエレベーター装置である。なお、本実施形態では、機械室レスエレベーター装置を用いた例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、昇降路100の上方に機械室を有するエレベーター装置に適用することもできる。
図1に示すように、エレベーター装置1は、昇降路100内を昇降する乗りかご110と、巻上機120と、釣合錘130と、第1の従動プーリ140と、第2の従動プーリ150と、ロープ170とを有している。
乗りかご110の下部には、せり上げ用プーリ111が設けられている。せり上げ用プーリ111には、ロープ170が巻き掛けられている。乗りかご110は、人や物が乗り降りするかご室10と、一対のドア部11A、11Bと、かご側ドアユニット12と、かご側ドアシル13とを有している。かご室10の一面には、人や物が出入りする開口部が設けられており、この開口部に一対のドア部11A、11Bが設けられている。
かご側ドアユニット12は、かご室10における開口部の上端部に設けられており、かご側ドアシル13は、開口部の下端部に設けられている。かご側ドアユニット12には、一対のドア部11A、11Bが開閉可能に取り付けられている。かご側ドアユニット12は、一対のドア部11A、11Bを水平方向に移動可能に構成されている。また、かご側ドアシル13には、一対のドア部11A、11Bの開閉を案内するガイド溝が設けられている。かご側ドアユニット12内の詳細な説明については後述する。
釣合錘130の上部には、錘側プーリ131が設けられている。錘側プーリ131には、ロープ170が巻き掛けられている。さらに、昇降路100の最下部における釣合錘130の下方には緩衝部材133が配置されている。緩衝部材133は、が昇降路100の最下部に衝突した場合の衝撃を緩和させるための部材である。なお、昇降路100の最下部における乗りかご110の下方にも同様に図示しない緩衝部材が配置されている。
巻上機120は、昇降路100の最下部に配置されており、ロープ170を介して乗りかご110及び釣合錘130をつるべ式に昇降させるものである。巻上機120は、制御部によってその駆動が制御される。
第1の従動プーリ140と、第2の従動プーリ150は、昇降路100の最上部に固定されている。ロープ170の一端171と他端172は、昇降路100の最上部に固定されている。ロープ170は、釣合錘130に設けられた錘側プーリ131から第1の従動プーリ140に装架され、そして、巻上機120、第2の従動プーリ150、乗りかご110のせり上げ用プーリ111の順に巻き掛けられている。
図2に示すように、建築構造物の各階における乗りかご110が停止する乗り場101には、人や物が乗りかご110へ出入りするための出入り口102が設けられている。出入り口102は、一対の乗り場ドア211A、211Bが設けられている。
一対の乗り場ドア211A、211Bは、出入り口102の上下方向の上端部に設けられた建屋側ドアユニット212により開閉可能に支持されている。また、出入り口102の上下方向の下端部には、一対の乗り場ドア211A、211Bを支持する建屋側ドアシル213が設けられている。建屋側ドアユニット212内の詳細な説明については後述する。
図2に示すように、乗りかご110が任意の階の乗り場ドア211A、211Bの位置に停止すると、かご側ドアユニット12と、建屋側ドアユニット212が対向する。そして、後述のかご側ドアユニット12に設けられたかご側係合子32が、後述する建屋側ドアユニット212の建屋側係合ローラ235と当接することで、乗りかご110のドア部11A、11Bと、乗り場101の乗り場ドア211A、211Bの開戸動作が行われる。この開戸動作の詳細な説明については後述する。
2.かご側ドアユニットの構成
図3は、乗りかご110を建屋側の出入り口102から見た正面図である。図3に示すように、かご側ドアユニット12は、かご側ドアレール15と、駆動部16と、伝達ベルト17と、従動ローラ18と、第1ドアハンガー21Aと、第2ドアハンガー21Bと、かご側ロック機構30とを有している。第1ドアハンガー21Aは、ドア部11Aの上下方向の上端部に設けられており、第2ドアハンガー21Bは、ドア部11Bの上下方向の上端部に設けられている。第1ドアハンガー21A及び第2ドアハンガー21Bには、それぞれ移動ローラ24が回転可能に取り付けられている。移動ローラ24は、かご側ドアレール15に摺動可能に係合する。かご側ドアレール15は、一対のドア部11A、11Bの開閉方向に沿って延在している。
また、第1ドアハンガー21Aは、第1連結部材22を有しており、第2ドアハンガー21Bは、第2連結部材23を有している。第1連結部材22及び第2連結部材23は、それぞれドアハンガー21A、21Bの上下方向の上端部から上方に向けて延在する部材で構成されており、後述する伝達ベルト17にそれぞれのドアハンガー21A、21Bを連結している。また、第1ドアハンガー21Aには、一対のドア部11A、11Bを解除可能に施錠する後述するかご側ロック機構30が設けられている。
駆動部16は、かご側ドアユニット12における水平方向の一側に配置されている。また、従動ローラ18は、かご側ドアユニット12における水平方向の他側に配置されている。駆動部16の駆動ローラと、従動ローラ18には、伝達ベルト17が巻き掛けられている。伝達ベルト17は、長手方向の両端部が連結された無端状に形成されている。そして、駆動部16が駆動すると、伝達ベルト17が従動ローラ18と駆動部16の駆動ローラとの間を循環移動する。このとき、伝達ベルト17における上下方向の上部と下部は、互いに反対方向に向けて移動する。
伝達ベルト17における復路側である下部には、第1連結部材22が連結されており、伝達ベルト17における往路側である上部には、第2連結部材23が連結されている。そのため、駆動部16が駆動して伝達ベルト17が移動すると、一対のドア部11A、11Bは、第1連結部材22及び第2連結部材23を介して互いに接近する戸開方向、又は離反する開戸方向に移動する。
次に、図4を参照して、かご側ロック機構30について説明する。図4は、かご側ロック機構30を示す正面図である。
図4に示すように、かご側ロック機構30は、かご側ロック部40と、施錠検出スイッチ50と、防護部60とを有している。なお、図4では、かご側ロック部40と、施錠検出スイッチ50を図示するため、防護部60の一部を断面で示している。
[かご側ロック部]
まず、かご側ロック部40について説明する。かご側ロック部40は、支持板31と、第1リンク部材41A、第2リンク部材41Bと、かご側係合子32と、回動軸35と、施錠側フック部材33と、固定フック部材34と、施錠保持部材39とを有する
支持板31は、平板状に形成されており、図3に示すように、第1ドアハンガー21Aに固定されている。支持板31には、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bのそれぞれのリンク軸42A、42Bと、第1ストッパー45と、複数の第2ストッパー46と、回動軸35とが固定されている。また、支持板31には、施錠保持部材39が取り付けられている。
第1リンク部材41Aは、支持板31の上下方向の下端部に設けられたリンク軸42Aに回動可能に支持されている。第2リンク部材41Bは、支持板31の上下方向の上端部に設けられたリンク軸42Bに回動可能に支持されている。第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bにおけるそれぞれのリンク軸42A、42Bと反対側の端部には、それぞれ、軸部43A、43Bが設けられている。
かご側係合子32は、乗りかご110の昇降方向に沿って所定の長さで延在する長尺状の部材で形成されており、その両端部が、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bのそれぞれの軸部43A、43Bに取り付けられている。かご側係合子32が第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bのそれぞれの軸部43A、43Bに取り付けられることにより、かご側係合子32は支持板41に対して回動可能に取り付けられている。
ここで、かご側ロック機構30が施錠状態の場合、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bは、それぞれ、かご側係合子32側と連結される軸部43A、43B側の端部が、リンク軸42A、42B側の端部よりも水平方向の高さが高くなるように、上下方向の上方を向いている。そのため、かご側係合子32は、かご側ロック機構30が施錠状態の場合、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bによって上下方向の上方に向けて持ち上げられた状態で配置される。なお、本実施形態では、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bが上下方向の上方を向いている構成としたが、上下方向の下方を向いた構成としてもよい。
また、乗りかご110が任意の階に停止し、かご側ロック機構30の施錠が解除される前の状態では、かご側係合子32におけるドア部11Aの戸開方向側には、図4の二点鎖線で示すように、後述する建屋側ロック機構230の建屋側係合ローラ235が配置される。このとき、かご側係合子32と、建屋側係合ローラ235は、所定の間隔Tを空けて対向する。
第1ストッパー45は、第1リンク部材41Aの近傍に配置されている。そして、かご側ロック機構30が施錠状態の場合、第1ストッパー45は、第1リンク部材41Aにおけるドア部11Aの開戸方向側に当接する。そのため、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bは、図4における反時計方向への回動が規制される。
第2ストッパー46は、支持板31に第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bを介して取り付けられたかご側係合子32に沿うように複数個(図4では3個)設けられ、かご側係合子32におけるドア部11Aの閉戸方向側の端部と所定の間隔Mを空けて対向するように支持板31に固定されている。この間隔Mは、かご側係合子32の水平方向における移動可能範囲となる。そして、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bが回動し、かご側係合子32が上下方向の下側及びドア部11Aの閉戸方向側に移動すると、かご側係合子32と第2ストッパー46が当接する。これにより、かご側係合子32と、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bの動作が規制される。
また、かご側係合子32における長手方向の中途部には、伝達部36が設けられている。伝達部36は、かご側係合子32におけるドア部11Aの開戸方向側の端部に設けられている。伝達部36は、後述する伝達ピン37に接触している。
回動軸35は、支持板31上のかご側係合子32よりもドア部11Aの開戸方向側に設けられている。回動軸35は、施錠側フック部材33を回動可能に支持板31に取り付ける為の部材である。
施錠側フック部材33は、フック部33aと、回動受け部33bと、フック部33aと回動受け部33bとを接続する接続部33cとを有しており、回動軸35によって支持板31に回動可能に取り付けられている。回動受け部33bは、回動軸35に回動可能に支持される部分であり、回動受け部33bのかご側係合子32近傍には、伝達ピン37が設けられている。フック部33aは、回動受け部33bとは反対側の端部に設けられており、回動受け部33bが回動軸35に取り付けられた際、かご側係合子32よりもドア部11Aの閉戸方向側に突出する。そして、かご側ロック機構30が施錠状態の場合、フック部33aは、後述する固定フック部材34の上下方向の上方に配置され、固定フック部材34のフック部34aと所定の間隔Sを空けて係合する。
伝達ピン37は、施錠側フック部材33の回動受け部33bに設けられている。伝達ピン37は、回動軸35よりもドア部11Aの閉戸方向側で、かつ上下方向の下方に位置している。この伝達ピン37は、かご側係合子32に設けた伝達部36に接触している。そして、かご側係合子32が第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bを介して上下方向の下方で、かつドア部11Aの閉戸方向側に移動した際、かご側係合子32の動作は、伝達部36を介して伝達ピン37に伝達される。これにより、施錠側フック部材33が回動軸35を中心に、図4における反時計方向(解除方向)に回動する。なお、伝達部36と伝達ピン37により伝達部材が構成される。
固定フック部材34は、かご側ドアユニット12に固定されている。なお、固定フック部材34は、第2ドアハンガー21Bまたはドア部11Bに固定してもよい。図4に示すように、固定フック部材34には、施錠状態のときに施錠側フック部材33のフック部33aと対向する位置にフック部34aが設けられている。
ここで、施錠側フック部材33のフック部33aと固定フック部材34のフック部34aとの、施錠状態における間隔Sは、少なくとも、第2ストッパー46とかご側係合子32との間隔Mとかご側係合子32と建屋側係合ローラ235との間隔Tを足した長さ以上に設定される。
施錠保持部材39は、施錠側フック部材33の接続部33cの上下方向の上端部に配置されている。施錠保持部材39は、施錠側フック部材33と支持板31との間に若干圧縮された状態で介在されている。また、施錠保持部材39は、かご側係合子32よりもドア部11Aの閉戸方向側に配置されている。そして、施錠保持部材39は、施錠側フック部材33を上下方向の下方、すなわち、施錠方向に向けて付勢している。施錠保持部材39としては、圧縮コイルばねが用いられている。なお、施錠保持部材39としては、圧縮コイルばねに限定されるものではなく、板ばねやゴムな等、その他各種の弾性部材を用いることができる。
また、施錠保持部材39は、後述する建屋側係合ローラ235が通過するかご側係合子32におけるドア部11Aの開戸方向側ではなく、閉戸方向側に設けている。これにより、乗りかご110が昇降動作する際に、施錠保持部材39と建屋側係合ローラ235とが接触することを防ぐことができる。
[施錠検出スイッチ]
次に、施錠検出スイッチ50について説明する。施錠検出スイッチ50は、可動部51と、固定部52とを有する。可動部51は、施錠側フック部材33の接続部33cに固定されており、かご側係合子32よりもフック部33a側に固定されている。可動部51は、上下方向の下方であって、後述する固定部52の固定接点52aに対向する面に可動接点51aを有している。固定部52は、かご側ドアユニット12に固定されており、施錠状態において施錠側フック部材33に固定された可動部51に対向する位置に配置されている。固定部52は、上下方向の上方であって、可動部51の可動接点51aに対向する面に固定接点52aを有している。
可動部51の可動接点51aと固定部52の固定接点52aは、施錠状態において接触するように構成されている。これにより、かご側ロック部40が施錠状態の場合には可動部51と固定部52とが電気的に接続され、施錠検出スイッチ50がオンとなる。一方、図8に示すように、施錠側フック部材33が回動移動してかご側ロック部40が解除された場合には、可動部51も施錠側フック部材33と共に上方に回動移動し、可動接点51aと固定接点52aとが離間する。これにより、施錠検出スイッチ50はオフとなり、かご側ロック部40が解除されたことが検知される。
[防護部]
次に、防護部60について説明する。防護部60は、防護カバー61と、防護板62とで構成されている。防護部60は、雨水などの水滴やほこりなどから施錠検出スイッチ50を保護するために設けられる部材である。図5は、図4のA−A’線上から防護部60側を見たときの構成図であり、一部断面図で示している。
防護カバー61は、施錠検出スイッチ50を覆うように設けられるものである。防護カバー61は、図5に示すように、施錠側フック部材33の上下方向における上方に配置された上面部61aと、ドア部11A、11Bの開閉方向に沿うように施錠検出スイッチ50の両側面に配置された側面部61b、61bとからなる断面がコ字状の部材で構成されている。防護カバー61は、上面部61aと、施錠側フック部材33の上下方向の上端部との間に所定の間隔を有するように配置されている。また、対向する2つの側面部61b、61bは、その間に、施錠検出スイッチ50、施錠側フック部材33、及び、固定フック部材34を配置可能な間隔を有し、上下方向における下端部が、固定フック部材34の上下方向における下側まで延在するように構成されている。また、防護カバー61のドア部11A、11Bの開閉方向における幅は、施錠側フック部材33の支持板31から突出した部分を覆う程度の長さに構成されている。
防護カバー61は、防水効果を有する部材で構成されており、例えば、金属部材や樹脂材等で構成されている。このように構成された防護カバー61は、図示を省略するが、かご側ドアユニット12に固定されている。
防護カバー61の上面部61aの施錠側フック部材33側の面と、施錠側フック部材33の上下方向の上端部との距離L1は、施錠側フック部材33が上方に回動してかご側ロック部40が解除されたときの施錠側フック部材33の回動を許容する距離に設定されている。すなわち、防護カバー61は、施錠側フック部材33が回動してかご側ロック部40が解除された際に、施錠側フック部材33に接触しないように構成されている。
防護板62は、施錠状態において、防護カバー61の回動軸35側の側部開口の一部を塞ぐ部材であり、図5に示すように、長方形の板状部材で構成されている。施錠側フック部材33の厚み方向における防護板62の幅は、防護カバー61の対向する側面部62b、62b間の距離と同程度かそれよりもやや小さく形成される。また、防護板62の上下方向における高さは、施錠検出スイッチ50への回動軸35側からの水滴の侵入を防ぎ、施錠側フック部材33の回動を妨げないように設定されている。この防護板62の寸法については後では詳述する。
図5に示すように、防護板62の中央部分には開口部62aが設けられており、防護板62は、その開口部62aに施錠側フック部材33が挿入されることによって、施錠側フック部材33の接続部33cに装着される。そして、防護板62は、施錠側フック部材33の接続部33cに装着され、防護カバー61内に収容されている。
防護板62は、施錠側フック部材33に装着可能で、かつ防水効果のある部材で構成することができ、本実施形態ではゴム材で構成されている。防護板62の開口部62aは、施錠側フック部材33の接続部33cの外形よりもやや小さく形成されている。これにより、防護板62を施錠側フック部材33の接続部33cに密着させて装着することができる。また、施錠側フック部材33の厚み方向における防護板62の幅を防護カバー61の対向する側面部61b、61b間の距離と同程度か、それよりもやや小さく形成する。これにより、施錠側フック部材33の回動を妨げることなく、施錠検出スイッチ50の回動軸35側からの防水効果を高めることができる。
以下に、防護カバー61及び防護板62の各寸法について説明する。図6Aは、本実施形態における防護部60の寸法設定を説明するための図であり、図6Bは、比較例にかかる防護カバーの寸法設定を説明するための図である。図6Aでは、防護カバー61を透過して図示しており、防護カバー61の内壁面の配置位置を2点鎖線で示している。
防護板62における上端部t1と防護カバー61の上面部61aの施錠側フック部材33側の面s1との距離をY1とし、フック部33aの上端部t2と防護カバー61の上面部の施錠側フック部材33側の面s1との距離をL1とする。また、回動軸35の中心からフック部33aの先端t3までの距離をL2、回動軸35の中心から防護板62の施錠検出スイッチ50側の面s2までの距離をL3とする。このとき、距離Y1は、以下の式1で示す関係となるように設定されている。
Y1≧L1×L3/L2・・・・(式1)
フック部33aの上端部t2と防護カバー61の面s1との距離L1は、上述したように、施錠側フック部材33が上方に回動してかご側ロック部40が解除されたときの施錠側フック部材33の回動を許容する距離に設定されているものである。そして、上述の式1を満たすように、防護板62の上端部t1と防護カバー61の面s1との距離Y1を設定することで、施錠側フック部材33が上方に回動してかご側ロック部40が解除されたときに、防護板62が施錠側フック部材33の回動を妨げない。
また、防護カバー61の面s1における回動軸35側の端部と、防護板62の上端部t1の施錠検出スイッチ50側の角部とを結ぶ角度αを、雨水などの水滴の進入を防ぐ水掛かり防止角度αとすると、αが所定値よりも小さくなるように設定する。水掛かり防止角度αの設定は、どの程度の強さまでの雨水の進入を防ぐか等によって設計者によって設定される値である。そして、水掛かり防止角度αを維持できる範囲で、防護カバー61の回動軸35側の端部と、防護板62のフック部33a側の面s2との距離X1が設定される。
図6Bは、比較例として、防護板62が無い場合の防護カバー160の構成を図示したものである。図6Bでは、防護カバー160の構成のみが、図6Aと異なるものであり、その他の構成は図6Aと同じとしている。比較例における防護カバー160は、本実施形態と同様、施錠側フック部材33の上下方向における上方に配置された上面部と、ドア部11A、11Bの開閉方向に沿うように施錠検出スイッチ50の両側面に配置された側面部とからなる断面がコ字状の部材で構成されているものとする。また、比較例における防護カバー160は、ドア部11A、11Bの開閉方向における幅のみが、本実施形態の防護カバー61と異なるものである。図6Bにおいても、防護カバー160を透過して図示しており、防護カバー160の内壁面の配置位置を2点鎖線で示している。
図6Bに示すように、防護板62がない場合には、可動接点51aの回動軸35側の端部と防護カバー160の上面部の施錠側フック部材33側の面における回動軸35側の端部とを結ぶ角度が水掛かり防止角度αとなる。そして、この水掛かり防止角度αを確保することによって、接点部分への水の侵入を防ぐことができる。比較例では、可動部51の可動接点51aから防護カバー160までの距離Y0と、防護カバー160から可動接点51aの回動軸35側の端部までの距離X0を適切に定めることによって、水掛かり防止角度αを確保し、接点部分に水が掛からないようにしている。
このように、比較例では、本実施形態における防護板62が設けられていないため、防護カバー160を回動軸35側に長めに延在させることで水掛かり防止角度αを確保する必要があり、防護カバー160が、防護したい領域に対して大きくなる。
一方、本実施形態では、図6Aに示したように防護板62が施錠側フック部材33に装着されているため、水掛かり防止角度αを保ちつつ、ドア部11A、11Bの開閉方向における防護カバー61の幅を、図6Aに示すようにX2だけ縮小することができる。
また、本実施形態において、防護板62の上下方向における下方の端部は、施錠側フック部材33の回動を妨げない範囲内において、少なくとも、施錠検出スイッチ50の可動接点51aを覆う位置にまで延在されればよいが、固定接点52aを覆う位置まで延在するように設けられてもよい。防護板62を、固定接点52aを覆う位置まで延在する部材で構成することによって、防水効果をより高めることができる。
3.建屋側ドアユニットの構成
次に、図7を参照して、建屋側ドアユニット212の構成について説明する。図7は、建屋側の出入り口102を乗りかご110側から見た正面図である。
図7に示すように、建屋側ドアユニット212は、建屋側ドアレール215と、第1プーリ216と、第2プーリ218と、伝達ベルト217と、ドアハンガー221A、221Bと、建屋側ロック機構230とを有している。
第1プーリ216は、建屋側ドアユニット212における水平方向の一側に配置されており、第2プーリ218は、建屋側ドアユニット212における水平方向の他側に配置されている。
伝達ベルト217は、第1プーリ216と第2プーリ218に巻き掛けられている。伝達ベルト217は、長手方向の両端部が連結された無端状に形成されている。そして、伝達ベルト17における上下方向の上部と下部とは、互いに反対方向に向けて移動する。
建屋側ドアレール215は、一対の乗り場ドア211A、211Bの開閉方向に沿って延在している。ドアハンガー221A、221Bは乗り場ドア211A、211Bの上下方向の上端部に設けられている。ドアハンガー221A、221Bには、移動ローラ224が回転可能に取り付けられており、移動ローラ224は、建屋側ドアレール215に摺動可能に係合している。また、ドアハンガー221A、221Bには、それぞれ第1連結部材222、第2連結部材223が設けられている。そして、第1連結部材222は、伝達ベルト217における復路側である下部に連結されており、第2連結部材223は、伝達ベルト217における往路側である上部に連結されている。これにより、伝達ベルト217が移動すると、一対の乗り場ドア211A、211Bは、第1連結部材222及び第2連結部材223を介して違いに接近する戸開方向、又は離反する開戸方向に移動する。
建屋側ロック機構230は、2つのドアハンガー221A、221Bのうち、乗りかご110の第1ドアハンガー21Aと対向するドアハンガー221Bに設けられている。建屋側ロック機構230は、ベース板237と、施錠側フック部材231と、施錠保持部材239と、固定フック部材234とを有している。
ベース板237は、ほぼ平板状に形成されており、ドアハンガー221に固定されている。また、ベース板237には、回動軸232と、固定側ローラ236が固定されている。施錠側フック部材231は、回動軸232に回動可能にもうけられており、固定フック部材234と係合するフック部231aと、軸受け部231bとを有している。軸受け部231bは、回動軸232に回動可能に支持される。また、軸受け部231cの上下方向の上端部には、建屋側係合ローラ235が回転可能に取り付けられている。
建屋側係合ローラ235は、軸受け部231bにおけるフック部231a側に配置されており、図4に示したように、乗りかご110が任意の階に停止した際、かご側係合子32と所定の間隔Tを空けて対向する。
固定フック部材234は、ベース板237が設けられたドアハンガー221Bとは異なるドアハンガー221A、又は乗り場ドア211Aに固定されている。固定フック部材234は、建屋側ロック機構230の施錠状態において、施錠側フック部材231のフック部231aと対向する位置に配置され、施錠側フック部材231のフック部231aと係合するフック部234aを有する。
施錠保持部材239は、施錠側フック部材231における建屋側係合ローラ235の近傍に配置されており、一端がベース板237に固定され、他端が施錠側フック部材231の上下方向の上端部に固定されている。そして、施錠保持部材239は、施錠側フック部材231を施錠方向、すなわち上下方向の下方に向けて付勢する。これにより、建屋側ロック機構230における施錠側フック部材231の施錠状態が保持される。
ここで、建屋側ロック機構230における施錠保持部材239が施錠状態を保持する力は、かご側ロック機構30の施錠保持部材39が施錠状態を保持する力よりも大きく設定されている。すなわち、かご側ロック機構30の施錠保持部材39の付勢力は、建屋側ロック機構230の施錠保持部材239の付勢力よりも小さく設定されている。
4.エレベーター装置のドアの開戸動作
次に、上述した構成を有するエレベーター装置1におけるドアの開戸動作について説明する。図8は、かご側ロック機構30が解除された状態を示す正面図である。
図2に示すように、乗りかご110が任意の階に停止すると、かご側ドアユニット12と、建屋側ドアユニット212が対向し、かご側ロック機構30と建屋側ロック機構230が対向する。そして、図2に示すように、かご側ロック機構30が支持板31の平面部と建屋側ロック機構230の建屋側係合ローラ235が対向する。また、建屋側係合ローラ235は、かご側係合子32におけるドア部11Aの開戸方向側の端部に所定の間隔Tを空けて対向する。
そして、駆動部16が駆動し、一対のドア部11A、11Bが開戸方向に移動すると、図8に示すように、かご側係合子32が建屋側係合ローラ235に当接する。さらに、ドア部11Aが開戸方向に向けて移動すると、かご側係合子32は、建屋側係合ローラ235によってドア部11Aの移動方向と反対方向に向けて押圧される。そのため、第1リンク部材41A及び第2リンク部材41Bがリンク軸42を中心に軸部43側が上下方向の下方に下がるように回動する。そして、かご側係合子32におけるドア部11A及び支持板31の移動方向と反対方向で、かつ上下方向の下方に向けて移動する。
かご側係合子32の動作は、伝達部36及び伝達ピン37を介して施錠側フック部材33に伝達される。そのため、施錠側フック部材33は、施錠保持部材39の付勢力に抗して、フック部33aが上下方向の上方を向く解除方向に回動軸35を中心に回動する。このとき、施錠側フック部材33の接続部33cに装着された防護板62も施錠側フック部材33と共に回動する。本実施形態では、防護カバー61の上面部61aの施錠側フック部材33側の面と、防護板62の上下方向における上端部と間に所定の隙間Y1が設けられているので、防護カバー61は、施錠側フック部材33及び防護板62の回動を妨げない。また、防護板62の下端部と施錠検出スイッチ50との距離も適切に確保されているため、防護板62の回動時に防護板62が施錠検出スイッチ50に接触することもない。
そして、これにより、施錠側フック部材33のフック部33aと固定フック部材34のフック部34aの係合が解除され、一対のドア部11A、11Bが開放される。そして、施錠状態が解除されると同時に、可動接点51aと固定接点52aとが離間し、施錠検出スイッチ50がオフされてロックの解除が検知される。なお、かご側係合子32は、第2ストッパー46に当接することで、その移動が停止する。
ここで、かご側ロック機構30の施錠保持部材39が施錠状態を保持する力は、建屋側ロック機構230における施錠保持部材239が施錠状態を保持する力よりも小さく設定されている。これにより、建屋側ロック機構230の施錠状態がかご側ロック機構30よりも早く解除されることがない。
以上のように、本実施形態では、施錠状態において、施錠検出スイッチ50が防護部60によって防護されているため、雨水などの水滴から施錠検出スイッチ50を保護することができる。また、本実施形態では、施錠側フック部材33に装着され、施錠検出スイッチ50近傍に配置される防護板62が設けられているため、施錠検出スイッチ50の回動軸35側から侵入するのを防ぐことができる。さらに、本実施形態では、防護カバー61と防護板62との間で所定の水掛かり防止角度αを確保することができるので、防水効果を保ちつつ、防護カバー61を小型化することができる。これによって、隣接する他の機器の設置スペースの確保が容易となる。
5.変形例
図9は、変形例に係るかご側ロック機構の正面図である。図9において、図4に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。図9に示すように、変形例に係るかご側ロック機構80は、さらに、防護部70の構成が本実施形態と異なるものであり、詳しくは、フック部側防護板71を設ける点で、本実施形態と異なる。
図9に示すように、変形例に係るかご側ロック機構80では、防護部70は、防護カバー61と、防護板62と、フック部側防護板71とを有する。フック部側防護板71は、施錠検出スイッチ50を挟んで防護板62とは反対側であって、固定フック部材34のフック部34a端部よりも施錠検出スイッチ50側に配置され、施錠側フック部材33の接続部33cに装着されている。このフック部側防護板71の外形形状は、防護板62とほぼ同じ形状であり、フック部側防護板71においても、施錠側フック部材33の回動を妨げないように構成されている。
変形例では、施錠検出スイッチ50とフック部33aとの間にもフック部側防護板71を配置することで、フック部33a側から侵入する雨水などから施錠検出スイッチ50の接点部分を保護することができる。これにより、より防水効果を高めることができる。さらに、防護カバー61のフック部33a側端部においても、フック部側防護板71との間で、水掛かり防止角度αを確保できれば、本実施形態と同様、防護カバー61のフック部33a側の長さをより短くすることができる。これにより、防護カバー61をより小さく構成することができる。
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。本実施形態では、かご側ロック機構30に、防護部60を設ける構成としたが、建屋側ロック機構230にも施錠検出スイッチがある場合には、同様に防護部60を設けることができる。
また、上述した実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成について他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。