JP6656055B2 - 電気機械変換器 - Google Patents

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Description

本発明は、電気機械変換器に関する。
帯電膜とそれに対向する対向電極との間で発生する静電誘導や静電気力のような静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器が知られている。
例えば、特許文献1には、半永久的に電荷を保持する性質を持つエレクトレット材料により略円盤型の第1基板上にそれぞれ面状にかつ互いに間隔を空けて形成された複数のエレクトレット電極と、略円盤型の第2基板上にエレクトレット電極と対向するように配置されたエレクトレット電極と略同型かつ同数の対向電極とを有する発電装置が記載されている。この発電装置は、回転軸の周りに第2基板を回転させることでエレクトレット電極と対向電極とを相対移動させ、このとき両者の重なり面積が変化することによって生じる静電誘導を利用して発電する。
また、特許文献2には、Si基板の表面にウェット酸化によりK+イオンを含むSiO層を形成し、その基板を上下から電極で挟んでヒーターで加熱しながらバイアス電圧を印加して、K+イオンをSiO層の表面に移動させることで、K+イオンを含むSiO層のエレクトレットを備えたエレクトレット基板を形成する方法が記載されている。
特開2015−192577号公報 特開2014−049557号公報
例えば、互いに対向する複数の帯電膜と複数の対向電極との一方を回転軸の周りに回転させることで静電誘導を利用して発電する電気機械変換器では、帯電膜と対向電極の面積が大きいほど、より大きな静電気力によってそれらが互いに引き寄せられる。この静電気力は、回転軸に伝わって回転軸と軸受けとの間に働く摩擦力を増加させるため、装置の変換効率、寿命などに悪影響を及ぼすおそれがある。
このことは、電気機械変換器が電力から動力を取り出すものである場合も同様である。極性が交互に切り替わる電圧を複数の対向電極に印加して、それらの対向電極と対向する複数の帯電膜との間で発生する静電気力により回転部材を回転させる電気機械変換器でも、帯電膜と対向電極の面積が大きいほど、それらの間に働く静電気力は大きくなる。このため、回転軸と軸受けとの間に働く摩擦力が増加して、同様に、装置の変換効率、寿命などに悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、静電的な相互作用により電気機械変換器の可動部材の移動方向に発生する力を極力変化させずに、移動方向に直交する方向に働く摩擦力を低減させることを目的とする。
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、可動支持部とともに移動可能な可動部材と、可動部材に対向して固定配置された固定基板と、可動部材と固定基板のうちの一方の同一面上に、可動部材の移動方向に間隔を空けて移動方向に配置された複数の帯電部と、可動部材と固定基板のうちの他方における複数の帯電部に対向する面上に、移動方向に配置された複数の対向電極とを有し、複数の帯電部のそれぞれは、複数の帯電領域に分割されており、個々の帯電部における複数の帯電領域の面積の合計がその帯電部の総面積よりも小さいことを特徴とする電気機械変換器が提供される。
上記の電気機械変換器では、個々の帯電部における複数の帯電領域は、共通のシリコン基板上に形成されていることが好ましい。
上記の電気機械変換器では、個々の帯電部における複数の帯電領域の面積は、その帯電部の総面積の50%〜70%であることが好ましい。
上記の電気機械変換器では、可動部材は、可動支持部である回転軸の周りに回転可能な回転部材であり、個々の帯電部における複数の帯電領域は、その帯電部上で回転軸を中心として放射状に配置されているか、あるいは、その帯電部上で格子状に配置されていることが好ましい。
上記の電気機械変換器は、極性が交互に切り替わる電圧を複数の対向電極に印加して、複数の帯電部と複数の対向電極との間で発生する静電気力により可動部材を移動させる駆動部をさらに有することが好ましい。
上記の電気機械変換器は、可動部材の移動に応じて複数の帯電部と複数の対向電極との間で静電誘導により発生した電力を蓄積する蓄電部をさらに有することが好ましい。
上記の電気機械変換器によれば、静電的な相互作用により可動部材の移動方向に発生する力を極力変化させずに、移動方向に直交する方向に働く摩擦力を低減させることが可能である。
電気機械変換器1の概略構成図である。 アクチュエータ10の斜視図である。 回転部材12の部分拡大図である。 エレクトレット部14の製造工程を説明するための図である。 エレクトレット部14の面積比とアクチュエータ10で発生する力の大きさとの関係を示すグラフである。 電気機械変換器2の概略構成図である。 発電部10’の斜視図である。 別のエレクトレット部14Aを有する回転部材12の部分拡大図である。 別のエレクトレット部14Bを有する回転部材12の部分拡大図である。 さらに別のエレクトレット部14Cを有する回転部材12の部分拡大図である。 さらに別のエレクトレット部14Dを有する回転部材12の部分拡大図である。 さらに別のエレクトレット部14A’を有する回転部材12の部分拡大図である。 さらに別のエレクトレット部14A’’を有する回転部材12の部分拡大図である。
以下、図面を参照して、電気機械変換器について詳細に説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
図1は、電気機械変換器1の概略構成図である。また、図2は、アクチュエータ10の斜視図である。電気機械変換器1は、アクチュエータ10および駆動部20を有する。アクチュエータ10は、主要な構成要素として、回転軸11、回転部材12、固定基板13、エレクトレット部14および対向電極15,16を有する。電気機械変換器1は、駆動部20に入力された電気信号をもとに、エレクトレット部14と対向電極15,16との間の静電気力を利用して回転部材12を回転させることにより、電力から動力を取り出すモータである。
回転軸11は、可動支持部の一例であり、回転部材12の回転中心となる軸である。その上下端は、軸受けを介して、図示しない電気機械変換器1の筐体に固定されている。
回転部材12は、可動部材の一例であり、金属、ガラスまたはシリコン基板などの周知の基板材料で構成される。回転部材12は、例えば円板状の形状を有し、その中心で回転軸11に接続している。回転部材12は、駆動部20に入力された電気信号に応じてエレクトレット部14と対向電極15,16との間で発生する静電気力により、回転軸11の周りを、図2の矢印C方向(すなわち、時計回りおよび反時計回り)に回転可能である。回転部材12には、重量を軽くするために、円周方向に沿って等間隔に、略台形状の複数の貫通孔122が形成されている。
固定基板13は、ガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成された部材である。固定基板13は、例えば円板状の形状を有し、回転部材12の下側で回転部材12に対向して配置され、その中心を回転軸11が貫通している。ただし、固定基板13は、回転部材12とは異なり、回転可能な部材ではなく、電気機械変換器1の筐体に対して固定されている。
エレクトレット部14は、帯電層を備えた帯電部の一例であり、固定基板13に対向する回転部材12の下面121に形成されている。アクチュエータ10では、回転部材12の下面121に、略台形状の複数のエレクトレット部14が、略台形状の貫通孔122を間に挟んで、回転部材12の回転方向に間隔を空けて回転軸11の周りに等間隔に配置されている。
対向電極15,16は、回転部材12に対向する固定基板13の上面131に形成されている。アクチュエータ10では、固定基板13の上面131に、エレクトレット部14と同じ略台形状の対向電極15,16が、回転軸11の周りに交互に配置されている。エレクトレット部14と対向電極15の個数、およびエレクトレット部14と対向電極16の個数は、それぞれ同じである。
なお、エレクトレット部14は回転部材12と固定基板13のいずれか一方に配置し、対向電極15,16は回転部材12と固定基板13のうちの他方に配置すればよい。このため、上記とは逆に、エレクトレット部14を固定基板13の上面131に配置し、対向電極15,16を回転部材12の下面121に配置してもよい。
駆動部20は、アクチュエータ10を駆動するための回路であり、クロック21および比較器22,23を有する。駆動部20は、極性が交互に切り替わる電圧を複数の対向電極15,16に印加して、複数のエレクトレット部14と複数の対向電極15,16との間で発生する静電気力により回転部材12を回転させる。
クロック21の出力は比較器22,23の入力に接続され、比較器22の出力は複数の対向電極15に、比較器23の出力は複数の対向電極16に、それぞれ接続されている。比較器22,23は、それぞれクロック21からの入力信号の電位と接地電位とを比較し、その結果を2値で出力するが、比較器22,23の出力信号は互いに逆の符号である。クロック21からの入力信号がHのときには、対向電極15は+V、対向電極16は−Vの電位になり、入力信号がLのときには、対向電極15は−V、対向電極16は+Vの電位になる。こうして、駆動部20は、極性が交互に切り替わる電圧を対向電極15と対向電極16の間に印加する。
例えば、エレクトレット部14と対向電極15とが対向しているときに、エレクトレット部14と対向電極15とが同じ極性を、エレクトレット部14と対向電極16とが互いに逆の極性を有したとする。このとき、エレクトレット部14と対向電極15との間には斥力が、エレクトレット部14と対向電極16との間には引力がそれぞれ働くため、これらの力に起因して回転部材12は回転する。続いて、エレクトレット部14と対向電極16とが対向したときに対向電極15,16の極性を切り換えると、エレクトレット部14と対向電極16との間には斥力が、エレクトレット部14と対向電極15との間には引力がそれぞれ働くため、これらの力に起因して回転部材12はさらに回転する。
こうして、対向電極15,16の極性を交互に切り替えることにより、回転部材12を回転させることができる。電気機械変換器1は、小型で厚さも薄く、消費電力も少ないことから、微小機械用のモータとして利用可能である。
図3は、回転部材12の部分拡大図である。図3では、回転部材12の下面121において、3つのエレクトレット部14と3つの貫通孔122が形成されている部分を拡大して示している。
個々のエレクトレット部14は、複数の対向電極15,16に対応する略台形の外形141を有する。また、個々のエレクトレット部14には、回転軸11を中心として放射状に(径方向に)延びる複数の溝部143が形成されている。個々のエレクトレット部14は、複数の溝部143によって、径方向に延びる複数の縞状の帯電領域142に分割されている。帯電領域142は、図3では白色で示す領域であり、エレクトレット部14上で回転軸11を中心として放射状に配置されている。
個々のエレクトレット部14における複数の帯電領域142の面積の合計は、複数の溝部143の分だけ、外形141で囲まれるエレクトレット部14の総面積よりも小さい。また、個々のエレクトレット部14の外形141は、個々の対向電極15,16の外形と同じである。したがって、個々のエレクトレット部14における複数の帯電領域142の総面積は、個々の対向電極15,16の面積よりも小さい。特に、個々のエレクトレット部14における複数の帯電領域142の面積は、そのエレクトレット部14の総面積の50%〜70%であることが好ましい。
図4(A)〜図4(F)は、エレクトレット部14の製造工程を説明するための図である。
エレクトレット部14の製造時には、まず、図4(A)に示すように、例えばSi(シリコン)基板41上の複数箇所を深堀エッチングで掘ることにより、Si基板41に複数の溝部143を形成する。Si基板41の上面は、複数の溝部143によって、後に複数の帯電領域142となる部分に分割される。その後、図4(B)に示すように、Si基板41上の溝部143以外の部分に被覆層42として樹脂層または酸化膜(SiO層)を形成し、被覆層42にコロナ放電で電子を打ち込むことにより、被覆層42を帯電させる。図4(B)の記号「−」は電子を表す。
あるいは、図4(C)に示すように、K+イオンを含む水蒸気雰囲気でSi基板41上に酸化膜43を形成して、酸化膜43にK+イオンを浸透させた後で、図4(D)に示すように、Si基板41上の複数箇所を深堀エッチングで掘ることにより、Si基板41に複数の溝部143を形成してもよい。Si基板41の上面は、複数の溝部143によって、後に複数の帯電領域142となる部分に分割される。続いて、図4(E)に示すように、Si基板41に電極44,45を介して高電圧を掛けることで、K+イオンを酸化膜43の上面に移動させ、上面から飛散させる。なお、図4(C)〜図4(F)の記号「+」はK+イオンを表し、「−」はSiO−イオンを表す。
こうして、図4(F)に示すように、Si基板41上の帯電膜46が複数の溝部143によって複数の帯電領域142に分割され、共通のSi基板41上に複数の帯電領域142が形成されたエレクトレット部14が得られる。
図5は、エレクトレット部14の面積比とアクチュエータ10で発生する力の大きさとの関係を示すグラフである。グラフの横軸rは、各エレクトレット部14の総面積に対する帯電領域142の面積の比率を表し、グラフの縦軸Fは、駆動部20でアクチュエータ10を駆動したときに発生する力の大きさを表す。縦軸の力の大きさは、溝部143がなく帯電領域142の面積が100%の場合の値を1として規格化した値で示している。また、曲線Aは、発生する力のうちで円周方向の成分(駆動力)を、曲線Bは、発生する力のうちで軸方向の成分を、それぞれプロットしたものである。
電気機械変換器1では、エレクトレット部14の帯電領域142を縞状にしているため、1つのエレクトレット膜における帯電領域142の面積比は、各帯電領域142の幅に応じて100%よりも小さい値になる。この面積比が小さくなるにつれて、エレクトレット部14の帯電領域142と対向電極15,16との間に働く引力と斥力も小さくなる。このため、図5のグラフに示すように、円周方向の駆動力と軸方向の力は、帯電領域142の面積比とともに両方とも減少する。
しかしながら、エレクトレット部14の全面が円周方向の駆動力の発生に寄与しているわけではないので、帯電領域142の面積比が減少したときの円周方向の駆動力の減少率は、軸方向の力の減少率に比べて小さい。特に、帯電領域142の面積比が50〜70%(r=0.5〜0.7)の間では、面積比が減少すると軸方向の力(曲線B)は面積比にほぼ比例して単調に減少していくのに対し、円周方向の駆動力(曲線A)は、80%程度を保ったままほとんど減少しない。
電気機械変換器としての変換効率を損なわないためには、円周方向の駆動力の大きさは、帯電領域142の面積比が100%のときと比べて80%程度以上であることが好ましい。図5のグラフから、帯電領域142の面積比を50〜70%にすれば、帯電領域142の面積比が100%のときと比べて、80%程度の駆動力は確保でき、しかも軸方向の力を60%程度以下に抑えることができる。帯電領域142の面積比が50〜70%の範囲内であれば、円周方向の駆動力の減少率に対して軸方向の力の減少率が大きいので、回転軸11と軸受けとの間の摩擦力は相対的に小さくなる。帯電領域142の面積比がこの範囲であることにより、円周方向の駆動力と軸方向の力とのバランスが最適となるので、電気機械変換器1の変換効率は、帯電領域142の面積比が100%の場合と比べて向上する。
なお、上記では、回転部材12の片面にエレクトレット部14を有する例を示したが、回転部材12の両面にエレクトレット部14を有し、回転部材12の上下にそれぞれ固定基板13を有する構造にしてもよい。このように、回転部材12の両面にエレクトレット部14を有する場合には、軸方向の力が両面で相殺するように、それぞれの面の帯電領域の面積比を同等にすることが好ましい。
図6は、電気機械変換器2の概略構成図である。また、図7は、発電部10’の斜視図である。電気機械変換器2は、発電部10’および蓄電部30を有する。発電部10’は、主要な構成要素として、回転軸11、回転部材12、固定基板13、エレクトレット部14、対向電極15,16および回転錘17を有する。電気機械変換器2は、外部環境の運動エネルギーを用いて回転部材12を回転させ、発電部10’内で静電誘導により静電気を発生させることにより、動力から電力を取り出す発電装置である。
発電部10’の構成要素のうち、回転軸11、回転部材12、固定基板13およびエレクトレット部14、対向電極15,16は、アクチュエータ10のものと同じである。電気機械変換器2が電気機械変換器1と異なるのは、対向電極15,16に接続される蓄電部30のみである。
発電部10’のエレクトレット部14も、アクチュエータ10のものと同様に、回転部材12の下面121において、図3に示したように、複数の溝部143によって、径方向に延びる複数の縞状の帯電領域142に分割されている。また、個々のエレクトレット部14における複数の帯電領域142の面積は、そのエレクトレット部14の総面積の50%〜70%である。
対向電極15,16は、回転部材12に対向する固定基板13の上面131に形成されている。発電部10’では、固定基板13の上面131に、エレクトレット部14と同じ略台形状かつ同数の対向電極15,16が、回転軸11の周りに等間隔に配置されている。これらの対向電極15,16は、それぞれ電気配線によって蓄電部30に接続されている。
回転錘17は、回転軸11の周りを図7の矢印C方向に回転可能な、重量バランスの偏りを有する錘であり、回転部材12の上側に配置されている。回転錘17は、外部環境の運動エネルギーによって回転駆動されて、この回転駆動の動力により、回転部材12を矢印C方向に回転させる。なお、回転軸11に回転錘17を取り付ける代わりに、回転部材12に錘を取り付けて、回転部材12自体を回転錘としてもよい。
発電部10’のエネルギー源は、例えば、電気機械変換器2を携帯する人体の運動、または電気機械変換器2が取り付けられた機械などの振動である。この「振動」には、規則的な振動に限らず、不規則的な振動も含まれる。また、電気機械変換器2の場合、「回転」には、一方向の回転に限らず、回転振動および揺動運動も含まれる。
回転錘17が回転駆動されると、それに伴い、回転部材12が回転して、エレクトレット部14と対向電極15,16の間の重なり面積が増減する。例えば、エレクトレット部14の内面に負電荷が保持されているとすると、回転部材12の回転に伴い、対向電極15,16に引き寄せられる正電荷が増減して、対向電極15と対向電極16の間に交流電流が発生する。このようにして電流を発生させることにより、発電部10’は静電誘導を利用した発電を行う。
蓄電部30は、回転部材12の回転に応じて複数のエレクトレット部14と複数の対向電極15,16との間で静電誘導により発生した電力を蓄積する。蓄電部30は、整流回路31および二次電池32を有する。対向電極15と対向電極16からの出力は整流回路31に接続され、整流回路31は二次電池32に接続されている。整流回路31は、対向電極15と対向電極16の間で生成された電流を整流するための、4個のダイオードを有するブリッジ式の回路である。二次電池32は、リチウム二次電池などの充放電可能な電池であり、発電部10’によって発電された電力を蓄積する。二次電池32は、この電力を消費して動作する図示しない駆動対象の回路に、必要に応じて電力を供給する。
エレクトレット部14の面積比と発電部10’で発生する力との関係は、図5に示した電気機械変換器1の場合と同様である。すなわち、発電部10’でも、エレクトレット部14の総面積に対する帯電領域142の面積比を50〜70%にすることにより、その面積比が100%のときと比べて、回転軸11の方向に働く力を60%程度以下に抑えることができる。したがって、回転軸11と軸受けとの間の摩擦力が相対的に小さくなるので、電気機械変換器2の変換効率も、帯電領域142の面積比が100%の場合と比べて向上する。
図8〜図11は、それぞれ、別のエレクトレット部14A〜14Dを有する回転部材12の部分拡大図である。エレクトレット部14A〜14Dの外形141A〜141Dは、いずれも、エレクトレット部14の外形141と同じ略台形状である。しかしながら、アクチュエータ10および発電部10’のエレクトレット部14における帯電領域142のパターンは、図3に示した径方向に直線状に延びるものに限らず、図8〜図11に示すような別のパターンであってもよい。
図8に示すエレクトレット部14Aでは、エレクトレット部14と同様に、径方向に直線状に延びる複数の溝部143Aが形成され、それらの間に直線状の帯電領域142Aが形成されているが、径方向の中間で溝部143Aおよび帯電領域142Aの本数が変化している。回転部材12の外周側に近付くにつれて円周方向の幅が広くなることから、エレクトレット膜に直線状の溝部および帯電領域を形成する場合には、それらの本数を、径方向の全域で同一にせず、外周側に近付くほど多くしてもよい。このように、内周側の溝を広く、外周側の溝を狭くしても、回転軸方向の摩擦力を低減させる効果は変わらず、製作が容易になる。
図9に示すエレクトレット部14Bでは、複数の矩形の溝部143Bと、複数の矩形の帯電領域142Bとが、市松模様を形成するように配置されている。このように、個々のエレクトレット部における複数の帯電領域は、そのエレクトレット部上で格子状に配置されていてもよい。このように、エレクトレット部を市松模様状に配置すると、回転部材が回転した際に帯電領域と対向電極との重なり部分の変化が滑らかになり、滑らかな動作が可能になる。
図10に示すエレクトレット部14Cでは、複数の楕円形の溝部143Cが一様に配置されており、それらの間に帯電領域142Cが形成されている。このようにすると、市松模様としたときと同様に帯電領域と対向電極との重なり部分の変化が滑らかとなり、滑らかな動作が可能になるとともに、隣り合った帯電領域が繋がるので、帯電が一定になりやすい。
図11に示すエレクトレット部14Dでは、径方向に波線状に延びる複数の溝部143Dが形成され、それらの間に同じ波線状の帯電領域142Dが形成されている。このようにすると、回転部材が回転した際に帯電領域と対向電極との重なり部分の変化が滑らかとなり、滑らかな動作が可能になる。このように、各エレクトレット部の帯電領域の形状は、矩形または直線上のものに限らず、どのような形状でもよい。
図12に示すエレクトレット部14A’では、エレクトレット部14と同様に、径方向に直線状に延びる複数の溝部143A’が形成され、それらの間に直線状の帯電領域142A’が形成されているが、径方向で溝部143A’および帯電領域142A’の割合が変化している。このように、径方向の位置によって帯電領域の割合に変化があってもよく、同様に回転軸方向の摩擦力を低減させる効果を期待できる。
図13に示すエレクトレット部14A’’では、エレクトレット部14と同様に、径方向に直線状に延びる複数の溝部143A’’が形成され、それらの間に直線状の帯電領域142A’’が形成されているが、円周方向の位置によって溝部143A’’および帯電領域142A’’の割合(円周方向の幅)が変化している。このように、円周方向に帯電領域の割合に変化があってもよく、同様に回転軸方向の摩擦力を低減させる効果が期待できる。
また、必ずしも回転部材12上のすべてのエレクトレット部で帯電領域の形状は同一でなくてもよく、エレクトレット部ごとに帯電領域の形状は異なっていてもよい。その場合には、例えば、図3および図8〜図13に示した複数のパターンの組合せを用いてもよい。
なお、図3、図8、図12および図13では、複数の溝部はすべて径方向に延びている。これらの例とは異なり、溝部が円周方向に沿って同心円状に形成されている場合には、単にエレクトレット部の面積が小さくなるだけであり、駆動力と軸方向力の両方が同じ割合で小さくなるので、回転部材の回転方向に発生する力を変化させずに回転軸方向の摩擦力を低減させる効果は得られない。
また、可動部材と固定基板は、円形に限らず、四角形などの他の形状でもよい。例えば、電気機械変換器は、箱型の固定子と、固定子の底面に配置された固定基板と、固定基板の上方で固定子に対して左右方向に移動可能な矩形の可動部材と、可動部材を移動可能に支持する可動支持部とを有し、可動部材の底面にその移動方向と直交する方向に帯状の複数の帯電部が形成され、固定基板の上面に各帯電部と平行に帯状の複数の対向電極が形成されたものであってもよい。この場合でも、各帯電部を、可動部材の移動方向と直交する方向に延びる複数の帯電領域に分割することで、可動部材の移動方向に発生する力を変化させずに、移動方向に直交する方向に働く摩擦力を低減させることが可能である。
また、エレクトレット部の各帯電部は、必ずしも溝部によって複数の帯電領域に分割されていなくてもよい。例えば、各帯電部の複数箇所をマスキングしたり、あるいは何らかの非帯電部材を間に挟んだりすることにより、複数の帯電領域を形成してもよい。
1,2 電気機械変換器
10 アクチュエータ
10’ 発電部
11 回転軸
12 回転部材
13 固定基板
14,14A,14A’,14A’’,14B,14C,14D エレクトレット部
141,141A,141B,141C,141D 外形
142,142A,142A’,142A’’,142B,142C,142D 帯電領域
143,143A,143A’,143A’’,143B,143C,143D 溝部
15,16 対向電極
20 駆動部
30 蓄電部

Claims (7)

  1. 帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
    可動支持部とともに移動可能な可動部材と、
    前記可動部材に対向して固定配置された固定基板と、
    前記可動部材と前記固定基板のうちの一方の同一面上に、前記可動部材の移動方向に間隔を空けて前記移動方向に配置された複数の帯電部と、
    前記可動部材と前記固定基板のうちの他方における前記複数の帯電部に対向する面上に、前記移動方向に配置された複数の対向電極と、を有し、
    前記複数の帯電部は前記複数の対向電極にそれぞれ対応する外形および大きさを有し、
    個々の帯電部は前記移動方向に交互に配置された帯電領域と非帯電領域とで構成され
    個々の帯電部における前記電領域の面積の合計が当該帯電部の総面積よりも小さい
    ことを特徴とする電気機械変換器。
  2. 個々の帯電部における前記帯電領域は前記非帯電領域によって複数に分割されており、
    個々の帯電部における前記複数の帯電領域は、共通のシリコン基板上に形成されている、請求項1に記載の電気機械変換器。
  3. 個々の帯電部における前記複数の帯電領域の面積は、当該帯電部の総面積の50%〜70%である、請求項に記載の電気機械変換器。
  4. 前記可動部材は、前記可動支持部である回転軸の周りに回転可能な回転部材であり、
    個々の帯電部における前記複数の帯電領域は、当該帯電部上で前記回転軸を中心として放射状に配置されている、請求項2または3に記載の電気機械変換器。
  5. 個々の帯電部における前記複数の帯電領域は、当該帯電部上で格子状に配置されている、請求項2または3記載の電気機械変換器。
  6. 極性が交互に切り替わる電圧を前記複数の対向電極に印加して、前記複数の帯電部と前記複数の対向電極との間で発生する静電気力により前記可動部材を移動させる駆動部をさらに有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
  7. 前記可動部材の移動に応じて前記複数の帯電部と前記複数の対向電極との間で静電誘導により発生した電力を蓄積する蓄電部をさらに有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
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