以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る自動水栓の斜視図である。図2は、図1の自動水栓の縦断面図である。図3は、図1の自動水栓を設置台に設置した状態を示す正面図である。図4は、図1の自動水栓を設置台に設置した状態を一部断面で示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る自動水栓1は、基部2と、管部3と、吐水部4とを備えている。
基部2は、図3及び図4に示すように、設置台の一例であるシンクSに立設するように取り付けられる部分である。本実施形態において、基部2は、図4に示すように、基端部2aがシンクSの後方上部に取り付けられている。
本実施形態において、基部2の基端部2aには、基部2を回転自在に支持する支持部5が設けられている。基部2の基端部2a及び支持部5は、略円筒形状に形成されている。支持部5は、シンクSの後方上部に固定されている。基部2の基端部2aは、支持部5の外周面5a上を回転自在に取り付けられている。基部2が支持部5を回転軸として回転することで、基部2、管部3、及び吐水部4が一体的に回転する。
基部2には、操作パネル6が取り付けられている。本実施形態において、基部2は、下方に向かって外径が広がるようにテーパ状に形成された拡径部21を有している。操作パネル6は、図1に示すように、外面6aが管部3の基部2に隣接する外面3cに対して面一(flush)になるように、拡径部21に埋め込まれている。これにより、操作パネル6と管部3との間には段差がなく、清掃性が向上する。また、操作パネル6は、基部2の内側に突出している。
操作パネル6の外周部には、図2に示すように、基部2との隙間をシールするパッキン61が設けられている。本実施形態において、パッキン61は、操作パネル6の外周部の全周を囲むように環状に形成されている。
操作パネル6の外面6aには、図1に示すように、各種操作を行う操作ボタン62が設けられている。操作ボタン62は、例えば、吐水量変更ボタン、吐水温度変更ボタン、自動吐水モード入切ボタンなどのボタンである。吐水量変更ボタンは、吐水部4から吐出される吐水量を設定するためのボタンである。吐水温度変更ボタンは、吐水部4から吐出される水の温度を設定するためのボタンである。自動吐水モード入切ボタンは、自動吐水モードの入切(ON/OFF)を切り替えるためのボタンである。自動吐水モードでは、常時又は間欠的に吐水部4の下方の検知エリアに箸やスプーン等の検知対象物が存在するか否かを検知する。検知エリアに検知対象物が存在する場合、自動で吐水部4から水が吐出される。一方、検知エリアに検知対象物が存在しない場合、吐水部4から水が吐出されない。
また、基部2は、拡径部21の下端部21aから鈍角に屈曲し、基部2の基端部2aに向かって外径が小さくなる縮径部22を有している。縮径部22は、拡径部21よりも上下方向の長さが短く形成されている。縮径部22の下端部22aは、鈍角に屈曲し、基部2の基端部2aと接続されている。すなわち、基部2は、直角又は鋭角に屈曲する部分を有さないように構成されている。これにより、清掃性が向上する。
管部3は、U字形の筒状部材で構成されている。ここで、「U字形」とは、弓状に湾曲するものをいい、湾曲の程度は問わない。管部3の基端部3aは、基部2の先端部2bに接続されている。本実施形態において、管部3と基部2とは、それぞれの外面が滑らかに接続されるように一体に形成されている。すなわち、図1に示すように、管部3と基部2との間に継ぎ目がないように同一部材により構成されている。これにより、清掃性が向上する。
吐水部4は、下方に向けて水を吐出する部分である。本実施形態において、吐水部4は、管部3の先端部3bに着脱自在に接続されている。吐水部4の先端部4aには、水を吐出する吐水口4bが形成されている。吐水口4bは、シンクSに対向する位置に設けられている。吐水口4bからシンクS内へ水を吐出することにより、シンクS内の食器や調理器具、食材等の被洗浄物を洗浄することができる。
また、管部3及び基部2の内側には、図2に示すように、内部に水が流れるホース7が配置されている。本実施形態において、ホース7は、可撓性を有する蛇腹ホースである。ホース7の先端部7aは、略円筒形状の接続具71に接続されている。接続具71は、管部3の先端部3bに着脱自在に取り付けられるとともに、吐水部4に固定されている。これにより、吐水部4を管部3の先端部3bから取り外した際、ホース7が管部3の内側から引き出される。ホース7を流れる水は、接続具71の内側及び吐水部4の内側を通じて吐水口4bから吐出される。
ホース7は、分離管8に内包されている。分離管8は、ホース7よりも外径が大きく、ホース7が分離管8の内側を延在方向に移動可能に収容する。分離管8は、基部2の内側から管部3の先端部3bの内側まで延在するように形成されている。本実施形態において、分離管8の基端部8aは、支持部5よりも下方に伸びるように構成されている。分離管8の先端部8bは、管部3の先端部3bの内側で固定されている。管部3の先端部3bには、分離管8と管部3との隙間をシールするパッキン81が設けられている。これにより、分離管8と管部3との隙間から水が浸入することが抑えられている。すなわち、分離管8の外側と管部3の内側との間の空間は、ドライエリアとなっている。一方、分離管8の内側の空間は、水が流れるホース7が通るウエットエリアとなっている。すなわち、分離管8は、ドライエリアとウエットエリアとを分離するものである。
分離管8は、図2に示すように、吐水部4側の部分が、硬質部材82で構成されている。本実施形態において、硬質部材82は、管部3の先端部3bから基端部3aの近傍まで延在するように設けられている。すなわち、硬質部材82は、管部3の湾曲部分に配置されている。これにより、分離管8の変形が抑えられるので、分離管8と管部3との隙間寸法が保持される。
前述したパッキン81は、図5に示すように、硬質部材82の先端部82bの周囲に取り付けられる。分離管8と管部3との隙間寸法の変化が抑えられているので、分離管8と管部3との隙間をパッキン81がしっかりとシールすることができる。
硬質部材82の上部には、図5に示すように、溝部82cが形成されている。溝部82cには、信号線(後述する第1の配線35および第2の配線36)などの電装部品が収容される。すなわち、信号線などの電装部品は、分離管8の外側のドライエリアに配置され、水濡れすることを抑えられている。
また、硬質部材82の内側は、摺動性の高い材質、例えば、ポリアセタールで構成されている。これにより、ホース7を管部3から引き出して使用する際、ホース7と硬質部材82とが接触する音を抑えることができる。
分離管8の基部2側の部分は、図2に示すように、可撓性部材83で構成されている。可撓性部材83は、例えば、ポリエチレンで構成されている。本実施形態において、可撓性部材83は、基部2に固定されている。より具体的には、可撓性部材83は、基部2の内側に突出する操作パネル6を避けるように、基部2の操作パネル6と対向する面に沿うように固定されている。可撓性部材83と基部2とは、例えば、ネジやボルトなどの締結部材により固定されている。これにより、可撓性部材83が延在方向に引き抜かれることが抑えられている。
また、本実施形態において、可撓性部材83は、図6に示すように、硬質部材82の基端部82aと接続される先端部83bの近傍部分が蛇腹状に形成されている。また、可撓性部材83は、図2に示すように、支持部5の先端部5bの近傍部分が蛇腹状に形成されている。すなわち、可撓性部材83は、先端部83bの近傍部分及び支持部5の先端部5bの近傍部分の可撓性が向上されている。これにより、可撓性部材83は、より容易に、基部2の操作パネル6と対向する面に沿うように固定することができる。
また、管部3の先端部3bの側方(基部2側)には、図2及び図7に示すように、電波を送受信する電波センサ9が設けられている。電波センサ9は、図7に示すように、センサ収納部91内に収納されて管部3に取り付けられている。
センサ収納部91は、管部3の先端部3bにおける背面側(裏面側)に取り付けられている。このような配置により、電波センサ9を吐水部4近傍に配置して、電波センサ9の検知精度を向上させることができる。
また、センサ収納部91は、樹脂により構成されている。センサ収納部91の電波センサ9を囲む側壁91aの内面には、図7及び図8に示すように、金属層の一例である金属メッキ91bが設けられている。金属メッキ91bは、例えば、クロムメッキである。この金属メッキ91bにより、電波センサ9の電波が含む拡散方向の成分が反射され、電波センサ9の電波の幅方向の広がりが抑えられ、当該電波の指向性が向上する。
なお、本実施形態では、基部2、管部3およびセンサ収納部91の外周部は全て金属によってメッキされ、金属で被覆されている。これにより、基部2および管部3の内側と外側において、電波が遮断された状態となる。
センサ収納部91の側壁91aの厚さは、例えば、1.5mm〜3.0mmである。また、金属メッキ91bの厚さは、例えば、0.04mmである。金属メッキ91bの厚さは、側壁91aの厚さに比べて非常に薄いので、センサ収納部91の全体としての厚さの増加を抑えることができる。
本実施形態において、センサ収納部91の側壁91aは、図8に示すように、電波の送受信方向に対して直交する方向の断面がU字形に形成されている。ここで、「U字形」とは、弓状に湾曲するもののみならず、3つの直線で構成されるものも含む。
金属メッキ91bは、センサ収納部91の側壁91aに沿うように断面U字形に形成されている。すなわち、管部3の先端部3bとセンサ収納部91との接続部分には、金属メッキ91bを設けないようにしている。これにより、電波センサ9から発信される電波は、吐水口4bに下方に配置される検知対象物となる物体により近づく方向に寄せられることになる。その結果、検知対象物となる物体の検知精度を向上させることができる。
管部3とセンサ収納部91とは、それぞれの外面が滑らかに接続されるように一体に形成されている。すなわち、図1に示すように、管部3とセンサ収納部91との間に継ぎ目がないように同一部材により構成されている。これにより、清掃性が向上する。
電波センサ9は、図7に示すように、吐水部4の下方に向けて電波を発信する発信部92と、吐水部4の下方に配置された物体によって反射された電波を受信する受信部93とを備えている。受信部93は、発信部92に隣接するように配置されている。本実施形態において、発信部92と受信部93とは、同一基板上に配置されている。電波センサ9は、吐水部4の下方に位置する検知エリアに検知対象物が存在するか否かを非接触で検知するとともに、発信部92が発信した電波の周波数と受信部93が受信した電波の周波数に基づいて検知対象物までの距離を測定可能なセンサである。
電波センサ9の下方には、電波センサ9から発信された電波の半値角を小さくするとともに、電波センサ9に向かう電波の半値角を小さくする集束レンズ94,95,97が設けられている。
より具体的には、発信部92の下方には、発信部92から発信された電波の半値角を小さくする発信用集束レンズ94が配置されている。受信部93の下方には、受信部93に受信される電波の半値角を小さくする受信用集束レンズ95が配置されている。電波センサ9は、吐水部4からの水の吐出方向と電波の送受信方向とが略平行になるように配置されている。
発信用集束レンズ94は、図7に示すように、発信用凸球面94aを備えている。発信用集束レンズ94は、発信部92から発信された電波を発信用凸球面94aにより屈折させることで、当該電波の半値角を小さくし、特定のエリアの電波の強度を強くするように機能する。受信用集束レンズ95は、受信用凸球面95aを備えている。受信用集束レンズ95は、物体によって反射されて入射した電波を受信用凸球面95aにより屈折させることで、当該電波の半値角を小さくし、受信部93に受信される電波の強度を強くするように機能する。その結果、発信部92から発信され受信部93に受信される電波は、図9に示すように、凹部96の中心を通り且つ電波の送受信方向に延在する軸Xに近づくように集束される。これにより、検知エリアE1は、電波の送受信方向に長くなり、軸X付近の電波の強度が強くなる。
発信用集束レンズ94及び受信用集束レンズ95の下方には、発信用集束レンズ94を通過した電波の半値角を小さくするとともに、受信用集束レンズ95に向かう電波の半値角を小さくする集束レンズ97が設けられている。集束レンズ97は、送受信用凸球面97aを備えている。集束レンズ97は、発信用集束レンズ94を通過した電波を送受信用凸球面97aにより屈折させることで、当該電波の半値角を小さくするように機能する。また、集束レンズ97は、受信用集束レンズ95に向かう電波を送受信用凸球面97aにより屈折させることで、当該電波の半値角を小さくするように機能する。その結果、発信部92から発信され受信部93に受信される電波は、図10に示すように、軸Xに、より近づくように集束される。これにより、検知エリアE2は、検知エリアE1よりも、電波の送受信方向に長くなり且つ軸X付近の電波の強度が強くなる。
また、本実施形態において、発信部92、受信部93、発信用集束レンズ94、受信用集束レンズ95、及び集束レンズ97は、図11に示す樹脂製のセンサケース98に収納されている。また、発信用集束レンズ94、受信用集束レンズ95、及び集束レンズ97は、少なくとも一部がセンサ収納部91の側壁91aに囲まれるように配置されている。
センサケース98は、図11に示すように、電波センサ9を収納する箱体部98Aと、接続具71(図7参照)を保持するための筒状部98Bとを備えている。図7に示すように、箱体部98Aはセンサ収納部91内に配置され、筒状部98Bは管部3の先端部3b内に配置される。
また、箱体部98Aの集束レンズ97に下方に位置する面98aは、電波透過性を有する材質、例えば、金属やカーボンをほとんど含有しない材質で構成されている。箱体部98Aの面98aは、電波透過性を有するカバーとして機能する。なお、面98aに塗装や蒸着を行うことによって、面98aが電波透過性を有するように構成してもよい。
センサケース98の周囲には、図7及び図11に示すように、管部3又はセンサ収納部91との隙間をシールするパッキン99が設けられている。本実施形態において、パッキン99は、センサケース98の外周部の全周を囲むように環状に形成されている。
発信用凸球面94aと受信用凸球面95aとは、図8に示すように、凹部96を通して互いに隣接するように設けられている。本実施形態において、発信用凸球面94aと受信用凸球面95aとは、吐水部4の口径(外径)よりも狭い範囲内に配置されるように、平面視において円形の一部を切り欠いた外形を有している。また、集束レンズ97は、発信用集束レンズ94及び受信用集束レンズ95を包含する大きさに形成されている。
また、電波センサ9は、図12に示すように、信号線100(第1の配線35)により制御部101に接続されている。また、制御部101には、信号線(図示せず)により操作パネル6に接続されている。制御部101は、電波センサ9が検知した検知情報と操作パネル6に入力された入力情報とに基づいて吐水部4から吐出される水を制御する。
より具体的には、制御部101は、発信部92が発信した電波と受信部93が受信した電波とに基づいて吐水部4から吐出される吐水量を制御する。また、制御部101は、操作パネル6に入力された吐水量変更情報に基づいて吐水部4から吐出される吐水量を制御する。また、制御部101は、操作パネル6に入力された吐水温度変更情報に基づいて、吐水部4から吐出される水の温度を制御する。
本実施形態において、制御部101には、給湯量調整用の電動弁102と、給水量調整用の電動弁103と、電磁弁104とが電気的に接続されている。電動弁102は、湯が通る給湯管105に設けられている。電動弁103は、水が通る給水管106に設けられている。給湯管105と給水管106とは、湯と水とを混合した混合水が通る混合水管107と流体連通している。混合水管107は、電磁弁104を通してホース7と流体連通している。
制御部101は、操作パネル6に入力された入力情報に基づいて、電動弁102,103の開度を変更することで、給湯管105を通る湯の量及び給水管106を通る水の量を調整し、混合水管107を通る混合水の量及び温度を制御する。また、制御部101は、操作パネル6に入力された入力情報に基づいて、電磁弁104の開度を変更することで、混合水管107を通る混合水をホース7に供給するか否かを制御する。
なお、電波センサ9、操作パネル6、信号線100(第1の配線35)、制御部101を含む各種電装部品は、分離管8の外側に配置されている。これにより、それらの各種電装部品の水濡れが抑えられている。
また、図1、図2などに示すように、本実施形態の自動水栓1はさらに、スイッチ31と、赤外センサ32とを備える。スイッチ31は、自動水栓1に用いられる部品の一種である。本実施形態のスイッチ31は、電波センサ9のON/OFFを切り替えるための操作用部品である。スイッチ31は、管部3の先端部3bにおける正面側(ユーザに向かう側)に取り付けられている。これにより、ユーザがスイッチ31にアクセスしやすくなっている。赤外センサ32は、赤外線を利用して物体(例えばユーザの手)の動きを検知するセンサである。赤外センサ32は物体の動きを検知すると、吐水を命じる信号を制御部101に送信するように構成される。赤外センサ32は、管部3の中央部における上側に取り付けられている。スイッチ31および赤外センサ32はそれぞれ、管部3の外周部に設けられた貫通孔33、34(図2、図7)に嵌め込まれて管部3に取り付けられている。赤外センサ32を設けることで、ユーザは電波センサ9又は赤外センサ32を選択的に使用することができる。さらにスイッチ31を設けることで、電波センサ9および赤外センサ32を併用する場合と、赤外センサ32のみを使用する場合を選択することができる。
以下、スイッチ31および電波センサ9の周辺構成について、図7を用いて説明する。
図7に示すように、電波センサ9には、第1の配線35が接続されている。第1の配線35は、電波センサ9と制御部101を接続する配線である。電波センサ9による検知信号は、第1の配線35を介して制御部101に送信される。また、スイッチ31には、第2の配線36が接続されている。第2の配線36は、スイッチ31と制御部101を接続する配線である。スイッチ31による検知信号は、第2の配線36を介して制御部101に送信される。このような第1の配線35および第2の配線36を設けることにより、スイッチ31からの電波センサ9のON/OFF信号に応じて、電波センサ9のON/OFF制御を実施することができる。
第1の配線35は、センサケース98の上端部に設けられたコネクタ90によって、電波センサ9に接続されている。
図7に示すように、電波センサ9を収納するセンサ収納部91は、スイッチ31が取り付けられる管部3と連通している。具体的には、センサ収納部91は、管部3の先端部3bにおいて背面側に拡径した部分であり、センサ収納部91における電波センサ9を収容する空間と管部3の内部空間とが連通している。第1の配線35は連通箇所37を通り、分離管8の外周を回るように配置され、分離管8の上方に引き出される。第1の配線35は管部3の二重円環構造における外側の空間(分離管8と管部3の間のドライエリア)を通る。第1の配線35は、分離管8の上方において、前述した硬質部材82の溝部82cに収容されて、制御部101まで延びる。このように、第1の配線35を連通箇所37に通して配置することで、第1の配線35を配置する際の作業性を向上させるとともに、効率的なレイアウトを実現することができる。
スイッチ31に接続されている第2の配線36も同様に、分離管8の上方に引き出されて、硬質部材82の溝部82cに収容されて制御部101まで延びる。
このような構成において、貫通孔33を塞ぐように、後述する電波遮蔽部材42がスイッチ31に取り付けて設けられている。電波遮蔽部材42を設けることにより、電波センサ9によって送受信される電波が貫通孔33を通じて漏れることを抑制し、電波センサ9による誤検知を抑えるものである。電波遮蔽部材42については後述する。
次に、図13、図14を用いて、スイッチ31の構成について説明する。
図13に示すように、スイッチ31は、スイッチ31を貫通孔33に取り付けるための取付部38と、押下部39と、基板部40と、絶縁部41と、電波遮蔽部材42と、表示部43とを備える。
取付部38は、管部3の貫通孔33にスイッチ31を嵌め込んで取り付けるための部材である。本実施形態の取付部38は、爪部44と、フランジ部45と、立ち上がり部46とを備える。爪部44は、管部3の貫通孔33を形成する縁部に引っ掛かって係止される部材である。爪部44によって、スイッチ31の構成全体が管部3に取り付けて固定される。フランジ部45は、爪部44の基端部から周囲に向かって突出した鍔状の部材である。フランジ部45は、管部3の貫通孔33を形成する縁部を含む管部3の表面に重なるように配置される。フランジ部45によって、管部3の表面とスイッチ31の表面とが略面一となる。立ち上がり部46は、爪部44よりも内側において管部3の内側に向かって突出するように立ち上がる部材である。立ち上がり部46は、後述する基板部40、絶縁部41および電波遮蔽部材42を積層した状態で内側に嵌め込み、これらの部材を一体的に保持する。
押下部39は、ユーザによって押下される部分である。押下部39は、前述した取付部38によって管部3の内側あるいは外側に向かう方向に移動可能に保持されている。押下部39がユーザによって押下されると、内側に位置する基板部40に接触する。
基板部40は、押下部39による接触に応じて、自動水栓1の制御部101に信号(本実施形態では、電波センサ9のON/OFF信号)を送信可能な基板である。基板部40は板状に形成され、前述した立ち上がり部46によって端部が保持されている。基板部40は前述した第2の配線36(図7)に接続されており、第2の配線36を通じて制御部101との信号の送受信が可能に構成される。本実施形態の基板部40は樹脂材料によって構成される。
絶縁部41は、基板部40を水分等から保護するために、基板部40の裏面側に取り付けられる絶縁性材料で構成された部分である。絶縁部41は、基板部40と同様に板状に形成される。本実施形態の絶縁部41は、基板部40の裏面に液状の樹脂材料をポッティングして固めることによって接着される。すなわち、絶縁部41はポッティング材で構成される。
上述した基板部40および絶縁部41はともに樹脂材料で構成されており、押下部39および表示部43と同様に電波を透過する性質を有する。
電波遮蔽部材42は、絶縁部41の裏面に取り付けられた電波を遮蔽する部材である。電波遮蔽部材42は前述したように、貫通孔33を通じて電波が漏れることを抑えるためにスイッチ31に取り付けられる。本実施形態の電波遮蔽部材42は、電波を略反射する金属のプレートによって構成されている。電波遮蔽部材42の材質はこれに限らず、電波センサ9の誤検知を抑制できる程度に電波を遮蔽するものであれば、任意の材質であってもよい(例えば、カーボン繊維を含む不織布など)。図14に示すように、電波遮蔽部材42はその主面に直交する方向から見たときに略長方形状の外形を有する。貫通孔33も同様の略長方形状を有している。このように、電波遮蔽部材42はその主面に直交する方向から見たときに、貫通孔33に対向する位置に貫通孔33に対して重なるように設けられている。すなわち、電波遮蔽部材42は貫通孔33と略同じ大きさに設定されるとともに、貫通孔33を塞ぐ位置に配置されている。
また本実施形態では、基板部40の裏面にポッティング材を配置して固める過程で、当該ポッティング材に電波遮蔽部材42を接着させている。このように絶縁部41のポッティング材を利用して電波遮蔽部材42を接着配置することにより、接着剤や両面テープを別途用いることなく、電波遮蔽部材42を絶縁部41の裏面に配置することができる。
表示部43は、電波センサ9のON/OFFを表示するための部材である。表示部43は例えば、LEDで構成される。表示部43は、押下部39に隣接して設けられ、前述した取付部38に一体的に取り付けられている。表示部43は基板部40に接続されており、基板部40から受信する信号によって、表示と非表示(電波センサ9のONとOFF)を切替可能に構成される。
このような構成において、電波センサ9から出される電波は概ね下方又は斜め下方に向けられているが、一部は上方に回析したり、図7に示すセンサ収納部91の内周部あるいは外周部を構成する金属メッキによって上方に反射される。このような電波は、連通箇所37を通して管部3の内部に入る。前述したように、管部3は金属によって被覆されているため、管部3の内側から外側に電波は通過することなく、管部3の内部において反射を繰返す。電波は反射を繰り返しながら、管部3と分離管8の間の空間を通って、管部3の基端部3a側に伝達される。
管部3内を反射して伝達される電波は徐々に減衰するが、スイッチ31を取り付けるための貫通孔33は電波センサ9からの距離が近いため、電波の減衰が少ない。このような場合、スイッチ31の近傍にユーザが手を近づけたときに、貫通孔33を通じて漏れた電波により、電波センサ9が手の動きを検知して誤検知となり、それに応じて誤吐水が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態では、貫通孔33を塞ぐように、連通箇所37と貫通孔33の間を遮る位置に電波遮蔽部材42を設けている。これにより、貫通孔33を通じて電波が漏れることを抑制することができ、電波センサ9による誤検知を抑えることができる。特に、図7に示すように、スイッチ31および貫通孔33は、センサ収納部91と管部3との連通箇所37に対向する位置に設けられており、このような構成において電波遮蔽部材42を設けているため、誤検知をより効果的に抑えることができる。また、貫通孔33を塞ぐ位置に電波遮蔽部材42をプレート状に配置しているため、電波の漏れを効果的に抑えることができる。
なお、管部3において赤外センサ32や操作パネル6の操作ボタン62が取り付けられる箇所にも貫通孔(符号省略)が設けられているが、本実施形態では、電波センサ9から出される電波の強度を低く設定している。これにより、当該貫通孔を介した電波の誤検知を生じないようにしている。
上述したように、本実施形態の自動水栓1は、基部2と、管部3と、吐水部4と、電波センサ9と、センサ収納部91と、制御部101とを備える。基部2は、設置台(シンクS)に立設するように取り付けられる。管部3は、基部2の先端部2bに基端部3aが接続される。吐水部4は、管部3の先端部3bに接続され、水を吐出する。電波センサ9は、電波を送受信する。センサ収納部91は、電波センサ9を収納し、電波センサ9を収納する空間が管部3の内部に連通するように管部3に取り付けられる。制御部101は、電波センサ9が送受信した電波に基づいて吐水を制御する。管部3およびセンサ収納部91は金属で被覆されている。また、管部3の外周部には、部品(スイッチ31)を取り付けるための貫通孔33が形成されている。さらに、貫通孔33を塞ぐ位置に、電波を遮蔽する電波遮蔽部材42が設けられている。このような構成によれば、電波遮蔽部材42を設けることで、管部3の貫通孔33を通じて電波が漏れることを抑制し、電波センサ9による誤検知を抑えることができる。
また本実施形態の自動水栓1では、管部3において、センサ収納部91と管部3が連通する連通箇所37と貫通孔33は対向する位置に設けられる。このような位置に貫通孔33が設けられる場合に電波遮蔽部材42を設けることで、電波の漏れをより効果的に抑制することができ、電波センサ9の誤検知を抑えることができる。
また本実施形態の自動水栓1では、センサ収納部91と管部3が連通する連通箇所37には、電波センサ9と制御部101とを接続する第1の配線35が通される。このように、連通箇所37に第1の配線35を通すことで、第1の配線35を配置する際の作業性を向上させるとともに、効率的な配置を実現することができる。
また本実施形態の自動水栓1では、管部3は、U字形の形状を有し、部品(スイッチ31)は、吐水制御を操作するためのスイッチであり、部品が取り付けられる貫通孔33は、管部3の先端部3bの正面側に設置される。このような構成によれば、スイッチ31を管部3の正面側に配置することで、ユーザのアクセス性が良くなるため、ユーザの利便性を向上させることができる。
また本実施形態の自動水栓1では、スイッチ31は表面側から順に、押下部39と、基板部40と、絶縁部41とを備える。押下部39は、ユーザが押下する部分である。基板部40は、押下部39による押下の検知に応じて制御部101に信号を送信可能である。絶縁部41は、絶縁性材料により構成されて基板部40の裏面に取り付けられる。電波遮蔽部材42は、絶縁部41の裏面に取り付けられる。このような構成によれば、絶縁部41の裏面に電波遮蔽部材42を設けることにより、貫通孔33を通じて電波が漏れることを効率的に遮蔽することができ、スイッチ31の誤検知を抑えることができる。さらには、このようなスイッチ構成において、基板部40と電波遮蔽部材42の間に絶縁部41を配置することにより、基板部40と(導電性であることが多い)電波遮蔽部材42との通電を防止することができ、スイッチ31の誤検知をより抑えることができる。
また本実施形態の自動水栓1では、絶縁部41は、ポッティング材により構成され、電波遮蔽部材42は、ポッティング材によって絶縁部41に接着されている。このような構成によれば、絶縁部41をポッティング材により構成することで、絶縁部41に防水性を持たせて、基板部40を保護することができる。さらには、このような構成において、電波遮蔽部材42をポッティング材の絶縁部41に接着することで、基板部40の裏面にポッティング材を配置する過程で電波遮蔽部材42を絶縁部41に接着させることができる。これにより、電波遮蔽部材42を容易に設置することができる。
また本実施形態の自動水栓1では、センサ収納部91は、管部3の先端部3bの背面側に取り付けられる。このような構成によれば、センサ収納部91を管部3の先端部3bの背面側に取り付けることで、電波センサ9を吐水部4近傍に配置することができる。このため、検知対象物が置かれることが多い吐水部4近傍の電波を検知して、電波センサ9の検知精度を向上させることができる。
また本実施形態の自動水栓1では、部品(スイッチ31)は、電波センサ9のON/OFFを切り替えるスイッチである。このような構成によれば、電波センサ9のON/OFFスイッチを設けることで、ユーザは所望の場合に電波センサ9をON又はOFFにすることができるため、ユーザの利便性を向上させることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、センサ収納部91は、管部3と一体的に形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、センサ収納部91は、管部3と別体で形成されてもよく、またその場合、管部3と吐水部4にまたがるようにセンサ収納部が取り付けられてもよい。
また、前記では、自動水栓1の部品の一種として、電波センサ9のON/OFFを切り替えるスイッチ31を設ける場合について説明したが、このような場合に限らない。自動水栓1の各種部品であれば、任意の部品を設けてもよい。例えば、自動水栓1を接触あるいは非接触で操作するための操作用部品や、自動水栓1の状態等を表示する表示用部品や、ロゴ、マークなどであってもよい。このような場合でも、電波遮蔽部材42を設けることで、電波センサ9による誤検知を抑える効果を奏することができる。
また、前記では、スイッチ31の位置は管部3の先端部3bの正面側であって、かつ、センサ収納部91と管部3との連通箇所37に対向する位置に配置する場合について説明したが、このような場合に限らず、管部3であれば任意の位置に設けてもよい。このような場合でも、電波遮蔽部材42を設けることで、管部3の貫通孔33を通じて電波が漏れることを抑制し、電波センサ9による誤検知を抑えることができる。
また、前記では、スイッチ31に加えて赤外センサ32を設ける場合について説明したが、このような場合に限らず、赤外センサ32を設けない場合であってもよい。このような場合でも、電波センサ9を用いた吐水制御を継続して実施することができる。
また、前記では、スイッチ31の裏面側に電波遮蔽部材42を設ける場合について説明したが、このような場合に限らず例えば、スイッチ31の表面側に電波遮蔽部材を設けてもよい。具体的には、例えばスイッチ31の表面が樹脂製のシート状部材により構成される場合には、当該シート状部材に金属やカーボン繊維などの電波遮蔽材料を印刷して練り込むことで、電波遮蔽部材を設けてもよい。
また、前記では、スイッチ31に電波遮蔽部材42を取り付ける場合について説明したが、このような場合に限らず、貫通孔33を塞ぐ位置であれば、その他の構成に電波遮蔽部材42を取り付けてもよい。また、前記では、電波遮蔽部材42の大きさが貫通孔33の大きさと同じに設定され、電波遮蔽部材42が貫通孔33の全体を塞ぐ場合について説明したが、このような場合に限らず、異なる大きさに設定されてもよく、貫通孔33を少なくとも部分的に塞ぐようにすればよい。これにより、管部3の貫通孔33を通じて電波が漏れることを抑制し、電波センサ9による誤検知を抑える効果を奏することができる。
また、管部3において赤外センサ32および操作パネル6の操作ボタン62を取り付けるための貫通孔に対しても、電波遮蔽部材を設けもよい。これにより、特に電波センサ9から出される電波の強度を高く設定した場合には、電波センサ9による誤検知を抑えることができる。
また、前記では、絶縁部41はポッティング材によって構成される場合について説明したが、このような場合に限らず、絶縁性材料によって構成されていれば、任意の手法により基板部40の裏面に取り付けてもよい。
また、前記では、基部2、管部3、及びセンサ収納部91は、それぞれの外面が滑らかに接続されるように一体に形成されるものとしたが、本発明は、各部が同一の材料で構成されることのみに限定されない。
また、センサ収納部91は、図8に示すように、管部3の半径方向と平行な前後方向FBの長さが、当該前後方向FBと直交する横方向TRの長さよりも長いことが好ましい。この構成によれば、電波センサ9の電波は、横方向TRよりも前後方向FBに長く広がることになり、横方向TRへの電波の漏れを抑えて、誤検知の発生を抑えることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。