本実施形態の認知機能支援システムは、認知機能が低下した対象者と、この対象者の生活を支援する介護者とを使用者に含む。対象者は、認知症である人あるいは軽度認知障害である人のように継続的または一時的に認知機能が低下している人である。また、本実施形態の認知機能支援システムは介護施設で使用することを想定しているが、対象者が自宅で使用することも可能である。したがって、介護者は、介護施設における介護者あるいは対象者の自宅に訪問する介護者などである。以下に説明する構成例では、対象者が介護施設の入居者であり、介護者は介護施設において対象者の担当である場合を想定して説明する。ただし、この条件は一例であり、本実施形態の技術は、対象者が自宅で生活している場合、対象者がデイケアサービスを受けている場合など、様々な条件において使用することが可能である。
図1に示すように、認知機能支援システム10は、介護者が操作する第1装置11と、対象者が操作する第2装置12とを備える。第1装置11および第2装置12は、認知機能支援システム10に1台以上含まれていればよいが、第2装置12は、多くの場合、認知機能支援システム10に複数台含まれる。
第1装置11は入力部111および提示部112を備え、第2装置12は入力部121および提示部122を備える。入力部111、121は使用者が操作し、提示部112、122は使用者に情報を提示する。入力部111、121は、キーボード、マウス、タッチパネルなどから選択される。また、本実施形態では、提示部112、122は、視覚的に情報を提示する表示器を想定しているが、聴覚的に情報を提示するスピーカを用いると、視覚障害者に対しても情報を提示することが可能である。
本実施形態の認知機能支援システム10は、クライアントサーバシステムを構築する。図1に示す構成例では、第1装置11および第2装置12がクライアントであり、他にサーバ13を備えている。すなわち、第1装置11および第2装置12は端末装置である。したがって、サーバ13は第1装置11および第2装置12と通信する。
サーバ13は、1台のコンピュータで構成されるか、相互に通信可能な複数台のコンピュータで構成される。あるいは、サーバ13は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、認知機能支援システム10は、第1装置11とサーバ13とがハードウェアを共用する構成であってもよい。なお、認知機能支援システム10は、クライアントサーバシステムを構築せずに、第1装置11と第2装置12とが直接通信することにより情報を交換する構成であってもよい。本実施形態の構成例では、サーバ13が認知機能支援装置として機能する。
第1装置11は、主として介護者が使用する装置であって、パーソナルコンピュータを用いて実現される。すなわち、パーソナルコンピュータが、認知機能支援システム10のためのアプリケーションプログラムを実行することによって、第1装置11として機能する。第1装置11の提示部112はモニタ装置であり、第1装置11の入力部111はキーボード、マウスなどである。
第1装置11は、パーソナルコンピュータに代えてタブレット端末あるいはスマートフォンを用いて実現してもよい。タブレット端末あるいはスマートフォンは、パーソナルコンピュータと同様に、プログラムに従って動作するプロセッサを備えている。そのため、認知機能支援システム10のためのアプリケーションプログラム(いわゆる、アプリ)を実行することによって第1装置11として機能させることが可能である。第1装置11がタブレット端末あるいはスマートフォンである場合、提示部112は表示器であり、入力部111はタッチパネルである。
第2装置12は、対象者に関係付けられる装置であって、対象者が携行できるように無線通信が可能な端末装置を構成することが望ましい。第2装置12を構成するハードウェアには、たとえばスマートフォンが用いられる。すなわち、スマートフォンが認知機能支援システム10のためのアプリケーションプログラム(いわゆる、アプリ)を実行することにより、スマートフォンを第2装置12として機能させることが可能である。この場合、第2装置12の提示部122はスマートフォンの表示器であり、第2装置12の入力部121はスマートフォンのタッチパネルである。第2装置12は、携帯電話機、タブレット端末、携帯型ゲーム機などから選択される装置を用いて実現してもよい。
第1装置11および第2装置12は、パーソナルコンピュータ、スマートフォンのような汎用の装置ではなく、認知機能支援システム10のための専用の装置であってもよい。また、第2装置12は、必ずしも対象者が携行する構成である必要はなく、対象者が部屋あるいはベッドで使用する構成であってもよい。この場合、第2装置12は、無線通信ではなく有線通信を行う構成であってもよい。
本実施形態の認知機能支援システム10は、サーバ13を備えているから、複数台の第1装置11を用いることが可能である。複数台の第1装置11を必要としなければ、認知機能支援システム10は、第1装置11をサーバ13の一部の構成とし、第2装置12をクライアントとする構成であってもよい。
本実施形態では、第1装置11がパーソナルコンピュータであり、第2装置12がスマートフォンである認知機能支援システム10を例として示す。第1装置11および第2装置12は、インターネット、移動体電話網のような電気通信回線を通してサーバ13と通信する。第1装置11は、キーボード、マウス、トラックパッド、タッチパネルなどから選択される入力部(第1入力部)111を備え、モニタ装置を提示部112とする。一方、第2装置12は、タッチパネルを入力部(第2入力部)121とし、表示器を提示部112とする。提示部112となる表示器は、たとえば、液晶表示器あるいはOLED表示器(OLED:Organic Light Emitting Diode)が用いられている。
ところで、本実施形態の認知機能支援システム10は、位置認識部123を備える。位置認識部123は、以下の3機能を有している。すなわち、位置認識部123は、第2装置12が存在する地理的位置を認識する第1の機能と、地理的位置を場所名に関連付けて記憶する第2の機能とを有する。また、位置認識部123は、第1の機能で認識した地理的位置が記憶している地理的位置であるときに、第2の機能で記憶している場所名を抽出する第3の機能を有する。要するに、位置認識部123は、第2装置12の地理的位置を認識し、認識した地理的位置が記憶している地理的位置である場合に、該当する地理的位置の場所名を認識する。ここに、地理的位置の情報は、たとえば緯度および経度で表される地球上の位置の情報であり、海抜のような高度の情報を含んでいることが望ましい。
地理的位置の認識は、スマートフォンが内蔵するGPS端末(GPS:Global Positioning System)のような測位装置が行う。また、無線LAN(Local Area Network)あるいはBLE(Bluetooth Low Energy)などの技術を用いて第2装置12の地理的位置を認識することも可能である(Bluetoothは登録商標)。すなわち、GPSのような測位装置を用いない場合、第2装置12で受信可能な電波を発信する装置(たとえば、無線LANのアクセスポイント、BLEの発信器)との相対位置によって第2装置12が地理的位置を認識することが可能である。
ただし、位置認識部123は、地理的位置を認識することが目的ではなく、第2装置12が存在する場所の場所名を抽出することができればよい。また、後者の技術において電波を発信する装置から第2装置12への電波の到達距離は、100mを超えることはまれであり、通常は10〜20m程度が上限である。そのため、後者の技術を用いる場合、電波を発信する装置の地理的位置によって第2装置12の地理的位置を認識する代わりに、電波を発信する装置の識別情報(たとえば、アドレスデータ)から場所名を認識してもよい。あるいは、電波を発信する装置から第2装置12に送信する情報に場所名を含めておき、第2装置12が場所名を認識する構成を採用してもよい。
なお、第2装置12が、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサなどから選択されるセンサを備えている場合、これらのセンサが検出した情報を、地理的位置を認識するための補助に用いてもよい。本実施形態の認知機能支援システム10では、第2装置12が位置認識部123を備えているが、第2装置12の位置を認識する必要がなければ、位置認識部123を省略することが可能である。
図1に示す構成例では、第2装置12が、位置認識部123のすべての機能を備えている。この場合、第2装置12の位置認識部123が、地理的位置に対応する場所名を記憶している必要がある。この構成では、場所名を抽出する際に、第2装置12とサーバ13との通信が発生しないから、地理的位置を認識してから場所名を抽出するまでの応答性がよいという利点がある。また、対象者に必要な場所名のみを登録すればよいから、第2装置12での記憶容量を大きく消費することもない。
一方、地理的位置を認識する機能のみを第2装置12が備え、地理的位置と場所名とを関連付けて記憶する機能と、地理的位置から場所名を抽出する機能とはサーバ13が備えていてもよい。この構成では、地理的位置と場所名との関係をサーバ13で一元的にまとめて管理することが可能である。
ところで、サーバ13は、時計部131と記憶部132と選択部133と判断部134とを備える。時計部131は日時(少なくとも、年月日および時分)を計時する。時計部131は、サーバ13を構成するコンピュータが備えるリアルタイムクロックにより実現される。記憶部132は、第1装置11の入力部111から入力された複数の行動予定情報を記憶する。すなわち、介護者が第1装置11の入力部111から行動予定情報を入力すると、この行動予定情報が記憶部132に格納される。
行動予定情報は、対象者について、予定した行動の種類および日時を含んでいる。行動予定情報は、対象者が、いつ、何をするかというスケジュールであり、対象者に対応付けて記憶部132に格納される。記憶部132には、対象者の複数の行動予定情報が格納される。また、複数の対象者について行動予定情報が記憶部132に格納される。
記憶部132が記憶する行動予定情報は、対象者と行動の種類と日時とを含む形式で表される。この形式では、記憶部132から特定の対象者について行動予定情報を抽出するために、対象者をキーに用いることが必要である。一方、記憶部132を対象者ごとの記憶領域に分割しておき、行動の種類と日時とを含む形式で表した行動予定情報を、対象者ごとの記憶領域(ファイル)に格納してもよい。この形式では、対象者によって行動予定情報を検索する範囲を絞り込むことができる。
対象者が記憶部132に格納された行動予定情報に従って行動をし、その行動が完了した場合、行動が完了したという情報と完了の日時とが行動完了情報として第1装置11からサーバ13に通知され、行動完了情報が記憶部132に格納される。第1装置11は介護者が操作するから、対象者の行動の結果は介護者によって記録される。すなわち、記憶部132には、対象者の行動予定情報と行動完了情報とが格納される。
選択部133は、記憶部132に格納された行動予定情報または行動完了情報のうち、第2装置12の入力部121が要求した種類であって、時計部131が計時している日時と所定の関係である情報を選択する。所定の関係は、たとえば入力部121が行動予定情報を要求した場合、行動予定情報に含まれる日時が時計部131で計時している日時の後、かつ最初の行動予定情報となる関係を意味する。また、所定の関係は、たとえば入力部121が行動完了情報を要求した場合、行動完了情報に含まれる日時が時計部131で計時している日時の前、かつ最新の行動完了情報となる関係を意味する。
ここに、時計部131が計時している日時の後、かつ最初の行動予定情報には、時計部131が計時している日時から一定時間内という条件を付加してもよい。すなわち、選択部133は、時計部131が計時している日時の後の一定時間内である日時を含み、かつ時計部131が計時している日時にもっとも近い日時を含む行動予定情報を選択してもよい。同様に、時計部131が計時している日時の前、かつ最新の行動完了情報には、時計部131が計時している日時と同じ日という条件を付加してもよい。
第2装置12の提示部122には、対象者の認知機能を支援するための情報が提示される。提示部122に提示される情報は、対象者が日常生活を送るために記憶していなければならない情報である。この種の情報には、選択部133が選択した行動予定情報または行動完了情報が含まれる。また、この種の情報には、対象者が居る場所、日時、対象者の身元、対象者の連絡先、対象者の家族、対象者に対する介護者、備忘録などが含まれる。これらの情報は、認知障害の中でも、記憶障害または見当識障害に関連している。どの情報に対する認知障害が生じているかは、対象者の認知障害のレベルあるいは認知障害の種類による個人差がある。
対象者が使用する第2装置12の提示部122に表示される初期画面Dsには、図2Aのように日時の情報を提示する領域F11と、写真あるいは絵を表示する領域F12とが設けられる。図2Aに示す初期画面Dsでは、提示部122の画面が上下に2分割され、上の領域F11に日時の情報が提示され、下の領域F12に写真あるいは絵が表示されている。日時の情報の表現には、時計の文字盤を模した図形と文字列とが用いられている。領域F12に写真あるいは絵を表示する動作は2種類から選択される。すなわち、第2装置12では、提示部122に静止画像を表示するフォトスタンドの動作と、時間帯によって画像が変化するスライドショーの動作とが選択可能である。
図2Aに示す初期画面Dsにおいてタッチパネル(画面)に触れると、図2Bに示す操作画面Doが表示される。画面に触れるとは、入力部121であるタッチパネルに触れることである。タッチパネルの動作原理に応じて、指あるいはタッチペンなどでタッチパネルに触れると、初期画面Dsから操作画面Doに移行する。操作画面Doには、複数個(図2Bでは5個)のボタンB1、B2、…、B5が配置される。5個のボタンB1、B2、…、B5のうちの4個のボタンB1、B2、…、B4は、対象者が提示部122への提示を要求する情報の選択のために設けられ、ボタンB5は操作画面Doから初期画面Dsへの復帰のために設けられている。以下では、タッチパネルに指あるいはタッチペンなどで触れることを、単に「触れる」と言う。また、ボタンに触れることは、提示部122の画面にボタンの図形が表示されている領域のタッチパネルに触れることを意味している。ボタンに触れる動作は、押ボタンスイッチの押ボタンを押す動作に相当する。
図2Bに示す例では、ボタンB1は対象者の身元を表す情報および備忘録に対応し、ボタンB2は対象者がすでにした行動の情報に対応し、ボタンB3は対象者がする予定の行動に対応し、ボタンB4は対象者が居る場所の情報に対応する。ボタンB1には「大事なこと」と表記され、ボタンB2には「さっきしたこと」と表記され、ボタンB3には「つぎにすること」と表記され、ボタンB4には「ここはどこ?」と表記されている。また、ボタンB5には「最初に戻る」と表記されている。図2BにおいてボタンB1、B2、…、B5に表記している文字列は一例であって、適宜に定めることができる。
図2Bに示す例では、ボタンB1に触れた場合には、対象者の名前、対象者の住所、対象者の家族構成など、対象者の身元あるいは備忘録が提示部122に表示される。また、ボタンB2に触れた場合には、当日において対象者がボタンB2に触れる前にした行動のなかで最新の行動が提示部122に表示される。ボタンB3に触れた場合には、当日において対象者がボタンB3に触れた後にする行動のなかで最初の行動が提示部122に表示される。ボタンB4に触れた場合、第2装置12の存在する場所について位置認識部123が場所名を特定できれば、該当する場所名が提示部122に表示される。さらに、ボタンB5に触れた場合には、図2Aに示す初期画面Dsが提示部122に表示される。
ところで、図2Bに示すような操作画面Doは、対象者の認知障害のレベルあるいは種類に応じて変更することが可能である。操作画面Doを作成するには、第2装置12を、使用時の動作モード(以下、「使用モード」という)とは異なる動作状態である設定モードに切り替える。使用モードから設定モードへの切替は、第1装置11から第2装置12に指示することが望ましい。あるいは、第1装置11から第2装置12に指示することにより、使用モードから設定モードに切り替えるためのボタンが、操作画面Doに表示されるようにしてもよい。この場合、使用モードから設定モードへの切替は、1回の操作ではなく複数回の操作を必要とするように定めてもよい。
要するに、第2装置12は、対象者が第2装置12を誤って設定モードに切り替えることがなく、かつ対象者が第2装置12を誤って操作しても操作画面Doに復帰できるように構成されていることが望ましい。操作画面Doにおいて、対象者が望んでいないボタンに誤って触れた場合、第2装置12は対象者の要望に応える処理を行えない。ただし、操作画面Doに表示されたボタンに触れたときに提示部122に提示される画面には、「戻る」というボタンB0が表示され(図5、図6、図7、図8参照)、ボタンB0に触れると操作画面Doに復帰する。したがって、対象者は操作画面Doに表示されたボタンに誤って触れたとしても、いつでも操作画面Doに復帰することが可能である。
ところで、設定モードでは、第2装置12の提示部122には、図3のようなメニュー画面Dmが表示される。メニュー画面Dmには、使用者による選択が可能な複数個(図3では11個)のボタンB11、B12、…B42、B43が表示される。複数個のボタンB11、B12、…B42、B43それぞれは、対象者の要求する情報に対応している。図3に示す例では、11個のボタンB11、B12、…B42、B43に対応する情報が6種類に分類され、情報の種類に応じてボタンB11、B12、…B42、B43に色が付与されている。
ボタンB11は対象者の身元および備忘録の情報に対応し、ボタンB11には「大事なこと」と表記されている。ボタンB12およびボタンB13は対象者の連絡先の情報に対応し、ボタンB12には「子供に電話」と表記され、ボタンB13には「施設に電話」と表記されている。
ボタンB21は日時の情報に対応し、ボタンB21には「年月日、時間」と表記されている。ボタンB41は場所の情報に対応し、ボタンB41には「ここはどこ?」と表記されている。ボタンB22、B31、B32、B33は対象者の行動の情報に対応し、ボタンB22には「さっきしたこと」と表記され、ボタンB31には「次にすること」と表記されている。また、ボタンB32には「今日の予定」と表記され、ボタンB33には「今日の献立」と表記されている。さらに、ボタンB42、B43は対象者の関係者の情報に対応し、ボタンB42には「私の家族」と表記され、ボタンB43には「施設のみんな」と表記されている。
ボタンB11、B21、B41には、それぞれ異なる色が付与される。ボタンB12、B13は対象者の連絡先に電話をかけるという同種類の情報に対応しているから、ボタンB12、B13には同色が付与される。また、ボタンB22、B31、B32、B33は対象者の行動の情報という同種類の情報に対応しているから、ボタンB22、B31、B32、B33には同色が付与される。さらに、ボタンB42、B43は対象者の関係者という同種類の情報に対応しているから、ボタンB42、B43には同色が付与される。要するに、図3に示すメニュー画面Dmでは、ボタンB11、B12、…B42、B43が6種類の色に分類されている。メニュー画面DmにおいてボタンB11、B12、…B42、B43に付与されている色は、操作画面Doにも踏襲される。したがって、ボタンB11、B12、…B42、B43に付与する色は、対象者が容易に識別できる色であることが望ましい。
メニュー画面DmにおけるボタンB11、B12、…B42、B43は、操作画面Doを作成するために配置されているから、これらのボタンB11、B12、…B42、B43に触れても提示部122に情報を表示することは必要ではない。ただし、ボタンB11、B12、…B42、B43に触れたときにボタンB11、B12、…B42、B43に対応する情報を提示部122に表示する動作が選択可能であってもよい。この動作が選択可能であると、ボタンB11、B12、…B42、B43に対応する情報を確認することができる。
ボタンB11に対応する情報は、対象者の名前、対象者の住所、対象者の家族構成など、対象者の身元の情報および備忘録であり、操作画面Doに配置されたボタンB11は、図2Bに示したボタンB1と同様に機能する。ボタンB12、B13に対応する情報は、対象者の連絡先の電話番号である。操作画面DoにボタンB12が配置された場合は、ボタンB12に触れたときに対象者の子供に電話をかけることができ、操作画面DoにボタンB13が配置された場合は、ボタンB13に触れたときに対象者が入居している介護施設に電話をかけることができる。
ボタンB21に対応する情報は日時の情報であり、ボタンB41に対応する情報は場所の情報である。操作画面DoにボタンB21が配置された場合は、ボタンB21に触れたときに時計部131が計時している日時が提示部122に表示される。また、操作画面DoにボタンB41が配置された場合は、ボタンB41に触れたときに位置認識部123が認識している場所名が提示部122に表示される。操作画面Doに配置されたボタンB41は、図2Bに示したボタンB4と同様に機能する。
ボタンB22に対応する情報は対象者がすでにした行動の情報であり、ボタンB23に対応する情報は対象者がこれからする行動の情報である。操作画面DoにボタンB22が配置された場合は、ボタンB22に触れたときに対象者がボタンB22に触れる前にした行動のうち最新の行動が提示部122に表示される。つまり、操作画面Doに配置されたボタンB22は、図2Bに示したボタンB2と同様に機能する。また、操作画面DoにボタンB31が配置された場合は、対象者がボタンB31に触れた後にする行動のうち最初の行動が提示部122に表示される。つまり、操作画面Doに配置されたボタンB31は、図2Bに示したボタンB3と同様に機能する。
ボタンB32に対応する情報は対象者の1日の行動予定であり、ボタンB33に対応する情報は対象者の1日の食事である。操作画面DoにボタンB32が配置された場合は、ボタンB32に触れたときに、記憶部132に格納されている対象者の当日の行動予定が提示部122に表示される。また、操作画面DoにボタンB33が配置された場合は、ボタンB33に触れたときに、対象者の当日の食事が文字あるいは写真によって提示部122に表示される。なお、当日の行動予定は1日のすべての行動予定であることが望ましく、当日の食事は1日のすべての食事であることが望ましい。ただし、当日の食事は、操作画面Doに配置されたボタンB33に触れた時刻以降の食事であってもよい。
ボタンB42に対応する情報は対象者の家族の情報であり、ボタンB43に対応する情報は対象者が入居している介護施設において対象者が顔を合わせる介護者の情報である。操作画面DoにボタンB42が配置された場合は、ボタンB42に触れたときに、対象者の家族の写真が提示部122に表示される。また、操作画面DoにボタンB43が配置された場合は、ボタンB43に触れたときに、対象者が入居する介護者の写真が提示部122に表示される。
本実施形態では、メニュー画面Dmで選択可能なボタンB11、B12、…B42、B43は11個であるが、メニュー画面Dmと操作画面Doとにおけるボタンの個数にとくに制限はない。したがって、ボタンに対応付ける情報の種類にもとくに制限はない。さらに、ボタンに付与する色の種類、色を付与するボタンの区分にもとくに制限はない。
図4A、図4Bに操作画面Doでのボタンの配置例を示す。図4Aに示す操作画面Doは、7個のボタンB1、B2、…、B7が配置された例であって、ボタンB1、…、B5は、それぞれ図2Bに示した操作画面Doに配置されたボタンB1、…、B5と同様に機能する。また、ボタンB6はメニュー画面DmのボタンB43に対応し、ボタンB7はメニュー画面DmのボタンB13に対応する。図4Bに示す操作画面Doは、4個のボタンB1、B4、B5、B7が配置された例であって、3個のボタンB1、B4、B5は図2Bに示した操作画面Doに配置されたボタンB1、B4、B5と同様に機能する。ボタンB7はメニュー画面DmのボタンB13に対応する。なお、操作画面Doに配置されるボタンB5はメニュー画面Dmに対応するボタンが存在しないが、このボタンB5は操作画面Doでは自動的かつ必ず配置される。
メニュー画面Dmに示されたボタンB11、B12、…B42、B43を用いて図4A、図4Bのような操作画面Doを作成するには、使用者が第2装置12を以下のように操作する。メニュー画面Dmから操作画面Doを作成する際には、介護者が対象者に付き添って第2装置12を操作することが望ましい。操作画面Doを作成するには、メニュー画面Dmを表示した状態で、メニュー画面Dmに表示されているボタンB11、B12、…B42、B43のうち、操作画面Doに配置しようとするボタンに触れる。複数のボタンに順に触れると複数のボタンが選択され、同じボタンに2回触れると該当するボタンの選択が解除される。所望のボタンを選択した後に、選択を決定するボタンに触れると、メニュー画面Dmで選択されたボタンを並べた操作画面Doが提示部122に表示される。
メニュー画面Dmでボタンを選択したボタンには、操作画面Doでの配置に、優先順位が決められている。また、初期の操作画面Doでは、選択されたボタンの個数に応じて、ボタンが1列、2列、または3列に配置される。初期の操作画面Doでは、たとえば、ボタンが3個以下なら1列、ボタンが4個以上6個以下なら2列、ボタンが7個以上なら3列などに定められる。ここに、初期の操作画面Doは、メニュー画面Dmでボタンを選択した直後の操作画面Doのことである。
メニュー画面Dmから選択されたボタンは、初期の操作画面Doでは配置の優先順位が高いほど上に配置される。また、ボタンが2列以上である場合、ボタンは配置の優先順位が高いほど左に配置される。つまり、ボタンが2列以上並ぶ場合は、配置の優先順位が1番であるボタンが最上段の左端に配置され、優先順位が2番であるボタンが最上段で左端から2番目に配置される。最上段が埋まると、配置の優先順位が次に高いボタンが2段目の左端に配置される。
初期の操作画面Doでは、メニュー画面Dmで選択したボタンの種類に応じて、上述のようにボタンの配置が規則で定められている。ただし、操作画面Doでのボタンの配置は変更可能であることが望ましい。操作画面Doでのボタンの配置が変更可能であれば、第2装置12の使用者に合わせてボタンを配置することが可能になる。
操作画面Doでボタンの配置を変更する場合は、たとえば、移動させようとするボタンに所定時間(たとえば、2秒間)以上触れ、該当するボタンに触れた状態で所望の位置にボタンを移動させる。ただし、誤操作を防止するために、操作画面Doで通常の操作を行うときにはボタンの移動を禁止し、別途の操作によりボタンを移動可能な状態に移行させることが望ましい。
操作画面Doのボタンを移動させた場合は、横に並ぶボタンの個数を適宜に定めることが可能である。たとえば、図2Bに示した操作画面Doのように、上段に1列のボタン(B1)、下段に1列のボタン(B4)、中段に2列のボタン(B2、B3)を配置することが可能である。ここに、操作画面Doでは、メニュー画面Dmから選択されたボタンのほかに、初期画面Dsに復帰させるためのボタンB5が最下段に表示される。
なお、上述した動作例では、メニュー画面Dmにおいて、操作画面Doに配置するボタンを選択しているが、メニュー画面Dmにおいて、操作画面Doに配置しないボタンを削除することによって、操作画面Doに配置するボタンを決めてもよい。たとえば、メニュー画面Dmに示されたボタンB11、B12、…B42、B43のうち、操作画面Doに表示する必要のないボタンを選択し、選択したボタンを削除する操作によって、操作画面Doを提示部122に表示する構成を採用してもよい。この操作を可能にする場合、メニュー画面Dmにおいて、いわゆる「ごみ箱」を提示部122に表示しておき、選択したボタンをごみ箱に入れる操作を模擬することにより、操作画面Doに表示しないボタンを選択してもよい。
第2装置12が設定モードであるときに操作画面Doにおいてボタンの追加あるいは削除を行う必要が生じた場合は、操作画面Doからメニュー画面Dmに戻ってボタンの追加あるいは削除を行う。また、第2装置12が使用モードであるときに操作画面Doにおいてボタンの追加あるいは削除を行う必要が生じた場合は、第2装置12を設定モードに切り替え、メニュー画面Dmで追加あるいは削除を行う。メニュー画面Dmでは、操作画面Doで選択されているボタンが他のボタンと区別した状態で表示されるから(たとえば、選択されたボタンに枠が表示される)、選択するボタンを追加するか削除する操作を行えば、操作画面Doに表示されるボタンの種類を変更することができる。
操作画面Doの構成が決まれば、第2装置12は設定モードから使用モードに切り替えられる。設定モードから使用モードへの切替は、設定モードを終了する操作によって行えばよい。ただし、使用モードから設定モードに切り替える場合と同様に、第1装置11から設定モードから使用モードへの切替を指示してもよい。
以下では、使用モードでの動作の具体例を説明する。ここでは、図2Bの操作画面Doに配置されたボタンB1、B2、B3、B4に触れた場合の処理について説明する。なお、メニュー画面Dmに示されたボタンB11、B12、…B42、B43には、ボタンB1、B2、B3、B4とは異なる処理を行うボタンも含まれているが、記憶障害および見当識障害を支援する代表例としてボタンB1、B2、B3、B4に対応する処理を例示する。以下では、認知機能支援システム10について、主として、短期記憶と展望記憶と場所に関する見当識とを支援する動作について説明する。
認知機能支援システム10は、短期記憶の支援を行うために、対象者がすでにした行動を第2装置12の提示部122に示し、展望記憶の支援を行うために、対象者がこれからする行動を第2装置12の提示部122に示す。対象者がすでにした行動か、対象者がこれからする行動かは、時計部131が計時している日時と、記憶部132に格納された対象者の行動情報とを用いて区分される。また、認知機能支援システム10は、場所に関する見当識の支援を行うために、位置認識部123を用いて対象者が居る場所を認識し、場所名を第2装置12の提示部122に示す。
本実施形態では、短期記憶は、時計部131が計時している日時より前であって対象者がした日時がもっとも近い行動に関する記憶を意味し、「さっきしたこと」という文言を対応させている。展望記憶は、時計部131が計時している日時より後であって対象者が次にする予定の行動に関する記憶を意味し、「次にすること」という文言を対応させている。場所に関する見当識の支援は、位置認識部123が認識した場所名を対象者に示すことにより行う。場所の見当識には、「ここはどこ?」という文言を対応させている。
すなわち、ボタンB2に触れると短期記憶を支援する情報が提示部122に示され、ボタンB3に触れると展望記憶を支援する情報が提示部122に示され、ボタンB4に触れると場所の見当識を支援する情報が提示部122に示される。支援する内容に対応させた上述の文言は一例であり、短期記憶、展望記憶、場所に関する見当識の支援をそれぞれ区別できる文言であればよい。
操作画面Doにおいて、ボタンB1に触れると、図5のような説明画面Deが提示部122に表示される。図5に示す説明画面Deでは、「大事なこと」という表題が上段に表示され、説明画面Deに定められた個数の項目が文字で表示される。図5に示す説明画面Deには、3つの項目が表示されている。上述のように、「大事なこと」に対応する内容は、対象者の身元の情報、備忘録などである。説明画面Deに並べて表示する項目は3項目程度が望ましいが、さらに多くの項目を表示する場合は、説明画面Deのスクロールを許可するか、説明画面Deに表示する文字サイズを小さくすればよい。
対象者の身元は、具体的には、対象者の姓名および配偶者の姓名、家族構成、住所などである。対象者の姓名および配偶者の姓名は、たとえば、「自分は****。夫は****。」と表示される。家族構成は、たとえば、「子供は2人。息子の名前は**、娘の名前は**。」のように表示され、住所は、たとえば、「お家は****。」のように表示される。備忘録は、子供の訪問日、友人との外出予定、配偶者の命日などを含む。子供の訪問日は、たとえば、「*日後に息子さんが来ます。」のように表示され、友人との外出予定は、たとえば、「*曜日に**さんと外出です。」と表示され、配偶者の命日は、たとえば、「*日は、お父さんの命日です。」と表示される。
ボタンB1に対応付ける情報は、介護者が、対象者あるいは対象者の家族などから聞き取ることによって取得する。さらに、介護者は、聞き取りにより取得した情報を、第1装置11を用いてサーバ13に登録する。この種の情報は、第2装置12の提示部122を対象者に見せながら介護者が第2装置12を用いて入力してもよい。
対象者は、第2装置12のボタンB1に触れると「大事なこと」を確認することができるから、物忘れに対する不安が軽減される。また、対象者は第2装置12で「大事なこと」を確認できるから、対象者が「大事なこと」を他人に尋ねる回数が減り、対象者にとっても尋ねられる人にとっても負担が軽減される。
操作画面Doにおいて、ボタンB2に触れると、図6のような説明画面Deが提示部122に表示される。図6に示す説明画面Deには、時計部131が計時している日時より前の時刻における対象者の行動のうち最新の行動の内容が文字で表示され、該当する行動を示す写真があれば文字に併せて写真も表示される。図6では、「さっきしたこと」に相当する行動が朝食である例を示している。説明画面Deには、「**時に朝食を食べました」という文字と、朝食時の写真P1、P2とが表示されている。写真P1は朝食時の料理が並んだ写真であり、写真P2は対象者と朝食を共にした人が写った食卓の風景の写真である。
ボタンB2に対応する対象者の行動は、食事、入浴、用便、服薬、レクリエーションなどの特定の行動であり、該当する行動を対象者が終了した直後に、介護者が第1装置11を用いて行動の内容をサーバ13の記憶部132に登録する。このとき、サーバ13は、第1装置11から対象者が終了した行動の内容を受け取ると、行動の内容と時計部131が計時している日時とを結び付けた行動完了情報として記憶部132に格納する。要するに、記憶部132には、特定の行動の内容が、その行動の終了日時と併せて行動完了情報として格納される。
ボタンB2に対応付ける情報は、介護者が、対象者の行動を見守ることによって取得する。さらに、介護者は、対象者が特定の行動を終了したことを確認すると、第1装置11を用いてサーバ13に行動の内容を登録する。第1装置11は、基本的には、介護者が携行するタブレット端末であるが、特定の場所に配置されたパーソナルコンピュータであってもよい。
操作画面Doにおいて、ボタンB3に触れると、図7のような説明画面Deが提示部122に表示される。図7に示す説明画面Deには、時計部131が計時している日時より後の時刻における対象者の行動のうち最初の行動の内容が文字で表示され、該当する行動の内容に対応した写真があれば文字に併せて写真も表示される。図7では、「次にすること」に相当する行動が食堂でする体操である例を示している。説明画面Deには、「**時から食堂で体操です」という文字と、体操に関連する写真P3とが表示されている。写真P3は、以前に食堂で体操をしたときの実際の写真、または食堂で体操をしている情景を表す写真が用いられる。
ボタンB3に対応する対象者の予定の行動は、ボタンB2と同様に、食事、入浴、服薬、レクリエーションなどの特定の行動である。介護者は、該当する行動を対象者がするまでに、第1装置11を用いて、行動の内容と行動をする予定の日時を行動予定情報として、サーバ13の記憶部132に登録する。行動予定情報には、行動の内容を表す文字および予定の日時のほか、行動の内容に対応した写真が含まれる場合がある。
介護者が行動予定情報を記憶部132に登録するタイミングは、該当する行動をする前日までが望ましいが、行動の内容によっては当日の場合もある。ただし、多くの場合、行動予定情報は前日に登録される。また、行動予定情報を記憶部132に登録するために介護者が用いる第1装置11は、通常は介護者が携行するタブレット端末であるが、特定の場所に設置されたパーソナルコンピュータであってもよい。
ボタンB3に対象者が触れると、選択部133は、時計部131が計時している日時を参照し、参照した日時の後の日時を持つ行動予定情報のうちの最初の行動予定情報を記憶部132から選択する。選択部133が選択した行動予定情報は、図7のような形式で提示部122に提示される。
ボタンB3は、ボタンB1、B2と同様に、触れたときに提示部122に提示する情報によって記憶障害を支援する。したがって、この種の情報を対象者に提示することによって、対象者にとっては、物忘れに対する不安が軽減され、行動の予定を他人に尋ねる回数が低減されるという効果が期待できる。また、行動の予定を他人に尋ねる回数が低減されることによって、対象者にとっても尋ねられる人にとっても負担が軽減される。
操作画面Doにおいて、ボタンB4に触れると、図8のような説明画面Deが提示部122に表示される。図8に示す説明画面Deは、見当識障害を支援する情報を提示する。ここでの見当識障害は、主として場所に関する見当識障害を意図しており、ボタンB4に触れたときに、第2装置12が存在する場所の情報を提示することによって、対象者に現在位置を認識させる。ただし、日時に関する見当識障害も支援するために、説明画面Deには時計部131が計時している日時の情報も提示される。
説明画面Deには、「ここは、***施設**号室、**さんの家です」のような形式で場所の情報が提示される。場所の情報を提示部122に提示するために、記憶部132には、地理的位置の情報と場所名の情報とを対応付けた場所情報が登録される。登録された場所の写真があれば文字に併せて写真も表示される。写真は季節に応じた情報を含んでいることが望ましい。たとえば、春であれば桜のような花が写った写真が望ましく、秋であれば紅葉が写った写真が望ましい。
ボタンB4に触れたときに提示部122に提示される説明画面Deには、場所に応じて、次の2種類のボタンのいずれかが配置される。説明画面Deに提示される場所は、第2装置12が備える位置認識部123が認識している場所であり、介護施設の内部と外部とに場合分けがなされる。したがって、対象者が介護施設の内部に居るか介護施設の外部に居るかに応じて、説明画面Deに配置されるボタンの種類が選択される。
一方のボタンは、対象者が介護施設に居るときにボタンB4に触れると説明画面Deに配置される。このボタンに触れると、対象者が該当する場所に居る理由を説明する説明情報が提示部122に提示される。説明情報は、たとえば、「あなたのお部屋は、この建物の*階**号室です」のような内容である。対象者が介護施設に居る理由の説明情報は、対象者が介護施設に入居している場合、対象者が介護施設に短期入所している場合などの場合に分けて、記憶部132にあらかじめ登録される。
他方のボタンは、対象者が介護施設の外に居るときにボタンB4に触れると説明画面Deに配置される。このボタンに触れると対象者の居る場所が第1装置11に通知される。このボタンには、「迎えを呼ぶ」のような文字が表示される。対象者がこのボタンに触れると、対象者を担当する介護者の第1装置11と、介護施設の所定の場所に設置された第1装置11とに、警報が通知される。また、このとき、対象者が携行する第2装置12の位置認識部123が認識している場所が第1装置11に通知される。
ボタンB4に触れたときの場所は、第2装置12が備える位置認識部123が認識し、地理的位置に対応する場所名がサーバ13に登録されていれば、該当する場所名を説明画面Deに表示する。また、ボタンB4に触れた時点の地理的場所に対応する場所名がサーバ13に登録されていなければ、場所名に代えて住所を説明画面Deに表示する。対象者が住所から自身の居る場所を認識できる程度の認知機能を有していれば、対象者は自力で所望の場所に移動することが可能である。また、住所からは自身の居る場所を認識できなければ、「迎えを呼ぶ」ボタンに触れることにより、介護施設から迎えを呼ぶことが可能である。
すなわち、ボタンB4に触れると、対象者に居る場所を示すことによって、対象者の場所に関する見当識障害を支援することが可能である。また、対象者が介護施設の外に出た後に介護施設に戻れなくなった場合でも、対象者が携行する第2装置12の「迎えに来て」ボタンB8に触れると、対象者が介護施設に戻れなくなったことが第1装置11に通知される。第1装置11には、第2装置12の地理的位置も通知されるから、対象者を探し出せる可能性が高くなる。
以上のように、ボタンB4に触れることにより、対象者が居る場所の情報が説明画面Deに提示されるから、場所の見当識障害を支援することが可能になる。この種の情報が第2装置12に提示され、また必要に応じて迎えを呼ぶことができるから、対象者は場所を知覚できなくなっても不安感を緩和できる。また、対象者が徘徊したとしても、第1装置11に通知があれば、対象者の居る場所が介護者にわかるから、対象者が徘徊したときの対応が可能になる。
ところで、認知機能支援システム10を使用するには、行動完了情報、行動予定情報、「大事なこと」の情報、対象者に関係する人の情報などの情報を、記憶部132に登録しておく必要がある。これらの情報は、主として第1装置11の入力部111から入力される。第1装置11は、入力部111および提示部112を備えており、入力部111から情報を入力すると、提示部112の表示に反映される。したがって、第1装置11の操作者は、提示部112の表示内容を確認しながら、入力部111からインタラクティブに情報を入力することができる。
図9に第1装置11に表示される画面の構成例を示す。図9に示す画面D11は、行動完了情報を入力する画面の一例である。画面D11の上部には、5個のタブT11、T12、T13、T14、T15が左右に並んでいる。タブT11には「実施入力」の文字が表記され、タブT12には「予定入力」の文字が表記されている。タブT13には「大事なこと」の文字、タブT14には「関係する人」の文字、タブT15には「各種設定」の文字がそれぞれ表記されている。
「実施入力」のタブT11は行動完了情報を入力する画面D11に対応し、「予定入力」のタブT12は行動予定情報を入力する画面D12(図10参照)に対応する。「大事なこと」のタブT13は、図2Bに示した操作画面DoのボタンB1に触れたときに第2装置12の提示部122に提示される情報を入力する画面D13(図11参照)に対応する。「関係する人」のタブT14は、対象者の家族、友人などの情報を入力する画面D14(図12参照)に対応する。さらに、「各種設定」のタブT15は、対象者が居る場所に関する理由の説明情報を入力する画面D15(図13参照)に対応する。
5枚の画面D11、D12、D13、D14、D15のいずれにも、それぞれ5個のタブT11、T12、T13、T14、T15が表示される。タブT11、…、T15のいずれかを選択すれば、タブT11、…、T15に対応した画面D11、…、D15が第1装置11に表示される。ここに、タブT11、…、T15を選択するとは、入力部111がタッチパネルであれば、タブT11、…、T15に触れることを意味する。また、入力部111がマウスのようなポインティングデバイスを備えていれば、タブT11、…、T15を選択することは、タブT11、…、T15をクリックすることに相当する。
「実施入力」のタブT11が選択されると、図9のような画面D11が第1装置11に表示される。画面D11の上部には、「対象者」の領域F111と「実施内容」の領域F112とが設けられる。また、画面D11の下部には、行動完了情報の内容を確認するための領域F113と、行動完了情報に含める写真が表示される領域F114とが設けられる。さらに、画面D11には、4つのボタンB111、B112、B113、B114が配置されている。ボタンB111には「更新」と表記され、ボタンB112には「撮影」と表記され、ボタンB113には「読込」と表記され、ボタンB114には「戻る」と表記される。ボタンB114に触れた場合には、第1装置11の初期画面に復帰する。
図9に示す画面D11では、領域F111に、介護施設に入居している複数人の対象者それぞれについて、「部屋番号」、「入居者」、「現在」、「次の予定」の項目が表の形式で表示されている。領域F111には、介護施設のすべての入居者を表示することが望ましいが、介護者が介護を行っている対象者だけを表示してもよい。図9では、領域F111に5人の対象者を表示しているが、さらに多くの対象者を表示する場合には、領域F111においてスクロールを可能にしてもよい。
画面D11において、「部屋番号」は対象者が入居している部屋の番号、「入居者」は対象者の名前、「現在」は画面D11の表示時点での対象者の行動、「次の予定」は画面D11の表示時点以降に対象者に予定されている行動の開始時刻および内容である。「現在」の項目には、対象者の行動が示される場合(体操、外出など)と、対象者が居る場所が示される場合(居室、食堂など)とがある。たとえば、対象者が自室に居るときには、対象者が居る場所である「居室」が表示される。
領域F112には、対象者がする複数の行動の終了を表す文言が、実施項目として表の形式で列挙されている。領域F112に表示される文言は、複数の行動それぞれについて終了したことを表す文言であり、たとえば「朝食を食べました」のように表現される。図9には領域F112に3つの行動が表示されているが、さらに多くの行動を表示する場合には、領域F112においてスクロールを可能にしてもよい。また、領域F112の下方には、表の形式で表された行動の類型以外の行動について自由に文言を設定するための入力フィールドF115が設けられている。
領域F113は、左右に異なる情報が表示される。領域F113の左部分には、領域F111で選択されている対象者に関連付けた第2装置12に表示可能な説明画面Deと同じ内容が表示される。つまり、第1装置11から行動完了情報を入力する直前に第2装置12に表示可能な説明画面Deの内容が領域F113の左部分に表示される。なお、図9では選択されている状態を太線の枠で示している。また、図10から図13においても選択されている状態は太線の枠で示している。
領域F113の右部分には、画面D11において入力する行動完了情報の内容が表示される。図9に示す行動完了情報は、領域F111で選択した対象者と、領域F112で選択した行動とに、日時(時刻)を組み合わせた情報である。日時は、サーバ13が備える時計部131が計時する日時と等価な日時であればよく、第1装置11が内蔵する時計部の時刻が用いられる。また、日時は、サーバ13の時計部131から取得することも可能である。通常、NTPサーバ(Network Time Protocol server)からサーバ13が取得した日時が、第1装置11および第2装置12が内蔵する時計部に転送される。対象者の行動が終了した時点で、介護者がボタンB111に触れると、領域F113の右部分に表示された対象者の行動完了情報が記憶部132に格納される。
ところで、行動完了情報の説明画面Deには、行動に関連した写真を表示することが可能である。第1装置11はタブレット端末を想定しているから、カメラを内蔵しており、写真を撮影することが可能である。画面D11の領域F114には、カメラの視野内の画像が表示され、介護者がボタンB112に触れた時点の画像が静止画像として領域F114に表示される。領域F114に静止画像が表示されている状態でボタンB113に触れると、その静止画像が行動完了情報に関係付けられる。静止画像を行動完了情報に関連付けた後にボタンB111に触れた場合、文字および写真が行動完了情報として記憶部132に格納される。なお、第1装置11は、ボタンB112に触れてから一定時間(たとえば、10秒)が経過すると、領域F114から静止画像が消え、他の画像を撮影できるように構成されていることが望ましい。
「予定入力」のタブT12が選択されると、図10のような画面D12が第1装置11に表示される。画面D12の上部には、「対象者」の領域F121と「日付」の領域F122と「時間」の領域F123と「予定入力」の領域F124とが設けられる。また、画面D12の下部には、行動予定情報の内容を確認するための領域F125が設けられる。さらに、画面D12には、主として2つのボタンB121、B124が配置されている。ボタンB121には「更新」と表記され、ボタンB124には「戻る」と表記される。ボタンB124に触れた場合には、第1装置11の初期画面に復帰する。
図10に示す画面D12では、領域F121に、介護施設に入居している複数人の対象者それぞれについて、「部屋番号」、「入居者」の項目が表の形式で表示されている。領域F121には、介護施設のすべての入居者を表示することが望ましいが、介護者が介護を行っている対象者だけを表示してもよい。図10では、領域F121に5人の対象者を表示しているが、さらに多くの対象者を表示する場合には、領域F121においてスクロールを可能にしてもよい。画面D12の領域F121に表示される内容は、画面D11の領域F111とは項目に相違があるが、同項目については同内容である。
領域F122には、対象者が予定の行動を行う月日が入力され、領域F123には、対象者が予定の行動を行う時刻が入力される。領域F122と領域F123との表示内容はスクロールが可能であって、領域F122と領域F123とでは、任意の月日および時刻を選択可能である。なお、領域F123は一定時間(図10の例では5分)刻みの時刻が入力される。なお、第1装置11は、領域F123において、「時」の欄の数値と「分」の欄の数値とを、個別にスクロールさせることができるように構成されている。
領域F124には、対象者がする複数の行動の種類が表の形式で列挙されている。領域F124に表示される文言は、複数の行動それぞれの内容を表す文言であり、たとえば「朝ご飯」、「体操」、「お昼ご飯」のように表現される。図10には領域F124に3つの行動が表示されているが、さらに多くの行動を表示する場合には、領域F124においてスクロールを可能にしてもよい。また、領域F124の下方には、表の形式で表された行動の類型以外の行動について自由に文言を設定するための入力フィールドF126が設けられている。
領域F125は、領域F121で選択された対象者について、記憶部132に格納されている行動のスケジュールが表示される。領域F125に表示される行動のスケジュールは、該当する行動が終了しているか否かにかかわらず、領域F125に示された期間のすべてについて表示される。領域F125では、縦方向に日にちの項目があり、横方向に時刻の項目がある。時刻の項目は、00時から23時までの1日の時刻を表す。図10では1週間分のスケジュールを表示しているが、スケジュールを表示する期間は、1日、1ヶ月、1年から選択可能であることが望ましい。
領域F122、F123、F124を用いて設定した行動予定情報は、ボタンB121に触れると記憶部132に格納される。すなわち、ボタンB121に触れることにより、記憶部132に格納された行動予定情報が更新される。また、記憶部132の行動予定情報が更新されると、領域F125のスケジュールの表示に反映される。
「大事なこと」のタブT13が選択されると、図11のような画面D13が第1装置11に表示される。画面D13の上部には、「対象者」の領域F131と「年」の領域F132と「日付」の領域F133と「大事なこと入力」の領域F134とが設けられる。また、画面D13の下部には、記憶部132に登録された「大事なこと」を確認するための領域F135が設けられる。さらに、画面D13には、主として3つのボタンB131、B132、B134が配置されている。ボタンB131には「更新」と表記され、ボタンB132には「消去」と表記され、ボタンB134には「戻る」と表記される。ボタンB134に触れた場合には、第1装置11の初期画面に復帰する。
図11に示す画面D13では、領域F131に、介護施設に入居している複数人の対象者それぞれについて、「部屋番号」、「入居者」の項目が表の形式で表示されている。領域F131には、介護施設のすべての入居者を表示することが望ましいが、介護者が介護を行っている対象者だけを表示してもよい。図11では、領域F131に5人の対象者を表示しているが、さらに多くの対象者を表示する場合には、領域F131においてスクロールを可能にしてもよい。画面D13の領域F131に表示される内容は、画面D11の領域F111とは項目に相違があるが、同項目については同内容である。
領域F132、F133では、対象者にとって「大事なこと」を行う年月日が選択される。また、領域F134では、対象者にとって「大事なこと」の内容が選択される。領域F132、F133、F134の表示内容はスクロールが可能である。対象者にとっての「大事なこと」は、家族の訪問、友人の訪問、買い物などの予定のほか、家族構成、自宅の住所などを含む場合がある。記憶部132には、「大事なこと」は1人の対象者について、たとえば最大3つまで登録可能である。もちろん、「大事なこと」を3つ以上登録可能にしてもよいが、「大事なこと」は、第2装置12において1画面に表示できる量であることが望ましい。図11には領域F134に3つの内容が表示されているが、さらに多くの内容を表示する場合には、領域F134においてスクロールを可能にしてもよい。また、領域F132、F133、F134の下方には、「大事なこと」について自由に文言を設定するための入力フィールドF136が設けられている。
領域F135は、領域F131で選択された対象者について、記憶部132に格納した「大事なこと」が表示される。領域F135には、「大事なこと」の内容を最大3つまで同時に表示することができる。「大事なこと」の内容には、上述したように、年月日に関係する情報と、年月日とは関係のない情報とがある。年月日に関係する情報は、「いつ」の欄に年月日が入力され、年月日に関係のない情報は、「いつ」の欄に「期限なし」と表記される。
領域F132、F133、F134を用いて設定した「大事なこと」は、ボタンB131に触れると記憶部132に格納される。すなわち、ボタンB131に触れることにより、記憶部132に格納された「大事なこと」が更新される。記憶部132に記憶した「大事なこと」が更新されると、領域F135の表示に反映される。また、領域F135の中で該当する欄(四角で囲んだフィールド)に触れると、該当する欄が選択される。領域F135に表示された「大事なこと」のうち、不要な内容があれば、欄が選択されている状態でボタンB132に触れると、該当する内容が記憶部132から消去される。
「関係する人」のタブT14が選択されると、図12のような画面D14が第1装置11に表示される。画面D14の上部には、「対象者」の領域F141と「関係」の領域F142とが設けられる。領域F142の下方には、領域F141で選択された対象者に「関係する人」の名前および領域F142で選択された関係の詳細を入力するための入力フィールドF145が設けられる。また、画面D14の下部には、記憶部132に登録された「関係する人」の写真を確認するための領域F143と、記憶部132に格納する写真が表示される領域F144とが設けられる。さらに、画面D14には、主として4つのボタンB141、B142、B143、B144が配置されている。ボタンB141には「更新」と表記され、ボタンB142には「撮影」と表記され、ボタンB143には「読込」と表記され、ボタンB144には「戻る」と表記される。ボタンB144に触れた場合には、第1装置11の初期画面に復帰する。
図12に示す画面D14では、領域F141に、介護施設に入居している複数人の対象者それぞれについて、「部屋番号」、「入居者」、「現在」、「次の予定」の項目が表の形式で表示されている。領域F141に表示される内容は、画面D11と同様である。領域F142では、画面D14を用いて登録される人と対象者との関係が選択される。図12に示す画面D14の例では、「施設のスタッフ」、「ご家族」、「ご友人」という関係が示されている。領域F141で対象者が選択され領域F142で関係が選択されると、「関係する人」の名前および対象者との関係が入力フィールドF145に入力される。対象者との関係は、一般的には、家族内の関係であって、配偶者、息子、娘、孫などを意味する。
領域F143は、領域F142で指定された「関係する人」について、記憶部132に格納した写真が表示される。画面D14の領域F144には、カメラが捉えている画像が表示され、介護者がボタンB142に触れた時点の画像が静止画像として領域F144に表示される。領域F144に静止画像が表示されている状態でボタンB143に触れると、その静止画像が「関係する人」の情報に関係付けられる。静止画像を「関係する人」の情報に関連付けた後にボタンB141に触れた場合、文字および写真が「関係する人」の情報として記憶部132に格納される。なお、第1装置11は、ボタンB142に触れてから一定時間(たとえば、10秒)が経過すると、領域F144から静止画像が消え、他の画像を撮影できるように構成されていることが望ましい。写真を取り込む手順は、図9に示した画面D11と同様である。
「各種設定」のタブT15が選択されると、図13のような画面D15が第1装置11に表示される。画面D15の上部には、「対象者」の領域F151が設けられる。また、画面D15の下部には、第2装置12に表示される初期画面Dsおよび操作画面Doを確認するための領域F152、F153が設けられる。さらに、画面D15の下部には、操作画面Doにおいて、対象者が「ここはどこ?」のボタンB4に触れたときに説明画面Deに表示するメッセージを入力する入力フィールドF154が設けられる。画面D15には、主として4つのボタンB151、B152、B153、B154が配置されている。ボタンB151には「更新」と表記され、ボタンB152には「撮影」と表記され、ボタンB153には「読込」と表記され、ボタンB154には「戻る」と表記される。ボタンB154に触れた場合には、第1装置11の初期画面に復帰する。
図13に示す画面D15では、領域F151に、介護施設に入居している複数人の対象者それぞれについて、「部屋番号」、「入居者」、「自立度」、「記憶」、「見当識」、「判断」、「表示」、「ここはどこメッセージ」の項目が表の形式で表示される。領域F151に表示される項目のうち「部屋番号」と「入居者」の内容は、画面D11と同様である。「自立度」、「記憶」、「見当識」、「判断」は対象者の認知機能の計測結果に基づくレベルであり、「表示」は、対象者の認知機能を判断した結果の表示の内容を表す情報である。つまり、「記憶」は記憶力のレベル、「判断」は判断力のレベルである。
対象者の認知機能は、MMSE(Mini Mental State Examination)のような、認知機能のレベルを評価するテストにより計測することが可能である。この場合、テストの結果を介護者が記憶部132に登録する。とくに、「自立度」は、通常は専門家の判断によって決定される。
「記憶」、「見当識」は、対象者が操作画面Doで触れたボタンの種類、それぞれのボタンに触れた頻度などの履歴に基づいて判断部134が自動的に判断してもよい。ここにおいて、判断部134は、対象者の認知機能を判断する情報について履歴として記憶する機能を有している。たとえば、対象者が「ここはどこ?」と表記されたボタンB4に触れた頻度について基準値を複数段階に定め、場所に関する見当識のレベルと基準値の段階とを対応付けておくことにより、場所に関する見当識のレベルを判断部134が判断可能になる。ここに、頻度は、単位期間(たとえば、1日など)当たりの回数である。「記憶」についても同様であり、判断部134は、長期記憶に関係するボタンB1、短期記憶に関係するボタンB2、展望記憶に関係するボタンB3などに対象者が触れた頻度に基づいて記憶のレベルを判断することが可能である。
「自立度」、「記憶」、「見当識」、「判断」のレベルが決まると、判断部134は、対象者の認知機能を定めることが可能である。「自立度」、「記憶」、「見当識」、「判断」のレベルを変数にした対象者の認知機能のレベルは、経験則によって定めることが可能である。したがって、判断部134は経験則に基づいて「表示」の内容を定める。
「ここはどこメッセージ」には、操作画面Doにおいて「ここはどこ?」のボタンB4に触れたときに、第2装置12の説明画面Deに返すメッセージが登録されている。つまり、このメッセージは、対象者が該当する場所に居る理由の説明情報に相当する。領域F151に表示するメッセージは入力フィールドF154で編集することが可能である。つまり、領域F151で選択した対象者に示すメッセージは、入力フィールドF154で編集することが可能である。
入力フィールドF154で編集したメッセージは、ボタンB151に触れると記憶部132に格納される。すなわち、ボタンB151に触れることにより、記憶部132に格納されたメッセージが更新される。記憶部132に記憶したメッセージが更新されると、領域F151の表示に反映される。
なお、上述した実施形態において、行動完了情報、行動予定情報などを第1装置11で入力しているが、介護者が認めた場合にかぎり、対象者が第2装置12を操作して行動完了情報、行動予定情報などを入力できるようにしてもよい。
以上説明したように本実施形態の認知機能支援システム10は、第1装置11と第2装置12とを備える。第1装置11は、認知機能の支援対象である対象者について、予定した行動の種類および日時を含む複数の行動予定情報を受け取る第1入力部111を備える。第2装置12は、第1装置11とは別に設けられ対象者に関係付けてあり、複数の行動予定情報のうち選択された行動予定情報が通知される。第2装置12は、複数の行動予定情報のうち特定の行動予定情報について通知の要求を行う第2入力部121と、第2入力部121からの要求に応答して通知された特定の行動予定情報が提示される提示部122とを備える。
この構成によれば、対象者が第2装置12の第2入力部121から行動予定情報を要求したときにだけ行動予定情報が第2装置12の提示部122に提示される。したがって、対象者が予定された行動を忘れているときに、第2入力部121を用いて特定の行動予定情報を確認することが可能になり、対象者にとっては展望記憶の低下に対する不安感が緩和される。また、対象者が予定された行動を覚えているときには、行動予定情報を確認しなくてもよく、対象者にとっては行動予定情報の通知が強制される煩わしさがない。また、介護者にとっては、対象者からの問い合わせに応える頻度が低減され、介護者の負担が軽減されることも期待できる。
認知機能支援システム10は、時計部131と記憶部132と選択部133とを備えていることが望ましい。時計部131は、日時を計時する。記憶部132は、第1入力部111が受け取った複数の行動予定情報を記憶する。選択部133は、記憶部132が記憶している複数の行動予定情報のうち、第2入力部121からの要求に対して特定の行動予定情報を選択する。ここで、特定の行動予定情報は、第2入力部121からの要求があった日時の後、かつ最初の行動予定情報である。
この構成によれば、対象者が第2入力部121から要求した後の最初の行動予定情報が提示部122に提示されるから、対象者は、直近に予定されている行動を確認することができる。
認知機能支援システム10において、第1入力部111は、複数の行動予定情報に含まれる行動を対象者が終了するたびに行動完了情報を受け取る機能を有していることが望ましい。また、記憶部132は、第1入力部111が受け取った行動完了情報を記憶する機能を有し、第2入力部121は、特定の行動完了情報について通知の要求を行う機能を有していることが望ましい。この場合、選択部133は、第2入力部121の要求に応答して特定の行動完了情報を記憶部132が記憶している行動完了情報から選択する機能を有する。また、提示部122は、第2入力部121からの要求に応答して通知された特定の行動完了情報が提示される機能を有する。特定の行動完了情報は、第2入力部121からの要求があった日時の前、かつ最新の行動完了情報である。
この構成によれば、対象者が第2装置12の第2入力部121から行動完了情報を要求したときにだけ行動完了情報が第2装置12の提示部122に提示される。したがって、対象者が直前に行った行動を忘れているときに、第2入力部121を用いて特定の行動完了情報を確認することが可能になり、対象者にとっては短期記憶の低下に対する不安感が緩和される。また、対象者が直前の行動を覚えているときには、行動完了情報を確認しなくてもよく、対象者にとっては行動完了情報の通知が強制される煩わしさがない。また、介護者にとっては、対象者からの問い合わせに応える頻度が低減され、介護者の負担が軽減されることも期待できる。
認知機能支援システム10は、第2装置12が存在する場所を認識する位置認識部123を備えていることが望ましい。この場合、第2入力部121は、位置認識部123が認識している場所について提示の要求を行う機能を有し、提示部122は、第2入力部121から要求があった場所を提示する機能を有する。
この構成によれば、対象者が場所を忘れた場合に、第2入力部121を用いて要求すれば提示部122に場所が提示されるから、場所に関する見当識が低下している対象者にとって不安感が緩和される。介護者にとっては対象者から問い合わせに応える頻度が低減され、介護者の負担の軽減につながる。
第2入力部121は、対象者が場所に居る理由の説明情報について要求を行う機能を有しており、提示部122は、第2入力部121から要求があった説明情報を提示する機能を有していることが望ましい。
この構成によれば、単に場所が提示されるだけではなく、対象者がその場所に居る理由などの説明情報が得られるから、対象者の不安感が軽減される。
認知機能支援システム10は、第2入力部121からの要求の履歴に基づいて対象者の認知機能の状態を判断する判断部134を備えることが望ましい。
この構成によれば、対象者が第2入力部121から要求を行った履歴を用いることにより、対象者の認知機能を判断することが可能になる。また、認知機能の判断結果に基づいて第2入力部121から要求可能な情報を変更することが可能である。
本実施形態における認知機能支援装置(サーバ13)は、第1装置11および第2装置12との間で通信する。第1装置11は、認知機能の支援対象である対象者について、予定した行動の種類および日時を含む複数の行動予定情報を受け取る第1入力部111を備える。第2装置12は、第1装置11とは別に設けられ対象者に関係付けてあり、複数の行動予定情報のうち選択された行動予定情報が通知される。第2装置12は、複数の行動予定情報のうちの特定の行動予定情報を要求する第2入力部121と、第2入力部121からの要求に応答して通知された特定の行動予定情報が提示される提示部122とを備えている。認知機能支援装置(サーバ13)は、時計部131と記憶部132と選択部133とを備えていることが望ましい。時計部131は、日時を計時する。記憶部132は、第1入力部111が受け取った複数の行動予定情報を記憶する。選択部133は、記憶部132が記憶している複数の行動予定情報のうち、第2入力部121からの要求に対して特定の行動予定情報を選択する。ここで、特定の行動予定情報は、第2入力部121からの要求があった日時の後、かつ最初の行動予定情報である。
この構成によれば、対象者が第2入力部121から要求した後の最初の行動予定情報が提示部122に提示されるから、対象者は、直近に予定されている行動を確認することができる。
本実施形態のプログラムは、コンピュータを、認知機能支援装置(サーバ13)として機能させるためのものである。
なお、上述した実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんのことである。