以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を各構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これら各図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率,各構成要素の相対的な位置関係等に関し、図示の形態のみに限定されるものではない。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の処置具挿通具を挿入機器(内視鏡)と共に使用する際の状態を示す概略構成図である。図2,図3は、本実施形態の処置具挿通具に処置具を挿通させた状態の要部断面図である。このうち、図2は、処置具操作部を手元側に引き込んだ際のようすを示している。また、図3は、図2の状態において処置具操作部を押圧して弁解除操作行った際のようすを示している。そして、図4は、図2の[4]−[4]線に沿う断面を示す要部拡大断面図である。なお、図2,図3は、図4の[2]−[2]線に沿う断面を示すものである。
本実施形態の処置具挿通具は、被検体(例えば生体)の内部(例えば体腔内)に挿入される挿入機器(例えば内視鏡)の挿入部に取り付けられ、処置具を前記挿入機器の前記挿入部を介して前記被検体の内部に挿入させるための機器である。
まず、本実施形態の処置具挿通具を使用する際に、これと共に用いる挿入機器である内視鏡の概略構成を説明する。
図1に示すように、挿入機器である内視鏡1は、被検体(例えば生体)の内部(例えば体腔内)に挿入される挿入部2と、該挿入部2の基端側に連設された操作部3と、該操作部3から延出されたユニバーサルコード8と、該ユニバーサルコード8の延出端に設けられたコネクタ9とを具備して主要部が構成されている。
尚、図示を省略しているが、内視鏡1は、上記コネクタ9を介して不図示の制御装置や照明装置等の外部装置と電気的に接続される。
操作部3には、挿入部2の湾曲部2wを上下方向に湾曲させる上下用湾曲操作ノブ4と、湾曲部2wを左右方向に湾曲させる左右用湾曲操作ノブ6とが設けられている。
さらに、操作部3には、上下用湾曲操作ノブ4の回動位置を固定する固定レバー5と、左右用湾曲操作ノブ6の回動位置を固定する固定ノブ7とが設けられている。また、操作部3には、既知の各種操作スイッチ等が設けられている。
尚、操作部3に設けられた各種ノブ4、6、7、レバー5、各種スイッチ等は、例えば術者の左手によって操作される。
挿入部2は、先端側から順に、先端部2sと湾曲部2wと可撓管部2kとを具備して構成されている。挿入部2は細長管形状に形成されている。挿入部2は、例えば術者の右手によって操作される。
尚、操作について、上述した場合とは反対に、挿入部2の各種操作を左手で行い、操作部3の各種操作を右手で行うものとしてもよい。
湾曲部2wは、上下用湾曲操作ノブ4や左右用湾曲操作ノブ6の回動操作により、例えば上下左右の4方向に湾曲される。これにより、湾曲部2wは、先端部2s内に設けられた図示しない撮像ユニットの観察方向を変更したり、被検体の内部に挿入部2を挿入する際に先端部2sの挿入性を向上させるものである。さらに、可撓管部2kは、湾曲部2wの基端側に連設されている。
また、挿入部2及び操作部3の内部には、処置具挿通管路10が設けられている。処置具挿通管路10は、一端が先端部2sの先端面に先端開口10aとして開口されており、他端が操作部3に鉗子口であり処置具挿通口10bとして開口されている。
その他の内視鏡1の構成は、一般的な内視鏡の構成と同じであるため、その詳しい説明は省略する。
次に、本実施形態の処置具挿通具の構成を、図1及び図2〜図4を用いて以下に説明する。図1に示すように、処置具挿通具20は、内視鏡1に取り付けられ被検体の内部を処置する処置具31を、被検体の内部(例えば生体の体腔内)へと挿入させるものである。ここで、処置具31は、通常一般的に用いられている従来形態のものである。
本実施形態においては、処置具が1本の場合を例に挙げて示しているが、処置具挿通具20は、複数本の処置具を選択的に被検体の内部へと挿入して使用することができるものである。
処置具挿通具20は、図2等に示すように、管状の処置具案内部であるチューブ21と、案内部本体22と、処置具操作部であるスライダ41と、弁部材11と、スライダ41とは別体の弁解除部材42とを具備して主要部が構成されている。
チューブ21は、処置具31を内視鏡1(挿入機器)の処置具挿通管路10(挿入部の内部)を介して被検体の内部へと案内するための管状部材である。チューブ21としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)等によって形成されている。
チューブ21は、図1に示すように、一端21aが案内部本体22に接続され、他端21bが内視鏡1の処置具挿通管路10の処置具挿通口10bに接続される。この状態としたとき、処置具31は、案内部本体22及びチューブ21を挿通し、上記処置具挿通口10bから処置具挿通管路10へと通され、さらに当該処置具挿通管路10を介して内視鏡1の挿入部2の先端部2sの先端開口10aから外部へと突出させることができる。このようにして、処置具挿通具20は、処置具31の先端部位(図1の符号31s参照)を被検体の内部の所望の処置対象部位へと案内するものである。
案内部本体22は、内視鏡1(挿入機器)の挿入部2が被検体の内部に挿入された際に、挿入部2における被検体の外部に位置する部位に着脱自在に設けられる。これと共に、案内部本体22には、チューブ21(処置具案内部)の一端が連設されている。さらに、案内部本体22は、チューブ21(処置具案内部)に対する処置具31を挿通させる挿通口22pを有する。
即ち、案内部本体22は、図2等に示すように、また上述したように、チューブ21の一端21aが接続されている。これにより、案内部本体22は、内部においてチューブ21の内部の空間21iと連通している。
また、案内部本体22は、処置具31が挿通配置されると共に、上記スライダ41が所定の方向に移動自在に取り付けられる空間22i(図2等参照)を有している。
この空間22iの基端側であって、上記チューブ21の接続部位に対向する面には、処置具31を上記チューブ21へ向けて挿入する際の挿通口22pが形成されている。
案内部本体22は、内視鏡1の挿入部2に対して着脱自在に構成されている。その場合において、案内部本体22は、内視鏡1と共に使用する際に、当該内視鏡1の挿入部2が被検体内に挿入されたとき、当該挿入部2の可撓管部2kにおける被検体の外部に位置する部位、例えば図1において符号2zで示す範囲内の部位に取り付けられるように構成されている。
案内部本体22は、被検体外に位置する所定の部位2zに装着された状態では、その状態が常に維持され得るように、つまり、案内部本体22の挿入部2に対する装着位置がずれてしまうことがないように、所定の手段を用いて挿入部2に対して案内部本体22が固定されている。この場合において、挿入部2に対して案内部本体22は、着脱自在となるように構成してもよい。
さらに、図2,図3に示すように、案内部本体22には、空間22iと連通するスリット22sが形成されている。このスリット22sは、案内部本体22に対して長手方向Nに沿って貫通溝状に形成されている。そして、このスリット22sは、詳細は後述するが、処置具操作部であるスライダ41(及びこれが取り付けられる処置具31)の移動範囲を規制する移動規制部として機能する部位である。
スライダ41は、筒状に形成され処置具31に取り付けられる処置具操作部材である。スライダ41は、案内部本体22に対して着脱自在に形成されている。
即ち、スライダ41は、処置具31に対して事前に取り付けられる構成部品である。スライダ41は、案内部本体22の空間22i内において当該案内部本体22に対し着脱自在に設けられる。スライダ41は、案内部本体22の空間22i内において当該案内部本体22に対して装着された後、案内部本体22及びチューブ21に対して相対的に、処置具31とは一体に長手方向に進退移動し得るように設けられる。また、スライダ41は、処置具31に対して着脱自在であっても構わない。
なお、スライダ41は、処置具31における基端側の所定の部位、即ち処置具31の先端31s(図1参照)とは反対側の端部寄りの所定の部位に対し取り付けられる。より詳しくは、スライダ41の処置具31に対する取付位置は、処置具挿通具20及び内視鏡1の挿入部2を介して処置具31を挿通させて、処置具31の先端31sを挿入部2の先端部2sの先端開口10aから外部へと突出させた状態とし得る所定の位置である。
処置具31には、長手方向の所定の部位の外周面に係合するように弁部材11が固定されている。この弁部材11は、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密を保持するために設けられる封止部材(sealing member)である。
弁部材11は、処置具31に対して着脱自在に構成されていてもよい。この構成の場合には、弁部材11の略中央部には、処置具31を密着状態で挿通させ得る貫通孔が設けられる。そのために、弁部材11の貫通孔は、処置具31の断面形状における径方向の寸法よりも若干小となるように形成されているのが望ましい。このように構成すれば、当該貫通孔に処置具31を挿通させると、弁部材11は貫通孔において伸縮することによって処置具31の外周面に密着する。これにより、処置具31との間の水密,液密状態を確保できる。
スライダ41は、図2,図3に示すように、処置具31に対し一体に取り付けられると共に、案内部本体22に対しては、空間22iの内部に着脱自在に取り付けられる処置具操作部材である。ここで、スライダ41の処置具31に対して取り付く形態としては、処置具31に対して固着させる構成であってもよく、また、処置具31に対して着脱自在に構成してもよい。
詳述すると、スライダ41は、スライダ本体部(筒状部41a,フランジ部41f,外筒状部41g)と、スライダ操作部(突起41t,押圧部41p)とによって主に構成されている。
スライダ本体部は、筒状部41aとフランジ部41fと外筒状部41gとが一体に形成されて、本スライダ41の基本構成部材を構成している。このスライダ本体部は、処置具31の外面に一体に取り付けられる。
スライダ本体部を構成する構成部材のうち筒状部41aは、全体として略筒状に形成され、その軸中心に処置具31を挿通した状態で、当該処置具31の外周面上に固定される構成部材である。
スライダ本体部を構成する構成部材のうちフランジ部41fは、筒状部41aの一端面を塞ぐように形成される略円板状の構成部材である。このフランジ部41fは、筒状部41aと外筒状部41gとを連結する構成部材である。
スライダ本体部を構成する構成部材のうち外筒状部41gは、全体として上記筒状部41aよりも大径の筒状に形成され、その先端内周側に上記フランジ部41fの外周縁部が接合される構成部材である。外筒状部41gは、案内部本体22の内面に沿う筒形状に形成され、同案内部本体22の空間22iの内部において長軸方向に摺動自在に配置される。
スライダ操作部は、上記スライダ本体部に対して長手方向Nにおいては上記スライダ本体部と一体化してこれと同方向に移動し得るように構成され、かつ上記スライダ本体部に対して長手方向Nに直交する方向(図2の符号P方向;筒状部41aと外筒状部41gとの径方向)においては上記スライダ本体部とは別に独立して同方向に移動自在となるように構成されている。
スライダ操作部は、突起41tと、押圧部41pとが一体に形成されている。突起41tは、スライダ本体部の外面に対し突没自在となるように配設される。そのために、スライダ操作部は、スライダ本体部の内部から外方に向けて不図示の付勢部材等によって付勢されている。これにより、スライダ操作部が通常状態(無負荷状態;図2に示す状態)にあるときには、突起41tがスライダ本体部の外面側に突出するように配設される。
そして、突起41tは、スライダ41が案内部本体22の空間22i内に収納配置された状態で、案内部本体22のスリット22sに沿う方向に摺動自在に嵌入される。このとき、突起41tは、その先端が案内部本体22の外部に突出するように配置される。これにより、突起41tは、上記スリット22sに沿う方向にのみ摺動自在に配置される。この場合において、スリット22sと突起41tとの間は、図示を省略しているが、突起41tの摺動を確保しながら、水密,液密が確保される程度に封止されている。
この構成により、スライダ41は処置具31に取り付けられた状態で案内部本体22の空間22i内において長手方向Nに沿う方向に移動し得るように構成されている。即ち、操作者は、突起41tに指をかけて、長手方向Nに沿う方向にスリット22sに沿わせて移動させることによって、スライダ41及び処置具31を長手方向Nに沿う方向に移動させることができる。
一方、押圧部41pは、後述する弁解除部材42に作用する構成部である。押圧部41pは、スライダ本体部の内部に配設されている。このとき、押圧部41pは、その一端部が後述する弁解除部材42のテーパ部42wに当接する位置に配置されている。また、押圧部41pには、上記突起41tが一体に形成されている。
上述したように、突起41tは、スライダ本体部の外面に対し突没自在となるように配設されている。そして、スライダ操作部は、スライダ本体部の内部から外方に向けて不図示の付勢部材等によって付勢されている。
したがって、この構成により、上記突起41tを図2の矢印P1に沿う方向に押圧すると、当該スライダ操作部(即ち突起41t,押圧部41p)も同方向に移動する。すると、押圧部41pが、後述する弁解除部材42のテーパ部42wに作用して、当該弁解除部材42を図3の矢印N1方向へと移動させるように構成されている(図2から図3への変位を参照)。
このように、上記スライダ操作部は、長手方向Nに沿う方向への使用者(ユーザ),操作者による摺動操作によってスライダ本体部と共に同方向へと移動して、当該スライダ41に取り付けられた処置具31を同方向(長手方向Nに沿う方向)へと移動させる操作部材として機能する。これと共に、上記スライダ操作部は、長手方向Nに対して直交する矢印P1方向への使用者(ユーザ),操作者による押圧操作によって当該スライダ操作部(の押圧部41p)を弁解除部材42に作用させて弁部材11の弁解除操作を行う操作部材としても機能する操作部材となっている。
弁解除部材42は、使用者(ユーザ),操作者による押圧操作を受けてスライダ操作部の押圧部41pが所定方向(図2の矢印P1方向)に移動するのに伴って所定方向(図3の矢印N1方向)に移動して、弁部材11に接触することにより、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を解除するために設けられる部材である。
弁解除部材42は、スライダ41とは別体に構成されている。弁解除部材42は、案内部本体22の空間22iの内部において、上記スライダ41の筒状部41aに嵌合して、長手方向Nに沿う方向に所定の範囲内で摺動自在となるように配設されている。
弁解除部材42は、その先端部に、先端に向けた傾斜面を持って形成されるテーパ部42wを有している。このテーパ部42wは、スライダ41(処置具操作部)の押圧部41pが接触した状態でスライダ41(処置具操作部)の突起41tが押圧操作されたとき、スライダ41(処置具操作部)の押圧部41pが摺動して弁解除部材42を処置具31の長手方向Nへ移動させるための部位である。テーパ部42wは、一例としてスライダ本体部の筒状部41aの外周の略全周を覆う様に形成されている。
また、弁解除部材42は、その後端部の外周縁部に、弁部材11に作用して当該弁部材11と案内部本体22との間の水密,液密状態を解除するための弁解除部42xを有している。そして、弁解除部材42は、その略中央部分に上記スライダ本体部の筒状部41aを挿通させる貫通孔を有している。そして、弁解除部42xは、上記テーパ部42wの先端から当該スライダ本体部の軸方向と平行に基端側(後方)に向けて延出している。この場合において、弁解除部42xは、案内部本体22の内周面に沿って全周に亘って形成されている。
上述したように、弁解除部材42のテーパ部42wには、スライダ操作部の押圧部41pが当接している。そして、突起41tが、使用者(ユーザ),操作者によって図2の矢印P1に沿う方向に押圧されると、押圧部41pの先端当接部が弁解除部材42のテーパ部42wを押圧する。これにより、弁解除部材42は、長手方向Nに沿う方向において図3の矢印N1方向に移動して、当該弁解除部材42の弁解除部42xが弁部材11の外縁部11aを押しのけて、当該弁部材11と案内部本体22との密着状態を解除するように構成されている。
なお、案内部本体22の空間22iの内部において弁解除部材42の移動範囲を規制するための規制突起22aが、案内部本体22の内壁面に設けられている。
このように構成された本実施形態の処置具挿通具20において、スライダ41は、図2に示すように、長手方向Nに沿う方向において、スリット22sの先端22saと基端22sbとの間(図2の符号Wで示す範囲)で移動し得るように構成されている。
なお、本実施形態において、弁解除部材42の弁解除部42xは、案内部本体22の内面に沿う全周に亘って形成した筒状部材で構成したが、この形態例に限られることはない。例えば、図5は、弁解除部材についての変形例を示す図である。図5は、当該弁解除部材のみを取り出して示す正面図である。この変形例に示す弁解除部材42Aでは、弁解除部42Axの形状を変更している。即ち、上述の実施形態においては、テーパ部42wは、スライダ本体部の筒状部41aの外周の略全周を覆う様に形成されている。また、弁解除部42xは、案内部本体22の内周面に沿うように形成されている。
このような第1の実施形態の形態に対し、本変形例においては、テーパ部42Awは、スライダ本体部の筒状部41aの外周のうち一部を覆う複数箇所(図5の例示は三箇所)に形成されている。この場合において、各テーパ部42Awは、周方向に略等間隔(例えば角度略120度間隔)を置いて形成されている。そして、各テーパ部42Awのうちの一つは、突起41tに対応する位置に配置されている。これに合わせて、弁解除部42Axも、同数(図5の例示は三箇所)形成されて、各弁解除部42Axは案内部本体22の内周面に沿って配置される。弁解除部材の構成例としては、このような形態の変形例(図5の構成)も適用し得る。
上述したように、処置具31は、スライダ41に対して一体に取り付けられた状態となっている。このことから、スライダ41がスリット22sに沿って長手方向Nに進退移動すると、処置具31も同方向に進退移動することになる。このような構成により、処置具31が、その軸方向である長手方向Nに沿って進退されると、弁部材11は処置具31の進退移動に追従する。このとき、弁部材11は、その外縁部11aにおいては案内部本体22と密着しつつ、柔軟に伸縮しながら摺動する。
この場合において、スライダ41及び処置具31の長手方向Nに沿う進退移動量が大きいと、これに追従して伸縮する弁部材11は、伸縮し得る限界を超えて損壊してしまう可能性も考えられる。しかし、上述したように、上記スライダ41は、スリット22sによって同方向への進退移動範囲(図2の符号W)が規制されている。このことから、弁部材11が伸縮し得る限界を超えて損壊してしまうようなことはない。
なお、処置具31の先端の位置についての体腔内における微調整のために、処置具31を進退移動させる移動量は、然程大きなものではなく、弁部材11の伸縮範囲程度で足りるので、充分に所望の微調整を行うことができ、何らの問題もない。
このように、弁部材11は、スライダ41の操作を行っていないときには、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を保持し得る。したがって、これにより、当該処置具挿通具20を用いて内視鏡1による処置を行う際に、内視鏡1の処置具挿通管路10及びチューブ21の空間21iを介して案内部本体22の空間22iへと逆流する体腔内の体液等の液体が、当該案内部本体22の外部に漏れ出ることを阻止する役目をする。
このように構成された本実施形態の処置具挿通具20を挿入機器である内視鏡1と共に使用する際の作用の概略を以下に説明する。なお、以下の説明において、「まず」,「次に」等を用いて便宜上説明しているが、記載した順序通りである必要はなく、順序が前後しても構わない。
まず、内視鏡1の挿入部2の所定の部位2z、即ち挿入部2を被検体の体腔内に挿入して使用する際に被検体外に位置する部位に対し、処置具挿通具20の案内部本体22を取り付ける。
次に、内視鏡1の処置具挿通管路10の処置具挿通口10bに、処置具挿通具20の処置具案内部であるチューブ21を接続する。
また、処置具31の所定の部位に、処置具操作部であるスライダ41と、弁解除部材42を取り付ける。ここで、スライダ41に対する処置具31の取付位置は、例えば処置具挿通具20及び内視鏡1の挿入部2に処置具31を挿通させたときに、当該処置具31の先端31sが内視鏡1の挿入部2の先端部2sの先端開口10aから外部に向けて突出した状態となる所定の位置である。この場合における、処置具31の先端31sの先端開口10aからの突出量は、処置の対象とする部位や、行う手技等によって適宜規定されているものである。
弁解除部材42の取り付けは、スライダ41を取り付けた処置具31に対し、その基端側から弁解除部材42を挿通させることによって行えばよい。
次いで、スライダ41を予め取り付けた処置具31を処置具挿通具20を介して内視鏡1の処置具挿通管路10に挿通させる。即ち、処置具31の管状部(挿入部)を案内部本体22の挿通口22pから当該案内部本体22の内部の空間22iへと挿入する。そのまま処置具31の管状部(挿入部)を押し進めて、チューブ21の空間21i内へと挿通させる。さらに、処置具31を押し進めると、当該処置具31は、処置具挿通口10bから処置具挿通管路10へと挿入され、当該処置具挿通管路10を経て先端開口10aより外部に突出する。処置具31の先端31sを所定量だけ突出させた状態で、スライダ41を処置具31に対して固定する。このとき、スライダ41は、案内部本体22の内部空間22i内に配置されると共に、処置具31に設けられた弁部材11は、案内部本体22の挿通口22pを塞ぐように閉塞する位置に配置される。即ち、弁部材11は、その外縁部11aが案内部本体22の内面に密着した形態で配置される。
なお、弁部材11を処置具31に対して着脱自在に構成している場合には、上述のようにして、弁部材11を所定の位置(挿通口22pを閉塞する位置)に配置した状態とした時、弁部材11の貫通孔と処置具31の外周面との密着部位において接着固定する。以上のようにして、本実施形態の処置具挿通具20を内視鏡1に取り付けることにより、内視鏡1による処置を行うための準備作業が完了する。
このようにして使用する挿入機器(内視鏡1)に組み込まれた処置具挿通具20と内視鏡1及び処置具31を用いて処置を行う際には、次のような操作を行う。
使用者(ユーザ)は、表示装置(不図示)に表示される内視鏡画像を観察しながら、一方の手(例えば右手)を用いて挿入部2の処置具挿通具20を取り付けた部位近傍を把持しつつ、同じ右手の指(例えば拇指)を処置具挿通具20のスライダ41の突起41tに当てて、これを押し引き操作する。このときのスライダ41の移動範囲は、図2の符号Wに示す範囲である。なお、他方の手(例えば左手)は、このとき内視鏡1の操作部3を把持しており、当該操作部3の操作部材を操作し得る状態にある。
このような操作を行うと、当該突起41tは、スリット22s内において長手方向Nに沿って先端22saと基端22sbとの間を進退移動する。すると、突起41t(スライダ操作部41t,41p)と一体に形成されているスライダ41のスライダ本体部(41a,41f、41g)は、処置具31と一体であることから、処置具31も同方向に同量だけ進退移動する。これにより、被検体内において、上記挿入部2の先端部2sの先端開口10aから突出した処置具31の先端31sの位置の微調整が行われる。
このように、使用者(ユーザ)は、一方の手(この場合は右手)で処置具31の進退操作を行っているとき、同じ一方の手(右手)で挿入部2を把持している。したがって、使用者(ユーザ)は、上記処置具31の操作と同時に、内視鏡画像を観察しながら、同じ手(右手)を用いて把持している挿入部2自体を押し引きすることによって、当該挿入部2の先端部2sの体腔内における位置の微調整を行うことができる。
また、使用者(ユーザ)は、挿入部2から手を離すことなく、常にこれを把持した状態にあるので、挿入部2の先端部2sが体腔内で位置ズレしてしまう心配もなく、常に安定した内視鏡画像を表示させることができる。
そして、このような処置操作を行っている際には、体腔内の圧力が外気圧よりも高いことに加えて、処置具挿通管路10及びチューブ21を挿通している処置具31が進退移動することになる。したがって、そのような使用環境に起因して、体腔内に留置した内視鏡1の挿入部2の先端部2sの先端開口10aから当該内視鏡1の処置具挿通管路10及び処置具挿通具20のチューブ21の空間21iを介して、逆流してくる体腔内の体液等の液体は、処置具挿通具20に設けられた弁部材11によって阻止される。したがって、処置具挿通具20の基端側、即ち手元側の挿通口22pから、それらの液体等が漏れ出てしまうことはない。
一方、内視鏡1を使用して処置を行う際には、挿入している状態の処置具31を引き抜いて別の処置具31に差し替えるといった操作を行うことがある。また、所望の処置が終了した後には、挿入している状態の処置具31を引き抜く操作が行われる。このような場合には、まず、弁部材11による封止状態を解除する弁解除操作を行う。この弁解除操作は、スライダ41の突起41tを、長手方向Nの手元側の最端部に引き込んだ状態とした後、図2の矢印P1方向に押圧することによって行うことができる。
つまり、図2の矢印P1方向に突起41tを押圧すると、これに伴って、押圧部41pの先端当接部が弁解除部材42のテーパ部42wを押圧する。これにより、弁解除部材42は、長手方向Nに沿う方向において図3の矢印N1方向に移動する。すると、弁解除部材42の弁解除部42xは、弁部材11の外縁部11aを押しのけて、当該弁部材11と案内部本体22との密着状態を解除する。このときの状態が図3に示す状態である。
そして、突起41tに加える矢印P1方向の押圧力を解除すると、突起41tは、不図示の付勢部材によって、元の通常状態における所定の位置(図2に示す状態)に復帰する。
このようにして、処置具31と案内部本体22との密着状態が解除されると、弁部材11の案内部本体22との密着状態が解除されて、長軸方向における処置具31の摺動性が向上する。したがって、これにより、処置具挿通管路10及び処置具挿通具20から処置具31を長手方向に容易に引き抜くことができる状態となる。
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、被検体の内部に挿入される内視鏡1(挿入機器)の挿入部2に取り付けられ、処置具31を内視鏡1(挿入機器)の挿入部2を介して被検体の内部に挿入させる処置具挿通具20において、処置具31を内視鏡1(挿入機器)の挿入部2を介して被検体の内部に案内する管状のチューブ21(処置具案内部)と、内視鏡1(挿入機器)の挿入部2が被検体の内部に挿入された際に、挿入部2における被検体の外部に位置する部位2zに着脱自在に設けられると共に、チューブ21(処置具案内部)の一端21aが連設され、チューブ21(処置具案内部)に対する処置具31の挿通口22pを有する案内部本体22と、処置具31に取り付けられ、案内部本体22に対して相対的に移動し得るように設けられるスライダ41(処置具操作部)と、処置具31の周囲に係合すると共に、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を保持するように設けられる弁部材11と、スライダ41(処置具操作部)の移動に伴って移動して、弁部材11に接触することにより、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を解除する弁解除部材42と、を有して構成している。
また、スライダ41(処置具操作部)は、処置具31に対して着脱自在に係合しているこれと共に、当該スライダ41は、処置具31に取り付けられた状態で案内部本体22に対して着脱自在に取り付けられるように構成している。
そして、弁解除部材42は、案内部本体22の内周面に沿って処置具31の長手方向Nに沿う方向に摺動される。このとき、弁解除部材42は、弁部材11の外縁部11aに接触するように構成している。
さらに、案内部本体22は、スライダ41(処置具操作部)が処置具31の長手方向Nに沿って摺動し得る範囲を規制するスリット22s(移動規制部)を有して構成している。
そしてまた、弁部材11は、周縁部が案内部本体22の内周面と接触することにより、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を保持するように構成している。
さらにまた、チューブ21(処置具案内部)は、内視鏡1における処置具挿通管路10の端部に設けられる処置具挿通口10bに対して取り付けられる構造を有して構成している。
そして、スライダ41のスライダ操作部(41t,41p)を長手方向Nに直交する方向(矢印P方向)に移動し得るように構成すると共に、スライダ操作部の所定方向(矢印P1方向)への押圧操作による同方向への移動を受けて弁解除部材42が長手方向Nに沿う方向に移動するように、弁解除部材42にはテーパ部42wが設けられて構成されている。
このような構成において、スライダ41(処置具操作部)が取り付けられた処置具31を、案内部本体22に装着し、この案内部本体22とチューブ21とを内視鏡1に取り付けた状態において、スライダ41を長軸方向において案内部本体22に対して相対的に移動させることによって、弁解除部材42を同方向へと移動させ得る。また、スライダ41のスライダ操作部(41t、41p)を、スリット22sによる移動範囲内における最も基端寄りの手元側に摺動させた後、押圧操作を行うことで、弁解除部材42が長軸方向後方に移動して、この弁解除部材42が弁部材11の外縁部11aに接触し、これを長軸方向手元側(後方)へと押しのける。これによって、弁部材11による案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を解除することができる。
したがって、弁部材11は、スライダ41のスライダ操作部を操作していないときには処置具挿通具20における水密性,液密性を常に確実に確保することができ、内視鏡1の使用時における体腔内からの体液等のバックフロー(backflow;逆流)を抑止することができる。また、スライダ操作部をスライド操作したときは、弁部材11は、伸縮することによって処置具31の進退移動に追従して移動するので、損傷することもない。さらに、スライダ操作部を所定の位置(その移動範囲W内の最も手元側)で押圧操作したときは、弁部材11による案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を解除することができる。
つまり、弁部材11による水密,液密状態は、スライダ41の押圧操作を行って弁解除部材42を長軸方向後方に移動させて、当該弁解除部材42が弁部材11の外周縁に接触し、これを押しのけることによって、弁部材11による案内部本体22内の水密,液密状態を解除することができる。したがって、この状態にしたときには、処置具31の軸方向における摺動性を向上させることができ、よって処置具31の進退移動をより円滑に行うことができる。
なお、弁部材11は、外周縁部が案内部本体22の内周面に接触して、長手方向に沿って摺動するよう構成したが、弁部材11の配設形態は、この形態に限られることはない。例えば、弁部材11を、案内部本体22の端面と接触させた状態に配設することによって、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を保持するように構成することもできる。
また、本実施形態においては、弁部材11を案内部本体22の挿通口22pを塞ぎ、これを閉塞する部位に配設した例を示したが、弁部材11の配設部位は、この形態に限られることはない。例えば、弁部材11をチューブ21の空間21iと案内部本体22の空間22iとの境となる接続部位近傍に配設するような形態でもよい。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の処置具挿通具について、図6〜図8を用いて以下に説明する。図6,図7は、本発明の第2の実施形態の処置具挿通具において、処置具を挿通させた状態の要部断面図である。このうち、図6は、処置具操作部を挿入側と手元側との所定の範囲内において操作中のようすを示している。また、図7は、処置具操作部の操作範囲内からさらに処置具操作部を手元側に引き込んで、処置具挿通具の内部の水密(watertight),液密(liquid-tight)状態を開放する際のようすを示している。そして、図8は、図6の[8]−[8]線に沿う断面を示す要部拡大断面図である。なお、図6は、図8の[6]−[6]線に沿う断面を示している。
本実施形態の処置具挿通具20Bの基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。本実施形態においては、処置具操作部であるスライダ41Bと弁解除部材42Bの構成が若干異なると共に、これらスライダ41B,弁解除部材42Bに係わる部位の構成が若干異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して、その詳細説明は省略し、異なる構成についてのみ、以下に詳述する。また、本実施形態の処置具挿通具20Bが用いられる内視鏡1は、上述の第1の実施形態で説明したものと同様のものを用い得る。したがって、その図示は省略し、以下の説明において内視鏡1に言及する際には、必要に応じて同じ符号を使用して説明する。
本実施形態の処置具挿通具20Bは、管状の処置具案内部であるチューブ21と、案内部本体22Bと、処置具操作部であるスライダ41Bと、当該スライダ41Bとは別体の弁解除部材42Bとを具備して主要部が構成されている。
案内部本体22Bは、挿入機器である内視鏡1の挿入部2が被検体の内部に挿入された際に、挿入部2における被検体の外部に位置する部位に着脱自在に設けられる。また、案内部本体22Bの内部の空間22iには、処置具31が挿通配置され、スライダ41Bが長手方向Nに沿う方向に移動自在に取り付けられる。また、案内部本体22Bには、上記空間22iと連通するスリット22sが長手方向Nに沿って貫通溝状に形成されている。このスリット22sには、スライダ41Bの突起41Bt(後述する)が嵌入して先端が外部に突出するように配置される。これにより、スリット22sは、上記突起41Btを長手方向Nに沿う方向に移動自在にガイドすると共に、当該突起41Btの長手方向Nに沿う方向における移動範囲を(先端22saと基端22sbとの間の符号Wで示す範囲内に)規制することにより、スライダ41B及びこれが取り付けられる処置具31の長手方向Nに沿う方向における移動範囲を規制する移動規制部として機能する。これらの点において、案内部本体22Bの構成及びその機能は、上述の第1の実施形態と同様である。
スライダ41Bは、筒状に形成され、処置具31に対し一体に取り付けられる処置具操作部材である。また、スライダ41Bは、案内部本体22Bに対しては、空間22iの内部に着脱自在に取り付けられる処置具操作部材である。ここで、スライダ41Bの処置具31に対して取り付く形態としては、処置具31に対して固着させる構成であってもよく、また、処置具31に対して着脱自在に構成してもよい。
即ち、スライダ41Bは、処置具31に対して事前に取り付けられる構成部品である。スライダ41Bは、案内部本体22Bの空間22i内において当該案内部本体22Bに対し着脱自在に設けられる。スライダ41Bは、案内部本体22Bの空間22i内において当該案内部本体22Bに対して装着された後、案内部本体22B及びチューブ21に対して相対的に、処置具31とは一体に長手方向に進退移動し得るように設けられる。また、スライダ41Bは、処置具31に対して着脱自在であっても構わない。
なお、スライダ41Bは、処置具31における基端側の所定の部位、即ち処置具31の先端31s(図1参照)とは反対側の端部寄りの所定の部位に対し取り付けられる。より詳しくは、スライダ41Bの処置具31に対する取付位置は、処置具挿通具20及び内視鏡1の挿入部2を介して処置具31を挿通させて、処置具31の先端31sを挿入部2の先端部2sの先端開口10aから外部へと突出させた状態とし得る所定の位置である(第1の実施形態と同様)。
処置具31には、長手方向の所定の部位の外周面に係合するように弁部材11が固定される(第1の実施形態と同様)。この弁部材11は、案内部本体22Bと処置具31との間の水密,液密を保持するために設けられる封止部材である。
さらに、弁部材11は、処置具31に対して着脱自在に構成されていてもよい。この構成の場合には、弁部材11の略中央部には、処置具31を密着状態で挿通させ得る貫通孔が設けられる。そのために、弁部材11の貫通孔は、処置具31の断面形状における径方向の寸法よりも若干小となるように形成されているのが望ましい。このように構成すれば、当該貫通孔に処置具31を挿通させると、弁部材11は貫通孔において伸縮することによって処置具31の外周面に密着する。これにより、処置具31との間の水密,液密状態を確保できる。
詳述すると、スライダ41Bは、図6,図7に示すように、全体として筒状に形成され、この筒状部の外表面に突起41Btを有して構成されている。この突起41tは、上記スライダ41Bが案内部本体22Bの空間22i内に収納配置された状態で、スリット22sに嵌入して先端が外部に突出するように形成されている。そして、この突起41Btは、スリット22sに沿う方向に摺動自在に配設される。この場合において、スリット22sと突起41Btとの間は、図示を省略しているが、突起41Btの摺動を確保しながらも、水密,液密が確保される程度に封止されている。この構成により、スライダ41Bは処置具31に取り付けられた状態で案内部本体22Bの空間22i内において長手方向Nに沿う方向に移動し得るように構成されている。
なお、ここで、上記突起41Btは、スライダ41Bと一体に形成されていてもよい。また、スライダ41Bとは別体の突起部材を、スライダ41Bの外表面に対して着脱自在とする構成でもよい。この場合、スライダ41Bの外表面に雌ネジ穴や嵌合穴を形成すると共に、上記突起41Btに相当する別部材の側に雄ネジ部や嵌合棒状部を形成した形態のねじ込み機構若しくは嵌め込み機構等の手段を用いることが考えられる。
つまり、突起41Btは、スリット22sの先端22saと基端22sbとの間において、長手方向Nに進退移動する。これに伴って、スライダ41Bは、案内部本体22Bの空間22i内において同方向に移動する。したがって、これにより、スリット22sと突起41Btとは、スライダ41Bの移動範囲を規制する。この構成により、スリット22sは、スライダ41Bと、これと共に移動する処置具31との移動範囲を規制する移動規制部として機能する。
尚、案内部本体22Bにスライダ41Bが装着された状態においては、処置具31は空間21i及び空間22iに挿入され、スライダ41Bは空間22iに配置され、突起41Btはスリット22sに嵌入している。また、この状態においては、図1に示すように、処置具31の先端31sは、内視鏡1の挿入部2の先端部2sの先端開口10aから突出している。
このように、上記スライダ41Bは、長手方向Nに沿う方向への使用者(ユーザ),操作者による摺動操作によって、当該スライダ41Bに取り付けられた処置具31を同方向(長手方向Nに沿う方向)へと移動させる操作部材として機能する。これと共に、上記スライダ41Bは、使用者(ユーザ),操作者による摺動操作によって弁解除部材42Bに作用して弁部材11の弁解除操作を行う操作部材としても機能する操作部材となっている。
弁解除部材42Bは、スライダ41Bとは別体に構成されている。弁解除部材42Bは、長手方向に長さ(幅)を有し略円環形状に形成され、案内部本体22Bの空間22iの内部において、案内部本体22Bの内周に沿うように配設される。そして、弁解除部材42Bは、長手方向Nに沿う方向に所定の範囲内で摺動自在となるように配設されている。
この弁解除部材42Bは、スライダ41B(処置具操作部)の移動に伴って同方向に移動して、弁部材11の外縁部11aに接触し、これを押しのけることにより、案内部本体22Bと処置具31との間の水密,液密状態を解除するために設けられる。
なお、図示を省略しているが、上述の第1の実施形態と同様に、案内部本体22Bの空間22iの内部において弁解除部材42Bの移動範囲を規制するための規制突起を案内部本体22Bの内壁面に設けてもよい。その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。
このように構成された本実施形態の処置具挿通具20Bにおいて、スライダ41Bは、図6に示すように、長手方向Nに沿う方向において、スリット22sの先端22saと基端22sbとの間(図6の符号Wで示す範囲)で移動し得るように構成されている。そして、スライダ41Bの移動範囲Wのうち、図6の符号H1で示す範囲は、処置具31の先端位置を微調整するためのスライダ41Bの調整用移動範囲である。また、同移動範囲Wのうち、図6の符号H2で示す範囲は、弁部材11の水密,液密状態を解除するためのスライダ41Bの解除用移動範囲となる。
なお、本実施形態において、弁解除部材42Bは、案内部本体22Bの内面に沿う全周に亘って形成した円環状部材として構成してもよいが、この形態例に限られることはない。例えば、図9は、弁解除部材についての変形例を示す図である。この変形例に示す弁解除部材42Bは、スライダ41の筒状部分を遊嵌状態で挿通させて、その外周側に配設される筒状部42Bzと、この筒状部42zから径方向外方に向けて、周方向に略等間隔に突設される複数の腕部42Bwと、この複数の腕部42Bwのそれぞれの先端に設けられ、案内部本体22Bの内面に沿うように形成され、軸方向に長さを有し、軸方向後方に向けて延出する弁解除部42Bxを有して構成されている。
弁解除部材42Bは、図6及び図7に記載のように次のような形態を有していてもよい。例えば、スリット22sの基端22sbと弁解除部材とは、例えばベルト又はひも状部材で接続されている。このベルト又はひも状部材の一例であるベルトBは、スリット22sの基端22sbから突起41Btに向けて延出し、一旦突起41Btに対して突き当たってから折り返して、突起41Btの反対側に向けて延出し、弁解除部材42Bと接続している。
突起41Btを、図6等に示す矢印N方向において手元側(後方)に向けて移動させると、ベルトBの折り返された分の長さが弁解除部材42Bを押す力をもって突起41Btの移動量よりも多く弁解除部材42Bを移動させる。
これによって、弁解除部材42Bは、スライダ41Bの長手方向Nに沿う方向への移動に伴って、スライダ41Bの移動量より多く同方向に移動して、弁部材11の外縁部11aに当接する。
この構成により、弁解除部材42Bは、スライダ41Bとは別体に形成され、スライダ41Bの長軸方向Nへの移動において、図6の移動範囲H2で移動するときには、スライダ41Bが弁解除部材42Bに作用して、弁部材11による案内部本体22Bの水密,液密状態を解除することができるように構成されている。弁解除部材の構成としては、このような構成の変形例(図9の構成)も適用し得る。
上述したように、処置具31は、スライダ41Bに対して一体に取り付けられた状態となっている。このことから、スライダ41Bがスリット22sに沿って長手方向Nに進退移動すると、処置具31も同方向に進退移動することになる。このような構成により、処置具31が、その軸方向である長手方向Nに沿って進退されると、弁部材11は処置具31の進退移動に追従する。このとき、弁部材11は、その外縁部11aにおいては案内部本体22Bと密着しつつ、柔軟に伸縮しながら摺動する。これにより、弁部材11は、案内部本体22と処置具31との間の水密,液密状態を維持し得る。
この場合において、スライダ41B及び処置具31の長手方向Nに沿う進退移動量が大きいと、これに追従して伸縮する弁部材11は、伸縮し得る限界を超えて損壊してしまう可能性も考えられる。しかし、上述したように、上記スライダ41Bは、スリット22sによって同方向への進退移動範囲が規制されている。このことから、弁部材11が伸縮し得る限界を超えて損壊してしまうようなことはない。
なお、処置具31の先端の位置についての体腔内における微調整のために、処置具31を進退移動させる移動量は、然程大きなものではなく、弁部材11の伸縮範囲程度で足りるので、充分に所望の微調整を行うことができ、何ら問題ない。
このように、弁部材11は、案内部本体22Bと処置具31との間の水密,液密状態を保持し得る。したがって、これにより、当該処置具挿通具20Bを用いて内視鏡1による処置を行う際に、内視鏡1の処置具挿通管路10及びチューブ21の空間21iを介して案内部本体22Bの空間22iへと逆流する体腔内の体液等の液体が、当該案内部本体22Bの外部に漏れ出ることを阻止する役目をする。
このように構成された本実施形態の処置具挿通具20Bを挿入機器である内視鏡1と共に使用する際の作用の概略を以下に説明する。以下の説明においても、「まず」,「次に」等を用いて便宜上説明しているが、記載した順序通りである必要はなく、順序が前後しても構わない。
まず、使用する挿入機器(内視鏡1)に対して当該処置具挿通具20Bを取り付ける手順は、上述の第1の実施形態で説明した場合と略同様である。
使用する挿入機器(内視鏡1)に組み込んだ処置具挿通具20Bと内視鏡1及び処置具31を用いて処置を行う際の操作は、次のようになる。
使用者(ユーザ)は、表示装置(不図示)に表示される内視鏡画像を観察しながら、一方の手(例えば右手)を用いて挿入部2の処置具挿通具20Bを取り付けた部位近傍を把持しつつ、同じ右手の指(例えば拇指)を処置具挿通具20Bのスライダ41Bの突起41Btに当てて、これを押し引き操作する。このときのスライダ41Bの長手方向Nに沿う方向の移動操作、即ち、被検体内における処置具31の先端31sの位置の微調整の操作は、上述の第1の実施形態と同様である。このときの操作範囲は、スリット22sの長手方向において図6の符号H1に示す範囲内(先端22saと基端22sbとの間)である。なお、他方の手(例えば左手)は、このとき内視鏡1の操作部3を把持しており、当該操作部3の操作部材を操作し得る状態にある。
このような操作を行うと、当該突起41Btは、スリット22s内において長手方向Nに沿って先端22saと基端22sbとの間を進退移動する。すると、突起41Btの設けられているスライダ41Bは、処置具31と一体であることから、処置具31も同方向に同量だけ進退移動する。これにより、被検体内において、上記挿入部2の先端部2sの先端開口10aから突出した処置具31の先端31sの位置の微調整が行われる。
このように、使用者(ユーザ)は、一方の手(この場合は右手)で処置具31の進退操作を行っているとき、同じ一方の手(右手)で挿入部2を把持している。したがって、使用者(ユーザ)は、上記処置具31の操作と同時に、内視鏡画像を観察しながら、同じ手(右手)を用いて把持している挿入部2自体を押し引きすることによって、当該挿入部2の先端部2sの体腔内における位置の微調整を行うことができる。
また、使用者(ユーザ)は、挿入部2から手を離すことなく、常にこれを把持した状態にあるので、挿入部2の先端部2sが体腔内で位置ズレしてしまう心配もなく、常に安定した内視鏡画像を表示させることができる。
そして、このような処置操作を行っている際には、体腔内の圧力が外気圧よりも高いことに加えて、処置具挿通管路10及びチューブ21を挿通している処置具31が進退移動することになる。
したがって、この操作を行っている際には、処置具挿通具20Bに設けられた弁部材11によって、体腔内に留置した内視鏡1の挿入部2の先端部2sの先端開口10aから当該内視鏡1の処置具挿通管路10及び処置具挿通具20Bのチューブ21の空間21iを介して逆流してくる体腔内の体液等の液体は処置具挿通具20Bに設けられた弁部材11によって阻止される。したがって、処置具挿通具20Bの基端側、即ち手元側の挿通口22pから、それらの液体等が漏れ出てしまうことはない。
一方、すでに挿入している状態の処置具31を引き抜いて別の処置具31に差し替える等の操作を行う際、若しくは挿入している処置具31を必要に応じて引き抜く操作を行う場合には、弁部材11による封止状態を解除する弁解除操作を行う。
即ち、内視鏡1を使用して処置を行う際に、挿入している状態の処置具31を引き抜いて別の処置具31に差し替えるといった操作や、若しくは、所望の処置が終了した後に挿入している状態の処置具31を引き抜く操作を行う場合がある。このような場合には、スライダ41Bの突起41Btを、さらに手元側に向けて、つまり、図6の符号H2の移動範囲内へと引き込む。この操作を行うと、スライダ41Bの移動に伴って弁解除部材42Bが長手方向Nにおける手元側へと移動して、弁解除部材42Bが弁部材11の外縁部11aを押しのけて、当該弁部材11と案内部本体22Bとの密着状態を解除する。このときの状態を図7に示している。このようにして、処置具31と案内部本体22Bとの密着状態が解除されると、弁部材11の案内部本体22との密着状態が解除されて、長軸方向における処置具31の摺動性が向上する。したがって、これにより、処置具挿通管路10及び処置具挿通具20Bから処置具31を長手方向に容易に引き抜くことができる状態となる。これにより、スライダ41における突起41Btを、最も手元側に摺動させた後、押圧操作を行うことで弁部材11による水密,液密状態を解除することができる。
以上説明したように上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の処置具挿通具について、図10,図11を用いて以下に説明する。図10,図11は、本発明の第3の実施形態の処置具挿通具において、処置具を挿通させた状態の要部断面図である。このうち、図10は、処置具操作部を手元側に引き込んだ際のようすを示している。また、図11は、図10の状態において処置具操作部を押圧して弁解除操作行った際のようすを示している。
本実施形態の処置具挿通具20Cの基本的な構成は、上述の各実施形態と略同様である。本実施形態においては、処置具操作部であるスライダ41Cと、弁解除部材42Cと、弁部材11Cの構成及び配置が若干異なる。したがって、上述の各実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して、その詳細説明は省略し、異なる構成についてのみ、以下に詳述する。また、本実施形態の処置具挿通具20Cが用いられる内視鏡1は、上述の第1の実施形態で説明したものと同様のものを用い得る。したがって、その図示は省略し、説明において内視鏡1に言及する際には必要に応じて同じ符号を使用して説明する。
本実施形態の処置具挿通具20Cは、管状の処置具案内部であるチューブ21と、案内部本体22Cと、処置具操作部であるスライダ41Cと、当該スライダ41Cとは別体に形成され一体に組み込まれた弁解除部材42Bと、当該スライダ41Cに一体に装着された弁解除部材42Cと、を具備して主要部が構成されている。
案内部本体22Cは、挿入機器である内視鏡1の挿入部2が被検体の内部に挿入された際に、挿入部2における被検体の外部に位置する部位に着脱自在に設けられる。また、案内部本体22Cの内部の空間22iには、処置具31が挿通配置され、スライダ41Cが長手方向Nに沿う方向に移動自在に取り付けられる。また、案内部本体22Cには、上記空間22iと連通するスリット22sが長手方向Nに沿って貫通溝状に形成されている。このスリット22sには、スライダ41Cのスライダ操作部における突起41Ctが嵌入して先端が外部に突出するように配置される。これにより、スリット22sは、上記突起41Ctを長手方向Nに沿う方向に移動自在にガイドすると共に、当該突起41Ctの長手方向Nに沿う方向における移動範囲を(先端22saと基端22sbとの間で)規制することにより、スライダ41C及びこれが取り付けられる処置具31の長手方向Nに沿う方向における移動範囲を規制する移動規制部として機能する。これらの点において、案内部本体22Cの構成及びその機能は、上述の第1の実施形態と同様である。
なお、本実施形態においても、スリット22sと突起41Ctとの間は、図示を省略しているが、突起41Ctの摺動を確保しながら、水密,液密が確保される程度に封止されている点において、上述の第1の実施形態と同様である。
スライダ41Cは、処置具31に対し一体に取り付けられると共に、案内部本体22Cに対しては、空間22iの内部に着脱自在に取り付けられる処置具操作部材である。ここで、スライダ41Cの処置具31に対して取り付く形態としては、処置具31に対して固着させる構成であってもよく、また、処置具31に対して着脱自在に構成してもよい。
詳述すると、スライダ41Cは、スライダ本体部(筒状部41Ca,規制突起41Cc)と、スライダ操作部(突起41Ct,押圧部41Cp,傾倒支持部41Cb)とによって主に構成されている。
スライダ本体部は、本スライダ41Cの基本構成部材となる筒状部41Caによって主に構成されている。筒状部41Caは、全体として略筒状に形成され、その軸中心に処置具31を挿通した状態で、当該処置具31の外周面上に固定される。筒状部41Caの外周面において、手元寄りの部位には、弁解除部材42Cの長手方向Nにおける移動範囲を規制するための規制突起41Ccが設けられている。規制突起41Ccは、弁解除部材42Cが長手方向Nにおいて先端寄りの所定位置と、手元寄りの所定位置とをそれぞれ規定するために二箇所設けられている。
スライダ操作部は、上記スライダ本体部と一体に構成されている。この場合において、スライダ操作部は、傾倒支持部41Cbと、突起41Ctと、押圧部41Cpとを有して主に構成されている。このスライダ操作部自体は、例えば柔軟性を有する樹脂素材等を用いて形成されている。
上記傾倒支持部41Cbは、突起41Ct及び押圧部41Cpを形成する構成部位を支持する支持部である。傾倒支持部41Cbには、突起41Ct及び押圧部41Cpが連続的に形成されている。ここで、突起41Ctは、上記各実施形態と同様に、筒状部41Caの径方向において外方に向けて突出する突状部である。また、押圧部41Cpは、上記傾倒支持部41Cbとは略平行となるように、かつ上記突起41Ctに連設され、筒状部41Caの径方向において、内方に突出するように形成されている。この押圧部41Cpは、後述する弁解除部材42Cのテーパ部42Cwに対して、その一端部が当接する位置に配置されている。
そして、上述したように、スライダ操作部の一部である当該傾倒支持部41Cbは、柔軟性を有し弾性を有する樹脂素材等によって形成されている。このことから、当該傾倒支持部41Cbは、例えば突起41Ctに対して図10の矢印P1方向への押圧力が加わったときには、自身が柔軟性を有していることから、所定の方向(図10の矢印R方向に沿う方向)に向けて傾倒自在に構成されている。そして、その押圧力が解除されたときには、自身の弾性によって、元の状態に復帰するように構成されている。これにより、突起41Ctは、スリット22sから案内部本体22Cの外部に向けて突没自在に構成されている。
突起41Ctは、上記傾倒支持部41Cbから連続的に形成される部位である。この突起41Ctは、上記傾倒支持部41Cbの軸中心からずれた位置に軸中心を有して形成されている。この構成により、突起41Ctに対して図10の矢印P1方向への押圧力を加えたとき、上記傾倒支持部41Cbが所定の方向(矢印R方向)に傾倒するように構成されている。
押圧部41Cpは、突起41Ctから連続的に形成される部位である。この押圧部41Cpは、上記傾倒支持部41Cb及び上記突起41Ctの軸中心に対していずれからもズレた位置に軸中心を有して形成されている。より具体的には、押圧部41Cpの軸中心は、上記傾倒支持部41Cbの配設されている部位に対して、突起41Ctの軸中心を挟んで反対側の部位に配設されている。換言すると、突起41Ctの軸中心を挟んで、一方の側に押圧部41Cpの軸中心が配設され、これと対向する他方の側に上記傾倒支持部41Cbの軸中心が配設されるように、スライド操作部は形成されている。なお、この場合において、上記傾倒支持部41Cb,上記突起41Ct,上記押圧部41Cpは、互いに略平行に形成されている。この構成により、突起41Ctに対して図10の矢印P1方向への押圧力を加えたとき、上記傾倒支持部41Cbが所定の方向(矢印R方向)に傾倒すると共に、押圧部41Cpが後述する弁解除部材42Cのテーパ部42Cwに当接し、これを押圧するように構成されている。
このように、本実施形態においては、スライダ操作部は、
上記スライダ本体部に対して長手方向Nにおいては、上記スライダ本体部と一体化に同方向に移動し得るように構成され、かつ上記スライダ本体部に対して長手方向Nに直交する方向(図10の符号P方向)を含む面内においては、図10の矢印R方向に沿って移動し得るように構成されている。
本実施形態においては、スライダ41Cの筒状部41Caの外周面上に弁解除部材42Cが嵌入している。この弁解除部材42Cは、筒状部41Caの外周面に沿って、長手方向Nに沿う方向に所定の範囲内で摺動自在に配設されている。この場合において、弁解除部材42Cは、筒状部41Caの二箇所の規制突起41Ccに挟まれた位置に配設されている。このように、二箇所の規制突起41Ccによって、弁解除部材42Cの移動範囲が規定されている。
弁解除部材42Cは、その先端部に、先端に向けた傾斜面を持って形成されるテーパ部42Cwを有している。このテーパ部42Cwは、スライダ41C(処置具操作部)の押圧部41Cpが接触した状態でスライダ41C(処置具操作部)の突起41Ctが押圧操作されたとき、スライダ41C(処置具操作部)の押圧部41Cpが摺動して弁解除部材42Cを処置具31の長手方向Nへ移動させるための部位である。
また、弁解除部材42Cは、その後端部の外周縁部に、弁部材11Cに作用して当該弁部材11Cと案内部本体22Cとの間の水密,液密状態を解除するための弁解除部42Cxを有している。そして、弁解除部材42Cは、その略中央部分に上記スライダ本体部の筒状部41Caを挿通させる貫通孔を有している。
上述したように、弁解除部材42Cのテーパ部42Cwには、スライダ操作部の押圧部41Cpが当接している。そして、突起41Ctが、使用者(ユーザ),操作者によって図10の矢印P1に沿う方向に押圧されると、押圧部41Cpの先端当接部が弁解除部材42Cのテーパ部42Cwを押圧する。これにより、弁解除部材42Cは、長手方向Nに沿う方向において図11の矢印N1方向に移動して、当該弁解除部材42Cの弁解除部42Cxが弁部材11Cの外縁部11aを押しのけて、当該弁部材11Cと案内部本体22Cとの密着状態を解除するように構成されている。
さらに、本実施形態においては、スライダ41Cの手元側端部に、弁部材11Cが配設されている。弁部材11C自体の構成は、上述の各実施形態と略同様である。本実施形態においては、弁部材11Cは、処置具31の外周面ではなく、スライダ41Cの筒状部41Caの外周面に固定されている。そして、当該スライダ41Cを取り付けた状態の処置具31を、本実施形態の処置具挿通具20Cの所定の位置に取り付けたとき、弁部材11Cは、外縁部11aが案内部本体22Cの内壁面と密着するように配置される。これにより、弁部材11は、案内部本体22Cの内部と処置具31(スライダ41C)との間を水密,液密状態に維持する役目をする。その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。
本実施形態においては、上記スライダ41Cは、突起41Ctに対して長手方向Nに沿う方向への使用者(ユーザ),操作者による摺動操作を受けて同方向へと移動して、当該スライダ41Cに取り付けられた処置具31を同方向(長手方向Nに沿う方向)へと移動させる操作部材として機能する。これと共に、上記スライダ41Cは、突起41Ctに対して長手方向Nに直交する矢印P1方向への使用者(ユーザ),操作者による押圧操作を受けて当該スライダ操作部(の押圧部41Cp)を弁解除部材42Cに作用させて弁部材11Cの弁解除操作を行う操作部材としても機能する操作部材となっている。
このように構成された本実施形態の処置具挿通具20Cを挿入機器である内視鏡1と共に使用する際の作用の概略を以下に説明する。
まず、使用する挿入機器(内視鏡1)に対して当該処置具挿通具20Cを取り付ける手順は、上述の各実施形態で説明した場合と略同様である。
使用する挿入機器(内視鏡1)に組み込んだ処置具挿通具20Cと内視鏡1及び処置具31を用いて処置を行う際の操作は、次のようになる。
使用者(ユーザ)は、表示装置(不図示)に表示される内視鏡画像を観察しながら、一方の手(例えば右手)を用いて挿入部2の処置具挿通具20Cを取り付けた部位近傍を把持しつつ、同じ右手の指(例えば拇指)を処置具挿通具20Cのスライダ41Cの突起41Ctに当てて、これを押し引き操作する。このときのスライダ41Cの長手方向Nに沿う方向の移動操作、即ち、被検体内における処置具31の先端31sの位置の微調整の操作は、上述の第1の実施形態と同様である。このときの操作範囲は、スリット22sの長手方向の長さの範囲内(先端22saと基端22sbとの間)である。
この操作を行っている際には、処置具挿通具20Cに設けられた弁部材11Cによって、体腔内から逆流してくる体液等の液体は阻止される。したがって、処置具挿通具20Cの基端側、即ち手元側の挿通口22pから、それらの液体等が漏れ出てしまうことはない。この場合において、弁部材11Cの外縁部11aは、案内部本体22Cの内壁面に常に密着状態にある。したがって、スライダ41Cが長手方向Nへと移動する際には、弁部材11Cの外縁部11aは、案内部本体22Cの内壁面に摺動しつつ移動する。したがって、弁部材11Cによる水密,液密状態は維持され得る。
一方、すでに挿入している状態の処置具31を引き抜いて別の処置具31に差し替える等の操作を行う際、若しくは挿入している処置具31を必要に応じて引き抜く操作を行う場合には、弁部材11Cによる封止状態を解除する弁解除操作を行う。
本実施形態における弁解除操作は、スライダ41Cの突起41Ctを、長手方向Nの手元側の最端部に引き込んだ状態とした後、図10の矢印P1方向に押圧することによって行うことができる。なお、本実施形態においては、図10に示すように、突起41Ctを長手方向Nの手元側の最端部に引き込んだ状態としたときの突起41Ctの停止位置は、当該突起41Ctとスリット22sの基端22sbとの間に所定の間隔を置いた位置となるように設定されている。この間隔は、スライダ操作部が矢印R方向に傾倒したときに突起41Ctが移動する領域を確保するために設けられる。
図10の矢印P1方向に突起41Ctを押圧すると、これに伴って、傾倒支持部41Cbが図11の矢印R1方向に傾倒する。これに伴い、押圧部41Cpの先端当接部が弁解除部材42Cのテーパ部42Cwを押圧する。これにより、弁解除部材42Cは、長手方向Nに沿う方向において図11の矢印N1方向に移動する。すると、弁解除部材42Cの弁解除部42Cxは、弁部材11Cの外縁部11aを押しのけて、当該弁部材11Cと案内部本体22Cとの密着状態を解除する。このときの状態が図11に示す状態である。
そして、突起41Ctに加える矢印P1方向の押圧力を解除すると、突起41Ctは、自身の弾性力によって、元の通常状態における所定の位置(図10に示す状態)に復帰する。
以上説明したように上記第3の実施形態によれば、上述の各実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態においては、スライダ41C自体に、スライダ操作部(41Cb,41Ct,41Cp)を一体に形成すると共に、弁解除部材42C及び弁部材11Cをもスライダ41Cと一体となるように組み込んで構成している。したがって、処置準備を行うのに際し、各構成部材の組み立て手順を簡素化することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。