[1]積層偏光板の製造方法
積層偏光板の製造方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面上に偏光子層を備える偏光性積層フィルムの偏光子層上に、接着剤層を介して、保護フィルムの一方の面上に防湿フィルムを備える防湿フィルム付保護フィルムを、その保護フィルム側で貼合する工程(以下、「第1保護フィルム貼合工程S10」ともいう。)を備える。
また図1に示すとおり、偏光性積層フィルムは、前述のコーティング法のように、好ましくは下記工程:
〔a〕基材フィルムの少なくとも一方の面上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程S1−1、
〔b〕積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程S1−2、
〔c〕延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程S1−3、
を含む方法によって製造される。
以上の製造方法により、基材フィルムと、偏光子層と、保護フィルムと、防湿フィルムとを前記の順で備える積層偏光板が得られる。
本発明における「偏光性積層フィルム」とは、基材フィルムと、その少なくとも一方の面上に積層される偏光子層とを備えるものであり、かつ、保護フィルムが貼合されていないものをいう。第1保護フィルム貼合工程S10にて偏光子層に防湿フィルム付保護フィルムを貼合してなるフィルム(基材フィルムを有している。)を、本明細書では「積層偏光板」という。また、本明細書において「偏光板」とは、偏光子層と、その少なくとも一方の面に接着剤層を介して積層される保護フィルムとからなるもの(すなわち、片面保護フィルム付偏光板又は両面保護フィルム付偏光板)であって、かつ、その前駆体である偏光性積層フィルムに含まれる基材フィルムを有しないものである。
以下、各工程について詳細に説明する。なお樹脂層形成工程S1−1において、ポリビニルアルコール系樹脂層を基材フィルムの両面に形成してもよいが、以下では主に片面に形成する場合について説明する。
<第1保護フィルム貼合工程S10>
前述のとおり偏光性積層フィルムは、好ましくは〔a〕樹脂層形成工程S1−1、〔b〕延伸工程S1−2、及び〔c〕染色工程S1−3を含む方法によって製造される。
〔a〕樹脂層形成工程S1−1
図4を参照して本工程は、基材フィルム30の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成して積層フィルム100を得る工程である。このポリビニルアルコール系樹脂層6は、延伸工程S1−2及び染色工程S1−3を経て偏光子層5となる層である。ポリビニルアルコール系樹脂層6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30の片面又は両面に塗工し、塗工層を乾燥させることにより形成することができる。
(基材フィルム)
基材フィルム30は熱可塑性樹脂から構成することができ、中でも透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から構成することが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物、共重合物を含む。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」などというときについても同様である。
基材フィルム30は、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる1つの樹脂層からなる単層構造であってもよいし、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を複数積層した多層構造であってもよい。基材フィルム30は、後述する延伸工程S1−2にて積層フィルム100を延伸する際、ポリビニルアルコール系樹脂層6を延伸するのに好適な延伸温度で延伸できるような樹脂で構成されることが好ましい。
基材フィルム30は、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤等が挙げられる。基材フィルム30中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。
基材フィルム30の厚みは通常、強度や取扱性等の作業性の点から1〜500μmであり、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
(塗工液)
基材フィルム30に塗工する塗工液は、好ましくはポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒(例えば水)に溶解させて得られるポリビニルアルコール系樹脂溶液である。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂及びその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等の他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレンのようなオレフィン類で変性したもの;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸のような不飽和カルボン酸類で変性したもの;不飽和カルボン酸のアルキルエステルで変性したもの;(メタ)アクリルアミドで変性したもの等が挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じ得る。上述のポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、100〜10000の範囲にあることが好ましく、1000〜10000の範囲にあることがより好ましく、1500〜8000の範囲にあることがさらに好ましく、2000〜5000の範囲にあることが最も好ましい。平均重合度は、JIS K 6726−1994「ポリビニルアルコール試験方法」に規定される方法によって求めることができる。平均重合度が100未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超では溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になってしまう。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂のケン化品であることが好ましい。ケン化度の範囲は、80モル%以上、さらには90モル%以上、とりわけ94モル%以上であることが好ましい。ケン化度が低すぎると、偏光性積層フィルムや、積層偏光板、偏光板にしたときの耐水性や耐湿熱性が十分でなくなる可能性がある。また、完全ケン化品(ケン化度が100モル%のもの)であってもよいが、ケン化度が高すぎると、染色速度が遅くなって、十分な偏光性能を与えるためには製造時間が長くなったり、場合によっては十分な偏光性能を有する偏光子層が得られなかったりすることがある。そこで、そのケン化度は99.5モル%以下、さらに99.0モル%以下であるのが好ましい。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化処理により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=〔(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)〕×100
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
塗工液は必要に応じて、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。可塑剤としては、ポリオール又はその縮合物等を用いることができ、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が例示される。添加剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の20重量%以下とするのが好適である。
上記塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ワイヤーバーコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティングのようなロールコーティング法;ダイコート法;カンマコート法;リップコート法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法等の方法から適宜選択することができる。
塗工層(乾燥前のポリビニルアルコール系樹脂層)の乾燥温度及び乾燥時間は塗工液に含まれる溶媒の種類に応じて設定される。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。
(ポリビニルアルコール系樹脂層)
ポリビニルアルコール系樹脂層6は、基材フィルム30の一方の面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。両面に形成すると、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の偏光板を得ることができるので、偏光板の生産効率の面でも有利である。
積層フィルム100におけるポリビニルアルコール系樹脂層6の厚みは、3〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。この範囲内の厚みを有するポリビニルアルコール系樹脂層6であれば、後述する延伸工程S1−2及び染色工程S1−3を経て、二色性色素の染色性が良好で偏光性能に優れ、かつ十分に薄い(例えば厚み10μm以下の)偏光子層5を得ることができる。ポリビニルアルコール系樹脂層6の厚みが3μm未満であると、延伸後に薄くなりすぎて染色性が悪化する傾向にある。
塗工液の塗工に先立ち、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂層6が形成される側の基材フィルム30の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム(火炎)処理等を施してもよい。
(プライマー層)
また、塗工液の塗工に先立ち、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着性を向上させるために、基材フィルム30上にプライマー層等を介してポリビニルアルコール系樹脂層6を形成してもよい。
プライマー層は、プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30の表面に塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。プライマー層形成用塗工液は、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との両方にある程度強い密着力を発揮する成分を含む。プライマー層形成用塗工液は通常、このような密着力を付与する樹脂成分と溶媒とを含有する。樹脂成分としては、好ましくは透明性、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑樹脂が用いられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。中でも、良好な密着力を与えるポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。より好ましくは、ポリビニルアルコール樹脂である。溶媒としては通常、上記樹脂成分を溶解できる一般的な有機溶媒や水系溶媒が用いられるが、水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成することが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために、プライマー層形成用塗工液に架橋剤を添加してもよい。架橋剤は、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、有機系、無機系等公知のものの中から適切なものを適宜選択する。架橋剤の例を挙げれば、例えば、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系(例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物)、高分子系の架橋剤である。プライマー層を形成する樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン樹脂、ジアルデヒド系架橋剤、金属キレート化合物系架橋剤等が好適に用いられる。
プライマー層の厚みは、0.05〜1μm程度であることが好ましく、0.1〜0.4μmであることがより好ましい。0.05μmより薄くなると、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光板の薄膜化に不利である。
プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液と同様であることができる。プライマー層は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液が塗工される面に塗工される。プライマー層形成用塗工液からなる塗工層の乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。
〔b〕延伸工程S1−2
図5を参照して本工程は、基材フィルム30及びポリビニルアルコール系樹脂層6からなる積層フィルム100を延伸して、延伸された基材フィルム30’及びポリビニルアルコール系樹脂層6’からなる延伸フィルム200を得る工程である。延伸処理は通常、一軸延伸である。
積層フィルム100の延伸倍率は、所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、積層フィルム100の元長に対して5倍超17倍以下であり、より好ましくは5倍超8倍以下である。延伸倍率が5倍以下であると、ポリビニルアルコール系樹脂層6’が十分に配向しないため、偏光子層5の偏光度が十分に高くならないことがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると、延伸時にフィルムの破断が生じ易くなるとともに、延伸フィルム200の厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性及び取扱性が低下するおそれがある。
延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。この場合、多段階の延伸処理のすべてを染色工程S1−3の前に連続的に行ってもよいし、二段階目以降の延伸処理を染色工程S1−3における染色処理及び/又は架橋処理と同時に行ってもよい。このように多段で延伸処理を行う場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行うことが好ましい。
延伸処理は、フィルム長手方向(フィルム搬送方向)に延伸する縦延伸であることができるほか、フィルム幅方向に延伸する横延伸又は斜め延伸等であってもよい。縦延伸方式としては、ロールを用いて延伸するロール間延伸、圧縮延伸、チャック(クリップ)を用いた延伸等が挙げられ、横延伸方式としては、テンター法等が挙げられる。延伸処理は、湿潤式延伸方法、乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、延伸温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
延伸温度は、ポリビニルアルコール系樹脂層6及び基材フィルム30全体が延伸可能な程度に流動性を示す温度以上に設定され、好ましくは基材フィルム30の相転移温度(融点又はガラス転移温度)の−30℃から+30℃の範囲であり、より好ましくは−30℃から+5℃の範囲であり、さらに好ましくは−25℃から+0℃の範囲である。基材フィルム30が複数の樹脂層からなる場合、上記相転移温度は該複数の樹脂層が示す相転移温度のうち、最も高い相転移温度を意味する。
延伸温度を相転移温度の−30℃より低くすると、5倍超の高倍率延伸が達成されにくいか、又は、基材フィルム30の流動性が低すぎて延伸処理が困難になる傾向にある。延伸温度が相転移温度の+30℃を超えると、基材フィルム30の流動性が大きすぎて延伸が困難になる傾向にある。5倍超の高延伸倍率をより達成しやすいことから、延伸温度は上記範囲内であって、さらに好ましくは120℃以上である。
延伸処理における積層フィルム100の加熱方法としては、ゾーン加熱法(例えば、熱風を吹き込み所定の温度に調整した加熱炉のような延伸ゾーン内で加熱する方法。);ロールを用いて延伸する場合において、ロール自体を加熱する方法;ヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を積層フィルム100の上下に設置し輻射熱で加熱する方法)等がある。ロール間延伸方式においては、延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。
延伸工程S1−2に先立ち、積層フィルム100を予熱する予熱処理工程を設けてもよい。予熱方法としては、延伸処理における加熱方法と同様の方法を用いることができる。予熱温度は、延伸温度の−50℃から±0℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−40℃から−10℃の範囲であることがより好ましい。
また、延伸工程S1−2における延伸処理の後に、熱固定処理工程を設けてもよい。熱固定処理は、延伸フィルム200の端部をクリップにより把持した状態で緊張状態に維持しながら、結晶化温度以上で熱処理を行う処理である。この熱固定処理によってポリビニルアルコール系樹脂層6’の結晶化が促進される。熱固定処理の温度は、延伸温度の−0℃〜−80℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−0℃〜−50℃の範囲であることがより好ましい。
〔c〕染色工程S1−3
図6を参照して本工程は、延伸フィルム200のポリビニルアルコール系樹脂層6’を二色性色素で染色してこれを吸着配向させ、偏光子層5とする工程である。本工程を経て基材フィルム30’の片面又は両面に偏光子層5が積層された偏光性積層フィルム300が得られる。二色性色素としては、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料を用いることができる。
染色工程は、二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に延伸フィルム200全体を浸漬することにより行うことができる。染色溶液としては、上記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されてもよい。染色溶液における二色性色素の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることがさらに好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、ヨウ素を含有する染色溶液にヨウ化物をさらに添加することが好ましい。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。染色溶液におけるヨウ化物の濃度は、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムとの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることがさらに好ましい。染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
なお、染色工程S1−3を延伸工程S1−2の前に行ったり、これらの工程を同時に行ったりすることも可能であるが、ポリビニルアルコール系樹脂層に吸着させる二色性色素を良好に配向させることができるよう、積層フィルム100に対して少なくともある程度の延伸処理を施した後に染色工程S1−3を実施することが好ましい。すなわち、延伸工程S1−2にて目標の倍率となるまで延伸処理を施して得られる延伸フィルム200を染色工程S1−3に供することができるほか、延伸工程S1−2にて目標より低い倍率で延伸処理を行った後、染色工程S1−3中に総延伸倍率が目標の倍率となるまで延伸処理を施すこともできる。後者の実施態様としては、1)延伸工程S1−2において目標より低い倍率で延伸処理を行った後、染色工程S1−3における染色処理中に総延伸倍率が目標の倍率となるように延伸処理を行う態様や、後述するように、染色処理の後に架橋処理を行う場合には、2)延伸工程S1−2において目標より低い倍率で延伸処理を行った後、染色工程S1−3における染色処理中に、総延伸倍率が目標の倍率に達しない程度まで延伸処理を行い、次いで、最終的な総延伸倍率が目標の倍率となるように架橋処理中に延伸処理を行う態様等を挙げることができる。
染色工程S1−3は、染色処理に引き続いて実施される架橋処理工程を含むことができる。架橋処理は、架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に染色されたフィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができ、例えば、ホウ酸、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。架橋剤は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋溶液は、具体的には架橋剤を溶媒に溶解した溶液であることができる。溶媒としては、例えば水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒をさらに含んでもよい。架橋溶液における架橋剤の濃度は、1〜20重量%の範囲であることが好ましく、6〜15重量%の範囲であることがより好ましい。
架橋溶液はヨウ化物を含むことができる。ヨウ化物の添加により、偏光子層5の面内における偏光性能をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。架橋溶液におけるヨウ化物の濃度は、0.05〜15重量%であることが好ましく、0.5〜8重量%であることがより好ましい。架橋溶液の温度は、10〜90℃の範囲にあることが好ましい。
架橋処理は、架橋剤を染色溶液中に配合することにより、染色処理と同時に行うこともできる。また、架橋処理中に延伸処理を行ってもよい。架橋処理中に延伸処理を実施する具体的態様は前述のとおりである。また、組成の異なる2種以上の架橋溶液を用いて、架橋溶液に浸漬する処理を2回以上行ってもよい。
染色工程S1−3の後、第1保護フィルムを貼合する前に洗浄工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。洗浄工程は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、イオン交換水、蒸留水のような純水に染色処理後の又は架橋処理後のフィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。洗浄工程は、水洗浄工程とヨウ化物溶液による洗浄工程との組み合わせであってもよい。
洗浄工程の後に行われる乾燥工程としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常20〜95℃である。
偏光性積層フィルム300が有する偏光子層5の厚みは例えば30μm以下、さらには20μm以下であることができるが、偏光板の薄型化の観点から10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。偏光子層5の厚みは通常、2μm以上である。
本工程では、図7及び図8を参照して、上記偏光性積層フィルム300の偏光子層5上に、第1保護フィルム10の一方の面上に防湿フィルム35を備える防湿フィルム付保護フィルム400を、その保護フィルム側で貼合し、積層偏光板500を得る。防湿フィルム35は、温度40℃、相対湿度90%での透湿度が500g/m2/24h以下である。透湿度は、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定される値である。
上記のような所定の透湿度を有する防湿フィルム35を備える第1保護フィルム10を、偏光性積層フィルム300の偏光子層5に貼合することにより得られた積層偏光板は、積層偏光板における保護フィルムの水分量を保持することができ、該積層偏光板から基材フィルム30’及び防湿フィルム35を剥離除去して製造される偏光板のカールを効果的に抑制することができる。
ここで、偏光板のカール及び本発明のカール抑制効果について説明を加える。カールとは、偏光板のようなフィルム(積層フィルムを含む。)が弓状に(あるいは顕著な場合は筒状に)湾曲する現象である。偏光子層5の一方の面に接着剤層15を介して第1保護フィルム10を貼合してなる片面保護フィルム付偏光板に関していえば、第1保護フィルム10側を内側にしてカールしている状態を正カールといい、偏光子層5側を内側にしてカールしている状態を逆カールという。
偏光板においてカールが問題となるのは、液晶セル等の表示セルに粘着剤層を介して偏光板を貼合するときにその偏光板にカールが生じている場合である。すなわち、液晶セル等の表示セルに貼合する時点において偏光板は通常、各種のフィルムや層のような他の周辺部材が貼合されて複合偏光板となっていることから、この複合偏光板においてカールを抑制することが肝要である。周辺部材としては、保護フィルム上に貼合される傷付き防止用のプロテクトフィルム;保護フィルム上(例えば、両面保護フィルム付偏光板の場合)又は偏光子層上(例えば、片面保護フィルム付偏光板の場合)に積層される、偏光板を表示セルや他の光学部材に貼合するための粘着剤層;粘着剤層の外面に積層されるセパレートフィルム;保護フィルム上(例えば、両面保護フィルム付偏光板の場合)又は偏光子層上(例えば、片面保護フィルム付偏光板の場合)に積層される、位相差フィルムのような光学補償フィルムや、その他の光学機能性フィルム;保護フィルム上に積層される表面処理層等が挙げられる。
複合偏光板は、カールがなくフラットであるか、又は複合偏光板が有する粘着剤層側を外側(凸)にして若干カールしているぐらいがちょうど良い。これにより、表示セルに複合偏光板を貼合する際に、粘着剤層と表示セルとの間に気泡が混入することを抑制でき、表示装置に表示上の不具合を生じたり、貼合面の端部に不良が発生する不具合を生じたりすることを抑制できる。反対に、粘着剤層側を内側(凹)にして複合偏光板がカールしていると、貼合時に気泡を噛み込みやすく、上記不具合を生じる可能性が高い。
周辺部材を貼合する際に、意図的に複合偏光板のカール量を抑制したり、カール方向を矯正したりすることはある程度は可能であるが、やはり、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼合してなる偏光板の状態でカールが小さくなければ複合偏光板のカールをコントロールすることは難しい。従って、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼合してなる偏光板それ自体のカールを抑制することが肝要である。
すなわち、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼合してなる偏光板のカールは、正カールであるか逆カールであるかにかかわらず、周辺部材の貼合によって矯正可能な程度まで小さくされることが好ましく、できるだけフラットであることがより好ましい。本発明によればこれを実現することができる。特に、従来のコーティング法においては、偏光子層に保護フィルムを貼合した後に基材フィルムを剥離除去すると、得られる偏光板は逆カール方向に大きくカールする傾向にあったが、本発明によれば、とりわけこの逆カールを効果的に抑制することができる。
従来のコーティング法において逆カールが生じやすいのは、基材フィルムによる拘束力が働いているためであると考えられる。コーティング法により形成された偏光性積層フィルムにおいて偏光子層は、基材フィルムの剛性によって収縮されていない状態となっており、保護フィルム貼合後に基材フィルムを剥離除去すると偏光子層に収縮が生じるためであると考えられる。なお、これに対して、単体(単独)フィルムからなる偏光子(偏光フィルム)に接着剤層を介して保護フィルムを貼合する単体フィルム法の場合は、保護フィルム貼合前に水分蒸発、乾燥、張力コントロール等で偏光子が十分に収縮しているため、保護フィルム貼合後も偏光子にさほど寸法変化が起こらず、そもそもカールの問題は生じにくい。
保護フィルムの偏光子層に貼合される面とは反対側に、透湿度500g/m2/24hrs以下の防湿フィルムが積層された保護フィルムを、偏光子層に接着剤を介して貼合することにより得られた積層偏光板は、該積層偏光板から基材フィルム及び防湿フィルムを剥離除去して製造される偏光板の逆カールを効果的に抑制することができるのは次の理由によるものと推定される。
防湿フィルム35が積層された第1保護フィルム10は、偏光子層5と、接着剤層15を介して貼合乾燥する際にも、第1保護フィルム10から水分が抜けにくい。したがって、第1保護フィルム10は水分を保持することができ、収縮が抑制されている。一方、偏光子層5も基材フィルム30’に拘束されているため、収縮が抑制されている。
図9に示される様に、積層偏光板500から基材フィルム30’を除去すると、偏光子層5は基材フィルム30’による拘束が解かれ、偏光子層5は、例えば、矢印bの方向に収縮し、逆カールが生じる。一方、積層偏光板500から防湿フィルム35を除去すると、第1保護フィルム10は防湿フィルム35による拘束が解かれ、第1保護フィルム10は、例えば、矢印aの方向に向けて収縮し、正カールの力が生じる。このように、積層偏光板500から基材フィルム30’及び防湿フィルム35を除去して作製された偏光板1では、逆カールを抑制する正カールの力が働いているため、偏光板1全体としては、カールが抑制されると推察される。
偏光板に働くカール力をバランスさせるという観点から、防湿フィルム35の温度40℃、相対湿度90%での透湿度に対する基材フィルム30’の温度40℃、相対湿度90%での透湿度の比は、例えば保護フィルム10がセルロースエステル系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂からなる場合、0.01〜150であることが好ましく、0.03〜150であることがより好ましい。このように防湿フィルム35、基材フィルム30’及び保護フィルム10を選択することにより、より顕著にカールを抑制しうる。透湿度の比を上記範囲にすることが容易であるという点で、基材フィルム30’(及び基材フィルム30)の温度40℃、相対湿度90%での透湿度は0〜100g/m2/24hrであることが好ましく、0〜50g/m2/24hrであることがより好ましい。
(防湿フィルム)
防湿フィルム35は、剥離可能なフィルムであり、保護フィルム10の水分量を保持したり、表面を損傷、摩損などから保護するための部材である。防湿フィルム35は、例えば、透明樹脂からなる基材フィルムと、この基材フィルムの表面に積層された弱い接着性を有する粘着剤層と、により構成される。防湿フィルム35は、偏光板の使用時まで保護フィルム10に貼合されており、使用時においては保護フィルム10から粘着剤層ごと剥離される。
防湿フィルム35として、例えば、偏光板の保護フィルムの表面を仮着保護するためのプロテクトフィルムを用いることができる。プロテクトフィルムは、市販品として容易に入手することができる。市販品の例を挙げると、藤森工業(株)から販売されている「マスタック」、(株)サンエー化研から販売されている「サニテクト」、日東電工(株)から販売されている「イーマスク」、東レフィルム加工(株)から販売されている「トレテック」などがある。
防湿フィルム35の透湿度は、低すぎると、正カール方向へのカールが強くなって気泡混入の不具合を生じやすくなる。また、過酷な環境下に置かれた場合に正カールがさらに助長されて偏光板の端部が表示セルから剥離するおそれもある。このため、防湿フィルム35の温度40℃、相対湿度90%での透湿度は、5g/m2/24h以上であることが好ましく、10g/m2/24h以上であることがより好ましい。
防湿フィルム35の厚みは、1μm以上100μm以下が好ましい。薄膜化の観点からは、1μm以上80μm以下がさらに好ましい。防湿フィルム35の厚みが100μmを超えることは、コスト、ロール搬送性、防湿フィルム35のリワーク性の面で不利である。
防湿フィルム35を構成する基材フィルムは、例えば、機械的強度、熱安定性などに優れる熱可塑性樹脂からなる。防湿フィルム35に用いられる熱可塑性樹脂は、透湿度に応じて好適な樹脂を選択することができる。具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。中でも、コシの強さからポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸は、主に2価のジカルボン酸が用いられ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。具体的な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートなどが挙げられる。これらの混合物や、共重合体も好適に用いることができる。
基材フィルムは、単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。例えば、比較的高い透湿度を有する樹脂フィルムを用いる場合であっても、それに低透湿性のフィルムや層を積層することによって防湿フィルム35の透湿度を上記範囲内に調整することもできる。基材フィルムは、製造容易性及び製造コスト等の観点から、好ましくは単層構造である。
また、基材フィルムの厚みを大きくすることによって防湿フィルム35の透湿度を上記範囲内に調整してもよい。基材フィルムの厚みは1μm以上90μm以下であることができ、防湿フィルム35の厚みは1μm以上100μm以下であることができる。
防湿フィルム35を構成する粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物を用いることができる。また、粘着剤層の厚みを大きくしたり、粘着剤層に吸湿性物質(吸湿性粒子等)を含有させたりすることにより防湿フィルム35の透湿度を上記範囲内に調整することもできる。上で述べた方法を複数組み合わせて防湿フィルム35の透湿度を上記範囲内に調整してもよい。
防湿フィルム35は、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、所望の強度を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行なわれ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、又はその両方へ延伸される。
(第1保護フィルム)
第1保護フィルム10を構成する材料は、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂であることが好ましく、このような樹脂として、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等を挙げることができる。
本発明の方法は、所定の透湿度を有する防湿フィルム35を備えた防湿フィルム付保護フィルム400を用いることによって、カールの抑制を図るものであるため、保護フィルムの種類によらず、得られる偏光板のカールを抑制できるという利点がある。中でも、セルロースエステル系樹脂(例えばセルローストリアセテート)や(メタ)アクリル系樹脂(例えばポリメチルメタクリレート樹脂)のような透湿度の高い保護フィルム(例えば、温度40℃、相対湿度90%での透湿度が30g/m2/24hr以上、さらには50g/m2/24hr以上である保護フィルム)を用いた場合、水分率の変化による寸法差が大きいため、逆カールの抑制効果が顕著である。
第1保護フィルム10は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものを用いることもできる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)が特に好ましい。
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
なお、以上に示した各熱可塑性樹脂についての説明は、基材フィルム30を構成する熱可塑性樹脂についても適用できる。
第1保護フィルム10の偏光子層5とは反対側の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。保護フィルム表面に表面処理層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
第1保護フィルム10の厚みは、偏光板の薄型化の観点から薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る。従って、第1保護フィルム10の厚みは5〜90μm以下が好ましく、より好ましくは5〜60μm、さらに好ましくは5〜50μmである。
第1保護フィルム10は、接着剤層15を介して偏光性積層フィルム300の偏光子層5上(偏光子層5における基材フィルム30’とは反対側の面)に積層される。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子層5を有する場合は通常、両面の偏光子層5上にそれぞれ保護フィルムが貼合される。この場合、これらの保護フィルムは同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。
偏光子層5上に第1保護フィルム10を貼合するにあたり、第1保護フィルム10の貼合面には、偏光子層5との接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理等の表面処理(易接着処理)を行うことができ、中でも、プラズマ処理、コロナ処理又はケン化処理を行うことが好ましい。例えば第1保護フィルム10が環状ポリオレフィン系樹脂からなる場合、通常プラズマ処理やコロナ処理が行われる。また、セルロースエステル系樹脂からなる場合には、通常ケン化処理が行われる。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
(接着剤)
貼合に用いる接着剤としては、水系接着剤又は光硬化性接着剤を用いることができる。中でも、接着剤層の薄膜化の観点から、水系接着剤が好適に用いられる。水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。とりわけ、第1保護フィルム10としてケン化処理等で表面処理(親水化処理)されたセルロースエステル系樹脂フィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる水系接着剤を用いることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン、ビニルエーテル、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。接着剤に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、適度の重合度を有していることが好ましく、例えば、4重量%濃度の水溶液としたときに、粘度が4〜50mPa・secの範囲内、さらには6〜30mPa・secの範囲内にあることがより好ましい。
また、変性されたポリビニルアルコール系樹脂も好ましく用いることができる。好適な変性ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコール系樹脂、アニオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂、カチオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。このような変性されたポリビニルアルコール系樹脂を用いれば、接着剤層の耐水性を向上させる効果が得られやすい。
本発明に用いられる水系接着剤はもちろん、上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂を2種以上含むものであってもよく、また、未変性のポリビニルアルコール系樹脂(具体的には、ポリ酢酸ビニルの完全又は部分ケン化物)及び上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂の両方を含むものであってもよい。
水系接着剤を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、市販品の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、(株)クラレから販売されている“PVA−117H”、“KL−318、“KM−118”及び“CM−318”、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセノール NH−20”、“ゴーセファイマーZ”シリーズ、“ゴーセファイマー K−210”及び“ゴーセナール T−330”(以上、いずれも商品名)などを挙げることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤となりうる化合物を官能基別に掲げると、イソシアナト基(−NCO)を分子内に少なくとも2個有するイソシアネート化合物;エポキシ基(橋かけの−O−)を分子内に少なくとも2個有するエポキシ化合物;モノ−又はジ−アルデヒド;有機チタン化合物;マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛及びアルミニウムの如き二価又は三価金属の無機塩;グリオキシル酸の金属塩;メチロールメラミンなどがある。
これらの架橋剤のなかでも、上述した水溶性のポリアミドエポキシ樹脂をはじめとするエポキシ化合物や、アルデヒド類、メチロールメラミン、グリオキシル酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などが好適に用いられる。
架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂とともに水に溶解して接着剤を形成していることが好ましい。ただ、以下に述べるとおり、水溶液中での架橋剤量はわずかでよいので、水に対して例えば、少なくとも0.1重量%程度の溶解度を有するものであれば、架橋剤として使用できる。もちろん、一般に水溶性と呼ばれる程度の水に対する溶解度を有する化合物のほうが、本発明に用いる架橋剤としては好適である。
架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類などに応じて適宜設計されるものであるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常5〜60重量部程度、好ましくは10〜50重量部である。この範囲で架橋剤を配合すると、良好な接着性が得られる。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤が早期にゲル化する傾向にあり、その結果、ポットライフが極端に短くなって工業的な使用が困難になる。
水系接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、帯電防止剤、微粒子など、従来公知の適宜の添加剤を配合することもできる。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤に好適に用いられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光子と保護フィルムの間の接着剤層に用いることは、例えば、特開2005−070140号公報、特許第4432487号公報及び特開2005−208456号公報に記載されている。
水系接着剤を偏光性積層フィルム300の偏光子層5及び/又は防湿フィルム付保護フィルム400の第1保護フィルム10の貼合面に塗工し、これらのフィルムを接着剤層を介して貼合し、好ましくは貼合ロール等を用いて加圧し密着させることにより貼合工程が実施される。水系接着剤(後述する光硬化性接着剤についても同様である。)の塗工方法は特に制限されず、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法等の従来公知の方法を用いることができる。
水系接着剤を用いる場合、上述の貼合を実施した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するためにフィルムを乾燥させる乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥は、例えばフィルムを乾燥炉に導入することによって行うことができる。乾燥の方法は任意であるが、例えば、熱風を吹き付ける、いわゆる熱風乾燥炉を用いた乾燥や、赤外線ヒーターによる乾燥等を挙げることができる。急激な水分率低下を抑制し、乾燥をマイルドに実施するために、乾燥炉内の湿度を調整することも好ましい。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥時の最高温度は80℃以上であることが好ましい。
乾燥工程後、室温又はそれよりやや高い温度、例えば20〜45℃程度の温度で養生する養生工程を設けてもよい。養生温度は、乾燥温度よりも低く設定されるのが一般的である。
光硬化性接着剤とは、紫外線のような活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤をいい、例えば、重合性化合物及び光重合開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むもの等を挙げることができる。重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性(メタ)アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマーのような光重合性モノマーや、光重合性モノマーに由来するオリゴマーを挙げることができる。光重合開始剤としては、紫外線のような活性エネルギー線の照射により中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。重合性化合物及び光重合開始剤を含む光硬化性接着剤として、光硬化性エポキシ系モノマー及び光カチオン重合開始剤を含むものを好ましく用いることができる。
光硬化性接着剤を用いる場合、上述の貼合を実施した後、必要に応じて乾燥工程を行い(光硬化性接着剤が溶媒を含む場合等)、次いで活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましく用いられる。
[2]偏光板の製造方法
図2は、本発明の一実施の形態に係る偏光板の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。図2に示すとおり、偏光板の製造方法は、下記工程:
(1)上記の積層偏光板の製造方法によって積層偏光板を得る第1保護フィルム貼合工程S10と、
(2)基材フィルム及び防湿フィルムを、前記積層偏光板から剥離除去する剥離工程S20と、を備える。
以上の製造方法により、偏光子層の一方の面に第1保護フィルムが貼合された片面保護フィルム付偏光板が得られる。図3に示すように、剥離工程S20の後に、片面保護フィルム付偏光板の偏光子層側の面に接着剤層を介して第2保護フィルムを貼合する第2保護フィルム貼合工程S30を設けて、両面保護フィルム付偏光板を得てもよい。
なお、上述のように、本発明における偏光板(本発明の製造方法によって得られる偏光板)とは、偏光子層と、その少なくとも一方の面に接着剤層を介して積層される保護フィルムとからなるもの(すなわち、片面保護フィルム付偏光板又は両面保護フィルム付偏光板)であり、その前駆体である偏光性積層フィルムに含まれる基材フィルムを有しないものである。ただし、本発明の製造方法によって得られる偏光板は、これに他のフィルムや層のような他の光学部材(周辺部材)を積層した複合偏光板としたり、このような複合偏光板として使用したりすることができる。偏光子層は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層(又はフィルム)に二色性色素を吸着配向させたものであることができる。
本発明の一実施の形態における第1保護フィルム貼合工程S10は、上記の積層偏光板の製造方法における保護フィルム貼合工程S10と同一である。したがって、以下では剥離工程S20及び第2保護フィルム貼合工程S30について説明する。
<剥離工程S20>
図10を参照して本工程は、第1保護フィルム貼合工程S10の後に、基材フィルム30’を剥離除去する工程である。本工程にて片面保護フィルム付偏光板1が得られる。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子層5を有し、これら両方の偏光子層5に保護フィルムを貼合した場合には、この剥離工程S20により、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の片面保護フィルム付偏光板1が得られる。
基材フィルム30’を剥離除去する方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われるセパレータ(剥離フィルム)の剥離工程と同様の方法で剥離できる。基材フィルム30’は、第1保護フィルム貼合工程S10の後、そのまますぐ剥離してもよいし、第1保護フィルム貼合工程S10の後、一度ロール状に巻き取り、その後の工程で巻き出しながら剥離してもよい。
<第2保護フィルム貼合工程S30>
図3及び図11を参照して、片面保護フィルム付偏光板1における偏光子層5側の面に接着剤層25を介して第2保護フィルム20を貼合する本工程を実施すれば、両面保護フィルム付偏光板2を得ることができる。第2保護フィルム20及びこれを貼合する接着剤層25については、第1保護フィルム10及び接着剤層15について述べた記述が引用される。第1保護フィルム10と第2保護フィルム20は、互いに同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。接着剤層15と接着剤層25は、互いに同種の接着剤から形成されてもよいし、異種の接着剤から形成されてもよい。
第2保護フィルム20は、第2保護フィルムの一方の面上に防湿フィルムを備える防湿フィルム付保護フィルムとして、接着剤層25を介して、偏光子層5に貼合すれば、両面保護フィルム付偏光板2におけるカールをさらに改善できることがある。
前述のように、得られた片面保護フィルム付偏光板1、両面保護フィルム付偏光板2は、上で例示したような周辺部材を貼合して複合偏光板としたり、このような複合偏光板として使用したりすることができる。
周辺部材の一例である粘着剤層は、両面保護フィルム付偏光板2にあってはいずれかの保護フィルムの外面に積層することができ、片面保護フィルム付偏光板1にあっては、例えば偏光子層の保護フィルムとは反対側の面に積層することができる。粘着剤層を形成する粘着剤は通常、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。粘着剤層の厚みは通常、1〜40μmであり、好ましくは3〜25μmである。
また、周辺部材の他の一例である光学機能性フィルムとしては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付フィルム;表面反射防止機能付フィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;視野角補償フィルム等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
(1)プライマー層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の「Z−200」、平均重合度1100、ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製の「スミレーズ(登録商標)レジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の割合で混合して、プライマー層形成用塗工液を得た。
次に、基材フィルムとして厚み90μmの未延伸のポリプロピレン(PP)フィルム(融点:163℃、温度40℃、相対湿度90%での透湿度:15g/m2/24hr。延伸後の厚みは50μmであり、温度40℃、相対湿度90%での透湿度は3g/m2/24hrであった。)を用意し、その片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に小径グラビアコーターを用いて上記プライマー層形成用塗工液を塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。基材フィルムの透湿度は、温度40℃、相対湿度90%の条件下において、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定した。
(2)積層フィルムの作製(樹脂層形成工程)
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「PVA124」、平均重合度2400、ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、これをポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液とした。
上記(1)で作製したプライマー層を有する基材フィルムのプライマー層表面にリップコーターを用いて上記ポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液を塗工した後、80℃で20分間乾燥させることにより、プライマー層上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムを得た。
(3)延伸フィルムの作製(延伸工程)
上記(2)で作製した積層フィルムに対し、フローティングの縦一軸延伸装置を用いて160℃で5.2倍の自由端一軸延伸を実施し、延伸フィルムを得た。延伸後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.0μmであった。
(4)偏光性積層フィルムの作製(染色工程)
上記(3)で作製した延伸フィルムを、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む26℃の染色水溶液(水100重量部あたりヨウ素を0.35重量部、ヨウ化カリウムを10.0重量部含む。)に約90秒間浸漬した。次いで、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む78℃の架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を9.5重量部、ヨウ化カリウムを5.0重量部)に300秒浸漬させた。その後8℃の純水で10秒間洗浄し、最後に65℃で300秒間乾燥させた。以上の工程によりポリビニルアルコール系樹脂層から偏光子層を形成し、偏光性積層フィルムを得た。
(5)防湿フィルム付保護フィルムの作製
保護フィルム〔トリアセチルセルロース(TAC)からなる透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製の「KC−2UAW」)、温度40℃、相対湿度90%での透湿度1207g/m2/24hr〕の片面に、防湿フィルム(温度40℃、相対湿度90%での透湿度29g/m2/24h、厚み30μm)を貼合し、防湿フィルム付保護フィルムを得た。保護フィルム及び防湿フィルムの透湿度は、温度40℃、相対湿度90%の条件下において、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定した。以下の実施例及び比較例においても同様である。
(6)片面保護フィルム付偏光板の作製(第1保護フィルム貼合工程、剥離工程)
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製の「スミレーズ(登録商標)レジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部の割合で混合して、接着剤溶液とした。
上記(4)で作製した偏光性積層フィルムの偏光子層上に、接着剤溶液を塗布した後に、防湿フィルム付保護フィルムの保護フィルム側を貼合し、80℃、5分間で接着剤を乾燥させることで、防湿フィルム/保護フィルム/接着剤層/偏光子層/基材フィルムの層構成からなる積層偏光板を得た(第1保護フィルム貼合工程)。その後、得られた積層偏光板から基材フィルム及び防湿フィルムを除去して、片面保護フィルム付偏光板を得た(剥離工程)。
[実施例2]
防湿フィルムとして、透湿度87g/m2/24h、厚み53μmの防湿フィルムを用いた以外は、実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[実施例3]
防湿フィルムとして、透湿度455g/m2/24h、厚み25μmの防湿フィルムを用いた以外は、実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[比較例1]
防湿フィルムとして、透湿度827g/m2/24h、厚み40μmの防湿フィルムを用いた以外は、実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[比較例2]
防湿フィルムを保護フィルムに貼合していない以外は、実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[カール量の測定]
偏光板をTD方向80mm×MD方向80mmに裁断し、温度25℃、相対湿度55%の環境下で24時間静置した。この偏光板を、基準面(水平な台)上に、凹面を上にしておくと、4つの端部が持ち上がった状態になる。それら4つの角の高さの平均としてカール量を求め、下記評価基準に従ってカールの抑制の程度を評価した。カール量がプラスに大きい程正カール、マイナスに大きい程逆カールが強いことを示す。結果を表1に示す。
[偏光板の評価]
実施例1〜実施例3は、カール量が0mm以上であった。実施例1〜実施例3の偏光板は、保護フィルム(TACフィルム)上に、傷つき防止用のプロテクトフィルム(PETフィルム上に感圧式接着剤が塗布されている)を貼り合わせて、ほぼフラット又はやや正カールなプロテクトフィルム付偏光板を得ることができた。さらにこの偏光板の偏光子側の表面に表示セルと貼り合わせるための感圧式接着剤を貼合したが、偏光板はほぼフラット又はやや正カールの状態を保った。
比較例1及び比較例2は、カール量が0mm未満であった。比較例1及び比較例2の偏光板は、保護フィルム上に上記プロテクトフィルムを貼合しても、得られた偏光板はやや逆カールであった。さらにこの偏光板の偏光子側の表面に表示セルと貼り合わせるための感圧式接着剤を貼合したが、偏光板は逆カールのままであった。さらに、温度25℃、相対湿度55%の環境下に数日間放置してから再び観察したところ、さらに逆カールが大きくなる不具合を生じていた。
上記を鑑みて、カール量とカールの抑制について、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:カール量が0mm以上であり、偏光板の逆カールが十分に抑制されている。
B:カール量が0mm未満であり、偏光板の逆カールが顕著である。