図1に示すとおり、本発明の積層偏光板の製造方法は、下記工程:
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面上に偏光子層を備える偏光性積層フィルムの偏光子層側の面および保護フィルムの一方の面のいずれかまたは両方の面上に、ポリビニルアルコール系樹脂を7重量%未満含む水系接着剤を塗工して接着剤層を形成する接着剤層形成工程S10と、
(2) 前記接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整した後に、前記偏光性積層フィルムと前記保護フィルムとを、前記接着剤層を介して貼合して積層偏光板を得る第1保護フィルム貼合工程S20と、
を備える。
以上の製造方法により、偏光性積層フィルムの偏光子層側の面に保護フィルムが積層された積層偏光板が得られる。
また図1に示すとおり、本発明に係る偏光板の製造方法は、
(3) 前記積層偏光板の製造方法によって得られた積層偏光板から基材フィルムを剥離除去する剥離工程S30を備える。
また図2に示すとおり、偏光性積層フィルムは、前述のコーティング法のように、好ましくは下記工程:
〔a〕基材フィルムの少なくとも一方の面上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程S1−1、
〔b〕積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程S1−2、
〔c〕延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程S1−3、
を含む方法によって製造される。
以上の製造方法により、偏光子層の一方の面に第1保護フィルムが貼合された片面保護フィルム付偏光板が得られる。図3に示すように、剥離工程S30の後に、片面保護フィルム付偏光板の偏光子層側の面に接着剤層を介して第2保護フィルムを貼合する第2保護フィルム貼合工程S40を設けて、両面保護フィルム付偏光板を得てもよい。
なお、本発明における偏光板(本発明の製造方法によって得られる偏光板)とは、偏光子層と、その少なくとも一方の面に接着剤層を介して積層される保護フィルムとからなるもの(すなわち、片面保護フィルム付偏光板又は両面保護フィルム付偏光板)であり、その前駆体である偏光性積層フィルムに含まれる基材フィルムを有しないものである。ただし、本発明の製造方法によって得られる偏光板は、これに他のフィルムや層のような他の光学部材(周辺部材)を積層した複合偏光板としたり、このような複合偏光板として使用したりすることができる。偏光子層は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層(又はフィルム)に二色性色素を吸着配向させたものであることができる。
また、本発明における偏光性積層フィルムとは、基材フィルムと、その少なくとも一方の面上に積層される偏光子層とを備えるものであり、かつ、保護フィルムが貼合されていないものをいう。第1保護フィルム貼合工程S20にて偏光子層に第1保護フィルムを貼合してなる偏光性積層フィルムを、以下では、偏光性積層フィルムと区別するために、「保護フィルム付偏光性積層フィルム」ともいう。
以下、各工程について詳細に説明する。なお樹脂層形成工程S1−1において、ポリビニルアルコール系樹脂層を基材フィルムの両面に形成してもよいが、以下では主に片面に形成する場合について説明する。
<接着剤層形成工程S10>
本工程では、図7(a)および(b)を参照して、基材フィルム30’の少なくとも一方の面上に偏光子層5を備える偏光性積層フィルム300の偏光子層側の面および保護フィルム10の一方の面のいずれかまたは両方の面上に、ポリビニルアルコール系樹脂を7重量%未満含む水系接着剤を塗工して接着剤層15を形成する。
(偏光性積層フィルム)
前述のとおり偏光性積層フィルム300は、好ましくは〔a〕樹脂層形成工程S1−1、〔b〕延伸工程S1−2、及び〔c〕染色工程S1−3を含む方法によって製造される。
〔a〕樹脂層形成工程S1−1
図4を参照して本工程は、基材フィルム30の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成して積層フィルム100を得る工程である。このポリビニルアルコール系樹脂層6は、延伸工程S1−2及び染色工程S1−3を経て偏光子層5となる層である。ポリビニルアルコール系樹脂層6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30の片面又は両面に塗工し、塗工層を乾燥させることにより形成することができる。
基材フィルム30は熱可塑性樹脂から構成することができ、中でも透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から構成することが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物、共重合物を含む。
基材フィルム30は、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる1つの樹脂層からなる単層構造であってもよいし、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を複数積層した多層構造であってもよい。基材フィルム30は、後述する延伸工程S1−2にて積層フィルム100を延伸する際、ポリビニルアルコール系樹脂層6を延伸するのに好適な延伸温度で延伸できるような樹脂で構成されることが好ましい。
基材フィルム30は、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤等が挙げられる。基材フィルム30中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。
基材フィルム30の厚みは通常、強度や取扱性等の作業性の点から1〜500μmであり、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
基材フィルム30に塗工する塗工液は、好ましくはポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒(例えば水)に溶解させて得られるポリビニルアルコール系樹脂溶液である。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂及びその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等の他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレンのようなオレフィン類で変性したもの;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸のような不飽和カルボン酸類で変性したもの;不飽和カルボン酸のアルキルエステルで変性したもの;アクリルアミドで変性したもの等が挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じ得る。上述のポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、100〜10000の範囲にあることが好ましく、1000〜10000の範囲にあることがより好ましく、1500〜8000の範囲にあることがさらに好ましく、2000〜5000の範囲にあることが最も好ましい。平均重合度は、JIS K 6726−1994「ポリビニルアルコール試験方法」に規定される方法によって求めることができる。平均重合度が100未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超では溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になってしまう。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂のケン化品であることが好ましい。ケン化度の範囲は、80モル%以上、さらには90モル%以上、とりわけ94モル%以上であることが好ましい。ケン化度が低すぎると、偏光性積層フィルムや偏光板にしたときの耐水性や耐湿熱性が十分でなくなる可能性がある。また、完全ケン化品(ケン化度が100モル%のもの)であってもよいが、ケン化度が高すぎると、染色速度が遅くなって、十分な偏光性能を与えるためには製造時間が長くなったり、場合によっては十分な偏光性能を有する偏光子層が得られなかったりすることがある。そこで、そのケン化度は99.5モル%以下、さらに99.0モル%以下であるのが好ましい。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化処理により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=〔(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)〕×100
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
塗工液は必要に応じて、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。可塑剤としては、ポリオール又はその縮合物等を用いることができ、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が例示される。添加剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の20重量%以下とするのが好適である。
上記塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ワイヤーバーコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティングのようなロールコーティング法;ダイコート法;カンマコート法;リップコート法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法等の方法から適宜選択することができる。
塗工層(乾燥前のポリビニルアルコール系樹脂層)の乾燥温度及び乾燥時間は塗工液に含まれる溶媒の種類に応じて設定される。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂層6は、基材フィルム30の一方の面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。両面に形成すると、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の偏光板を得ることができるので、偏光板の生産効率の面でも有利である。
積層フィルム100におけるポリビニルアルコール系樹脂層6の厚みは、3〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。この範囲内の厚みを有するポリビニルアルコール系樹脂層6であれば、後述する延伸工程S1−2及び染色工程S1−3を経て、二色性色素の染色性が良好で偏光性能に優れ、かつ十分に薄い(例えば厚み10μm以下の)偏光子層5を得ることができる。ポリビニルアルコール系樹脂層6の厚みが3μm未満であると、延伸後に薄くなりすぎて染色性が悪化する傾向にある。
塗工液の塗工に先立ち、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂層6が形成される側の基材フィルム30の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム(火炎)処理等を施してもよい。
また、塗工液の塗工に先立ち、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着性を向上させるために、基材フィルム30上にプライマー層等を介してポリビニルアルコール系樹脂層6を形成してもよい。
プライマー層は、プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30の表面に塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。プライマー層形成用塗工液は、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との両方にある程度強い密着力を発揮する成分を含む。プライマー層形成用塗工液は通常、このような密着力を付与する樹脂成分と溶媒とを含有する。樹脂成分としては、好ましくは透明性、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑樹脂が用いられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。中でも、良好な密着力を与えるポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。より好ましくは、ポリビニルアルコール樹脂である。溶媒としては通常、上記樹脂成分を溶解できる一般的な有機溶媒や水系溶媒が用いられるが、水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成することが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために、プライマー層形成用塗工液に架橋剤を添加してもよい。架橋剤は、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、有機系、無機系等公知のものの中から適切なものを適宜選択する。架橋剤の例を挙げれば、例えば、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系(例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物)、高分子系の架橋剤である。プライマー層を形成する樹脂成分としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン樹脂、ジアルデヒド系架橋剤、金属キレート化合物系架橋剤等が好適に用いられる。
プライマー層の厚みは、0.05〜1μm程度であることが好ましく、0.1〜0.4μmであることがより好ましい。0.05μmより薄くなると、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光板の薄膜化に不利である。
プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液と同様であることができる。プライマー層は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成用の塗工液が塗工される面に塗工される。プライマー層形成用塗工液からなる塗工層の乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。溶媒が水を含む場合、乾燥温度は80℃以上であることが好ましい。
〔b〕延伸工程S1−2
図5を参照して本工程は、基材フィルム30及びポリビニルアルコール系樹脂層6からなる積層フィルム100を延伸して、延伸された基材フィルム30’及びポリビニルアルコール系樹脂層6’からなる延伸フィルム200を得る工程である。延伸処理は通常、一軸延伸である。
積層フィルム100の延伸倍率は、所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、積層フィルム100の元長に対して5倍超17倍以下であり、より好ましくは5倍超8倍以下である。延伸倍率が5倍以下であると、ポリビニルアルコール系樹脂層6’が十分に配向しないため、偏光子層5の偏光度が十分に高くならないことがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると、延伸時にフィルムの破断が生じ易くなるとともに、延伸フィルム200の厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性及び取扱性が低下するおそれがある。
延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。この場合、多段階の延伸処理のすべてを染色工程S1−3の前に連続的に行ってもよいし、二段階目以降の延伸処理を染色工程S1−3における染色処理及び/又は架橋処理と同時に行ってもよい。このように多段で延伸処理を行う場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行うことが好ましい。
延伸処理は、フィルム長手方向(フィルム搬送方向)に延伸する縦延伸であることができるほか、フィルム幅方向に延伸する横延伸又は斜め延伸等であってもよい。縦延伸方式としては、ロールを用いて延伸するロール間延伸、圧縮延伸、チャック(クリップ)を用いた延伸等が挙げられ、横延伸方式としては、テンター法等が挙げられる。延伸処理は、湿潤式延伸方法、乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、延伸温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
延伸温度は、ポリビニルアルコール系樹脂層6及び基材フィルム30全体が延伸可能な程度に流動性を示す温度以上に設定され、好ましくは基材フィルム30の相転移温度(融点又はガラス転移温度)の−30℃から+30℃の範囲であり、より好ましくは−30℃から+5℃の範囲であり、さらに好ましくは−25℃から+0℃の範囲である。基材フィルム30が複数の樹脂層からなる場合、上記相転移温度は該複数の樹脂層が示す相転移温度のうち、最も高い相転移温度を意味する。
延伸温度を相転移温度の−30℃より低くすると、5倍超の高倍率延伸が達成されにくいか、又は、基材フィルム30の流動性が低すぎて延伸処理が困難になる傾向にある。延伸温度が相転移温度の+30℃を超えると、基材フィルム30の流動性が大きすぎて延伸が困難になる傾向にある。5倍超の高延伸倍率をより達成しやすいことから、延伸温度は上記範囲内であって、さらに好ましくは120℃以上である。
延伸処理における積層フィルム100の加熱方法としては、ゾーン加熱法(例えば、熱風を吹き込み所定の温度に調整した加熱炉のような延伸ゾーン内で加熱する方法。);ロールを用いて延伸する場合において、ロール自体を加熱する方法;ヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を積層フィルム100の上下に設置し輻射熱で加熱する方法)等がある。ロール間延伸方式においては、延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。
延伸工程S1−2に先立ち、積層フィルム100を予熱する予熱処理工程を設けてもよい。予熱方法としては、延伸処理における加熱方法と同様の方法を用いることができる。予熱温度は、延伸温度の−50℃から±0℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−40℃から−10℃の範囲であることがより好ましい。
また、延伸工程S1−2における延伸処理の後に、熱固定処理工程を設けてもよい。熱固定処理は、延伸フィルム200の端部をクリップにより把持した状態で緊張状態に維持しながら、結晶化温度以上で熱処理を行う処理である。この熱固定処理によってポリビニルアルコール系樹脂層6’の結晶化が促進される。熱固定処理の温度は、延伸温度の−0℃〜−80℃の範囲であることが好ましく、延伸温度の−0℃〜−50℃の範囲であることがより好ましい。
〔c〕染色工程S1−3
図6を参照して本工程は、延伸フィルム200のポリビニルアルコール系樹脂層6’を二色性色素で染色してこれを吸着配向させ、偏光子層5とする工程である。本工程を経て基材フィルム30’の片面又は両面に偏光子層5が積層された偏光性積層フィルム300が得られる。二色性色素としては、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料を用いることができる。
染色工程は、二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に延伸フィルム200全体を浸漬することにより行うことができる。染色溶液としては、上記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されてもよい。染色溶液における二色性色素の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることがさらに好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、ヨウ素を含有する染色溶液にヨウ化物をさらに添加することが好ましい。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。染色溶液におけるヨウ化物の濃度は、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムとの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることがさらに好ましい。染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
なお、染色工程S1−3を延伸工程S1−2の前に行ったり、これらの工程を同時に行ったりすることも可能であるが、ポリビニルアルコール系樹脂層に吸着させる二色性色素を良好に配向させることができるよう、積層フィルム100に対して少なくともある程度の延伸処理を施した後に染色工程S1−3を実施することが好ましい。すなわち、延伸工程S1−2にて目標の倍率となるまで延伸処理を施して得られる延伸フィルム200を染色工程S1−3に供することができるほか、延伸工程S1−2にて目標より低い倍率で延伸処理を行った後、染色工程S1−3中に総延伸倍率が目標の倍率となるまで延伸処理を施すこともできる。後者の実施態様としては、1)延伸工程S1−2において目標より低い倍率で延伸処理を行った後、染色工程S1−3における染色処理中に総延伸倍率が目標の倍率となるように延伸処理を行う態様や、後述するように、染色処理の後に架橋処理を行う場合には、2)延伸工程S1−2において目標より低い倍率で延伸処理を行った後、染色工程S1−3における染色処理中に、総延伸倍率が目標の倍率に達しない程度まで延伸処理を行い、次いで、最終的な総延伸倍率が目標の倍率となるように架橋処理中に延伸処理を行う態様等を挙げることができる。
染色工程S1−3は、染色処理に引き続いて実施される架橋処理工程を含むことができる。架橋処理は、架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に染色されたフィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができ、例えば、ホウ酸、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。架橋剤は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋溶液は、具体的には架橋剤を溶媒に溶解した溶液であることができる。溶媒としては、例えば水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒をさらに含んでもよい。架橋溶液における架橋剤の濃度は、1〜20重量%の範囲であることが好ましく、6〜15重量%の範囲であることがより好ましい。
架橋溶液はヨウ化物を含むことができる。ヨウ化物の添加により、偏光子層5の面内における偏光性能をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。架橋溶液におけるヨウ化物の濃度は、0.05〜15重量%であることが好ましく、0.5〜8重量%であることがより好ましい。架橋溶液の温度は、10〜90℃の範囲にあることが好ましい。
架橋処理は、架橋剤を染色溶液中に配合することにより、染色処理と同時に行うこともできる。また、架橋処理中に延伸処理を行ってもよい。架橋処理中に延伸処理を実施する具体的態様は前述のとおりである。また、組成の異なる2種以上の架橋溶液を用いて、架橋溶液に浸漬する処理を2回以上行ってもよい。
染色工程S1−3の後、第1保護フィルムを貼合する前に洗浄工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。洗浄工程は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、イオン交換水、蒸留水のような純水に染色処理後の又は架橋処理後のフィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。洗浄工程は、水洗浄工程とヨウ化物溶液による洗浄工程との組み合わせであってもよい。
洗浄工程の後に行われる乾燥工程としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常20〜95℃である。
偏光性積層フィルム300が有する偏光子層5の厚みは例えば30μm以下、さらには20μm以下であることができるが、偏光板の薄型化の観点から10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。偏光子層5の厚みは通常、2μm以上である。
(保護フィルム)
第1保護フィルム10を構成する材料は、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂であることが好ましく、このような樹脂として、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等を挙げることができる。中でも、セルロースエステル系樹脂(例えばセルローストリアセテート)や(メタ)アクリル系樹脂(例えばポリメチルメタクリレート樹脂)のような透湿度の高い保護フィルムを用いた場合、水分率の変化による寸法差が大きいため、正カール方向に矯正する力が大きく、本発明のメリットが大きい。
第1保護フィルム10は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものを用いることもできる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)が特に好ましい。
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
なお、以上に示した各熱可塑性樹脂についての説明は、基材フィルム30を構成する熱可塑性樹脂についても適用できる。
第1保護フィルム10の偏光子層5と貼合する面とは反対側の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。保護フィルム表面に表面処理層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
第1保護フィルム10の厚みは、偏光板の薄型化の観点から薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る。従って、第1保護フィルム10の厚みは5〜90μm以下が好ましく、より好ましくは5〜60μm、さらに好ましくは5〜50μmである。
第1保護フィルム10は、接着剤層15を介して偏光性積層フィルム300の偏光子層5上(偏光子層5における基材フィルム30’とは反対側の面)に積層される。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子層5を有する場合は通常、両面の偏光子層5上にそれぞれ保護フィルムが貼合される。この場合、これらの保護フィルムは同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。
偏光子層5上に第1保護フィルム10を貼合するにあたり、第1保護フィルム10の貼合面には、偏光子層5との接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理等の表面処理(易接着処理)を行うことができ、中でも、プラズマ処理、コロナ処理又はケン化処理を行うことが好ましい。例えば第1保護フィルム10が環状ポリオレフィン系樹脂からなる場合、通常プラズマ処理やコロナ処理が行われる。また、セルロースエステル系樹脂からなる場合には、通常ケン化処理が行われる。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
(水系接着剤の塗工)
図7に示されるように、偏光性積層フィルム300の偏光子層5側の面、および、保護フィルム10の一方の面のいずれかの面上または両方の面上に、ポリビニルアルコール系樹脂を7重量%未満含む水系接着剤を塗工して接着剤層15を形成する。以下、偏光性積層フィルム300の偏光子層5側の面上に水系接着剤が塗工されたものを、接着剤層付偏光性積層フィルムとも記す。また、保護フィルム10の面上に水系接着剤が塗工されたものを、接着剤層付保護フィルムとも記す。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体又はそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体等を用いることができる。水系接着剤は、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物等の添加剤を含むことができる。
水系接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は7重量%未満であり、6重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。これによると、水系接着剤を、偏光性積層フィルム300上および保護フィルム10上に、均一に塗工することが容易である。また、接着剤層の厚みを薄くすることができる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が7重量%を超えると、塗工時に起泡を噛みこみやすく、また塗りむらが生じやすい。水系接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、(105℃で2時間乾燥後の水系接着剤重量/塗工時の水系接着剤重量)×100によって算出される値である。なお、「105℃で2時間乾燥」とは、水系接着剤中の溶媒を完全に揮発させるための十分な時間である。
水系接着剤(光硬化性接着剤についても同様)の塗工方法は特に制限されず、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法等の従来公知の方法を用いることができる。
<第1保護フィルム貼合工程S20>
本工程では、図8を参照して、上記接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整した後に、偏光性積層フィルム300と保護フィルム10とを、接着剤層15を介して貼合して積層偏光板400を得る。
上記のように、接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整した状態で、偏光性積層フィルム300の偏光子層5と、保護フィルム10とを、前記接着剤層15を介して貼合することにより、基材フィルム30’を剥離除去する剥離工程S30を経て製造される偏光板(前述のとおり、ここでいう偏光板とは、偏光子層と、その少なくとも一方の面に接着剤層を介して積層される保護フィルムとからなるものを意味している。)のカールを効果的に抑制することができる。
ここで、偏光板のカール及び本発明のカール抑制効果について説明を加える。カールとは、偏光板のようなフィルム(積層フィルムを含む。)が弓状に(あるいは顕著な場合は筒状に)湾曲する現象である。偏光子層5の一方の面に接着剤層15を介して第1保護フィルム10を貼合してなる片面保護フィルム付偏光板に関していえば、第1保護フィルム10側を内側にしてカールしている状態を正カールといい、偏光子層5側を内側にしてカールしている状態を逆カールという。
偏光板においてカールが問題となるのは、液晶セル等の表示セルに粘着剤層を介して偏光板を貼合するときにその偏光板にカールが生じている場合である。すなわち、液晶セル等の表示セルに貼合する時点において偏光板は通常、各種のフィルムや層のような他の周辺部材が貼合されて複合偏光板となっていることから、この複合偏光板においてカールを抑制することが肝要である。周辺部材としては、保護フィルム上に貼合される傷付き防止用のプロテクトフィルム;保護フィルム上(例えば、両面保護フィルム付偏光板の場合)又は偏光子層上(例えば、片面保護フィルム付偏光板の場合)に積層される、偏光板を表示セルや他の光学部材に貼合するための粘着剤層;粘着剤層の外面に積層されるセパレートフィルム;保護フィルム上(例えば、両面保護フィルム付偏光板の場合)又は偏光子層上(例えば、片面保護フィルム付偏光板の場合)に積層される、位相差フィルムのような光学補償フィルムや、その他の光学機能性フィルム;保護フィルム上に積層される表面処理層等が挙げられる。
複合偏光板は、カールがなくフラットであるか、又は複合偏光板が有する粘着剤層側を外側(凸)にして若干カールしているぐらいがちょうど良い。これにより、表示セルに複合偏光板を貼合する際に、粘着剤層と表示セルとの間に気泡が混入することを抑制でき、表示装置に表示上の不具合を生じたり、貼合面の端部に不良が発生する不具合を生じたりすることを抑制できる。反対に、粘着剤層側を内側(凹)にして複合偏光板がカールしていると、貼合時に気泡を噛み込みやすく、上記不具合を生じる可能性が高い。
周辺部材を貼合する際に、意図的に複合偏光板のカール量を抑制したり、カール方向を矯正したりすることはある程度は可能であるが、やはり、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼合してなる偏光板の状態でカールが小さくなければ複合偏光板のカールをコントロールすることは難しい。従って、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼合してなる偏光板それ自体のカールを抑制することが肝要である。
すなわち、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼合してなる偏光板のカールは、正カールであるか逆カールであるかにかかわらず、周辺部材の貼合によって矯正可能な程度まで小さくされることが好ましく、できるだけフラットであることがより好ましい。本発明によればこれを実現することができる。特に、従来のコーティング法においては、偏光子層に保護フィルムを貼合した後に基材フィルムを剥離除去すると、得られる偏光板は逆カール方向に大きくカールする傾向にあったが、本発明によれば、とりわけこの逆カールを効果的に抑制することができる。
従来のコーティング法において逆カールが生じやすいのは、基材フィルムによる拘束力が働いているためであると考えられる。コーティング法により形成された偏光性積層フィルムにおいて偏光子層は、基材フィルムの剛性によって収縮されていない状態となっており、保護フィルム貼合後に基材フィルムを剥離除去すると偏光子層に収縮が生じるためであると考えられる。なお、これに対して、単体(単独)フィルムからなる偏光子(偏光フィルム)に接着剤層を介して保護フィルムを貼合する単体フィルム法の場合は、保護フィルム貼合前に水分蒸発、乾燥、張力コントロール等で偏光子が十分に収縮しているため、保護フィルム貼合後も偏光子にさほど寸法変化が起こらず、そもそもカールの問題は生じにくい。
接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整した状態で、偏光性積層フィルム300の偏光子層5と、第1保護フィルム10とを、前記接着剤層15を介して貼合して積層偏光板を得るという本発明の方法により、該積層偏光板から基材フィルム30’を剥離除去して得られる偏光板の逆カールを効果的に抑制することができるのは次の理由によるものと推定される。
接着剤層15を構成する接着剤として水系接着剤を用いる場合、偏光性積層フィルム300および第1保護フィルム10を接着剤層15を介して貼合した後、接着剤層15中に含まれる水を除去するために、積層偏光板400全体を乾燥させることにより、接着剤層15を乾燥固化させる。積層偏光板400の乾燥時には、保護フィルム10中の水分が抜けやすい。
本発明では、接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整してあるため、偏光性積層フィルム300と第1保護フィルム10との貼合後に、接着剤層15中の水分を抜くための乾燥時間を短くすることができる。このため、積層偏光板400において、第1保護フィルム10中の水分量が保持され、第1保護フィルム10は貼合前の寸法を維持することができる。その後の通常の環境(貼合後の製造工程における環境、得られた偏光板の保管環境、偏光板の表示セルへの貼合時の環境)である、例えば25℃55%RHの環境下で、第1保護フィルム10中の水分が抜けるため、積層偏光板400において、第1保護フィルム10が収縮しようとする力(25℃55%RHの環境下での寸法に戻ろうする力)、つまり積層偏光板400を正カール方向に矯正しようとする力が働く。この力が逆カールを抑制する。
一方、接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度が7重量%未満の状態で、偏光性積層フィルム300と第1保護フィルム10とを貼合すると、その後の接着剤層15中の水分を抜くための乾燥時間が長くなり、保護フィルム10中の水分も抜けてしまう。この場合、第1保護フィルム10は収縮した状態で、偏光性積層フィルム300と接着している。したがって、積層偏光板400において、その後の通常の環境下で、第1保護フィルム10が収縮しようとする力が生じず、基材フィルム30’を剥離除去して得られる偏光板で逆カールが生じる。
偏光性積層フィルム300や第1保護フィルム10の面上に水系接着剤を塗工する方法は任意であるが、例えば、温度15℃以上40℃以下の条件下で、グラビアコーターを用いて塗工することができる。
偏光性積層フィルム300上の接着剤層15や、第1保護フィルム10上の接着剤層15の乾燥の方法は任意であるが、例えば、オーブン内の温度を用いた乾燥、熱風を吹き付ける、いわゆる熱風乾燥炉を用いた乾燥や、赤外線ヒーターによる乾燥等を挙げることができる。急激な水分率低下を抑制し、乾燥をマイルドに実施するために、乾燥炉内の湿度を調整することも好ましい。接着剤層15の乾燥時の温度は、15℃以上90℃以下が好ましい。これによると、保護フィルム10中の水分量を保持したまま、接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整することができる。
接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、逆カールの抑制の観点から、8重量%以上に調整することが好ましく、10重量%以上に調整することがさらに好ましい。一方、接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量が大きすぎると、貼合不良が生じたり、密着力が弱くなる。したがって、接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、75重量%以下に調整することが好ましく、70重量%以下に調整することがさらに好ましい。接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、(105℃で2時間乾燥後の接着剤層重量/塗工乾燥後の接着剤層重量)×100によって算出される値である。なお、「105℃で2時間乾燥」とは、接着剤層中の溶媒を完全に揮発させるための十分な時間である。
偏光性積層フィルム300上の接着剤層15や、第1保護フィルム10上の接着剤層15は、0.01μm以上100μm以下の厚みで塗工することが好ましい。これによると、接着剤層15中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度の調整を短時間で行うことができる。また、接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量を7重量%以上に調整した後の接着剤層の厚みは、0.01μm以上15μm以下が好ましい。
偏光性積層フィルム300の偏光子層5と第1保護フィルム10との貼合は、これらのフィルムを接着剤層を介して貼合し、貼合ロール等を用いて加圧し密着させることが好ましい。
上述の貼合を実施した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するために積層偏光板を乾燥させる乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥は、例えば積層偏光板を乾燥炉に導入することによって行うことができる。乾燥温度は、好ましくは30〜90℃である。30℃未満であると、第1保護フィルム10が偏光子層5から剥離しやすくなる。乾燥温度が90℃を超えると、熱によって偏光子層5の偏光性能が劣化するおそれがある。
乾燥の方法は任意であるが、例えば、熱風を吹き付ける、いわゆる熱風乾燥炉を用いた乾燥や、赤外線ヒーターによる乾燥等を挙げることができる。急激な水分率低下を抑制し、乾燥をマイルドに実施するために、乾燥炉内の湿度を調整することも好ましい。
乾燥後の接着剤層15の厚みは、0.01μm以上1μm以下が好ましい。
乾燥工程後、室温又はそれよりやや高い温度、例えば20〜45℃程度の温度で12〜600時間養生する養生工程を設けてもよい。養生温度は、乾燥温度よりも低く設定されるのが一般的である。
<剥離工程S30>
図9を参照して本工程は、第1保護フィルム貼合工程S20の後に、基材フィルム30’を剥離除去する工程である。本工程にて片面保護フィルム付偏光板1が得られる。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子層5を有し、これら両方の偏光子層5に保護フィルムを貼合した場合には、この剥離工程S30により、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の片面保護フィルム付偏光板1が得られる。
基材フィルム30’を剥離除去する方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われるセパレータ(剥離フィルム)の剥離工程と同様の方法で剥離できる。基材フィルム30’は、第1保護フィルム貼合工程S20の後、そのまますぐ剥離してもよいし、第1保護フィルム貼合工程S20の後、一度ロール状に巻き取り、その後の工程で巻き出しながら剥離してもよい。
<第2保護フィルム貼合工程S40>
図3及び図10を参照して、片面保護フィルム付偏光板1における偏光子層5側の面に接着剤層25を介して第2保護フィルム20を貼合する本工程を実施すれば、両面保護フィルム付偏光板2を得ることができる。第2保護フィルム20及びこれを貼合する接着剤層25については、第1保護フィルム10及び接着剤層15について述べた記述が引用される。すなわち、片面保護フィルム付偏光板1の偏光子層5側の面上および/または第2保護フィルム20の面上に、ポリビニルアルコール系樹脂を7重量%未満含む水系接着剤を塗工して接着剤層25を形成し、該接着剤層25中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を7重量%以上に調整した後に、片面保護フィルム付偏光板1と第2保護フィルム20とを、接着剤層25を介して貼合することが好ましい。これにより、両面保護フィルム付偏光板2のカールを抑制することができる。
接着剤層25としては、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、例えば、光硬化性エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
光硬化性接着剤とは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤であり、例えば、重合性化合物及び光重合開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むものなどを挙げることができる。前記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマーなどの光重合性モノマーや、それらモノマーに由来するオリゴマーなどを挙げることができる。また光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線の照射を受けて、中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。重合性化合物及び光重合開始剤を含む光硬化性接着剤として、光硬化性エポキシ系モノマー及び光カチオン重合開始剤を含むものが好ましい。
光硬化性接着剤を用いたフィルムの貼合は、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、フィルムの接着面に接着剤を塗工し、2枚のフィルムを重ね合わせる方法により行うことができる。流延法とは、被塗工物である2枚のフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
フィルムの表面に接着剤を塗工した後、ニップロールなどで挟んでフィルム貼り合わせることにより接着される。また、この積層体をロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質は、金属やゴムなどであることができる。さらに、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、二つのロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。ニップロールなどを用いて貼り合わされた後の接着剤層の乾燥又は硬化前の厚さは、5μm以下かつ 0.01μm以上であることが好ましい。
フィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。
ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法によって行うことができる。
接着剤として光硬化性樹脂を用いた場合は、フィルムを積層後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましく、具体的には低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6,000mW/cm2となるようにすることが好ましい。照射強度をこの範囲に収めれば、反応時間が長くなりすぎず、また光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱による硬化性化合物の黄変や偏光子層の劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる接着剤に応じて適用されるものであって、やはり特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量をこの範囲に収めれば、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、また照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚さは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上でかつ2μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上でかつ1μm以下である。
活性エネルギー線の照射によって偏光子層や保護フィルムを含むフィルムの光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光子層の偏光度、透過率及び色相、並びに保護フィルムの透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
第1保護フィルム10と第2保護フィルム20は、互いに同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。接着剤層15と接着剤層25は、互いに同種の接着剤から形成されてもよいし、異種の接着剤から形成されてもよい。
前述のように、得られた片面保護フィルム付偏光板1、両面保護フィルム付偏光板2は、上で例示したような周辺部材を貼合して複合偏光板としたり、このような複合偏光板として使用したりすることができる。
周辺部材の一例である粘着剤層は、両面保護フィルム付偏光板2にあってはいずれかの保護フィルムの外面に積層することができ、片面保護フィルム付偏光板1にあっては、例えば偏光子層の保護フィルムとは反対側の面に積層することができる。粘着剤層を形成する粘着剤は通常、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。粘着剤層の厚みは通常、1〜40μmであり、好ましくは3〜25μmである。
また、周辺部材の他の一例である光学機能性フィルムとしては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付フィルム;表面反射防止機能付フィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;視野角補償フィルム等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1>
(基材フィルム)
基材フィルムとして、厚み110μmの未延伸のポリプロピレン(PP)フィルム(融点:163℃)を用いた。
(プライマー層形成工程)
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製、平均重合度1100、ケン化度99.5モル%、商品名:Z−200)を95℃の熱水に溶解させ濃度3重量%の水溶液を調製した。得られた水溶液にポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の架橋剤(住友化学(株)製、商品名:スミレーズ(登録商標)レジン650)を混ぜた。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した基材フィルム上にマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で10分間乾燥させ厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
(樹脂層形成工程)
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製、平均重合度2400、ケン化度98.0〜99.0モル%、商品名:PVA124)を95℃の熱水中に溶解させ濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を上記プライマー層の上にリップコーターを用いて塗工し80℃で20分間乾燥させ、基材フィルム、プライマー層、ポリビニルアルコール系樹脂層からなる3層の積層フィルムを作成した。
(延伸工程)
上記積層フィルムを、テンター装置を用いて160℃で5.2倍の自由端一軸延伸を実施し、延伸フィルムを得た。延伸後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.0μmであった。
(染色工程)
上記延伸フィルムを26℃のヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液である染色溶液に浸漬して染色した後、次いで78℃のホウ酸とヨウ化カリウムの混合水溶液である架橋溶液に300秒浸漬させた。その後8℃の純水で10秒間洗浄し、最後に65℃で300秒間乾燥させた。以上の工程により樹脂層から偏光子層を形成し、偏光性積層フィルムを得た。染色溶液および架橋溶液の配合比率は以下である。
<染色溶液>
水:100重量部
ヨウ素:0.35重量部
ヨウ化カリウム:10重量部
<架橋溶液>
水:100重量部
ホウ酸:9.5重量部
ヨウ化カリウム:5重量部
(保護フィルム貼合工程)
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製、平均重合度1800、商品名:KL−318)を95℃の熱水に溶解させ濃度3重量%の水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製、商品名:スミレーズ(登録商標)レジン650)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部を混ぜて接着剤溶液(水系接着剤)とした。この接着剤溶液を偏光性積層フィルムの偏光子層上にグラビアコーターで、約30μm厚さとなるように塗工した後に、40℃のオーブンで5分乾燥させて接着剤層を形成した。塗工乾燥後の接着剤層中のポリビニルアルコール樹脂の濃度を(105℃で2時間乾燥後の接着剤層重量/塗工乾燥後の接着剤層重量)×100によって算出したところ、11.4重量%であった。その後、偏光性積層フィルムと保護フィルムとを接着剤層を介して貼合し、80℃5分で乾燥させることで、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/基材フィルムからなる積層偏光板を得た。
(剥離工程)
積層偏光板から基材フィルムを剥離し、保護フィルム/接着剤層/偏光子層から成る片面保護フィルム付偏光板を得た。基材フィルムは積層偏光板から容易に剥離された。
[実施例2]
接着剤溶液(水系接着剤)を偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工した後、40℃オーブンで4分乾燥させた以外は実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[実施例3]
接着剤溶液(水系接着剤)を偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工した後、40℃オーブンで3分30秒乾燥させた以外は実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[比較例1]
接着剤溶液(水系接着剤)を偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工した後、40℃オーブンで2分30秒乾燥させた以外は実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[比較例2]
接着剤溶液(水系接着剤)を偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工した後、40℃オーブンで1分乾燥させた以外は実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[比較例3]
接着剤溶液(水系接着剤)を偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工した後に乾燥させず、すぐに保護フィルムと貼合した以外は実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
[比較例4]
接着剤溶液(水系接着剤)中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を8.4重量%とし、偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工した後に乾燥させず、すぐに保護フィルムと貼合した以外は実施例1と同じ方法で偏光板を得た。
(接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂含有量の測定)
実施例1〜3および比較例1,2について、接着剤溶液(水系接着剤)を偏光性積層フィルムの偏光子層に塗工して乾燥した後、保護フィルムと貼合する直前の、接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量を(105℃で2時間乾燥後の接着剤層重量/塗工乾燥後の接着剤層重量)×100によって算出した。結果を表1の「貼合時ポリビニルアルコール系樹脂濃度」欄に示す。比較例3,4については、接着剤溶液中のポリビニルアルコール系樹脂濃度を接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂濃度とした。
(カール量の測定および評価)
得られた片面保護フィルム付偏光板から、吸収軸方向(MD)80mm×透過軸方向(TD)80mmの試験片を切り出し、25℃55%RHの環境下で24時間放置した。この試験片は、偏光子層側を内側にしてカールしている逆カールを有しており、基準面(水平な台)上に凹面を上にしておくと、4つの端辺が持ち上がった状態になる。この状態で試験片の4つの角のそれぞれについて基準面からの高さを測定し、それら4つの角の高さの平均としてカール量を求め、下記評価基準に従ってカールの抑制の程度を評価した。結果を表1に示す。
A:カール量が0mm以上であり、偏光板の逆カールが十分に抑制されている。
B:カール量が0mm未満であり、偏光板の逆カールが顕著である。
上記評価基準は次の理由による。上記カール量が0mm以上の場合、片面保護フィルム付偏光板の保護フィルム外面に傷付き防止用のプロテクトフィルム(粘着剤層付ポリエチレンテレフタレートフィルム)を貼合すると、ほぼフラットまたはやや正カールな複合偏光板を得ることができた。さらにこの複合偏光板の偏光子層外面に液晶セルに貼合するための粘着剤層を貼合しても複合偏光板はほぼフラットまたはやや正カールの状態を保った。
これに対して、上記カール量が0mm未満のものについては、保護フィルム上に該プロテクトフィルムを貼合しても、得られた複合偏光板は逆カール方向にカールしていた。さらにこの複合偏光板の偏光子層外面に液晶セルに貼合するための粘着剤層を貼合しても逆カールの状態を維持した。また、23℃55%RHの環境下に数日間放置してから再び観察したところ、逆カールがさらに大きくなる不具合を生じていた。
(外観(スジ)の評価)
片面保護フィルム付偏光板の外観について、下記評価基準に評価した。結果を表1に示す。
A:塗工時にスジが入らず、貼合後の外観が良い。
B:塗工時にスジが入り、貼合後の外観が悪い。