JP6652798B2 - ハウジング型補強部材ならびに同部材を用いた鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強方法および補強構造 - Google Patents
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Description
この鋼製スリットダムは、透過型砂防堰堤等とも呼ばれ、今日まで、様々な形状、構造の技術が開示され、実施に供されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
前記鋼製スリットダムは、鋼管からなる支柱や梁を立体的に接合して構築されている。前記接合手段には、搬送に適したサイズで製造された各ブロック(パーツ)の接合部位をフランジ付き鋼管とし、現場で当該フランジ付き鋼管同士を突き合わせ、各フランジ孔にボルトを通しナットを締結して接合するフランジ接合が多用されている(前記特許文献1〜4の図面等参照)。
前記特許文献1には、図12に示すように、鞘管(36)を用いた接合手段が開示されてはいるものの、取り付け及び取り外しが容易で熟練工を必要としない機械的接合に非常に優れたフランジ接合について、改良した技術は今のところ見当たらない。
河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強するハウジング型補強部材であって、
前記フランジ接合部の全周又はその一部を覆う略コ字形溝を備え、前記略コ字形溝を形成する両側面部が前記鋼管のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部にボルト接合される構成であること、
前記両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合される部位は、前記フランジ接合部に直接又はスペーサを介して当接されて前記フランジ接合部および前記両側面部の4つ全てを共締めでボルト接合可能な深溝に形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載したハウジング型補強部材において、前記フランジ接合部の全周を覆うハウジング型補強部材は、一対の円弧状セグメントで構成されていることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載したハウジング型補強部材において、前記フランジ接合部の前記一部を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、円弧状に形成された1つ又は複数の円弧状ピースで構成されていることを特徴とする。
材において、前記略コ字形溝を形成する両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合する部位は、他の部位よりも前記鋼管の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載したハウジング型補強部材において、前記深溝部は、前記鋼管の管軸方向からみて周方向両端部にのみ設けられていることを特徴とする。
接合する鋼管同士のフランジを突き合わせ、前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、前記ハウジング型補強部材をフランジ接合部に当てがい、当該フランジ接合部に用いられるボルトよりも長尺のボルトを前記ハウジング型補強部材用のフランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング型補強部材をフランジ接合部に固定することを特徴とする。
前記既存のフランジ接合部における前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔に接合されているボルトを撤去した後、前記ハウジング型補強部材をフランジ接合部に当てがい、前記ボルトよりも長尺のボルトを前記フランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング補強部材をフランジ接合部に固定することを特徴とする。
接合する鋼管同士のフランジが突き合わされ、前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合されていること、
前記フランジ接合部に前記ハウジング型補強部材が当てがわれ、当該フランジ接合部に用いられるボルトよりも長尺のボルトが前記ハウジング型補強部材用のフランジ孔を利用してボルト接合されることにより当該ハウジング型補強部材がフランジ接合部に固定されていることを特徴とする。
ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
また、請求項7によれば、フランジ接合部だけでなく、ボルト及びナットのフランジ接合部材をも保護できるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを更に防止できる。
前記ハウジング型補強部材は、主として金属製で実施されるが、所要の剛性を備えていれば樹脂製でも実施できる。
以上を踏まえ、本実施例では、一例として、フランジ付き鋼管は、外径400mm程度、板厚9mm程度の大きさで実施している。当該鋼管の接合端縁に設けるフランジは、一例として、外径600mm程度、板厚36mm程度の大きさで実施している。よって、本実施例にかかる前記ハウジング型補強部材は、一例として、板厚72mm程度のフランジ接合部を覆うことができる幅寸で、厚み(板厚)が9〜16mm程度の略コ字形溝状を備え、所要の強度・剛性を有する形態で実施している。
以下、参考例と実施例を図面に基づいて説明する。
<参考例>
ちなみに図中の符号3、4は、鋼管1、2の外方に突き出る一対の円盤状のフランジを示し、符号7はフランジ接合に用いるボルトを示し、符号8は同ナットを示している。なお、前記円盤状のフランジ3、4の代わりに環状のフランジを用いてもよい。
前記ハウジング型補強部材10を構成する円弧状セグメント5、6は、略コ字形溝5a、6aを内径方向に設けた環状リングを半割りにしたに等しい一対の構成で実施されている。前記略コ字形溝5a、6aは、前記フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部に略密着する形状で実施されている。
また、本参考例では、前記円弧状セグメント5、6を溶接接合して一体化しているがこれに限定されず、図2に示したように、両端縁部に鍔部を延設させた一対の円弧状セグメント5’、6’を互いに突き合わせ、当該突き合わせた鍔部に設けたボルト通し孔を利用してボルト接合することにより一体化して実施することもできる。
[実施例1]
具体的には、前記両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合される部位は、前記フランジ接合部Fに直接(又はスペーサを介して)当接されて前記フランジ接合部Fおよび前記両側面部の4つ全てを共締めでボルト接合可能な深溝に形成されている。
前記円弧状セグメント15、16は、略コ字形溝15a、16aを内径方向に設けた略環状リングを半割りにしたに等しい一対の構成で実施されている。前記略コ字形溝15a、16aは、前記フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部に略密着する形状で実施されている。
また、円弧状セグメント15、16は、略コ字形溝15a、16aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)15b、16bを、他の部位よりも前記鋼管1、2の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成して実施している。当該深溝部15b、16bの形状は特に限定されず、例えば、図3Eに示す形状でも実施できる。
また、本実施例にかかる前記円弧状セグメント15、16は、その周方向両端部のみ深溝部15b、16bに形成しているがこれに限定されず、図4A、Bに示したように、周方向全体にわたって均等断面形状の深溝部に形成した円弧状セグメント15’、16’を用いて実施することもできる。この場合、フランジ接合に用いるボルトは長尺のボルト17(図示例では8本)のみを用いることになる。
すなわち、図4にかかる実施例によれば、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせた後、所謂フランジ接合を行うことなく、前記円弧状セグメント15’、16’をフランジ接合部Fの全体を覆うように略隙間なく密着させて位置決めし、各両端部に長尺のボルト17を2本ずつ(1本ずつでも可)接合することによりハウジング型補強部材20を当該フランジ接合部Fに固定して実施する。
この図4にかかる実施例によれば、前記円弧状セグメント15’、16’がフランジ接合部Fをきっちり拘束するので、所謂フランジ接合と同等の効果を発揮できる。よって、上記作用効果(段落[0031]参照)に加え、ボルトの部材点数および接合作業の省力化を図ることができ、効率的、かつ経済的である。
[実施例2]
また、本実施例にかかる前記円弧状ピース25、26は、その周方向両端部のみ深溝部25b、26bに形成しているがこれに限定されず、前記図3に対する図4の実施例と同様に、周方向全体にわたって均等断面形状の深溝部に形成した円弧状ピース(図示省略)を用いて実施することもできる。この場合、フランジ接合に用いるボルトは長尺のボルト17のみを用いることになる。
具体的には、前記図4の実施例と略同様に、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせた後、所謂フランジ接合を行うことなく、当該円弧状ピースをフランジ接合部Fの前後の側面部を覆うように略隙間なく密着させて位置決めし、長尺のボルト17をその円弧状の周方向に4本ずつの計8本(又は両端部に1本ずつの計4本でも可)接合することによりハウジング型補強部材30を当該フランジ接合部Fに固定して実施する。
この実施例によれば、前記均等断面形状の深溝部に形成した円弧状ピースがフランジ接合部Fをきっちり拘束するので、所謂フランジ接合と同等の効果を発揮できる。よって、上記作用効果(段落[0037]参照)に加え、ボルトの部材点数および接合作業の省力化を図ることができ、効率的、かつ経済的である。
[実施例3]
前記円弧状セグメント35、36は、略コ字形溝35a、36aを内径方向に設けた略環状リングを半割りにしたに等しい一対の構成で実施されている。
また、円弧状セグメント35、36は、略コ字形溝35a、36aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)の内側面部に、ボルト接合する際に必要な間隔保持部材として、スペーサ35b、36bを予め溶接して設けている。当該スペーサ35b、36bの代わりに、図6Fに示すワッシャ35b’、36b’でも同様に実施できる。
[実施例4]
また、円弧状ピース45、46は、略コ字形溝45a、46aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)の内側面部に、ボルト接合する際に必要な間隔保持部材として、スペーサ45b、46bを予め溶接して設けている。スペーサ45b、46bの代わりに、ワッシャ(図6Fを援用して参照)でも同様に実施できる。
上記実施例1〜4にかかるハウジング型補強部材20〜50を用いる場合は、前記既存のフランジ接合部(図1Aのフランジ接合部Fを援用して参照)における前記ハウジング型補強部材20〜50を接合するフランジ孔に接合されているボルト7を撤去した後、上記実施例1〜4でそれぞれ説明した手法と同様の手法で、前記ハウジング型補強部材20〜50をフランジ接合部Fに当てがい、前記ボルト7よりも長尺のボルト17又は27で、対応するフランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング補強部材20〜50をフランジ接合部Fに固定することにより行う。
2 フランジ付き鋼管
3 円盤状のフランジ
4 円盤状のフランジ
5 円弧状セグメント
5a 略コ字形溝
5’ 円弧状セグメント
6 円弧状セグメント
6a 略コ字形溝
6’ 円弧状セグメント
7 ボルト
8 ナット
10 ハウジング型補強部材
15 円弧状セグメント
15a 略コ字形溝
15b 深溝部
15’ 円弧状セグメント
16 円弧状セグメント
16a 略コ字形溝
16b 深溝部
16’ 円弧状セグメント
17 長尺のボルト
20 ハウジング型補強部材
25 円弧状ピース
25a 略コ字形溝
25b 深溝部
26 円弧状ピース
26a 略コ字形溝
26b 深溝部
27 長尺のボルト
30 ハウジング型補強部材
35 円弧状セグメント
35a 略コ字形溝
35b スペーサ
35b’ワッシャ
36 円弧状セグメント
36a 略コ字形溝
36b スペーサ
36b’ワッシャ
40 ハウジング型補強部材
45 円弧状ピース
45a 略コ字形溝
45b スペーサ
46 円弧状ピース
46a 略コ字形溝
46b スペーサ
50 ハウジング型補強部材
F フランジ接合部
Claims (12)
- 河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強するハウジング型補強部材であって、
前記フランジ接合部の全周又はその一部を覆う略コ字形溝を備え、前記略コ字形溝を形成する両側面部が前記鋼管のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部にボルト接合される構成であること、
前記両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合される部位は、前記フランジ接合部に直接又はスペーサを介して当接されて前記フランジ接合部および前記両側面部の4つ全てを共締めでボルト接合可能な深溝に形成されていることを特徴とする、ハウジング型補強部材。 - 前記フランジ接合部の全周を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、径方向で分割された複数の円弧状セグメントで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載したハウジング型補強部材。
- 前記フランジ接合部の全周を覆うハウジング型補強部材は、一対の円弧状セグメントで構成されていることを特徴とする、請求項2に記載したハウジング型補強部材。
- 前記フランジ接合部の前記一部を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、円弧状に形成された1つ又は複数の円弧状ピースで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載したハウジング型補強部材。
- 前記略コ字形溝を形成する両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合する部位は、他の部位よりも前記鋼管の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したハウジング型補強部材。
- 前記深溝部は、前記鋼管の管軸方向からみて周方向両端部にのみ設けられていることを特徴とする、請求項5に記載したハウジング型補強部材。
- 前記略コ字形溝は、鋼管同士のフランジ接合に用いたボルト等の接合部材を覆う均等断面形状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したハウジング型補強部材。
- 前記フランジ付き鋼管のフランジに補強リブが設けられている場合、前記略コ字形溝に、当該補強リブと干渉を生じないスリットが形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載したハウジング型補強部材。
- 前記請求項1に記載のハウジング型補強部材を用いて前記鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強する方法であって、
接合する鋼管同士のフランジを突き合わせ、前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、前記ハウジング型補強部材をフランジ接合部に当てがい、当該フランジ接合部に用いられるボルトよりも長尺のボルトを前記ハウジング型補強部材用のフランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング型補強部材をフランジ接合部に固定することを特徴とする、鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強方法。 - 前記請求項1に記載のハウジング型補強部材を用いて前記鋼製スリットダムを構成したフランジ付き鋼管同士の既存のフランジ接合部を補強する方法であって、
前記既存のフランジ接合部における前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔に接合されているボルトを撤去した後、前記ハウジング型補強部材をフランジ接合部に当てがい、前記ボルトよりも長尺のボルトを前記フランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング補強部材をフランジ接合部に固定することを特徴とする、鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強方法。 - 前記請求項1に記載のハウジング型補強部材を用いて前記鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強した構造であって、
接合する鋼管同士のフランジが突き合わされ、前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合されていること、
前記フランジ接合部に前記ハウジング型補強部材が当てがわれ、当該フランジ接合部に用いられるボルトよりも長尺のボルトが前記ハウジング型補強部材用のフランジ孔を利用してボルト接合されることにより当該ハウジング型補強部材がフランジ接合部に固定されていることを特徴とする、鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強構造。 - 前記ハウジング型補強部材は、前記フランジ接合部の上流側と下流側とに対向する配置で設けられていることを特徴とする、請求項11に記載した鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強構造。
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