JP6652007B2 - Ni−V合金スパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
しかしながら、上述の特許文献1に記載されている高純度のNi−V合金スパッタリングターゲットでは、結晶粒の粒径を調整することが難しく、スパッタ面に粗大な結晶粒が発生しやすい。このため、製膜時に異常放電が発生し易く、広い面積に対して、微細でかつ厚さが均一な薄膜パターンを形成することが困難となる場合がある。
この場合、スパッタが進行した際にスパッタ面に形成される凹凸を小さくすることができ、異常放電の発生をより抑制することが可能となる。すなわち、スパッタレートは、結晶方位によって異なることから、スパッタが進行するとスパッタ面に、上述のスパッタレートの違いに起因して凹凸が生じる。このため、粒径が大きい粗大結晶粒が多く存在すると、スパッタ面に形成される凹凸が大きくなり、凸部に電荷が集中して異常放電が発生しやすくなる。そこで、結晶粒の平均粒径を400μm以下に制限することで、異常放電の発生を抑制することができる。
この場合、スパッタが進行した際にスパッタ面に形成される凹凸を確実に小さくすることができ、異常放電の発生をさらに抑制することが可能となる。
この場合、粗大な結晶粒の生成を確実に低減させることができ、粗大結晶粒による異常放電の発生をさらに抑制することができる。
本実施形態であるNi−V合金スパッタリングターゲットは、Ni−V合金薄膜を成膜する際に用いられるものである。Ni−V合金薄膜は、例えば電子回路の回路素子や電極の下地層として利用される。
本実施形態のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいて、Vの含有量が6質量%未満の場合は、Ni−V合金スパッタリングターゲットに磁性が発生するおそれがある。磁性を有するNi−V合金スパッタリングターゲットを用い、マグネトロンスパッタ装置のような磁場を利用したスパッタ装置を利用して成膜すると、ターゲットの磁性がスパッタ装置の磁場に影響を与えることによって、成膜されたNi−V合金薄膜は、膜厚のばらつきが大きくなるおそれがある。一方、Vの含有量が10質量%を超える場合は、Ni3Vなどの高融点化合物が生成し、この高融点化合物に電荷が集中することによって、製膜時での異常放電が起こり易くなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、Vの含有量を6質量%以上10質量%以下の範囲内に設定している。
Al、Ag、B、Ca、Mg、Siなどの添加元素は、Niに対して固溶しにくく、Ni−V合金が結晶粒を形成する際に結晶核となる作用効果がある。
ここで、添加元素の含有量が少ない、すなわち結晶核の量が少ない場合は、結晶粒が大きく粒成長し、粗大な結晶粒が生成することによって、異常放電が発生しやすくなるおそれがある。一方、添加元素の含有量が多い場合は、Ni−V合金の結晶粒の粒界に多量の添加元素が析出し、粗大な添加元素の結晶粒を形成することによって、異常放電が発生しやすくなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、添加元素の含有量を30質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内に設定している。添加元素は二種以上を組合せて使用してもよい。二種以上の添加元素を使用する場合は、添加元素の合計量が上記の範囲内となるように設定する。
本実施形態のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいて、結晶粒の平均粒径が400μmを超える場合は、スパッタが進行すると、スパッタ面に形成される凹凸が大きくなり、凸部に電荷が集中して異常放電が発生しやすくおそれがある。
このため、本実施形態のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、結晶粒の平均粒径を400μm以下に設定している。なお、結晶粒の平均粒径は、50μm以上であることが好ましい。
変動係数(%)=標準偏差/平均値×100
本実施形態であるNi−V合金スパッタリングターゲットは、例えば、鋳造工程、熱間圧延工程、熱処理工程、機械加工工程、といった工程を経て製造される。以下に、各工程について説明する。
鋳造工程では、まず、原料粉末として、V粉末と、Ni粉末と、Al、Ag、B、Ca、Mg、Siなどの添加元素の粉末とをそれぞれ用意する。V粉末は、純度が3N以上であることが好ましい。Ni粉末は純度が4N以上であることが好ましい。
熱間圧延工程では、鋳塊を熱間圧延によって、圧延板とする。熱間圧延での圧下率は、60%以上80%以下とすることが好ましい。熱間圧延の温度は、一般に800℃以上1100℃以下の範囲である。
熱処理工程では、圧延板を熱処理して、結晶粒を再結晶化する。この熱処理によって、平均粒径が400μm以下のNi−V合金の結晶粒が形成される。熱処理の温度は、一般に800℃以上1100℃以下の範囲である。熱処理の時間は、一般に30分以上90分以下の範囲である。
機械加工では、上記のようにして熱処理された圧延板に対して、切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状のNi−V合金スパッタリングターゲットに加工する
得られたNi−V合金スパッタリングターゲットは、銅製のバッキングプレートにはんだ付けされて、スパッタ装置に取り付けられ、対向配置された基板上にNi−V合金薄膜をスパッタ法により成膜する。
本実施形態であるNi−V合金スパッタリングターゲットは、以上のように、成膜時での異常放電の発生が少ないので、広い面積に対して、微細でかつ厚さが均一なNi−V合金薄膜をスパッタ法により成膜することが可能となる。
例えば、本実施形態のNi−V合金スパッタリングターゲットを用いて成膜する際のスパッタ装置としてマグネトロンスパッタ装置を例示したが、スパッタ装置としてはマグネトロン以外のスパッタ装置を使用することができる。また、スパッタ装置の電源としては、直流(DC)電源、高周波(RF)電源、中周波(MF)電源、交流(AC)電源のいずれも選択可能である。さらに、Ni−V合金スパッタリングターゲットの形状やサイズに特に限定はなく、矩形板状、円板状、円筒状をなしていてもよい。
表1に示す純度と平均粒径とを有するV粒と、純度4NのNiインゴットと、純度4NのAl粉末とを用意し、表1に示す配合量となるように秤量した。なお、Al粉末は、本発明例7では粒径が45μm未満のものを使用し、その他では粒径が300μm未満のものを使用した。
秤量したV粒とNiインゴットとをAl2O3坩堝に入れ、真空溶解炉を用いて、炉内を表1に示す圧力雰囲気とした後、1500℃で加熱して溶湯を生成させた。生成した溶湯に、アフターチャージにより、秤量したAl粉末を加えて、その後、さらに表1に示す保持時間にて保持した。但し、比較例5では、秤量したV粉末とNi粉末とAl粉末を同時にAl2O3坩堝に入れた。
次に、加熱処理後の熱間圧延板から、縦126mm×横178mm×厚さ6mmのNi−V合金スパッタリングターゲットを切り出した。
図1に示すように、Ni−V合金スパッタリングターゲットのスパッタ面の縦方向の中心線と横方向の中心線とが交差する位置(1)と、角部から縦方向に10mmで横方向に10mmとなる位置(2)〜(4)の合計5点の位置をそれぞれ中心として試験片(サイズ:5×5×5mm)を採取した。採取した各試験片に含まれているNi、V、Al、Ag、B、Ca、Mg、Si、Pb、Biの量をICP発光分光分析法により分析し、その平均値を求めた。Al、Ag、B、Ca、Mg及びSiの含有量については、標準偏差を算出した。
LECO社製のガス分析装置を用いて、酸素含有量は非分散型赤外線吸収法、窒素含有量は熱伝導度法により測定した。
図2に示すように、Ni−V合金スパッタリングターゲットのスパッタ面の縦方向の中心線と横方向の中心線とが交差する位置(1)と、角部から縦方向に25mmで横方向に25mmとなる位置(2)〜(4)の合計5点の位置をそれぞれ中心として試験片(サイズ:縦30mm×横30mm×厚さ6mm)を採取した。採取した各試験片のスパッタ面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、電子線後方散乱回折分析装置(EBSD)を用いて結晶粒の粒径を測定した。測定した結晶粒の粒径の平均値と標準偏差とを求め、下記式により変動係数(%)を算出した。
変動係数(%)=標準偏差/平均値×100
Ni−V合金スパッタリングターゲットを、銅製のバッキングプレートにはんだ付けした。はんだ付けしたスパッタリングターゲットを、マグネトロンスパッタ装置のチャンバに取り付け、1×10−4Paまで排気した後、ガス圧:0.3Pa、投入電力:DC1000Wの条件で10min間放電し、放電中の異常放電回数を計数した。
はんだ付けしたNi−V合金スパッタリングターゲットとガラス基板(縦100×横100mm)をマグネトロンスパッタ装置のチャンバに取り付け、上記異常放電回数の測定と同じ条件でスパッタを行って、ガラス基板の上にNi−V合金薄膜を成膜した。得られたNi−V合金薄膜の膜厚を、段差測定機を用いて測定した。膜厚の測定は、ガラス基板の縦方向に15mm間隔で、合計5点で行った。膜厚分布は、測定した5点の平均値と、測定した5点の中の最大値と最小値とを用いて下記の式より算出した。
膜厚分布(±%)={(最大値−最小値)÷5点の平均値}×100÷2
V含有量が10質量%超える比較例2のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、成膜時の異常放電回数が多くなった。これはNi−V合金スパッタリングターゲットのNi3Vが生成したためであると推察される。
Al含有量が100質量ppmを超える比較例3のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、成膜時の異常放電回数が多くなった。これは、Ni−V合金の結晶粒の粒界に多量の添加元素が析出したためであると推察される。
さらに、Al含有量が30質量ppm未満の比較例4、5のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、結晶粒の平均粒径が400μmを超えており、成膜時の異常放電回数が多くなった。これは結晶粒の結晶核となるAlの量が少ないため、Ni−V合金の結晶粒が粒成長して粗大な結晶粒が生成して、スパッタが進行したときにスパッタ面に形成される凹凸が大きくなったためであると推察される。
Al粉末の代わりに、純度4NのAg粉末、純度4NのB粉末、純度4NのCa粉末、純度4NのMg粉末そして純度4NのSi粉末をそれぞれ用意して、表3に示す原料配合比率となるように秤量したこと以外は、本発明例1と同様にしてNi−V合金スパッタリングターゲットを作製した。得られたNi−V合金スパッタリングターゲットついて、本発明例1と同様に、組成、結晶粒のサイズ、異常放電回数を測定し、このNi−V合金スパッタリングターゲットを用いてスパッタ法により成膜したNi−V膜の膜厚分布を測定した。これらの結果を、表4に示す。
また、Ag、B、Ca、Mg、Siの含有量が100質量ppmを超える比較例7、9、11、13、15のNi−V合金スパッタリングターゲットにおいては、Alの場合(比較例3)と同様に成膜時の異常放電回数が多くなった。
これに対して、V含有量とAg、B、Ca、Mg、Siの含有量が本発明で規定する範囲にある本発明例16〜30のNi−V合金スパッタリングターゲットは、成膜時の異常放電回数が低減され、成膜されたNi−V合金薄膜の膜厚分布は小さくなった。
Claims (3)
- Vを6質量%以上10質量%以下の範囲にて含み、Al、Ag、B、Ca、Mg及びSiからなる群より選択される少なくとも一種の添加元素を30質量ppm以上100質量ppm以下の範囲にて含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成を有することを特徴とするNi−V合金スパッタリングターゲット。
- 結晶粒の粒径の変動係数が15%以下であることを特徴とする請求項1に記載のNi−V合金スパッタリングターゲット。
- 前記添加元素の含有量の標準偏差が15質量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のNi−V合金スパッタリングターゲット。
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