JP6651294B2 - リアルタイムpcrによる食物アレルゲンの検出方法及びキット - Google Patents

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Description

本発明は、飲食品中の食物アレルゲンについて陽性/陰性判定を行うことができるリアルタイムPCR法を用いた検査法に関する。
食物アレルゲン(例えば、小麦、そば、落花生等)は、摂取によりアレルギー反応を引き起こし得るものであり、患者によっては極微量の摂取によっても重篤なアナフィラキシーショックを引き起こし得る。また、食物アレルギー患者の数は近年増加の一途をたどっており、世界的に大きな社会問題の一つとなっている。この様な背景のもと、日本をはじめとする諸外国において、食物アレルギー表示制度が施行されている。この表示制度は、特定の食物アレルゲンが含まれない食品を選択するために必要な情報を患者に提供することを目的としたものである。
食物アレルギー表示制度の施行に当たっては、表示の妥当性を検証するための検査方法が必要とされる。日本では、食物アレルゲンのうち、義務表示となる特定原材料7品目(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生)、ならびに推奨表示となる、特定原材料に準ずる20品目(あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン)が対象として指定されており(非特許文献1)、そのうち小麦、そば、落花生などの特定原材料については検査方法が通知されている(非特許文献2)。これら通知によると、特定原材料がタンパク質の量にして一定量以上含まれている飲食品には表示が必要となり、すなわち、食品採取重量1gあたりの食物アレルゲンに由来するタンパク質含量がELISAによる定量のスクリーニング検査で10μg以上となる場合、食物アレルゲンについて陽性と判断され表示が必要とされる。また、ELISAによる定量スクリーニング検査で陽性と判断された飲食品については、必要に応じて特異性の高いPCRやウェスタンブロットによる定性の確認検査が行われる。
ここで、特定原材料の確認検査に用いられている定性PCR検査では、特定原材料由来のDNAを鋳型とする増幅産物の有/無を電気泳動で確認して、特定原材料について陽性/陰性を判定する。その為、定性PCR検査には、電気泳動を行う煩雑さと、増幅産物による検査環境の汚染リスクが問題となる。これらの問題を解決するものとしてPCR反応液中の増幅産物に由来する蛍光シグナル強度をモニタリング検出するリアルタイムPCR法があり、当該手法を用いた検査法には、食物アレルゲンである小麦、そば、落花生の検査法(特許文献1、2)、遺伝子組換え作物の検査法(非特許文献3)、病原菌の検査法(非特許文献4)、カビの検査法(非特許文献5)などが報告されている。
しかし、従来のリアルタイムPCR法を用いた確認検査の判定基準は、各種リアルタイムPCR装置の機種間差や同一装置の個体間差(シリアルNo.の違いによる差)までを考慮することはできておらず、実際に異なる機種のリアルタイムPCR装置を用いて同一条件でPCRを行った場合には、PCR反応液の温度・反応時間・蛍光シグナルの検出感度・解析方法などの違いによりCt値の変動を生じ異なる結果/判定が得られることがある。特に微量レベルの検出が求められる検査では、この変動は全く別の結果/判定を生じ得る。そのため、非特許文献3では、使用するリアルタイムPCR装置の機種を指定するか、あるいは当該指定の機種と同等の結果が得られる機種の使用が推奨されている。この機種間で生じる問題については、陽性/陰性の判定基準を「被検試料に由来する蛍光シグナルのCt値がポジティブコントロールとした一定量のDNAに由来する蛍光シグナルのCt値未満か/以上か」とすることによって解消することができる(非特許文献4,5)。しかし、ここでポジティブコントロールとして用いられているDNAの量は、標的DNA配列として数コピーレベル、つまりPCRの検出下限付近の量であり、増幅する/しないを含めた、Ct値のバラツキを抑えるためには、バラツキの少ない高濃度側の数点のCt値を測定し、当該値に基づいて作成した検量線を用いて判断基準となるCt値を推定しなければならず、操作が煩雑となる。特に、非特許文献5では、検出限界である5コピーを、直鎖状DNAより増幅しにくい、環状プラスミドを用いて見積もっている。この様に、非特許文献4、5に示されている定性リアルタイムPCR法の何れもが、PCRの理論上の検出下限に近いレベルで陽性/陰性を判定する方法となっており、特に検出感度の高いPCR法において、環境由来コンタミネーションに起因する蛍光シグナルと陽性被検試料に起因する蛍光シグナルとの明確な区別が難しく、正しく判定できないといった問題があった。
そこで、当該分野においては、リアルタイムPCR装置の機種を特定せず、また検量線の作成を要することなく、飲食品中の食物アレルゲンについて陽性/陰性の判定を正確に行うことができる、リアルタイムPCR法を用いた検査法が求められていた。
特開2013−188164号公報 特許第4399417号公報
アレルギー物質を含む食品に関する表示指導要領(消費者庁ホームページ) アレルギー物質を含む食品の検査方法について(平成22年9月10日付け消食表第286号) 安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の検査方法について(平成24年11月16日食安発1116第4号) ヨーネ病検査マニュアル(2013年3月29日版) FungiQuant:A broad−coverage fungal quantitative real−time PCR assay,BMC Microbiology 10.1186/1471−2180−12−255
本発明は、リアルタイムPCR装置の機種を特定せず、また検量線の作成を要することなく、飲食品中の食物アレルゲンについて陽性/陰性の判定を正確に行うことができる、リアルタイムPCR法を用いた検査法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、タンパク質濃度として10μg/g相当量の食物アレルゲンが添加されたPCR検査が難しい飲食品(すなわち、より高い感度のPCR検査が求められる飲食品)を、食物アレルゲンのDNAに関するリアルタイムPCR法を用いたCt値の比較により陽性と判定できるCt値を与えるポジティブコントロールとなる食物アレルゲンのDNAのコピー数を設定し、当該コピー数の食物アレルゲンのDNAを、検査対象飲食品から抽出した鋳型DNAと、食物アレルゲンのDNAを増幅する同一条件のリアルタイムPCRに付すことによって、検査対象飲食品について得られたCt値が、ポジティブコントロールについて得られたCt値以下、好ましくは未満である場合に、当該検査対象飲食品は食物アレルゲンについて陽性であると判断できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、検査対象飲食品から抽出した鋳型DNAを用いてリアルタイムPCR法により食物アレルゲンのDNA増幅産物について得られたCt値を、ポジティブコントロールである予め設定されたコピー数の食物アレルゲンのDNAを用いて同様にリアルタイムPCRを行い得られたCt値と比較するだけで、リアルタイムPCR装置の機種を指定せずに、また検量線の作成を要することなく、検査対象飲食品中の食物アレルゲンについて陽性/陰性の判定を行うことができる。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無を判定する方法であって、
(a)飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAを鋳型として、食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いてリアルタイムPCRを行い、増幅シグナルのCt値を得る工程;
(b)前記食物アレルゲン由来のDNAを鋳型として、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRを行い、増幅シグナルのCt値を得る工程であって、
(b−1)該DNAが、前記プライマーセットの標的配列を含む環状の形態であり、かつ該DNAの量(コピー数)と工程(a)にて用いられる飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの量(ng)が24コピー数を上回る量:50ngとなる量比にてリアルタイムPCRに用いられる、あるいは
(b−2)該DNAが、前記プライマーセットの標的配列を含む直鎖状の形態であり、かつ該DNAの量(コピー数)と工程(a)にて用いられる飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの量(ng)が6コピー数を上回る量:50ngとなる量比にてリアルタイムPCRに用いられる、工程;
(c)工程(a)で得られたCt値と工程(b)で得られたCt値を比較する工程であって、工程(a)で得られたCt値が、工程(b)で得られたCt値以下である場合に、該飲食品又は飲食品原材料中に食物アレルゲンが含まれることを示す、工程。
[2]飲食品又は飲食品原材料中にタンパク質濃度として10μg/g以上の量にて食物アレルゲンが含まれるものを陽性と判定する方法である、[1]の方法。
[3]工程(a)において50ng量の飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAを鋳型として、かつ工程(b)において、24コピー数を上回る量の食物アレルゲン由来の環状のDNA又は6コピー数を上回る量の食物アレルゲン由来の直鎖状のDNAを鋳型として、それぞれリアルタイムPCRに用いられる、[1]又は[2]の方法。
[4]工程(b)において、食物アレルゲン由来のDNAが環状のDNAである場合50コピー数又はそれ以上の量にて、又は食物アレルゲン由来のDNAが直鎖状のDNAである場合12.5コピー数又はそれ以上の量にて、リアルタイムPCRに用いられる、[3]の方法。
[5]工程(c)において、工程(a)で得られたCt値が、工程(b)で得られたCt値未満である場合に、前記飲食品又は飲食品原材料中に食物アレルゲンが含まれることを示す、[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6]食物アレルゲンが小麦、そば及び落花生からなる群から選択される一以上の食物アレルゲンである、[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7]食物アレルゲンが小麦であり、使用するプライマーセットが以下の(i)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(ii)−(iv)より選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、[6]の方法。
(i)配列番号1に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(ii)配列番号2に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(iii)配列番号3に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(iv)配列番号4に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
[8]食物アレルゲンがそばであり、使用するプライマーセットが以下の(v)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(vi)のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、[6]の方法。
(v)配列番号6に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(vi)配列番号7に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
[9]食物アレルゲンが落花生であり、使用するプライマーセットが以下の(vii)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(viii)のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むか、あるいは以下の(ix)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(x)のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、[6]の方法。
(vii)配列番号9に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
(viii)配列番号10に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、あるいは
(ix)配列番号22に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
(x)配列番号23に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
[10]リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を、蛍光標識されたプローブを用いて行う、[1]〜[9]のいずれかの方法。
[11]飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無をリアルタイムPCR法により判定する方法に用いられるキットであって、
食物アレルゲン検出用のプライマーセット、及び
食物アレルゲン由来のDNAであって、該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む環状の形態であり、24コピー数を上回る量にて存在するか、もしくは該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む直鎖状の形態であり、6コピー数を上回る量にて存在する、
を含む、上記キット。
[12]さらに、リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を行うための蛍光標識されたプローブを含む、[11]のキット。
[13]食物アレルゲンが小麦であり、プライマーセットが以下の(i)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(ii)−(iv)より選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、[11]又は[12]のキット。
(i)配列番号1に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(ii)配列番号2に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(iii)配列番号3に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(iv)配列番号4に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
[14]さらに、配列番号5に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブ又はその変異体を含む、[13]のキット。
[15]食物アレルゲン由来のDNAが、配列番号19の塩基配列からなるDNA又はその変異体を含む、[13]又は[14]のキット。
[16]食物アレルゲンがそばであり、プライマーセットが以下の(v)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(vi)のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、[11]又は[12]のキット。
(v)配列番号6に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
(vi)配列番号7に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
[17]さらに、配列番号8に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブ又はその変異体を含む、[16]のキット。
[18]食物アレルゲン由来のDNAが、配列番号20の塩基配列からなるDNA又はその変異体を含む、[16]又は[17]のキット。
[19]食物アレルゲンが落花生であり、使用するプライマーセットが以下の(vii)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(viii)のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、あるいは、以下の(ix)のオリゴヌクレオチド又はその変異体と、(x)のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含む、[11]又は[12]のキット。
(vii)配列番号9に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
(viii)配列番号10に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、あるいは
(ix)配列番号22に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
(x)配列番号23に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
[20]さらに、配列番号11に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブ又はその変異体、あるいは配列番号24に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブ又はその変異体を含む、[19]のキット。
[21]食物アレルゲン由来のDNAが、配列番号21の塩基配列からなるDNA又はその変異体、あるいは配列番号25の塩基配列からなるDNA又はその変異体を含む、[19]又は[20]のキット。
[22]食物アレルゲン由来のDNAを環状の形態にて50コピー数又はそれ以上の量にて含むか、あるいは、食物アレルゲン由来のDNAを直鎖状の形態にて12.5コピー数又はそれ以上の量にて含む、[11]〜[21]のいずれかのキット。
本発明によれば、リアルタイムPCR装置の機種を特定せず、また検量線の作成を要することなく、飲食品中の食物アレルゲンについて陽性/陰性の判定を正確に行うことができる、リアルタイムPCR法を用いた検査法を提供することができる。
図1は、缶詰食品のあさり水煮を用いた、DNA分解度の分析結果を示す。 図2は、市販の加工食品のDNA抽出量とDNA分解度の分析結果を示す。X軸は抽出DNA量、Y軸はDNA断片長をそれぞれ示す。 図3は、あさり水煮モデル加工食品と市販のあさり水煮加工食品のDNA抽出量とDNA分解度の分析結果を示す。
本発明は、飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無を判定する方法に関し、当該方法は以下の工程(a)−(c)を含む:
(a)飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAを鋳型として、食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いてリアルタイムPCRを行い、増幅シグナルのCt値を得る工程;
(b)前記食物アレルゲン由来のDNAを鋳型として、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRを行い、増幅シグナルのCt値を得る工程であって、該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含み、かつ工程(a)における飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの使用量(ng)に基づいて決定することができる特定の量(コピー数)にてリアルタイムPCRに用いられる、工程;
(c)工程(a)で得られたCt値と工程(b)で得られたCt値を比較する工程であって、工程(a)で得られたCt値が、工程(b)で得られたCt値以下または未満である場合に、該飲食品又は飲食品原材料中に食物アレルゲンが含まれることを示す、工程。
本発明において「食物アレルゲン」とは、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン等が挙げられるが、好ましくはえび、かに、小麦、そば、落花生、大豆であり、特に好ましくは重篤なアナフィラキシーショックを引き起こしやすい小麦、そば、又は落花生である。
本発明によれば、飲食品又は飲食品原材料中にタンパク質濃度として10μg/g以上の量にて食物アレルゲンが含まれるものをリアルタイムPCR法を用いて、簡便かつ迅速に陽性と判定することができる。本発明にて得られた結果は、アレルギー表示の正しさの確認や、アレルギー表示をするべきか否かの判断材料に用いることができる。
「飲食品又は飲食品原材料」とは、食物アレルゲンが含まれる又は含まれる可能性のある飲食品、及びそれらの原料や、加工過程にある飲食品原料などを意味する。
飲食品又は飲食品原材料からのDNAの抽出は、核酸抽出法として当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、フェノール/クロロホルム法、界面活性剤による細胞溶解やプロテアーゼ酵素による細胞溶解、ガラスビーズによる物理的破壊方法、凍結溶融を繰り返す処理方法、及びそれらの組合せを用いて行うことができる。また、市販のDNeasy Plant mini KitやGenomic−tip 20/G、DNeasy Mericon Food Kit(いずれもQIAGEN社)等の各種DNA抽出キットを用いても良い。
抽出されたDNAの濃度および精製度は、分光光度計を用いて波長230、260、及び280nmにおける吸光度を測定することにより評価することができる。すなわち、抽出されたDNAの濃度は、下記式(1)を用いて算出することができる。
Figure 0006651294
また、DNAの精製度は、PCR反応が良好に行われるべく260/230nmの吸光度比が2.0以上、260/280nmの吸光度比が1.8〜2.0であることが好ましい。
さらに、抽出されたDNAについて、植物又は動物が共通に持つ内在性遺伝子に対するプライマーセットを用いてPCR反応を行い、増幅産物が得られることを確認してもよい。
抽出されたDNAは、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」(上記非特許文献2)に記載されるDNAの調製方法に基づいて20ng/μL程度に調整することができる。抽出されたDNAは、5〜500ngとなる量にて鋳型DNAとして利用することができる。好ましくは抽出されたDNAは、50ngとなる量にて鋳型DNAとして利用する(この量は、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」(上記非特許文献2)にて特定される量である)。
本発明において、PCR反応により増幅されたDNAは、常法に基づいて、蛍光を発する化合物又は蛍光物質で標識されたプローブを用いて検出・定量することができる。「蛍光を発する化合物」としては、SYBR(登録商標)Green I等を利用することができ、これらはインターカレーターとしてPCR反応系に加えることにより、増幅されたDNAに結合する。これに励起光を照射することにより蛍光を発し、この蛍光強度を測定することにより、PCR増幅産物の生成量を測定することができる。一方、「蛍光物質で標識されたプローブ」(以下、単に「プローブ」と記載する場合がある。)は、増幅されたDNA中の標的配列に特異的にハイブリダイズすることが可能な核酸プローブである。一例としては、PCR反応系に加えるとアニーリングステップで増幅されたDNA中の標的配列に特異的にハイブリダイズし、その後の伸長反応ステップで、Taq DNAポリメラーゼのもつ5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により、鋳型にハイブリダイズしたプローブが分解され、蛍光物質がプローブから遊離することにより蛍光を発するプローブがある。この蛍光強度を測定することにより、PCR増幅産物の生成量を測定することができ、このようなプローブはTaqManプローブとも称される。
本発明において好ましくは、プローブを用いて、増幅されたDNAを検出・定量する。
「食物アレルゲン検出用のプライマーセット」は、食物アレルゲン由来のDNA上の標的配列に特異的又は選択的に結合(ハイブリダイズ)し、リアルタイムPCR反応により目的の配列を有するDNA断片を増幅できるものであれば特に限定はされない。
「食物アレルゲン由来のDNA」とは、食物アレルゲンが存在することの指標となるDNA(ゲノムDNA等)又はその一部であればよく、特定のタンパク質をコードする領域に由来するものであってもよいし、スペーサー領域(ITS配列等)に由来するものであってもよい。このようなDNAの塩基配列は公知であり、例えばGenBank等の公知のデータベースに開示されており、これらの遺伝子情報に基づいて、プライマーやプローブを設計することができる。例えば、小麦のITS配列は、GenBankにAF438186として登録されており、そばのITS配列は、GenBankにAB000331として登録されており、落花生のITS配列は、GenBankにFJ212319として登録されており、本発明においてはこれらの配列情報を利用することができる。
プライマーは、食物アレルゲン由来DNAの塩基配列に基づいて設計することが可能であり、以下の一又は複数の特徴を有するように設計することができる。
・PCRによる増幅産物のサイズを80〜300bp、より典型的には80〜150bpとする。
・各プライマーのサイズは17〜25塩基程度とする。
・各プライマーのGC含量は40〜60%とし、部分的にGCリッチ又はATリッチでないものとする。
・各プライマーが同程度のTm値を有する。
・目的遺伝子に特異的/比較的特定性の高い配列に設計する。配列の特異性等については、NCBIのBLAST検索などを用いて確認することができる。
・プライマー内部又はプライマー間で3塩基以上の相補的配列を有さない。
・3’末端の塩基がTになるプライマーは避ける。
・3’末端の塩基がGになるプライマーは避ける。
また、増幅されたDNAを検出・定量する際に用いるプローブは、食物アレルゲン由来のDNAの塩基配列に基づいて設計することが可能であり、以下の一又は複数の特徴を有するように設計することができる。
・プローブのサイズは10〜30塩基程度とする。
・プローブのGC含量は20〜80%とし、配列内に4塩基以上Gの連続を有さない。
・プライマーよりも高い(例えば8〜10℃程度高い)Tm値を有する。
・標的配列に特異的/比較的特定性の高い配列に設計する。配列の特異性等については、NCBIのBLAST検索などを用いて確認することができる。
・5’末端が蛍光物質(例えば、6−FAMTM、TETTM、VICTM、HEXTM、NEDTM、PET等)で標識されていている。
・3’末端が消光物質(クエンチャー)(例えば、TAMRA、ROX等)で標識されていている。
プライマー及びプローブは公知のプライマー/プローブ設計ソフトウェアを用いて設計しても良い。このようなソフトウェアとしては例えば、OLIGO Primer Analysis Software(Molecular Biology Insights社)、Beacon Designer(PREMIER Biosoft社)、Primer Expressソフトウェア(ライフテクノロジーズ社)等を利用することができる。
プライマー又はプローブとなるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA自動合成装置を利用して合成することができる。
本発明においてプライマーセット及びプローブは、食物アレルゲン由来のDNAを増幅/検出することが可能な公知のプライマーセット及びプローブを利用することができる(例えば、特開2013−188164号公報、特許第4399417号公報、特許第4658816号公報)。
本発明においては、下記実施例に具体的に示すとおり、各食物アレルゲンの検出に以下のプライマーセット及びプローブを利用することができる。
食物アレルゲンが小麦である場合、プライマーセットは以下の(i)のオリゴヌクレオチドと、(ii)−(iv)より選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを利用することができ:
(i)配列番号1に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(ii)配列番号2に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(iii)配列番号3に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(iv)配列番号4に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
プローブは配列番号5に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むものを利用することができる。
食物アレルゲンがそばである場合、プライマーセットは以下の(v)のオリゴヌクレオチドと、(vi)のオリゴヌクレオチドを含み:
(v)配列番号6に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(vi)配列番号7に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
プローブは配列番号8に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むものを利用することができる。
食物アレルゲンが落花生である場合、プライマーセットは以下の(vii)のオリゴヌクレオチドと、(viii)のオリゴヌクレオチドを含み:
(vii)配列番号9に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(viii)配列番号10に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
プローブは配列番号11に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むものを利用することができる。
または、食物アレルゲンが落花生である場合、プライマーセットは以下の(ix)のオリゴヌクレオチドと、(x)のオリゴヌクレオチドを含み:
(ix)配列番号22に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
(x)配列番号23に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
プローブは配列番号24に示す塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むものを利用することができる。
また、本発明においては、上記配列番号1〜11及び22〜24に示す塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)塩基配列を有し、同様にプライマー又はプローブとしての機能を有するオリゴヌクレオチドも、上記プライマー及びプローブとして利用することができる。ここで「ストリンジェントな条件」とは、上記配列番号1〜11及び22〜24に示す塩基配列を有するプライマー及びプローブを用いたPCR反応と同じ条件、特にアニーリングステップと同じ条件を指す。本明細書においては、このようなプライマー又はプローブのことを上記配列番号1〜11及び22〜24に示す塩基配列を有するプライマー及びプローブの「変異体」と記載する場合があるが、特に記載しない限り、上記配列番号1〜11及び22〜24に示す塩基配列を有するプライマー及びプローブには当該「変異体」も含まれる。このような変異体には、上記配列番号1〜11及び22〜24に示す塩基配列において数塩基の付加、置換、欠失又は挿入を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや(ここで「数塩基」とは、4塩基以内、3塩基以内、又は2塩基以内の塩基数を意味する)、上記配列番号1〜11及び22〜24に示す塩基配列と、BLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド等が含まれ得る。
工程(a)においては、上記抽出されたDNAを鋳型として、上記プライマーセットを使用して、リアルタイムPCR反応を行い増幅シグナルのCt値を得る。リアルタイムPCR反応は常法に従って行うことができ、PCR条件(変性、アニーリング、及び伸長の各ステップの温度や長さ)、反応液の組成(dNTP濃度、プライマーの濃度、プローブ又はSYBR(登録商標)Green I等の濃度、DNAポリメラーゼの種類や濃度、塩化マグネシウムの濃度等)は、食物アレルゲン由来のDNAの検出に必要な特異性や感度を確保できるものであれば、特に限定はされない。リアルタイムPCR反応を行う装置は特に限定されず、ABI PRISM 7900HT(ライフテクノロジーズ社)、LightCycler Nano(ロシュ・ダイアグノスティクス社)等、リアルタイムPCR反応を可能とする様々な機種を用いることができ、特に限定はされない。
「Ct値」とは、リアルタイムPCRにおいて、増幅曲線と閾値(Threshold)が交差するサイクル数を意味し、PCR増幅産物の生成に由来する蛍光量がある所定量(閾値)に達するときのサイクル数を表す。試料中に最初に含まれる標的DNA量が多い程小さく、逆に試料中に含まれる標的DNA量が少ない程大きくなる。
Ct値は、リアルタイムPCR反応を行う装置に付属の解析ソフトを、デフォルトの解析条件で用いて得ることができる。閾値を手動で設定する必要がある場合は、公知の安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の検査方法について(平成24年11月16日食安発1116第4号)のように任意の相対蛍光量を指定することができる。LightCycler Nano等の機種において、PCR増幅産物の生成に由来する蛍光量がある一定の基準以上変動したときのサイクル数を「Cq値」等と呼んでいるが、本技術ではこれらをCt値と読み替えても良い。
本発明において「Ct値」とは、リアルタイムPCRにおいて、食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いて得られた増幅シグナルのCt値である。
工程(b)においては、上記抽出されたDNAに代えて、前記食物アレルゲン由来のDNAを鋳型として用いる以外は、上記と同じ条件にてリアルタイムPCR反応を行い、Ct値を得る。なお、工程(a)と工程(b)は、工程(a)次いで工程(b)の順序であってもよいし、工程(b)次いで工程(a)の順序であってもよく、あるいは、工程(a)と工程(b)は同時に実施されてもよい。好ましくは工程(a)と工程(b)は同時に実施される。
工程(b)にて鋳型として用いられる「食物アレルゲン由来のDNA」としては、上記プライマーやプローブが結合する標的配列を含み得る限り、上記定義のものを用いることができる。その大きさは特に限定されず、プライマーセットの標的配列とそれらに挟まれる領域からなるものであってもよいし、その両端に任意の配列が付加されていてもよい。
また、当該「食物アレルゲン由来のDNA」としては、上記プライマーやプローブがストリンジェントな条件下で結合し得て、かつ、同一条件で行ったリアルタイムPCRにおいて食物アレルゲンから抽出されたDNA中の標的配列と同じDNA配列を用いた場合と同等のCt値が得られる限り、プライマーセットの標的配列とそれらに挟まれる領域(すなわち、PCR反応により増幅される領域)の塩基配列が元の塩基配列(例えば、GenBank等の公知のデータベースに登録された配列)と比べて、10個以内、5個以内、3個以内の塩基の付加、置換、欠失又は挿入を有していても良い。さらに、当該「食物アレルゲン由来のDNA」としては、上記プライマーやプローブがストリンジェントな条件下で結合し得る限り、プライマーセットの標的配列とそれらに挟まれる領域(すなわち、PCR反応により増幅される領域)の塩基配列が元の塩基配列(例えば、GenBank等の公知のデータベースに登録された配列)と、BLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するものであってもよい。なお、本明細書においては、これらの元の塩基配列(例えば、GenBank等の公知のデータベースに登録された配列)とは異なる塩基配列を有する「食物アレルゲン由来のDNA」を、当該DNAの「変異体」と記載する場合があるが、特に記載しない限り、「食物アレルゲン由来のDNA」には当該「変異体」も含まれる。
本発明において当該「食物アレルゲン由来のDNA」はポジティブコントロールとして使用される。本明細書において、当該「食物アレルゲン由来のDNA」を「ポジティブコントロール」と呼ぶ場合があるが、これらの用語は相互互換的に使用される。
食物アレルゲン由来のDNAは、工程(a)のリアルタイムPCR反応と同じ条件にて反応を行った場合に、上記抽出されたDNAを鋳型とした場合と同様に増幅産物及び蛍光シグナルを与えるものであればよい。工程(a)で得られる増幅産物の塩基配列は、工程(b)で得られる増幅産物の塩基配列と異なっていてもよく、両者は数塩基の付加、置換、欠失又は挿入に基づく相違を有していてもよい。ここで「数塩基」とは、10塩基以内、8塩基以内、6塩基以内、4塩基以内、3塩基以内、又は2塩基以内を意味する。
食物アレルゲンが小麦である場合、「食物アレルゲン由来のDNA」としては、以下の塩基配列を含むDNA又は以下の塩基配列からなるDNA、あるいはその変異体を利用することができる。
5’−CATGGTGGGCGTCCTCGCTTTATCAATGCAGTGCATCCGGCGCGCAGCTGGCATTATGGCCTTT−3’(配列番号19)
食物アレルゲンがそばである場合、「食物アレルゲン由来のDNA」としては、以下の塩基配列を含むDNA又は以下の塩基配列からなるDNA、あるいはその変異体を利用することができる。
5’−CGCCAAGGACCACGAACAGAAGCGCGTCCCGAGCCTCCCGGTCCCCGGGCGGCACGGCGGCGTCGCGTCGTTTCTACGAAACAGAACGACTCTCGGCAACG−3’(配列番号20)
食物アレルゲンが落花生である場合、「食物アレルゲン由来のDNA」としては、以下の配列番号21又は配列番号25に示される塩基配列を含むDNA又は以下の塩基配列からなるDNA、あるいはその変異体を利用することができる。
5’−CAAAACCCCGGCGCGGAAAGCGCCAAGGAAGCCAAACGTTTCTGCTCTCCCCGCCGGCTCCGGAGACGGCATCCGGTCGGGGCGAC−3’(配列番号21);
5’−TTGGTTCAAAGAGACGGGCTCTTGGTGGGGAGCGGCACCGCGGCAGATGGTGGTCGAGAACAACCCTCGTG−3’(配列番号25)
好ましくは、「食物アレルゲン由来のDNA」は、プライマーやプローブが結合する標的配列とは異なる領域において少なくとも1塩基が、元の塩基配列(例えば、GenBank等の公知のデータベースに登録された配列)の塩基と異なる塩基に置換されている。この置換を指標とすることによって、PCR反応により得られた増幅産物が、当該「食物アレルゲン由来のDNA」を鋳型として得られたものであるか否かを判断することができる。このような置換(変異)は、所定の位置に変異を導入したクローニング用プライマーを用いてPCRを行うことによって、クローニングされた食物アレルゲン由来のDNAの所定の位置に変異を導入することができる。あるいは、DNA合成により所定の位置に変異を導入することもできる。
「食物アレルゲン由来のDNA」は、食物アレルゲンより抽出して得られたDNAを鋳型として目的の配列を含むプライマーセットを用いたPCR反応を行いクローニングすることによって調製することができる。あるいは、「食物アレルゲン由来のDNA」は、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられる一本鎖DNA合成装置や、二本鎖DNA(人工遺伝子)合成装置を利用して合成することができる。
「食物アレルゲン由来のDNA」は、直鎖状の形態であってもよいし、環状の形態であってもよい。例えば、「食物アレルゲン由来のDNA」はプラスミド又はベクターに挿入された環状の形態、またはその後、制限酵素等で切断された直鎖状の形態とすることができる。これにより食物アレルゲン由来のDNAの安定性を高めることができ、また当該プラスミド又はベクターを用いて宿主生物を形質転換することによって、当該プラスミド又はベクターを宿主生物中で生産することができ、有利である。「食物アレルゲン由来のDNA」を含むプラスミド又はベクターは、当業者に公知である一般的な分子生物学的手法を用いて行うことができる(Sambrook J.ら、“Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL/fourth edition”,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012)参照)。
「食物アレルゲン由来のDNA」は、個々の食物アレルゲンに由来するDNAごと別々のDNAの形態としてもよいが、複数種の食物アレルゲンに由来するDNAを連結して一つのDNAの形態としてもよいし、個々のDNAまたは連結された一つのDNAがプラスミド又はベクターに挿入された形態を有していてもよい。複数種の食物アレルゲンに由来するDNAを連結する場合、各DNAは直接連結されていてもよいし、一又は複数の塩基を介して間接的に連結されていてもよい。
判定基準に用いる「食物アレルゲン由来のDNA」の使用量は、工程(a)における飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの使用量(ng)に基づいて決定することができる。すなわち、「食物アレルゲン由来のDNA」が環状の形態である場合、工程(a)における飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの使用量(ng):工程(b)における食物アレルゲン由来のDNAの使用量(コピー数)の比が、50(ng):24コピー数を上回る量、好ましくは、当該DNAを25コピー若しくはそれ以上、50コピー若しくはそれ以上、又は100コピー若しくはそれ以上の量となる量にて用いることができる。例えば、工程(a)における飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの使用量が50ngである場合、工程(b)における食物アレルゲン由来のDNAを24コピー数を上回る量にて鋳型DNAとしてPCR反応系に加えることができ、好ましくは、当該DNAを25コピー若しくはそれ以上、50コピー若しくはそれ以上、又は100コピー若しくはそれ以上の量にて用いる。当該DNAを24コピー以下で用いた場合には、Ct値のバラツキが大きいことに加え、環境由来コンタミネーションに起因する蛍光シグナルを明確に区別することが困難であり、飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無を正しく判断できない場合がある。コピー数の上限は特に限定されないが、飲食品又は飲食品原材料中に微量を超える食物アレルゲンが含まれていた場合に誤って陰性としないために、例えば、1000コピー以下、500コピー以下、又は300コピー以下とすることができる。一方、「食物アレルゲン由来のDNA」が直鎖状の形態である場合、その使用量は環状の形態の使用量(コピー数)の1/4量とすることができる。すなわち、「食物アレルゲン由来のDNA」が直鎖状の形態である場合、工程(a)における飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの使用量(ng):工程(b)における食物アレルゲン由来のDNAの使用量(コピー数)の比が、50(ng):6コピー数を上回る量、好ましくは、当該DNAを6.25コピー若しくはそれ以上、12.5コピー若しくはそれ以上、又は25コピー若しくはそれ以上の量となる量にて用いることができる。例えば、工程(a)における飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの使用量が50ngである場合、工程(b)における食物アレルゲン由来のDNAを6コピー数を上回る量にて鋳型DNAとしてPCR反応系に加えることができ、好ましくは、当該DNAを6.25コピー若しくはそれ以上、12.5コピー若しくはそれ以上、又は25コピー若しくはそれ以上の量にて用いることができる。また、その上限は例えば、250コピー以下、125コピー以下、又は75コピー以下とすることができる。なお、工程(b)で直鎖状の形態である「食物アレルゲン由来のDNA」の使用量(コピー数)1量から得られたCt値は、環状の形態である「食物アレルゲン由来のDNA」の使用量(コピー数)1/4量から得られたCt値とほぼ同等であることを確認している。
当該DNAのコピー数は以下の式(2)より算出することができる。
Figure 0006651294
式中、「A260値」は分光光度計によって得られた波長260nmにおける吸光値、「L」はDNA(あるいは当該DNAを含むプラスミド又はベクター)のサイズ(bp)、「V」は溶液量(μL)を示す。
また、当該DNAのコピー数はDigital PCRを用いて測定することもできる。Digital PCRを用いることの利点は、以下2点である:
1.吸光度測定では区別できない標的配列以外の夾雑DNAや標的配列の分解DNAなどを測定しないため、PCR増幅可能な標的配列のコピー数のみを測定可能であること;
2.吸光度測定よりも低いコピー数で測定可能であること。
従って、測定原理の違いや1.に記載の利点から、吸光度測定とDigital PCR測定とでは、同一試料であっても異なるコピー数として算出され得る。
また、2.に記載の利点から、判定基準とする食物アレルゲン由来のDNAのコピー数に近い濃度(例えば200−2000コピー/μL)での定量が可能であり、濃度測定後の希釈によるばらつきを抑え得る。
本コピー数は、下記実施例にて詳述されるとおり、食物アレルゲンの定性リアルタイムPCR検査が難しい(検査法に高い感度が求められる)加工食品の調製において、タンパク質濃度として10μg/g相当量の食物アレルゲンを加えて製造された、食物アレルゲン含有モデル加工食品より抽出された、食物アレルゲン由来のDNA量に基づいて設定されたものである。
すなわち、タンパク質濃度として10μg/g相当量の食物アレルゲンを含むモデル加工食品から抽出したDNAを鋳型DNAとして食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いて得られる増幅シグナルのCt値が、鋳型DNAを一定量の食物アレルゲン由来のDNA(ポジティブコントロール)に代えて得られるCt値以下となるように、当該食物アレルゲン由来のDNAの量(コピー数)は設定されている。食物アレルゲン由来のDNA(ポジティブコントロール)のコピー数は、バラツキの少ないCt値を与えるように、また、検査環境由来コンタミネーションに起因する蛍光シグナルを誤って陽性としないように、可能な限り大きい方が望ましい。
なお、「Ct値以下」とは、上記モデル加工食品から抽出したDNAを鋳型DNAとして食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いて得られる増幅シグナルのCt値が、鋳型DNAをポジティブコントロールに代えて得られる増幅シグナルのCt値以下となることである。具体的には、コピー数が既知である複数濃度のポジティブコントロールによって得られた検量線から上記モデル加工食品から抽出したDNA中のコピー数を推定し、推定されたコピー数以下となるようにポジティブコントロールを設定すればよい。
より好ましくは、上記モデル加工食品から抽出したDNAを鋳型DNAとして食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いて得られる増幅シグナルのCt値が、鋳型DNAをポジティブコントロールに代えて得られる増幅シグナルのCt値未満となるように、すなわち、上記モデル加工食品から抽出したDNAを鋳型DNAとして得られる増幅シグナルのCt値が、ポジティブコントロールより得られる増幅シグナルのCt値より有意に小さくなると統計的に判断されるようにポジティブコントロール濃度を設定してもよい。なお「有意に小さくなる」とは、それぞれの試料のCt値の平均値と標準偏差より、下記式(3)が成立することを意味する。
Figure 0006651294
式中、X、σはそれぞれモデル加工食品抽出DNAの平均Ct値、標準偏差であり、X、σはそれぞれポジティブコントロールの平均Ct値、標準偏差である。
また、何点か測定した平均値を用いてもよくその場合には、下記式(4)が成立することを意味する。
Figure 0006651294
式中、標準偏差はσ/√N及びσ/√Nで表わされ、N及びNはそれぞれモデル加工食品抽出DNA及びポジティブコントロールの測定数である。
さらに、式(4)が成立する確率f(z)は、下記式(5)より求めることができ、その確率が試験方法の必要とする確率であればよい。
Figure 0006651294
上記飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNA、及びポジティブコントロールを所定のコピー数にて、それぞれ鋳型DNAとして用いて、同一のPCR条件及び反応液の組成を用いてリアルタイムPCR反応を実施し、それぞれについてCt値を得る。次いで、得られたCt値を比較し、飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAを鋳型DNAとして得られるCt値が、食物アレルゲン由来のDNA(ポジティブコントロール)を鋳型DNAとして得られるCt値以下または未満である場合には、飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNA試料中に、ポジティブコントロールのコピー数以上またはポジティブコントロールのコピー数を上回るコピー数にて食物アレルゲン由来のDNAが含まれることを示す。これにより当該飲食品又は飲食品原材料中に、タンパク質濃度として10μg/g以上の食物アレルゲンが含まれるものを陽性と判定できる。
本発明はまた、飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無をリアルタイムPCR法により判定する方法に用いられるキットに関し、当該キットは食物アレルゲン検出用のプライマーセット、及びポジティブコントロールとしての食物アレルゲン由来のDNAを含む。
食物アレルゲン検出用のプライマーセットとしては、上記プライマーセットを挙げることができ、その一又は複数種を組み合わせて含めることができる。各プライマー又は各プライマーセットはそれぞれ別個の容器に収容することができる。各プライマー又は各プライマーセットは一回の使用量ごとに容器に収容されていてもよいし、複数回分の量が一つの容器に収容されていてもよい(使用者は一回の使用に必要な量を取り出して用いることができる)。各プライマー又は各プライマーセットは乾燥形態で容器に収容されていてもよいし、適当な溶媒中に溶解した形態で容器に収容されていてもよい。
食物アレルゲン由来のDNA(ポジティブコントロール)としては、上記食物アレルゲン由来のDNAを挙げることができ、その一又は複数種を組み合わせて含めることができる。食物アレルゲン由来のDNAはそれぞれ別個の容器に収容することができる。食物アレルゲン由来のDNAは一回の使用量(すなわち、環状形態のものであれば24コピー数を上回る量、好ましくは、25コピー若しくはそれ以上、50コピー若しくはそれ以上、又は100コピー若しくはそれ以上、直鎖状形態のものであれば6コピー数を上回る量、好ましくは、6.25コピー若しくはそれ以上、12.5コピー若しくはそれ以上、又は25コピー若しくはそれ以上)ごとに容器に収容されていてもよいし、複数回分の量が一つの容器に収容されていてもよい(使用者は一回の使用に必要な量を取り出して用いることができる)。食物アレルゲン由来のDNAは乾燥形態で容器に収容されていてもよいし、適当な溶媒中に溶解した形態で容器に収容されていてもよい。
本発明のキットはさらに、リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を行うための蛍光標識されたプローブを含む。当該プローブとしては、上記プローブを挙げることができ、その一又は複数種を組み合わせて含めることができる。プローブはそれぞれ別個の容器に収容することができる。プローブは一回の使用量ごとに容器に収容されていてもよいし、複数回分の量が一つの容器に収容されていてもよい(使用者は一回の使用に必要な量を取り出して用いることができる)。プローブは乾燥形態で容器に収容されていてもよいし、適当な溶媒中に溶解した形態で容器に収容されていてもよい。
本発明のキットはさらに、dNTPミックス、SYBR(登録商標)Green I、塩化マグネシウム、及び使用説明書より選択される一以上の要素を含めることができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:リアルタイムPCR検査が難しい加工食品の選定
1)DNA抽出量とDNA分解度の分析
リアルタイムPCR検査が難しい加工食品を選定する指標として、(1)DNA抽出量と(2)DNA分解度を用いることができる。加工食品はそれぞれ異なる原材料を含んでおり、食品毎に1g(又は単位重量)あたりから抽出されてくるDNA量は異なる。そのため、同量のアレルゲンを含む食品であっても、抽出されたDNA量が多いもの程、希釈率が高くなるため、20ng/μLに調整した鋳型DNA試料液中に含まれる食物アレルゲンのDNA濃度は低くなる。よって、DNAが多く抽出されるもの程、検査が難しい食品であるといえる。また、多くの加工食品では、食品自体のpHや加工による加熱などによりDNAが短く分解されており、その程度も異なる。そのため、同量のアレルゲンを含む食品であっても、抽出されたDNAの分解が進んでいるもの程、食物アレルゲンのDNA由来の標的配列を含むDNA分子の残存量は少なくなる。よって、DNAが短く断片化されているもの程、リアルタイムPCR検査が難しい食品であるといえる。
市販されているさまざまな種類の加工食品について、下記方法により抽出DNA量とDNA分解度を求めた。
<DNA抽出量の算出>
DNA抽出はQIAGEN社製のGenomic−tip 20/Gを用い、以下の方法で行った。
細かく粉砕した試料約2gを50mL容チューブに入れ、7.5mLのBuffer G2、20μLのRNase A(100mg/mL)、200μLのプロテイナーゼK溶液を加え混合後、50℃にて2時間保温した。遠心分離により水層を回収し、予め1mLのBuffer QBTで平衡化したGenomic−tip 20/Gに供してDNAをカラムに吸着させた。その後、6mLのBuffer QCでカラムを洗浄し、1mLのBuffer QFでDNAを溶出させてイソプロパノール沈殿により沈殿物を回収した。TE buffer(pH8.0)に溶解後、260nmの吸光度を測定してDNA濃度を求め、食品2gから抽出されるDNA量(μg)を算出した。
<DNA分解度の分析>
上記方法で抽出したDNA試料をDNA濃度20ng/μLとなるようにTE buffer(pH8.0)を用いて適宜希釈した。それらDNA試料をDNA分析用マイクロチップ電気泳動装置MultiNA(島津製作所)に負荷し、DNA断片長によってそれぞれのDNAを分離した。DNA二重らせんにインターカレートする化合物を利用して得られた蛍光強度の極大値、および極大値に対応するDNA断片長(bp)を求めた。分析例を図1に示す。極大値に対応するDNA断片長は、DNA分解が激しいほど短くなる。
2)市販の加工食品評価
市販の加工食品38品の抽出DNA量とDNA断片長を上記方法により分析した(表1)。
Figure 0006651294
X軸に抽出DNA量、Y軸にDNA断片長としたグラフを用いて加工食品の評価を行い、検査の難しい加工食品を選定することとした。分析した各加工食品の結果(図2)から、グラフの一番右下にプロットされたあさり水煮(缶詰食品)を検査が難しい加工食品として見出した。あさり水煮の殺菌条件は、黒変リスクへの対応として120℃でF値35程度(日本缶詰協会発行「缶・びん詰・レトルト食品・飲料製造講義II(各論編)」平成14年5月20日)と設定されており、一般的な水産缶詰食品の殺菌条件とされるF値5〜8程度と比べて非常に厳しいものとなっている。そのため、缶詰食品のあさり水煮は、他の食品に比べてDNA分解が進んでおり、リアルタイムPCR検査が難しい加工食品となっていると考えられる。
実施例2:食物アレルゲンを含むモデル加工食品の作製
リアルタイムPCR検査が難しいものとして選定された加工食品に含まれる食物アレルゲンを検出できる感度を持つPCR法であれば、それ以外の殆どの加工食品に含まれる食物アレルゲンも検出できると考えられる。そこで、上記で選定されたあさり水煮を模して作製した「一定量の食物アレルゲンを含むモデル加工食品」は、後述の陽性/陰性判定基準の設定に用いることができる。
消費者庁の『アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック(事業者向け)』には、食物アレルゲンのうち、重篤度・症例数の多い7品目(特定原材料)については省令で表示を義務付けし、飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの総タンパク含量が一定量以上含まれている場合には表示が必要となる。なお、スクリーニング検査における食物アレルゲン陽性とは、食品採取重量1gあたりの食物アレルゲン由来のタンパク質含量が10μg以上のものをいう。実施例1でリアルタイムPCR検査が難しい加工食品として選定したあさり水煮について、食物アレルゲンタンパク質濃度として10μg/g相当量の特定原材料が含まれるものを確実に陽性と判定できれば、食物アレルゲン検査に必要な感度を十分確保しているといえる。
そこで、タンパク質濃度として10μg/g相当量の小麦、そば、落花生を添加して加工したあさり水煮加工食品を、食物アレルゲンを含むモデル加工食品(陽性モデル)として作製し、各定性リアルタイムPCR検査で確実に陽性と判定されるかを確認した。
<小麦、そば、落花生粉末の作製と添加量>
・小麦
添加する小麦は、農林61号の全粒を用い、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」に従って小麦粉末を作製した。あさり水煮モデル加工食品150g相当の原料に添加する小麦粉末量は、15.45mgとした。
・そば
添加するそばは、ダッタンそば又は普通そばを用いた。日本国内で食されているそば粉の主な種類に、更科そば粉、やぶそば粉、ダッタンそば粉がある。これら3種のそば粉を、実施例1と同様の操作により抽出した単位重量あたりのDNA抽出量は、ほぼ同等であったが、リアルタイムPCRの検出感度を比較した結果、同量のDNAからの増幅シグナルの立上がり(Ct値)はダッタンそば粉が遅かったため、一番検査が難しいと判断した。そこで、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」に従ってダッタンそば粉末を添加試料の一つとして作製した。また、普通そばは更科そば粉、やぶそば粉の原料であり、最も流通量が多いことから、普通そば粉末も添加試料の一つとして作製した。あさり水煮モデル加工食品150g相当の原料に添加するダッタンそば又は普通そばの粉末量は、いずれも20.16mgとした。
・落花生
添加する落花生は、千葉県産落花生を用い、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」に従って落花生粉末を作製した。あさり水煮モデル加工食品150g相当の原料に添加する落花生粉末量は、6.75mgとした。
<食物アレルゲンを含むモデル加工食品の作製>
あさり水煮加工食品は、日本缶詰協会発行の『缶・びん詰・レトルト食品・飲料製造講義II(各論編)』を参考とし、原料に上記量にて小麦、ダッタンそば又は普通そば、落花生粉末を添加して、アレルギー物質を含むモデル加工食品の作製を行った。すなわち、2L容ビーカーにクエン酸3ナトリウム40g、リン酸水素2ナトリウム20gを量り入れ、2Lの蒸留水で攪拌溶解した液をあさり浸透液(pH8.8)とした。500mL容ビーカーに塩化ナトリウム3.56g、クエン酸2.4g、クエン酸3ナトリウム2.4gを量り入れ、400mLの蒸留水で攪拌溶解した液を調味液(pH3.98)とした。寸胴鍋にたっぷりの水を沸騰させ、500g冷凍生あさりむき身を入れ3分間ボイルした。湯切り後のあさり重量を量り、あさり重量の2倍以上の浸透液に30分以上浸漬させた。レトルトパウチに浸透液を軽く切ったあさり100g、調味料50g、上述の量の小麦、ダッタンそば又は普通そば、落花生粉末を入れ、密閉して混合した。蒸気式レトルト殺菌釜にて122℃にて33分(F値=35)殺菌後、10分間の水冷却を行った。レトルトパウチから内容物を取り出し、ミルサーで粉砕均一化し、2gずつに分けて冷凍保存した。
以下、これをあさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)とする。なお、別途、小麦、ダッタンそば又は普通そば、落花生粉末を添加しない陰性モデルも作製した。
実施例3:あさり水煮モデル加工食品の評価
実施例2で得られたあさり水煮モデル加工食品が適切に作製されたことを確認するために、以下の評価を行った。
<ELISA測定>
作製したあさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)に各食物アレルゲンタンパク質が10μg/g含まれていることを確認するため、小麦、そば、落花生のELISA測定を行った。チューブに分注したうちの任意の2試料を2回反復で市販ELISAキット(モリナガFASPEK特定原材料測定キット、森永生科学研究所社製)を用いてマニュアルに従って定量した。
その結果、そば粉末にダッタンそばを使用したモデルでは、小麦全タンパク質濃度は7.9μg/g、8.5μg/g、そば全タンパク質濃度は5.4μg/g、5.9μg/g、落花生全タンパク質濃度は7.0μg/g、6.2μg/gとなり、おおよそ10μg/g量レベルの各食物アレルゲンタンパク質が含まれていることが確認できた。また、そば粉末に普通そばを使用したモデルでは、小麦全タンパク質濃度は9.9μg/g、11.2μg/g、そば全タンパク質濃度は8.7μg/g、9.5μg/g、落花生全タンパク質濃度は6.8μg/g、7.2μg/gとなり、このモデルでも、おおよそ10μg/g量レベルの各食物アレルゲンタンパク質が含まれていることが確認できた。なお、添加した食物アレルゲンはいずれも微量であり、正確な量を添加することが難しいこと、加工や食品中のマトリクスの食物アレルゲンタンパク質濃度の測定への影響が考えられることから、タンパク質濃度として各10μg/g相当量の食物アレルゲンを添加した場合でも必ずしも10μg/gとはならなかった。一方、陰性モデルには小麦、そば、落花生タンパク質が含まれていないことを確認した。
<市販品との比較>
食品メーカー3社から販売されている市販品あさり水煮缶と作製したあさり水煮モデル加工食品(小麦、ダッタンそば、落花生を添加した陽性モデル、および陰性モデル)を、実施例1の方法により、抽出DNA量と分解程度を分析し、加工食品の検査の難しさ評価グラフにプロットした結果(図3)、モデル加工食品は市販品と近い位置にプロットされることが確認された。また、モデル加工食品と市販品とで、あさり重量割合、粉砕して測定したpHに大差ないことが確認できた(表2)。これらの結果より、作製したあさり水煮モデル加工食品は、市販品と同様に、リアルタイムPCR検査が難しい加工食品の一つとして妥当と判断した。
Figure 0006651294
<動物PCR測定>
作製したあさり水煮モデル加工食品からDNAを抽出し、PCR増幅によるDNA品質の確認を行った。DNA抽出は実施例1のDNA抽出法と同様の操作で行った。PCR増幅確認は消費者庁通知の『アレルギー物質を含む食品の検査方法』に記載されている動物検出用PCRプライマー及び反応条件を用いて、DNAが増幅されることを確認した。
<定性リアルタイムPCR検査>
上記で抽出したDNAを小麦検出、そば検出、落花生検出(配列番号9、10、11または配列番号22、23、24に示されるプライマー、プローブ)のリアルタイムPCR検査に供し、作製したあさり水煮モデル加工食品への小麦、そば、落花生粉末の添加の有無によって、Ct値が得られる/得られないことを確認した。
リアルタイムPCRは、QIAGEN社製のQuantiTect Probe PCR Kitを用い、二機種のリアルタイムPCR装置(ライフテクノロジーズ社製ABI PRISM 7900HT及びロシュ・ダイアグノスティクス社製LightCycler Nano)により、以下の方法で行った。
鋳型DNAは50ng DNAとなるように加えた。また、各鋳型DNA濃度において、2点併行で測定した。
PCR装置はライフテクノロジーズ社製ABI PRISM 7900HTを用い、PCR反応液を入れる容器は専用の96穴PCRプレートを用いた。PCR反応液を入れた容器をリアルタイムPCR装置にセットし、95℃,15分の後、95℃,30秒(変性)に続いて68℃,1分(アニーリングおよび伸長ステップ)を行うサイクルを45回繰り返して反応させた。ただし、配列番号22、23、24のプライマー・プローブセットの場合はサイクル数を40回とした。反応終了後、伸長ステップ後に取得した蛍光データを解析した。解析条件は装置に付属する解析ソフトのデフォルト条件で行った。
・小麦
小麦検出の定性リアルタイムPCRでは、12.5μLの2×QuantiTect Probe PCR Master Mixに、配列番号1のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号2のプライマーを終濃度で0.1μMと、配列番号3と配列番号4のプライマーを終濃度でそれぞれ0.05μMと、配列番号5のTaqMan MGBプローブを終濃度で0.1μM、鋳型DNAを加え、最終的に滅菌超純水で25μLとした。
<小麦検出用のプライマー及びプローブ>
配列番号1:5’−CATGGTGGGCGTCCTC−3’
配列番号2:5’−AAAGGCCATAATGCCAGCTG−3’
配列番号3:5’−TGAGGCCGTCATGCCGGCTG−3’
配列番号4:5’−TGAGGCCATAATGTCGGCTG−3’
配列番号5:5’−CGGATGCACTGCITTGATAAAG−3’
・そば
そば検出の定性リアルタイムPCRでは、12.5μLの2×QuantiTect Probe PCR Master Mixに、配列番号6のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号7のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号8のTaqMan MGBプローブを終濃度で0.1μM、鋳型DNAを加え、最終的に滅菌超純水で25μLとした。
<そば検出用のプライマー及びプローブ>
配列番号6:5’−CGTTGCCGAGAGTCGTTCTGTTT−3’
配列番号7:5’−CGCCAAGGACCACGAACAGAAG−3’
配列番号8:5’−CGGGACGCGCTTC−3’
・落花生
落花生検出の定性リアルタイムPCRでは、12.5μLの2×QuantiTect Probe PCR Master Mixに、配列番号9のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号10のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号11のTaqMan MGBプローブを終濃度で0.1μM、鋳型DNAを加え、最終的に滅菌超純水で25μLとした。あるいは、12.5μLの2×QuantiTect Probe PCR Master Mixに、配列番号22のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号23のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号24のTaqMan MGBプローブを終濃度で0.1μM、鋳型DNAを加え、最終的に滅菌超純水で25μLとした。
<落花生検出用のプライマー及びプローブ>
配列番号9:5’−CAAAACCCCGGCGCGGAAA−3’
配列番号10:5’−GTCGCCCCGACCGGATGC−3’
配列番号11:5’−TGCTCTCCCCGCCGGC−3’
配列番号22:5’−TTGGTTCAAAGAGACGGGCTC−3’
配列番号23:5’−CACGAGGGTTGTTCTCGACC−3’
配列番号24:5’−ACCGCGGCAGATGG−3’
結果、小麦、ダッタンそば又は普通そば、落花生粉末を添加した陽性モデルは蛍光シグナルの上昇によりCt値が認められ、一方、小麦、そば、落花生粉末を添加しなかった陰性モデルは蛍光シグナルが上昇せず、Ct値が認められなかった。
以上の評価結果から、小麦、そば、落花生粉末を添加したあさり水煮モデル加工食品が適切に作製されたと判断した。
実施例4:陽性/陰性判定基準とするポジティブコントロールプラスミドAの作製
小麦PCR、そばPCR、落花生PCR(配列番号9、10、11に示されるプライマー、プローブ)の標的DNA配列をそれぞれ含む3つの増幅産物をPCRにより1つに連結して、それをTAクローニングベクターに導入して、大腸菌に形質転換した。形質転換した大腸菌からプラスミドを精製して、導入した塩基配列を確認した。
1)小麦、そば、落花生のPCR標的DNA配列をそれぞれ含む増幅産物の作製
小麦のPCR標的DNA配列を含む増幅産物を得るためのPCRは、12.5μLの2×HotStarTaq Master Mixに、プライマーセットとして配列番号1(上記小麦フォワードプライマー)と配列番号12(制限酵素消化部位+小麦リバースプライマー)をそれぞれ終濃度で0.2μMと、鋳型DNAとして普通小麦(Triticum aestivum)由来DNAを用い、最終的に滅菌超純水で25μLとしてPCR反応液を入れた容器をPCR装置にセットし、95℃,15分の後、94℃,30秒(変性)に続いて66℃,1分(アニーリングおよび伸長ステップ)を行うサイクルを45回繰り返して反応させた。
そばのPCR標的DNA配列を含む増幅産物を得るためのPCRは、12.5μLの2×HotStarTaq Master Mixに、プライマーセットとして配列番号13(制限酵素消化部位+そばフォワードプライマー)と配列番号14(制限酵素消化部位+そばリバースプライマー)をそれぞれ終濃度で0.2μMと、鋳型DNAに普通そば(Fagopyrum esculentum)由来DNAを用い、最終的に滅菌超純水で25μLとしてPCR反応液を入れた容器をPCR装置にセットし、95℃,15分の後、94℃,30秒(変性)に続いて66℃,1分(アニーリングおよび伸長ステップ)を行うサイクルを45回繰り返して反応させた。
落花生のPCR標的DNA配列を含む増幅産物を得るためのPCRは、12.5μLの2×HotStarTaq Master Mixに、プライマーセットとして配列番号15(制限酵素消化部位+配列番号9の落花生フォワードプライマーを含む)と配列番号10(上記落花生リバースプライマー)をそれぞれ終濃度で0.2μMと、鋳型DNAに落花生(Arachis hypogaea)由来DNAを用い、最終的に滅菌超純水で25μLとしてPCR反応液を入れた容器をPCR装置にセットし、95℃,15分の後、94℃,30秒(変性)に続いて64℃,1分(アニーリングおよび伸長ステップ)を行うサイクルを45回繰り返して反応させた。
以下に、本実施例にて新たに合成・使用したプライマー配列を記す。
配列番号12:5’−GGATCCAAAGGCCATAATGCCAGCTGGG−3’
配列番号13:5’−TCTAGACGCCAAGGACCACGAACAGAAG−3’
配列番号14:5’−AAGCTTCGTTGCCGAGAGTCGTTCTGTTTGG−3’
配列番号15:5’−GCTAGCCAAAACCCCGGCGCGGAAACCGCCAAGGAAGC−3’
2)小麦、そば、落花生PCR増幅産物の連結
上記で得られた3つのPCR産物を、Jayaraman Kら(1992.A PCR−Mediated Gene Synthesis Strategy Involving the Assembly of Oligonucleotides Representing Only One of the Strands.BioTechniques 12:392―398)の方法を参考にして、QIAGEN社製のHotStarTaq MasterMix Kitを用いて以下の方法により連結し、連結DNAを作製した。
まず、小麦PCR産物とそばPCR産物を連結するためのPCRは、12.5μLの2×HotStarTaq Master MixにさらにdNTPを終濃度で500μMとなるように加えたものに、配列番号12(制限酵素消化部位+小麦リバースプライマー)と配列番号13(制限酵素消化部位+そばフォワードプライマー)をアウタープライマーとしてそれぞれ終濃度で1μMずつ、配列番号16をブリッジプライマーとして終濃度で25nMずつ加え、鋳型DNAとして上記小麦PCRの増幅産物1μLと上記そばPCRの増幅産物1μLを加え、最終的に滅菌超純水で25μLとした反応用溶液を作製して、0.2mLマイクロチューブでPCRを行なった。PCRはライフテクノロジーズ社製のサーマルサイクラーVeritiにより、95℃,15分(酵素活性化)の後、95℃,1分(変性)、40℃,1分(アニーリング)、72℃,1分(伸長)のサイクルを15回繰り返し、さらに95℃,1分(変性)、66℃,1分(アニーリング)、72℃,1分(伸長)のサイクルを30回繰り返して反応させた。得られたPCR反応液を島津製作所製のMultiNA MCE−202により電気泳動し解析した。
次に、上記で作製した小麦PCR産物とそばPCR産物の連結された産物と、落花生PCR産物を連結するためのPCRは、12.5μLの2×HotStarTaq Master MixにさらにdNTPを終濃度で500μMとなるように加えたものに、配列番号12(制限酵素消化部位+小麦リバースプライマー)と配列番号17(制限酵素消化部位+配列番号9の落花生フォワードプライマーを含む)をアウタープライマーとしてそれぞれ終濃度で1μM、配列番号18をブリッジプライマーとして終濃度で25nMとなるように加え、鋳型DNAとして上記小麦PCR産物とそばPCR産物の連結された増幅産物1μLと落花生PCRの増幅産物1μLを加え、最終的に滅菌超純水で25μLとした反応用溶液を作製して、0.2mLマイクロチューブでPCRを行なった。PCRは、上記小麦PCR産物とそばPCR産物の連結と同じ条件で行なった。得られたPCR反応液を島津製作所製のMultiNA MCE−202により電気泳動し解析した。
結果、予想された約275bp付近のPCR増幅産物が得られた(データ省略)。
以下に、本実施例にて新たに合成・使用したプライマー配列を記す。
配列番号16:5’−ACTCTCGGCAACGAAGCTTCATGGTGGGCGTCCTC−3’
配列番号17:5’−GCTAGCCAAAACCCCGGCGCGGAAAC−3’
配列番号18:5’−TCCGGTCGGGGCGACTCTAGACGCCAAGGACCACG−3’
3)連結PCR産物のプラスミドへの導入と塩基配列解析
上記で得られた連結PCR産物を、pGEM−T Easy Vector System(Promega社製)を用いてpGEM−T Easy VectorにTA cloningし、大腸菌(E.coli DH5α)に形質転換した。コロニーPCRにより小麦、そば、落花生PCRの標的DNA配列を含む約277bpの挿入断片が含まれていることを確認できた。導入断片を持つ形質転換体をLB培地で液体培養して、菌体からQIAGEN社製のQIAprep Spin Miniprep Kitを用いてプラスミドを抽出、精製した。なお、精製したプラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列は、プラスミド上にある配列のプライマーを用いた両鎖シークエンスにより解析した結果、意図した通り、形質転換体のプラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列には、小麦PCR、そばPCR、落花生PCR(配列番号9、10、11に示されるプライマー、プローブ)の標的DNA配列がそれぞれ含まれていることが確認できた。
4)ポジティブコントロールプラスミドのコピー数の算出と濃度調整
プラスミド溶液のコピー数ベースでの濃度は、分光光度計で測定された260nmの吸光度「A260値」、一般的な吸光度とDNA濃度の関係式「260nmの吸光度1におけるDNA濃度50ng/μL」、プラスミドの長さ「3,292bp」、DNAの平均分子量「660/塩基対」から下記式(2’)により算出した。PCR反応の鋳型とするプラスミド溶液の濃度調整は、サケ精子DNA 20ng/μL含有TE Buffer(pH8.0)を用いて希釈した。
Figure 0006651294
実施例5:陽性/陰性判定基準とする、ポジティブコントロールプラスミドBの作製
小麦PCR、そばPCR、及び落花生PCR(配列番号22、23、24に示されるプライマー、プローブ)の標的DNA配列をそれぞれ含む配列を人工遺伝子合成装置にて直列に合成し、クローニングベクターに導入して、大腸菌に形質転換した。形質転換した大腸菌からプラスミドを精製して、導入した塩基配列を確認した。
1)小麦、そば、落花生のPCR標的DNA配列をそれぞれ含む配列の作製
人工遺伝子作製サービス(ファスマック社)に委託して、下記配列をpUC19のSmaIサイトに含む環状プラスミドを作製した。
配列番号26:5’−CATGGTGGGCGTCCTCGCTTTATCAATGCAGTGCATCCGGCGCCCAGCTGGCATTATGGCCTTTCGCCAAGGACCACGAACAGAAGCGCGTCCCGAGCCTCCCGGTCCCCGGGCGGCACGGCGGCGTCGCGTCGTTTCTACCAAACAGAACGACTCTCGGCAACGTTGGTTCAAAGAGACGGGCTCTTCGTGGGGAGCGGCACCGCGGCAGATGGTGGTCGAGAACAACCCTCGTG−3’
なお、作製したプラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列には、プラスミド上にある配列のプライマーを用いた両鎖シークエンスにより解析した結果、意図した通り、小麦PCR、そばPCR、及び落花生PCR(配列番号22、23、24に示されるプライマー、プローブ)の標的DNA配列がそれぞれ含まれていることが確認できた。
2)ポジティブコントロールプラスミドBの制限酵素消化による、直鎖状プラスミドの作製
プラスミドに組込まれた配列の増幅は、直鎖状プラスミドの方が、環状プラスミドよりも早いサイクル数で増幅することが知られている。そこで、制限酵素消化によって直鎖状プラスミドを作製した。
上記で得られたポジティブコントロールプラスミドの溶液20μLに対して、1μLのBamHI 3―20U/μL(東洋紡ライフサイエンス社製)、2.45μLの10×H Bufferを加え、最終的に滅菌水で24.5μLとし、37℃にて、1時間の反応を行った。反応後のプラスミドはMinElute Reaction Cleanup Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
3)ポジティブコントロールプラスミドの吸光度によるコピー数の算出と濃度調整
プラスミド溶液のコピー数ベースでの濃度は、分光光度計で測定された260nmの吸光度「A260値」、一般的な吸光度とDNA濃度の関係式「260nmの吸光度1におけるDNA濃度50ng/μL」、プラスミドの長さ「2,922bp」、DNAの平均分子量「660/塩基対」から下記式(2’’)により算出した。PCR反応の鋳型とするプラスミド溶液の濃度調整は、サケ精子DNA 20ng/μL含有TE Buffer(pH8.0)を用いて希釈した。
Figure 0006651294
4)ポジティブコントロールプラスミドBのDigital PCRによるコピー数の算出
PCR反応液は、15μLのQuantStudioTM 3D Digital PCR Master Mix,2X(ライフテクノロジーズジャパン社製)に、そば検出用である、配列番号6のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号7のプライマーを終濃度で0.2μMと、配列番号8のTaqMan MGBプローブを終濃度で0.1μM、鋳型DNAは直鎖状ポジティブコントロールプラスミドを用い、量は吸光度から計算された量で1000コピー/μLとなる濃度をPCR反応液に12μL(2/5量)加え、最終的に滅菌超純水で30μLとした。
PCR反応液を入れる容器は専用のチップ(QuantStudioTM 3D Digital PCR 20K Chip、ライフテクノロジーズジャパン社製)を用いた。上記のPCR反応液を2つのチップに等量入れ、容器をDigital PCR装置(ProFlexTM 2x Flat PCR System、ライフテクノロジーズジャパン社製)にセットし、96℃,10分(酵素活性化)の後、60℃,2分(アニーリング)、98℃,0.5分(変性)のサイクルを39回繰り返したのち、60℃,2分(アニーリング)を行って反応させた。反応終了後、専用の装置(QuantStudioTM 3D Digital PCR Instrument、ライフテクノロジーズジャパン社製)で蛍光データを取得し解析した。
結果、吸光度から計算された量が1000コピー/μLとなるDNA溶液は、Digital PCRで検出された標的配列の濃度は598コピー/μLと算出された。
実施例6:モデル加工食品中における小麦、そば、落花生の定性リアルタイムPCRの陽性/陰性判定
1)小麦、そば、落花生の定性リアルタイムPCR反応
実施例3で得られたあさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)DNAと、実施例4又は実施例5で得られたポジティブコントロールプラスミドA又はBをそれぞれ鋳型として、小麦PCR、そばPCR、落花生PCR(ポジティブコントロールプラスミドAの時は配列番号9、10、11のプライマー、プローブ;ポジティブコントロールプラスミドBの時は配列番号22、23、24のプライマー、プローブ)の定性リアルタイムPCRを行ない、タンパク質濃度として10μg/g相当量の食物アレルゲンを含むあさり水煮モデルを陽性と判定するポジティブコントロールプラスミドのコピー数を決定した。リアルタイムPCRは、実施例3に示した方法で行い、ポジティブコントロールBを用いる場合のみサイクル数を40とした。
鋳型DNAには、あさり水煮モデル加工食品抽出DNAの場合は50ng DNAとなるように、プラスミドの場合は反応液中のコピー数が24,25,50,60,100,120コピーとなるように加えた。また、各鋳型DNA濃度において、16点併行で測定した。
PCR反応液を入れる容器は、ライフテクノロジーズ社製ABI PRISM 7900HTでは専用の96穴PCRプレートを用い、ロシュ・ダイアグノスティクス社製LightCycler Nanoでは専用の8連PCRチューブを用いた。PCR反応液を入れた容器をリアルタイムPCR装置にセットし、実施例3に示したPCR温度条件(ポジティブコントロールBを用いる場合のみサイクル数を40)で反応させた。反応終了後、伸長ステップ後に取得した蛍光データを解析した。解析条件はそれぞれの装置に付属する解析ソフトのデフォルト条件で行った。なお、LightCycler NanoでCq値と呼ばれる値は、Ct値と読み替えた。
2)PCR結果の統計解析と陽性/陰性判定基準の設定
<PCR結果の解析方法>
まず、あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)DNA 50ngとポジティブコントロールプラスミド24,25,50,60,100,120コピーそれぞれの試料について「16回併行測定したCt値」から平均値(X)、標準偏差(σ)を算出した。次に、実際の食物アレルゲン検査において同一試料を2回併行測定することを想定して、これらの値から「2回併行測定したCt値の平均」の平均値X、標準偏差σ/√2を求めた。最後に、あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)の下限Ct値とプラスミド上限Ct値が重ならない標準偏差の最大の係数zを下記式(4’)で求め、式(4’)が成立する確率f(z)を下記式(5)で求めた。なお、Ct値の解析条件はそれぞれの装置に付属する解析ソフトのデフォルト条件で行ない、LightCycler NanoでCq値と呼ばれる値は、Ct値と読み替えた。
Figure 0006651294
Figure 0006651294
・X、σ:あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)抽出DNAの平均Ct値、標準偏差
あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)は、実施例4のポジティブコントロールプラスミドAと比較した場合はそば粉末にダッタンそばを使用したモデルを用い、実施例5のポジティブコントロールプラスミドBと比較した場合はそば粉末に普通そばを使用したモデルを用いた。
・X、σ:ポジティブコントロールプラスミドの平均Ct値、標準偏差
<解析結果に基づく陽性/陰性判定基準の設定>
ポジティブコントロールプラスミド24,25,50,60,100,120コピー/反応液、あさり水煮モデル加工食品抽出DNAをそれぞれ16点併行測定し、得られたCt値から、式(5)により式(4’)が成立する確率を算出した結果を下記表3に示す。
Figure 0006651294
また、実施例5のポジティブコントロールプラスミドBについて、直鎖状の形態にある25コピー/反応液と、環状の形態にある100コピー/反応液のCt値、標準偏差を比較した結果を下記表4に示す。
Figure 0006651294
7900HT、LightCycler Nanoで試験したポジティブコントロールプラスミドA(環状)24,50,60,100,120コピー/反応液の何れでも、ならびに、ポジティブコントロールプラスミドB(直鎖状)25コピー/反応液及び(環状)100コピー/反応液の何れでも、あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)抽出DNAを高い確率(例えば99.7%以上、3σ)で陽性と判定できることが示された。ポジティブコントロールプラスミドA(環状)の場合の一部、そばPCR/7900HTと小麦PCR/LightCycler Nanoで99.7%、3σを下回る確率となったが、他の結果から標準偏差のバラツキの範囲と考えられた。
ポジティブコントロールプラスミドB(直鎖状)の25コピー/反応液は、ポジティブコントロールプラスミドB(環状)の100コピー/反応液と同等のCt値、標準偏差であり、この結果より、直鎖状の形態とすることで、環状の形態の1/4量のコピー数でも同等の結果が得られることが示された。
プラスミドA(環状)の24コピー/反応液は、3種のリアルタイムPCRともに99.7%、3σを達成できたものの、バラツキが大きく、10コピー以下に相当するCt値が得られる場合もあったことから、環境由来コンタミネーションに起因する蛍光シグナルを偽陽性とする可能性が高いと考えた。
以上の結果より、ポジティブコントロールプラスミドが環状の場合は、24コピーを上回るコピー、より詳細には50コピー以上で得られるCt値を陽性/陰性判定基準とすることで、あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)抽出DNAを二機種のリアルタイムPCR装置において高い確率で陽性と判定できることを示せた。このことから、検査の難しいモデル加工食品(陽性モデル)を陽性と判定できる量のポジティブコントロールプラスミドから得られるCt値以下または未満となる加工食品を陽性と判定することで、タンパク質濃度として10μg/g以上の小麦、そば、落花生を含む様々な加工食品を見落としなく陽性と判定することができることが示された。
なお、ポジティブコントロールプラスミドが直鎖状の場合は、1/4量のコピー数でも環状の1量のコピー数と同等の結果が得られることから、上記環状での「24コピーを上回るコピー」、「50コピー以上」は、それぞれ直鎖状では「6コピーを上回るコピー」、「12.5コピー以上」と読み替えることができる。
実施例7:モデル加工食品中における小麦、そば、落花生のコピー数測定
1)小麦、そば、落花生の定性リアルタイムPCR反応
実施例3で得られたあさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)DNA、実施例4で得られたポジティブコントロールプラスミドA、実施例5で得られた直鎖状のポジティブコントロールプラスミドBをそれぞれ鋳型として、小麦、そば、落花生のリアルタイムPCRを行ない、タンパク質濃度として10μg/g相当量の食物アレルゲンを含むあさり水煮モデルに含まれる標的配列のコピー数をそれぞれ測定した。リアルタイムPCRは、機種はライフテクノロジーズ社製ABI PRISM 7900HTを用い、実施例3に示した方法で行い、ポジティブコントロールBを用いる場合のみサイクル数を40とした。
鋳型DNAには、あさり水煮モデル加工食品抽出DNAの場合は50ng DNAとなるように、実施例4で得られたポジティブコントロールプラスミドAの場合は反応液中のコピー数が20,50,100,1000,10000,100000コピーとなるように、実施例5で得られた直鎖状のポジティブコントロールプラスミドBの場合は反応液中のコピー数が25,3200,6400,10000コピーとなるように加えた。また、あさり水煮DNAは16点併行で未知試料として測定し、プラスミドの各鋳型DNAは、実施例4で得られたポジティブコントロールプラスミドAの場合はいずれのコピー数の試料も2点併行で、実施例5で得られた直鎖状のポジティブコントロールプラスミドBの場合は25コピーについては16点併行、3200,6400,10000コピーについてはいずれも2点併行で標準試料として測定した。
また、あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)は、実施例4のポジティブコントロールプラスミドAと比較した場合は、そば粉末にダッタンそばを使用したモデルを用い、実施例5の直鎖状のポジティブコントロールプラスミドBと比較した場合は、そば粉末に普通そばを使用したモデルを用いた。
2)PCR結果
まず、あさり水煮モデル加工食品(陽性モデル)DNA 50ngについて「16回併行測定したCt値」から平均Ct値を算出した。解析結果から得られた検量線を用いて平均Ct値からコピー数を算出した結果、あさり水煮DNA 50ng中の小麦、そば、落花生標的配列のコピー数は、実施例4で得られたポジティブコントロールプラスミドAから計算した場合でそれぞれ427,199,485コピーであり、実施例5で得られた直鎖状のポジティブコントロールプラスミドBから計算した場合でそれぞれ140,146,63コピーと算出された。

Claims (22)

  1. 飲食品又は飲食品原材料中に含まれる、小麦、そば及び落花生からなる群から選択される一以上の食物アレルゲンの有無を判定する方法であって、下記の工程(a)、(b)及び(c):
    (a)飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAを鋳型として、食物アレルゲン検出用のプライマーセットを用いてリアルタイムPCRを行い、増幅シグナルのCt値を得る工程;
    (b)前記食物アレルゲン由来のDNAを鋳型として、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRを行い、増幅シグナルのCt値を得る工程であって、
    (b−1)該DNAが、前記プライマーセットの標的配列を含む環状の形態であり、かつ該DNAの量(コピー数)と工程(a)にて用いられる飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの量(ng)が24コピー数を上回る量:50ngとなる量比にてリアルタイムPCRに用いられる、あるいは
    (b−2)該DNAが、前記プライマーセットの標的配列を含む直鎖状の形態であり、かつ該DNAの量(コピー数)と工程(a)にて用いられる飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAの量(ng)が6コピー数を上回る量:50ngとなる量比にてリアルタイムPCRに用いられる、工程;及び
    (c)工程(a)で得られたCt値と工程(b)で得られたCt値を比較する工程であって、工程(a)で得られたCt値が、工程(b)で得られたCt値以下である場合に、該飲食品又は飲食品原材料中に食物アレルゲンが含まれることを示す、工程
    を含む方法
  2. 飲食品又は飲食品原材料中にタンパク質濃度として10μg/g以上の量にて食物アレルゲンが含まれるものを陽性と判定する方法である、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(a)において50ng量の飲食品又は飲食品原材料より抽出されたDNAを鋳型として、かつ工程(b)において、24コピー数を上回る量の食物アレルゲン由来の環状のDNA又は6コピー数を上回る量の食物アレルゲン由来の直鎖状のDNAを鋳型として、それぞれリアルタイムPCRに用いられる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 工程(b)において、食物アレルゲン由来のDNAが環状のDNAである場合50コピー数又はそれ以上の量にて、又は食物アレルゲン由来のDNAが直鎖状のDNAである場合12.5コピー数又はそれ以上の量にて、リアルタイムPCRに用いられる、請求項3に記載の方法。
  5. 工程(c)において、工程(a)で得られたCt値が、工程(b)で得られたCt値未満である場合に、前記飲食品又は飲食品原材料中に食物アレルゲンが含まれることを示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 食物アレルゲンが小麦であり、使用するプライマーセットが以下の(i)のオリゴヌクレオチドと、(ii)−(iv)より選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
    (i)配列番号1に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (ii)配列番号2に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (iii)配列番号3に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (iv)配列番号4に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
  7. 食物アレルゲンがそばであり、使用するプライマーセットが以下の(v)のオリゴヌクレオチドと、(vi)のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
    (v)配列番号6に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (vi)配列番号7に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
  8. 食物アレルゲンが落花生であり、使用するプライマーセットが以下の(vii)のオリゴヌクレオチドと、(viii)のオリゴヌクレオチドを含むか、あるいは以下の(ix)のオリゴヌクレオチドと、(x)のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
    (vii)配列番号9に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
    (viii)配列番号10に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、あるいは
    (ix)配列番号22に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
    (x)配列番号23に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
  9. リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を、蛍光標識されたプローブを用いて行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無をリアルタイムPCR法により判定する方法に用いられるキットであって、
    食物アレルゲン検出用のプライマーセット、及び
    食物アレルゲン由来のDNAであって、該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む環状の形態であり、24コピー数を上回る量にて存在するか、もしくは該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む直鎖状の形態であり、6コピー数を上回る量にて存在する、
    を含み、
    食物アレルゲンが小麦であり、プライマーセットが以下の(i)のオリゴヌクレオチドと、(ii)−(iv)より選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを含む上記キット。
    (i)配列番号1に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (ii)配列番号2に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (iii)配列番号3に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (iv)配列番号4に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
  11. さらに、リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を行うための蛍光標識されたプローブを含む、請求項10に記載のキット。
  12. 前記プローブが、配列番号5に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブである、請求項11に記載のキット。
  13. 食物アレルゲン由来のDNAが、配列番号19の塩基配列からなるDNAを含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載のキット。
  14. 飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無をリアルタイムPCR法により判定する方法に用いられるキットであって、
    食物アレルゲン検出用のプライマーセット、及び
    食物アレルゲン由来のDNAであって、該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む環状の形態であり、24コピー数を上回る量にて存在するか、もしくは該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む直鎖状の形態であり、6コピー数を上回る量にて存在する、
    を含み、
    食物アレルゲンがそばであり、プライマーセットが以下の(v)のオリゴヌクレオチドと、(vi)のオリゴヌクレオチドを含む、上記キット。
    (v)配列番号6に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
    (vi)配列番号7に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
  15. さらに、リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を行うための蛍光標識されたプローブを含む、請求項14に記載のキット。
  16. 前記プローブが、配列番号8に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブである、請求項15に記載のキット。
  17. 食物アレルゲン由来のDNAが、配列番号20の塩基配列からなるDNAを含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載のキット。
  18. 飲食品又は飲食品原材料中に含まれる食物アレルゲンの有無をリアルタイムPCR法により判定する方法に用いられるキットであって、
    食物アレルゲン検出用のプライマーセット、及び
    食物アレルゲン由来のDNAであって、該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む環状の形態であり、24コピー数を上回る量にて存在するか、もしくは該DNAが前記プライマーセットの標的配列を含む直鎖状の形態であり、6コピー数を上回る量にて存在する、
    を含み、
    食物アレルゲンが落花生であり、使用するプライマーセットが以下の(vii)のオリゴヌクレオチドと、(viii)のオリゴヌクレオチドを含む、あるいは、以下の(ix)のオリゴヌクレオチドと、(x)のオリゴヌクレオチドを含む、上記キット。
    (vii)配列番号9に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
    (viii)配列番号10に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、あるいは
    (ix)配列番号22に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および
    (x)配列番号23に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチド
  19. さらに、リアルタイムPCRによる増幅産物の検出を行うための蛍光標識されたプローブを含む、請求項18に記載のキット。
  20. 前記プローブが、配列番号11に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブ、あるいは配列番号24に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含む蛍光標識されたプローブである、請求項19に記載のキット。
  21. 食物アレルゲン由来のDNAが、配列番号21の塩基配列からなるDNA、あるいは配列番号25の塩基配列からなるDNAを含む、請求項18〜20のいずれか1項に記載のキット。
  22. 食物アレルゲン由来のDNAを環状の形態にて50コピー数又はそれ以上の量にて含むか、あるいは、食物アレルゲン由来のDNAを直鎖状の形態にて12.5コピー数又はそれ以上の量にて含む、請求項10〜21のいずれか1項に記載のキット。
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