JP5902517B2 - 小麦の検出方法 - Google Patents

小麦の検出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5902517B2
JP5902517B2 JP2012056106A JP2012056106A JP5902517B2 JP 5902517 B2 JP5902517 B2 JP 5902517B2 JP 2012056106 A JP2012056106 A JP 2012056106A JP 2012056106 A JP2012056106 A JP 2012056106A JP 5902517 B2 JP5902517 B2 JP 5902517B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wheat
dna
probe
seq
pcr
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012056106A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013188164A (ja
Inventor
渡辺 聡
聡 渡辺
宜司 平尾
宜司 平尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
House Foods Group Inc
Original Assignee
House Foods Group Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by House Foods Group Inc filed Critical House Foods Group Inc
Priority to JP2012056106A priority Critical patent/JP5902517B2/ja
Publication of JP2013188164A publication Critical patent/JP2013188164A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5902517B2 publication Critical patent/JP5902517B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、食物アレルギーの原因となる小麦を特異的かつ高感度に検出する方法に関する。
小麦は食物アレルギーの原因となる食品原料の一つとして知られている。小麦アレルギー患者にとっては、微量の小麦がアナフィラキシーショックなどの重大な症状を引き起こすことがあるため、アレルギー予防のためには、食品や食品原料中に小麦の混入がないことを確認することが必要である。一方、小麦の近縁種であるオオムギ、ライムギ等は、アレルギー症状を引き起こさなければ小麦アレルギー患者にとっても重要な栄養源となることから、これら近縁種を小麦と見誤らないことが重要である。従って、食品への小麦の混入の有無を確認する検査法には、微量の小麦を検出する「感度」と、オオムギ、ライムギなどの近縁種を誤って検出しない「特異性」を両立させることが求められる。
これまで小麦の検出方法としては、小麦主要アレルゲンであるTriticin precursor、Starch Synthase IおよびGlutathione S-transferase遺伝子を基に設計したプライマー対を用いてPCRを行い、食品中の小麦の有無を測定する方法(特許文献1)、小麦のゲノムDNAにコードされている遺伝子であるスターチシンターゼII(Starch Synthase II)の塩基配列に基づいて設計された該塩基配列と相補的にハイブリダイズするプライマー対及び/又は核酸プローブを用いてPCRを行い、該塩基配列のプライマー対に挟まれた領域のPCR増幅産物の存在を指標として小麦の存在を定性的及び/又は定量的に検出する方法(特許文献2)などがある。しかしながら、特許文献1の検出方法では、PCR産物の存在を電気泳動で解析する際にPCR後のチューブの蓋を開ける必要があるため、PCR増幅産物が検査環境に拡散して、それ以降の検査でコンタミネーションが起こるリスクがある。特許文献2には、プライマー対による定性的PCRとプライマー対と核酸プローブによる定量的PCRが記載されている。このうち定性的PCRについては、特許文献1と同様にPCR増幅産物の存在を電気泳動解析で確認する方法であり、かつ、加工度が高いと考えられるレトルト食品中の小麦を確実に検出するには至っていない。もう一方の定量的PCRについては、PCR増幅産物の存在を定量PCR装置で解析する方法であり、電気泳動解析を行なう必要がないのでPCR増幅産物が検査環境に拡散するリスクを低減できるものの、定性的PCRと同じプライマー対を用いているために検出感度は定性的PCRと同等であり、レトルト食品中の小麦を検出することは難しいと考えられる。
本出願人もまた、小麦のITS-2配列を含む特定の部分より設計したプライマー対を用いてPCRを行うことにより小麦をオオムギ、ライムギ等の小麦以外の穀物と区別して高感度にかつ特異的に検出する方法を開発した(特許文献3)。しかしながら、この検出方法もまた、PCR増幅産物の存在を電気泳動解析で確認する方法である。よって、本方法の高感度と特異性に加えて、PCR増幅産物の検出を安全かつ迅速に行う手段が望まれる。
WO2003-068989号公報 特開2009-5588号公報 特開2009-82125号公報
本発明の課題は、加熱や加圧などの処理によりDNAが分解および断片化されて検出が困難と考えられる加工食品に含まれる微量の小麦を、電気泳動による解析をすることなく、特異的かつ高感度で検出する手段を提供することにある。
本発明者らは、特開2009-82125に開示されるプライマー対(配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対)を用いたPCRによって得られる増幅産物を検出するためのプローブをプライマー対に挟まれる領域の配列に基づいて設計し、これを前記プライマー対と組み合わせてリアルタイムPCRを行ったところ、オオムギ、ライムギなどの近縁種と区別して、また、加工食品中に含まれる微量の小麦をも特異的かつ高感度に検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 被検試料から抽出したDNAを鋳型とし、配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対、および配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブを用いてリアルタイムPCRを行い、小麦標的増幅産物に由来する蛍光シグナルにより小麦の存在を検出することを特徴とする、小麦の検出方法。
(2) 小麦の存在を検出する指標としてリアルタイムPCRより得られる蛍光シグナルの増加を用いることを特徴とする、(1)に記載の検出方法。
(3) 前記小麦が、小麦属またはエギロプス属に属する植物であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の検出方法。
(4) 前記プローブが5’末端を蛍光物質で、3’末端を消光物質で修飾したTaqManプローブであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の検出方法。
(5) 配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブ。
(6) 前記プローブが5’末端を蛍光物質で、3’末端を消光物質で修飾したTaqManプローブであることを特徴とする、(5)に記載のプローブ。
(7) 配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対、および配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブからなる小麦検出用プライマー対およびプローブのセット。
(8) (7)に記載の小麦検出用プライマー対およびプローブのセットを含む、小麦検出用キット。
本発明によれば、被検試料中の小麦を、電気泳動による解析をすることなく、特異的かつ高感度で検出する方法、ならびに当該方法に用いる小麦検出用プライマー対とプローブのセットが提供される。本発明の小麦の検出方法は、食品や食品原料における小麦の混入の有無を検出するのに有効であり、特に加工食品に含まれる微量の小麦や食品の加工工程でDNAが断片化した小麦の有無を高感度に検出できる。また、本発明の小麦の検出方法は、標的とする小麦由来のPCR増幅産物を蛍光シグナルによって判別することが可能となるため、従来の電気泳動による解析に比べ、解析作業時間を短縮でき、PCR増幅産物を次のPCRに持ち越すキャリーオーバーによるコンタミネーションリスクを大幅に低減できる。
小麦(農林61号)DNA試料(50ng, 5ng, 500pg, 50pg, 5pg, 500fg)のリアルタイムPCR分析結果を示す。 小麦の代表的な10品種のDNA試料(5pg)のリアルタイムPCR分析結果を示す。 モデル分解DNAおよびまぐろ水煮(市販品)から抽出したDNAの電気泳動結果を示す。 モデル分解DNA(50ng)およびモデル未分解DNA(50ng)のリアルタイムPCR分析結果を示す。 小麦添加モデル加工食品DNA試料(50ng)のリアルタイムPCR分析結果を示す。
本発明の小麦の検出方法は、小麦のITS-2配列を含む特定の部分より設計した下記の配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対と、当該プライマー対に挟まれた領域の塩基配列の一部にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるプローブを用いてリアルタイムPCRを行い、小麦標的増幅産物に由来する蛍光シグナルで被検試料中の小麦の存在を検出することを特徴とする。
配列番号1:5'-CATGGTGGGCGTCCTC-3'
配列番号2:5'-AAAGGCCATAATGCCAGCTG-3'
配列番号3:5'-TGAGGCCGTCATGCCGGCTG-3'
配列番号4:5'-TGAGGCCATAATGTCGGCTG -3'
本発明において「小麦」とは、小麦属(Triticum)に属する植物、およびエギロプス属(Aegilops)に属する植物をいう。エギロプス属(Aegilops)に属する植物は、小麦の原種と考えられており、また雑草として混入する可能性や混入した場合に小麦アレルギー患者が発症する可能性が否定できないことから、小麦属植物のみならずエギロプス属植物をも検出できることは有利である。
小麦属(Triticum)に属する植物には、食用として広く流通する普通コムギ(例えば、Triticum aestivum cv. 農林61号、Triticum aestivum cv. Chinese Spring、Triticum aestivum cv. Sapporo Haruなど)、デュラムコムギ(Triticum durum Desf)、ライコムギ(Triticum aestivum-rye amphidiploid)のほか、リベットコムギ(Triticum turgidum L.)、一粒コムギ(Triticum monococcum L.)、チモフェービ系(Triticum timopheevi Zhuk)等が挙げられる。
エギロプス属(Aegilops)に属する植物には、クサビコムギ(Aegilops speltoides Tausch)、タルホコムギ(Aegilops squarrosa L.)等が挙げられる。
本発明のプローブは、配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対に挟まれた領域の塩基配列に基づいて設計する。設計にあたっては、まず当該領域の小麦属(Triticum)植物およびエギロプス(Aegilops)属植物の複数のITS-2配列を整列(アラインメント)し、比較する。
プローブの設計は、TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix (ライフテクノロジーズジャパン)等の市販のリアルタイムPCR試薬に添付のプロトコルに基づいて行なえばよい。プローブの設計基準としては、GC含量が20-80%の範囲内であること、配列内に4塩基以上のGの連続を避けること、対応するプライマー対のTm値よりも8-10℃程度高く設定すること、プローブの5'側末端がGにならないこと、プローブの塩基配列中にGよりもCがより多いことが挙げられる。
上記の設計基準に基づき、また、前記プライマー対に挟まれたプローブを設計可能な領域(26bp)には標的とする小麦属やエギロプス属の植物の配列で共通しない塩基が散在するという事情を考慮した結果、共通しない塩基をどの塩基ともハイブリダイズしない塩基(5’側から13塩基目)であるイノシンに置換した下記の配列を有するオリゴヌクレオチドを本発明のプローブとして設計した。
配列番号5: 5'-CGGATGCACTGCITTGATAAAG-3'
一般に、プローブが鋳型DNAに相補的に結合する際には、両末端の領域に付加される塩基配列の重要性は低い。従って、本発明のプローブは、配列番号5の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの両末端に5個以下の任意の塩基が付加されていてもよい。
また、本発明のプローブは、小麦標的増幅産物に由来する蛍光シグナルを検出するための標識物質で標識されていてもよい。標識プローブとしては、蛍光物質と消光物質で二重標識したTaqMan(登録商標)プローブが好ましい。TaqMan(登録商標)プローブは、通常、核酸プローブの5’末端を蛍光物質(レポーター蛍光色素)で修飾し、3’末端を消光物質(クエンチャー蛍光色素)で修飾する。レポーター蛍光色素の例としては6-FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、TET(6-カルボキシ-4, 7, 2',7'-テトラクロロフルオレセイン)、HEX(6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン)等のフルオレッセイン系蛍光色素が挙げられ、クエンチャー蛍光色素の例としては、6‐カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)等のローダミン系蛍光色素が挙げられるが、本発明においては、配列番号5の塩基配列を用いつつ、Tm値を対応するプライマー対のTm値よりも8-10℃程度高くするために、非蛍光消光物質であるminor groove binder (MGB)が好適に用いられる。これらの蛍光色素は公知であり、市販のリアルタイムPCR用キットに含まれているのでそれを用いることができる。
プライマーまたはプローブとなるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA自動合成装置を利用して合成することが可能である。
本発明の小麦の検出方法の好ましい態様では、配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対と、上記の配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブを用いて、被検試料から抽出したDNAを鋳型としてリアルタイムPCR法を実施する。
被検試料としては、小麦を含むまたは小麦が混入する可能性のある食品原料、加工過程にある材料、加工食品等の製品などが用いられ、特に制限されない。具体的には、生または乾燥種子、コーンフラワー等の粉末、グリッツなどの中間加工品、菓子類や麺類等の加工調理済の食品などが挙げられる。本発明の方法により得られた検出結果は、食品のアレルギー表示に利用できるほか、生産者の意図していない製造ラインにおける小麦のコンタミネーションの有無の確認に利用できる。
被検試料に含まれる小麦の含有量は特に指定するものではないが、本発明では、被検試料中に小麦が10 μg小麦全タンパク質量/g相当量混在していれば、被検試料中に存在する小麦の有無を判定することができる。
被検試料からのDNAの抽出は、核酸抽出法として当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、フェノール/クロロホルム法、界面活性剤による細胞溶解やプロテアーゼ酵素による細胞溶解、ガラスビーズによる物理的破壊方法、凍結溶融を繰り返す処理方法などにより行うことができる。また、試薬メーカーより販売されているQIAGEN Plant mini Kit(QIAGEN GmbH社製)等の各種DNA抽出キットを用いても良い。これらの方法により抽出したDNAは、PCRの鋳型として用いるのに適した状態で保持することが好ましく、例えば適切な緩衝液に溶解させて低温下で保管することが好ましい。得られたDNAの純度は、分光光度計を用いて230、260、及び280nmの吸光度を測定することにより検定することができる。PCRを行う上で、260/230nmの吸光度比が2.0以上、260/280 nmの吸光度比が1.8〜2.0であることが好ましい。また、得られたDNA溶液について、植物が共通に持つ内在性遺伝子に対するプライマー対を用いてPCRを行い、増幅が起こることを確認してもよい。
リアルタイムPCR法は、上記のプライマー対とプローブを用いる以外は、例えばSaiki RK, et al., Science, 230:1350-1354(1985)や植物細胞工学別冊、植物のPCR実験プロトコル、島本功・佐々木卓治監修(1995年)等に記載されている通常の方法に基づいて、市販のリアルタイムPCRキットやリアルタイムPCR装置を用い、それらに添付の操作説明書に従って行なえばよい。リアルタイムPCR装置としては、例えば、ABI PRISM 7900(ライフテクノロジーズジャパン社製)等が用いられる。
まず、上記の操作で得られたDNA試料を鋳型とし、前記のプライマー対を用いてPCRを行う。PCR増幅は前記のプライマー対を用いる以外は特に制限はなく、常法に従って行えばよい。PCR条件(変性、アニーリング、伸長の各ステップの温度および時間、ならびにサイクル数等)、PCR反応液の組成(鋳型DNA量、緩衝液の種類、プライマー濃度、DNAポリメラーゼの種類や濃度、dNTP濃度、塩化マグネシウム濃度等)は、前記のプライマー対を用いたPCRにおいて高感度でPCR増幅産物が得られるような条件を予備実験等により当業者であれば適切に選択及び設定することができる。DNAポリメラーゼ、dNTP濃度、塩化マグネシウム濃度等がほぼ最適化されたリアルタイムPCR用マスターミックスが市販されており、これらを利用してもよい。
リアルタイムPCR法には、プライマー対とともに二本鎖DNAに結合することによって蛍光を発する化合物であるSYBR Green IなどのインターカレーターをPCR反応系に加えるインターカレーター法、または、5'末端を蛍光物質で3'末端を消光物質で標識したプローブ(TaqMan(登録商標)プローブ)をPCR反応系に加えるTaqMan(登録商標)法があるが、本発明においては、TaqMan(登録商標)法が好ましい。
TaqMan(登録商標)法では、TaqMan(登録商標)プローブがPCRによる増幅反応においてポリメラーゼの伸長反応に使用される条件下で鋳型DNAに特異的にハイブリダイズし、DNA鎖の伸長、すなわち鋳型DNAの増幅に伴って分解され、蛍光物質を遊離することによりPCR反応液中の蛍光量が増加する。この蛍光量の増加が鋳型DNAの増幅の指標となり、PCRにおける増幅の様子をリアルタイムで簡便に検出することができる。
被検試料中の小麦DNAを検出する場合は、次のように行う。まず、被検試料でリアルタイムPCR法を実施し、増幅曲線を得る。次に蛍光シグナルの増加がサイクル数に対して指数関係にある領域で、蛍光量増加(ΔRn)の適当な閾値(Threshold)を設定し、増幅曲線と閾値(Threshold)が交わるか否かにより、被検試料中の小麦DNAの有無を判断する。この増幅曲線と閾値(Threshold)との交わるサイクル数をCt値(Threshold Cycle)と呼ぶ。なお、上記以外の蛍光シグナルの増加の検出方法として、例えばLuu-The et al., BioTechniques 38:287-293(2005)、Rutledge and Stewart, BMC Molecular Biology, 9:96 (2008)、US 2011/0276317 A1等に記載されている方法に基づいて実施してもよい。
上記のプライマー対とプローブはキット化することもできる。本発明のキットは、上記プライマー対とプローブを少なくとも含むものであればよく、必要に応じて、PCRの陽性コントロールとなる標的配列を含むDNA分子、DNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、標識物質、説明書などを含んでいてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)小麦DNA検出用プローブの設計
下記の小麦のITS-2配列を含む特定の部分より設計した下記の配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物からなるプライマー対を用いたリアルタイムPCRにおいて小麦由来のシグナル(蛍光)が得られると予想されるプローブを設計するために、小麦属(Triticum)植物の配列およびエギロプス(Aegilops)属植物 の配列を収集し、アラインメントした。
配列番号1:5'-CATGGTGGGCGTCCTC-3'
配列番号2:5'-AAAGGCCATAATGCCAGCTG-3'
配列番号3:5'-TGAGGCCGTCATGCCGGCTG-3'
配列番号4:5'-TGAGGCCATAATGTCGGCTG-3'
小麦属(Triticum)植物の配列として、GenBankに登録されている下記配列中のITS-2領域を用いた。
Triticum aestivum (AF438186)
Triticum aestivum (AF438187)
Triticum aestivum (AF438188)
Triticum aestivum (AF438191)
Triticum aestivum (AF440676)
Triticum aestivum (AF440679)
Triticum aestivum (AF521903)
Triticum aestivum (AM040486)
Triticum aestivum (AY346110)
Triticum aestivum (AY346111)
Triticum aestivum (AY346112)
Triticum aestivum (AY346114)
Triticum aestivum (AY346120)
Triticum aestivum (AY450258)
Triticum aestivum (Z11761)
Triticum araraticum (AJ238920)
Triticum araraticum (AJ238921)
Triticum araraticum (AJ238922)
Triticum boeticum (AJ238901)
Triticum dicoccoides (AJ238911)
Triticum dicoccoides (AJ238913)
Triticum dicoccoides (AJ238915)
Triticum dicoccoides (AJ238916)
Triticum dicoccum (AJ238917)
Triticum dicoccum (AJ301801)
Triticum dicoccum (AJ301801)
Triticum monococcum (AJ301800)
Triticum timopheevii (AJ238923)
Triticum timopheevii (AJ238924)
Triticum turgidum (AJ238912)
Triticum turgidum (AJ238918)
Triticum turgidum (AJ238919)
Triticum turgidum (AY450266)
Triticum urartu (AJ301803)
小麦属植物の原種であるエギロプス(Aegilops)属植物の配列として、GenBankに登録されている下記配列中のITS-2領域を用いた。
Aegilops bicornis (AF149192)
Aegilops bicornis (AJ238907)
Aegilops biuncialis (AF157003)
Aegilops columnaris (AF156997)
Aegilops comosa (AF149198)
Aegilops comosa (AF149201)
Aegilops crassa (AF157000)
Aegilops cylindrical (AF156993)
Aegilops geniculata (AF156998)
Aegilops juvenalis (AF157001)
Aegilops kotschyi (AF157002)
Aegilops longissima (AF149196)
Aegilops longissima (AJ238908)
Aegilops markgrafii (AF149199)
Aegilops neglecta (AF157004)
Aegilops peregrine (AF156996)
Aegilops searsii (AF149194)
Aegilops sharonensis (AF149195)
Aegilops sharonensis (AJ238905)
Aegilops sharonensis (AJ238906)
Aegilops sharonensis (AJ238909)
Aegilops speltoides (AJ238903)
Aegilops speltoides (AJ238904)
Aegilops speltoides (AJ301804)
Aegilops speltoides (AY450267)
Aegilops speltoides (AY450268)
Aegilops speltoides (Z11762)
Aegilops squarrosa (AF149193)
Aegilops tauschii (AJ238910)
Aegilops triuncialis (AF156994)
Aegilops umbellulata (AF149197)
Aegilops uniaristata (AF149200)
Aegilops vavilovii (AF156999)
Aegilops ventricosa (AF156995)
上記の小麦属植物およびエギロプス属植物のITS-2配列の中から、全配列にハイブリダイズすると予想される配列を選定し、下記の塩基配列を有するプローブを合成した。
配列番号5:5'-CGGATGCACTGCITTGATAAAG-3'
(実施例2)本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセットの特異性と感度評価
配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物からなるプライマー対および配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブ(以下、「本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセット」という)用いるリアルタイムPCRの性能を評価した。
(1) PCR鋳型DNAの抽出
[試料]
(i)小麦(小麦の原種であるエギロプス属植物及び掛け合わせ品種のライコムギを含む。):
Triticum aestivum cv. 農林61号(市販品)
Triticum aestivum cv. Chinese Spring (KT020-003)
Triticum aestivum cv. Sapporo Haru (KT020-004)(以上、普通コムギ)
Triticum turgidum L (KU-147)(リベットコムギ)
Triticum durum Desf (KU-125)(デュラムコムギ)
Triticum monococcum L. (KU-104-2)(一粒コムギ)
Triticum timopheevi Zhuk (KU-107-1)(チモフェービ系)
Aegilops speltoides Tausch (KU-2-1)(クサビコムギ)
Aegilops squarrosa L. (KU-20-1)(タルホコムギ)
Triticum aestivum-rye amphidiploid (TACBOW0065)(ライコムギ)
(ii) オオムギ、ライムギ、エン麦
オオムギ(みのり種:市販品)
ライムギ(市販品)
エン麦(前進種:市販品)
(iii)その他穀物
ハトムギ(市販品)
トウモロコシ(市販品)
ソバ(市販品)
コメ(コシヒカリ:市販品)
ダイズ(鶴の子大豆:市販品)
[DNA抽出]
農林61号以外の小麦、オオムギ、ライムギ、エン麦、ハトムギ、トウモロコシは発芽させ、葉からDNA抽出を行った。他の試料は、種子からDNA抽出を行った。DNA抽出は、QIAGEN社製のGenomic-tip 20/Gを用い、以下の方法で行った。
細かく粉砕した試料約0.5 gを50 mlチューブに入れ、7.5 mLのbuffer G2、20 μlのRNase A(100 mg/ml)、200 μlのプロテイナーゼK溶液を加え、混合した後、50℃で2時間保温した。遠心分離により水層を回収し、あらかじめ1 mlのBuffer QBTで平衡化したGenomic-tip 20/Gに供してDNAをカラムに吸着させた。その後、4 mlのBuffer QCでカラムを洗浄し、1 mlのBuffer QFでDNAを溶出させた。イソプロパノール沈殿により沈殿物を回収し、40 μlの滅菌超純水に溶解した。260 nmの吸光度を測定して濃度を求め、超純水を用いて20 ng/μlに希釈したものをPCRの鋳型DNA試料とした。なお、ここで得られたDNAがPCR増幅可能レベルの純度であることは、植物葉緑体DNAの一部を増幅するプライマーにより、PCR増幅産物が得られることで確認した。
(2) 特異性および感度の確認
上記のようにして調製した各DNA試料液を用いてそれぞれ2点併行でリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCRは、QIAGEN社製のQuantiTect Probe PCR Kitを用い、以下の方法で行った。
12.5 μlの2×QuantiTect Probe PCR Master Mixに、配列番号1のプライマーを終濃度で0.2 μMと、配列番号2のプライマーを終濃度で0.1 μMと、配列番号3と配列番号4のプライマーを終濃度でそれぞれ0.05 μMと、配列番号5のTaqMan(登録商標)MGBプローブ(FAM-5'−CGGATGCACTGCITTGATAAAG-3'-MGB)を終濃度で0.1 μM、及び鋳型DNAを加え、最終的に滅菌超純水で25 μLとした溶液を96穴PCRプレートに入れ、分注した96穴PCRプレートを、ライフテクノロジーズジャパン社製のリアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7900)にセットし、95℃、15分の後、95℃、30秒(変性)に続いて68℃、1分(アニーリングおよび伸長ステップ)を行うサイクルを38回繰り返して反応させた。反応終了後、それぞれの穴において、それぞれの伸長ステップ後に取得した蛍光データを解析した。なお、解析は、ベースライン を3-15サイクル、閾値(Threshold Line)を相対蛍光量(ΔRn)0.064として行った。Ct値(相対蛍光量が閾値に達したサイクル)が38以下の試料DNAについて小麦由来のシグナルを検出したと判定した。
上記リアルタイムPCRを行った結果を図1に示す。図1に示すように、小麦(農林61号)DNA 50 ng、5 ng、500 pg、50 pg、5 pgを鋳型とした場合、それぞれから鋳型DNA量に応じたCt値で小麦由来のシグナルが得られた。小麦DNA 500 fgを鋳型とした場合、必ずしもCt値38以下とならなかったものの、シグナルは得られた。一方、小麦以外の食用ムギ類であるオオムギ、ライムギ、エン麦、それ以外の代表的な穀物として、ハトムギ、トウモロコシ、ソバ、コメ、ダイズDNAそれぞれ50 ngを鋳型とした場合にはシグナルが得られなかった。
小麦の代表的な10品種[Triticum aestivum cv.農林61号、Triticum aestivum cv. Chinese Spring (KT020-003)、Triticum aestivum cv. Sapporo Haru (KT020-004)、Triticum turgidum L (KU-147)(リベットコムギ)、Triticum durum Desf (KU-125)(デュラムコムギ)、Triticum monococcum L. (KU-104-2)(一粒コムギ)、Triticum timopheevi Zhuk (KU-107-1)(チモフェービ系)、Aegilops speltoides Tausch (KU-2-1)(クサビコムギ)、Aegilops squarrosa L. (KU-20-1)(タルホコムギ)、Triticum aestivum-rye amphidiploid (TACBOW0065)(ライコムギ)]について、上記と同様にしてリアルタイムPCRを行ったところ、いずれの品種からも、鋳型DNA 5 pgから小麦由来のシグナルがCt値31から34の範囲で検出された(図2)。鋳型DNA 5 pgにおけるCt値の種内変動の標準偏差が0.3であったことから、Ct値のばらつきを考慮しても、これら10品種の小麦DNA 5 pgはCt値38以下で確実に検出できるといえる。
以上より、本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセットは、現在食用として流通している小麦を、高感度(PCR反応液25 μlの反応系で、小麦DNA 5 pg)に検出でき、オオムギ、ライムギ等、小麦以外の穀物を誤って検出しない特異性を有することが確認できた。
(実施例3)モデル分解DNA中の小麦の検出
(1) モデル分解DNAの作製
小麦DNAをダイズDNA 20 ng/μl TE buffer (pH8.0)溶液で20 pg/μl(1/1000濃度)に希釈した溶液をオートクレーブにより123℃で1分加熱することでDNAを分解させて、モデル分解DNAを作製した。
小麦中の小麦全タンパク質濃度は約10%であることから、小麦からのDNA抽出効率と、小麦が含まれる食品からのDNA抽出効率が同等と仮定すれば、小麦DNA 20 pg/μlは、食品中の小麦全タンパク質濃度100μg/g相当の食品から抽出したDNA中の小麦DNA濃度に相当する。
(2) DNA分解程度の分析
(1)で作製したモデル分解DNA、市販加工食品でDNA分解の激しかったまぐろ水煮から抽出したDNAを、それぞれDNA分析用マイクロチップ電気泳動装置MultiNA(島津製作所)に負荷し、DNA断片長によってそれぞれのDNAを分離した。DNA二重らせんにインターカレートする化合物を利用して得られた蛍光強度の極大値、および極大値に対応するDNA断片長を確認した(図3)。極大値に対応するDNA断片長は、DNA分解が激しいほど短くなると考えられることから、モデル分解DNAはまぐろ水煮の場合と同様に加熱処理によってDNAがかなりの損傷(分解)を受けていることを確認した。
(3) モデル分解DNAのリアルタイムPCRによる解析
(1)で調製したモデル分解DNA、DNAの分解を受けていない(オートクレーブ未処理)モデル未分解DNAを試料とし、本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセットを用いて実施例2と同様にしてそれぞれ2点併行でリアルタイムPCRを行い、結果を解析して小麦検出の有無を判定した。
上記リアルタイムPCRを行った結果を図4に示す。図4に示すように、モデル分解DNA、モデル未分解DNA共にそれぞれCt値38以下のCt値32、30で小麦DNAが確実に検出された。よって、本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセットによると、DNA分解の激しい市販加工食品に近いレベルで分解された微量の小麦DNAであっても確実に検出できることがわかった。
(実施例4)モデル加工食品中の小麦の検出
(1)小麦標準試料の調製および小麦標準試料のタンパク質定量
モデル加工食品に添加する小麦標準試料として、農林61号(中力粉)の全粒を粉砕したものを用いた。
小麦標準試料1 gを50 mlチューブに採取し、タンパク質抽出用緩衝液(0.5 % SDS 及び2 % 2-メルカプトエタノールを含有する0.1 M Tris-HCl(pH 8.6))20 mlを加え、よく混合して固形物を分散させ、室温下16時間振とう抽出した。抽出液を10,000×gで30分間遠心分離した後、上清を孔径0.8μmのミクロフィルターでろ過し、タンパク質抽出液とした。
得られたタンパク質抽出液16 μlについて、2-D Quant kit(GEヘルスケア・ジャパン社製)を用い、キットの説明書に従ってタンパク質濃度を定量した。2-D Quant kitで測定した小麦標準試料からの抽出液のタンパク質濃度は、4.4-4.9 mg/mlであった。これは、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」の別添4「標準品規格」にあった小麦標準品原液濃度(4-6 mg/ml)の範囲内であった。また、抽出液のタンパク質濃度から算出された小麦標準試料のタンパク質濃度は97 mg/gであった。この測定値は文部科学省が情報提供する日本食品標準成分表に示された中力粉のタンパク質濃度(1等9.0%、2等9.7%)と同等だったことから、測定されたタンパク質濃度は妥当であると評価した。
(2) モデル加工食品の選定
モデル加工食品には、微量の小麦が含まれていた場合に、小麦の存在を検出することが難しいと考えられる食品を選定した。選定にあたっては、試料中のDNAが多いもの、DNA分解が進んでいるもの、PCR阻害があるものを指標とした。その結果、DNAが多いモデルにboiled beef、DNA分解が激しいモデルに鶏肉団子のスープ、PCR阻害があるモデルにブルーベリーピューレを選択した。
(3) 小麦添加モデル加工食品の作製
小麦ELISAによる定量検査の結果、食品中に小麦全タンパク質が10 μg/g以上の場合は微量を超える小麦が混入している可能性がある。数μg/gを超えるレベルの小麦を含有する場合、法令で小麦の存在を表示することが義務付けられている。
そこで、上記で選定したモデル加工食品中の小麦全タンパク質濃度が10 μg/g相当となるように小麦標準試料を添加し、小麦添加モデル加工食品を作製した。
(i) 小麦添加boiled beefの作製
100 gビーカーに水30 g、粉寒天0.3 gを入れ、火にかけた。細かな泡が立ち沸騰してきたら、吹きこぼれないように弱火にして2分沸騰させ、寒天をよく煮溶かした。これに砂糖7 g、塩1.3 gを入れ、寒天調味液を作った。レトルトパウチに牛肉100 g、上記寒天調味液を入れて、138.6 gとなるように水を入れて調整した。このレトルトパウチに、小麦標準試料14.3 mgを入れ、封をして5℃にて終夜静置した後、121℃1分のオートクレーブ処理を行い、5分間水冷し、5℃にて終夜静置したものをboiled beefとした。レトルトパウチから内容物を取り出し、ブレンダーで粉砕均一化し、5 gずつ20個に分けて保存した。
(ii) 小麦添加鶏肉団子スープの作製
鶏ひき肉89 g、片栗粉9 g、塩2 g、水10 gを入れ、混ぜ合わせ、約5 gずつまとめて団子にした。これを100℃の水に入れ、1分煮沸した。団子を2つのレトルトパウチに等量入れ、水を入れてそれぞれ100 g、合計200 gに調整した。このレトルトパウチに小麦標準試料20.6 mgを入れ、封をして123℃12分のオートクレーブ処理を行い、5分間水冷し、5℃にて終夜静置したものを鶏肉団子スープとした。レトルトパウチから内容物を取り出し、ブレンダーで粉砕均一化し、10 gずつ20個に分けて保存した。
(iii) 小麦添加ブルーベリーピューレの作製方法
洗ったブルーベリー30 gをブレンダーで粉砕してピューレを作製した。50 mLチューブにピューレ 5 gと小麦標準試料 51.5 mgを添加して撹拌し、加工食品中の小麦全タンパク質1000 μg/gモデルを作製した。50 mLチューブに1000 μg/gモデル 0.5 gとピューレ 4.5 gを加えて撹拌し、100 μg/gモデルを作製した。50 mLチューブに100 μg/gモデル 2.2 gとピューレ19.8 gを加えて撹拌し、10 μg/gモデルを作製した。得られた10 μg/gモデルを1 gずつ20個に分けて保存した。
作製した上記の小麦添加モデル加工食品中の小麦量が均一化されていることを確認するために、20本のチューブに分注したうちの任意の6試料を2回反復で小麦検出ELISA(森永生科学研究所社製)を用いてマニュアルに従って定量した。得られた小麦タンパク質濃度の定量値を一元分散分析して、モデル加工食品中の小麦濃度および均一性を評価した。一元分散分析の結果、boiled beef、鶏肉団子のスープは均一であると考えられ、かつ、小麦全タンパク質濃度はそれぞれ8.2 μg/g、7.4 μg/gだったことから、目的に合った量の小麦が均一に分散していることがわかった。
ブルーベリーピューレについても同様に定量したところ、小麦全タンパク質濃度は定量下限以下となり均一性の判断はできなかったが、小麦標準試料の添加や均一化の操作は他のモデル加工食品と同様に行っていることから、他の2品と合わせ、作製した3品ともモデル加工食品として採用し、引き続きリアルタイムPCRに供することとした。なお、小麦標準試料を添加しないモデル加工食品もそれぞれ同様の方法で作製した。
(4) 小麦添加モデル加工食品のリアルタイムPCRによる解析
DNA抽出は、QIAGEN社製のGenomic-tip 20/Gを用い、以下の方法で行った。
細かく粉砕した試料約2 gを50 mLチューブに入れ、15 mLのbuffer G2、20 μLのRNase A(100 mg/mL)、100 μLのプロテイナーゼK溶液を加え、混合した後、50 ℃で2時間保温した。その後は実施例2と同様にしてDNA抽出し、DNA濃度を測定した。超純水で20 ng/μLに希釈したものをPCRの鋳型DNA試料とした。これらDNA試料2.5 μLを1反応液あたりのPCRに用いた。なお、ここで得られたDNAがPCR増幅可能レベルの純度であることは、植物葉緑体DNAの一部を増幅するプライマーまたは動物ミトコンドリアDNAの一部を増幅するプライマーのどちらかにより、PCR増幅産物が得られることで確認した。
上記のようにして調製した小麦添加モデル加工食品の各DNA試料液について本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセットを用い、実施例2と同様にしてそれぞれ2点併行でリアルタイムPCRを行い、結果を解析して小麦検出の有無を判定した。
上記リアルタイムPCRを行った結果を図5に示す。図5に示すように、小麦タンパク質10 μg/g相当量の小麦標準試料を添加したモデル加工食品boiled beef、鶏肉団子スープ、ブルーベリーピューレのDNA試料では、小麦由来のシグナルがそれぞれCt値38以下のCt 32、32、28で確実に検出された。なお、合わせて測定した小麦標準試料を添加していないモデル加工食品のDNA試料では、小麦由来のシグナルは検出されなかった。
以上より、本発明の小麦検出用プライマー対・プローブのセットは、検出することが難しいと考えられる3種類(試料中のDNAが多いこと、DNA分解が激しいこと、PCR阻害があること)の特性を持つモデル加工食品それぞれにおいて、小麦タンパク質10 μg/g相当量混入した小麦を検出することが示された。
本発明は、食品製造および食品加工分野において、小麦混入の有無の確認に利用できる。

Claims (6)

  1. 被検試料から抽出したDNAを鋳型とし、配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対、および配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなり、5’末端を蛍光物質で、3’末端を消光物質で修飾したTaqMan(登録商標)プローブを用いてリアルタイムPCRを行い、小麦標的増幅産物に由来する蛍光シグナルにより小麦の存在を検出することを特徴とする、小麦の検出方法。
  2. 小麦の存在を検出する指標としてリアルタイムPCRより得られる蛍光シグナルの増加を用いることを特徴とする、請求項に記載の検出方法。
  3. 前記小麦が、小麦属またはエギロプス属に属する植物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の検出方法。
  4. 配列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなり、5’末端を蛍光物質で、3’末端を消光物質で修飾したTaqMan(登録商標)プローブ。
  5. 配列番号1に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号2、3及び4に示す
    塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物とから構成されるプライマー対、および配
    列番号5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなり、5’末端を蛍光物質で、3’末端を消光物質で修飾したTaqMan(登録商標)プローブからなる小麦検出用プライマー対およびプローブのセット。
  6. 請求項に記載の小麦検出用プライマー対およびプローブのセットを含む、小麦検出用
    キット。
JP2012056106A 2012-03-13 2012-03-13 小麦の検出方法 Active JP5902517B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012056106A JP5902517B2 (ja) 2012-03-13 2012-03-13 小麦の検出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012056106A JP5902517B2 (ja) 2012-03-13 2012-03-13 小麦の検出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013188164A JP2013188164A (ja) 2013-09-26
JP5902517B2 true JP5902517B2 (ja) 2016-04-13

Family

ID=49389127

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012056106A Active JP5902517B2 (ja) 2012-03-13 2012-03-13 小麦の検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5902517B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6651294B2 (ja) * 2014-03-19 2020-02-19 ハウス食品グループ本社株式会社 リアルタイムpcrによる食物アレルゲンの検出方法及びキット
JP6484012B2 (ja) * 2014-11-28 2019-03-13 ハウス食品グループ本社株式会社 Pcrによる落花生の検出方法及びキット
CN116926232B (zh) * 2023-08-28 2024-02-09 四川农业大学 一种检测顶芒山羊草1m染色体的分子标记引物及其应用

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE3884853T2 (de) * 1987-04-14 1994-02-03 Harvard College Angiogenininhibitoren.
JP2785164B2 (ja) * 1990-08-20 1998-08-13 寳酒造株式会社 ヒトパピローマウイルスの検出方法
JP3549201B2 (ja) * 1990-10-24 2004-08-04 中外製薬株式会社 非a非b型肝炎特異的遺伝子の検出方法及び検出用試薬組成物
JP4898210B2 (ja) * 2005-08-09 2012-03-14 株式会社ビー・エム・エル サポウイルスの検出方法
JP5212860B2 (ja) * 2007-09-14 2013-06-19 ハウス食品株式会社 コムギの検出方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013188164A (ja) 2013-09-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gryson Effect of food processing on plant DNA degradation and PCR-based GMO analysis: a review
Faria et al. High resolution melting of trnL amplicons in fruit juices authentication
Fernandes et al. Tracing transgenic maize as affected by breadmaking process and raw material for the production of a traditional maize bread, broa
JP4399417B2 (ja) 食品または食品原材料中の特定植物属の定量的pcr検出法
JP5902517B2 (ja) 小麦の検出方法
JP2009082125A (ja) コムギの検出方法
Martin-Fernandez et al. High resolution melting analysis as a new approach to discriminate gluten-containing cereals
EP2518145B1 (en) Method for qualitative and quantitative detection of common wheat
Kakihara et al. Extraction and detection of endogenous soybean DNA from fermented foods
Zhang et al. Detection of Roundup Ready soy in highly processed products by triplex nested PCR
Kim et al. Development of molecular markers for detecting almond, peanut, pine nut, and walnut in commercial food using quantitative real-time PCR
Kim et al. Monitoring of genetically modified soybean events in sausage products in South Korea
US7629118B2 (en) Method of testing wheat
US7344866B2 (en) Method of testing food
Elsanhoty Genetically modified Roundup Ready soybean in processed meat products in the Kingdom of Saudi Arabia
JP4925941B2 (ja) Pcr法を利用した小麦の検出方法並びにこれに使用するプライマー対及び核酸プローブ
JP6484012B2 (ja) Pcrによる落花生の検出方法及びキット
Miaw et al. Bt11 event detection by real-time PCR: single-laboratory validation, comparison of DNA extraction and quantification techniques and application
Ramberg Evaluation of DNA Quality of Beer Ingredients
CN116064886A (zh) 用于检测小米成分的特异性引物、探针、试剂盒及方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140314

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150324

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150924

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151029

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160301

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160310

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5902517

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250