JP6651185B2 - 無機粒子複合体およびその製造方法、並びに無機粒子複合体分散液 - Google Patents

無機粒子複合体およびその製造方法、並びに無機粒子複合体分散液 Download PDF

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Description

本発明は、無機粒子複合体およびその製造方法に関する。また、前記無機粒子複合体を用いた無機粒子複合体分散液に関する。
グラフェンをはじめとするナノ粒子は、機能性材料として様々な分野への応用展開が期待されており、研究開発が活発に行われている。本発明者らは、先般、液相におけるメカノケミカル反応を利用した高分散性ナノシートの製造方法を提案した(非特許文献1)。このような液相を用いる製造方法の他、乾式粉砕によるナノ粒子の製造方法も提案されている。
天然黒鉛の粉砕を促進する方法として、真空環境下あるいは窒素環境下で乾式粉砕する方法が有効であることが報告されている(非特許文献2)。また、硫黄を含む環境下または水素を含む環境下で黒鉛を乾式粉砕することにより、エッジ部に硫黄や水素原子が結合したグラファイトナノプレートが得られることが報告されている(非特許文献3、4)。
また、破砕中にNaClを添加してグラファイトナノシートを製造する方法(非特許文献5)、ナノダイヤモンドをNaClと共に砕くことにより、ナノダイヤモンドの凝集防止に有効であることが報告されている(非特許文献6)。
荒尾与史彦、久保内昌敏ら、液相におけるメカノケミカル反応を利用した高分散性ナノシートの作製、第44開炭素材学会年会予稿集、p151 藤本敏行,空閑良壽ら,天然黒鉛の雰囲気制御粉砕による高比表面積・高結晶性微粒子の生成とその応用,スマートプロセス学会誌,Vol.1,224-228,2012. Jeong-Min Seo, Jong-Beom Baek et al, Scalable production of edge-functionalized graphene nanoplatelets via mechanochemical ball-milling. Advanced Functional Materials. Vol. 25, 6961-6975, 2015. In Yup Jeou, Seo-Yoon Bae et al, Graphene prepared by using edge functionalization of graphite, Patent, US20130108540 A1 Vyacheslav G. Koshechko, Vitaly D. Pokhodenko. et al, Hifh yield of graphene by dispersant-free liquid exfoliation of mechanochemically delaminated graphite. Journal of Nanoparticle Research. Vol. 15, 2046, 2013. Isabel Knoke, Yury Gogotsi et al, Deaggregation of nanodiamond powders using salt- and sugar-assisted milling. ACS Applied Materials & Interfaces. Vol. 11, 3289-3294, 2010.
ナノ粒子は凝集しやすい特性を有しているため、工業的利用に際しては、ナノ粒子の再凝集を抑制する技術が重要となる。例えば、色材用途においては、ナノ粒子の凝集により画質が低下したり、レベリング不良が生じたりしてしまう。ナノ粒子の再凝集を防ぎ、分散性を高める技術は、特に液体中において切望されている。
本発明は、上記背景に鑑みて成されたものであり、極性溶媒中での分散安定性に優れる無機粒子複合体およびその製造方法、並びに無機粒子複合体分散液を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]: 無機粉体に、水溶性塩を加えて乾式またはペースト状で混合する工程(A)と、前記工程(A)の後に水洗して、前記水溶性塩由来の成分を含む無機粒子複合体を得る工程(B)とを含み、
前記水溶性塩は、当該水溶性塩の対アニオンの酸の酸解離定数pKa(HO)が0より大きい水溶性塩である無機粒子複合体の製造方法。
[2]: 前記無機粒子複合体は、前記水溶性塩の対カチオン由来の成分を1〜100,000ppm含む[1]に記載の無機粒子複合体の製造方法。
[3]: 前記無機粉体は、層状鉱物粉体、sp型炭素材料、金属粉体、セラミックスおよびこれらの酸化物粉体の少なくともいずれかである[1]又は[2]に記載の無機粒子複合体の製造方法。
[4]: 前記水溶性塩の対カチオンは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ルビジウムイオンおよびアンモニウムイオンのいずれかである[1]〜[3]のいずれかに記載の無機粒子複合体の製造方法。
[5]: 前記無機粒子複合体を極性溶媒に分散したときの当該無機粒子複合体の平均粒子径が、1000nm以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の無機粒子複合体の製造方法。
[6]: 無機粉体に、水溶性塩を加えて乾式またはペースト状で混合した後に水洗することにより得られ、
前記水溶性塩は、当該水溶性塩の対アニオンの酸の酸解離定数pKa(HO)が0より大きい水溶性塩であり、
前記水溶性塩由来の成分を含む無機粒子複合体。
[7]: 前記水溶性塩の対カチオン由来の成分を1〜100,000ppm含む[6]に記載の無機粒子複合体。
[8]: 前記無機粉体は、層状鉱物粉体、sp型炭素材料、金属粉体、セラミックスおよびこれらの酸化物粉体の少なくともいずれかである、[6]又は[7]に記載の無機粒子複合体。
[9]: 前記水溶性塩の対カチオンは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ルビジウムイオンおよびアンモニウムイオンのいずれかである[6]〜[8]のいずれかに記載の無機粒子複合体。
[10]: 極性溶媒に分散したときの平均粒子径が1000nm以下である[6]〜[9]のいずれかに記載の無機粒子複合体。
[11]: [6]〜[10]のいずれかに記載の無機粒子複合体を溶媒に分散した無機粒子複合体分散液。
本発明によれば、極性溶媒での分散安定性に優れる無機粒子複合体およびその製造方法、並びに無機粒子複合体分散液を提供できるという優れた効果を奏する。
無機粒子複合体の表面のシュテルン層の模式的説明図。 比較例1に係る分散液(図中左側)および実施例1に係る無機粒子複合体分散液(図中右側)の写真。 比較例2に係る分散液(図中左側)および実施例2に係る無機粒子複合体分散液(図中右側)の写真。 比較例3に係る分散液(図中左側)および実施例3に係る無機粒子複合体分散液(図中右側)の写真。 実施例10に係る無機粒子複合体の水/プロパノール混合溶媒中の分散性を示すグラフ。 実施例13に係る無機粒子複合体の水/プロパノール混合溶媒中の分散性を示すグラフ。 実施例1に係る無機粒子複合体の水/プロパノール混合溶媒中の分散性を示すグラフ。 実施例17に係る無機粒子複合体の黒鉛濃度に対してグラフェン収率(%)をプロットしたグラフ。 実施例18に係る無機粒子複合体の黒鉛濃度に対してグラフェン収率(%)をプロットしたグラフ。 実施例20および比較例10の分散液の経時的安定性を示すグラフ。 実施例21および比較例11の分散液の経時的安定性を示すグラフ。 実施例10,12と比較例のゼータ電位を比較したグラフ。 実施例22および比較例12の粘度特性をプロットしたグラフ。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
[無機粒子複合体]
本実施形態に係る無機粒子複合体は、無機粉体に水溶性塩を加えて乾式またはペースト状で混合した後、水洗することにより得られる粒子であり、無機粉体と微量の水溶性塩の成分を含む複合体をいう。製造工程で用いた余剰の水溶性塩は、水洗により除去される。
本実施形態で用いる無機粉体は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で特に限定されないが、層状鉱物粉体、sp型炭素材料、金属粉体、セラミックスおよびこれらの酸化物粉体が例示できる。
無機粉体の好適な例としては、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張化黒鉛、不定形黒鉛、板状型黒鉛、グラフェンナノプレート、グラフェン、二硫化タングステン、酸化グラフェン、酸化チタン、酸化マンガン、酸化バナジウム、層状腹水酸化物(LDH)、遷移金属ダイカルコゲナイト、黒リン、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンブラック、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、酸化チタン、酸化グラフェン、酸化バナジウム、シリカ、アルミナ、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤー、層状腹水酸化物(LDH)、遷移金属ダイカルコゲナイトが例示できる。グラフェンには、多層グラフェン、単層グラフェン、グラフェン量子ドットを含む。無機粉体は、市販品をそのまま用いても、破砕処理して用いてもよい。また、鉱物等から公知の方法により製造してもよい。無機粉体は1種単独で又は2種以上を併用して用いられる。原料として用いる「無機粉体」のサイズは特に限定されない。例えば、ミリオーダーの顆粒状の粉体、マイクロまたはナノサイズの微粒子等である。
本実施形態に係る水溶性塩は水に溶解性を示す塩であり、構成する対アニオンの酸の酸解離定数pKa(HO)が0より大きい塩を用いる。水溶性塩は、無機粉体に対する粉砕助剤として機能すると共に、後述するように、無機粒子複合体のシュテルン層(Stern Layer)を形成するための微量成分としての役割を担う。
好適な水溶性塩の対アニオンの酸として、リン酸(1.83),酢酸(4.76),炭酸(6.11)、グルタミン酸、酒石酸が例示できる。また、前記アニオンと水溶性塩を形成する対カチオンは、イオン化傾向が高いカチオンが好ましい。好適な例として、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ルビジウムイオンが例示できる。
水溶性塩の具体例として、グルタミン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムがある。また、これらの水溶性塩のナトリウムをカリウム、リチウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ルビジウムおよびアンモニウム等にそれぞれ変更した塩が例示できる。
ここで、乾燥後の無機粒子複合体は、一次粒子、二次粒子、凝集体およびこれらの任意の組合せからなる混合物のいずれでもよい。無機粒子複合体の平均粒子径のサイズは問わない。無機粒子複合体を極性溶媒に分散した場合の平均粒子径は、用途に応じて適宜設計し得るが、分散性をより高める観点からは1000nm以下であることが好ましい。
本実施形態に係る無機粒子複合体によれば、極性溶媒において分散性を顕著に高められる。その理由は、以下のように考察することができる。無機粒子複合体の製造工程において、無機粉体と水溶性塩を混合する際に無機粉体の表面にラジカルが発生し、このラジカルと弱酸塩である水溶性塩の対アニオンとが反応する。そして、無機粉体の表面の一部に水溶性塩の成分が結合する。ラジカルの発生しやすい場所は無機粉体の種類によって様々であるが、層状粉体の場合には表面の端部が最も発生しやすい。水洗により余剰の水溶性塩を除去することにより、水溶性塩の成分を含む無機粒子複合体が得られる。
このような工程を経て得られた無機粒子複合体を極性溶媒に分散させると、水溶性塩の電離が生じて、図1に示すようにアニオンとカチオンが分離される。この際、アニオン側は無機粒子と結合しており、無機粒子複合体は負に帯電することになる。一方、水溶性塩のカチオンは負に帯電した粒子の周りに引き寄せられる。これにより、カチオンとアニオンの電気二重層であるシュテルン層が形成される。このカチオンによる粒子表面の電荷の中和は熱運動のために不完全なものであり、そのために生じた遮蔽漏れの電場が粒子同士の反発力を生むと考えられる。この反発力の大きさの指標であるゼータ電位の絶対値が大きいほど、無機粒子複合体間の反発力が大きくなり、分散性が安定する。一般には、30eVを超えることにより分散性が良好になる。
無機粒子複合体が水溶性塩の対カチオン由来の成分を含むことで、極性溶媒中での分散性を顕著に高めることができる。水溶性塩の対カチオン由来の成分の含有割合は、分散性をより向上させる観点からは1〜100,000ppmの範囲が好ましい。より好ましくは35〜10,000ppmであり、更に好ましくは100〜5,000ppmである。なお、得られた無機粒子複合体の粉体は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)にてカリウム、ナトリウム、リチウムなど塩由来のカチオン濃度を測定できる。また、EPMAで検出できない場合には、ICP質量分析装置で1ppmの精度で検出できる。またアンモニウムの存在は、ネスラー試薬によって検出できる。
本明細書において極性溶媒とは、水あるいは比誘電率が以下の数式(1)を満たす溶媒をいう。
[数式(1)]
4≦溶媒1の体積比率×溶媒1の比誘電率+・・+溶媒n−1の体積比率×溶媒n−1の比誘電率
但し、nは1以上の整数であり、n=1は単独溶媒、n≧2は混合溶媒を示す。
分散性向上の観点から、数式1のより好ましい範囲は10以上であり、更に好ましい範囲は20以上である。比誘電率が高ければ、静電反発の効果をより期待できるので上記数式(1)の上限値は限定されない。溶媒は1種単独若しくは2種類以上を併用して用いることができる。混合溶媒とする場合には、互いに相溶する組合せのものを用いる。なお、本実施形態に係る無機粒子複合体は、極性溶媒に分散させて用いることを必須とするものではなく、粉体のまま用いたり、極性溶媒以外の溶媒(非極性溶媒等)に分散させて用いたりすることができることは言うまでもない。
好適な極性溶媒として、水、アセトン、エタノール、メタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン(NMP)、これらの溶媒の組合せが例示できる。
[無機粒子複合体の製造方法]
本実施形態に係る無機粒子複合体の製造方法は、無機粉体に、水溶性塩を加えて乾式またはペースト状で混合する工程(A)と、工程(A)の後に水洗して、前記水溶性塩の成分を含む無機粒子複合体を得る工程(B)とを含む。用いる水溶性塩は前述した通りである。ここで、ペースト状とは、液体に分類されない、粘性の高い、流動性が認められる状態全般をいう。粘度範囲としては、20℃のせん断速度1s−1において、0.01〜500Pa・sの範囲程度である。
工程(A)において、水溶性塩の成分の一部が無機粉体と結合し、無機粉体中に取り込まれることによって無機粉体の剥離・粉砕を促進させる。なお、本明細書において「粉砕」とは、原料として用いる無機粉体よりもダウンサイジングする破砕、解砕に限定されず、原料として用いる無機粉体の凝集を単に解す目的も含むものとする。また、ここでいう乾式には、前述したペースト状の定義には含まれないが、潤滑剤として溶媒を添加する態様も含む。
水溶性塩の濃度は特に限定されない。水溶性塩の添加量増加により、乾式またはペースト状で混合する際に、無機粉体と水溶性塩との接触頻度が増加するので、水溶性塩による無機粉体の改質が効率的に進む。従って、求められる分散性・用途に応じて、水溶性塩の添加量を適宜設定すればよい。例えば、無機粉体1質量部あたり例えば0.01〜100質量部が好ましい。より好ましくは0.1〜10質量部であり、黒鉛の収率を高める観点からは、黒鉛に対する塩の添加量は0.2〜5質量部の範囲が好ましい。更に好ましくは0.1〜1質量部である。
水溶性塩と無機粉体を混合して粉砕する際の環境条件は特に限定されないが、常温、空気中で簡便に行うことができる。窒素雰囲気としたり、アルゴン等の不活性ガス環境で混合工程を行ってもよい。また、必要に応じて高温または低温にすることができる。また、加圧環境下または減圧環境下で行ってもよい。
粉砕装置は公知の装置を制限なく用いることができる。例えば、ビーズミル、ジェットミル、ハンマーミル、高速撹拌機などの乾式の粉砕装置が挙げられる。無機粉体の種類や、求められている粒径の程度等に応じて、処理条件等を適宜調整すればよい。混合工程において、無機粉体あるいは水溶性塩の硬度の高さを利用して無機粉体を破砕することができる。混合工程の条件を最適化することにより、極性溶媒に分散させた際に、一次粒子径が非常に微細で、分布の幅が狭いシャープな粒度分布を持つ無機粒子複合体を得ることも可能となる。混合工程は、用いる原料や、所望の無機粒子複合体の粒子サイズに応じて適切な条件を設定すればよい。
混合工程後、工程(B)において水洗により、余剰の水溶性塩を除去する。水洗の際に加える水の量は、懸濁液を得るのに充分な量であればよく特に限定されない。必要に応じて加温してもよい。例えば、質量の10〜10,000倍の質量の水を加えて混合撹拌する。余剰の水溶性塩は、水とともに容易に除去できる。水洗の条件は、用いる無機粉体や水溶性塩の種類等に応じて適切に設定すればよい。水洗を行うことにより、水溶性塩の成分を含む無機粒子複合体が得られる。工程(B)の前または工程(B)と同時に粗大粒子を除去する工程や、サイズ分画工程を加えてもよい。水溶性塩の成分を含む無機粒子複合体により、極性溶媒中での分散性を顕著に高めることができる。
水洗後、濾別にフィルター(例えばテフロン(登録商標)性メンブレンのフィルター)を用いてもよい。この場合、用途により最適な孔径を選定する。得られた無機粒子複合体は、乾燥工程を行って粉体として取り出してもよいし、液体中に分散させたりペーストとして利用したりすることができる。乾燥工程は任意の方法で行うことができる。例えばスプレードライ方式により無機粒子複合体を乾燥できる。
サイズ分画を行う場合には、遠心分離法、透析、濾過(限外濾過、加圧濾過、減圧濾過等)、超遠心分離などの方法が例示できる。これらの工程を経て、無機粒子複合体において、水溶性塩を形成する対カチオン由来の元素またはアンモニウムを1〜100,000ppm含む無機粒子複合体が得られる。
混合工程における物理的接触・摩擦により無機粉体の表面にラジカルが発生し、水溶性塩の対アニオンと相互に結合する。無機粉末に生じるラジカルによる再凝集を防ぐことで、無機粉体の粉砕が促進されるものと考察している。無機粉体と水溶性塩の対アニオンとの結合は、主として無機粉体のエッジ部等の表面において形成されていると考えられる。
無機粒子複合体における水溶性塩のアニオン由来の成分は、無機粉体のエッジ部等の表面で化学結合により無機粉体に取り込まれていると考えられる。より詳細には、無機粉体と水溶性塩の混合工程において、無機粉体の破面で発生したラジカルと弱酸からなる弱酸遊離反応により、水溶性塩の対アニオンが無機粉体に結合されたものと考えられる。結合は、共有結合、イオン結合あるいは配位結合のいずれであってもよい。このような結合ではなく、水溶性塩の成分が無機粉体に物理的吸着している場合には、得られた無機粒子複合体を極性溶媒に加えた場合に、その分散性が阻害されることになる。
本実施形態に係る無機粉体の製造方法によれば、水溶性塩と原料の無機粉体を加えて混合するという簡便な工程により行うので、生産性を格段に高めることができる。また、市販の水溶性塩を用いることができるので、製造コストの低減を図ることができる。また、得られる無機粒子複合体の分散安定性に優れ、経時的安定性も向上させることができる。また、粉砕により、原料の無機粉体に比して表面積を高めることができるというメリットを有する。
[無機粒子複合体分散液]
本実施形態に係る無機粒子複合体分散液は、上述した無機粒子複合体を溶媒に分散させてなる分散液をいう。無機粒子複合体分散液は、溶媒に無機粒子複合体のみを分散させた分散液の他、他の成分を更に加えることができる。溶媒は、分散性を格段に向上させる観点からは、極性溶媒を用いることが好ましい。極性溶媒中に無機粒子複合体を分散させると、無機粒子複合体のシュトレイン層による静電反発によって分散性が顕著に高められる。
工程(A)、工程(B)を経て得られた乾燥後の無機粒子複合体は、凝集体を形成している場合があるが、そのような場合であっても、極性溶媒に分散させることにより極性溶媒中で解砕され、分散性を高めることができる。
従来より、平均粒子径が1000nm以下の粒子は凝集しやすく、分散性の改善が望まれていた。本実施形態に係る無機粒子複合体によれば、特に極性溶媒に分散させることにより、分散性を顕著に高められる。従って、本実施形態に係る無機粒子複合体は、極性溶媒中での無機粒子複合体の平均粒子径が1000nm以下において特に好適である。無論、本実施形態に係る無機粒子複合体は、極性溶媒中での無機粒子複合体の平均粒子径が1000nm越えのものを排除するものではない。極性溶媒中での無機粒子複合体の平均粒子径の調整は、混合する工程(A)の混合処理条件の調整、粗大粒子の除去、サイズ分画工程等を行うことにより容易に調整できる。
分散液を得る方法は、分散溶媒を加えて混合撹拌すればよい。この際、バインダー樹脂、色素、顔料、界面活性剤等の他の添加剤を加えてもよい。
組成物として他の化合物を添加する場合には、目的およびニーズに応じて、添加する化合物を適宜選定できる。樹脂、分散剤、消泡剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤および結着材等を加えてもよい。樹脂は、熱可塑性樹脂、硬化性化合物を含む熱硬化性樹脂等が例示できる。また、感光性樹脂、導電性樹脂も好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、フェノキシ樹脂、感光性樹脂等が挙げられる。また、耐衝撃性向上のために、熱可塑性樹脂組成物はその他のエラストマー成分を含有してもよい。また、樹脂として導電性高分子を用い、グラフェンおよび/またはグラファイトと導電性高分子の相乗効果によって導電特性を発現させることができる。樹脂と無機粒子複合体の含有比は、ニーズに応じて適宜設計できる。樹脂に対する無機粒子複合体の含有量は、例えば、0.1〜95質量%である。
無機粒子複合体の用途としてはインク、機能性コート膜、電極触媒の担持体、導電性複合体、電極等の電子部材、各種センサー等が例示できる。また、建材用途、塗料、医療機器など幅広い応用が期待できる。分散液に樹脂等を加えて、ペースト材料として用いることもできる。また、ナノグラフェンをシート化して透明導電膜とし利用することもできる。
<実施例>
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。水溶性塩は、市販品をそのまま用いた。また、有機溶媒は、乾燥工程を行わずそのまま用いた。
[分散性評価1]
(実施例1)
常温下、空気中で2gのカーボンナノチューブ(NC7000,Nanocyl社製)と2gのグルタミン酸ナトリウムを混合し、ボールミル(P-6(フリッチュ製)、ボール径20mm、回転速度は500ppm)により30分の混合処理を行った。次いで、水洗し、濾過により無機粒子複合体を得た。得られた無機粒子複合体0.1gを、100mLのアセトンに添加し、超音波処理を5分行い、遠心処理(1500rpm,30分)を行った。得られた分散液の写真を図2の右側に示す。この分散液の上澄みの吸光度はA=15.9であった。なお、本明細書において吸光度は、分散液の上澄みに対して行った結果を示している。
(比較例1)
常温下、空気中で100mLのアセトンにカーボンナノチューブ(NC7000)を0.1g添加した。その後、実施例1と同様の処理を行った。この分散液の吸光度はA=0.26であった。得られた分散液の写真を図2の左側に示す。
(比較例2)
カーボンナノチューブを二硫化モリブデン(Tパウダー、ダイゾー社製、平均粒子径3.5μm)に変更した以外は比較例1と同様の方法により、分散液を得た。得られた分散液の写真を図3の左側に示す。この分散液の吸光度はA=0.016であった。
(実施例2)
二硫化モリブデン(Tパウダー)をカーボンナノチューブに代えて用いた以外は、実施例1と同様の方法により無機粒子複合体を得た。この複合体の平均粒子径(D50)は3.5μm程度であり、原料と変化がなかった。また、実施例1と同様の処理を行って、分散液を得た。得られた分散液の写真を図3の右側に示す。この分散液の吸光度はA=10.2であった。ナノシートの大きさは50〜500nm程度であり、厚みは15nm以下であった。
(比較例3)
カーボンナノチューブを窒化ホウ素(UHP−2、昭和電工社製、平均粒子径11μm)に変更した以外は比較例1と同様の方法により分散液を得た。得られた分散液の写真を図4の左側に示す。この分散液の吸光度はA=0.3であった。
(実施例3)
窒化ホウ素(UHP−2)を、カーボンナノチューブに代えて用いた以外は、実施例1と同様の方法により無機粒子複合体を得た。平均粒子径は8μm程度である。また、同様の処理を行って、分散液を得た。得られた分散液の写真を図4の右側に示す。この分散液の上澄みの吸光度はA=10.8であった。
実施例1〜3に係る分散液は、比較例1〜3の分散液に比べて、それぞれ分散性が顕著に向上することを確認した。実施例3のナノシートの大きさは50〜500nm程度であり、厚みは10nm以下であった。
(比較例4)
常温下、空気中で5gの天然黒鉛(平均粒径500μm、アルドリッチ社製)を、カーボンナノチューブに代えて用い、水溶性塩を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法により無機粒子複合体を得た。また、同様の処理を行ってナノ粒子の分散液を得た。
(比較例5〜7)
水溶性塩を表1に示す塩を用いた以外は、比較例4と同様の方法により無機粒子複合体を得た。また、同様の処理を行ってナノ粒子の分散液を得た。得られたナノ粒子の大きさは100〜700nmであり、厚みは5nm以下であった。
(実施例4〜9)
常温下、空気中で5gの天然黒鉛(平均粒径500μm、アルドリッチ社製)を、カーボンナノチューブに代えて用い、水溶性塩として表1に示す塩を用いた以外は、実施例1と同様の方法により無機粒子複合体を得た。また、同様の処理を行って、無機粒子複合体の分散液を得た。
比較例4〜7、実施例4〜9の分散液の吸光度(660nm)を表1に示す。
実施例4〜9に係る水溶性塩を用いて得られた無機粒子複合体の分散液の吸光度は、比較例4〜7の分散液に比べて400−900倍上昇する結果が得られた。水溶性塩の対アニオンが強酸となる塩に比べて、本実施例に係る弱酸の塩を用いることにより、分散性が顕著に向上することがわかる。
[無機粒子複合体の評価]
(実施例10)
常温下、空気中で2gの黒鉛微粉末(Z5F、伊藤黒鉛社製、平均粒径3.6μm)と2gの炭酸カリウムを混合し、ボールミルにより30分の混合処理を行った。ここで、黒鉛微粉末は天然黒鉛をジェットミルにより粉砕し、微粉末化したものである。次いで、イオン交換水を用いて水洗を2度行い、濾過により無機粒子複合体を得た。無機粒子複合体の平均粒径は4μmであり、二次凝集が進み見かけの粒径が大きくなった。得られた無機粒子複合体を電子線マイクロアナライザ(EPMA)にてカリウム濃度を測定した。その結果、920ppmのカリウムが検出された。
(実施例11)
天然黒鉛(平均粒径500μm、アルドリッチ社製)に代えた以外は実施例10と同様の方法により無機粒子複合体を得た。得られた無機粒子複合体をEPMAにてカリウム濃度を測定した。その結果、0.018−0.034%(180−340ppm)のカリウムが検出された。
(実施例12)
実施例11と同様の処理を二硫化モリブデン、カーボンナノチューブでも行い、カリウム含有率の測定を行った。二硫化モリブデンでは2000ppm、カーボンナノチューブでは1270ppmのカリウムが検出された。
(比較例8)
100mLのイオン交換水に2gの炭酸カリウムを溶解させ、その溶解液に2gの黒鉛(Z5F)を浸漬させ、撹拌、濾過を行い、水洗を1回行った後、乾燥させた。得られた粉末をEPMAにてカリウムの濃度を測定した。その結果、黒鉛粉末からカリウムが検出されなかった(検出限界値は30ppm)。
(比較例9)
塩を加えずにボールミルを処理した黒鉛、二硫化モリブデン、カーボンナノチューブの同様のサンプルにおいてもカリウムは検出限界以下(30ppm)であることを確認した。
これらの結果より、本実施例に係る無機粒子複合体はカリウム成分と無機粒子とが複合体を形成していることがわかる。
[分散性評価2]
ナノ粒子の分散性は溶媒の表面張力によって支配される。そこで、表面張力の高い水(73mN/m)とプロパノール(21mN/m)の割合を変更して様々な表面張力における分散性を評価した結果の一例を説明する。
図5に、実施例10の無機粒子複合体に対して、混合割合を変えた水/プロパノールを用いて分散性を評価した結果を示す。また、参考のために、水溶性塩を加えない以外は実施例10と同様のプロセスで得た粒子に対して、同様に分散性を評価した結果も合わせて示す。
(実施例13)
黒鉛(Z5F)を二硫化モリブテン(Tパウダー)に変更した以外は実施例10と同様にして、無機粒子複合体を得た。得られた無機粒子複合体を水/プロパノールの混合割合を変えて分散性を評価した結果を図6に示す。
図7に、実施例1と同様の方法により得た無機粒子複合体を水/プロパノールの混合割合を変えて分散性を評価した結果を示す。
図5〜7に示すように、本実施例に係る無機粒子複合体の分散液は、溶媒の表面張力の違いによらずに分散性が顕著に優れることがわかる。
[分散性評価3]
(実施例14)
黒鉛(Z5F)2gと炭酸カリウム2gを混ぜ、さらにエタノールを10mL加えて、黒鉛濃度200g/Lのペーストを作成した。このペーストを、10分間ボールミル処理し、水洗して粉体を取り出した。得られた粉末0.5gを100mLのプロパノールに添加し、5分間の超音波処理を行った。分散液を1500rpmで30分間遠心処理を施し、凝集体を取り除き、吸光度(660nm)の測定を行った。得られた吸光度はA=3.3であり不透明な濃い分散液が得られた。
(比較例10)
比較材料として、炭酸カリウムを添加しない条件でペーストを作成し、得られた粉末を同様の処理を施し、吸光度測定を行った結果、A=0.016でほぼ透明な分散液となった。
水溶性塩を加えてペースト状で無機粉体を混合処理した実施例14は、比較例10に比べて、得られる分散液の濃度が200倍向上することを確認した。また、実施例14のペーストは1週間経過後も粘度を維持し、無機複合体粒子(黒鉛)の分離はみられず、ペースト状態での分散性(安定性)に優れることを確認した。
(比較例11)
水100mLに黒鉛(Z5F)0.5gを添加し、これに炭酸カリウムを0.1g添加して、超音波剥離を行った。得られた分散液の吸光度は0.1であった。
(参考例1)
イソプロパノール100mLに黒鉛(Z5F)0.5gを添加し、これに炭酸カリウムを0.1g添加して、超音波剥離を行った。得られた分散液の吸光度は8であり、IPAを用いることにより分散性が高まることを確認した。
(実施例15)
黒鉛(Z5F)5gと炭酸カリウム5gとをボールミルにより30分間混合し、水洗いを行った後に乾燥することで無機粒子複合体を得た。この無機粒子複合体0.5gを水100mLに添加し、超音波処理を5分行い、遠心処理を行った。得られた分散液の吸光度は26であった。水溶性塩との乾式混合により、従来技術(比較例11参照)では困難であった水中での剥離分散が可能となった。
(実施例16)
黒鉛(Z5F)5gを炭酸カリウム5gとボールミルにより30分間混合し、水洗いを行った後に乾燥することで無機粒子複合体を得た。この無機粒子複合体0.5gをIPA100mLに添加し、超音波処理を5分行った。遠心処理後の吸光度は27であった。
(実施例17)
実施例16の方法により得られた無機粒子複合体をIPAに加え、グラフェン濃度(黒鉛濃度)の異なるサンプルを複数用意した。そして、各サンプルに対し、グラフェン収率を求めた。グラフェン収率は、得られたグラフェン濃度を投入黒鉛濃度で除したものである。グラフェン濃度は、吸光度測定により算出した。参考のために、IPA100mLに炭酸アンモニウム0.1gと黒鉛(Z5F)を添加し、超音波5分、遠心処理を施すことで得られたグラフェン分散液のグラフェン収率もプロットした。図8に示すように、乾式混合は湿式混合に比べてグラフェン収率が高いことを確認した。
(実施例18)
2gの黒鉛(Z5F)に2gの炭酸カリウムを添加し、ペーストにするためにエタノールを5,10,20mL(黒鉛濃度400,200,100g/L)を加えてボールミル処理を15分間施した。ペーストのグラフェン濃度を推算するために、ペーストを水で薄めて塩を除去し、濾過、乾燥した。得られた粉末0.5gを100mLのIPAに添加し、超音波を1分間照射し、同様の遠心処理を施した。得られた分散液の吸光度を測定することで、グラフェン濃度およびグラフェン変換率を求めた。その結果を図9に示す。同図には、参考のために、湿式分散のグラフェン変換効率を示す。湿式分散は、100mLのプロパノールに黒鉛(Z5F)を0.1g−10gの範囲で添加し、分散剤として0.1gの炭酸アンモニウムを添加した。1500rpm30分の遠心処理により、凝集物を取り除き、吸光度を測定することでグラフェン濃度に変換した。また得られたグラフェン濃度を初期黒鉛濃度で除することで、グラフェン変換率を求めた。
湿式では2−5%のグラフェン変換率が得られた。一方、ボールミルで塩とともに混合処理をした場合は、3−7%の高いグラフェン変換率が得られた。乾式混合の際にエタノール添加量を増加させると、若干のグラフェン変換率の低下が確認されたが、湿式に比べて100g/L以上の高い濃度で分散することを確認した。
[水溶性塩の添加量の効果]
(実施例19)
黒鉛(Z5F)2gを固定として、炭酸カリウム添加量をそれぞれ0、0.1、0.5、2、4gと変化させ、それぞれの混合粉末をボールミルにより15分間混合した。得られた粉末を2回水洗いし、乾燥することで、無機粒子複合体を得た。得られたそれぞれの無機粒子複合体を100mLのIPAにそれぞれ2g添加し、超音波処理を5分行った。表2に、各分散液の遠心処理後の吸光度の結果を示す。表2に示すように、黒鉛に対する炭酸カリウムの質量比が増えることで、吸光度が向上することを確認した。これは、塩の添加量増加により、乾式混合の際に黒鉛と塩との接触頻度が増加することで、塩による黒鉛の改質が効率的に進んでいることを示唆するものである。
[安定性の評価]
(実施例20)
黒鉛(Z5F)5gを炭酸カリウム5gと混合処理した。その後、水洗して乾燥を行うことにより無機粒子複合体を得た。得られた無機粒子複合体をIPA100mL中に0.5g添加し、5分の超音波処理後に遠心処理を行うことで無機粒子複合体の分散液を得た。分散液の吸光度を定期的に測定することで、その分散安定性を評価した。
(実施例21)
二硫化モリブデン(Tパウダー)5gを炭酸カリウム5gと混合処理した。その後、水洗して感想を行うことにより無機粒子複合体を得た。得られた無機粒子複合体をIPA100mL中に0.5g添加し、5分の超音波処理後に遠心処理を行うことで無機粒子複合体の分散液を得た。分散液の吸光度を定期的に測定することで、その分散安定性を評価した。
(比較例10)
炭酸カリウムを加えない以外は実施例20と同様の方法を行い、IPAの分散液を得た。分散液の吸光度を定期的に測定することで、その分散安定性を評価した。
(比較例11)
炭酸カリウムを加えない以外は実施例21と同様の方法を行い、IPAの分散液を得た。分散液の吸光度を定期的に測定することで、その分散安定性を評価した。
図10は実施例20および比較例10の、図11は実施例21および比較例11の分散安定性の経時変化をプロットしたものである。なお、図中の縦軸は、初期の濃度で正規化した濃度である。初期濃度は、比較例10が0.01g/L,実施例20が0.19g/Lであった。一方、比較例11は0.0055g/Lであるのに対し、実施例21は0.27g/Lである。実施例20、21共に、濃度が高く、且つ分散安定性に優れることを確認した。これらの実施例では沈殿は見られなかった。
[ゼータ電位測定]
黒鉛、二硫化モリブデン、CNTを水溶性塩で処理したサンプル(実施例10,12)と、水溶性塩を加えない以外は同条件の比較例に係るサンプルを用意し、各サンプル(固形分)0.5g、IPAと水(体積比4:6)の混合溶媒にいれ、超音波5分かけた後、遠心処理1500rpm,30分施し、得られた分散液をサンプルとした。これを水で希釈してゼータ電位測定を行った。その結果を図12に示す。
ゼータ電位は分散液をイオン交換水で20倍以上希釈し、その希釈液をナノ粒子解析装置(SZ−100,HORIBA)にて測定した。測定の結果、比較例においてはいずれも−20から−31mV程度であり、分散は不安定であった。一方、実施例に係る無機粒子複合体は−40から−47mVの値をとり、負のゼータ電位が強く、分散安定性が非常に高いことを確認した。これは、図1において説明したように、無機粒子複合体に含まれる水溶性塩の成分の電離と粒子周りのカチオンのゆらぎ)によって、もたらされた結果であると推察される。
(実施例22)
黒鉛3gと炭酸カリウム3gにエタノールを30mL入れて、黒鉛濃度を100g/Lとし、ボールミルで15分間混合処理を行った。
(比較例12)
エタノール100mLに3gの黒鉛を混ぜ、更に炭酸アンモニウムを0.1g添加して、5分間の超音波処理を行った。
実施例22、比較例12それぞれの分散媒の20℃における粘度を測定した結果を図13に示す。通常、エタノール単体では0.0012Pa・sの粘度であるが、湿式超音波により得られた無機粒子複合体の粘度は0.004Pa・sであった。一方、ボールミルによって混合したペースト状の無機粒子複合体の粘度はせん断速度依存性が顕著になっており、せん断速度が1s−1程度では約100Pa・sの粘度となった。

Claims (7)

  1. 無機粉体に、水溶性塩を加えて乾式またはペースト状で混合する工程(A)と、
    前記工程(A)の後に水洗して、前記水溶性塩由来の成分を含む無機粒子複合体を得る工程(B)とを含み、
    前記水溶性塩は、当該水溶性塩の対アニオンの酸の酸解離定数pKa(HO)が0より大きい水溶性塩であり、
    前記水溶性塩由来のアニオンと前記無機粉体が結合し、前記水溶性塩由来のカチオンが前記アニオンと前記無機粉体の周りに引き寄せられており、前記カチオン成分の濃度が35〜10,000ppmであり、
    前記無機粉体は、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張化黒鉛、不定形黒鉛、板状型黒鉛、グラフェンナノプレート、グラフェン、二硫化タングステンおよびカーボンナノチューブから選択されるいずれかである無機粒子複合体の製造方法。
  2. 前記水溶性塩の対カチオンは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ルビジウムイオンおよびアンモニウムイオンのいずれかである請求項1に記載の無機粒子複合体の製造方法。
  3. 前記無機粒子複合体を極性溶媒に分散したときの当該無機粒子複合体の平均粒子径が、1000nm以下である請求項1又は2に記載の無機粒子複合体の製造方法。
  4. 無機粉体に、水溶性塩を加えて乾式またはペースト状で混合した後に水洗することにより得られ、
    前記水溶性塩は、当該水溶性塩の対アニオンの酸の酸解離定数pKa(HO)が0より大きい水溶性塩であり、
    前記水溶性塩由来のアニオンと前記無機粉体が結合し、前記水溶性塩由来のカチオンが前記アニオンと前記無機粉体の周りに引き寄せられており、前記カチオン成分の濃度が35〜10,000ppmであり、
    前記無機粉体は、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張化黒鉛、不定形黒鉛、板状型黒鉛、グラフェンナノプレート、グラフェン、二硫化タングステンおよびカーボンナノチューブから選択されるいずれかである無機粒子複合体。
  5. 前記水溶性塩の対カチオンは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ルビジウムイオンおよびアンモニウムイオンのいずれかである請求項に記載の無機粒子複合体。
  6. 極性溶媒に分散したときの平均粒子径が1000nm以下である請求項4又は5に記載の無機粒子複合体。
  7. 請求項のいずれかに記載の無機粒子複合体を溶媒に分散した無機粒子複合体分散液。
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