JP6179923B2 - カーボンナノチューブ複合体、カーボンナノチューブ分散液及びそれらの製造方法、カーボンナノチューブの分散方法、並びに、透明電極及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)有機溶媒においてカーボンナノチューブとともに弱酸の塩或いは強塩基を共存させることによって、当該弱酸の塩や強塩基が分散剤として機能し、カーボンナノチューブの分散性を向上させることができる。
(2)分散剤として弱酸の塩或いは強塩基を用いる場合、従来の分散剤よりもごく少量(低濃度)で、分散剤としての機能を発揮し得る。すなわち、カーボンナノチューブにおいて不純物として残存する分散剤の量を従来よりも極めて少なくすることができる。
(3)特に、当該弱酸の塩として熱分解性のものを用いた場合、加熱によって分散剤を完全に除去することができる。例えば、透明電極を製造するにあたって、カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布した後、加熱によって弱酸の塩を分解除去することで、水洗等の洗浄工程を省略でき、基材上に耐屈曲性に優れるとともに表面状態の良好なカーボンナノチューブ層を形成できる。
(4)強酸の塩を用いた場合、カーボンナノチューブを有機溶媒中に分散させることはできない。むしろ、カーボンナノチューブが凝集する傾向にある。ただし、例外的に、アルカリ金属硫酸塩については分散剤として機能する傾向にある。
(5)弱酸の塩或いは強塩基は、有機溶媒においてカーボンナノチューブの分散性を向上させ得る。一方、溶媒として水を用いた場合は十分な分散効果は発揮されない。
(6)溶媒においてカーボンナノチューブとともに弱酸の塩或いは強塩基を共存させた後、当該分散液から溶媒を除去することで、カーボンナノチューブの表面に弱酸の塩或いは強塩基が付着したカーボンナノチューブ複合体が得られる。当該複合体を有機溶媒に添加した場合、カーボンナノチューブを有機溶媒に再分散させることができる。
第1の本発明は、カーボンナノチューブと弱酸の塩及び/又は強塩基とを含む、カーボンナノチューブ複合体である。
本発明に係るカーボンナノチューブ複合体は、カーボンナノチューブと弱酸の塩及び/又は強塩基とを含むことを特徴とする。
本発明では、従来公知のカーボンナノチューブを特に限定されることなく用いることができる。
特に、弱酸の塩は、陽イオンとしてナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを含むものが好ましく、アンモニウムイオンを含むものがより好ましい。また、陰イオンとして、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン又はカルボン酸イオンを含むものが好ましく、炭酸イオン、リン酸イオンを含むものがより好ましい。
弱酸の塩の好ましい具体例としては、炭酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。この中でも、例えば、炭酸アンモニウムを用いた場合、当該炭酸アンモニウムが60℃程度の加熱によって熱分解して二酸化炭素とアンモニアと水に変わることから、加熱をするだけで容易に除去することができる。炭酸水素アンモニウム等も同様である。すなわち、従来の分散剤(界面活性剤や有機高分子化合物)のように、分散剤を除去するための洗浄工程が不要であり、手間やコストを大きく削減可能である。
例えば、カーボンナノチューブ複合体を、カーボンナノチューブと上記弱酸の塩及び/又は強塩基との単なる混合物(固体状の混合物)とする場合、カーボンナノチューブに適当な量の弱酸の塩及び/又は強塩基を混合することで、弱酸の塩及び/又は無機塩の量を容易に増大させることができる。一方、後述するように、カーボンナノチューブの表面に弱酸の塩及び/又は強塩基を付着させる場合は、カーボンナノチューブと弱酸の塩及び/又は強塩基との含有比は自ずと小さなものとなる。
ただし、本発明においては、弱酸の塩及び/又は強塩基がわずかな量であっても、分散剤としての機能が十分に発揮される。分散剤の量を削減する観点からも、カーボンナノチューブ複合体における弱酸の塩及び/又は強塩基の量は、少ない方が好ましい。すなわち、カーボンナノチューブ100質量部に対して、弱酸の塩及び/又は強塩基が0.5質量部以下となるようにすることが最も好ましい。
カーボンナノチューブ複合体は、カーボンナノチューブと弱酸の塩及び/又は強塩基とが混合された単なる混合物の形態であってもよいし、カーボンナノチューブの表面に上記の弱酸の塩及び/又は強塩基が付着した形態であってもよい。特に、有機溶媒に対してカーボンナノチューブをより均一に分散できることから、後者の形態が好ましい。
この場合において用いられる溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよいが、特に有機溶媒が好ましい。有機溶媒中においては、弱酸の塩及び/又は強塩基の作用によってカーボンナノチューブが分散する結果、弱酸の塩及び/又は強塩基がカーボンナノチューブの表面に一層均一に行き渡るためである。
この場合において溶媒に添加する弱酸の塩及び/又は強塩基の量を調整することにより、カーボンナノチューブ複合体においてカーボンナノチューブに付着する弱酸の塩及び/又は強塩基の量を調整することができる。ただし、本発明においては、弱酸の塩及び/又は強塩基がわずかな量であっても、分散剤としての機能が発揮される。
本発明に係るカーボンナノチューブ分散液は、有機溶媒中にカーボンナノチューブと弱酸の塩及び/又は強塩基とを含むことを特徴とする。すなわち、弱酸の塩や強塩基を分散剤として機能させて、カーボンナノチューブを有機溶媒中に分散させたものである。
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール;
アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)などのケトン;
アセトニトリル、ベンゾニトリル、4−フルオロベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルなどのニトリル;
トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル;
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピルメチルカーボネートなどのカーボネート;
酢酸エチル、酪酸メチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル、酢酸2−メトキシエチルなどのエステル;γ−ブチロラクトンなどのラクトン;
ニトロメタンなどのニトロ化合物;ベンゼン、トルエン、ヘキサフルオロベンゼンなどの芳香族化合物;
クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化アルキル;
ジメチルスルホキシド、スルホラン、二流化炭素、エチルメチルスルホネート、トリメチレンスルホネート、1−メチルトリメチレンスルホネート、エチル−sec−ブチルスルホネート、エチルイソプロピルスルホネート、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルスルホネート、2,2,2−トリフルオロエチルスルホネートなどの硫黄化合物;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホラストリアミドなどのアミド;
4−メチル−1,3−ジオキソランなどのジオキソラン;
ピリジンなどの複素環式化合物;
1−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン)などのピロリドン;
ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチルなどのホウ酸エステル化合物;
トリメチルホスフェート、トリ−n−プロピルフォスフェートなどのリン酸エステル化合物;等が挙げられる。
この中でも、アルコール、ケトン、エーテル、スルホキシド、ニトリル、アミド、ピロリドン、ハロゲン化アルキルが好ましく、アルコール、ケトン、エーテル、スルホキシド、ニトリル、アミド、ピロリドンがより好ましい。
具体的には、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、クロロホルムが好ましく、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンがより好ましい。
或いは、有機溶媒を非極性溶媒と極性溶媒とに大別した場合、極性溶媒の方が好ましい。また、当該極性溶媒を非プロトン性極性溶媒とプロトン性極性溶媒とに大別した場合、非プロトン性極性溶媒が好ましい傾向にある。ただし、プロトン性極性溶媒においても、エタノールやイソプロパノールは、非プロトン性極性溶媒と同様に極めて高い分散性を示す。
特に、透明電極製造用の分散液とする場合は、イソプロパノールまたは2−ブタノンが好ましい。取り扱い性に優れるとともに、プラスチック基材に対して一層均一に塗布でき、除去も容易だからである。
本発明に係るカーボンナノチューブ分散液は、例えば、カーボンナノチューブと弱酸の塩及び/又は強塩基とを有機溶媒に添加することで、容易に製造することができる。また、上述のカーボンナノチューブ複合体を有機溶媒に添加することによっても、容易に製造可能である。
本発明は、カーボンナノチューブの分散方法としての側面も有する。すなわち、分散剤として弱酸の塩及び/又は強塩基を用いた、有機溶媒におけるカーボンナノチューブの分散方法である。
しかしながら、本発明者らの鋭意研究により、弱酸の塩或いは強塩基にあっては、有機溶媒中に限って、カーボンナノチューブを分散させる分散剤として機能し得ることを初めて見出したのである。
本発明は透明電極としての側面も有する。すなわち、基材の表面にカーボンナノチューブ層を有する透明電極であって、カーボンナノチューブ層の一部に、弱酸の塩及び/又は強塩基が存在している、透明電極である。すなわち、本発明に係るカーボンナノチューブ分散液を用いたことにより、分散剤として弱酸の塩及び/又は強塩基が一部残存しているような形態である。ただし、本発明では、従来の分散剤と比較して、弱酸の塩及び/又は強塩基が極めてわずかな量であっても、カーボンナノチューブを有機溶媒に分散させることが可能であることから、結果として、透明電極とした場合においても、弱酸の塩及び/又は強塩基の残存はごくわずかとなる。すなわち、分散剤の存在によってカーボンナノチューブの導電性が損なわれるようなことがない。
或いは、後述するように、弱酸の塩としてアンモニウム塩等の熱分解によって液化・気化するものを用いた場合、カーボンナノチューブ層に残存する弱酸の塩を加熱によって容易に除去することができる。
本発明に係る透明電極は、例えば、以下の製造方法により容易に製造することができる。すなわち、上述のカーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布する工程を備える、透明電極の製造方法である。
実験1:多層カーボンナノチューブの分散性の評価
実験1−1:有機溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いた場合
図1に示す手順で、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を有機溶媒中に分散させた。すなわち、サンプルビンに、5mlの有機溶媒と、1mg(0.02質量%)の弱酸の塩、強塩基、又は、強酸の塩と、10mg(有機溶媒に対するCNT濃度:2mg/ml)のMWCNTとを量り入れ、バス型超音波洗浄機を用いて15℃一定になるように冷却しつつ1時間超音波を照射した。その後、分散しきれなかったMWCNT凝集体を遠心分離により除去し、上澄み液をカーボンナノチューブ分散液として得た。
強酸の塩を添加した場合については、カーボンナノチューブは分散せず、何も添加しない場合(None)に比べて分散性が低下(すなわち凝集)することが分かった。ただし、硫酸カリウムについては例外的に、ごくわずかではあるが分散性の向上が認められた。
一方、弱酸の塩又は強塩基を添加した場合については、何も添加しない場合(None)に比べて、カーボンナノチューブの分散性が大きく向上することが分かった。弱酸の塩又は強塩基による分散性は、1%SDS水溶液を用いて同じカーボンナノチューブを同濃度で分散させた場合に匹敵するほどであった。
図3に示す手順で、MWCNTを有機溶媒中に分散させた。すなわち、サンプルビンに、5mlの有機溶媒と、1mg(0.02質量%)の弱酸の塩、強塩基、又は、強酸の塩と、10mg(有機溶媒に対するCNT濃度:2mg/ml)のMWCNTとを量り入れ、バス型超音波洗浄機を用いて15℃一定になるように冷却しつつ2時間超音波を照射した。その後、分散しきれなかったMWCNT凝集体を遠心分離により除去し、上澄み液をカーボンナノチューブ分散液として得た。
強酸の塩を添加した場合についても、何も添加しない場合(None)と同様に無色透明の液体となり、カーボンナノチューブを分散させることはできなかった。
一方、弱酸の塩又は強塩基を添加した場合については、何も添加しない場合(None)に比べて、カーボンナノチューブの分散性が大きく向上することが分かった。
多層カーボンナノチューブ濃度を1mg/mlとした以外は、実験1−1と同様の方法でカーボンナノチューブ分散液を得た。得られた分散液を加熱攪拌(50℃又は100℃、1時間)し、分散液の安定性を確認した。結果を図5に示す。図5に示す結果から明らかなように、各分散液は加熱攪拌後も80%以上の高い分散性を保持していた。これは上述の1%SDS水溶液に匹敵する。また、各分散液を半年間静置しても、凝集体のない安定な分散状態を保持していた。
尚、酢酸アンモニウムや炭酸アンモニウム(アンモニウム塩)については、100℃において分散性が失われている。熱分解によってアンモニウム塩が失われたためと考えられる。アンモニウム塩については、低温において高い分散性を発揮する一方、加熱によって容易に除去可能と言える。
DMAcに替えて下記表1に示す溶媒を用いたこと以外は実験1−1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得て、その分散性を以下の評価基準で評価した。弱酸の塩として炭酸アンモニウム、リン酸カリウム、酢酸カリウムを用いた場合の結果を下記表1に示す。
〇:分散可(上澄み液が黒色透明)
△:分散可(上澄み液が薄黒色透明、分散量低め)
×:分散不可(上澄み液が無色透明)
実験1−1と同様にして得られたカーボンナノチューブ分散液(弱酸の塩としてリン酸カリウム、又は、強塩基として水酸化ナトリウムを添加)を、図6に示す手順で濾過及び共洗いし、カーボンナノチューブ複合体を得た。すなわち、分散液の濾過、有機溶媒による共洗い、固形分の回収、及び、回収した固形分の有機溶媒への分散を5回繰り返し、メタノールで置換後、乾燥させて最終的に得られた固形分(カーボンナノチューブ複合体)を下記表2に示す各種溶媒に添加して再分散可能か評価した。評価基準は実験3と同様とした。結果を下記表2に示す。
尚、表2に示す結果から明らかなように、有機溶媒の中でも、極性溶媒に対して良好に再分散させることができた。
下記表3に示す弱酸の塩或いは強酸の塩を用い、且つ、多層カーボンナノチューブとして下記表3に示すような直径の異なるものを用いたこと以外は、実験1と同様にしてDMAcにおけるカーボンナノチューブの分散性を評価した。評価基準は実験3と同様とした。結果を下記表3に示す。
分散剤としてリン酸カリウムを用いた場合、カーボンナノチューブの濃度を2.5mg/mlと高濃度とした場合においても、カーボンナノチューブを分散させることができた。
実験7−1:有機溶媒としてDMAcを用いた場合
弱酸の塩として炭酸アンモニウムを用い、当該炭酸アンモニウムの濃度を変化させたこと以外は、実験1−1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得て、炭酸アンモニウムの必要最小限の濃度を確認した。結果を図7に示す。図7に示す結果から明らかなように、炭酸アンモニウム濃度が2ppm(0.0002質量%)の極めて希薄な条件でも、MWCNTを分散することができた。炭酸アンモニウムを加えない場合と比較しても、たったの2ppm加えるだけで飛躍的に分散性が向上しており、炭酸アンモニウムが分散に大きく関与していることが分かった。
弱酸の塩として炭酸アンモニウムを用い、当該炭酸アンモニウムの濃度を変化させたこと以外は、実験1−2と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得て、炭酸アンモニウムの必要最小限の濃度を確認した。また、参考データとして、公知の分散剤であるSDSおよびコール酸ナトリウム(SDSよりもカーボンナノチューブとの相互作用が強いことが知られている)水溶液について、その濃度を変化させてカーボンナノチューブの分散性を評価した。結果を図8に示す。図8に示す結果から明らかなように、炭酸アンモニウム濃度が3ppm(0.0003質量%)の極めて希薄な条件でも、MWCNTを分散することができた。炭酸アンモニウムを加えない場合と比較しても、たったの3ppm加えるだけで飛躍的に分散性が向上しており、炭酸アンモニウムが分散に大きく関与していることが分かった。
一方、SDSおよびコール酸ナトリウム水溶液にあっては、10ppmの濃度としても、カーボンナノチューブの分散性は確認できなかった。
DMAc溶媒に対する弱酸の塩、強酸の塩の溶解性を確認した。結果を下記表4に示す。表4に示す通り、DMAcに対する溶解性と、DMAcにおけるカーボンナノチューブの分散性との間に相関性は認められない。
実験9:単層カーボンナノチューブの分散性の評価
実験9−1:有機溶媒としてDMAcを用いた場合
図9に示す手順で、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を有機溶媒中に分散させた。すなわち、サンプルビンに、10mlの有機溶媒(下記表5)と、1mg(0.01質量%)の弱酸の塩(下記表5)、強塩基(下記表5)、又は、強酸の塩(下記表5)と、0.1mg(有機溶媒に対するCNT濃度:0.01mg/ml)のSWCNTとを量り入れ、バス型超音波洗浄機を用いて15℃一定になるように冷却しつつ2時間超音波を照射した。遠心分離により分散しきれなかったSWCNT凝集体を除去し、上澄み液をカーボンナノチューブ分散液として得た。得られたカーボンナノチューブ分散液の分散性について、実験3と同様の評価基準で評価した。結果を下記表5に示す。
溶媒として2−ブタノンを用いたこと、濃度を変化(2ppm、10ppm、25ppm、125pm)させて弱酸の塩として炭酸アンモニウムを加えたこと以外は、実験9−1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。得られた分散液に対し、光吸収度を確認した。結果を図10に示す。図10において、縦軸のAbsorbanceの値が大きいほど、高い分散性を示す。
溶媒としてDMAc、弱酸の塩としてリン酸カリウム、SWCNTとしてUnidym社のHiPco法により得られたSWCNT或いはSouthWest NanoTechnologies社のCoMoCAT法により得られたSWCNTを用いて、実験9−1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。得られた分散液はいずれも黒色であり、SWCNTが分散した状態であった。尚、各SWCNTの物性を以下に示す。
SWCNT(HiPco法):直径0.8〜1.2nm、長さ100〜1000nm、炭素純度85%以上
SWCNT(CoMoCAT法):直径0.7〜1.4nm、炭素純度90%以上
有機溶媒としてテトラヒドロフラン、弱酸の塩として炭酸アンモニウムを用い、実験9−1と同様の方法で単層カーボンナノチューブを分散させて、カーボンナノチューブ分散液を得た。
<透明電極の作製>
(分散剤として炭酸アンモニウム(弱酸の塩)を用いた場合)
イソプロパノール10mlに炭酸アンモニウムを1mg、多層または単層カーボンナノチューブ(多層:2.5mg、単層:1mg)を加え、バス型超音波洗浄機を用いて15℃で2時間超音波照射を行った。その後、遠心分離を行い、上澄みをカーボンナノチューブ分散液とした。分散液を80℃に加熱したホットプレート上のガラス基板にスプレーし、透明電極(以下、多層CNTを適用したものを透明電極1、単層CNTを適用したものを透明電極2とする)を得た。
同様の操作でプラスチック基板(PETフィルム、厚み100μm)上へのスプレーを行い、透明電極(以下、多層CNTを適用したものを透明電極3、単層CNTを適用したものを透明電極4とする)を作製した。
蒸留水10mlにSDSを100mg、多層または単層カーボンナノチューブ(多層:2.5mg、単層:1mg)を加え、バス型超音波洗浄機を用いて15℃で2時間超音波照射を行った。その後、遠心分離を行い、その上澄みを分散液とした。分散液を100℃に加熱したホットプレート上のガラス基板にスプレーし、透明電極(以下、多層CNTを適用したものを透明電極5、単層CNTを適用したものを透明電極6とする)を複数作製した。
作製した透明電極5又は透明電極6を水に2時間浸漬することで洗浄し、ホットプレート上で50℃にて1時間、さらに100℃にて1時間加熱し乾燥させて透明電極(以下、多層CNTを適用したものを透明電極7、単層CNTを適用したものを透明電極8とする)を得た。
一方、透明電極7又は透明電極8を濃硝酸に3時間浸漬後、前述の水洗浄および乾燥を行い、透明電極(以下、多層CNTを適用したものを透明電極9、単層CNTを適用したものを透明電極10とする)を得た。
作製した透明電極1〜10は、目視において、いずれも均一な表面状態であった。
また、分散剤として炭酸アンモニウムを用いた場合(透明電極1、2)と水洗浄後のSDSの場合(透明電極7、8)とを比較すると、炭酸アンモニウムを用いた場合の方が低い表面抵抗値を示し、導電性に優れることが分かる。
さらに、SDSを用いた透明電極を水洗浄後にさらに酸洗浄を行った場合(透明電極10)、表面抵抗値が炭酸アンモニウムを用いた場合(透明電極2)と同等となった。このことから、SDSの完全除去は水洗浄のみでは難しく、酸洗浄などの厳しい洗浄工程が必要であることが示唆される。
Claims (9)
- 有機溶媒中にカーボンナノチューブと分散剤として弱酸の塩とを含み、
前記弱酸の塩が、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選ばれるいずれか1種以上であり、
前記有機溶媒1mlに対し、前記カーボンナノチューブを0.001mg以上10mg以下含む、
カーボンナノチューブ分散液。 - 前記有機溶媒に含まれる前記弱酸の塩の濃度が、質量基準で0.5ppm以上500ppm以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
- 前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エーテル、スルホキシド、ニトリル、アミド及びピロリドンから選ばれるいずれかである、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ分散液。
- 前記有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンから選ばれるいずれかである、請求項3に記載のカーボンナノチューブ分散液。
- カーボンナノチューブと分散剤として弱酸の塩とを有機溶媒に添加する工程を備え、
前記弱酸の塩が、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選ばれるいずれか1種以上であり、
前記有機溶媒1mlに対し、前記カーボンナノチューブを0.001mg以上10mg以下含ませる、
カーボンナノチューブ分散液の製造方法。 - 分散剤として弱酸の塩を用いた、有機溶媒におけるカーボンナノチューブの分散方法であって、
前記弱酸の塩が、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選ばれるいずれか1種以上であり、
前記有機溶媒1mlに対し、前記カーボンナノチューブを0.001mg以上10mg以下含ませる、
分散方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布する工程を備える、透明電極の製造方法。
- 前記カーボンナノチューブ分散液に弱酸の塩としてアンモニウム塩を含ませ、
該カーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布した後、前記アンモニウム塩を加熱により除去する工程を備える、請求項7に記載の製造方法。 - 有機溶媒中にカーボンナノチューブを分散させるために用いられる分散剤であって、
アルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選ばれるいずれか1種以上の弱酸の塩からなる、
分散剤。
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