JP6647863B2 - 肺疾患及び肺障害の炎症促進性メディエータのhUTC調節 - Google Patents

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Description

本発明は、肺疾患及び肺障害の炎症促進性メディエータの調節に対する細胞単位の治療に関する。
肺疾患(慢性と急性)、肺障害、及び/又は肺損傷は、未だに世界中で罹患率及び死亡率の重大な原因となっている。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、全世界で4番目の主要死亡原因であり(Spurzem and Rennard,Semin Respir Crit Care Med,2005;26:142〜153)、気道の解剖学的狭窄又は正常な呼吸を妨げる粘液による気道の閉塞によって起こり得る。更に、肺線維症としても知られる介在性肺疾患が、様々な慢性肺障害を含む拘束性疾患として分類されている。慢性肺疾患の管理には、薬物療法、酸素療法、手術、肺リハビリテーションが挙げられる。
COPD患者の90%は喫煙者であるが、喫煙者の10%だけがこの疾患を発症しており、このことは、遺伝的素因が重要な予後因子であり得ることを示唆している(Siafakas and Tzortzaki,Respir Med.2002;96:615〜24)。喫煙者の肺疾患は、慢性的な活動性炎症、気道粘液分泌過多、気腫によって特徴付けられ(MacNee,Proc Am Thorac Soc.2005;2:258〜66)、喫煙の中断により部分的にのみ回復可能である(Spurzem and Rennard,Semin Respir Crit Care Med,2005;26:142〜153)。気道及び肺実質の炎症は、COPDの発病において重要な役割を果たす。タバコの煙は、肺炎を誘発し、究極的には、タバコの煙への露出を中止してもCOPDを引き起こすことが示されている。
気腫は、COPDにおける罹患率及び死亡率を決定する重要な要因の1つである。気腫は、(呼吸細気管支と肺胞を含む)肺における末梢気腔の拡大として定義され、肺胞の壁構造の破壊を伴い、例えば、肺胞などの肺組織を支持する構造の破壊、及び肺胞に栄養を送る毛管の破壊により肺組織の弾性が失われることで特徴付けられる。例えば、エラスチンなどの炎症性酵素がこの破壊を生じさせる場合がある。気腫の発生は、環境公害の増加、タバコの煙、及び有害物質へのその他の露出により増加する。現在のところ、重篤な気腫の唯一の治療法は、肺移植である。したがって、エラスターゼ誘発の気腫などの気腫を患っている患者の肺障害を治療、修復、及び/又は回復させるための適切かつ有用なアプローチが強く要求されている。
急性の肺の損傷(ALI)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、集中治療環境における罹患率と死亡率の重大な原因であり、直接的な損傷(例えば、溺水、肺炎、有毒ガスの吸入、及び肺挫傷)又は間接的な損傷(例えば、重篤な敗血症、輸血、ショック、及び膵炎)のいずれかに応答した、拡散肺水腫を伴う低酸素血症の突然の誘発によって特徴付けられる。ALIとARDSに対する現在の治療法は、機械換気と支持療法である。
拘束性肺疾患が、罹患率と死亡率の最も共通した原因の一つであり、3つの主要病因、つまり、肺癌、肺炎、肺線維症の病因である。特発性肺線維症(IPF)は、進行性呼吸困難によって特徴付けられる深刻な病気であり、死亡率の高い進行性固定組織の線維化、構造的変形、及び機能の損失を伴う(Ortiz L.Aら、Proc Natl Acad Sci U.S.A.2003;100:8407〜11)。現在のところ、IPFの進行を食い止めるか、又は遅らせる有効な治療法がない。コルチコステロイド、免疫抑制剤、免疫調節剤、又は抗線維形成剤などのほとんどの治療法が炎症を抑制しようとしているが、いずれも疾患の進行を変化させることが立証されていない。したがって、内因性肺修復及び再生を高めながら線維形成を遅らせるか又は止めることを目的とした新規な治療法の必要性が高まっている。
数多くの炎症促進性メディエータが、例えば、呼吸器疾患などにおける肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に関与してきた。例えば、肺線維症では、慢性型の線維化間質性肺炎、過剰な前繊維化サイトカイン、又は抗線維形成サイトカインの不足が、疾患の病的過程に関与している。(Zhao F.ら、Transplant Proceedings,2008:40(5):1700〜1705)。
然るに、これらのサイトカイン及び炎症促進性メディエータの産生の低減及び/又は抑制が、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の症状及び/又は病状を軽減し得る。したがって、現在、これらの炎症促進性メディエータの産生を低下又は抑制する治療法の必要性が高まっている。例えば、COPDなどの肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷などの現在の治療法には、吸引又は経口コルチコステロイド、気管支拡張薬、及び抗コリン作用薬が挙げられる。更に、インターロイキンに対するインターロイキン拮抗物質及び抗体の使用が、例えば、ぜんそくなどの治験において研究されている。しかし、これらの治療法のいずれも、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の症状及び/又は病状に関与する炎症促進性メディエータの産生を低減及び/又は抑制しない。
標的組織を再構築するための臨床ツールとして幹細胞移植を利用することにより、生理学的及び解剖学的機能を復元させることができる。肺疾患(慢性及び急性)、肺障害、及び/又は肺損傷の治療では、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷によって損傷を受けた肺組織を再生又は修復するために幹細胞技術を用いることに、主たる焦点が当てられてきた。
したがって、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状と関連するメディエータを調節することによって肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷を治療する方法が必要とされている。特に必要とされるのは、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状と関連する炎症促進性メディエータを連続して調節する方法である。
本発明の一態様は、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷を有する患者における肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る炎症促進性メディエータの産生を調節(例えば、修復)する方法を特徴とする。このような疾病、疾患、及び/又は損傷には、慢性閉塞性肺障害(COPD)(例えば、慢性気管支炎、気腫)、肺線維症、急性肺損傷(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及びこれらに伴う損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態は、有効量の臍帯組織由来細胞を患者に投与することを含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷を有する患者における肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節する方法である。本発明の別の実施形態は、有効量の臍帯組織由来細胞(例えば、1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減するのに有効な量)を患者に投与することを含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷を有する患者における肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する方法である。
この方法は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離された細胞であって、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない細胞を利用する。一実施形態において、この細胞にはCD117及びCD45の産生がなく、任意で、hTERT及びテロメラーゼを発現しない。別の実施形態において、この細胞は、hTERT及びテロメラーゼを発現しない。更に別の実施形態において、この細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現せず、かつ次の特性のうちの1つ又は2つ以上を含む:CD10、CD13、CD44、CD73、CD90を発現する;CD31又はCD34を発現しない;ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する;並びに、少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する。
本方法は、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の炎症促進性メディエータの多くの産生を調節(例えば、減少)するのに好適である。一実施形態において、炎症促進性メディエータは、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β、及びこれらの組み合わせである。炎症促進性メディエータは、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の進行に係り得る。
一実施形態において、細胞は、少なくとも1つの他の細胞型及び/又は少なくとも1つの他の薬剤と共に投与される。他の細胞型は、例えば、前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、又はその他の多分化能若しくは多能幹細胞などの肺細胞であり得る。薬剤は、抗血栓性薬剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、免疫調節剤、血管新生促進剤、又は抗アポトーシス剤から選択され得る。
本発明の別の態様は、有効量の臍帯組織由来細胞を含む、慢性閉塞性肺疾患を有する患者における(例えば、気腫又は慢性気管支炎などの)慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節(例えば、低減)する方法であり、上記の炎症促進性メディエータは、慢性閉塞性肺疾患の進行を媒介し、細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。一実施形態は、有効量の臍帯組織由来細胞を含む、慢性閉塞性肺疾患を有する患者における(例えば、気腫又は慢性気管支炎などの)慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する方法であり、上記の炎症促進性メディエータは、慢性閉塞性肺疾患の進行を媒介し、細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータは、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β及びこれらの組み合わせであり得る。
別の実施形態において、細胞は、更に、次の特性のうちの1つ又は2つ以上を有し得る:CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する;CD31又はCD34を発現しない;ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する;並びに、少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する。
いくつかの実施形態において、臍帯組織由来細胞は、薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物に製剤化される。別の方法としては、細胞は、薬学的に許容されるキャリアを含むキットに製剤化される。本方法は、1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を抑制し得る。
本発明の別の態様は、有効量の臍帯組織由来細胞を含む、慢性閉塞性肺疾患を有する患者における慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を抑制する方法である。1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータは、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。一実施形態において、COPDは、慢性気管支炎又は気腫である。
臍帯組織由来細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。所望により、細胞は、更に、次の特性のうちの1つ又は2つ以上を有する:CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する;CD31又はCD34を発現しない;ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する;並びに、少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する。
一実施形態において、細胞は、慢性閉塞性肺疾患の部位で投与される。
特定の実施形態において、この細胞はインビトロで誘導され、投与前に肺組織細胞(例えば、血管平滑筋、周細胞、又は血管内皮系譜細胞など)に分化する。他の実施形態において、細胞は、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の治療を促進する遺伝子産物を産生するために遺伝子組み換えされる。
本方法のいくつかの実施形態において、細胞は、少なくとも1つの他の細胞型と共に投与され、該細胞型には、例えば、肺前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、又はその他の多分化能若しくは多能幹細胞が含まれ得る。他の細胞型は、臍帯組織由来細胞と同時に、若しくは前に、又は後に、投与され得る。
他の実施形態において、この細胞は、少なくとも1つの他の薬剤と共に投与され、該薬剤は、例えば、抗血栓薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、血管新生促進薬、又は抗アポトーシス薬であり得る。他の薬剤は、臍帯組織由来細胞と同時に、若しくは前に、又は後に、投与され得る。
細胞は、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の部位又はその近位に投与するのが好ましいが、かかる部位の遠位に投与してもよい。細胞は、注射、注入、患者に植え込まれた装置により、又は細胞を含むマトリックス若しくはスカフォールドの植え込みにより投与することができる。細胞は、患者の肺組織上で増殖などの栄養作用を及ぼしてもよい。この細胞は、例えば、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、肺前駆細胞、周細胞、血管平滑筋前駆細胞、又は血管内皮前駆細胞などの肺組織細胞の、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の部位へのマイグレーションを誘発し得る。
本発明の別の態様は、臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節するための医薬組成物であり、細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。一実施形態において、医薬組成物は、臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する。別の実施形態において、医薬組成物は、臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を抑制する。本発明の他の態様は、臍帯組織由来細胞の製品を含む医薬組成物及びキットを用いた治療を特徴とする。
医薬組成物は、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、及び/又は緩衝剤を含み得る。肺疾患は、例えば、慢性気管支炎又は気腫などの慢性閉塞性肺障害であり得る。
本発明の更に別の実施形態は、薬学的に許容されるキャリア及び臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節するためのキットである。別の実施形態は、薬学的に許容されるキャリア及び臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減するためのキットである。一実施形態において、臍帯組織由来細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。肺疾患は、例えば、慢性気管支炎又は気腫などの慢性閉塞性肺疾患であり得る。
本発明の他の特徴及び利点は、「発明を実施するための形態」の項とそれに続く実施例を参照することにより理解されよう。
上記の概要及び本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより深い理解がなされるであろう。本発明を説明する目的のため、図面は本発明の各実施形態を示している。しかしながら、本発明は、示される正確な構成、実施例、及び手段に限定されない点は理解されるべきである。
BALF総タンパク質濃度を示す。総タンパク質は、Pierce BCA蛋白定量法を用いて測定された。各データポイントは、単一の動物から得られた測定値を表す。横線は、全測定値の平均を表す。学生T試験分析が実施された。データは、表1.2に表形式で示されている。 サイトカイン/ケモカイン分析の結果を示す。図2Aは、肺ホモジネートのサイトカイン/ケモカイン分析を示す。22の異なるサイトカイン/ケモカインの濃度が、製造者のプロトコルに従い、マウス22−多重ビードキット(Millipore)を使用して、肺ホモジネートについて判定され、BioRad Bioplex機器を用いて分析された。データバーは、6個のサンプルの平均値を表す。データは、表1−3及び1−4に表形式で示されている。図2Bは、BALFのサイトカイン/ケモカイン分析を示す。22の異なるサイトカイン/ケモカインの濃度が、製造者のプロトコルに従い、マウス22−多重ビードキット(Millipore)を使用して、BALF(気管支肺胞洗浄液)について判定され、BioRad Bioplex機器を用いて分析された。データバーは、6個のサンプルの平均値を表す。データは、表1−5及び1−6に表形式で示されている。 ヒト臍帯組織誘導細胞(hUTC)の投与後1日目、6日目、10日目、及び14日目の気管支肺胞(BAL)洗浄液組成物に対するhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)処理の効果を示す。図3Aは、NSGマウスの結果を示し、図3Bは、BALB/cマウスの結果を示す。ネガティブコントールは、生理食塩水及び/又は溶媒で偽感染/感作された。BAL洗浄液は、全細胞数について検査された。各ケースにおいて、5匹の動物が評価された。結果は、細胞数の平均値±S.E.M.として表されている。(、p<0.005、***、p<0.001)。 hUTCの投与後1日目、6日目、10日目、及び14日目のBAL洗浄液組成物に対するhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)処理の効果を示す。ネガティブコントールは、生理食塩水及び/又は溶媒で偽感作された。BAL洗浄液は、好中球とマクロファージの存在の有無について検査された。各ケースにおいて、5匹の動物が評価された。結果は、細胞数の平均値±S.E.M.として表されている。(、<p0.005、***、p<0.001)。 hUTCをNOD/SCIDγマウスに投与した後1日目、6日目、10日目、14日目のBAL上澄みサイトカイン組成物におけるhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)処理の効果を示す。図5Aは、MCP−1のサイトカイン反応を示す。図5Bは、TNF−αのサイトカイン反応を示す。図5Cは、TNF−αの反応を示し、図5Dは、IL−1βの反応を示す。各反応は、群当たり5匹のマウスから独立して判定され、平均値±S.E.M.として表されている。(、p<0.05)。 hUTCをBALB/cマウスに投与した後1日目、6日目、10日目、14日目のBAL上澄み組成物におけるhUTC注入/及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)処理の効果を示す。サイトカイン反応は、MCP−1(図6Bを参照)TNF−α(図6Bを参照)、RANTES(図6Cを参照)、及びIL−1β(図1Dを参照)について示されている。各反応は、群当たり5匹のマウスから独立して判定され、平均値±S.E.M.として表されている。(、p<0.05)。 倍率100で測定され、群及び時間当たり5匹の動物から平均値±SDとして表される平均肺胞壁間距離(A)及び肺胞数(B)を示す。記号は、エラスターゼ群と対比した統計的分析の結果、p<0.01、**p、0.005、***p、0.001を示す。 対照マウス(PBS)又はエラスターゼ治療(El)を受けたマウス、エラスターゼ+hUTC治療(El+hUTC)を受けたマウス、又はhUTCだけを受けたマウスの固定肺部のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色(n=群当たり5)を使用した気腫損傷の検出を示す。各サンプルについて示される3つの代表的なスライド。元の倍率x100。 hUTCが、1日目、6日目、10日目、及び14日目に免疫無防備状態(NOD/SCIDγ)マウスのエラスターゼ誘発気腫の範囲を低減したことを示す。気腫損傷は、固定肺部のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色(n=群当たり5)を使用して検出された。元の倍率x100。 hUTCが、1日目、6日目、10日目、14日目に免疫応答性の(BALB/c)マウスのエラスターゼ誘発気腫の範囲を低減したことを示す。気腫損傷は、固定肺部のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色(n=群当たり5)を使用して検出された。元の倍率x100。 NOD/SCIDγマウスにhUTCを投与した後1日目、6日目、10日目、14日目のhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)治療の肺機能に及ぼす効果を示す。ネガティブコントールは、生理食塩水及び/又は溶媒で偽処理された。 BALB/cマウスにhUTCを投与した後1日目、6日目、10日目、14日目のhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)治療の肺機能に及ぼす効果を示す。ネガティブコントールは、生理食塩水及び/又は溶媒で偽処理された。
以下の例示的実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部を構成する添付図面が参照されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実践できるように十分に詳細に説明されおり、本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、他の実施形態を用いることができること、及び論理構造的、機械的、電気的及び化学的変更がなされ得ることが理解されよう。当業者がこれらの実施形態を実践するために必要でない詳細な説明を避けるために、当業者に周知の特定の情報の説明が省略されている場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
本願は、生体内設定におけるヒト臍帯組織由来細胞が、例えば、COPDなどの肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る炎症促進性メディエータの産生を調節する(例えば、低減する)という発見に基づいている。特に、出願者らは、ヒト臍帯組織由来細胞の投与の結果、例えば、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1βなどの、呼吸器疾患(例えば、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷)の炎症促進性メディエータの産生が低減又は抑制されることを発見した。
したがって、本発明は、肺疾患を患う患者における、例えば、COPDなどの肺疾患の病状に係る炎症促進性メディエータの産生の調節(例えば、低減)において臍帯由来細胞を用いる方法を提供する。一実施形態において、本発明は、肺疾患の病状に係る炎症促進性メディエータの低減、又は更には抑制を提供し、ひいてはこれらの疾患症状を低減する。最も望ましい方法としては、本発明は、特に、従来の薬物療法、酸素療法、手術、及び肺リハビリテーションと比較して、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の症状及び/又は病状に係る炎症促進性メディエータの産生及び/又は抑制の連続的な調節(例えば、低減)を提供する。
I.定義
本明細書及び請求項を通して様々な用語が使用される。これらの用語には、特に断らないかぎりは当該技術分野における通常の意味が与えられるものとする。他の具体的に定義される用語は、本明細書に提供される定義と一致する様式で解釈される。
「肺組織」は、静脈、動脈、血管、毛管、及び、肺及び胸膜組織、血管平滑筋、周細胞、血管内皮細胞系列及び/又はフェノタイプなどの構造体の一部又は関連したタイプの細胞を含むがこれらに限定されない全ての肺組織構造体及び関連した組織を含み得るが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「呼吸器又は肺の疾患、障害及び損傷」は、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患、気道感染(上部及び下部)、気道腫瘍、胸腔疾患、及び肺血管疾患を含むが、これらに限定されない。これらの疾患、障害及び/又は損傷によって生じる肺組織の損傷は、本発明の範囲内において肺障害と特徴付けられ得る。更に、本発明に包含される損傷を受けた肺組織は、静脈、動脈、血管、毛管、及びこれらの構造体の一部、又は関連しているタイプの細胞を含む全ての肺組織構造体及び関連組織を含む。
「閉塞性肺疾患」は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、慢性気管支炎及び気腫)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、細気管支炎、及びアレルギー性気管支肺アスペルギルス症を含み得る。COPDは、例えば、有害粒子又はガス(最も一般的には、喫煙)により生じ、肺の異常な炎症反応を引き起こす。更に広い気道における炎症反応は慢性気管支炎として知られており、規則的に痰を吐く時に臨床的に診断される。肺胞において、炎症反応は、気腫として知られる肺組織の破壊を生じる。これらの組織は、本発明に関係する範囲において、COPDと関連付けられる組織として認識されよう。COPDの病因としては、タバコの喫煙、作業場塵埃に対する職業上の暴露(例えば、炭鉱、金鉱、綿織物産業、及び化学工業)、空気汚染、及び遺伝が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書で使用される「拘束性肺疾患」は、介在性肺疾患(ILD)としても知られている。これらの多くは、突発性疾患である。例としては、特発性肺線維症、突発性介在性肺炎(数種類ある)、サルコイドーシス、好酸球性肺炎、リンパ脈管筋腫症、肺ランゲルハンス細胞組織球症、及び肺胞たん白症が挙げられる。ILDは、肺の間質、肺胞上皮、肺血管内皮、基底膜、血管周囲組織、及び外リンパ組織を冒す。ILDのほとんどのタイプは線維形成を伴う。
気道腫瘍は、悪性腫瘍と良性腫瘍の両方を含む。悪性腫瘍は、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(腺癌、扁平上皮細胞癌、及び大細胞未分化癌)、リンパ腫、並びにその他の癌を含む。良性腫瘍はまれであるが、例えば、肺過誤腫及び先天性奇形を含み得る。
本明細書で使用される「急性肺傷害」(ALI)は、低酸素血症、非心原性肺水腫、低肺コンプライアンス・広範性毛細血管漏出(low lung compliance and widespread capillary leakage)で特徴付けられる拡散異種性肺障害である。ALIは、局部的又は全身的な炎症の刺激によって生じる。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、ALIより重症である。本明細書で使用されるALI及びARDSは、直接的な損傷又は間接的な損傷に反応した拡散肺水腫を伴う低酸素血症の突然の誘発によって特徴付けられる。本明細書で使用される「直接的な損傷」は、溺水の発現、肺炎、有毒ガスの吸引、及び肺挫傷に由来する肺損傷を含むが、これに限定されない。本明細書で使用される「間接的な損傷」は、例えば、重症の敗血症、輸血、ショック、及び膵炎から生じ得る。ALI及びARDSにつながるこれらの損傷は、結果的に、肺胞/毛管界面の破壊、タンパク質を豊富に含む流体の間質及び肺胞空間への漏出、サイトカインの広範囲の放出、好中球のマイグレーションを生じる。
本発明の本方法に包含される肺疾患、肺障害、及び肺損傷は、当該技術分野において周知である。関連する合併症、病因、及び治療などのそれぞれの特性は、当業者には周知である。これには、閉塞性及び拘束性肺疾患、肺障害、肺損傷に該当するので本明細書では特に考察されていない肺疾患、肺障害、及び肺損傷が含まれる。
本発明において用いられている細胞は、一般的に、産後細胞又は分娩後由来細胞(PPDC)と呼ばれている。該細胞は、更に具体的には、「臍由来細胞」、「臍帯由来細胞」(UDC)、又は「臍帯組織由来細胞」(UTC)である。更には、該細胞は、幹細胞又は前駆細胞であるとして説明することができ、後者の用語は広義に使用される。「由来する」という用語は、その細胞が、それらの生物学的起源から得られ、インビトロで、増殖されているか又は他の方法で操作されている(例えば、増殖培地中で培養されて、その集団を増殖させ、かつ/又は細胞株を産生する)ことを示すために使用される。臍幹細胞のインビトロ操作、及び本発明の臍由来細胞の独自の特徴が、以下で詳細に説明される。
幹細胞は、単一細胞の、自己複製する能力、並びに自己複製前駆細胞、非複製前駆細胞、及び最終分化細胞を含む子孫細胞を産生するために分化する能力の双方によって定義される、未分化細胞である。幹細胞はまた、インビトロで、複数の胚葉(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)から、様々な細胞系統の機能的細胞へと分化する能力によって、並びに、植え込み後に、複数の胚葉の組織を生じさせる能力、及び胚盤胞内への注射後に、全てではないが殆どの組織に実質的に寄与する能力によって特徴付けられる。
幹細胞は、その発達能によって、(1)分化全能性、(2)多能性、(3)多分化能性、(4)少能性、及び(5)分化単能性として分類される。分化全能性細胞は、全ての胚細胞型及び胚体外細胞型を生じさせることが可能である。多能性細胞は、全ての胚細胞型を生じさせることが可能である。「多分化能」細胞には、細胞系統のサブセットで、特定の組織、臓器、又は生理系内の全てを生じさせることが可能であるものが含まれる。例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己複製)、血球限定の少能性前駆細胞、並びに血液の正常構成要素である全ての細胞型及び成分(例えば、血小板)を含む子孫を生成することができる。「少能性」細胞は、多分化能幹細胞より制限された細胞系統サブセットを生じさせることができる。「分化単能」細胞は、単一の細胞系統(例えば、精子発生幹細胞など)を生じさせることができる。
幹細胞はまた、それらの幹細胞を得ることができる供給源に基づいても分類される。成体幹細胞は、全般的には、複数の分化細胞型を含む組織内に見出される、多分化能の未分化細胞である。成体幹細胞は、自己複製することができる。通常の状況下では、成体幹細胞はまた、その細胞が起源とする組織の、特殊化した細胞型、また恐らくは他の組織型を産生するように、分化することもできる。胚幹細胞は、胚盤胞期の胚の内部細胞塊からの、多能性細胞である。胎生幹細胞は、胎児組織又は胎膜を起源とする幹細胞である。分娩後幹細胞は、出産後に入手可能な胚体外組織、すなわち、臍帯を実質的に起源とする、多分化能性若しくは多能性の細胞である。これらの細胞は、迅速な増殖、及び多くの細胞系統への分化に関する潜在能力を含めた、多能性幹細胞に固有の特徴を保有することが見出されている。分娩後幹細胞は、血液由来(例えば、臍帯血から得られる幹細胞のような)又は非血液由来(例えば、臍帯の非血液組織から得られるような)とすることができる。
培養中の細胞を説明するうえで様々な用語が用いられる。「細胞培養」は、一般的に、生物生命から採取され、「培養液中状態下」で成長又は「培養」された細胞を指す。初代細胞培養は、第一の継代培養の前に生物から直接採取された細胞、組織、又は器官の培養である。細胞は、細胞増殖及び/又は細胞分裂を促進する条件下で増殖培地内に定置される場合に、培養増殖して、細胞の大集団を生じさせる。細胞を培養中で増殖させる場合、細胞増殖の速度は、細胞の数が倍加するのに必要な時間の量によってしばしば測定される。これは「倍加時間」と呼ばれる。
「細胞株」という用語は、全般的に、初代細胞培養物の1つ又は2つ以上の継代培養物によって形成される細胞集団を意味する。継代培養の各回は、継代数と呼ばれる。細胞は、継代培養される時、「継代された」と呼ばれる。細胞の特定の母集団又は細胞株は、継代された回数でよばれたり、特徴付けられる場合がある。例えば、10回継代された培養細胞集団はP10培養物と呼ばれる場合がある。初代培養、すなわち、組織から細胞を単離した後の最初の培養はP0と称される。最初の継代培養の後、細胞は2次培養(P1又は継代数1)といわれる。2回目の継代培養の後では、細胞は3次培養(P2又は継代数2)となる、といった具合である。継代の期間中には、多くの集団倍加が存在し得るため、培養物の集団倍加の数は、継代の数よりも大きいことが、当業者には理解されるであろう。それぞれの継代間の期間における細胞の増殖(すなわち、集団倍加数)は、播種密度、支持体、培地、培養条件、及び継代間の時間等を含むがこれらに限定されない多くの因子に依存する。
「分化」は、特殊化されていない「未確定の」細胞、又は比較的特殊化されていない細胞が、例えば、神経細胞又は筋細胞などの、特殊化細胞の特徴を獲得するプロセスである。「分化した」細胞は、細胞の系統の範囲内で、より特殊化した「確定した」状態を呈している細胞である。分化プロセスに適用した際の用語「確定した」は、通常の環境下で特定の細胞型又は細胞型の小集合に分化し続ける分化経路の地点に進行しており、通常の環境下で異なる細胞型に分化し、又はより分化されていない細胞型に戻ることができない細胞を指す。「脱分化」とは、細胞が細胞の系統内においてより特殊化(又は確定)していない位置へと戻る過程のことを指す。本明細書で使用するところの細胞の「系統」とは、細胞の遺伝、すなわち、その細胞がどの細胞に由来し、どのような細胞を発生させることができるかを定義する。ある細胞の系統とは、所定の発生及び分化の遺伝体系内にその細胞を位置付けるものである。
広義では、「前駆細胞」とは、それ自身よりも分化した後代を産生する能力を有し、かつ、前駆体のプールを補充する能力も保持する細胞を意味する。その定義によれば、幹細胞自体もまた、最終分化細胞へのより直接的な前駆細胞であるため、前駆細胞である。以下でより詳細に説明されるように、本発明の細胞に言及する場合、この広い意味での前駆細胞の定義を使用することができる。より狭義には、前駆細胞は、分化経路での中間体である細胞として定義される場合が多く、すなわち、前駆細胞は、幹細胞から生じるものであり、成熟細胞型又は細胞型のサブセットを産生する際の中間体である。このタイプの前駆細胞は、全般的には、自己複製が不可能である。したがって、本明細書でこのタイプの細胞が言及される場合には、その細胞は「非複製前駆細胞」、又は「中間的前駆体若しくは中間的前駆細胞」と称される。
細胞又は組織の移植、又は細胞補充療法に関して、本明細書ではいくつかの用語が用いられている。用語「自家移入」、「自家移植」、「自家移植片」などの用語は、移植ドナーが細胞又は移植レシピエントでもある治療を指す。用語「同種異系移入」、「同種異系間移植」、「同種異系間移植片」などの用語は、移植ドナーが移植レシピエントと同じ種であるが、同じ個体ではないような植え込みを指す。ドナー細胞が、レシピエントと組織適合的に一致している細胞移植は、「同系移入」と称される場合がある。異種移入、異種移植、異種移植片などの用語は、移植ドナーがその移植レシピエンとは異なる種であるような移植を指す。
「薬学的に許容されるキャリア」又は「薬学的に許容される培地」という用語は、「生物学的に適合可能なキャリア」又は「生物学的に適合可能な培地」という用語と互換的に使用することができ、治療的に投与される細胞及び他の薬剤と適合可能であるばかりではなく、妥当な有益性/リスクの比率に見合った、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、若しくは他の合併症を伴わない、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に関しても好適である、試薬、細胞、化合物、材料、組成物、及び/又は剤型を指す。
「条件培地」は、特定の細胞又は細胞集団が培養され、その後除去される培地である。細胞が培地中で培養される場合、それらの細胞は、他の細胞に栄養的支援を提供することができる細胞因子を分泌する場合がある。そのような栄養因子としては、ホルモン、サイトカイン、細胞外マトリックス(ECM)、タンパク質、小胞、抗体、及び顆粒が挙げられるが、これらに限定されない。細胞性因子を含む培地が条件培地である。
一般的に、「栄養因子」は、細胞の生存、成長、増殖、及び/又は成熟を促進するか、あるいは細胞の活性の増大を刺激する物質として定義される。
本明細書で使用される用語「増殖培地」は、全般に、産褥由来細胞の培養に十分な培地を指す。具体的には、本発明の細胞の培養に関して、現時点で好ましい1つの培地は、ダルベッコ変法必須培地(DMEM)を含む。DMEM−低グルコース(DMEM−LG)(Invitrogen(Carlsbad,CA))が、特に好まい。このDMEM−LGは、血清(最も好ましくはウシ胎児血清又はヒト血清)が添加されている。典型的に、15%(v/v)ウシ胎児血清(例えば、規定ウシ胎児血清、Hyclone(Logan UT))が、抗生物質/抗真菌剤(好ましくは100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン、及び0.25mg/mLのアンホテリシンB(Invitrogen(Carlsbad,CA))、並びに0.001%(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis MO))と共に添加される。場合によっては、異なる増殖培地が使用されるか、又は異なる補助剤が提供され、これらは通常、増殖培地に対する補助剤として文中に示される。特定の合成培地においては、細胞は血清が全く存在しない中で増殖し得る。そのような場合、細胞は特定の増殖因子を必要とする場合があり、これは細胞の支持及び維持のために培地に添加することができる。現在、無血清培地での増殖のために添加される好ましい因子としては、bFGF、EGF、IGF−I、及びPDGFのうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。より好ましい実施形態において、因子のうち2つ、3つ、又は4つ全てが無血清培地又は合成培地に添加される。他の実施形態において、細胞の増殖を支持又は改善するために、無血清培地にLIFが添加される。
本明細書で使用される用語「標準成長条件」は、5%のCOを含み、相対湿度が約100%に維持された標準大気中において、37℃で細胞の培養を行うことをいう。前述の条件は、培養に関して有用であるが、そのような条件は、細胞を培養するために当該技術分野において利用可能な選択肢を認識する当業者によって、変更することが可能である点を理解されたい。
本明細書において、量、時間の長さなどの測定可能な値を指して使用するところの「約」なる用語は、具体的に示された値からの±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、いっそうより好ましくは±0.1%の変動を含むことを意味するが、このような変動は開示される方法を実施するうえで適切なものである。
用語「有効量」とは、本明細書で記述されるとき、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、化合物、材料、又は組成物の濃度又は量を指す。このような結果は、本発明の範囲内の疾患、障害及び損傷による肺損傷を患う患者における、骨組織の再生、修復、若しくは改善、血流の改善、並びに/又は脈管形成の刺激及び/若しくは支持を含むが、これらに限定されない。このような有効作用は、例えば、本明細書に記載されている肺損傷を患う患者に本発明の細胞及び/又は組成物を投与することによって実現し得る。インビボで患者に投与されるUTCに関しては、有効量は、数百以下の少なさから、数百万以上の多さまでの範囲とすることができる。具体的な実施形態では、有効量は、10〜約1011の細胞の範囲、より具体的には、少なくとも約10の細胞とすることができる。投与される細胞の数は、調節の対象である、肺疾患、肺障害又は肺損傷の病状に係る炎症促進性メディエータの詳細、例えば、医薬生物学者によく知られている要因のうちでも、とりわけ、治療対象の大きさ又は総体積/表面積、治療対象領域の位置に対する投与する部位の近接性に依存することが理解されよう。
用語「治療する」、「治療すること」又は「治療」は、損傷、病理、又は病状の減弱又は改善における、何らかの成功又は成功の兆候を指し、これには、寛解、緩解、症状の減少、損傷、病理、又は病状を患者にとってより許容できるものにすること、変性又は減退速度を遅くすること、変性による最終的な衰弱を和らげること、患者の肉体的又は精神的健康を改善すること、あるいは生存期間の長さを延長することなどの、何らかの客観的又は主観的パラメータを含む。症状の治療又は改善は、身体検査又は神経学的検査の結果を含む客観的又は主観的パラメータに基づき得る。
「有効期間」、「有効時間」又は「有効条件」という用語は、一般に、薬剤又は医薬組成物が、その意図された結果を達成するために必要であるか、若しくは好ましい、期間あるいは他の制御可能な条件(例えば、インビトロ法に関しては、温度、湿度)を指す。
用語「個人」、「患者」又は「被験者」は、本明細書において互換可能に使用され、本明細書に記述される薬剤若しくは治療用組成物で治療されるか、又は、本明細書に記述される方法に従って治療される、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを指す。
本明細書で使用される「マトリックス」という用語は、一般に、細胞と共に患者に投与される生分解性及び/又は生体吸収性材料を指す。このマトリックスは、骨格筋、周細胞、血管平滑筋、又は血管内皮組織などの新たに成長する細胞によって置き換えられるまで、一時的なスカフォールドとして機能し得る。いくつかの実施形態において、マトリックスは、細胞と共に使用される栄養製作物(factures)又はその他の薬剤を持続的に放出したり、患者の中で成長する組織を展開するための構造体を提供し得る。他の実施形態において、このマトリックスは単に、組織発生のための一時的なスカフォールドを提供する。このマトリックスは、粒子状形態(直径10マイクロメートル超のマクロ粒子、又は直径10マイクロメートル未満のミクロ粒子)であってよく、あるいは、構造的に安定した3次元インプラント(例えば、スカフォールド)の形態であってもよい。マトリックスは、立方体、シリンダー、チューブ、ブロック、フィルム、シート、又は適当な解剖学的な形態などの、スラリー、ヒドロゲル、又は三次元構造体であり得る。
本明細書で使用される用語「スカフォールド」は、一般に、細胞成長のテンプレートを提供する三次元多孔質構造体を指す。スカフォールドは、体内で時間の経過と共に分解する生分解性及び/又は生体吸収性材料で作製される。スカフォールドが分解する時間の長さは、材料の分子量に依存し得る。したがって、分子量の比較的大きい材料は、結果として構造的な一体性をより長い時間保持するポリマースカフォールドになり、分子量が比較的少ない材料は、放出が遅く、スカフォールド寿命が短くなる。スカフォールドは当該技術分野において周知の方法で製作されてもよい。スカフォールドの形成に使用し得るポリマーの例としては、天然ポリマーと合成ポリマーが挙げられる。
本明細書で使用される用語「単離する」は、一般に、その自然環境から分離されている細胞を指す。この用語は、自然環境からの全体的な物理的分離、例えばドナー動物からの除去、を含む。好ましい実施形態では、単離細胞は組織内に存在しない。すなわち、単離細胞は、その細胞が通常は接触している近隣細胞から分離又は解離されている。好ましくは、細胞は細胞懸濁液として投与される。本明細書で使用される語句「細胞懸濁液」は、培地に接触していて、かつ、例えば、組織片を穏やかな粉砕にかけることによって、解離されている細胞を含む。
本明細書で使用される用語「調節する」は、一般に、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状(例えば、肺組織の変化などの疾患兆候)に係る炎症促進性メディエータの産生、作用、及び/又は量を調整又は調節する手段を意味する。一実施形態において、用語「調節する」は、炎症促進性メディエータの産生を低減することを包含する。別の実施形態において、用語「調節する」は、炎症促進性メディエータの産生を抑制することを包含する。
本明細書に記載の様々な実施形態において、本発明は、分娩後組織、特に、臍組織に由来する始原細胞及び細胞集団を利用する、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る炎症促進性メディエータの産生を調節(例えば、低減又は抑制るための方法及び医薬組成物を特徴とする。これらの方法及び医薬組成物は、このような炎症促進性メディエータの産生を調節(低減及び/又は抑制)することを意図している。更に、これらの方法及び医薬組成物は、所望により、脈管形成を刺激及び支持し、血流を改善し、肺組織を肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷から保護するために、このような疾患、障害、及び/又は損傷により損傷した肺組織を再生、修復、及び改善することを意図し得る。
本発明の医薬製剤及び方法に使用される、細胞、細胞集団、及び細胞溶解物、馴化培地などを含む調製物は、米国特許第7,524,489号及び第7,510,873号、並びに米国特許出願公開2005/0058634号に、また本明細書に詳細に記載されている。
II.臍帯組織由来細胞の分離及び増殖
本明細書で説明される方法によれば、哺乳類の臍帯は、満期妊娠若しくは早期妊娠のいずれかの終了時に、又はその直後に、例えば、出産後の圧出の後に回収される。この分娩後組織は、出産場所から、実験室へと、フラスコ、ビーカー、培養皿、又は袋などの滅菌容器に入れて移送することができる。この容器は、溶液又は培地を含み得、それらの溶液又は培地としては、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(ダルベッコ最小必須培地とも呼ばれる)若しくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの食塩水、又はウィスコンシン大学液若しくはペルフルオロ化合物溶液などの、移植に使用される器官の移送のために使用される、任意の溶液が挙げられるがこれらに限定されない。限定するものではないが、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、及びナイスタチンなどの、1種以上の抗生物質及び/又は抗真菌剤を、培地若しくは緩衝液に添加することができる。分娩後組織は、ヘパリン含有溶液などの抗凝固溶液ですすぐことができる。UTCの抽出の前に、この組織を約4〜10℃に保つことが好ましい。この組織は、UTCの抽出の前に凍結させないことが、更により好ましい。
UTCの単離は、無菌環境で発生することが好ましい。臍帯は、当該技術分野において既知の手段によって、胎盤から分離することができる。血液及び残滓は、UTCの単離前に、分娩後組織から除去することが好ましい。例えば、この分娩後組織は、リン酸緩衝生理食塩水を含むがこれに限定されない緩衝溶液で洗浄することができる。この洗浄緩衝液はまた、1種以上の抗真菌剤及び/又は抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、及びナイスタチンを含むがこれらに限定されない)も含み得る。
臍帯又はその断片若しくは切片を含む分娩後組織は、機械的な力(細断力又は剪断力)によって脱凝集されるのが好ましい。現時点で好ましい実施形態では、この単離手順はまた、酵素消化プロセスも利用する。多くの酵素が、培養下での増殖を促進するための、複合組織マトリックスからの個々の細胞の単離に関して有用であることは、当該技術分野において既知である。消化酵素は、弱い消化性(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ、及び中性プロテアーゼであるディスパーゼ)から、強い消化性(例えば、パパイン及びトリプシン)まで様々であり、商業的に入手可能である。かかる酵素の非網羅的なリストとしては、粘液溶解酵素活性、メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン、又はエラスターゼなど)、及びデオキシリボヌクレアーゼが挙げられる。メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、及び粘液溶解活性から選択される酵素活性が、現時点で好ましい。例えば、コラゲナーゼは、組織から様々な細胞を単離するために有用であることが既知である。デオキシリボヌクレアーゼは、一本鎖DNAを消化することができ、単離中の細胞凝集を最小限に抑えることができる。好ましい方法には、例えばコラゲナーゼ及びディスパーゼで、又はコラゲナーゼ、ディスパーゼ及びヒアルロニダーゼで、酵素処置することが含まれる。当業者には、細胞を様々な組織供給源体から単離するための多くのこのような酵素処置が当該技術分野において既知であり、かかる処理が、新規な又は追加の酵素又は酵素の組み合わせの、本発明の細胞を単離する際の有用性について評価するのに向いていることが理解されよう。好ましい酵素処置は、約0.5〜2時間、又はそれ以上であり得る。いくつかの実施形態において、組織は、この解離段階の酵素処理の間、37℃でインキュベートされる。本発明のいくつかの実施形態において、分娩後組織は、例えば、胎盤の新生児、新生児/母体、及び母体の態様などの、様々な組織の態様を含む切片へと分離される。次いで、分離された切片は、本明細書で説明される方法にしたがって、機械的解離及び/又は酵素的解離によって解離される。新生児系統又は母体系統の細胞は、当該技術分野において既知の任意の手段によって、例えば、Y染色体の核型分析又はインサイチュハイブリダイゼーションによって、同定することができる。
単離された細胞を用いて、細胞培養を開始又は播種することができる。コーティングされた若しくはコーティングされていない組織培養用滅菌容器(細胞外マトリックス又はリガンド、例えば、ラミニン、コラーゲン(天然、変性、又は架橋)、ゼラチン、フィブロネクチン、及びその他の細胞外マトリックスタンパク質のコーティングを含む)に、単離細胞を移す。細胞は、細胞の成長を持続することのできる任意の培養培地で培養し、培養培地としては、例えば、DMEM(高又は低グルコース)、改変DMEM、DMEM/MCDB 201、イーグル基本培地、ハムF10培地(F10)、ハムF−12培地(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、DMEM/F12、RPMI 1640、及び商標名CELL−GRO−FREE(登録商標)(Mediatech,Inc.(Herndon,VA))として販売されている無血清培地などが挙げられるが、これらに限定されない。培養培地には、例えば、好ましくは約2〜15%(v/v)のウシ胎児血清(FBS);ウマ血清(ES);ヒト血清(HS);好ましくは約0.001%(v/v)のβ−メルカプトエタノール(BME又は2−ME);1種以上の増殖因子、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、白血球阻止因子(LIF)、及びエリスロポエチン(EPO);L−バリンを含むアミノ酸;例えば、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、及びナイスタチンなど(単独又は組み合わせ)の、微生物汚染を制御するための1種以上の抗生物質及び/又は抗真菌剤を含む、1種以上の成分を添加することができる。この培養培地は、好ましくは、増殖培地(例えば、DMEM−低グルコース、血清、BME、及び抗生物質)を含む。
細胞は、細胞増殖を可能にする密度で、培養容器中に播種される。一実施形態において、細胞は、空気中約0体積パーセント〜約5体積パーセントのCOで培養される。いくつかの他の実施形態において、細胞は、空気中約2パーセント〜約25パーセントのOで、好ましくは、空気中約5パーセント〜約20パーセントのOで培養される。細胞は、好ましくは、約25℃〜約40℃の温度で培養され、より好ましくは、約37℃の温度で培養される。細胞は、好ましくは、インキュベーター内で培養される。培養容器内の培地は、静的状態とすることができ、又は例えば、バイオリアクターを使用して、攪拌することもできる。UTCは、好ましくは、低酸化ストレス下で(例えば、グルタチオン、ビタミンC、カタラーゼ、ビタミンE、N−アセチルシステインを添加して)増殖される。本明細書で使用される「低酸化ストレス」とは、フリーラジカルが培養細胞に損傷を与えないか、又は損傷が最低限に抑えられる条件を指す。
最も適切な細胞培地、培地調製、及び細胞培養技術の選択方法は、当該技術分野において周知であり、Doyleら(編)、1995年、「Cell & Tissue Culture:Laboratory Procedures」、John Wiley & Sons(Chichester);Ho及びWang(編)、1991年、「Animal Cell Bioreactors」、Butterworth−Heinemann(Boston)を含む様々な出典に説明されており、これら文献は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明のいくつかの実施形態において、UTCは継代されるか、又は、最初に使用したものと同じタイプ若しくは異なるタイプの新鮮培地を収容する別個の培養容器に取り出され、そこで細胞集団を有糸分裂的に増殖させることができる。本発明の細胞は、継代数0と老化との間の任意の時点で使用することができる。この細胞は、好ましくは、約3回〜約25回継代され、より好ましくは、約4回〜約12回継代され、好ましくは、10回又は11回継代される。クローニング及び/又はサブクローニングを実行することにより、細胞のクローン集団が単離されていることを確認することができる。
本発明のいくつかの態様において、分娩後組織内に存在する種々の細胞型は、そのUTCを単離することができるサブ集団へと分画される。分画又は選択は、細胞分離のための標準的技術を使用して達成することができ、標準的技術としては、分娩後組織をその構成細胞へと解離する酵素処理と、それに続く特定の細胞型のクローニング及び選択(例えば、限定されるものではないが、形態学的マーカー及び/又は生化学的マーカーに基づく選択);所望される細胞の選択的増殖(正の選択);不必要な細胞の選択的破壊(負の選択);例えば大豆凝集素を使用するような、混合集団中での示差的な細胞凝集能に基づく分離;凍結−解凍手順;混合集団中での示差的な細胞接着特性;濾過;従来の遠心分離法及びゾーン遠心分離法;遠心溶出法(対向流遠心分離法);単位重力分離法;向流分布法;電気泳動;及び蛍光活性化セルソーター(FACS)が挙げられるが、これらに限定されない。
培養培地は、例えば、必要に応じて、例えばピペットで、皿から培地を慎重に吸引して、新鮮培地を補充することによって変更される。インキュベーションは、十分な数又は密度の細胞が皿内に蓄積するまで継続される。その後、存在する元の外植された組織切片を全て取り除き、残りの細胞を、標準的な技術を用いたトリプシン処理又はセルスクレーパを使用して、皿から剥がすことができる。トリプシン処理の後、細胞を収集して、新鮮培地に取り出し、上記のようにインキュベートする。いくつかの実施形態において、培地は、トリプシン処理の約24時間後に、少なくとも1回交換して、あらゆる浮遊細胞を除去する。培養物に残存する細胞が、UTCであると考えられる。
UTCは、凍結保存することができる。したがって、以下でより詳細に説明される好ましい実施形態では、自家移入のための(母又は子のいずれかに関する)UTCは、子供の誕生後に適切な分娩後組織から誘導し、次いで、後に移植に必要とされる事象で利用可能となるように、誘導したUTCを凍結保存することができる。
III.臍帯組織由来細胞の特性
特許請求されている方法、用途、医薬組成物及びキットでの使用に好適な臍組織由来のUTCの例は、2004年6月10日にアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)(10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110)に寄託され、次のATCC受託番号、即ち、(1)菌株表示UMB 022803(P7)は受託番号PTA−6067、(2)菌株表示UMB 022803(P17)は受託番号PTA−6068、が指定された。
UTCは、例えば、増殖特性(例えば、集団倍加能力、倍加時間、老化までの継代数)、核型分析(例えば、正常核型;母体系統又は新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)、免疫組織化学及び/又は免疫細胞化学(例えば、エピトープの検出に関する)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、及び従来のPCR))、タンパク質アレイ、タンパク質分泌(例えば、血漿凝固アッセイ又はPDC−馴化培地の分析によるもの、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるもの)、混合リンパ球反応(例えば、PBMCの刺激の尺度として)、並びに/あるいは当技術分野において既知の他の方法によって、特徴付けることができる。
したがって、本発明における使用に好適なUTCは、次の特性のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせによって定義される:(1)生育的特徴、(2)特定の蛋白の産生、(3)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に対比して、特定の遺伝子について増加する遺伝子発現、(4)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に対比して、特定の遺伝子について減少する遺伝子発現によって特徴付けられるもの、(5)栄養因子の分泌、又は栄養因子の分泌の不足、(6)発現hTERT又はテロメラーゼの発現の不足。
本発明の一実施形態において、UCTは、次の生育的特徴のうちの1つ又は2つ以上を有することによって特徴付けることができる:培養液中での生育にLバリンを必要とする;約5%〜約20%の酸素を含有する大気中での増殖が可能である;細胞老化に到達する前に培養液中で少なくとも約40倍加の可能性を有する;コーティングされた若しくはコーティングされていない組織培養容器(ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、又はフィブロネクチンのコーティングを含む)上に付着して増殖する。特定の実施形態において、UCTは、その細胞が継代される際に維持される、正常核型を有する。核型分析に関する方法は、当業者に利用可能であり、既知である。
他の実施形態において、UTCは、(1)組織因子、ビメンチン、及びα−平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つの産生;(2)フローサイトメトリーによって検出されるような、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−A、B、C細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つの産生を含む、特定のタンパク質の産生によって特徴付けることができる。他の実施形態では、UTCは、フローサイトメトリーによって検出されるような、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、及びHLA−DR、DP、DQ細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つの産生の欠如によって、特徴付けることができる。一実施形態において、細胞は、CD45及びCD117の産生の欠如によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、細胞は、組織因子、ビメンチン、及びα−平滑筋アクチンのうちの少なくとも2つを産生する。他の実施形態において、細胞は、タンパク質組織因子、ビメンチン、及びα−平滑筋アクチンの3つ全てを産生する。
他の実施形態では、UTCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8;レチクロン1;ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(黒色腫増殖刺激活性、α);ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド6(顆粒球走化性タンパク質2);ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3;腫瘍壊死因子、及びα誘導タンパク質3のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子に関して増大する、遺伝子の発現によって特徴付けることができる。一実施形態において、UTCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8、レチキュロン1、及びケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3、腫瘍壊死因子のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子に関して増大する、遺伝子の発現によって特徴付けることができる。
更に別の実施形態において、UTCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞のヒト細胞と比較して、低身長ホメオボックス2;熱ショック27kDaタンパク質2;ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド12(ストロマ細胞由来因子1);エラスチン(大動脈弁上狭窄症、ウィリアムズ−ビューレン症候群);ホモサピエンスmRNA;cDNA DKFZp586M2022(クローンDKFZp586M2022由来);間葉ホメオボックス2(増殖停止特異的ホメオボックス);sine oculisホメオボックスホモログ1(ドロソフィラ);クリスタリン、αB;形態形成のdisheveled関連アクチベータ2;DKFZP586B2420タンパク質;ニューラリン1の類似体;テトラネクチン(プラスミノーゲン結合タンパク質);src相同性3(SH3)及びシステイン豊富ドメイン;コレステロール25−ヒドロキシラーゼ;runt関連転写因子3;インターロイキン11受容体α;プロコラーゲンC−エンドペプチダーゼエンハンサー;frizzledホモログ7(ドロソフィラ);仮定的遺伝子BC008967;コラーゲン、VIII型、α1;テネイシンC(ヘキサブラキオン);iroquoisホメオボックスタンパク質5;へファエスチン;インテグリンβ8;シナプス小胞糖タンパク質2;神経芽腫、腫瘍形成抑制1;インスリン様増殖因子結合タンパク質2、36kDa;ホモサピエンスcDNA FLJ12280fis、クローンMAMMA1001744;サイトカイン受容体様因子1;カリウム中間体/低コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー4;インテグリン、β7;PDZ結合モチーフ(TAZ)を有する転写コアクチベータ;sine oculisホメオボックスホモログ2(ドロソフィラ);KIAA1034タンパク質;小胞関連膜タンパク質5(ミオブレビン);EGF含有フィビュリン様細胞外マトリックスタンパク質1;初期成長応答3;distal−lessホメオボックス5;仮定的タンパク質FLJ20373;アルド−ケト還元酵素ファミリー1、メンバーC3(3αヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、II型);バイグリカン;PDZ結合モチーフ(TAZ)を有する転写コアクチベータ;フィブロネクチン1;プロエンケファリン;インテグリン、β様1(EGF様リピートドメインを有する);ホモサピエンスmRNA完全長インサートcDNAクローンEUROIMAGE 1968422;EphA3;KIAA0367タンパク質;ナトリウム利尿ペプチド受容体C/グアニル酸シクラーゼC(心房ナトリウム利尿ペプチド受容体C);仮定的タンパク質FLJ14054;ホモサピエンスmRNA;cDNA DKFZp564B222(クローンDKFZp564B222由来);BCL2/アデノウイルスE1B 19kDa相互作用タンパク質3様;AE結合タンパク質1;及びシトクロムcオキシダーゼサブユニットVIIaポリペプチド1(筋肉)のうちの、少なくとも1つをコードする遺伝子に関して減少する、遺伝子の発現によって特徴付けることができる。
他の実施形態において、UTCは、細胞が培養液中でインビトロで培養されている時に検出される、MCP−1、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、FGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIP−1β、I309、MDC、RANTES、及びTIMPのうちの少なくとも1つの分泌によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、UTCは、細胞が培養液中でインビトロで培養された時、TGF−β2、ANG2、PDGFbb、MIP1α、及びVEGFのうちの少なくとも1つ分泌の不足によって特徴付けることができる。
好ましい実施形態において、細胞は、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。したがって、本発明の一実施形態は、hTERT又はテロメラーゼ(hTert)を発現せず、かつ本明細書で開示されている特性の1つ又は2つ以上を有する、臍由来細胞である。
好ましい実施形態において、細胞は、上記の特性のうちの2つ以上を含む。これらの特性のうち3つ、4つ、5つ、又はそれ以上を含む細胞が、より好ましい。更により好ましい細胞は、上記の特性のうち6つ、7つ、8つ、9つ、10,11、又はそれ以上を含むUTCである。更により好ましい細胞は、上記の特性の全てを含む細胞である。
一実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まない臍帯組織から誘導され、培養下で自己複製及び増殖が可能であり、増殖のためにL−バリンを必要とし、少なくとも約5%の酸素中で増殖可能であり、かつ次の特性のうち少なくとも1つを含む:(1)培養液中で少なく約40回倍加する可能性力;(2)コーティングされた若しくはコーティングされていない組織培養容器(ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、又はフィブロネクチンのコーティングを含む)上に付着して増殖する能力;(3)ビメンチン及びα−平滑筋アクチンの産生;(4)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の産生;(5)遺伝子の発現が、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8及びレチクロン1をコードする遺伝子について増大する。いくつかの実施形態において、このようなUTCはCD45及びCD117を産生しない。
一実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。UTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31、CD34、又はCD45を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。UTCは、所望により、酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又はCD31又はCD34を発現しない、及び/又はヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する、及び/又は少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及CD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。これらUTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31又はCD34を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
代替実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。これらUTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31又はCD34を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
別の実施形態において、該細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD34、CD31の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。これらUTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD45を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
更に別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD45、CD34、CD31の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。UTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iii)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(iv)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
代替実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD45、CD34、CD31の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。UTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iii)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(iv)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。
更に別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、以下の特性を有する:CD117及びCD45の産生の欠如;hTERT又はテロメラーゼの発現の欠如;酸化低比重リポタンパク質受容体1、レチクロン、ケモカイン受容体リガンド3の発現、ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルの増加;少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する;CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の発現。別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、以下の特性を有する:CD117及びCD45の産生の欠如;hTERT又はテロメラーゼの発現の欠如;ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルの増加;少なくとも肺組織の細胞内への分化の可能性;及びCD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の発現。更に別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、以下の特性を有する:CD117及びCD45の産生の欠如;hTERT又はテロメラーゼの発現の欠如;ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチキュロン1の発現レベルの増加;及びCD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の発現。
更に別の実施形態において、UTCは、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、以下の特性を有する:培養液中で少なくとも40回倍加する可能性;CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−、B、Cの産生;フローサイトメトリーによって検出された時、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、及びHLA−DR、DP、DQの産生の欠如;線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8、レチクロン1、及びケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3の発現の増加;及びhTERT又はテロメラーゼを発現しない。
上記のUTCは、肺疾患を患う患者における肺疾患の炎症促進性メディエータの産生を調節(例えば、低減及び/又は抑制)する方法において使用することができる。また、これらUTCは、例えば、肺疾患を患う患者における肺疾患の炎症促進性メディエータの産生を調節(低減及び/又は抑制)するための医薬組成物にも使用することができる。この場合、かかる医薬組成物は、これらの特性有する細胞と、薬学的に許容されるキャリアとを含み、本明細書で記載され、例示されている方法及び医薬組成物を、作製、使用、及び実践するためのキットで使用することができる。加えて、上記のUTCは、本明細書で記載され、例示されている方法及び医薬組成物を、作製、使用、及び実践するために使用可能な、細胞抽出物及び細胞下分画などの調製物を作製するために使用することができる。
様々な表現型に導かれる株に沿って分化する潜在能力を有する特定の細胞は、不安定であるため、自然発生的に分化する場合がある。現在、本発明と共に使用するのに好ましいのは、例えば、筋芽細胞、骨格筋、血管平滑筋、周細胞、血管形成、血管由来、血管原性、又は血管内皮細胞系列に沿って自発的に分化しないUTCである。好ましい細胞は、増殖培地中で増殖させた場合に、細胞表面上に産生される細胞マーカーがほぼ安定しており、かつ例えば、商標名GENECHIP(Affymetrix,Inc.(Santa Clara,CA))として販売されている医療診断検査を用いて判定される様々な遺伝子の発現パターンがほぼ安定している。この細胞は、例えば、継代時及び複数回の集団倍加を通じて、それらの表面マーカー特性を、実質的に一定なまま保持する。
IV.臍帯組織由来細胞の集団
本発明の別の態様は、肺疾患を有する患者における炎症促進性メディエータの産生を低減(又は、産生を抑制)する際に上記のUTCの集団を使用することを特徴とする。いくつかの実施形態において、細胞集団は、不均質であり得る。本発明の不均質な細胞集団は、本発明のUTCを少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%含み得る。本発明の不均質細胞集団は更に、幹細胞又はその他の前駆細胞(例えば筋芽細胞又はその他の筋肉前駆細胞、血管芽細胞、又は血管前駆細胞)を含んでもよく、あるいは更に、完全に分化した骨格筋細胞、平滑筋細胞、周細胞、又は血管内皮細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、この集団は、実質的に均質であり、すなわち、実質的にUTCのみ(好ましくは、少なくとも約96%、97%、98%、99%以上のUTC)を含む。本発明の均質な細胞集団は、臍由来細胞から成る。臍由来細胞の均質な集団は、好ましくは、母体系統の細胞を含まない。細胞集団の均質性は、当該技術分野において既知の任意の方法によって、例えば、細胞選別(例えば、フローサイトメトリー)によって、又は既知の方法によるクローン増殖によって、達成することができる。均質なUTC集団は、分娩後由来細胞のクローン細胞系を含み得る。そのような集団は、極めて望ましい機能性を有する細胞クローンが単離されている場合、特に有用である。
本発明の一実施形態において、UTCの実質的に均質な集団が使用される。一実施形態において、この実質的に均質な集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117の発生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しないUTCを含む。UTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31、CD34、又はCD45を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。別の実施形態において、この集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しないUTCを含む。UTCは、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31又はCD34を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。本発明の別の実施形態において、この集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD34及びCD31の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しないUTCを含む。更に別の実施形態において、この集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD45、CD34、CD31及び/又はテロメラーゼを産生しないUTCを含む。代替実施形態において、臍由来細胞の実質的に均質な集合は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、以下の特性を有する:培養液中で少なくとも40回倍加する可能性;CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−、B、Cの産生;CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、及びHLA−DR、DP、DQの産生の欠如;線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8、レチクロン1、及びケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3の発現の増加;及びhTERT又はテロメラーゼを発現しない。
本発明の別の実施形態において、UTCの均質な集合が使用される。一実施形態において、この実質的に均質な集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117の発生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しないUTCを含む。この集合は、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31、CD34、又はCD45を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。別の実施形態において、均質なUTC集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。この集合は、所望により、(i)酸化された低密度リポタンパク質受容体1、レチキュロン、ケモカイン受容体リガンド3、及び/又は顆粒球走化性タンパク質を発現する、及び/又は(ii)CD31又はCD34を発現しない、及び/又は(iii)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、及び/又は(iv)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、及び/又は(v)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する。代替実施形態において、均質なUTC集団は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD34、CD31の産生がなく、hTERT、及び/又はテロメラーゼを発現しない。更に別の実施形態において、均質な集合は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117、CD45、CD34、及びCD31の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。代替実施形態において、臍由来細胞の実質的に均質な集合は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、以下の特性を有する:CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−、B、Cの産生;CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、及びHLA−DR,DP,DQの産生の欠如;線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8、レチクロン1、及びケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3の発現の増加;及びhTERT又はテロメラーゼを発現しない。
また本明細書で提供されるのは、血管平滑筋、血管内皮、周皮細胞に沿った幹細胞分化を刺激するような、1つ又は2つ以上の因子の存在下、又は条件下において、培養された細胞集団の利用である。そのような因子は、当該技術分野において既知であり、当業者には、分化に好適な条件の決定は、慣用の実験方法を使用して達成することができる点が、理解されるであろう。そのような条件の最適化は、統計的実験計画及び分析によって達成することができ、例えば、応答曲面法により、生物学的培養での、複数の変数の同時最適化が可能となる。現在好ましい因子としては、成長又は栄養因子、ケモカイン、サイトカイン、細胞生産物、脱メチル化剤、及び、例えば、血管新生、血管形成、血管原性、骨格筋、血管平滑筋、周細胞、又は血管内皮の経路又は系統に沿った幹細胞の分化を刺激することが既知であるか又は後に判定されるその他の刺激が含まれるが、これらに限定されない。
V.臍帯組織由来細胞の遺伝子組み換え
UTCは、治療に有用な遺伝子生成物を産生するために(例えば、付加的な血管形成若しくは成長を促進若しくは支持する血管形成剤を産生するために、又は肺障害の領域に対して内皮前駆細胞を補充する因子を産生するために)遺伝子組み換えを行うこともできる。内皮前駆細胞は、特に虚血イベントの後に、血管形成及び血流を促進する(Urbich C and Dimmeler S.,Circ.Res.,2004;95:343〜53)。内皮細胞補充の役割を担う因子には、VEGF、ストロマ由来因子−1(SDF−1)、エリスロポエチン(EPO)、G−CSF、スタチン、ストロゲン、PPAR−γ、CXCR4、FGF、及びHGFが挙げられるがこれらに限定されない。遺伝子組換えは、様々なベクターのうちのいずれかを使用して達成することができ、それらのベクターとしては、組み込みウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター若しくはアデノ随伴ウイルスベクター;非組み込み複製ベクター、例えば、パピローマウイルスベクター、SV40ベクター、アデノウイルスベクター、又は複製欠陥ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。細胞内にDNAを導入する他の方法としては、リポソーム、電気穿孔法、粒子ガンの使用、又は直接的DNA注入によるものが挙げられる。
宿主細胞は、好ましくは、とりわけ、プロモーター配列若しくはエンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位などの、1つ又は2つ以上の適切な発現制御要素によって制御されるか、あるいは有効に関連するDNAで、形質転換又は形質移入される。任意のプロモーターを使用して、挿入遺伝子の発現を駆動することができる。例えば、ウイルスプロモーターとしては、CMVプロモーター/エンハンサー、SV40、パピローマウイルス、エプスタイン−バールウイルス、又はエラスチン遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、目的の遺伝子の発現を制御するために使用される、これらの制御要素が、遺伝子の調節発現を可能とすることにより、インビボで必要とされる場合にのみ、その産物が合成される。一過性発現が所望される場合には、構成的プロモーターが、好ましくは、非組み込みベクター及び/又は複製欠陥ベクター内で使用される。あるいは、誘導性プロモーターを使用して、必要とされる際に、挿入遺伝子の発現を駆動することが可能である。誘導性プロモーターとしては、メタロチオネイン及び熱ショックタンパク質に関連するものが挙げられるが、これらに限定されない。
外来DNAの導入後に、操作された細胞を、富化培地中で増殖させ、次いで、選択培地に切り替えることができる。外来DNA中の選択マーカーは、選択に耐性を付与し、細胞が、例えば、プラスミド上に、その染色体中に外来DNAを安定に組み込み、増殖して増殖巣を形成することを可能にし、次にこの増殖巣は、クローン化して細胞株へと増殖することができる。この方法は、有利には、遺伝子産物を発現する細胞株を操作するために、使用することができる。
本発明の細胞は、植え込み部位での炎症若しくは拒絶反応を促進する因子の発現を、「ノックアウト」又は「ノックダウン」するように、遺伝子組み換えすることができる。標的遺伝子発現レベル又は標的遺伝子産物活性レベルの低減のための、負調節技術を、以下で説明する。「負調節」とは、本明細書で使用するとき、調節処理の非存在下での標的遺伝子産物のレベル及び/又は活性に対する、標的遺伝子産物のレベル及び/又は活性の低減を指す。骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、周細胞、血管内皮細胞、又はこれらの前駆細胞に本来ある遺伝子発現は、例えば、相同組み換え技法を用いて遺伝子を不活性化することにより発現を阻害するなど、数多くの技法を用いて低減又はノックアウトすることができる。典型的には、タンパク質の重要領域をコードするエクソン(すなわち、その領域に対して5’側のエクソン)が、陽性選択マーカー、例えばneoによって干渉され、標的遺伝子からの正常なmRNAの産生が妨げられて、その遺伝子の不活性化がもたらされる。遺伝子はまた、遺伝子の一部に欠失を作り出すことによって、又は遺伝子全体を欠失させることによって、不活性化することもできる。ゲノム中で離間している、標的遺伝子に対して2つの相同な領域を有する、構築物を使用することによって、その2つの領域に介在する配列を、欠失させることができる(Mombaertsら、Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,1991;88:3084〜87)。アンチセンス、DNAザイム、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、及び標的遺伝子の発現を阻害する他のそのような分子もまた、標的遺伝子活性のレベルを低減するために使用することができる。例えば、主要組織適合遺伝子複合体(HLA)の発現を阻害する、アンチセンスRNA分子は、免疫反応に関して、最も汎用的であることが示されている。また更には、標的遺伝子活性のレベルを低減する際に、3重螺旋分子を利用することもできる。
VI.臍帯組織由来細胞から調製された細胞溶解物及び細胞可溶性画分。
他の一態様において、本発明は、UTCから調製された細胞溶解物及び細胞可溶性画分、又は、UTCを含む不均質若しくは均質細胞集団、並びに、骨格筋、血管平滑筋、周細胞、若しくは血管内皮経路に沿って分化するよう遺伝子組み換えされるか又は刺激された、臍帯組織由来細胞若しくはその集団を利用する。そのような溶解物及びその画分は、多くの有用性を有する。インビボでのUTC溶解物の可溶性画分(すなわち、実質的に膜を含まない)の使用により、例えば、拒絶反応、又は他の有害な免疫学的応答を誘発する可能性が最も高い、相当量の細胞表面タンパク質を導入することなく、有益な細胞内環境を、患者内で同種異系的に使用することが可能となる。細胞を溶解する方法は、当該技術分野において周知であり、機械的破壊、酵素破壊、若しくは化学的破壊、又はこれらの組み合わせの様々な手段を含む。このような細胞溶解物は、増殖培地中の細胞から、直接調製することができ、それゆえ、分泌された増殖因子などを含有するか、又は例えば、PBS若しくは他の溶液中で洗浄された、培地を含まない細胞から調製することができる。洗浄細胞は、元の集団密度よりも高い濃度で、再懸濁させることができる。
一実施形態では、例えば、細胞を破壊し、その後に細胞画分を分離しないことによって、細胞溶解物の全体が調製される。別の実施形態では、当該技術分野において既知の慣用的方法、例えば、遠心分離、濾過、又は同様の方法によって、細胞の可溶性画分から、細胞膜画分が分離される。
分娩後由来細胞の集団から調製される細胞溶解物又は細胞可溶性画分は、そのまま使用するか、例えば限外濾過若しくは凍結乾燥によって更に濃縮するか、又は更に乾燥させるか、部分的に精製するか、当該技術分野において既知の、薬学的に許容できるキャリア若しくは希釈剤と組み合わせるか、又は生物学的製剤、例えば薬学的に有用なタンパク質組成物などの、他の化合物と組み合わせることができる。細胞溶解物又はその画分は、インビトロ若しくはインビボで、単独で、又は、例えば自家若しくは同系の生細胞と共に使用することができる。細胞溶解物は、インビボに導入される場合には、治療部位で局所的に、又は遠隔に導入して、例ば、必要な細胞増殖因子を患者に提供することができる。インビボで細胞熔解物を使用することは、当該技術分野において既知であり、当業者は、本発明の範囲内において熔解物を使用する必要な手順を知っているであろう。
VII.臍帯組織由来細胞を含む医薬組成物及びマトリックス
別の態様において、本発明は、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る炎症促進性メディエータを調節する様々な方法において、UTC、UTC集団、UTCの成分及び産物を利用する医薬組成物を提供する。特定の実施形態は、生細胞(UTC単独、又は他の細胞型との混合)を含む医薬組成物を包含する。他の実施形態は、UTC細胞成分(例えば、細胞溶解物、可溶性細胞分画、馴化培地、ECM、又は前述のうちのいずれかの成分)、又は産物(例えば、UTCによって天然に、若しくは遺伝子組換えを通じて産生される、栄養因子及び他の生物学的因子、UTC培養物由来の馴化培地)を含む、医薬組成物を包含する。本発明において使用し得るUTC構成要素及び製品は、米国特許第7,524,489号、第7,510,873号、及び米国特許出願第2005/0058634に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。いずれの場合でも、この医薬組成物は、当該技術分野において既知の、抗炎症剤、抗アポトーシス剤、抗酸化剤、増殖因子、筋肉栄養因子、又は筋肉再生薬若しくは筋肉保護薬などの他の活性剤を更に含み得る。
本発明の一実施形態において、医薬組成物は、hUTCと薬学的に許容されるキャリアとを含む。本発明における使用に好適な薬学的に許容されるキャリアとしては、液体材料、反固体材料(例えば、ゲル)、及び固体材料(例えば、細胞スカフォールド及びマトリックス、管、シート、並びに当該技術分野において既知であり、かつ本明細書でより詳細に説明されているその他の材料)が挙げられる。これらの反固体材料及び固体材料は、身体内部での分解に抵抗するように(非生分解性)設計することができ、又はそれらの材料は、身体内部で分解するように(生分解性、生物浸食性)設計することができる。生分解性材料は、更に、生体再吸収性又は生体吸収性とすることができ、すなわち、その材料は、体液内に溶解して吸収される(水溶性インプラントが一例である)か、あるいは他の材料への転化によって、若しくは自然経路を通じた崩壊及び排出によって、分解され、最終的に身体から排出されることが可能である。生分解速度は、体内に植え込まれた後の望ましい放出速度によって異なり得る。
UTC生細胞を含む医薬組成物は、典型的には、液体、半個体(例えば、ゲル)、又は個体(例えば、血管又は肺の組織工学に関して適切であるような、マトリックス、スカフォールドなど)として製剤化される。液体組成物は、標的の血管又は骨格筋組織への生細胞の送達を達成するため、当該技術分野において既知の許容可能な任意の経路による投与用に製剤化される。典型的には、これらは、針付き注射器を介して、及び/又はカテーテル(ポンプ機器を伴うか若しくは伴わない)を介して、筋内送達、静脈送達、若しくは動脈内送達を含むがこれらに限定されない投与経路によって、拡散的な方法で、あるいは、肺の損傷、損壊、若しくは窮迫部位を標的とした方法での、注射若しくは注入を含む。
半固体若しくは固体キャリア中に生細胞を含む医薬組成物は、典型的に、肺の損傷、損壊、若しくは窮迫部位への外科的な植え込みのために配合される。液体組成物もまた、外科的手技によって投与することができる点が、理解されるであろう。具体的な実施形態では、半個体又は個体の医薬組成物は、非生分解性若しくは生分解性とすることができる、半透性のゲル、格子、細胞スカフォールドなどを含み得る。例えば、特定の実施形態において、外因性細胞を周囲から隔絶することが望ましいか又は適切である可能性があるが、依然として、周囲の肺細胞若しくは血管細胞に対して、その外因性細胞が生物由来分子(例えば、筋栄養因子、血管栄養因子、又は内皮前駆細胞補充因子)を分泌し送達することができる可能性がある。これらの実施形態では、細胞は、移植細胞を宿主組織から物理的に隔離する、非生分解性の選択的透過性障壁によって取り囲まれた、生きているUCT、又はUTCを含む細胞集団を含む、自律的移植片として製剤化され得る。そのような移植片は「免疫防護性」と称される場合があるが、これは、該移植片が、薬理学的に誘導された免疫抑制の非存在下で、免疫細胞及び巨大分子が移植細胞を死滅させるのを防ぐ能力を有するためである。
他の実施形態では、医薬組成物は、異なる様々な種類の分解性ゲル及びネットワークを利用し得る。例えば、持続放出性製剤に関して特に好適な分解性材料としては、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの、生体適合性ポリマーが挙げられる。
他の実施形態では、生分解性、好ましくは、生体再吸収性若しくは生体吸収性の、スカフォールド若しくはマトリックスの上、又はその中に、細胞を送達することが望ましいか又は適切であり得る。これらの典型的な3次元生体材料は、スカフォールドに付着されるか、スカフォールド内部に分散されるか、又はスカフォールド内に封入された細胞外マトリックス内に組み込まれる、生細胞を含む。内の標的部分にいったん植え込まれると、これらの移植片は宿主組織に一体化され、ここに移植細胞が徐々に定着する(例えば、Tresco,PAら、Adv.Drug Delivery Rev.,2000:42:3〜27を参照、またHutmacher,D.W.,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.,2001;12:107〜174を参照)。
生体適合性マトリックスは、ホモポリマー、コポリマー、及びブロックポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む天然ポリマー、改質天然ポリマー、又は合成生分解性ポリマーで構成され得る。概して、ポリマーは合成の元になるモノマーに基づいて命名されることに留意する。
好適な生分解性ポリマー若しくはポリマー類の例としては、フィブリン、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、トロンビン、ポリ(アミノ酸)、酸化セルロース、トロポエラスチン、絹、リボ核酸、デオキシリボ核酸、タンパク質、ポリヌクレオチド、再構成基底膜マトリックス、デンプン、デキストラン、アルギン酸塩、ヒアルロン、キチン、キトサン、アガロース、多糖類、ヒアルロン酸、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリエチレングリコール、脱細胞化組織、自己集合性ペプチド、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、それらの誘導体、及びそれらの混合物が挙げられる。グリコール酸及び乳酸の両方について、中間環状二量体は、一般に、重合に先行して調製及び精製される。これらの中間二量体はそれぞれ、グリコリド及びラクチドと呼ばれる。他の有用な生分解性ポリマー若しくはポリマー類には、脂肪族ポリエステル、ポリ(シュウ酸アルキレン)、チロシン由来ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリオルトエステル、オイルオキサエステル、ポリアミドエステル、アミノ基を含むポリオキサエステル、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリオキサレート、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(エステル)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミド、並びにそれらの混合物及びコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。追加的な有用な生分解性ポリマーとしては、L−乳酸及びD−乳酸のステレオポリマー、ビス(パラ−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸とのコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールのコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、α−アミノ酸のコポリマー、α−アミノ酸とカプロン酸とのコポリマー、α−ベンジルグルタメートとポリエチレングリコールとのコポリマー、コハク酸塩とポリ(グリコール)とのコポリマー、ポリホスファゼン、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。二成分系及び三成分系もまた想到される。
一般に、マトリックスとして用いられる適切な生分解性ポリマーは、意図された適用に適切であり、組織が成長し治癒されるまで十分に無傷のままであり、炎症反応若しくは有毒反応を引き起こさず、目的を果たした後に体内で代謝され、形成されるべき望ましい最終産物へと容易に加工され、許容できる品質保持期間を示し、容易に滅菌されるような機械的な特性を有するように、望ましい形で構成される。
本発明の一態様において、このマトリックスを形成するために用いられる生体適合性ポリマーは、ヒドロゲルの形態である。一般的に、ヒドロゲルは、自重の20%を超える水を吸収し、かつ明瞭な三次元構造を維持することのできる架橋ポリマー材料である。この定義には、水性環境で膨潤する乾燥架橋ポリマー、並びに水で膨潤させた材料が含まれる。ポリマーが生物由来のものであろうと、半合成的なものであろうと、又は完全に合成させたものであろうと、親水性ポリマーの母体を架橋してヒドロゲルを製造することができる。ヒドロゲルは、合成ポリマー材料から製造してもよい。このような合成ポリマーは、特性の範囲及び予想され得るロット間一様性に合わせて調整することができ、一般的に免疫原性の心配のない、信頼できる材料源になる。マトリックスは、米国特許第5,670,483号及び同第5,955,343号、米国特許出願第2002/0160471号、及びPCT特許出願第WO 02/062969号に記載されている、自己集合性ペプチドから形成されたヒドロゲルを含み得る。これらの文献はヒドロゲル形成自己集合性ペプチドに関係しているので、参照により本明細書に組み込まれる。
薬剤送達用途においてヒドロゲルを価値あるものにする特性としては、平衡膨潤度、吸着動力学、溶質透過性、及びこれらのインビボ性能特性が挙げられる。化合物の透過性の一部は、膨潤度すなわち含水量、及び生分解速度による。ゲルの機械的強度は膨潤強度に正比例することから、複合系により機械的強度を増強させるよう、基質にヒドロゲルを付着させることができることも、本発明に企図される範囲に含まれる良好な例である。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルを多孔質基材に浸透させて、ヒドロゲルの有用な送達特性と共に基材の機械強度を得ることもできる。
本発明で使用できるスカフォールド若しくはマトリックス(時に、「フレームワーク」と総称される)の非限定的な例としては、織物、編物、編組、メッシュ、不織布、及びねじれ編みなどの布状構造、多孔性発泡体、半多孔性発泡体、有孔フィルム若しくはシート、微粒子、ビーズ、及び球、並びに上記の構造を組み合わせた複合構造が挙げられる。不織性マットは、例えば、商標名VICRYL縫合糸(Ethicon,Inc.(Somerville,NJ))として販売されているグリコール酸と乳酸との吸収性合成コポリマー(PGA/PLA)で構成される繊維を用いて形成することができる。米国特許第6,355,699号に記載されているように、例えば、冷凍乾燥法又は凍結乾燥法などのプロセスにより作製された、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーからなる発泡体も利用することができる。自己集合性ペプチド(例えば、RAD16)などのヒドロゲルもまた、使用することができる。インサイチュ形成される分解性ネットワークも本発明における使用に好適である(例えば、Anseth,KSら、J.Controlled Release,2002;78−199−209;Wang,D.ら、Biomaterials,2003;24:3969〜3980;米国特許出願公開第2002/0022676を参照)。これらの、インサイチュ形成される材料は、注射に好適な流体として製剤化され、次いで、インサイチュ又はインビボで様々な手段(例えば、温度、pH、露光の変更)によって誘因されて、ヒドロゲルを形成することができる。
別の実施形態では、このフレームワークは、生体吸収性材料、例えば、PGA、PLA、PCLのコポリマー若しくはブレンド、又はヒアルロン酸から作製されたマルチフィラメント糸で構成することができる、フェルトである。この糸は、圧着、切断、カーディング、及びニードリングからなる標準的なテキスタイル加工技術を使用して、フェルトにされる。別の実施形態では、細胞は、複合材料構造体とすることができる発泡体スカフォールド上に播種される。
上記の多くの実施形態において、フレームワークは、血管形状などの有用な形状に成型することができる。更には、UTCは、例えば、繊維芽細胞含有GDC血管内コイルを調製するために使用される方式に対応する方式で、事前形成された非分解性の、外科用装置又は植え込み可能装置上に、培養することができる点が、理解されるであろう(Marx,W.F.ら、Am.J.Neuroradiol.,2001;22:323〜333)。
これらのマトリックス、スカフォールド、又は装置は、細胞付着を増強するために、細胞の接種の前に処理することができる。例えば、接種の前に、ナイロンマトリックスは、0.1モルの酢酸で処理して、ポリリシン、PBS、及び/又はコラーゲン中でインキュベートすることにより、そのナイロンをコーティングすることができる。ポリスチレンは、硫酸を使用して、同様に処理することができる。フレームワークの外側表面もまた、そのフレームワークの血漿コーティング、あるいはタンパク質(例えば、コラーゲン、弾性繊維、細網繊維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン硫酸、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸)、遺伝子材料(例えばサイトカイン及び増殖因子)、細胞マトリックス、並びに/又はその他の材料(細胞の生存及び分化に影響を与える因子のうち、ゼラチン、アルギン酸塩、寒天、アガロース、及び植物ゴムなどを含むがこれらに限定されない)のうち1種以上の添加などによって、細胞の付着若しくは増殖、及び組織の分化を改善するように、改変することができる。
UTC含有フレームワークは、当該技術分野において既知の方法に従って調製される。例えば、細胞は、準集密又は集密まで、培養容器内で自由に増殖させて、その培養物から取り上げ、フレームワーク上に接種することができる。必要に応じて、細胞の接種前、接種中、若しくは接種後に、培養培地に増殖因子を添加することにより、分化及び組織形成を誘発させることができる。あるいは、フレームワーク上での細胞の増殖が増強されるように、又は移植片の拒絶のリスクが低減されるように、フレームワーク自体を改変することができる。それゆえ、1種以上の生物学的に活性な化合物を、局所放出のために、フレームワークに添加することができ、それらの化合物としては、抗炎症化合物、免疫抑制剤、又は増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない。
UTC、UTCの一部、若しくはUTCを含む細胞集団、又はUTCの構成要素又はUTCによって産生される製品を様々な方法で用いて、肺細胞及び組織の修復、再生、及び改善を支持及び促進し、血流を改善し、特に、肺疾患患者における血管新生を刺激及び/又は支持することができる。そのような利用は、インビトロ法、エクスビボ法、及びインビボ法を包含する。
本発明の特定の実施形態は、肺損傷又は肺障害を治療するための、血管の直接の修復、再生、若しくは置換、又は、血管の修復、再生、若しくは置換の支持を目的とする。
UTCは、単独で(例えば、実質的に均質な集団として)、又は他の細胞との混合物として、投与することができる。上述のように、UTCは、マトリックス若しくはスカフォールドを使用して、又は従来の薬学的に許容されるキャリアを使用して、医薬品に製剤化され、投与されることができる。UTCが他の細胞と共に投与される場合、それらのUTCは、他の細胞と同時に、又は逐次的に(他の細胞より前又は後のいずれかで)投与することができる。UTCと併用投与してもよい細胞には、筋細胞、肺組織細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周細胞、血管内皮細胞、若しくは血管内皮前駆細胞、及び/又は他の多分化能若しくは多能幹細胞が挙げられるがこれらに限定されない。種々の型の細胞を、投与の直前若しくは少し前に、UTCと混合することができ、又はそれらの細胞は、投与前の一定期間にわたって、一緒に共培養することができる。
UTCは、当該技術分野において既知の、抗炎症薬、抗アポトーシス薬、抗酸化剤、増殖因子、血管形成因子、又は、筋再生薬若しくは筋保護薬のような、他の有益な薬剤若しくは生物由来分子又は他の活性薬剤と共に投与することができる。UTCが他の薬剤と共に投与される場合、それらのUTCは、単一の医薬組成物として一緒に、又は別個の医薬組成物として、他の薬剤と同時に、若しくは逐次的に(他の薬剤の投与より前又は後のいずれかで)、投与することができる。他の薬剤は、当該技術分野の医師が適切だと判断した場合、植え込み前に開始して回復経過全体にわたって継続する治療レジメンの一部であってよく、あるいは、植え込み時、又は更には植え込みの後に開始する治療レジメンの一部であってもよい。
一実施形態において、UTCは、未分化細胞として、すなわち、増殖培地中で培養されたものとして投与される。あるいは、UTCは、培養中に、望ましい肺組織表現型、例えば、血管平滑筋、周細胞、又は、血管内皮表現型への分化を刺激する条件に曝露した後に、投与することができる。
本発明の細胞は、肺の損傷、損壊、若しくは窮迫部位に、外科的に植え込む、注射する、送達する(例えば、カテーテル、注射器、シャント、ステント、マイクロカテーテル、又はポンプによる)、ないしは別の方法で直接的又は間接的に投与することができる。本発明の細胞、若しくはその組成物の投与経路には、静脈経路、筋肉経路、皮下経路、鼻内経路、髄腔内経路、大嚢内経路、若しくは針付き注射器を介した経路、又はカテーテル(ポンプ機器を伴うか若しくは伴わない)を介した経路が挙げられるが、これらに限定されない。
細胞が、半固体又は固体の装置内に投与される場合、体内の正確な場所内への外科的移植が、典型的には、好適な投与手段である。しかしながら、液体若しくは流体の医薬組成物は、血液を通じて投与されるか、又は罹患した肺組織内に(例えば、拡散したALI又はARDSの場合のような拡散性の患部全体に)直接投与されてもよい。UTCのマイグレーションは、化学的シグナル、増殖因子、又はカルパインによって導くことができる。
臍帯組織由来細胞、又は、臍帯組織由来細胞を含む組成物及び/又はマトリックスは、マイクロカテーテル、体内カテーテル法(intracatheterization)、又はミニポンプを介して部位に送達することができる。溶媒賦形剤又はキャリアは、患者に対し、特に、細胞分化が誘導されるべき部位に対し局所的に投与するために、薬学的に許容されることが既知である任意のものであり得る。例としては、液体培地、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、滅菌生理食塩水、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、リーボビッツ培地(L15、Invitrogen(Carlsbad,CA))、滅菌ブドウ糖液、及び他の任意の生理学的に許容される液体が挙げられる。
他の実施形態は、薬学的に許容されるキャリア及びUTC細胞成分(例えば、細胞溶解物又はその成分)、若しくは産物(例えば、UTCによって天然に、若しくは、遺伝子操作を通じて産生された栄養因子及び他の生物学的因子、UTC培養由来の馴化培地)、又は、UTC成長培地、若しくは、成長培地から精製された産物を含む治療組成物を投与することによって、肺損傷又は肺障害の病状に係る炎症促進性メディエータを調節する方法を包含する。いくつかの実施形態において、この生物学的因子はFGF及びHGFである。これらの方法は、当該技術分野において既知の、増殖因子、血管形成因子、又は筋再生薬若しくは筋保護薬などの、他の活性薬剤を投与することを更に含み得る。
UTC、又は本明細書に記述されている任意の他の治療組成物若しくは医薬組成物を投与するための剤形及びレジメンは、個々の患者の病状(例えば、肺障害事象に由来する損傷若しくは障害の性質および程度、年齢、性別、体重、及び一般的医療状態、並びに開業医に既知である他の因子)を考慮して、正しい医療行為に従って開発される。それゆえ、患者に投与される医薬組成物の有効量は、当該技術分野において既知のこれらの考慮事項によって決定される。
UTCは、混合リンパ球反応における同種のPBMCを刺激しないことが示されている。したがって、場合によっては、同種、又は更には異種による、UTCの移植でさえ許容され得る。いくつかの実施形態では、UTC自体が免疫抑制剤効果を提供し、それによって移植されたUTCの宿主拒絶反応を妨げる。このような例では、細胞治療中の薬理学的な免疫抑制は、必要でなくなる可能性がある。
しかしながら、他の場合には、細胞療法を開始する前に、患者を薬理学的に免疫抑制することが望ましいか、又は適切な場合がある。このことは、全身性若しくは局所性の免疫抑制剤の使用を通じて達成することができ、又は上述のように、封入装置内の細胞を送達することによって達成することができる。移植細胞に対する免疫反応を低減若しくは排除するための、これらの手段及び他の手段は、当該技術分野において既知である。代替案として、上述のように、UTCを遺伝子操作することにより、それらの免疫原性を低減することができる。
生きている患者における移植されたUTCの生存は、様々な走査技術、例えば、コンピュータ体軸断層撮影(CAT又はCT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、又は陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを用いて判定することができる。移植片生存の判定はまた、肺組織又は血管組織を取り除き、目視で、又は顕微鏡を介して、それらを検査することによって、死後に実施することもできる。あるいは、肺組織細胞、例えば、血管平滑筋細胞、周皮細胞、又は血管内皮細胞に特異的な染色で、細胞を処理することが可能である。移植細胞はまた、ローダミン標識マイクロスフェア若しくはフルオレセイン標識マイクロスフェア、ファストブルー、第二鉄微小粒子、ビスベンズアミド、又はβ−ガラクトシダーゼ若しくはβ−グルクロニダーゼなどの遺伝子導入されたリポーター遺伝子産物などの追跡染料の事前組み入れによっても、同定することができる。
別の態様において、本発明は、上記のように、血管新生を刺激及び/又は支持し、血流を改善し、肺損傷事象により傷つけられた又は損傷した肺組織を再生、修復、及び改善するための様々な方法においてUTC、UTC集団、UTCの成分及び産物を利用するキットを提供する。肺疾患、障害及び/若しくは損傷によって引き起こされた障害若しくは損傷の治療、又は、他の予定された治療のために用いられる場合、キットは、少なくともUTC及び薬学的に許容されるキャリア(液体、半固体、又は固体)を含む1つ又は2つ以上の細胞集団を含み得る。このキットはまた、例えば注射によって細胞を投与する手段を、任意選択的に含み得る。このキットは、細胞の使用説明書を、更に含み得る。軍使用のためなどの、野戦病院で使用するために準備されたキットは、組織スカフォールド、外科用縫合糸などを含む、完全な手順の供給物を含んでもよく、細胞は、急性損傷の修復と関連付けて用いられるものである。本明細書で説明されたアッセイ及びインビトロ法のためのキットは、(1)UTC、又はUTCの成分若しくは産物、(2)インビトロ法を実践するための試薬、(3)必要に応じ、他の細胞又は細胞集団、並びに(4)インビトロ法を実施するための説明書のうちの1つ又は2つ以上を含み得る。
更に、以下の実施例において又は本明細書の他の箇所で用いられる場合、本発明の装置及び方法に有用なUTCは、米国特許第7,524,489号及び同第7,510,489号、及び米国特許出願公開第2005/0058634号の開示に従って単離及び特徴付けることができる、これら文献は、hUTCの記述、単離、及び特徴付けに関係しているので、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
更なる説明を行わずとも、当業者であれば、上記の説明及び以下の例示的な実施例を利用することで、本発明を行い及び使用し、特許請求される方法を実施することが可能であるものと考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであって、本開示の残りの記載をいかなる意味においても限定するものとして解釈されるべきではない。
(実施例1)
高酸素症誘発急性肺損傷の
マウスモデルにおける肺の保護効果
この実施例は、高酸素誘発肺損傷のモデルにおける肺修復及び再生を促進するヒトUTCの有効性を示す(hUTCの単離と及び特徴付けは実施例6〜16に見出すことができる)。
臍細胞培養及び単離
臍由来細胞(UDC、hUTC)を、米国特許第7,524,489号及び同第7,510,873号、及び米国特許出願公開第2005/0058634に記載されている通りに調製した。これらの細胞を、望ましい継代まで培養し、その後、低温保存された。
動物モデル
雌のC57BL/6マウス(7週齢)をAce Animals(Boyetown,PA)から入手した。注入の前にhUTCを37℃で解凍し(水浴)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で2回洗浄し、1mLのPBSで再懸濁させた。細胞は、血球計数器を使って計数した。細胞生存率をトリパンブルー染料排除により決定した。細胞は、200μLのPBS内で1×10個の細胞の濃度で再構成された。
研究の概要は、下記の表1−1で要約されている。0日目、細胞(200μLのPBS中1×10個のhUTC)又はPBSビヒクルが、1mL注射器及び26ゲージ針を使用して尾静脈注射によってゆっくりと投与され、動物は、室内空気又は90%のOに曝された。90%のOへの暴露は、下準備され、1時間にわたり90%のOに平衡されたBioSpherixチャンバ(BioSpherix,LTD,Lacona,NY)に動物を入れることで達成された。これらの動物に、支持療法(熱支援及びNutriCal)を毎日施した。動物観察、死亡率、生存率、各タンクの酸素濃度パーセントを、1日2回記録した。処理後4日目、50mg/mLネンブタール(ペントバルビタール)を使用して、動物を安楽死させた。
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気管支肺胞洗浄液(BALF)全タンパク質分析
各サンプル中の総タンパク質を決定するため、BCAタンパク質アッセイ(Pierce)を用いて、無細胞BALFを分析した。分析は、Softmax 4.0プログラムを使って完了し、データは、Graph Pad Prismソフトウェアを使ってグラフ化された。
BALF及び肺ホモジネートサイトカイン/ケモカイン分析
BALFを調製するために、処置群当たり6匹の動物を安楽死させ、1.0mLの無菌PBS(Invitrogen)で肺を1回洗浄し、ウェットアイス上にチューブを置いた。BALFを1000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を取り除き、更なる分析に使用した。
肺ホモジネートを調製するために、群当たり6匹の動物を安楽死させ、PBSによる全身灌流にかけ、左肺を切開し、Lysing Matrix Dチューブに入れてアイス上に置き、その後、FastPrep(登録商標)器具で4.0の速度で40秒間遠心分離にかけられた。
BALF及び肺ホモジネート双方の上澄み中のサイトカイン/ケモカインレベルを、製造者のプロトコルに従って、マウス22マルチプレックスビーズキット(Millipore)を使って判定し、BioRad Bioplex機器を使って分析した。結果は、GraphPad Prismソフトウェアを使ってグラフ化及び分析された。
ヒト細胞検出
全RNAを、Asuragen,Inc.により、その会社の標準操作手順に従って、マウス組織から分離した。全RNAサンプルの純度及び量は、NanoDrop ND−1000 UV分光測光器を使って260及び280nmにおける吸光度読み値によって判定された。RNA完全性は、Agilent Bioanalyzerを使って評価された。
GAPDH mRNA(Hs99999905_m1_GAPDH)に関するヒト特異的アッセイを使って、マウスの肺組織内のhUTCの数を推定した。単一チューブTaqMan(登録商標)Assays(Applied Biosystems)を用いた定量的RT−PCR(qRT−PCR)分析用のサンプルを、Asuragen,Inc.により、その会社の標準操作手順に従って処理した。全RNAの希釈液は、製造者の説明書に従って、希釈物当たり20μLの全反応容積で、TaqMan(登録商標)High Capacity cDNA Synthesis Kit(Applied Biosystems)を使って逆転写された。次に、50ngの入力cDNAがPCRによって分析された。全ての増幅は、有効なABI 7500リアルタイムサーモサイクラー上で3回行われた。サンプルは、95℃で10分間インキュベーションした後で、95℃で15秒間、その後60℃で1分間の40サイクルで、増幅された。マウスの肺内のhUTCの総数は、既知の量の精製hUTC全RNAを分析することによって生成された標準曲線に基づいて推定された。
BALF総タンパク質
90%のOに4日間露出した結果、室内空気の対照動物と比較して、BALFの総タンパク質含量が増加した(p<0.01、図1、表1−2)。更に、90%のO PBS処理群と比較して、90%のO hUTC処理群におけるBALF総タンパク質が統計的に有意に減少した(p<0.05)。
Figure 0006647863
BALF及び肺ホモジネートサイトカイン分析
表1−3〜1−6は、肺ホモジネート(表1−3及び1−4)及びBALF(気管支肺胞洗浄液)(表1−5及び1−6)のケモカイン/サイトカイン分析を示す。データはグラフでも示されている(図2A及び2B)。PBSビヒクルを用いて処置し、90%のO(p<0.02)に露出された動物と比較して、hUTCを用いて処置され90%のOに露出された動物において、BALFケラチノサイト因子(KC)、γインターフェロン誘導型サイトカイン(IP−10)、インターロイキン1α(IL−1α)及び肺ホモジネート単球走化性因子−1(MCP−1)の統計的に有意な減少が観察された。(図2A及び2B、表1−3及び1−4)。(nd=検出されず)。
Figure 0006647863
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ヒト細胞の生着
処理後4日目に、動物を屠殺し、肺を回収し、全RNAを、ヒト細胞検出のため単離した。結果は、hUTC処理した動物の肺の中にhUTCが存在するが、PBS処置した動物の肺からはhUTCは存在しないことを示した(表1−3)。
表1−7は、ヒト細胞検出の結果を示す。処置後4日目のマウスの肺内のhUTCの存在は、リアルタイムPCRを使用いてヒト特異的GAPDH mRNA転写産物を測定することで判定された。34未満のサイクル閾(CT)値は、マウスの肺組織内にhUTCが存在することを示す。マウスの肺組織内でhUTC mRNA転写産物の検出なし(不存在)。マウスの肺組織内でhUTC mRNA転写産物が検出(存在)。
Figure 0006647863
マウスにおける高酸素誘発性急性肺損傷の進行に対する、hUTCの予防的静脈内投与の効果を評価した。90%のOに曝されたマウスにhUTCを投与した後にBALFにおけるの総タンパク質のレベルが低下したということは、hUTCが、肺における高酸素誘発性血液漏出/浮腫を減少させることができたことを示唆している。更に、データは、hUTCが、肺における炎症の減少を示唆する、3つの重要なケモカインのレベルを減少させたことを示した。これらのデータは、hUTCが、肺疾患の治療にとって重要な治療薬であり得る証拠を提供している。
(実施例2)
エラスターゼ誘発気腫の新規なヒト化マウスモデルにおけるヒト臍由来細胞(hUTC)の予防効果の評価
この実施例は、COPD(気腫)の新規及び旧式モデルの両方におけるヒト臍由来細胞(hUTC)の効果を評価した。これらのモデルは、気腫破壊につながるエラスターゼの気道への送達づく。旧式のモデルは、BALB/cマウスを使用し、新規のモデルは、ヒト細胞治療の検査用テストベッドとして開発されたNOD/SCID/サイトカイン受容体γ鎖(ヌル)マウス(NOD/SCIDγ)(以下、「NSG」と称す)を使用した。
実験計画
イソフルランの吸入によってマウスに麻酔をかけ、ブタ膵臓エラスターゼ(Sigma−Aldrich,SI.Louis,MO)を14日間にわたって6回経鼻投与した(週3回、各1×0μg)。対照のマウスには生理食塩水のみを経鼻投与した。最初のエラスターゼ処理から2時間後、0.5×10個のヒト臍帯組織細胞(hUTC)が、尾静脈注射により投与された。hUTCは、100μLの全容積で単回投与として投与された。ビヒクルのみが、hUTC処理群と同様な方法で投与された。
本研究は、生化学的/タンパク質分析(パート1)及び(2)組織学及び肺機能検査(プレチスモグラフィー)(パート2)を包含した。
この研究のために、0日目に、マウスは、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)を鼻腔内に(i.n.)、hUTCを静脈内に(i.v.)注射された。2日目、5日目、7日目、9日目、11日目に、マウスは、更に、PPEの注射を受けた。1日目、6日目、10日目、14日目に、更なる研究のためにマウスを回収した。320匹の生後6〜8週齢の雌のマウスを使用し、血統/種は、NOD/SCIDγ(160)又は野生型(BALB/C)ハツカネズミ(160)であった。表2−1に実験計画を要約する。
Figure 0006647863
臍細胞培養及び単離
臍由来細胞(「UDC」又は「hUTC」)を、米国特許第7,524,489号、同第7,510,873号、及び米国特許出願公開第2005/0058634号に記載されている通り調製した。細胞は、望ましい継代まで培養し、その後、低温保存された。
投与の準備
注射の直前に、hUTCを37℃(水浴)で解凍した。細胞は、血球計数器を使って計数した。細胞生存率をトリパンブルー染料排除により決定した。細胞は、注射時に80%以上の生存率を有する必要があった。生存率が80%未満である場合、細胞は投棄された。細胞は、100μLのビヒクルで適切な濃度に調整された。ビヒクル中に懸濁された細胞が、シリンジポンプと、好適な少容量の注射器と、28ゲージ針とを使って尾静脈注射で投与された。送達時間を記録しながら約0.33mL/min/kgで細胞を送達するために、細胞は8〜9分かけてゆっくりと投与された。細胞投与は、調製から80分以内に生じた。投与するまで細胞をウェットアイス上で保管し、投与回数を記録した。
手順
上述のように、本研究のパート1の動物は、生化学的/タンパク質分析専用に用いられ、パート2の動物は、組織学及び肺機能試験(プレチスモグラフィー)専用に用いられた。
生化学的/タンパク質分析(パート1)のために、ビヒクル又はhUTC注射後1日目、6日目、10日目、14日目に、各群れから4又は5匹の動物を屠殺した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を各動物から得、BALF中に存在するサイトカインの分析まで−70℃で保管した。肺、肝臓、及び脾臓は、瞬間冷凍され、その後のRNA抽出のために−70℃でRNAlater(登録商標)(Life Technologies,Grand Island,NY)で保管された。肝臓及び脾臓のアリコートは、追加の転写分析のためにRNAlater(登録商標)で保管された。
BALF中の栄養因子の分析
BALF及び肺ホモジネート上澄み液中の細胞性及びサイトカイン/ケモカインレベル(マウスMCP−1、IL−1β、TNF−α、RANTES)を、製造者のプロトコルに従ってマウス多項目ビーズアレーキット(Becton Dickson)を使用して判定し、ビーズアレーフローサイトメトリーを使用して分析した。病巣として選択されたマウスターゲットは、病理学的機構の還元にある。対象ヒトエフェクターターゲットは、ヒトHGF、ヒトIL−1RA、及びVEGFを含んだ。人的因子が、プールされた材料中で1つの時間点においてのみ実行可能性について分析された。サンプル群内で正規化ができるように、BCA(商標)タンパク質定量法(Pierce,Rockford,Ill.)を使用してBALF中の総タンパク質を定量化した。
肺ホモジネートにおける栄養素の分析
肺ホモジネートから採取した細胞のサンプルを、マウスMCP−1、IL−1β、TNF−α、RANTES並びにヒトHGF、ヒトIL−1RA、及びVEGFについて定量的RT−PCRにより評価し、病状のマーカ(MCP−1、TNF−α、IL−1β及びRANTES)又は治療活性の指標(ヒトHGF、IL−1RA又はVEGF)を評価した。肺細胞ホモジネートにおけるヒトIL−1RA及びVEGFのRT−PCRは、いずれの時間点においてもサイトカインの検出を示さなかった。
パート2はパート1を繰り返したが、パート1の手技とは整合しない読み出しを利用した。ビヒクル又はhUTC注射後の1日目、6日目、10日目、及び14日目に、各群の動物について拘束プレチスモグラフィーを実施した。更に、各時間点において、4匹若しくは5匹のマウスを屠殺し、下記の要領で肺を採取した。
プレチスモグラフィー
実験の各時間点及び終了時に、プレチスモグラフィーをマウスに対して行った。簡単に説明すると、肺機能を制限付き方法で測定し、呼吸数、一回換気量、緩和時間、最大吸気流速、最大呼気速度、EF50、及び肺容量の変化を判定した。これは、異なる時間における肺機能に及ぼす細胞治療の影響を示す。
組織病理学
各時間点において、各処置群から肺を採取した。肺は、10%ホルムアルデヒド中性緩衝液で固定され、グレードエタノールシリーズ中で脱水され、パラフィンに封入され、4μmにスライスされた。パラフィン切片は、組織病理分析のため、ヘマトキシリンーエオシン(H&E)で染色された。組織学切片を損傷について評価した。肺胞の表面積は、国立予防衛生研究所からオンラインで入手可能なImage Jソフトウェアを使って分析された組織病理学イメージを用いて判定された。各肺切片について、5つの無作為フィールド内の灰法の表面積を測定し、平均表面積を計算した。損傷した肺における肺胞空間のサイズの減少が、改善された肺胞の弾性及びコンプライアンスと相関関係にあることは既知であり、このことは細胞治療がこれらのパラメータに影響を及ぼすことを示す。
結果
注射するための細胞の再構成
この実験に使用された10個のバイアルのhUTCのうち、品質基準によって廃棄されたものはなかった。生存率は各ケースで80%超であった。細胞の回収の詳細は、下記の表2−2及び2−3に示されている。回収率は高く、予想値の100%をわずかに上回っていた(バイアルからの回収量が予想値より若干多かったためと思われる)。
Figure 0006647863
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動物報告及び観察
一部のマウスの尾には静脈注射時に白斑が見られた。これは細胞治療には関係がなかったが、送達時の投与針の誤留置の原因になった。誤留置が発生した場合には、針を抜き、静脈に正しく挿入して、細胞/ビヒクルの投与を続行した。エラスターゼ治療又は細胞送達の結果死亡したマウスはいなかった。hUTC送達の結果、検出可能な副作用はどの動物にも観察されなかった。
気管支肺胞洗浄液(BALF)の分析
各時間点において、ペントバルビタールナトリウムの致死注射によりマウスを屠殺し、BALFを回収した。総白血球(図3)及び細胞分化計数(図4)が、細胞ペレットについて行われた。結果的に生じた上澄みは、サイトカイン活性(図5及び6)及び総タンパク質レベル(表2.4〜2.7)の更なる分析のために回収された。
BALFにおける総白血球数。
対照マウスは気管支肺胞洗浄において最小限の細胞湿潤を示したが、エラスターゼの投与の結果、細胞が有意に湿潤した。全体的な細胞湿潤は、両方のマウス血統において、hUTCの投与を受けたエラスターゼ処理されたマウスにおいて減少した。
BALFの細胞分染。
サイトスピンをBALFに対して実施し、修正Giemsa染色方法を使って染色した。サンプルを、リンパ球、マクロファージ、及び好中球の有無について分析した。サイトスピン当たり100個の細胞を計数し、BALFの容量に対して補正した。結果は、平均±標準誤差として表された。3つ以上の群れの比較がANOVAによって行われた。差異はp<0.05において有意と考えられた。
分染分析の要約。NSGマウスにおいて、hUTC治療の結果、エラスターゼ処理されたマウスにおいて、hUTC投与を受けていないエラスターゼ処理マウスと比較して、10日目にマクロファージが著しく減少した。同様に、hUTC投与を受けたエラスターゼ処理マウスにおいて、6日目と10日目に好中球の有意な減少が観察された。対照的に、任意の時間点でhUTCの投与を受けたエラスターゼ処理の野生型マウスにおいて、マクロファージ又は好中球の有意な減少は観察されなかった。
サイトカイン分析
BALF及び肺組織ホモジネートは、粘液過分泌、気道柔組織の破壊、線維症、組織損傷、及びCOPDに関係する炎症において明確に定義された役割を果たすので、BALF及び肺組織ホモジネートを抽出し、多項目ビーズアレーによって炎症性メディエータMCP−1、TNF−α、RANTES、及びIL−1βについて分析した。
hUTCは、エラスターゼ処理したNSG(NOD/SCIDγ)マウスにおける気管支肺胞洗浄液(BALF)上澄みのサイトカイン応答を調節した(図5)。エラスターゼ処理していない対照マウスは、MCP−1、TNF−α、RANTES、及びIL−1βをほとんど又は全く示さなかったが、エラスターゼ処理したマウスは、各時間点において全てのターゲットサイトカインの典型的な増加を示した。しかし、hUTCの投与を受けたこれらのマウスのBALFにおいて、炎症性メディエータの有意な減少(p<0.05)が観察され(図5を参照)、1日目/10日目にRANTES、1日目にIL−1β、1日目、6日目、10日目にTNF−α、1日目、10日目にMCP−1が有意に減少した。
エラスターゼ処理された野生型のBALB/c血統マウスについて、気管支肺胞洗浄液(BALF)上澄みにおけるhUTC及びサイトカイン応答を判定した(図6)。hUTC投与後1日、6日、10日、及び14日のBAL洗浄液組成物に対するhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)処理の効果を示す。要約すると、この血統においては応答がより可変的であり、一貫した又は有意な差異は観察されなかった。
総タンパク質濃度
ウシ血清アルブミン(BSA)を使って標準化されたBradfordアッセイ(Bio−Rad,Hercules,CA)を使って、回収されたBALF及び肺組織のホモジネートの総タンパク質濃度を判定した(表2−4〜2.7を参照)。
Figure 0006647863
Figure 0006647863
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いずれの株においても処置群間で総タンパク質量の有意な差は検出されなかった。
組織学的所見
定量的分析。非洗浄マウスから肺を取り出し、10%(v/v)フォルマリン/PBS中で固定し、パラフィンに封入し、スライスし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した(図7を参照)。気腔腫大を定量化した。肺胞の肺胞壁間距離を測定し、その平均肺胞壁間距離(Lm)を気腫の形態計測パラメータとして使用した。各肺サンプルから、3つの代表的な非重複野を選択した。無作為に分散したグリッドをH&E染色区画の像に重ねた。平均肺胞壁間距離(Lm)及び肺胞の数の定量的測定値を計算した。Lmは、肺胞の平均的サイズを表す。気管支及び血管は測定値から除外した。
組織病理学
非洗浄マウスから肺を取り出し、10%(v/v)フォルマリン/PBS中で固定し、パラフィンに封入し、スライスし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した。図8は、1日目の各処理群の代表的な顕微鏡写真を示す。引き続いてhUTCの投与を受けたエラスターゼ処理マウスは、同時点で生理食塩水の投与を受けたエラスターゼ処理マウスと比較して、有意な病状の軽減を示した。エラスターゼ処理による気腔腫大は、hUTC投与によって減じられた(図8及び関連する凡例p17)。図9は、hUTCが、1日目、6日目、10日目、14日目における免疫無防備状態(NOD/SCIDγ)マウスのエラスターゼ誘発気腫の範囲を低減したことを示す。図10は、hUTCが、1日目、6日目、10日目、14日目における免疫応答性の(BALB/c)マウスのエラスターゼ誘発気腫の範囲を低減したことを示す。
肺機能
上記研究において記述されているように、実験の各時点及び終了時に各マウスについてプレチスモグラフィーを実施した。肺機能を制限付き方法で評価し、呼吸数、一回換気量、緩和時間、最大吸気流速、最大呼気速度、EF50、及び肺容量の変化を判定した。群間で有意な差異は検出されなかった(一方向ANOVAによる統計的分析)。全てのパラメータは、図11A及び11Bに示されている。
肺ホモジネートにおける栄養因子の分析
肺ホモジネートからの細胞のサンプルを、定量的RT−PCRにより評価し、ヒトHGF、IL−1RA、VEGFのmRNAを測定し、治療活性の指標を評価した。本明細書に記載の方法を用いた肺ホモジネートにおいて、ヒトHGF、VEGF、又はIL−1RAは検出されなかった。
結論
本研究は、慢性肺疾患の一種である、気腫の標準的又は新規なマウスモデルにおけるhUTCの有効性を評価した。エラスターゼを両方の血統のマウスの肺に滴下注入し、ヒト気腫及び実験用気腫に特徴的な変化、つまり、肺胞壁の破壊による、大きいが数が少ない肺胞及び減少した肺胞表面積、炎症性メディエータの産生の増加、炎症性細胞型の気管支肺胞洗浄液への流入、をもたらした。hUTCで処置した結果、各モデルにおけるこれらの作用は抑制され、気腫を防止又は修復(つまり、COPD)し、ヒトにおける同様な作用の可能性を示唆した。
これらのデータは、多くの意味を有する。先ず、hUTCは、新規のマウス中ヒトモデルにおけるCOPDの主要な気腫性作用の防止に有効である。hUTCは、典型的には、NSGモデルにおける病状に関連付けられる炎症促進性メディエータ(TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β)の産生を抑制した。更に重要たことは、hUTCは、マウスの肺におけるエラスターゼ誘発気腫の範囲を著しく低減した。また、hUTCで処理されたCOPDマウスは、hUTCで処理されていない気腫対照と比較して、著しく短い肺胞間の平均肺胞壁間距離(Lm)(つまり、破壊が少ない)を示した。同様に、hUTC処理は、より多くの数の肺胞を保存し、COPDのヒト化NSGモデルにおけるBAL液への炎症性細胞浸潤を低減した。したがって、hUTCは、病状の主要機能を破壊する。
また、NSGモデルは、ヒト細胞治療を検査するための有用なテストベッドであり、有効な細胞治療としてのhUTCをサポートする今後の作業を実行する機会を提供する。また、このモデルは、治療作用のメカニズム、並びに投与のタイミング及び回数をめぐる問題の、より根本的な検査の機会を可能にする。
一般に、hUTCの単回投与後の病状の差異及び炎症性メディエータの低減は、新規モデルにおけるhUTCの有効性を強くサポートしている。
したがって、本実験の主要な発見は以下の通りであった。
hUTCは、「ヒト化」(NSG)COPDモデルにおける炎症促進性メディエータ(TNF−α、RANTES、MCP−1、及びIL−1β))の産生を抑制し、免疫応答性モデルにおけるこれらのサイトカイン応答を調節しない。
hUTCは、両方のモデルのマウスの肺におけるエラスターゼ誘発気腫の範囲を著しく低減した。
hUTC処理したCOPDマウス(両方のモデル)は、hUTC処理をしていない気腫対照と比較して、肺胞間の著しく短い平均肺胞壁間距離を示した。同様に、hUTC処理は、より多くの数の肺胞を保存した。
hUTCは、ヒト化(NSG)COPDモデルにおけるBAL液への細胞浸潤を低減した。
(実施例3)
細胞の単離
臍細胞の単離。臍帯は、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)から得た。それらの組織は、正常分娩の後に得たものであった。細胞単離プロトコルを、層流フード内で、無菌的に実行した。血液及び残滓を除去するため、ペニシリン100単位/m、ストレプトマイシン100mg/mL、及びアンホテリシンB 0.25μg/mL(Invitrogen Carlsbad,CA)の存在下において、臍帯をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen,Carlsbad,CA)中で洗浄した。次いで、それらの組織を、150cmの組織培養プレート内で、50ミリリットルの培地(DMEM−低グルコース又はDMEM−高グルコース;Invitrogen)の存在下、組織が微細なパルプ状へと細断されるまで、機械的に解離させた。細断した組織を、50ミリリットル円錐管に移した(1つの管当り約5グラムの組織)。
次に、DMEM−低グルコース培地又はDMEM−高グルコース培地(それぞれペニシリン100単位/mL、ストレプトマイシン100mg/mL、及びアンホテリシンB 0.25μg/mLを含む)、及び消化酵素にて、細胞を消化した。一部の実験では、コラゲナーゼとディスパーゼとの酵素混合物を使用した(「C:D」)(DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ(Sigma,St Louis,MO)、500単位/mL;及びディスパーゼ(Invitrogen)、50単位/mL)。他の実験では、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼの混合物(「C:D:H」)を使用した(C:D:H=DMEM−低グルコース中、コラゲナーゼ、500単位/mL;ディスパーゼ、50単位/mL;及びヒアルロニダーゼ(Sigma)、5単位/mL)。これらの組織、培地、及び消化酵素を入れたコニカルチューブを、225rpmの軌道振盪器(Environ,Brooklyn,NY)内で、37℃で2時間インキュベートした。
消化の後、150×gで5分間、組織を遠心分離して、上清を吸引した。ペレットは、20ミリリットルの増殖培地(DMEM:低グルコース(インビトロゲン)、15パーセント(v/v)ウシ胎児血清(FBS;定義されたウシ胎児血清;ロット#AND18475;Hyclone,Logan,UT)、0.001%(v/v)2−メルカプトエタノール(Sigma)、1ミリリットル当たり100単位のペニシリン、1ミリリットル当たり100マイクログラムのストレプトマイシン、及び1ミリリットル当たり0.25マイクログラムのアンホテリシンB(それぞれ、Invitrogen,Carlsbad,CAから入手可能)で再懸濁された。細胞懸濁液を70ミクロンのナイロン製BD FALCON細胞濾過器(BD Biosciences,San Jose,CA)に通して濾過した。増殖培地を含む、追加的な5ミリリットルの洗液を、濾過器に通過させた。次いで、その細胞懸濁液を、孔径40マイクロメートルのナイロン製細胞濾過器(BD Biosciences,San Jose,CA)に通過させ、続いて、増殖培地の洗液を追加で5mL通過させた。
この濾液を、増殖培地(総容積50ミリリットル)中に再懸濁させ、150×gで5分間、遠心分離した。上清を吸引して、50ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。この過程を更に2回繰り返した。
最終的な遠心分離の後に、上清を吸引して、5ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー染色を使用して、生存細胞の数を判定した。次いで、標準条件下で、細胞を培養した。
臍帯組織から単離した細胞を、増殖培地中、ゼラチンコーティングT−75cmフラスコ(Corning Inc.,Corning,NY)上に、5,000細胞/cmで播種した。2日後、消費した培地及び未付着の細胞を、フラスコから吸引した。PBSで付着細胞を3回洗浄して、残渣及び血液由来細胞を除去した。次いで、細胞に、増殖培地を補充して、コンフルエンスまで増殖させ(継代数0から約10日)、継代数1に至らせた。その後の継代(継代数1から継代数2へ、など)の際には、細胞は、4〜5日でコンフルエンス(75〜85%のコンフルエンス)に達した。これらの後続の継代に関しては、細胞を、5,000細胞/cmで播種した。細胞は、5%の二酸化炭素に設定した加湿インキュベーター内で、37℃で増殖させた。
いくつかの実験において、LIBERASE(1ミリリットル当たり2.5ミリグラムのBlendzyme 3;Roche Applied Sciences(Indianapolis,IN))及びヒアルロニダーゼ(1ミリリットル当たり5単位、Sigma)で消化した後、細胞が、DMEM−低グルコース培地中の分娩後組織から単離された。組織の消化、及び細胞の単離は、上記の他のプロテアーゼ消化に関する説明と同様であったが、C:D又はC:D:H酵素混合物の代わりに、LIBERASE/ヒアルロニダーゼ混合物を使用した。LIBERASEを使用する組織の消化は、分娩後組織から、容易に増殖する細胞集団の単離をもたらした。
種々の酵素の組み合せを使用して、臍帯から細胞を単離するための手順を比較した。消化のために比較された酵素には、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼとディスパーゼの混合物(C:D)、コラゲナーゼとヒアルロニダーゼの混合物(C:H)、ディスパーゼとヒアルロニダーゼの混合物(D:H)、及び、コラゲナーゼと、ディスパーゼと、ヒアルロニダーゼとの混合物(C:D:H)が含まれた。これらの種々の酵素消化条件を用いて、細胞単離の差異を観察した(表3−1)。
種々の手法によって臍帯から細胞のプールを単離するために、他の試みを行なった。一例では、臍帯をスライスして、増殖培地で洗浄し、血餅及びゼラチン状物質を取り除いた。血液、ゼラチン状物質、及び増殖培地の混合物を収集して、150×gで遠心分離した。ペレットを再懸濁させ、ゼラチン増殖培地中、コーティングされたフラスコ上に播種した。これらの実験から、容易に増殖する細胞集団が単離された。
細胞はまた、NDRIから入手した臍帯血サンプルからも単離されている。用いた単離プロトコルは、Hoらによる国際特許出願PCT/US第2002/029971号に記載するものを使用した。臍帯血(NDRI,Philadelphia PA)のサンプル(それぞれ50mL及び10.5mL)は、溶解用緩衝液(フィルター殺菌済み155ミリモルの塩化アンモニウム、10ミリモルの重炭酸カリウム、pH 7.2に緩衝された0.1ミリモルのEDTA(全ての構成要素はSigma,St.Louis,MOから入手可能))と混合された。1:20の、臍帯血と溶解緩衝液との比率で、細胞を溶解させた。得られた細胞懸濁液を、5秒間ボルテックス攪拌して、周囲温度で2分間インキュベートした。この溶解液を、遠心分離した(200×gで10分間)。細胞ペレットを、10パーセントのウシ胎児血清(Hyclone(Logan UT))、4ミリモルのグルタミン(Mediatech(Herndon,VA))、100単位/mLのペニシリン、及び100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン(Gibco(Carlsbad,CA))を含有する、完全最小必須培地(Gibco(Carlsbad,CA))中に再懸濁させた。再懸濁した細胞を、遠心分離して(200×gで10分間)、上清を吸引し、完全培地中で細胞ペレットを洗浄した。T75フラスコ(Corning(NY))、T75ラミニンコーティングフラスコ、又はT175フィブロネクチンコーティングフラスコ(双方ともBecton Dickinson(Bedford,MA))内に、細胞を直接播種した。
細胞集団が種々の条件下で単離され、単離の直後に様々な条件下で増殖することが可能か否かを判定するために、上記の手順に従って、0.001パーセント(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,MO))を有する増殖培地中、又は有さない増殖培地中で、C:D:Hの酵素の組合せを使用して、細胞を消化させた。全ての細胞は、1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと、1ミリリットル当たり100マイクログラムのストレプトマイシンの存在下で増殖させた。全ての試験条件下で、細胞は、継代数0〜1の間において、良好に付着して増殖した(表2−2)。条件5〜8及び条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖することが実証され、その時点で、それらの細胞を凍結保存した。
C:D:Hの組み合せが、単離の後の、最良の細胞収量をもたらし、他の条件よりも、多くの世代にわたって培養下で増殖する細胞を生じさせた(表3−1)。コラゲナーゼ又はヒアルロニダーゼを単独で使用しても、増殖可能な細胞集団は得られなかった。この結果が、試験したコラゲナーゼに特異的なものであるか否かを判定する試みは、行なわなかった。
Figure 0006647863
細胞は、酵素消化及び増殖に関して試験した全ての条件下で、継代数0〜1の間に、良好に付着して増殖した(表3−2)。実験条件5〜8及び実験条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖し、その時点で、それらの細胞を凍結保存した。全細胞は、更なる分析のために凍結保存された。
Figure 0006647863
有核細胞が付着し、急速に増殖した。これらの細胞は、フローサイトメトリーによって分析したところ、酵素消化によって得られた細胞と同様であった。
これらの調製物は、赤血球及び血小板を含有するものであった。最初の3週間は、有核細胞が付着及び分裂することはなかった。播種の3週間後に、培地を交換したが、細胞の付着及び増殖は観察されなかった。
酵素併用コラゲナーゼ(メタロプロテアーゼ)、ディスパーゼ(中性プロテアーゼ)及びヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を破壊する粘液溶解酵素)を効果的に使用して、臍組織から細胞集団を単離することができた。コラゲナーゼと中性プロテアーゼとの配合物であるLIBERASEも使用することができる。コラゲナーゼ(4 Wunsch単位/g)及びサーモリシン(1714カゼイン単位/g)である、Blendzyme 3もまた、細胞を単離するために、ヒアルロニダーゼと共に使用した。これらの細胞は、ゼラチンコーティングされたプラスチック上の増殖培地中で培養した場合、多数回の継代にわたって、容易に増殖した。
細胞はまた、臍帯内の残留血液からも単離されたが、臍帯血からは単離されなかった。使用した条件下で付着及び増殖する、この組織から洗い流された血餅中の細胞の存在は、解剖プロセス中に細胞が遊離することによるものである可能性がある。
(実施例4)
細胞の増殖特性
臍由来細胞の細胞増殖能を、単離された他の幹細胞の集団と比較した。細胞の細胞老化への増殖プロセスは、Hayflickの限界と呼ばれている。(Hayflick L.,J.Am.Geriatr.Soc.,1974;22(1):1〜12;Hayflick L.,Gerontologist,1974;14(1):37〜45)。
組織培養プラスチックフラスコは、T75フラスコ(Corning(Corning,NY))に、室温で20分間、20ミリリットルの2%(w/v)ブタゼラチン(タイプB:225 Bloom;Sigma(St Louis,MO))を添加することによって、コーティングした。ゼラチン溶液を除去した後、10ミリリットルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Invitrogen(Carlsbad,CA))を添加し、次いで吸引した。
増殖拡大能の比較のために、以下の細胞集団を利用した;i)間葉系幹細胞(MSC;Cambrex(Walkersville,MD));ii)脂肪由来細胞(米国特許第6,555,374(B1)号;米国特許出願公開第2004/0058412号);(iii)正常な皮膚線維芽細胞(cc−2509ロット#9F0844;Cambrex,Walkersville,MD)、及びiv)臍由来細胞。全ての細胞を、最初に、増殖培地中、ゼラチンコーティングT75フラスコ上に、5,000細胞/cmで播種した。後続の継代に関しては、全ての細胞を以下のように処理した。トリプシン処理後、生存細胞を、トリパンプルー染色の後に計数した。細胞懸濁液(50マイクロリットル)を、トリパンプルー(50マイクロリットル、Sigma(St.Louis MO))と組み合わせた。生存細胞数は、血球計数器を使用して概算した。
計数の後に、細胞を、25ミリリットルの新鮮増殖培地中、ゼラチンコーティングT75フラスコ上に、5,000細胞/cmで播種した。細胞は、標準的な大気中(5パーセントの二酸化炭素(v/v))で37℃で成長させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞が約85%のコンフルエンスに達すると、細胞を継代した。このプロセスは、細胞が老化に達するまで繰り返された。
各継代で、細胞をトリプシン処理して、計数した。生細胞収量、集団倍加[ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln2]、及び倍加時間(培養/集団倍加における時間)を計算した。最適な細胞増殖を決定する目的で、前の継代の総収量に、各継代の増殖因子を積算することによって、継代当たりの総細胞収量を決定した(すなわち、増殖因子=最終の細胞/最初の細胞)。
継代数10でバンクされた細胞の増殖能も試験した。異なるセットの条件が用いられた。正常皮膚繊維芽細胞(cc−2509ロット# 9F0844;Cambrex(Walkersville,MD))及び臍由来細胞を試験した。これらの細胞集団は、従前に、継代数10でバンクされており、各継代で5,000細胞/cmで、その時点まで培養されていた。継代数10での細胞解凍後の細胞集団に対する、細胞密度の影響を判定した。標準条件下で細胞を解凍し、トリパンプルー染色を使用して計数した。解凍された細胞は、その後、増殖培地中、1,000細胞/cmで播種された。37℃の標準大気条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞は、約85%コンフルエンスに達すると、継代された。細胞は、その後、老化まで、すなわち、それ以上の増殖が不可能となるまで、継代させた。各継代で、細胞をトリプシン処理して、計数した生細胞収量、集団倍加[In(最終的な細胞/最初の細胞)In2]、及び倍加時間(培養中の時間)/集団倍加)を計算した。前の継代の総収量に、各継代の増殖因子を積算することによって、継代当たりの総細胞収量を決定した(すなわち、増殖因子=最終の細胞/最初の細胞)。
新たに単離された臍由来細胞の培養の低細胞播種条件での増殖可能性を別の実験で試験した。臍由来細胞は、以前の実施例で説明されている通りに単離された。細胞を、1,000細胞/cmで播種し、老化まで、上述のように継代させた。37℃の標準大気条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞は、約85%コンフルエンスに達すると、継代された。各継代で、細胞をトリプシン処理して、トリパンプルー染色によって計数した。細胞収量、集団倍加(ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln2)、及び倍加時間(培養中の時間/集団倍加)を、各継代に関して計算した。前の継代の総収量に、各継代の増殖因子を積算することによって、継代当たりの総細胞収量を決定した(すなわち、増殖因子=最終の細胞/最初の細胞)。細胞は、ゼラチンコーティングフラスコ、及び非ゼラチンコーティングフラスコ上で増殖させた。
低O細胞培養条件は、特定の状況では、細胞増殖を改善し得ることが実証されている(米国特許出願公開第2004/0005704号)。臍由来細胞の細胞増殖が、細胞培養条件を変更することによって改善されるか判定するために、臍由来細胞の培養物を低酸素条件下で培養させた。細胞を、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ上に、5,000細胞/cmで播種した。細胞は、最初は、継代数5にわたり標準的な大気条件下で培養され、継代数5の時点で、低酸素(5%のO)培養条件に移された。
他の実験では、非コーティング、コラーゲンコーティング、フィブロネクチンコーティング、ラミニンコーティング、及び細胞外マトリックスタンパク質コーティングが施されたプレート上で、細胞を増殖させた。培養物は、これらの種々のマトリックス上で、良好に増殖することが実証されている。
臍由来細胞は、40継代超にわたり増殖し、60日で>1E17細胞をの細胞収量を生成した。それに対して、MSC及び繊維芽細胞は、それぞれ、<25日後、及び<60日後にそれぞれ老化した。脂肪由来細胞及び大網細胞は、殆ど60日にわたり増殖したが、それぞれ4.5E12及び4.24E13の総細胞収量を生成した。それゆえ、使用した実験条件下で、5,000細胞/cmで播種した場合、臍由来細胞は、同じ条件下で増殖した他の細胞型よりも、遙かに良好に増殖した(表4−1)。
Figure 0006647863
臍由来細胞及び繊維芽細胞は、10回を超える継代にわたって増殖し、60日で>1E11細胞の細胞収量を生じさせた(表4−2)。これらの条件下で80日後に繊維芽細胞及び臍由来細胞集団は老化し、それぞれ、>50及び>40集団倍加を完了した。
Figure 0006647863
細胞は、低酸素条件下で、良好に増殖したが、しかしながら、低酸素条件下での培養は、分娩後由来細胞の細胞増殖に対して有意な効果を及ぼしたとは考えられなかった。酸素減少の効果に関する最終的な結論は、初期の単離から低酸素下で細胞を培養させる実験から導かれることが最善であるという意味において、これらの結果は予備的である。標準的大気条件は、十分な数の細胞を成長させるのにうまくいくことが既に証明されており、低酸素培養は分娩後由来細胞の培養には必要でない。
単離された臍帯組織由来細胞を、標準的な大気酸素下で、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ又は非コーティングフラスコ上で、約5,000細胞/cmの密度で増殖させる細胞増殖条件は、多数の細胞を継代数11で生成するのに十分である。更に、データは、低密度培養条件(例えば、1,000細胞/cm)を使用することによって細胞が容易に増殖し得ることを示唆している。低酸素条件下での臍由来細胞の増殖も、細胞増殖を促進するが、培養にこれらの条件を用いる場合、細胞増殖能力における漸進的改善は未だ観察されていない。現在、細胞の大きいプールを生成するためには、標準大気条件下で臍帯組織由来細胞を培養することが好ましい。しかしながら、培養条件を変更すると、臍帯組織由来細胞の増殖も、同様に変化し得る。この方策を用いて、これらの細胞集団の増殖能及び分化能を高めることができる。
利用した条件下では、MSC及び脂肪由来細胞の増殖能は限定されているが、臍組織由来細胞は、多くの数へと容易に増殖する。
(実施例5)
D−バリン含有培地での細胞の増殖
通常のL−バリンイソ型の代わりにD−バリンを含有する培地を使用して、培養中の繊維芽細胞様細胞の増殖を、選択的に阻害することができることが報告されている(Hongpaisan J.Cell Biol.Int.,2000;24:1〜7;Sordilloら、Cell Biol.Int.Rep.,1988;12:355〜64)。臍由来細胞が、Dバリン含有培地で増殖し得るかどうか判定するための実験を行った。
臍由来細胞(P5)及び線維芽細胞(P9)をゼラチンでコーティングされたT75フラスコ(Corning,Corning,NY)において5,000細胞/cmで播種した。24時間後、培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))で細胞を洗浄することにより、残留する培地を除去した。培地は、修飾増殖培地(Dバリンを有するDMEM(特注品Gibco)、15%(v/v)透析ウシ胎児血清(Hycone,Logan,UT)、0.001%(v/v)βメルカプトエタノール(Sigma)、50単位/mLのペニシリン、及び50mg/mLのストレプトマイシン(Gibco))と交換された。
このD−バリン含有培地中に播種した、臍由来細胞及び繊維芽細胞は、透析血清を含有する増殖培地中に播種した細胞とは異なり、増殖しなかった。繊維芽細胞は、形態学的に変化し、サイズが増大して、形状が変化した。全ての細胞が死滅し、最終的には、4週間後にフラスコ表面から剥離した。したがって、臍帯組織由来細胞は、細胞増殖のため及び長期間の生存をを維持するためにLバリンを必要とすると結論付けることができる。Lバリンは、臍帯組織由来細胞については増殖培地から除去されないことが望ましい。
(実施例6)
細胞の核型分析
細胞療法に使用される細胞株は、好ましくは、同種であり、いずれの汚染細胞型も含まない。細胞治療に使用されるヒト細胞は、正常な構造を有する、正常な数(46個)の染色体を有していなければならない。同種であり、かつ、非分娩後組織起源の細胞を含まない、臍由来細胞株を同定するために、細胞サンプルの核型を分析した。
新生男児の分娩後組織由来のUTCを、増殖培地中で培養した。新生児由来細胞と母体由来細胞(X,X)との識別が可能となるように、新生男児由来の分娩後組織(X,Y)が選択された。細胞を、T25フラスコ(Corning(Corning,NY))内の増殖培地中に、5,000細胞/平方センチメートルで播種し、80%コンフルエンスまで増殖させた。細胞を収容するT25フラスコは、ネック部分まで増殖培地で充填した。臨床細胞遺伝学研究所に、急送便でサンプルを配送した(研究所間の推定輸送時間は、1時間である)。染色体分析は、New Jersey Medical School,Newark,NJに所在するCenter for Human & Molecular Geneticsにより行われた。細胞は、染色体が最も良好に可視化される、分裂中期の間に分析された。計数した分裂中期の20個の細胞のうち、5個の細胞を、正常な同種核型数(2)に関して分析した。細胞サンプルは、2つの核型が観察された場合に同種であると特徴付けられた。細胞サンプルは、3つ以上の核型が観察された場合に異種であると特徴付けられた。異種性の核型数(4)が識別されると、更なる分裂中期細胞を計数して、分析した。
染色体分析に送られた全細胞サンプルは、細胞遺伝学研究所のスタッフによって、正常外見を呈していると解釈された。分析された16の細胞株のうちの3つが、異種性の表現型(XX及びXY)を表し、これは、新生児由来及び母体由来の双方に由来する細胞が存在することを示している(表6−1)。各細胞サンプルは、同種であると特徴付けられた(表6−1)。
Figure 0006647863
染色体分析は、臨床細胞遺伝学研究所により解釈されると、核型が正常である臍由来UTCを同定した。核型分析はまた、同種核型により判断される、母体細胞を含まない細胞株も同定した。
(実施例7)
細胞表面マーカーのフローサイトメトリー評価
フローサイトメトリーによる細胞表面タンパク質又は「マーカー」の特性評価を用いて、細胞株の同一性を判定することができる。この発現の一貫性は、複数のドナーから、並びに種々の処理及び培養条件に曝された細胞において、判定することができる。臍から単離された分娩後細胞株を、フローサイトメトリーによって特徴付けることにより、これらの細胞株の同定に関するプロファイルが提供された。
プラズマ処理されたT75、T150、及びT225組織培養フラスコ(Corning,Corning,NY)内で、細胞をコンフルエンスまで培養した。2%(w/v)のゼラチン(Sigma(St.Louis,MO))を、室温で20分間インキュベートすることによって、これらのフラスコの増殖表面をゼラチンでコーティングした。
フラスコ内の付着細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco,Carlsbad,MO)中で洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco)を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、100μLの細胞懸濁液に、目的の細胞表面マーカーに対する抗体(下記参照)を添加し、その混合物を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合抗体を除去した。細胞を500μLのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーで分析した。フローサイトメトリー分析は、FACScalibur計器(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して実行した。細胞表面マーカに対する下記の抗体を使用した(表7−1を参照)。
Figure 0006647863
臍由来細胞を、継代数8、15、及び継代数20で分析した。ドナー間の差異を比較するため。異なるドナーから得られた臍帯由来細胞を比較した。ゼラチンコーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞を、非コーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞と比較した。
細胞の単離及び準備に関して使用される、4つの処理を比較した。1)コラゲナーゼ;2)コラゲナーゼ/ディスパーゼ;3)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ;及び4)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ/ディスパーゼでの処理による、分娩後組織由来の細胞を比較した。
フローサイトメトリーによって分析された、継代数8、15、及び20における臍帯由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、このことは、IgG対照と比較しての蛍光の増大によって示された。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性であり、このことは、IgG対照と一致する蛍光値によって示された。
フローサイトメトリーによって分析された、別個のドナーから単離された臍帯由来細胞のそれぞれは、IgG対照と比較しての蛍光値の増大に反映される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの産生について陽性を示した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの産生に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
フローサイトメトリーにより分析された、ゼラチンコーティングフラスコ及び非ゼラチンコーティングフラスコ上で増殖した臍帯由来細胞は、全てCD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの産生に関して陽性であり、IgG対照と比較して増加した蛍光値を有していた。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの産生に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
フローサイトメトリーによる臍帯由来細胞の分析を通じて、これらの細胞株の同一性が実証された。臍帯由来細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、HLA−A、B、Cに関しては陽性であり、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性であった。この同一性は、ドナー、継代数、培養容器の表面コーティング、消化酵素、及び胎盤の層を含む変数が変動しても、一貫していた。個々の蛍光値ヒストグラム曲線の平均及び範囲には、ある程度の変動が観察されたが、全ての試験条件下での全ての陽性曲線は正常であり、発現した蛍光値は、IgG対照よりも大きく、それゆえ、これらの細胞が、マーカーの陽性発現を有する同種集団を含むことが確認された。
(実施例8)
オリゴヌクレオチドアレイによる細胞分析
オリゴヌクレオオチドアレイを使用して、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の遺伝子発現プロファイルを、繊維芽細胞、ヒト間葉系幹細胞、及びヒト骨髄由来の別の細胞株と比較した。この解析により、分娩後に誘導された細胞の特性評価が提供され、これらの細胞に関係する固有の分子マーカーが特定された。
分娩後組織由来細胞。ヒト臍帯及びヒト胎盤は、National Disease Research Interchange(NDRI(Philadelphia,PA))より、患者の同意を得て、正常な満期分娩から得た。組織を受け取り、C:D:Hの混合物による消化後、実施例6に記述されるように細胞の単離が行われた。細胞は、ゼラチンコーティングされたプラスチック製組織培養フラスコ上の増殖培地において培養さされた。この培養物を、5%のCOを使用して、37℃でインキュベートした。
線維芽細胞ヒト皮膚繊維芽細胞は、Cambrex Incorporated(Walkersville,MD;ロット番号9F0844)及びATCC CRL−1501(CCD39SK)より購入した。双方の株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(Hyclone)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を有する、DMEM/F12培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で培養した。これらの細胞は、標準的な組織処理プラスチック上で増殖させた。
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)。ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、Cambrex Incorporated(Walkersville,MD;ロット番号2F1655、2F1656、及び2F1657)より購入し、製造業者の仕様書に従って、MSCGM培地(Cambrex)中で培養した。これらの細胞は、5%のCOを使用して、37℃で、標準的な組織培養プラスチック上で増殖させた。
ヒト腸骨稜骨髄細胞(ICBM)。ヒト腸骨稜の骨髄は、患者の同意を得て、NDRIより受け取った。この骨髄を、Hoらによって概説される方法(WO 03/025149号)に従って処理した。この骨髄を、溶解緩衝液(155mMのNHCl、10mMのKHCO、及び0.1mMのEDTA、pH 7.2)と、骨髄1部対溶解緩衝液20部の比率で混合した。この細胞懸濁液を、ボルテックス攪拌して、周囲温度で2分間インキュベートし、500×gで10分間、遠心分離した。上清を廃棄して、10%(v/v)ウシ胎児血清及び4mMグルタミンを添加した最小必須培地−α(Invitrogen)中に、細胞ペレットを再懸濁させた。これらの細胞を、再び遠心分離して、新鮮培地中に細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー排除(Sigma(St.Louis,MO))を使用して、生存単核細胞を計数した。単核細胞は、5×10細胞/cmにて、プラスチック製細胞培養フラスコ中に播種された。細胞を、標準大気O又は5% Oのいずれかで、5% CO、37℃でインキュベートした。培地を交換することなく、細胞を5日間培養した。5日間の培養の後、培地及び非付着細胞を除去した。付着細胞は、培養物中に維持された。
活発に増殖する細胞培養物を、低温のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、細胞スクレーパによってフラスコから除去した。これらの細胞を、300×gで5分間、遠心分離した。上清を除去して、新鮮なPBS中に細胞を再懸濁させ、再び遠心分離した。上清を除去して、細胞ペレットを直ちに凍結させ、−80℃で保存した。細胞のmRNAを抽出し、cDNAへと転写させた。次に、cDNAをcRNAに転写して、ビオチンで標識した。ビオチン標識済みcRNAについて、Affymetrix GENECHIP HG−U133Aオリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA)によってハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション及びデータ収集は、製造業者の仕様書に従って実施した。データ分析は、「Significance Analysis of Microarrays」(SAM)バージョン1.21コンピュータソフトウェア(Tusher,V.G.ら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:5116〜5121)を使用して行われた。分析ソフトウェアのライセンスは、Office of Technology Licensing,Stanford Universityを通じて入手可能であり、詳細情報はDep’t of Statistics,Stanford UniversityのProfessor Tibshiraniのウェブサイトにおいて、World Wide Web上から入手可能である。
14の異なる細胞集団を、この試験において分析した。これらの細胞を、継代情報、培養基質、及び培養培地と共に、表8−1に列記する。細胞株については、分析時の継代、細胞増殖基質、及び増殖培地と共に識別コードを列記した。
Figure 0006647863
データは、上述したSAMソフトウェアによる主成分分析で評価した。分析により、試験対象の細胞において、異なる相対量で発現した290の遺伝子が明らかとなった。この分析はにより、集団間の相対比較がもたらされた。
表8−2は、細胞対の比較のために計算された、ユークリッド距離を示す。これらのユークリッド距離は、細胞型間で示差的に発現した290の遺伝子に基づく、細胞の比較に基づいたものである。ユークリッド距離は、290の遺伝子の発現における類似性と反比例している。ユークリッド距離は、細胞型ごとに異なる発現をした290の遺伝子を使用して、各細胞型について計算した。細胞間の類似性は、ユークリッド距離に反比例している。
Figure 0006647863
表8−3、表8−4、及び表8−5は、胎盤由来細胞内で増加した遺伝子の発現(表8−3)、臍帯由来細胞内で増加した遺伝子の発現(表8−4)、並びに臍帯由来細胞及び胎盤由来細胞内で減少した遺伝子の発現(表8−5)を示す。
Figure 0006647863
Figure 0006647863
Figure 0006647863
Figure 0006647863
表8−6、表8−7、及び表8−8は、ヒト繊維芽細胞(表8−6)、ICBM細胞(表8−7)、及びMSC(表8−8)内で増加した、遺伝子の発現を示す。
Figure 0006647863
Figure 0006647863
Figure 0006647863
本実施例は、臍帯由来細胞及び胎盤由来細胞の分子の特性評価を提供するために実行された。この分析は、3つの異なる臍帯及び3つの異なる胎盤に由来する細胞を含んだ。この試験はまた、皮膚繊維芽細胞の2つの異なる株、間葉系幹細胞の3つの株、及び腸骨稜骨髄細胞の3つの株も含んだ。これらの細胞により発現されmRNAは、オリゴヌクレオチドプローブを含むGENECHIPオリゴヌクレオチドアレイにおいて、22,000の遺伝子について分析された。
分析により、これら5つの異なる細胞型には、290の遺伝子の転写産物が異なる量で存在していることが明らかとなった。これらの遺伝子には、胎盤由来細胞内で特異的に増加した10の遺伝子、及び臍帯由来細胞内で特異的に増加した7の遺伝子が含まれる。54の遺伝子が、胎盤由来細胞及び臍帯由来細胞において、特異的に低い発現レベルを有することが分かった。
選択された遺伝子の発現が、実施例9に示されるようにPCRによって確認されている一般的には、分娩後由来細胞、詳細には臍由来細胞は、例えば、本実施例において試験されている骨髄由来細胞及び線維芽細胞などの他のヒト細胞と比較して、異なる遺伝子発現プロフィルを有する。
(実施例9)
細胞マーカー
ヒト臍帯及びヒト胎盤に由来する細胞の遺伝子発現プロフィルを、Affymetrix GENECHIPを使用して他の供給源由来の細胞のものと比較した。6つの「シグネチャー」遺伝子、すなわち、酸化LDL受容体1、インターロイキン−8(IL−8)、レンニン、レチクロン、ケモカイン受容体リガンド3(CXCリガンド3)、及び顆粒球走化性タンパク質2(GCP−2)、が特定された。これらの「シグネチャー」遺伝子は、臍由来細胞において比較的高レベルで発現した。
この実施例で説明される手順は、マイクロアレイデータを検証し、遺伝子及びタンパク質の発現についてデータを比較するため、並びに、臍由来細胞に関する一意的識別子を検出するための一連の信頼性の高いアッセイを確立するために実施された。
臍由来細胞(4つの単離株)、胎盤由来細胞(3つの単離株、核型分析によって同定されるような、主として新生児性の単離株1つを含む)、及び正常ヒト表皮繊維芽細胞(NHDF;新生児及び成人)を、ゼラチンチコーティングT75フラスコ内の増殖培地で増殖させた。間葉系幹細胞(MSCs)を間葉系幹細胞増殖培地Bulletキット(MSCGM;Cambrex,Walkersville,MD)で増殖させた。
IL−8実験に関しては、細胞を液体窒素から解凍して、ゼラチンコートフラスコ内に5,000細胞/cmで播種して増殖培地中で48時間増殖させ、次いで、更に8時間、10mLの血清飢餓培地[DMEM−低グルコース(Gibco,Carlsbad,CA)、ペニシリン(50単位/mL)、ストレプトマイシン(50μg/mL)(Gibco)、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma,St.Louis,MO)]中で増殖させた。次に、RNAを抽出して、上清を150×gで5分間遠心分離することにより、細胞残屑を除去した。上清を、ELISA分析まで、−80℃で凍結させた。
臍帯組織由来細胞、胎盤組織由来細胞、並びにヒト新生児包皮に由来する線維芽細胞を、ゼラチンでコーティングされたT75フラスコ内の増殖培地で培養した。継代数11で、液体窒素中で細胞を凍結させた。細胞を解凍して、15mL遠心分離管に移した。150×gで5分間の遠心分離後、上清を廃棄した。4mLの培養培地中に、細胞を再懸濁させ、計数した。15ミリリットルの増殖培地を収容する75cmフラスコ内で、375,000細胞/フラスコで、細胞を24時間増殖させた。この培地を、8時間かけて血清飢餓培地に交換した。インキュベーション終了時に、血清飢餓培地を収集し、14,000×gで5分間、遠心分離した(そして−20℃で保存した)。
各フラスコ内の細胞数を概算するために、2mLのトリプシン/EDTA(Gibco,Carlsbad,CA)を各フラスコに添加した。フラスコから細胞を剥離した後、8ミリリットルの増殖培地を使用して、トリプシン活性を中和した。細胞を15mL遠心分離管に移し、150×gで5分間、遠心分離した。上清を除去し、各管に1ミリリットルの増殖培地を加えて、細胞を再懸濁させた。細胞数は、血球計数器によって推算した。
細胞によって血清飢餓培地中へ分泌されたIL−8の量を、ELISAアッセイ(R&D Systems(Minneapolis,MN))を使用して分析した。全てのアッセイは、製造業者によって提供される説明書に従って実施した。
コンフルエントな臍帯由来細胞及び繊維芽細胞から、あるいはIL−8の発現のため、上述のように処理した細胞から、RNAを抽出した。製造業者の説明書(RNeasy(登録商標)Mini Kit;Qiagen,Valencia,CA)に従って、β−メルカプトエタノール(Sigma,St.Louis,MO)を含有する350μLの緩衝液RLTを使用して、細胞を溶解した。製造業者の説明書(RNeasy Mini Kit;Qiagen,Valencia,CA)に従ってRNAを抽出し、DNase処理(2.7単位/サンプル)(Sigma,St.Louis,MO)を施した。RNAは、50マイクロリットルDEPC処理済み水で溶出させ、−80℃で保存した。ヒト臍帯からもRNAを抽出した。β−メルカプトエタノールを含有する、700マイクロリットルの緩衝液RLT中に、組織(30ミリグラム)を懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、サンプルを機械的に均質化し、RNAの抽出を進めた。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを抽出し、−80℃で保存した。
RNAは、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems(Foster City,Ca.))でランダムヘキサマーを用い、25℃で10分間、37℃で60分間、及び95℃で10分間、逆転写させた各試料を−20℃で保存した。
臍帯細胞で特異的に調節されているとして、cDNAマイクロアレイによって特定された遺伝子(シグネチャー遺伝子−酸化LDL受容体、インターロイキン−8、レンニン、及びレチクロンを含む)を、リアルタイムPCR及び従来のPCRを使用して、更に調べた。
商品名ASSAYS−ON−DEMAND(Applied Biosystems)遺伝子発現産物で販売されている遺伝子発現産物を使って、cDNAサンプルについてPCRを実施した。酸化LDL受容体(Hs00234028);レンニン(Hs00166915);レチクロン(Hs00382515);CXCリガンド3(Hs00171061);GCP−2(Hs00605742);IL−8(Hs00174103);及びGAPDHは、ABI Prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems)と共に7000配列検出システムを使用して、製造業者の説明書(Applied Biosystems)に従って、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間、及び95℃で10分間とし、その後、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルが続いた。PCRデータは、製造業者の仕様書(ABI Prism 7700配列検出システムについてApplied BiosystemsからのUser Bulletin #2)に従って分析した。
ABI PRISM 7700(Perkin Elmer Applied Biosystems(Boston,MA))を使用して、従来のPCRを実行することにより、リアルタイムPCRからの結果を確認した。PCRは、2マイクロリットルのcDNA溶液(1×Taqポリメラーゼ(商品名AMPLITAQ GOLD)ユニバーサルミックスPCR反応緩衝液(Applied Biosystems)及び初期変性を使用して、94℃で5分間行われた。各プライマーセットに関して、増幅を最適化させた。IL−8、CXCリガンド3、及びレチクロン(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、30サイクル);レンニン(94℃で15秒間、53℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、38サイクル);酸化LDL受容体及びGAPDH(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、33サイクル)。増幅に使用したプライマーを、表9−1に掲載する。最終PCR反応におけるプライマー濃度は、1マイクロモルとしたが、ただし、GAPDHに関しては0.5マイクロモルとした。GAPDHプライマーは、リアルタイムPCRと同じであったが、ただし、製造業者のTaqMan(登録商標)プローブは、最終PCR反応に加えなかった。2%(w/v)アガロースゲル上でサンプルを分離し、臭化エチジウム(Sigma,St.Louis,MO)で染色した。単焦点POLAROIDカメラ(VWR International(South Plainfield,NJ))を使用して、667フィルム(Universal Twinpack,VWR International(South Plainfield,NJ))に画像を取り込んだ。
Figure 0006647863
臍帯由来細胞及び胎盤組織由来細胞は、4%(w/v)の冷パラホルムアルデヒド(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で10分間、室温にて固定された。継代数0(P0(単離直後)及び継代数11(P11)における臍帯由来細胞のそれぞれ1つの単離物(胎盤由来細胞の2つの単離株)、並びに繊維芽細胞(P11)の単離物を使用した。免疫細胞化学は、以下のエピトープに対する抗体を使用して実行した:ビメンチン(1:500;Sigma(St.Louis,MO))、デスミン(1:150;Sigma、ウサギに対して産生;又は1:300;Chemicon(Temecula,CA)−マウスに対して産生)、α−平滑筋アクチン(SMA;1:400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation(Carpinteria,CA))。更には、以下のマーカーを、継代数11の臍帯由来細胞に対して試験した:抗ヒトGROα−PE(1:100;Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech(Santa Cruz,CA))、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGA−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。
培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma(St.Louis,MO))を含有するタンパク質ブロッキング溶液に30分間曝した。目的のエピトープが、細胞表面(CD34、ox−LDL R1)上に位置している場合には、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての工程で、Triton X−100を省略した。更に、一次抗体がヤギ(GCP−2、ox−LDL R1、NOGO−A)に対して産生された場合には、プロセスを通じて、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及び/又はヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)若しくはロバ抗ヤギIgG−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合において、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて上記で概説した全手順に従った場合、対照染色を上回る蛍光シグナルを表した(1°対照なし)。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを準備した。
フラスコ内の付着細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))中で洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,CA))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBSに、1×10/mLの細胞濃度で再懸濁させた。100マイクロリットルのアリコートを、円錐管に送った。細胞内抗原について染色された細胞に対し、Perm/Wash緩衝液(BD Pharmingen,San Diego,CA)により透過処理した。製造業者の仕様書に従って、アリコートに抗体を添加し、細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベート後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離して余分な抗体を除去した。二次抗体を必要とする細胞を、100μLの3%FBS中に再懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、二次抗体を添加し、細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、余分な二次抗体を除去した。洗浄した細胞を、0.5ミリリットルのPBS中に再懸濁させ、フローサイトメトリーによって分析した。以下の抗体を使用した:酸化LDL受容体1(sc−5813;Santa Cruz、Biotech)、GROa(555042;BD Pharmingen,Bedford,MA)、マウスIgG1κ(P−4685及びM−5284;Sigma)、ロバ抗ヤギIgG(sc−3743;Santa Cruz、Biotech)。フローサイトメトリー分析は、FACScalibur(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して行われた。
ヒト臍帯、ヒト胎盤組織、成人及び新生児線維芽細胞、並びに間葉系幹細胞(MSC)からのcDNAに対して行われた、選択された「シグネチャー」遺伝子に関するリアルタイムPCRの結果は、臍由来細胞が、他の細胞と比べてレチキュロン発現が高いことを示している。このリアルタイムPCRから得られたデータを、ΔΔCT法によって分析し、対数目盛で表した。CXCリガンド及びGCP−2の発現レベルにおける有意な差異は、産後細胞と対照の間には見られなかった。リアルタイムPCRの結果を、従来のPCRによって確認した。PCR産物の配列決定により、これらの観察結果が更に立証された。表9−1に挙げた従来のPCRのCXCリガンド3プライマーを使用したところ、分娩後由来細胞と対照との間には、CXCリガンド3の発現レベルに有意差は見出されなかった。
臍帯細胞におけるサイトカインIL−8の発現は、増殖培地で培養した臍帯由来細胞及び血清不足の臍帯由来細胞の両方において上昇した。リアルタイムPCRの全データは、従来のPCRで、またPCR産物を配列決定することによって立証された。
無血清培地で培養した後、馴化培地が、IL−8の存在について調べられた。表9−2は、胎盤由来細胞、臍帯由来細胞、並びにヒト皮膚線維芽細胞について行ったインターロイキン−8(IL−8)についてのELISAアッセイの結果を示す。表示した値は、ピコグラム/100万細胞、n=2、semである。ND:検出されず。
最大量のil−8が検出されたのは、臍細胞が培養された培地であった(表9−2)。ヒト皮膚線維芽細胞が培養された培地ではil−8が検出されなかった。
Figure 0006647863
継代0でのヒト臍帯由来細胞を、選択されたタンパク質の産生に関して、免疫細胞化学分析によって調べた。単離の直後(継代数0)に、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、6つのタンパク質、すなわち、ヴォン・ヴィレブランド因子、CD34、サイトケラチン18、デスミン、α−平滑筋アクチン、及びビメンチン、の抗体に曝した。臍帯由来細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンに対して陽性であり、この染色パターンは、継代数11まで一貫していた。
継代11の臍帯由来細胞におけるGROα、GCP−2、酸化LDL受容体1、レチキュロン(NOGO−A)の産生を、免疫細胞化学によって調べた。臍帯由来細胞はGCP−2について陽性であったが、GROαの産生は、この方法では検出されなかった。更に、細胞は、NOGO−Aについて陽性であった。
4つの遺伝子、すなわち、酸化LDL受容体1、レンニン、レチクロン、及びIL−8に関し、マイクロアレイ及びPCR(リアルタイム及び従来の双方)によって測定される遺伝子発現レベル間の一致が確認された。これらの遺伝子の発現は、臍帯由来細胞においてmRNAレベルで示差的に調節され、IL−8もまた、タンパク質レベルで示差的に調節された。GCP−2及びCXCリガンド3の示差的発現は、mRNAレベルで確認されなかった。この結果は、マイクロアレイ実験から最初に得られたデータを支持するものではないが、これは、方法の感受性における違いによるものであろう。
継代数0でのヒト臍帯由来細胞を、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの発現に関して調べたところ、双方に関して陽性であった。この染色パターンは、継代数11まで保持された。
結論として、完全なmRNAデータは、マイクロアレイ実験から得られたデータを少なくとも部分的に検証する。
(実施例10)
細胞表現型の免疫組織化学的特性評価
ヒト臍帯組織に見出される細胞の表現型を、免疫組織化学的検査によって分析した。
ヒト臍帯組織を採取し、4%(w/v)パラホルムアルデヒドにより4℃で一晩浸漬固定した。免疫組織化学的検査は、以下のエピトープに対する抗体を使用して実行した(表10−1を参照):ビメンチン(1:500;Sigma,St.Louis,MO)、デスミン(1:150、ウサギに対して産生;Sigma;又は1:300、マウスに対して産生;Chemicon,Temecula,CA)、α−平滑筋アクチン(SMA;1:400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation,Carpinteria,CA)。更に、以下のマーカーを試験した:抗ヒトGROα−PE(1:100;Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech(Santa Cruz,CA))、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGO−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。固定された検体を外科用メスを使用してトリミングし、エタノールを含有するドライアイス浴上の、OCT包理化合物(Tissue−Tek OCT;Sakura(Torrance,CA))内に定置した。次いで、凍結ブロックを、標準のクライオスタット(Leica Microsystems)を使用して切片(厚さ10μm)とし、染色のためにスライドガラス上に載置した。
免疫組織化学的検査は、先の研究と同様に行われた(例えば、Messinaら、Exper.Neurol.,2003;184:816−829)。組織切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、1時間曝した。目的のエピトープが細胞表面(CD34、ox−LDL R1)上に位置している場合には、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての段階で、Tritonを省略した。更に、一次抗体がヤギ(GCP−2、ox−LDL R1、NOGO−A)に対して産生された場合には、手順全体を通して、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で4時間にわたって、これらの切片に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及び/若しくはヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)又はロバ抗ヤギIgG−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。陽性染色は、対照染色を上回る蛍光シグナルによって表された。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
Figure 0006647863
ビメンチン、デスミン、SMA、CK18、vWF、及びCD34マーカーは、臍帯内部に見出される細胞のサブセットで発現した(データ示さず)。具体的には、vWF及びCD34の発現は、臍帯内部に含まれる血管に限定されていた。CD34+細胞は、最内層(内腔側)に存在した。ビメンチンの発現は、臍帯のマトリックス及び血管の全域に見られた。SMAは、動脈及び静脈の、マトリックス及び外壁に限定されたが、血管自体には含まれなかった。CK18及びデスミンは、血管内部のみに観察され、デスミンは、中層及び外層に限定された。
これらのマーカーのいずれも、臍帯内部では観察されなかった(データ示さず)。
ビメンチン、デスミン、α−平滑筋アクチン、サイトケラチン18、ヴォン・ヴィレブランド因子、及びCD 34は、ヒト臍帯内部の細胞内で発現する。ビメンチン及びα−平滑筋アクチンのみが発現することを示したインビトロ特性分析に基づいて、データは、臍帯由来細胞を単離する本プロセスが細胞の亜集団を採取するものであること、又は単離した細胞がマーカーの発現を変化させてビメンチン及びα−平滑筋アクチンを発現することを示唆している。
(実施例11)
UTCが培養液内で培養される際の栄養因子の分泌
培養液内で培養される臍由来細胞からの、選択された栄養因子の分泌を測定した。血管新生活性(即ち、幹細胞増殖因子(HGF))(Rosenら、Ciba Found.Symp.1997;212:215−26)、単球走化性タンパク質1(単球走化活性因子1としても知られている)(MCP−1)(Salcedoら、Blood,2000;96;34−40)、インターロイキン8(IL−8)(Liら、J.Immunol.,2003;170:3369−76)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、塩基性線維芽細胞(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)(Hughesら、Ann.Thorac.Surg.,2004 77:812−8)、マトリックスコラーゲン分解酵素阻害1(TIMP1)、アンジオポエチン2(ANG2)、血小板由来成長因子(PDGFbb)、トロンボポイエチン(TPO)、ヘパリン結合上皮成長因子(HB−EGF)、神経栄養/神経保護活性(脳由来神経栄養因子(BDNF)(Chengら、Dev.Biol.,2003;258;319−33)、ストロマ由来因子1α(SDF−1α)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球走化性タンパク質−2(GCP−2)、トランスフォーミング増殖因子β2(TGFβ2))、又はケモカイン活性(マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP1a)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP1β))、RANTES(活性時に調節、発現お及び分泌された正常なT細胞)、I309、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)を有する因子が選択された。
臍帯由来の細胞、並びにヒト新生児包皮由来のヒト繊維芽細胞を、ゼラチンコートT75フラスコ上の増殖培地において培養した。継代数11で、細胞を凍結保存し、液体窒素中で保存した。細胞の解凍後、それらの細胞に増殖培地を加え、その後、15mL遠心分離管に移して、150×gで5分間、それらの細胞を遠心分離した。4ミリリットルの増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させ、細胞を計数した。細胞は、それぞれ15mLの増殖培地を含むT75フラスコ内において、5,000細胞/cmで播種し、24時間の培養を行った。培地を、無血清培地(DMEM−低グルコース(Gibco)、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(Sigma)、ペニシリン(50単位/mL)、及びストレプトマイシン(50μg/mL、Gibco)に8時間かけて変えた。インキュベーションの終了時に、14,000×gで5分間遠心分離を行い無血清馴化培地を回収し、−20℃で保存した。
各フラスコ内の細胞数を推算するため、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、2mLのトリプシン/EDTA(Gibco)を使用して分離した。8ミリリットルの増殖培地を加えることにより、トリプシン活性を抑制した。これらの細胞を、150×gで5分間、遠心分離した。上清を除去し、1ミリリットルの増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。細胞数は、血球計数器によって推算した。
細胞を、5%二酸化炭素及び大気酸素中、37℃で増殖させた。各細胞サンプルによって産生された、MCP−1、IL−6、VEGF、SDF−1α、GCP−2、IL−8、及びTGF−β2の量を、ELISA(R&D Systems,Minneapolis,Mn.)によって判定した。全てのアッセイは、製造業者の説明書に従って行われた。示された値は、100万個の細胞当たりのピコグラム/mL/mL(n=2,sem)である。
ケモカイン(MIP1α(MIP1α)、MIP1β(MIP1β)、MCP−1、Rantes、I309、TARC、エオタキシン、MDC、IL8)、BDNF、及び血管新生因子(HGF、KGF、bFGF、VEGF、TIMP1、ANG2、PDGFbb、TPO、HB−EGF)を、SearchLight(商標)プロテオームアレイ(Pierce Biotechnology Inc.)を使用して測定した。このプロテオームアレイは、ウェル当り2〜16のタンパク質を定量測定するための、多重サンドイッチELISAである。これらのアレイは、96ウェルプレートの各ウェル内に、2×2、3×3、又は4×4パターンの、4〜16の異なる捕捉抗体をスポットすることによって産生される。サンドイッチELISA手順の後に、プレート全体を画像化して、プレートの各ウェル内部の各スポットで生成された、化学発光シグナルを捕捉する。各スポット内で生成されるシグナルの量は、元の標準又はサンプル中の、標的タンパク質の量に比例する。
MCP−1及びIL−6は、臍由来PPDC及び皮膚繊維芽細胞によって分泌された(表11−1)。SDF−1α(SDF−1α)及びGCP−2が線維芽細胞によって分泌された。GCP−2及びIL−8は、臍由来PPDCによって分泌された。TGF−β2は、いずれの細胞型においても、ELISAによって検出されなかった。
Figure 0006647863
SearchLight(商標)多重ELISAアッセイ。培養液内で培養される時、臍由来PPDCからTIMP1、TPO、KGF、HGF、FGF、HBEGF、BDNF、MIPIβ、MCP1、RANTES、I309、TARC、MDC、及びIL−8が分泌された(下記の表11−2及び表11−3を参照)。Ang2、VEGF、又はPDGFbbは検出されなかった。
Figure 0006647863
Figure 0006647863
臍由来細胞は、多数の栄養因子を分泌した。HGF、bFGF、MCP−1、及びIL−8などの、これらの栄養因子のうちの一部は、血管新生において重要な役割を果たす。BDNF及びIL−6などの他の栄養因子は、神経再生又は保護に重要な役割を果たす。
(実施例12)
インビトロ免疫学
インビボ移植の際に臍帯細胞株(PPDC)が誘導する免疫応答を(もしあれば)予測する目的で、臍帯細胞株を、それらの免疫学的特性に関してインビトロで評価した。分娩後細胞株をフローサイトメトリーでHLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の発現について分析した。これらのタンパク質は、抗原提示細胞(APC)によって発現され、ナイーブCD4 T細胞の直接刺激のために必要とされる(Abbas & Lichtman、Cellular and Molecular Immunology,5th Ed.(2003)Saunders,Philadelphia,p.171)。これらの細胞株はまた、HLA−G(Abbas & Lichtman、上掲),CD178(Coumansら、(1999)Journal of Immunological Methods 224,185〜196)、及びPD−L2(Abbas & Lichtman、上掲;Brownら、The Journal of Immunology 170,2003;1257〜1266)の発現に関しても、フローサイトメトリーによって分析された。分娩後の臍由来細胞株が、インビボで免疫反応を誘発する程度を予測するために、それらの細胞株を、一方向混合リンパ球反応(MLR)で試験した。
細胞は、コンフルエントになるまで、2%ゼラチン(Sigma(St.Louis,MO))でコーティングされたT75フラスコ(Corning(Corning,NY))内の増殖培地で培養された。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))で細胞を洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,MO))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、100マイクロリットルの細胞懸濁液に、抗体(表12−1)を加え、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合の抗体を除去した。500マイクロリットルのPBSに細胞を再懸濁させ、FACSCalibur計器(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。
Figure 0006647863
細胞株「A」とし標識された継代数10の臍由来PPDCの凍結保存バイアルをドライアイスに載せてCTBR(Senneville,Quebec)に送り、CTBR SOP No.CAC−031を用いて混合リンパ球反応を実施した。末梢血単核細胞(PBMC)を、複数の男性及び女性のボランティアドナーから収集した。6つのヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の5つの血液ドナーとの混合リンパ球反応で強い増殖反応を示す、単一の同種異系ドナーを特定した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの5つの血液ドナーを、レシピエントとして選択した。刺激側(ドナー)同種異系PBMC、自家PBMC、及び分娩後細胞株を、マイトマイシンCで処理した。自家のものであり、マイトマイシンC処理した刺激細胞を、反応者(レシピエント)PBMCに添加して、4日間培養した。インキュベーション後、各サンプルに[H]チミジンを添加して、18時間培養した。これらの細胞を採取した後に、放射標識DNAを抽出し、シンチレーション計数器を使用して、[H]−チミジンの取り込みを測定した。プレート当たり3つ受容細胞を入れた細胞培養プレートを2つ使用して、反応を3回実施した。
同種異系ドナーに関する刺激指数(SIAD)は、受容側+マイトマイシンC処理同種異系ドナーの平均増殖を、受容側のベースライン増殖によって除算したものとして、計算した。UTCの刺激指数は、受容側+マイトマイシンC処理分娩後細胞株の平均増殖を、受容側のベースライン増殖によって除算したものとして、算出した。
6つのヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の5つの血液ドナーとの混合リンパ球反応で強い増殖反応を示す、単一の同種異系ドナーを特定した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの5つの血液ドナーを、レシピエントとして選択した。同種異系陽性対照ドナー及び臍帯由来細胞株を、マイトマイシンC処理して、5つの個々の同種異系受容側との混合リンパ球反応下で培養した。反応は、プレート当り3つの受容側を入れた細胞培養プレートを2つ使用して、3回実施した(表12−2)。平均刺激指数は、6.5(プレート1)〜9(プレート2)の範囲であり、同種異系ドナー陽性対照は、42.75(プレート1)〜70(プレート2)の範囲であった(表12−3)。
Figure 0006647863
Figure 0006647863
Figure 0006647863
フローサイトメトリーによって分析された、臍帯由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と一致する蛍光値によって認められる通り、HLA−DR、DP、DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の陰性発現を示すが、このことは、臍帯細胞株には、同種PBMCを直接刺激するのに必要な細胞表面分子がないこと(例えば、CD4 T細胞)を示している。
フローサイトメトリーで分析された臍細胞は、lgG対照に対する蛍光の増加に示されるように、PD−L2の発現については陽性であった。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値により示されるように、CD178及びHLA−Gの発現については陰性であった。
臍細胞株を使用して実施された混合リンパ球反応では、平均刺激指数は6.5〜9の範囲であり、同種異系陽性対照の平均刺激指数は42.75〜70の範囲であった。臍細胞株は、フローサイトメトリーによる測定では、検出可能な量の刺激タンパク質HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2を発現しなかった。また、臍細胞株は、免疫修飾剤タンパク質HLA−G及びCD178も発現しなかったが、PD−L2の発現がフローサイトメトリーによって検出された。同種異系ドナーPBMCは、HLA−DR、DQ、CD8、CD86、及びB7−H2を発現する、抗原提示細胞を含むことにより、同種異形リンパ球の刺激が可能となる。ナイーブCD4T細胞の直接刺激に必要とされる、臍由来細胞上の抗原提示細胞表面分子の非存在、並びに免疫調節タンパク質PD−L2の存在は、同種異系対照と比較した場合に、MLR中でこれらの細胞により示される低い刺激指数を説明し得る。
(実施例13)
テロメラーゼ活性の分析
テロメラーゼは、染色体の完全性を保護し、また細胞の複製寿命を延長するために役立つ、テロメア繰り返し体を合成するように機能する(Liu,Kら、PNAS,1999年:96:5147〜5152)。テロメラーゼは、テロメラーゼRNAテンプレート(hTER)、及びテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の2つの成分からなる。テロメラーゼの調節は、hTERではなく、hTERTの転写によって決定される。hTERTmRNAに関するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、それゆえ、細胞のテロメラーゼ活性を判定するための容認された方法である。
細胞単離
リアルタイムPCR実験を実行して、ヒト臍帯組織由来細胞のテロメラーゼ産生を判定した。ヒト臍帯組織由来細胞は、上記実施例及び米国特許第7,510,873号に記載の実施例に従って調製した。全般的には、正常な分娩後の、National Disease Research Interchange(Philadelphia,Pa.)から得た臍帯を洗浄して、血液及び残渣を除去し、機械的に解離させた。次いで、その組織を、培養培地中、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼを含む消化酵素と共に、37℃でインキュベートした。ヒト臍帯組織由来細胞は、‘012号特許出願の実施例に記載の方法に従って培養した。間葉系幹細胞及び通常の皮膚線維芽細胞(cc−2509ロット番号9F0844)は、Cambrex(Walkersville,Md)から入手した。多能性ヒト精巣胎児性癌(テラトーマ)細胞株nTera−2細胞(NTERA−2 cl.D1)(Plaiaら、Stem Cells,2006;24(3):531〜546を参照)は、ATCC(Manassas,Va.)から購入し、米国特許第7,510,873号に記載の方法に従って培養した。
総RNAの隔離
RNeasy(登録商標)kit(Qiagen(Valencia,Ca.))を使用して、RNAを細胞から抽出した。RNAは、50マイクロリットルのDEPC処理水により溶離させ、−80Cで保存した。RNAは、25℃で10分間、37℃で60分間、95℃で10分間、TaqMane(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems,Foster City,Ca.)を併用したランダムへキサマーを使用して、逆転写した。各試料を−20℃で保存した。
リアルタイムPCR
Applied Biosystems Assays−On−Demand(商標)(TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイとしても既知)を、製造業者の仕様書(Applied Biosystems)に従って使用して、cDNAサンプルに対してPCRを実行した。この市販のキットは、ヒト細胞内のテロメラーゼに関してアッセイするために、広く使用される。簡潔には、hTERT(ヒトテロメラーゼ遺伝子)(Hs00162669)及びヒトGAPDH(内部対照)を、ABI prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems)と共に7000配列検出システムを使用して、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間とし、その後に、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルとした。PCRデータを、製造業者の仕様書に従って分析した。
ヒト臍帯由来細胞(ATCC受託番号PTA−6067)、線維芽細胞、及び間葉系幹細胞を、hTERT及び18S RNAに関してアッセイした。表13−1に示すように、hTERT、よってテロメラーゼは、ヒト臍帯組織由来細胞内では検出されなかった。
Figure 0006647863
ヒト臍帯組織由来細胞(単離株022803、ATCC受託番号PTA−6067)及びnTera−2細胞をアッセイしたところ、それらの結果は、ヒト臍帯組織由来細胞の2つのロットでは、テロメラーゼの発現を示さなかったが、一方で、テラトーマ細胞株は、高レベルで発現することが明らかとなった(表13−2)。
Figure 0006647863
それゆえ、本発明のヒト臍帯由来細胞は、テロメラーゼを発現しないということを、結論付けることができる。
以上、本発明を、様々な特定の材料、手順及び実施例を参照しながら本明細書に説明及び例示したが、本発明は、その目的のために選択された特定の材料及び手順の組み合わせに限定されない点は理解されるであろう。当業者には認識されるように、このような細部には多くの変更を行い得ることが示唆される。本明細書及び実施例はあくまで例示的なものとしてみなされるべきものであり、発明の真の範囲及び趣旨は以下の「特許請求の範囲」によって示されるものである。本出願において引用される参照文献、特許及び特許出願は、いずれもそれらの全容を参照により本明細書に援用するものとする。
〔実施の態様〕
(1) 肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷を有する患者における前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節する際に使用する臍帯組織由来細胞であって、前記細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、臍帯組織由来細胞。
(2) 前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータが、前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の進行に係る、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(3) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、急性肺損傷(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(4) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患である、実施態様3に記載の臍帯組織由来細胞。
(5) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、実施態様4に記載の臍帯組織由来細胞。
(6) 前記調節が、少なくとも1つの他の細胞型及び/又は少なくとも1つの他の剤と共に前記細胞を投与することを含む、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(7) 前記他の細胞型が、肺前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、又は他の多分化能若しくは多能幹細胞から選択される肺組織細胞である、実施態様6に記載の臍帯組織由来細胞。
(8) 前記剤が、抗血栓性薬剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節薬、血管新生促進剤、又は抗アポトーシス剤である、実施態様6に記載の臍帯組織由来細胞。
(9) 前記細胞が、前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を低減する、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(10) 前記細胞が、前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を抑制する、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(11) 調節が、注射、注入、前記患者に植え込まれた装置により、又は前記細胞を含むマトリックス若しくはスカフォールドの植え込みにより前記細胞を投与することを含む、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(12) 前記細胞が、前記患者の前記肺組織、血管平滑筋、又は血管内皮に栄養作用を及ぼす、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(13) 慢性閉塞性肺疾患を有する患者における前記慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する際に使用する臍帯組織由来細胞であって、前記細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、臍帯組織由来細胞。
(14) 前記細胞が、慢性閉塞性肺疾患の前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を抑制する、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(15) 前記慢性閉塞性肺疾患が、気腫である、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(16) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎である、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(17) 前記低減することが、前記慢性閉塞性肺疾患の部位に前記細胞を投与することを含む、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(18) 前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータが、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様1又は13に記載の臍帯組織由来細胞。
(19) 前記細胞に、CD117及びCD45の産生がない、実施態様1又は13に記載の臍帯組織由来細胞。
(20) 前記細胞が、更に、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する、
(b)CD31又はCD34を発現しない、
(c)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1(reticulon 1)の発現レベルが増加する、並びに
(d)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、という特性のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施態様1又は13に記載の臍帯組織由来細胞。
(21) 単離されたヒト臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節する際に使用する医薬組成物であって、前記細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から取得可能であり、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、医薬組成物。
(22) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、急性肺損傷(ALI)、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される、実施態様21に記載の医薬組成物。
(23) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患である、実施態様22に記載の医薬組成物。
(24) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、実施態様23に記載の医薬組成物。
(25) 単離されたヒト臍帯組織由来細胞を含む、慢性閉塞性肺疾患を有する患者における前記慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する際に使用する医薬組成物であって、前記細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から取得可能であり、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、医薬組成物。
(26) 前記使用が、慢性閉塞性肺疾患の前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を抑制する、実施態様25に記載の医薬組成物。
(27) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、実施態様25に記載の医薬組成物。
(28) 前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータが、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様21又は25に記載の医薬組成物。
(29) 前記細胞が、更に、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する、
(b)CD31又はCD34を発現しない、
(c)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、並びに
(d)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、という特性のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施態様21又は25に記載の医薬組成物。
(30) 薬学的に許容されるキャリア及び臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節するためのキットであって、前記細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、キット。
(31) 前記肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患である、実施態様30に記載のキット。

Claims (13)

  1. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者のTNF−α、RANTES、IL−1β及びこれらの組み合わせの産生低減をして前記慢性閉塞性肺疾患の疾患症状を軽減するために臍帯組織由来細胞を含む治療用組成物であって、前記臍帯組織由来細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及び/又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、組成物。
  2. 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、請求項に記載の組成物。
  3. 前記低減することが、前記慢性閉塞性肺疾患の部位に前記臍帯組織由来細胞を投与することを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記臍帯組織由来細胞が、TNF−α、RANTES、IL−1β及びこれらの組み合わせの前記産生を抑制する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記臍帯組織由来細胞が、前記患者の肺組織、血管平滑筋、又は血管内皮に栄養作用を及ぼす、請求項1又は2に記載の組成物。
  6. 慢性閉塞性肺疾患の患者のTNF−α、RANTES、IL−1β、及びこれらの組み合わせのうちの1つ又は2つ以上の産生抑制をして前記慢性閉塞性肺疾患の疾患症状を軽減するために臍帯組織由来細胞を含む治療用組成物であって、前記臍帯組織由来細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及び/又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、組成物。
  7. 前記臍帯組織由来細胞に、CD117及びCD45の産生がない、請求項1〜3及び6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 前記臍帯組織由来細胞が、更に、
    (a)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する、
    (b)CD31又はCD34を発現しない、
    (c)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、並びに
    (d)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、という特性のうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項1、6、及び7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 前記低減することが、少なくとも1つの他の細胞型及び/又は少なくとも1つの他の剤と共に前記臍帯組織由来細胞を投与することを含む、請求項1、3及び8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記抑制をすることが、少なくとも1つの他の細胞型及び/又は少なくとも1つの他の剤と共に前記臍帯組織由来細胞を投与することを含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 前記他の細胞型が、肺前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、又は他の多分化能幹細胞から選択される肺組織細胞である、請求項9又は10に記載の組成物。
  12. 前記剤が、抗血栓性薬剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節薬、血管新生促進剤、又は抗アポトーシス剤である、請求項9又は10に記載の組成物。
  13. COPDの患者の肺におけるTNF−α、RANTES、IL−1β及びこれらの組み合わせのうちの1つ又は2つ以上の産生を低減して前記COPDの疾患症状を軽減するために使用されるキットであって、前記キットが、臍帯組織由来細胞と、薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤とを含み、前記臍帯組織由来細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、キット。
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