JP6647499B1 - 管継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】継手本体と筒状体の固着作業が容易でありながら、継手本体から筒状体の離脱を確実に防止できる管継手の提供。【解決手段】雄ネジ部31を端部1aに有する合成樹脂製の継手本体1と、雄ネジ部31に螺合する雌ネジ部32を有する合成樹脂製の筒状体2を備えた管継手にあって、継手本体1は、雄ネジ部31の基端近傍に、軸心方向Fから見て筒状体2の螺進回転方向に倒れた傾斜状の一対の係止爪片部51、51が一体成型され、筒状体2は雌ネジ部32の開口端近傍に、軸心方向Fから見て筒状体2の螺退回転方向に倒れた不等辺三角状として突設された多数の係止歯部を有し、雄ネジ部31と雌ネジ部32の螺着完了直前で、係止歯部が順次係止爪片部51を弾性変形させつつ乗り越えて、筒状体2の螺進方向への回転が可能となるように構成し、螺着完了状態で、係止爪片部51と係止歯部が係止して、筒状体2の螺退方向への回転が阻止されるように構成した。【選択図】図2

Description

本発明は、管継手に関する。
従来、パイプが差込まれる管継手は、差込まれたパイプの内部と連通する流路部を有する継手本体と、継手本体の開口側に外嵌状に固着される筒状体と、を備え、継手本体と筒状体によって、Oリングや抜止めリング等の継手内装部品を配設するための収容空間部を形成したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
そして、継手本体と筒状体とを、高周波(超音波)融着や熱融着にて固着していた。或いは、継手本体にラジアル外方突出状の環状低凸条部を設けると共に、筒状体の内周面に凹周小溝部を設けて、凹凸の嵌め殺しによる機械的強制嵌着にて固着し、その後、高周波融着にて接続(固着)していた。
特開2013−221586号公報
しかし、継手本体と筒状体とを、高周波(超音波)融着や熱融着にて固着するためには製造設備が複雑化し、製造の能率化を図ることが困難であるという問題があった。しかも、上記の融着によって固着された部位(継手本体及び筒状体の融着部位とその近傍部位)には、残留応力が残る。
このように、残留応力が残っている管継手に、その後の壁面塗装作業によって、塗料が付着すると、塗料に含まれる溶剤(ソルベント)によって、ソルベントクラック(亀裂)が発生して、水漏れ事故が起こる虞れがある。
さらに、台所内の配管等において、強アルカリ性の液体として、例えば、台所のレンジフード用アルカリ性クリーナ(洗剤)が、管継手に付着すると、継手本体のみならず筒状体にも、上記残留応力に起因する、クラック(亀裂)が発生し、水漏れ事故が起こる虞れもある。
そこで、本発明は、筒状体を継手本体に固着するための製造設備を簡略化して、作業能率を改善することを目的とする。また、前述のような固着後の残留(内部)応力の発生を解消して、塗料付着によるソルベントクラック、及び、強アルカリ性の液体付着によるクラック(亀裂)の問題も解決できる管継手の提供を目的とする。
本発明の管継手は、合成樹脂製の継手本体と、該継手本体の端部に取付けられる合成樹脂製の筒状体とを、備え、パイプ未挿入状態で、上記継手本体と筒状体とを組立てて一体化された管継手に於て、上記継手本体の端部に雄ネジ部を設け、かつ、上記筒状体は上記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成され、上記継手本体は、上記雄ネジ部の基端近傍に、一対の係止爪片部が一体成型され、しかも、上記係止爪片部は軸心方向から見て、上記筒状体の螺進回転方向に倒れた傾斜状として突設された長方形薄板片から成り、該係止爪片部は弾性変形にて継手軸心へ近づく方向へ傾倒可能に設けられ、上記筒状体は、基端側開口部の内周面に、多数かつ偶数個の係止歯部を周方向360°に渡って有し、かつ、該係止歯部は上記軸心方向から見て、上記筒状体の螺退回転方向に倒れた不等辺三角状として突設され、上記雄ネジ部と上記雌ネジ部の螺着完了以前に、上記係止歯部が順次上記係止爪片部を弾性変形させつつ乗り越えて、上記筒状体の螺進方向への回転が可能となるように構成し、螺着完了状態で、上記係止爪片部と上記係止歯部が係止して、上記筒状体の螺退方向への回転が阻止されるように構成し、さらに、一対の上記係止爪片部は、継手軸心を中心として180度回転対称として配設され、上記筒状体の螺退方向への回転が阻止された状態で、一対の上記係止爪片部が、同時に上記係止歯部に係止しているものである。
本発明によれば、継手本体への筒状体の固着作業を、大型で複雑な融着装置や治具を用いずに、容易に行うことができる(生産性向上)。しかも、継手本体に対して筒状体を確実に固着することが可能となる。継手本体に対しての筒状体の固着のために熱を利用しないで済み、残留応力(内部応力)も生じない。従って、配管接続後の塗装作業時に溶剤(ソルベント)が付着しても、ソルベントクラック(亀裂)の発生を防止でき、さらに、強アルカリ性の液体付着によるクラック(亀裂)の発生も防止できる。
本発明の実施の一形態を示す側面図である。 断面側面図である。 図2のX−X断面図である。 継手本体の一例を示す斜視図である。 継手本体の一例を示す側面図である。 図5のY−Y断面図である。 筒状体の一例を示し、背面側からみた斜視図である。 筒状体の一例を示す背面図である。 継手本体の製造方法と製造のための金型を説明するための断面図であって、(A)は成型状態の断面図であり、(B)は金型分離状態の断面図である。
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る管継手は、図1と図2に示すように、差込まれたパイプPの内部Pbと連通する流路部(孔)30を有する合成樹脂製(樹脂成型品)の継手本体1と、継手本体1の端部1aに外嵌状に取着される合成樹脂製の筒状体2と、を備えた管継手であって、図2に示すように、継手本体1と筒状体2によって、Oリング等のシール材61や抜止めリング62等の継手内装部品(部材)を配設するための収容空間部60を内周凹溝状に形成している。
なお、図例においては、継手本体1の両端部1a,1a夫々に筒状体2が取着されるソケット型の管継手である。図1と図2は、左半部がパイプ未接続状態、右半部がパイプ挿入(接続)完了状態を示している。
図2に於て、継手本体1は端部1aに雄ネジ部31を有している。筒状体2は、基端側開口部2bに継手本体1の雄ネジ部31と螺合する雌ネジ部32を有している。そして、筒状体2の基端側端面である当り面27が、継手本体1の雄ネジ部31よりも基端側に設けた外鍔状のストッパ面17に当接するまで螺進可能である。
図2乃至図6に示すように、継手本体1の各端部1aにおいて、雄ネジ部31の基端近傍に、一対の係止爪片部51,51が樹脂にて一体成型されている。
一対の係止爪片部(揺動弾性舌片)51,51は、軸心方向F(パイプ挿入方向A)から見て、筒状体2の螺進回転方向Naに倒れた傾斜状として突設されている。言い換えれば、各係止爪片部51は、円形状外周面の接線方向に延伸状である。
一対の係止爪片部51,51は、弾性変形にて(継手軸心Laへ近づく方向へ)傾倒可能に設けている。
また、一対の係止爪片部51,51は、継手軸心Laを中心として180度回転対称として配設されている(継手軸心Laに対して180度回転対称位置にある)。
図2と図3と図7と図8に示すように、筒状体2は、雌ネジ部32の開口端近傍(基端側開口部2bの内周面)に、継手軸心La廻りに等間隔に、多数(10個以上の複数個)の係止歯部52が樹脂にて一体成型されている。言い換えると、筒状体2の基端側開口部2bの内周面を内歯車状に形成している。
係止歯部52は、軸心方向Fから見て、筒状体2の螺退回転方向Nbに倒れた不等辺三角(形)状として突設されている。
係止歯部52は、基端側開口部2bの内周面からラジアル内方へ(突出状に)形成され螺着完了状態で係止爪片部51の先端部に係止する係止面52eと、上記開口端縁内周面から螺退回転方向Nbに倒れた傾斜状として(突出状に)形成され螺着完了直前で係止爪片部51をラジアル内方へ傾倒させるガイド傾斜面52dと、を有している。
即ち、図3に示すように、継手本体1の係止爪片部51と、筒状体2の多数の係止歯部52とで、筒状体2の螺進方向への回転を可能とすると共に、筒状体2が螺退方向に所定回転角度以上で回転するのを阻止するラチェット部を形成し、雄ネジ部31と雌ネジ部32の螺着完了直前で、係止歯部52のガイド傾斜面52dが係止爪片部51に摺接し、係止歯部52が順次、係止爪片部51をラジアル内方へ弾性変形させつつ乗り越えて、筒状体2の螺進方向への回転が可能となるように構成し、螺着完了状態で、係止爪片部51と係止歯部52が係止して、筒状体2の螺退方向への回転が阻止されるように構成している。
そして、筒状体2の螺退方向への回転が阻止された状態において、一対の係止爪片部51,51が、同時に係止歯部52に係止している。つまり、係止歯部52は偶数個設けている。1つの係止爪片部51に、螺退回転方向Nbの力が集中するのを防止している。
筒状体2は、螺着完了位置直前(螺進完了位置近傍)では、螺進方向への回転が可能であると共に、螺退方向に所定回転角度以上で回転することが阻止されている。所定回転角度は、継手軸心La廻りの係止歯部52(係止面52e)のピッチ角度θ(図8参照)と同等である。
ピッチ角度θは、6度以上36度以下に設定するのが好ましい。言い換えると、係止歯部52は10個以上60個以下の偶数個とするのが好ましい。6度未満であると(60個を越えると)間隔が狭く製造が困難になる。36度を越えると(10個未満であると)間隔が大きすぎて、所定の螺進完了位置で係止爪片部51と係止歯部52を係止させるために各部の寸法を高精度にする必要があり成形(製造)が困難になる。
そして、螺着完了状態では、係止爪片部51と係止歯部52の係止にて螺退方向への回転が阻止され、さらに、継手本体1のストッパ面17と、筒状体2の当り面27が当接、或いは、継手本体1のストッパ面17から、筒状体2の当り面27が僅かに離間してる。
言い換えると、螺着完了状態では、筒状体2は、継手本体1のストッパ面17によって螺進が阻止された状態、或いは、所定寸法以上螺進するとストッパ面17に当接する状態(所定寸法以上の螺進が阻止された状態)となっている。
このように、継手本体1と筒状体2を螺合にて取着し、係止爪片部51と係止歯部52によって所定の螺着完了位置で螺退を防止した構造は、螺着完了状態で、継手本体1や筒状体2に発生する残留応力が融着による接続に比べて極めて小さいため(残留応力がほとんど無く)、ソルベント(溶剤)と大きな残留応力が原因のクラック(亀裂)や劣化を防止できる。
また、1つの係止歯部52が係止爪片部51を乗り越えると、係止爪片部51が弾性的復元力によって元の傾斜状姿勢に戻って、次の係止歯部52のガイド傾斜面52dを叩いて「カッチ」という音が発生する。つまり、筒状体2が螺進すると、係止歯部52が順次係止爪片部51を弾性変形させつつ乗り越えるたびに、「カッチ、カッチ、カッチ」とした作動音を発するように構成し、組付け(螺着)作業者に筒状体2の螺退ができないことを伝え、螺退方向へ無理に回転させて係止爪片部51を破損させるような組立ミスを防止できる。
また、一対の係止爪片部51,51は、継手軸心Laを中心として相互に180度回転対称として配設することで、図9に示すように、一対の分割金型81,82と、孔部形成用段付きのコアー金型(中子)83と、によるシンプルな樹脂成形金型によって、継手本体1の成形が可能となる。
また、第1分割金型81と第2分割金型82の各成型面や分割面(パーティングライン)の形状も簡素となり一対の分割金型81,82の製造も容易となる。
なお、図面を見やすくするために、図9に於て、第1・第2分割金型81,82とコアー金型83を端面図で図示し、継手本体1を断面図で図示している。
図9(A)に示すように、第1・第2分割金型81,82を相互に接近させて組付状態にすると共に、コアー金型83を配設してキャビティ80を形成し、キャビティ80内に溶融樹脂を充填して固化した後に、図9(B)に示すように、第1・第2分割金型81,82を離間させると共に、コアー金型83を引き抜くだけで、成型品を簡単に取出すことができる。
第1・第2分割金型81,82において、係止爪片部51を成形するための部位は、図9(B)に示すように、相互に平行な分割基準面81a,82aと、継手本体1の外周面を形成するためのU字状凹部81b,82bと、U字状凹部81b,82bの一方端から分割基準面81a,82aに向かって拡大状に傾斜して係止爪片部51の傾斜外側面(係止歯摺接面)を形成するための勾配面81c,82cと、U字状凹部81b,82bの他方端から分割基準面81a,82aに向かって設けられ分割基準面81a,82aに直交状のストレート面81d,82dと、ストレート面81d,82dに連続して形成され分割基準面81a,82aに直交状の起立面81e,82eと、起立面81e,82eの先端から分割基準面81a,82aに向かって金型外方へ傾斜して係止爪片部51(の傾斜内側面)を形成するための傾斜面81f,82fとを有している。アンダーカット部がなく、金型の抜け(分離)が容易で、品質が安定すると共に、高精度に成型可能である。
つまり、継手本体1は、図6に示すように、一対の係止爪片部51の近傍に、係止爪片部51の基端と接して爪片隅部56を形成する平坦面55を設けている。平坦面55は継手軸心Laを中心として180度回転対称として配設されている。一対の平坦面55,55は、相互に平行状に配設されている。言い換えると、平坦面55は分割基準面81a,82に直交状に形成している。平坦面55は、横断面(軸心方向Fから見て)ストレート状であり、爪片隅部56は、横断面(軸心方向Fから見て)V字状である。上述のようなシンプルな金型構造をもって、係止爪片部51,51、及び、雄ネジ部31を、能率的に、射出成型できる。
また、継手本体1は、図2に示すように、軸心方向全長に渡って、透明樹脂による(透明樹脂内層11と透明樹脂外層13の)内外二重構造である。図2と図3に於て、透明樹脂内層11と透明樹脂外層13の境界を二点鎖線で図示している。
筒状体2は、PC(ポリカーボネート)等の耐ソルベント性に優れた不透明樹脂で成型している。
パイプPの材質は、PEXやPB等の比較的に軟らかい樹脂が好適である。(なお、PE,架橋PE等の比較的に軟らかい樹脂でも良い。)
そして、図2に示すように、透明の継手本体1のアキシャル方向の各端部1aに、不透明の筒状体2が固着され、一対の筒状体2,2の基端(アキシャル内方端)2g,2g相互の間に形成される間隔領域のみが透明状であり、この間隔領域をもって、パイプ挿入完了確認領域Gとしている。
さらに、透明な上記パイプ挿入完了確認領域Gにまで、パイプPの先端面Pcが押し込まれてきたことを、継手本体1の外部Eから、配管作業者又は検査員が、目視確認可能なように、閉円環状の目印環体20が設けられている。
目印環体20の外周面は、先端へ縮径状のテーパ状勾配面10を有し、この勾配面10、或いは、外面(外周面)全体を、(塗装や塗付、或いは、素材そのもの色等によって、)赤色、橙色、黄色、桃色(ピンク)としたり、さらには蛍光色として、配管作業者又は検査員が、パイプ挿入完了確認領域Gの外部における360°のいずれからでも、目視確認とする。しかも、一般に乳白色のパイプPの最先端部位をも、360°のいずれの方向から、目視確認できる。
目印環体20は、樹脂(又はゴム)から成る閉円環状リングから成り、外周に(先端へ弯曲凸状として縮径する)勾配面10を有する。
パイプPを矢印A方向に挿入する際に、目印環体20の勾配面10がシール材61を弾性的に拡径させてパイプPの先端面Pcの通過がスムーズとなるように誘導するガイド機能を発揮する。
目印環体20は、金属製の薄肉の円筒体69の端部(先端縁部)に外嵌状に取着される。
円筒体69は、パイプPの内部Pbに先端から小寸法に渡って密に挿入された状態にて、その挿入された部位(一部位)が、パイプPが縮径異常変形することを阻止する補強機能を発揮する。また、円筒体69は、薄肉であり、湯や水等の通過抵抗を減少できる。
また、図2から明らかなように、Oリング等のシール材61が、挿入されたパイプPの外周面に密接する。つまり、外面止水の密封構造とする。
なお、64はシール材61のバックアップリングであり、筒状体2の内鍔状の段差部2dと、継手本体1の外端面(先端面)との間に介装されている。また、抜止めリング62の歯部62aの傾斜に沿うように、バックアップリング64の内周と外端面との角部は面取りされている(逃がしている)。
そして、図2から判るように、シール材61の配設位置は、継手本体1における透明な前記挿入完了確認領域G以外の軸心方向位置に、配設している。即ち、図2では不透明の筒状体2の軸心方向位置に対応させて、抜け止めリング62やシール材61やバックアップリング64やスペーサ66等の継手内装部品を配設する。
ここで、継手本体1は、透明樹脂内層11と透明樹脂外層13から成る内外二重構造であって、不透明の筒状体2の未取着(固着)状態では、アキシャル方向全体にわたって透明である。そして、内層11は、給湯に耐える耐熱性樹脂とする。例えば、ポリスルホン(PSU),ポリフェニレンスルフィド(PPSU),ポリサルフォン(PSP)等が好適である。他方、外層13は、溶剤に耐える耐ソルベント性樹脂とする。例えば、ポリカーボネート(PC)が好適である。特に、内層11・外層13共に「透明」である。
そして、2種類の樹脂をもって、2色射出成形にて相互に積層一体化して、構成される。
ところで、樹脂は、不透明で良ければ、耐熱性及び耐ソルベント性を同時に充たすものが従来から存在しており、ねずみ色等の不透明なポリフェニレンスルフィド(PPS)が管継手の材料として公知である。
しかしながら、「透明」でなければならないという条件下では、給湯に耐える(95℃程度に耐える)耐熱性、及び、接着剤や塗料中の溶剤に耐える耐ソルベント性を、同時に充足する実用性のある樹脂は、現実には存在しない。
そこで、本発明に係る管継手では、透明かつ耐熱性の樹脂から成る内層11と、透明かつ耐ソルベント性の樹脂から成る外層13を、2色射出成形にて相互に積層一体化することで、初めて、次の3つの条件を満たす継手本体1を誕生させたのである。
条件 (i) :給湯用に耐える耐熱性(約95℃)を備えていること。
条件 (ii) :接着剤・塗料が外部から付着した場合に、接着剤や塗料に含まれた溶剤によって亀裂を発生しない耐ソルベント性を、備えていること。
条件(iii) :目印環体20が挿入完了確認領域Gに到達したことを外部Eから目視確認できる透明性を、備えていること。
抜止めリング62は、薄い金属板製であって、パイプPの外周面に食込み可能な多数の歯部62aを内周縁62bに有している。この抜止めリング62は、SUS材等の弾発力を有する高剛性な金属板から成り、内周縁62bに沿って、等間隔の切込み62cを形成すると共に、パイプP の挿入方向Aに傾斜状に折曲げられて、多数の歯部62aが形成されている。
図2の右半部に示したように、抜止めリング62の歯部62aが、パイプP の外周面に食い込んだパイプ引抜阻止状態で、パイプPと一体状に回転しつつ、アキシャル外方向へのパイプ引抜けを防止するよう構成されている。
また、継手本体1は、アキシャル方向中央の位置に、パイプPの内径又は円筒体69の内径に略等しい内径の内鍔部15を有し、パイプPにて押込まれてきた目印環体20が当接する第1の段付部16と、勾配部18と、パイプPの外径寸法よりも僅かに大きいパイプ先端挿入用中径部19と、スペーサ66やシール材61を位置決めするための第2の段付部14と、シール材61とスペーサ66が内嵌状に配設されるシール溝底面形成用大径部12とを、順次有する。この継手本体1は、軸心逆方向(アキシャル外方)に孔部形成用段付のコアー金型83(図9(A)参照)を、容易に成形後に引抜くことができる。また、シール材61とスペーサ66を収納するシール凹溝は、第2の段付部14と大径部12とバックアップリング64にて、形成されている。
図例において継手本体1は、ソケット型の場合を例示したが、他端側に接続ネジ部等の別の形状の連結部を有するアダプターや、エルボ、チーズとしても良い。例えば、図2に於て、軸心方向の中央線Lmよりも他端側(図面左半部)の形状は自由である。
このように構成することで、継手本体1が、透明樹脂内層11と透明樹脂外層13の内外二重構造から成るパイプ挿入完了確認領域Gを、備え、さらに、挿入されるパイプPの先端面Pcによって押込まれて、継手本体1の内部に挿入される目印環体20を有し、目印環体20が継手本体1の挿入完了確認領域Gに到達したことを、継手本体外部Eから目視確認可能に構成されているので、パイプ挿入完了確認領域Gは、種々の苛酷な使用条件・環境・雰囲気に於て、透明を維持する透明樹脂の組合せが可能となった。その組合せによって、継手本体外部Eから、360°のいずれからでも、目印環体20を目視確認してパイプPが正規位置まで挿入しているか否かを、迅速かつ確実に検査(点検)できる。例えば、ポリカーボネート(PC)は耐ソルベント性に優れ、接着剤や塗料の溶剤が付着する環境・雰囲気で使用できるが、内部流体の温度が高い使用条件では使用に適さないので、PC一層をもって、透明なパイプ挿入完了確認領域Gを形成できず、逆に、PSU,PPSU,PSPは給湯にも使用できるが、上記溶剤が付着する環境・雰囲気ではソルベントクラック(亀裂)を発生するため、それ等の樹脂のみをもって、透明なパイプ挿入完了確認領域Gを形成できない、という難題を解決できる。従って、新築建物の室内にて、(壁面塗装に伴った)給湯配管からの水漏れといった重大事故を防止できる。
また、継手本体1における挿入完了確認領域G以外の軸心方向位置に、不透明樹脂の筒状体2を外嵌した構成であるので、製作し易く、この不透明の筒状体2によって、作業者又は検査員は、挿入完了確認領域Gに対してのみ注意を集中して、迅速かつ確実な確認と点検を行い得る。内層11と外層13の間に空気層等が存在せず、透明性が高く、パイプ挿入完了を容易・迅速かつ確実にチェックできる。特に、内層11が耐熱性に優れ、給湯用途に使用でき、しかも、外層13が接着剤や塗料の溶剤が付着してもソルベントクラックを生ずることなく耐久性に優れ、これによって、内装で塗装工事が行われる(木造の)新築建物での漏水による事故を、有効防止できる。
また、円筒体69は、パイプPが縮径異常変形することを阻止する補強機能を備えた構成であるので、パイプPの先端に押されて、安定姿勢をもってスムーズに継手本体1内へ挿入され、しかも、抜止めリング62の縮径方向の大きな局部的外力がパイプPに作用した際に、確実にサポートして、パイプPが局部的に縮径異常変形することに伴って引抜ける等の事故を、防止できる。
また、目印環体20は、外周に勾配面10を有する閉円環状リングから成るので、パイプPの先端面Pcの角部がシール材61を傷付けないように、パイプ挿入時のガイド(誘導)の機能を発揮する役目も兼ね、かつ、部品としてはシンプルで安価である。
また、上記継手本体1における上記挿入完了確認領域G以外の軸心方向位置に、パイプPの外周面に密接するシール材61を配設したので、目印環体20を目視で確認する際の邪魔とならず、しかも、パイプ挿入完了確認領域Gにおける内外二重構造の壁部を、目印環体20に極めて接近させて配置できることとなって、目視点検を、さらに、容易かつ確実に行い得る。
なお、本発明は、設計変更可能であって、継手本体1は、2部品(複数の部材)を組み付けて形成したものでも良い。さらに、図例の抜止めリング62に限らず、公知の種々の抜止機構のものに変更することも、自由である。また、シール材61の数や配置も自由である。つまり、継手内装部品の形状や配置、抜け止め構造や密封(シール)構造は自由である。
以上のように、本発明の管継手は、雄ネジ部31を端部1aに有する合成樹脂製の継手本体1と、雄ネジ部31に螺合する雌ネジ部32を有する合成樹脂製の筒状体2とを、備えた管継手に於て、上記継手本体1は、上記雄ネジ部31の基端近傍に、一対の係止爪片部51,51が一体成型され、しかも、上記係止爪片部51は軸心方向Fから見て、上記筒状体2の螺進回転方向Naに倒れた傾斜状として突設され、上記筒状体2は、上記雌ネジ部32の開口端近傍に、多数の係止歯部52を有し、かつ、該係止歯部52は上記軸心方向Fから見て、上記筒状体2の螺退回転方向Nbに倒れた不等辺三角状として突設され、上記雄ネジ部31と上記雌ネジ部32の螺着完了直前で、上記係止歯部52が順次上記係止爪片部51を弾性変形させつつ乗り越えて、上記筒状体2の螺進方向への回転が可能となるように構成し、螺着完了状態で、上記係止爪片部51と上記係止歯部52が係止して、上記筒状体2の螺退方向への回転が阻止されるように構成したので、継手本体1と筒状体2の取着(連結)作業を、大型で複雑な融着装置や治具を用いずに容易に行うことができる。継手本体1と筒状体2とを簡単な作業にて確実に連結できる。しかも、継手本体1と筒状体2の接続による残留応力(内部応力)がほとんど生じない。従って、壁面塗装に伴って塗料が付着するような環境・雰囲気で使用しても、ソルベントクラック(亀裂)が発生しない。さらに、アルカリ性クリーナ(洗剤)が付着するような場所に使用しても、クラック(亀裂)は発生しない。また、継手本体1と筒状体2の材質が、相互に融着が困難な異なる種類の合成樹脂であっても、確実に取着(固着)できる。
また、一対の上記係止爪片部51,51は、継手軸心Laを中心として180度回転対称として配設され、上記筒状体2の螺退方向への回転が阻止された状態で、一対の上記係止爪片部51,51が、同時に上記係止歯部52に係止しているので、螺退方向への回転を確実に防止できる。1つの係止爪片部51に螺退回転方向Nbの力が半分しか掛からず、耐久性を向上できる。また、継手本体1の成形金型の構造を簡素にでき、容易に製造できる。
1 継手本体
1a 端部
2 筒状体
31 雄ネジ部
32 雌ネジ部
51 係止爪片部
52 係止歯部
F 軸心方向
La 継手軸心
Na 螺進回転方向
Nb 螺退回転方向

Claims (1)

  1. 合成樹脂製の継手本体(1)と、該継手本体(1)の端部に取付けられる合成樹脂製の筒状体(2)とを、備え、パイプ未挿入状態で、上記継手本体(1)と筒状体(2)とを組立てて一体化された管継手に於て、
    上記継手本体(1)の端部(1a)に雄ネジ部(31)を設け、かつ、上記筒状体(2)は上記雄ネジ部(31)に螺合する雌ネジ部(32)が形成され、
    上記継手本体(1)は、上記雄ネジ部(31)の基端近傍に、一対の係止爪片部(51)(51)が一体成型され、しかも、上記係止爪片部(51)は軸心方向(F)から見て、上記筒状体(2)の螺進回転方向(Na)に倒れた傾斜状として突設された長方形薄板片から成り、該係止爪片部(51)は弾性変形にて継手軸心(La)へ近づく方向へ傾倒可能に設けられ、
    上記筒状体(2)は、基端側開口部(2b)の内周面に、多数かつ偶数個の係止歯部(52)を周方向360°に渡って有し、かつ、該係止歯部(52)は上記軸心方向(F)から見て、上記筒状体(2)の螺退回転方向(Nb)に倒れた不等辺三角状として突設され、
    上記雄ネジ部(31)と上記雌ネジ部(32)の螺着完了以前に、上記係止歯部(52)が順次上記係止爪片部(51)を弾性変形させつつ乗り越えて、上記筒状体(2)の螺進方向への回転が可能となるように構成し、
    螺着完了状態で、上記係止爪片部(51)と上記係止歯部(52)が係止して、上記筒状体(2)の螺退方向への回転が阻止されるように構成し
    さらに、一対の上記係止爪片部(51)(51)は、継手軸心(La)を中心として180度回転対称として配設され、上記筒状体(2)の螺退方向への回転が阻止された状態で、一対の上記係止爪片部(51)(51)が、同時に上記係止歯部(52)に係止していることを特徴とする管継手。
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