JP6646903B2 - ピアノ、ピアノのアクション - Google Patents
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Description
ピアノのアクションは、演奏者がピアノの鍵を押したときに、その鍵の動作をハンマーヘッドに伝える。演奏者がピアノの鍵を押すとその動きはハンマーヘッドに伝えられ、ハンマーヘッドは弦に向かって進んで結果的に弦を叩く。それによりピアノは発音するのである。ピアノのアクションは長い歴史の中で様々な目的のために改良されてきているが、ハンマーヘッドが弦を叩くことにより発音するというピアノの発音の原理は、ピアノの長い歴史の中でも変わっていない。
ピアノには、多数の弦がピアノで発音させる音階の数だけ横並びで設けられる。鍵、ハンマーヘッド、及びそれらを繋ぐアクションはそれぞれ、各弦を打つために、各弦と対応付けられ、弦と同数だけ、横並びの状態でピアノに設けられる。基本的にはハンマーヘッドは、両隣のものと同じ間隔を空けた状態で、横並びに配列される。
とはいえ、鍵の連打性、タッチ感、音などについては一般に、アップライトピアノはグランドピアノに劣るとされており、その点についてはアップライトピアノには未だに改良の余地があるというのがピアノ業界における一般的な理解である。
セクションとは、一連の連続する鍵(或いは、鍵、及びその鍵と関連付けられたハンマーヘッドを含むアクションと弦)の塊のことである。
例えば、アップライトピアノは、その背面に筐体の一部をなす筐体板を備えており、また、その筐体板の前方に筐体板を支持する柱を備えている。筐体板の幅方向の両端の柱はそれ程影響を与えないが、筐体板の中程に立てられた柱は、弦やアクションを配置するに当たって邪魔になる。したがって、その部分では、アクションの並びに影響が出る。
上述のように、アクションに含まれるハンマーヘッドは、両隣のものと同じ間隔を空けた状態で、横並びに配列されるというのが原則である。しかしながら、アクションの並びに影響が出る部分においては、ハンマーヘッドの間隔が大きく空く。その大きく空いた間隔で隔てられた2つのハンマーヘッドが、セクションの区切りとなる。つまり、ハンマーヘッドは正確には、大きく隙間の空いた部分をその間に幾つか挟みつつ、等間隔で連続して配列される。等間隔で連続して配列される一連のハンマーヘッド(或いは、等間隔で連続して配列される一連のハンマーヘッド、及びそれらハンマーヘッドが含まれるアクション、それらアクションと関連付けられた鍵と弦)が、1つのセクションを構成することになる。
他にもセクションが設けられる理由は存在する。上述したように、アップライトピアノは、多数の弦を有している。弦は、背面板の手前側に並列に張り渡される。弦は、一般的には、その長さを稼ぐために斜めに張り渡されている。一般的には、演奏者から見て向かって左側の低音部の所定本数の弦は右下がりに、向かって右側の高音部の残りの弦は左下がりに、それぞれ張り渡されている。右下がりの弦と左下がりの弦とはその下方で交差しており、右下がりの弦が演奏者側に位置するというのが、一般的な弦の配置である。このような弦の張り渡し方は、交差弦と呼ばれ、極普通のものであるが、交差弦を採用することにより、弦が交差する部分においてもアクションの並びに影響が生じ、その部分にもセクションの分かれ目が生じることが多い。
いずれにせよ、アップライトピアノには、アップライトピアノの大きさ等の事情にもよるが、3つから5つ程度のセクションが存在することが多い。
同様に、グランドピアノにおいても、複数のセクションが存在する。グランドピアノにおいても、例えば、補強用の梁や、交差弦の交差する部分においてセクションの分かれ目が生じる。グランドピアノにおけるセクションの数は、多くの場合4つから5つである。
これには本願発明者も気付いていたが、他の例えば調律師の中でもある程度知られていた。アップライトピアノにおいてもグランドピアノにおいても調律は必須であるが、どのようにアップライトピアノやグランドピアノを調律したとしてもセクションの境目の鍵を押したときに発音される音が安定せず調律師を悩ませるということが予てからある。
しかしながら、その原因については、今まで解明されることはなく、当然にその解消方法も提案されていない。
その事実は以下のようなものである。
グランドピアノでもそうであるが、アップライトピアノのアクションに含まれるハンマーは、ハンマーヘッドとハンマーヘッドに接続されたハンマーシャンクとを含んで構成されている。ハンマーシャンクはその基端を、回転可能とされているバットに接続されており、バットとともに回転するようになっている。ハンマーは、バットの回転の軸を中心として、予定されたある平面の中を回転する、と従来は考えられていた。
しかし、事実は異なった。セクションの境目に存在するハンマーヘッドを除くハンマーヘッドは、確かに上述の予定されたある平面の中を回転した。しかしながら、その片側のハンマーヘッドとは僅かな隙間を空けて隣接するものの、その反対側のハンマーヘッドとは大きな隙間が空いている、セクションの境目に存在するハンマーヘッドは、特にハンマーヘッドが弦に向かって進行するときにおいて、上述した予定されたある平面から外れ、それとの間に大きな隙間が空いているハンマーヘッドの側にその進行方向を反らすことがある、という事実を本願発明者は確認した。
ハンマーの弦に対する打突は、まさにピアノの発音に関する。ハンマーの幅方向の中心で弦を叩けるかどうかは、ピアノの発音の良否に強く関係する。そしてもちろん、弦に向かって進むハンマーが理想的な軌道を描けないというのは、ピアノの発音が悪くなる場合があるということを意味する。例えばピアノの弦の中には、横並びの数本(例えば3本)の細い弦をまとめて1本の弦として扱い、それら数本の弦をまとめて1つのハンマーで叩くようになっているものが存在するが、そのような弦においてはハンマーが本来の軌道から横にずれると、まとめて叩かれる数本の弦のうちの例えば1本が、弦にハンマーが到達してもハンマーにより予定されたようには叩かれないということが生じ得る。
つまり、セクションの境目に位置するハンマーヘッドの軌道の不安定さが、セクションの境目の鍵を押したときに発音される音が不安定になる原因の少なくとも1つであろうと推測された。
ただし、セクションの境目に位置するハンマーヘッドの軌道が、それとの間に大きな隙間が空いているハンマーヘッドの側に反れる理由は、現在のところ詳しくは解っていない。しかしながら、その理由を、本願発明者は以下のように推測している。航空機の翼状の形状である翼形状の断面形状を持つ物体が地面付近を移動する際、その物体と地面との間の空気流の変化によってその物体が影響を受けるという現象が知られている。例えば、航空機は地面に近づくに連れて大きな揚力を受ける。その影響が上述のごとく地面との間で生じる場合にはその現象は、地面効果と呼ばれ、その影響が水面との間で生じる場合にはその現象は、水面効果と呼ばれる。総称して表面効果とも呼ばれることがあるこの現象と同様のことがアップライトピアノのハンマーヘッドでも生じているのではないかと本願発明者は考えている。
アップライトピアノのハンマーヘッドの断面形状は翼形状であるとまではいえないが、ハンマーウッドと、ハンマーウッドの前端(弦を打つ側)を覆うハンマーフェルトとにより構成されるハンマーヘッドは、ハンマーフェルトで覆われた部分が比較的広い面積を有する、全体として略一定の厚さの板状の形状となっている。なお、本願では、ハンマーウッドとハンマーフェルトを併せたものを、「ハンマーヘッド」と定義する。したがって、その板状のハンマーヘッドは、その断面形状が翼形状である場合ほどは大きくないかもしれないが、表面効果と同様の影響を他の隣接するハンマーヘッドから受けている可能性がある。アップライトピアノのハンマーヘッドが弦に向かって進む速さは非常に早いということも、その可能性の存在を肯定する。
つまり、それとの間に僅かな隙間しかないその片側のハンマーヘッドのセクションの境目に位置するハンマーヘッドに対向する側の面との間では、セクションの境目に位置するハンマーヘッドは比較的大きな表面効果の影響を受ける一方で、それとの間に大きな隙間がある他方のハンマーヘッドのセクションの境目に位置するハンマーヘッドに対向する側の面との間では、セクションの境目に位置するハンマーヘッドは表面効果の影響を受けない、というような現象が生じている可能性が高い。
そして、これと同様の現象が、グランドピアノのセクションの境目に位置するハンマーにおいても生じていると、本願出願人は考えている。
本願発明者は、かかる表面効果による影響の左右の不均衡を是正することにより、ハンマーヘッドが弦に向かって進行するときにおいて予定されたある平面から外れ、それとの間に大きな隙間が空いているハンマーヘッドの側にその進行方向を反らすという現象を防ぐことが可能となり、ひいてはセクションの境目の鍵を押したときに発音される音が安定するようにアップライトピアノ、グランドピアノ及びそれらのアクションを改良することが可能となる、と考えた。
以下に説明する発明は、本願発明者が得たこの知見に基づくものである。
かかるアクションには、前記セクションの端に位置するハンマーヘッドのうちの少なくとも1つである対象ハンマーヘッドの外側に、前記対象ハンマーヘッドが属する前記セクションの前記対象ハンマーとその内側に位置するハンマーヘッドとの間の隙間に対応する隙間を空けて、前記ハンマーヘッドを側面視した場合の形状、大きさと略等しい形状、大きさを有する面である対向面を有するダミー部材が、側面視した場合に前記対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面とその向き及び位置が対応するようにして、且つその対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面と平行になるようにして、配されている。
セクションの境界に位置するハンマーヘッドは、簡単に言うと、その左右の一方側の面には他のハンマーヘッドが近接し、その他方側の面には他のハンマーヘッドが近接していないという状態にある。その不均衡により、セクションの境界に位置するハンマーヘッドは、上記一方側の他のハンマーヘッドのセクションの境界に位置するハンマーヘッドと対向する面からのみ大きな表面効果の影響を受けることになる、というのがセクションの境界に位置するハンマーヘッドの軌道が安定しない理由であると本願発明者は考える。
本願発明は、要するに、上述の不均衡をなくすことにより、上記一方側の他のハンマーヘッドのセクションの境界に位置するハンマーヘッドと対向する面からセクションの境界に位置するハンマーヘッドが受ける表面効果をなくす、或いはセクションの境界に位置するハンマーヘッドがその左右両側から受ける表面効果の影響を均衡させることにより、セクションの境界に位置するハンマーヘッドの軌道を安定させようとするものである。そのために、本願発明では、セクションの端に位置するハンマーヘッドのうちの少なくとも1つである対象ハンマーヘッドの外側に、対向面を有するダミー部材を設けることとしている。このダミー部材が有する対向面は、ハンマーヘッドを側面視した場合の形状、大きさと略等しい形状、大きさを有する面である。また、ダミー部材の対向面は、対象ハンマーヘッドの外側面と側面視した場合にその向き及び位置が対応するように、且つその対向面が対象ハンマーヘッドの外側面と平行になるようにされる。
これにより、セクションの端にあるハンマーヘッドは、その内側(本願では、セクションの端にあるハンマーヘッドが属するセクションの中心方向をセクションの端に位置するハンマーヘッドの「内側」と定義する。)の面には、その1つ内側に位置するハンマーヘッドの外側面が、またその外側の面には、ダミー部材の対向面がそれぞれ対向して臨むことになる。しかも、その1つ内側に位置するハンマーヘッドの外側面と、ダミー部材の対向面とは、セクションの端に位置するハンマーヘッドに対して略対称の関係となる。
したがって、この発明によれば、セクションの端に位置するハンマーヘッドが弦に向かって進行する場合、このハンマーヘッドの内側面が1つ内側に位置するハンマーヘッドの外側面から受ける表面効果と、このハンマーヘッドの外側面がダミー部材の対向面から受ける表面効果は、セクションの端にないハンマーヘッドの場合と同様に、均衡することになる。つまり、この発明によるピアノのアクションによれば、セクションの境目の鍵のうちの少なくとも1つを押したときに発音される音が安定するという効果を得られるようになる。
本願発明は、既存の例えば販売済みのピアノに対してダミー部材を取付けるようにして実施することもできる。この場合本願発明は、以下のようなアクションの改修方法として捉えることが可能である。かかる改修方法により得られる効果は、上述のアクションにより得られる効果と同様である。
その改修方法の一例は、鍵、ハンマーヘッドを含むアクション、及び弦が複数のセクションに分けられているピアノのアクションの改修方法であって、前記セクションの端に位置するハンマーヘッドのうちの少なくとも1つである対象ハンマーヘッドの外側に、前記対象ハンマーヘッドが属する前記セクションの前記対象ハンマーヘッドとその内側に位置するハンマーヘッドとの間の隙間に対応する隙間を空けて、前記ハンマーヘッドを側面視した場合の形状、大きさと略等しい形状、大きさを有する面である対向面を有するダミー部材を、側面視した場合に前記対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面とその向き及び位置が対応するようにして、且つその対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面と平行になるようにして、取付ける、アクションの改修方法である。
本願発明は、セクションの端に位置するハンマーヘッドのうちの少なくとも1つである対象ハンマーヘッドの外側にダミー部材を設けることを提案するが、対象ハンマーヘッドを複数としそれらの外側に、或いはセクションの境界に位置するすべてのハンマーヘッドを対象ハンマーヘッドとしそれらの外側に、又はセクションの端に位置するすべてのハンマーヘッドを対象ハンマーヘッドとしそれらの外側に、ダミー部材を設けることももちろん排除しない。対象ハンマーヘッドを多くすれば多くする程、それにより得られる効果は優れたものとなる。
例えば、前記対象ハンマーヘッドは、複数の前記セクションのうちの隣接するセクションの境界に位置するすべての前記ハンマーヘッドであってもよい。また、前記対象ハンマーヘッドは、複数の前記セクションのうちの最も外側に位置する2つのセクションの中で外側の端に位置する2つの前記ハンマーヘッドであってもよい。更には、対象ハンマーヘッドは、すべてのセクションの端に位置するすべてのハンマーヘッドでも良い。
そもそもピアノに多数含まれるハンマーヘッドの大きさ、より正確にはハンマーウッドに取付けられるハンマーフェルトの大きさは、演奏者から見て左側の低音部程大きく、右側の高音部程小さくなるようになっているのが通常である。したがって、例えばコスト的な要請から、一種類のダミー部材しか製造しない場合には、ダミー部材はピアノのアクションに含まれるすべてのハンマーヘッドとその形状、大きさが完全に一致することはない。ダミー部材の対向面は、それが近接して配される対象ハンマーヘッドの形状、大きさと完全に一致する必要はなく、また、必ずしもピアノに含まれるいずれかのハンマーヘッドの側面視した場合の形状、大きさと完全に一致する必要もない。それが、上述した「略」の意味である。
通常のピアノでも、隣合うハンマーヘッドの大きさは異なるにもかかわらず、セクションの端以外に位置するハンマーヘッドでは、表面効果に基づくであろう音の不安定さは生じない。したがって、本願発明の効果が得られる限り、「ダミー部材の対向面は、ハンマーヘッドを側面視した場合の形状、大きさと略等しい形状、大きさとされる」という要件は充足されるものとする。
前記ダミー部材は、前記ハンマーヘッドと同様に構成され、且ついずれの鍵を押しても動かないようにされていてもよい。つまり、ダミー部材は、動かないハンマーヘッドとすることもできる。ダミーハンマーヘッドとも呼ぶべきこのようなダミー部材を用いることによれば、そもそもピアノの部品として大量に安価に生産されているハンマーヘッドをダミー部材に流用できるようになるので便利である。
ダミー部材は例えば、アップライトピアノの場合であれば、ハンマーストップレールに固定することができ、或いはセンターレールに固定することができる。ダミー部材のハンマーストップレール、センターレール、或いはアップライトピアノの適当な部分への固定は、ダミー部材を直接固定するに限らず、他の部材を介して間接的に固定する場合も含む。
ダミー部材は例えば、グランドピアノの場合であれば、ハンマーシャンクレールに固定することができ、或いはハンマーストップレールに固定することができる。ダミー部材のハンマーシャンクレール、ハンマーストップレール、或いはグランドピアノの適当な部分への固定は、ダミー部材を直接固定するに限らず、他の部材を介して間接的に固定する場合も含む。
この実施形態では、アップライトピアノについて説明する。
もっともこの実施形態におけるアップライトピアノは、後述するダミー部材及びそれをアップライトピアノに固定するための構成を除いてすべて、従前のアップライトピアノとその構成を同じくする。
それ故、本来であれば、上述の従前のアップライトピアノとの相違点についての構成を除いて、アップライトピアノの構成について説明を行うまでもないが、一応アップライトピアノの全体的な構成についても説明を行う。
また、この実施形態の説明において、前後の概念はアップライトピアノに向かった演奏者の頭部の前後に倣うものとする。
よく知られているように、アップライトピアノは横並びに配列された多数の鍵1を備えている。
また、アップライトピアノは、多数の弦90を有している。鍵1と弦90の数は同数である。多数の弦90は、その長さを稼ぐために斜めに張り渡されている。向かって左側の所定本数の弦90は図1で向かって右下がりに、向かって右側の残りの弦90は図1で向かって左下がりに、それぞれ張り渡されている。右下がりの弦90と左下がりの弦90とはその下方で交差しており、右下がりの弦90が図1における手前側に位置している。このような弦90の張り渡し方は、交差弦と呼ばれ、極普通のものである。
図中35がハンマーヘッドである。ハンマーヘッド35は、鍵1及び弦90と同数であり、横並びに配列されている。
左から順にならぶハンマーヘッド35、鍵1、及び弦90は、左からの順番が同じもの同士で対応付けられている。例えば、一番左の鍵1を押すと一番左のハンマーヘッド35が一番左の弦90を打ち、左から二番目の鍵1を押すと左から二番目のハンマーヘッド35が左から二番目の弦90を打つが如きである。
筐体板101の後側には、筐体板101を支持する柱102が立てられている(図1、図4)。図1に示したように、左右の弦90が交差する部分では、一連に並ぶハンマーヘッド35の間に隙間ができている。また、図4に示したように、柱102が存在する部分でも、ハンマーヘッド35の間に隙間ができている。これら2つがこのアップライトピアノのセクションS(セクションS1〜S3を併せて、セクションSと称する。)の境界となる。このアップライトピアノは結局、3つのセクションS1〜S3を備えている。
柱102や弦90の交差などの事情によりセクションSは生じ、多くのアップライトピアノではその数は3から5である。この実施形態ではセクションSは3つであるものとするが、これはこの限りではない。
各セクションSに属するハンマーヘッド35の隣接するハンマーヘッド35の内側面と外側面は、すべて互いに平行である。
また、3つのセクションSのうち、セクションS1に属するハンマーヘッド35のみ、その幅方向の中心の平面が、図1中左方向に傾いている。これはハンマーヘッド35の配置のスペースを取るための工夫であり、最近のアップライトピアノの大半がこのような構成を採用している。
筬3の左右端部にはブラケット(図示せず)がそれぞれ形成されている。左右のこれらのブラケットの間には、センターレール4が架け渡されて固定されている。
鍵1の前端部上方にアクション7が形成されている。アクション7は、弦90を打つための中心的な部材として、ウィッペン8、ジャック18、バット25、及びハンマー32を有する。
以下、詳述する。
ウィッペン8はウィッペンフレンジ10よりも後側におけるその下側にヒール11を有しており、また、その上側にジャックフレンジ12を有している。ジャックフレンジ12は、ウィッペン8に対して回転可能として、ウィッペン8とジャック18とを接続するためのものである。ウィッペン8のヒール11は、鍵1の前端に固定されたキャプスタンボタン2を介して、鍵1の前端部の上に載っている。これにより、鍵1が持ち上げられたときに、キャプスタンボタン2を介してウィッペン8が持ち上げられるようになっている。
ウィッペン8の後端部には、バックチェックワイヤ14が立設されており、その先端にバックチェック15が取り付けられている。
また、ウィッペン8の更に後端部には、ブライドルワイヤ71が立設されている。ブライドルワイヤ71と、後述するキャッチャーとの間には、例えば紐又は帯であるブライドルテープ72が、初期状態ではやや弛んだ状態で張り渡されている。
ジャックスプリング13は、ジャックテール19を上方に付勢することにより、ジャック18に対して反時計回り方向に回転する力を加えるバネであり、通常はコイルスプリングである。
ハンマー32は、ハンマーシャンク33とハンマーウッド34と、ハンマーフェルト36とを有している。ハンマーウッド34は、ハンマーシャンク33の上端から前方に延びる部材である。ハンマーフェルト36は直接弦90を打突する部材であり、ハンマーウッド34の前端の上下を跨ぐようにしてハンマーウッド34に取付けられている。ハンマーウッド34とハンマーフェルト36とを併せたものがハンマーヘッド35である。
バット25の被突き上げ部27には、革製のスキン75が貼られている。バット25の後側面の上部には、キャッチャーシャンク28を介してキャッチャー29が取り付けられている。キャッチャー29は、上述したバックチェック15との組合せにより、バット25の回転を止めるものである。バット25が初期位置にあるときには、キャッチャー29はバックチェック15から離れており、バット25がジャック18に突き上げられて反時計回りに回転し、それと同時にウィッペン8の後端が反時計回りに回転すると、キャッチャー29はバックチェック15に捕らえられる。その後ウィッペン8の全体が時計回りに回転しつつ下降することにより、その後端が時計回りに回転しながら大きく下がると、バックチェック15に捕らえられたキャッチャー29は、素早くバックチェック15から離れて再び回転可能となるようになっている。バット25の後側面のうちキャッチャーシャンク28の付け根より下にある部分にも、例えば革製のスキン76が貼られている。すなわち、バット25において、被突き上げ部27よりも後方側かつ上方側にある面にスキン76が貼られている。スキン75の後端とスキン76の下端は連続しており、スキン75とスキン76とは結果として一体となっている。
バット25の前側の面には、バットスプリング25Aが設けられている。バットスプリング25Aは、バット25に対して常に、時計回りの力を与えるためのバネである。バットスプリング25Aからの力により、弦90に向かってハンマー32が回転するに際してハンマー32とともに反時計回りに回転したバット25は素早く元の位置に復帰するようになっている。
ダンパー39は、ダンパーレバー40、ダンパーワイヤー43、ダンパーヘッド44を有する。
ダンパーレバー40は、その中央部で、センターレール4の前側上部に固定したダンパーフレンジ41に回転可能に軸止されている。ダンパーレバー40は、その後側面下端部が、スプーン9の先端と対向している。ダンパーヘッド44は、ダンパーワイヤー43を介してダンパーレバー40の上端に取り付けられている。ダンパーヘッド44は、ダンパーレバー40に取り付けられたダンパースプリング42から力を受けて弦90に圧接するようになっている。
先ず、鍵1が休止状態にある場合について説明する(図2を参照)。鍵1が休止状態にある場合、鍵1の後端は最も上昇した位置にあり、鍵1の前端は最も下降した位置にある。そして、ウィッペン8も最も下降した位置にある。
ジャック18の突き上げ部20の突端は、バット25の被突き上げ部27の下に入って係合している。ジャックテール19はレギュレーティングボタン47から離れている。突き上げ部20とジャックストップレール53との間は離れている。
またこのとき、バット25と接続されたキャッチャー29は、最も下降した位置にあり、キャッチャー29はバックチェック15から離れている。ハンマーシャンク33はハンマーストップレール55に接した状態となっており、ハンマーヘッド35及びハンマーウッド34は弦90から最も離れた位置にある。また、ダンパーヘッド44はダンパースプリング42の力により弦90に圧接している。
演奏者が鍵1を下に押すと、鍵1が時計回りの方向に回転し、鍵1の前端部が上昇する。そうすると鍵1の前端部が、キャプスタンボタン2を介してウィッペン8のヒール11を突き上げ、ウィッペン8がウィッペンフレンジ10を中心として反時計回りの方向に回転しつつ上昇する。
ウィッペン8が回転を開始すると、直ちに、ウィッペン8の後端に設けられたスプーン9がダンパーレバー40の下端を前方に押し、ダンパーレバー40がダンパーフレンジ41を中心として時計回りの方向に回転するのに伴って、ダンパーヘッド44が弦90から離れる。これにより、弦90は振動できる状態となる。
ウィッペン8の回転と上昇に伴って、ジャック18がウィッペン8と共に上昇する。そしてジャック18が上昇すると、ジャック18の突き上げ部20の上端が、バット25の被突き上げ部27を突き上げる。
演奏者が鍵1を離鍵すると、鍵1が反時計回りの方向に回転し、鍵1の前端部が下降を開始する。鍵1の前端部が下降すると、ウィッペン8が、時計回りの方向に回転しつつ下降する。ウィッペン8が下降を開始すると、直ちに、キャッチャー29がバックチェック15から離れ、ハンマー32は回転可能になる。
他方、ハンマー32及びそれと接続されたバット25はバットスプリング25Aがバット25に与える力と、ブライドルテープ72に入った張力によりキャッチャー29が引き戻される力とにより、時計回りに回転し元の位置に戻る。ハンマー32及びバット25が元の位置に戻るのと前後して、バット25の被突き上げ部27の下に、ジャック18の突き上げ部20が戻って、それらが再係合する。
つまり、同じ鍵1の後端を押すことにより再度音を出せる状態となる。
この実施形態のアップライトピアノは、上述した通り、ダミー部材を備えている。それについて説明する。なお、以下に説明するダミー部材は、アップライトピアノに当初から(例えば販売前から)取付けられていても良いし、完成品の(例えば販売済みの)アップライトピアノに対して後付けされたものであっても良い。
図5にアップライトピアノのアクションにおける、ハンマーヘッド35におけるセクションの分かれ目の部分を拡大した斜視図を示す。これは、この実施形態のアップライトピアノではなく、従前の極普通のアップライトピアノのハンマーヘッド35である。
図5中左側に2つと半分程見えているハンマーヘッド35が、上述したセクションS1に属するハンマーヘッドであり、図5中右側に4つと少々見えているハンマーヘッド35が、上述したセクションS2に属するハンマーヘッドである。図5に示された範囲では、両セクションSに含まれるハンマーヘッドのうち、セクションS1に属するハンマーヘッド35の中で最も右にあるものが、セクションS1の端に位置するハンマーヘッド35であり、セクションS2に属するハンマーヘッド35の中で最も左にあるものが、セクションS2の端に位置するハンマーヘッド35である、ということになる。
なお、図5に示された範囲には上述したように2つのセクションSの端に位置するハンマーヘッド35が存在したが、既に述べたようにこの実施形態には、3つのセクションSが含まれている。そして、各セクションS1〜S3には端に位置するハンマーヘッド35が2つずつ存在するから、この実施形態のアップライトピアノには、セクションSの端に位置するハンマーヘッド35が合計で6つ存在する。この実施形態では、図5に示されたセクションSの端に位置する2つのハンマーヘッド35に加えて、その他4つのセクションSの端に位置するハンマーヘッド35をも、それに近接させた状態でダミー部材が配置される、本願発明で言う対象ハンマーヘッド35Aであるものとする。もっとも、セクションSの端に位置するハンマーヘッド35のうち対象ハンマーヘッド35Aとすべきは、セクションSの端に位置するハンマーヘッド35のうちの少なくとも1つで足りる。例えば、セクションSの境界に位置する4つのハンマーヘッド35のみを、対象ハンマーヘッド35Aとすることもできるし、アップライトピアノの幅方向の両端に位置する最も外側の2つのハンマーヘッド35のみを対象ハンマーヘッド35Aとすることも可能である。
ダミーハンマーヘッド35Xは、いずれの鍵1を押しても動かないという点を除けば、外観だけでなく、その構成も対象ハンマーヘッド35Aを含むハンマーヘッド35と同じであり、ハンマーヘッド35のハンマーウッド34と同じように構成されたダミーハンマーウッド34X、及びハンマーヘッド35のハンマーフェルト36と同じように構成されたダミーハンマーフェルト36Xとを含んで構成されている(図7、図8も参照)。
上述した理由で、ここで言う略等しいという意味は、それ程厳密ではない。もっとも理想的には、ダミーハンマーヘッド35Xの両側面を側面視した場合の形状、大きさは、対象ハンマーヘッド35Aの1つ内側に位置するハンマーヘッド35の側面視した場合の形状、大きさと等しくすべきである。その方が、対象ハンマーヘッド35Aが、対象ハンマーヘッド35Aの1つ内側に位置するハンマーヘッド35の外側面からその内側面に対して受ける表面効果と、対象ハンマーヘッド35Aがダミーハンマーヘッド35Xの内側面から受ける表面効果とがより均衡すると考えられるからである。
また、ダミーハンマーヘッド35Xの内側面から対象ハンマーヘッド35Aの外側面までの間隔は、対象ハンマーヘッド35Aの1つ内側に位置するハンマーヘッド35の外側面から対象ハンマーヘッド35Aの内側面までの間隔と等しくなるようになっている。
ダミーハンマーヘッド35Xは例えば、図7に示したように、ハンマーストップレール55に対して固定することができる。この場合ダミーハンマーヘッド35Xは、ハンマーヘッド35に接続されるハンマーシャンク33と同じように構成された、ハンマーシャンク33よりもその長さが短いことのみをそれとの相違点とするダミーハンマーシャンク33Xと接続され、ダミーハンマーシャンク33Xを介して、ハンマーストップレール55に接続される。ダミーハンマーシャンク33Xのハンマーストップレール55への固定はどのようにして行っても良いが、例えば、釘や木ねじを打込む、或いは接着剤を用いた接着を行うなどの周知技術を用いることにより、かかる固定を行える。もっとも、ダミーハンマーシャンク33Xは、ハンマーストップレール55とダミーハンマーヘッド35Xの接続をなすことのみを目的としたものであるから、その長さ以外の構成においても、ハンマーシャンク33と異なるようになっていても一向に構わない。
ダミーハンマーシャンク33Xとダミーバット25Xに必須の機能は、ダミーハンマーヘッド35Xをセンターレール4に対して固定することのみである。したがって、ダミーハンマーシャンク33X及びダミーバット25Xは、ハンマーシャンク33及びバット25とその構成を一致させる必要はない。例えば、ダミーバット25Xには、バット25を回転させるために必要な機能をバット25に与えるための種々の部品が存在しない。これには限られないが、この実施形態のダミーバット25Xでは、例えば、バット25が備えていたバットスプリング25Aやスキン75が省略されている。
ダミーバット25Xをセンターレール4に固定する方法は、例えば、ダミーハンマーシャンク33Xをハンマーストップレール55へ固定する方法に倣うことができる。
本願発明者は、この実施形態において説明したダミーハンマーヘッド35Xをアップライトピアノに装着して、超高速度で、鍵1を押したときの状態を撮影してみた。そうすると、上述した通りの効果が確認された。
例えば、ダミーハンマーヘッド35Xは、本願発明のダミー部材の他の例となる、以下のようなダミー板35Yに置換することが可能である(図9)。ダミー板35Yは、木製、樹脂製、或いは金属製等の適当な材料で作られた単なる板である。この場合のダミー板35Yは、その厚さがハンマーヘッド35の厚さよりも薄く、且つその厚さはすべての部分で一定であるが、ダミー板35Yはその左右方向の厚さが一定である必要もなく、また、その厚さがハンマーヘッド35の厚さと同じである必要もない。ただし、ダミー板35Yは、その側面視した場合の形状、大きさが、側面視した場合のハンマーヘッド35の形状、大きさと略等しいものとされている。そのようなダミー板35Yを、その内側面がダミーハンマーヘッド35Xの内側面と同じになるようにして、対象ハンマーヘッド35Aに隣接して配置することによっても、上述のダミーハンマーヘッド35Xをアップライトピアノに取付けた場合と同様の効果を得ることができる。
図9に示したように、ダミー板35Yは、その内側面がそれと隣接する対象ハンマーヘッド35Aの外側面と平行になるようにして、且つそれを側面視した場合に、その内側面が対象ハンマーヘッド35Aの外側面とその向き及び位置が対応するようにして、配置される。ダミー板35Yの内側面と、対象ハンマーヘッド35Aの外側面との間隔は、対象ハンマーヘッド35Aの1つ内側のハンマーヘッド35の外側面と対象ハンマーヘッド35Aの内側面との間隔に等しい。
ダミー板35Yのアップライトピアノへの固定方法は、ダミーハンマーヘッド35Xのアップライトピアノへの固定方法に倣えば良い。
この実施形態では、グランドピアノについて説明する。
もっともこの実施形態におけるグランドピアノは、後述するダミー部材及びそれをグランドピアノに固定するための構成を除いてすべて、従前のグランドピアノとその構成を同じくする。
それ故、本来であれば、上述の従前のグランドピアノとの相違点についての構成を除いて、グランドピアノの構成について説明を行うまでもないが、一応グランドピアノの全体的な構成についても説明を行う。
図示を省略するが、グランドピアノの弦には、これもよく知られているように交差弦の構成が採用されており、交差弦の弦が交差する部分や、グランドピアノの筐体の剛性を増すための梁等の存在により、鍵、アクション、及び弦は、第1実施形態のアップライトピアノの場合と同様にセクションに区切られている。セクションの数は、これには限られないが4又は5である。
アクション901は、鍵910に加え、いずれも公知のウィッペン920、レペティションレバー923、ハンマー932を有する。
多数の鍵910は、筬911の上に左右方向に並んでいる。鍵910の中央部には穴913が穿たれており、そこにバランスピン912が挿入されている。鍵910は、バランスピン912を支点としてその前後方向にシーソー運動が可能な状態でバランスピン912により支持されている。鍵910のバランスピン912により支持されている部分よりも前側に、キャプスタンスクリュー914が設けられている。キャプスタンスクリュー914は、鍵910の後方が演奏者により押し込まれることにより鍵910の前方が上がったときに、後述するウィッペン920を上方に押し上げるものである。鍵910の更に前方にはバックチェック915が設けられている。バックチェック915は、打鍵後に戻ってきたハンマー932のハンマーヘッド935を受け止めるものである。
ウィッペン920の前後方向の中程の上側には、支柱状のレペティションレバーフレンジ922が設けられている。レペティションレバーフレンジ922は、レペティションレバー923との接続をなすためのものであり、その上端は、レペティションレバー923の前後方向の中間部分とピン973により接続されている。レペティションレバー923は、ピン973を軸としてレペティションレバーフレンジ922に対して回動可能となっている。
ウィッペン920、レペティションレバーフレンジ922、レペティションレバー923及びジャック924は、それらの全体が、ウィッペンフレンジ963を中心として一体になって回動する部品群を構成している。
ハンマー932は、第1実施形態におけるアップライトピアノの場合と同様のハンマーシャンク933とハンマーウッド934と、ハンマーフェルト936とを有している。第2実施形態でも、第1実施形態と同じくハンマーウッド934とハンマーフェルト936とを併せたものがハンマーヘッド935である。
前述のハンマーシャンクローラ939は、ハンマーシャンク933の基端よりの部分の下側に取付けられている。ハンマーシャンクローラ939は、図10、図11において、時計回り及び反時計回りの双方向に回転自在とされたローラであり、後述のようにしてジャック924の突き上げ部925がハンマーシャンク933を上方に持ち上げる際において、突き上げ部925からハンマーシャンク933へかかる力を素早く開放するためのものである。ハンマーシャンクローラ939の幅は、レペティションレバー923に設けられた上述の細長い孔の幅よりも広く、アクション901が静止状態にあるときには、ハンマーシャンクローラ939の下面は、孔の両側部分で、レペティションレバー923の上面に当接している。
ハンマーシャンク933は、その後端部においてハンマーシャンクフレンジ965に取付けられている。かかる取付けは、ピン975を用いて行われている。ハンマーシャンク933は、ピン975を軸としてハンマーシャンクフレンジ965に対して回動可能にされている。ハンマーシャンクフレンジ965はハンマーシャンクレール966に固定されている。ハンマーシャンクレール966は左右のブラケット962の間に架け渡されて固定される長尺の部材である。
弦990がハンマーヘッド935の上方に張られている。
先ず、鍵910が静止位置にある場合を説明する(図10を参照)。
鍵910の後端が押される前の状態では、鍵910の前端は最も下降した位置にある。このとき、ウィッペン920及びレペティションレバー923の前端は、それぞれ最も下降した位置にある。
このとき、ウィッペン920のヒール921がキャプスタンスクリュー914に当接し、キャプスタンスクリュー914を下向きに押圧している。
また、ハンマーシャンクローラ939は、その下面で、ジャック924の突き上げ部925の上端と、レペティションレバー923の上面とに当接している。
演奏者が静止位置にある鍵910の後端を押すと、鍵910の前端側が上昇する。そうすると、鍵910の前寄りの部分に設けられたキャプスタンスクリュー914が、それに当接しているヒール921を下から押し上げる。それにより、ウィッペン920の全体が、ピン972を軸として、ウィッペンフレンジ963に対して回動しつつ上昇する。ウィッペン920が反時計回りに回動しつつ上昇すると、それに伴いウィッペン920に設けられたレペティションレバーフレンジ922が回動しつつ上昇し、レペティションレバーフレンジ922に接続されたレペティションレバー923も回動しつつ上昇する。
そうすると、レペティションレバー923がハンマーシャンクローラ939を押し上げ、ジャック924の突き上げ部925がハンマーシャンクローラ939を突き上げる。ジャック924の突き上げ部925によるハンマーシャンクローラ939の突き上げにより、ハンマー932がハンマーシャンクフレンジ965に設けられたピン975を軸として、ハンマーシャンクフレンジ965に対して回動する。演奏者が引き続き鍵910を押し続けると、ジャック924は、ピン974を軸としてウィッペン920に対して時計回りに回動し、その結果ジャック924の突き上げ部925が、図11に示したように後方にずれてハンマーシャンクローラ939の下から外れる。ハンマーシャンクローラ939は、ハンマーシャンクローラ939の下からジャック924の突き上げ部925が素早く離脱するのを助ける。
ハンマーヘッド935が弦990を打った後、ハンマー932は直ちに反転し、重力に従い、回動しつつ下降する。そして、ハンマーシャンクローラ939がレペティションレバー923の上に当たり、ハンマーシャンクローラ939がレペティションレバー923を押し下げる。その後、ハンマーヘッド935はバックチェック915につかまって止まる。
これにより、アクション901は、図10に示した静止状態に戻り、同じ鍵910を再度打鍵できるようになる。
第2実施形態のグランドピアノは、上述した通り、ダミー部材を備えている。それについて説明する。なお、以下に説明するダミー部材は、グランドピアノに当初から(例えば販売前から)取付けられていても良いし、完成品の(例えば販売済みの)グランドピアノに対して後付けされたものであっても良い。
第2実施形態のグランドピアノに取付けられるダミー部材は、第1実施形態のアップライトピアノに取付けられるダミー部材と同様のものとすることができる。
第2実施形態のグランドピアノに取付けられるダミー部材は、第1実施形態の場合と同様に、グランドピアノに取付けられているハンマー932が備えるハンマーヘッド935と同様に構成され、グランドピアノに取付けられているハンマー932が備える他のハンマーヘッド935と側面視した場合の形状、大きさが略等しくなるように構成された、ダミーハンマーヘッド935Xとすることができる。この場合ダミーハンマーヘッド935Xは、第1実施形態の場合と同様に、ダミーハンマーウッド934X、及びダミーハンマーフェルト936Xを有する(図12、図13参照)。
また、第2実施形態のグランドピアノにダミー部材が取付けられる場合、ダミー部材は、第1実施形態の場合と同様に、グランドピアノに取付けられているハンマー932が備えるハンマーヘッド935と側面視した場合の形状、大きさが略等しくなるように構成された、例えばハンマーヘッド935よりもその厚さが小さい板であるダミー板とすることができる。
ダミーハンマーヘッド935X又はダミー板は、それらの他のハンマーヘッド935に対する相対的な位置関係が、第1実施形態におけるダミーハンマーヘッド35X又はダミー板35Yと他のハンマーヘッド35との相対的な位置関係と同じになるようにして、グランドピアノに対して取付けることができる。
つまり、第2実施形態の場合においても、ダミーハンマーヘッド935X又はダミー板は、各セクションの端に位置するハンマーヘッド935のうちの少なくとも1つに近接させた状態で配置することができる。これには限られないが、この実施形態におけるダミーハンマーヘッド935X又はダミー板は、すべてのセクションの端に位置するハンマーヘッド935のそれらハンマーヘッド935が属するセクションの外側に配置される。
ダミーハンマーヘッド935X又はダミー板が、セクションの端に位置するハンマーヘッド935のそれらハンマーヘッド935が属するセクションの外側に配置される場合、ダミーハンマーヘッド935X又はダミー板の内側面は、第1実施形態の場合と同様に、セクションの端に位置するハンマーヘッドである対象ハンマーヘッドの外側面と、側面視した場合に略重なるような位置関係となるようにする。また、ダミーハンマーヘッド935Xの内側面から対象ハンマーヘッドの外側面までの間隔は、対象ハンマーヘッドの1つ内側に位置するハンマーヘッド935の外側面から対象ハンマーヘッドの内側面までの間隔と等しくなるようにする。
例えば、図12のようにして、ダミーハンマーヘッド935Xをグランドピアノに対して固定することができる。この場合ダミーハンマーヘッド935Xは、他のハンマーヘッドが備えるハンマーシャンク933と同様に構成されたダミーハンマーシャンク933Xを介してハンマーシャンクレール65に固定される。なお、この場合のダミーハンマーシャンク933Xには、ハンマーシャンクローラ939を設けるには及ばない。また、ダミーハンマーシャンク933Xは、その基端に、それと一体とされたハンマーシャンクフレンジ965に相当する部材を備えており、そのハンマーシャンクフレンジ965に相当する部材を介して、ハンマーシャンクレール966に対して回転できないようにして固定されている。この場合の固定はどのようにして行っても良いが、例えば、釘や木ねじを打込む、或いは接着剤を用いた接着を行うなどの周知技術を用いることにより、かかる固定を行える。もっとも、ダミーハンマーシャンク933Xは、ハンマーシャンクレール966とダミーハンマーヘッド935Xの接続をなすことのみを目的としたものであるから、その基端にハンマーシャンクフレンジ965に相当する部材を一体として設ける必要は必ずしもなく、他の部材を介して、例えばダミーハンマーシャンク933Xすら用いずに、ハンマーシャンクレール966に固定されるようになっていても一向に構わない。
また、ダミーハンマーヘッド935Xは、図13に示したように、ハンマーストップレール967に対して固定することができる。この場合ダミーハンマーヘッド935Xは、例えば棒状の接続部材933X1を介してハンマーストップレール967に固定される。接続部材933X1と、ダミーハンマーヘッド935X又はハンマーストップレール967との固定の方法は、ダミーハンマーシャンク933Xと、ハンマーシャンクレール966との固定の方法に倣って適当に行えば良い。図13に示した接続部材933X1はクランクしているが、接続部材933X1の形状がこの限りではないことは当然である。
以上、図12及び図13を用いてダミーハンマーヘッド935Xのグランドピアノに対する固定の方法を説明したが、同様の方法でグランドピアノに対してダミー板を固定することができる。
33 ハンマーシャンク
34 ハンマーウッド
35 ハンマーヘッド
36 ハンマーフェルト
35A 対象ハンマーヘッド
33X ダミーハンマーシャンク
34X ダミーハンマーウッド
35X ダミーハンマーヘッド
36X ダミーハンマーフェルト
35Y ダミー板
932 ハンマー
933 ハンマーシャンク
934 ハンマーウッド
935 ハンマーヘッド
936 ハンマーフェルト
933X ダミーハンマーシャンク
934X ダミーハンマーウッド
935X ダミーハンマーヘッド
936X ダミーハンマーフェルト
Claims (9)
- 鍵、ハンマーヘッドを含むアクション、及び弦が複数のセクションに分けられているピアノのアクションであって、
前記セクションの端に位置するハンマーヘッドのうちの少なくとも1つである対象ハンマーヘッドの外側に、前記対象ハンマーヘッドが属する前記セクションの前記対象ハンマーヘッドとその内側に位置するハンマーヘッドとの間の隙間に対応する隙間を空けて、前記ハンマーヘッドを側面視した場合の形状、大きさと略等しい形状、大きさを有する面である対向面を有するダミー部材が、側面視した場合に前記対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面とその向き及び位置が対応するようにして、且つその対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面と平行になるようにして、配されている、
アクション。 - 前記対象ハンマーヘッドは、複数の前記セクションのうちの隣接するセクションの境界に位置するすべての前記ハンマーヘッドである、
請求項1記載のアクション。 - 前記対象ハンマーヘッドは、複数の前記セクションのうちの最も外側に位置する2つのセクションの中で外側の端に位置する2つの前記ハンマーヘッドである、
請求項1又は2記載のアクション。 - 前記ダミー部材は、板である、
請求項1記載のアクション。 - 前記ダミー部材は、前記ハンマーヘッドと同様に構成され、且ついずれの鍵を押しても動かないようにされている、
請求項1記載のアクション。 - 前記ピアノはアップライトピアノであり、
前記ダミー部材は、ハンマーストップレール、又はセンターレールに固定されている、
請求項1、4又は5記載のアクション。 - 前記ピアノはグランドピアノであり、
前記ダミー部材は、ハンマーストップレール、又はハンマーシャンクレールに固定されている、
請求項1、4又は5記載のアクション。 - 請求項1〜7のいずれかに記載のアクションを含んでいる、
ピアノ。 - 鍵、ハンマーヘッドを含むアクション、及び弦が複数のセクションに分けられているピアノのアクションの改修方法であって、
前記セクションの端に位置するハンマーヘッドのうちの少なくとも1つである対象ハンマーヘッドの外側に、前記対象ハンマーヘッドが属する前記セクションの前記対象ハンマーヘッドとその内側に位置するハンマーヘッドとの間の隙間に対応する隙間を空けて、前記ハンマーヘッドを側面視した場合の形状、大きさと略等しい形状、大きさを有する面である対向面を有するダミー部材を、側面視した場合に前記対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面とその向き及び位置が対応するようにして、且つその対向面が前記対象ハンマーヘッドの外側面と平行になるようにして、取付ける、
アクションの改修方法。
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