JP6646904B2 - ピアノ、ピアノのアクション - Google Patents
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Description
ピアノのアクションは、演奏者がピアノの鍵を押したときに、その鍵の動作をハンマーヘッドに伝える。演奏者がピアノの鍵を押すとその動きはハンマーヘッドに伝えられ、ハンマーヘッドは弦に向かって進んで結果的に弦を叩く。それによりピアノは発音するのである。ピアノのアクションは長い歴史の中で様々な目的のために改良されてきているが、ハンマーヘッドが弦を叩くことにより発音するというピアノの発音の原理は、ピアノの長い歴史の中でも変わっていない。
ピアノには、多数の弦がピアノで発音させる音階の数だけ横並びで設けられる。鍵、ハンマーヘッド、及びそれらを繋ぐアクションはそれぞれ、各弦を打つために、各弦と対応付けられ、弦と同数だけ、横並びの状態でピアノに設けられる。基本的にはハンマーヘッドは、両隣のものと同じ間隔を空けた状態で、横並びに配列される。
とはいえ、鍵の連打性、タッチ感、音などについては一般に、アップライトピアノはグランドピアノに劣るとされており、その点についてはアップライトピアノには未だに改良の余地があるというのがピアノ業界における一般的な理解である。
交差弦とは以下のようなものである。
まず、アップライトピアノを例として説明する。アップライトピアノは、多数の弦を有している。弦は、背面板の手前側(演奏者側)に、より正確には、背面板の手前側に配される響音板の手前側に、縦方向で並列に張り渡される。交差弦を採用する場合、弦は、その長さを稼ぐために斜めに張り渡されている。一般的には、演奏者から見て向かって左側の低音部の所定本数の弦は右下がりに、向かって右側の中高音部の残りの弦は左下がりに、それぞれ張り渡されている。右下がりの弦(本願ではこれを「低音部弦」と呼び、低音部弦と対応付けられたハンマーヘッド、鍵等を、場合により「低音部ハンマーヘッド」、「低音部鍵」等と称することとする。)と左下がりの弦(本願ではこれを「中高音部弦」と呼び、中高音部弦と対応付けられたハンマーヘッド、鍵等を、場合により「中高音部ハンマーヘッド」、「中高音部鍵」等と称することとする。)とはハンマーで叩かれることのないそれらの下方の部分で正面から見て交差しており、右下がりの弦が演奏者側に位置するというのが、一般的な交差弦の配置である。
同様にグランドピアノにおいても交差弦が採用されている。グランドピアノの場合には、多数の弦は、横並びで、水平方向に張り渡される。グランドピアノにおいては、低音側の弦は奥に向かうに連れてやや右側に寄るように(本願ではこれも「低音部弦」と呼び、低音部弦と対応付けられたハンマーヘッド、鍵等を、場合により「低音部ハンマーヘッド」、「低音部鍵」等と称することとする。)、中高音側の弦は奥に向かうに連れてやや左側に寄るように(本願ではこれを「中高音部弦」と呼び、中高音部弦と対応付けられたハンマーヘッド、鍵等を、場合により「中高音部ハンマーヘッド」、「中高音部鍵」等と称することとする。)なっている。
グランドピアノにおいては、低音部弦と、中高音部弦とは、前者が上側に、後者が下側にそれぞれ位置し、それらのうちのハンマーで叩かれることのない部分が平面視した場合に交差するようになっている。
その原因についての説明を以下行うが、まず、交差弦が採用されたアップライトピアノの構造についてのより詳細な説明から始める。
ところで、上述したように、アップライトピアノの弦90のうち、低音部弦90Lは演奏者から見て手前側に、中高音部弦90Rは演奏者から見て奥側に位置している。初期状態におけるハンマーヘッド35の先端から弦90までの距離は、鍵を同じように操作した場合におけるハンマーヘッドが弦に到達するまでの時間が一定である必要がある。そのため、初期状態におけるハンマーヘッド35の先端は、低音部弦90Lと中高音部弦90Rの前後の位置に併せて、低音部弦90Lを叩く低音部ハンマーヘッド35Lの先端が、中高音部ハンマーヘッド35Rの先端よりも、演奏者から見て手前側に位置するようにされる。
その理由は定かではないが、アップライトピアノで交差弦が採用されて以来長い時間が経つが、歴史上、そのような構成が踏襲されて来ている。そのような構成が長い間採用されてきた理由を推測するのであれば、ハンマーヘッド35の後端に凹凸が生じないという見栄えの良さを重視したことと、大きく傾けられる低音部弦90Lを叩くため15°程度傾けられる低音部ハンマーヘッド35Lにおいては、その後側の部分を中高音部ハンマーヘッド35Rと同程度長くすると、ある低音部ハンマーヘッド35Lが低音部弦90Lを打つために進行しようとしたときに、その両隣の低音部ハンマーヘッド35Lと干渉するおそれがあることが、その理由だと思われる。
低音部ハンマーヘッド35Lと中高音部ハンマーヘッド35Rとの後端を揃えるために、上述したように、低音部ハンマーヘッド35Lは中高音部ハンマーヘッド35Rよりもその前後方向の長さを短くされる。その前後方向の長さの差は、低音部ハンマーヘッド35Lの前端を中高音部ハンマーヘッド35Rの前端よりも下げる距離、又は低音部弦90Lと中高音部弦90Rの前後の距離に一致する。低音部ハンマーヘッド35Lと、中高音部ハンマーヘッド35Rとの長さの差により、両者の間には重量差が生じる。
この重量差が、交差弦を採用したアップライトピアノの音とタッチに悪影響を与える原因となっているのではないかと、本願発明者は考えた。
一般に、ハンマーヘッド35に含まれるハンマーウッド34に取付けられるハンマーフェルト36の量は、低音部ハンマーヘッド35L、中高音部ハンマーヘッド35Rを通して、演奏者から見て左側の低音側のハンマーウッド34に取付けられるもの程順に多くされる。それは低音を出すために低音を発生する弦を叩くハンマーヘッド35ほど重量が求められるからである。一般に、弦楽器に限らず打楽器においても、低音を鳴らすために用いられる打撃用の器具(例えば、ドラムに対するスティック)も、低音を発することを意図する場合にはその重量が大きいものが用いられる。
ハンマーヘッド35の重量についてのかかる原則があるにもかかわらず、アップライトピアノのハンマーヘッド35においては、ハンマーフェルト36によって低音側程ハンマーヘッド35を重くする工夫を行う一方で、低音部ハンマーヘッド35Lの方が、中高音部ハンマーヘッド35Rよりも、その前後方向の長さが短いことにより、少なくとも低音部ハンマーヘッド35Lの一部は、中高音部ハンマーヘッド35Rの一部よりも軽くなってしまっている。つまり、低音部側から高音部側に向けて徐々に軽くなっていくべきハンマーヘッド35の序列に、狂いが生じている。
これでは、演奏者が、アップライトピアノから良いタッチ感を得られないのも当然である。低音部ハンマーヘッド35L、中高音部ハンマーヘッド35Rそれぞれの範疇の中では、ハンマーフェルト36の量の違いにより低音側程ハンマーヘッド35が重くなるが、低音部ハンマーヘッド35Lと中高音部ハンマーヘッド35Rの境目においては、その狂いを調節しようがない。
以上が、アップライトピアノから得られるタッチ感が悪くなる理由の1つとなっていることを、本願発明者は看破した。
しかしながらグランドピアノにおいても、ハンマーの先端から弦までの距離を一定にするため、低音部弦を叩く低音部ハンマーヘッドは、中高音部弦を叩く中高音部ハンマーヘッドよりも前方にせり出させている。
そして、グランドピアノにおいては、アップライトピアノとは逆に、低音部ハンマーヘッドの長さを、中高音部ハンマーヘッドの長さよりも長くすることで、低音部ハンマーヘッドと、中高音部ハンマーヘッドの後端の位置を一列に揃えている。
低音側程ハンマーヘッドを重くすべき事情はグランドピアノにおいても同じであり、ハンマーフェルトの量を変更することによりそれを達成するという工夫はグランドピアノでも行われているが、低音部ハンマーヘッドと中高音部ハンマーヘッドとの境目では、飛躍的にその重量が変わるようになっているというのが、グランドピアノにおける現状である。そして、これがグランドピアノのタッチ感を悪化させる原因の少なくとも1つとなっていると、本願発明者は考えている。
以下に説明する発明は、本願発明者が得たこの知見に基づくものである。
そして、このアクションは、前記低音部弦のそれぞれを叩くハンマーヘッドでありハンマーウッドとハンマーフェルトとを含む低音部ハンマーヘッドと、前記中高音部弦のそれぞれを叩くハンマーヘッドでありハンマーウッドとハンマーフェルトとを含む中高音部ハンマーヘッドとを有しており、前記低音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーヘッドと、前記中高音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーヘッドとは、その長手方向の長さが同じとされている。
つまり、このアクションに多数含まれるハンマーヘッドは、低音部ハンマーヘッドに含まれるものであろうと、中高音部ハンマーヘッドに含まれるものであろうと、その長手方向の長さが等しい。これにより、従来の低音部ハンマーヘッドに含まれるハンマーウッドと中高音部ハンマーヘッドに含まれるハンマーウッドとの長さの相違により生じていた、低音側から高音側にかけてのハンマーヘッドの重量の変化の不自然さがなくなるため、ハンマーヘッドの重量の調節のためにハンマーヘッドに重りを仕込むなどの余計な手間やコストをかけることなく、ピアノのタッチ感の悪さを解消することができる。
また、低音部ハンマーヘッドと中高音部ハンマーヘッドとの重さを揃えることにより、それらに対応する鍵を演奏者が同じように押したときの両ハンマーヘッドの速さを揃えることが可能になるから、音のバラつきも抑えられ、このアクションを備えたピアノでは音が良くなることまでも期待できる。
なお、本願発明がアップライトピアノである場合、本願発明のアクションにおいても、従来技術と同様に、低音部ハンマーヘッドの前端は、高音部ハンマーヘッドの前端よりも後方に下がる。したがって、低音部ハンマーヘッドのハンマーウッドがハンマーシャンクと接続される位置は、中高音部ハンマーヘッドのハンマーウッドがハンマーシャンクと接続される位置よりも前側になる。それにより、低音部ハンマーヘッドのハンマーウッドの後端は、中高音部ハンマーヘッドのハンマーウッドの後端よりも後ろの位置で揃った状態となり、低音部ハンマーヘッドの後端と、中高音部ハンマーヘッドの後端が一列に揃わなくなるためそれらの見栄えは若干落ちることになる。しかし、見栄えについてのかかる不具合があったとしても、アップライトピアノに本来求められる良い音を良いタッチ感で鳴らすことができるという機能は圧倒的に本願発明によるアクションを備えたアップライトピアノが勝る。
また、本願発明がグランドピアノである場合、本願発明のアクションにおいても、従来技術と同様に、低音部ハンマーヘッドの上端は、中高音部ハンマーヘッドの上端よりも上方に位置することになる。したがって、低音部ハンマーヘッドのハンマーウッドがハンマーシャンクと接続される位置は、中高音部ハンマーヘッドのハンマーウッドがハンマーシャンクと接続される位置よりも下側になる。それにより、低音部ハンマーヘッドのハンマーウッドの後端は、中高音部ハンマーヘッドのハンマーウッドの下端よりも上の位置で揃った状態となる。グランドピアノにおいても、グランドピアノに本来求められる良い音を良いタッチ感で鳴らすことができるという機能の面では優れている。
前記低音部ハンマーヘッドと、前記中高音部ハンマーヘッドとはともに、従来と同様に、低音側のもの程それに含まれるハンマーフェルトの量が多くされていても良い。もちろん、低音部ハンマーヘッドと、中高音部ハンマーヘッドを通して、低音側のもの程それに含まれるハンマーフェルトの量が多くされていても良い。
ハンマーフェルトの量が相違してもハンマーウッドとハンマーフェルトからなるハンマーヘッドの長さを同じにするには、ハンマーウッドの長さを変えれば良い。従来のピアノにおいても、低音部ハンマーヘッドと中高音部ハンマーヘッドとのそれぞれにおいては、低音側のハンマーヘッド程その長さが短くなるようになっている。本願発明でもそれを踏襲することができる。
これにより、アップライトピアノにおいて、低音部ハンマーヘッドに含まれるハンマーウッドの長さが従来よりも長くなったとしても、進行する低音部ハンマーヘッドが両隣の低音部ハンマーヘッドと干渉することを避けられるようになる。
なお、ここでいう「平面視」とは、ハンマーウッドを、ハンマーシャンクが取付けられた部分(面)の反対側から視た場合を意味するものとする。この場合の視線の向きは、必ずしもハンマーシャンクの長さ方向とは一致しない。
前記低音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーウッドと、前記中高音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーウッドはともに、ハンマーシャンクと接続される部分よりも後端側の部分の平面視した場合の幅が、ハンマーフェルトで覆われる部分よりも細くなるようにされていてもよい。
例えば、いずれの場合でも、低音部ハンマーヘッド又は中高音部ハンマーヘッドに含まれるハンマーウッドは、平面視した場合に、後方に行くにつれて先細るように構成されていても構わない。また、ハンマーウッドの形状は、平面視した場合にハンマーウッドの進行方向に対して左右対称とすることができる。
もっとも、アップライトピアノにおける低音部ハンマーヘッド及び中高音部ハンマーヘッドの形状を上述のようにすることには、弦に向かって進む低音部ハンマーヘッドの後側に乱流が生じるのを防ぐことにより、低音部ハンマーヘッドの軌道を安定させ、それにより低音部ハンマーヘッドが低音部弦を叩くことにより生じる音を安定させるという効果もある。かかる効果を狙うのであれば、アップライトピアノの低音部ハンマーヘッドと中高音部ハンマーヘッドのみならず、グランドピアノの中高音部ハンマーヘッドと低音部ハンマーヘッドの少なくとも一方においても、このような形状のハンマーヘッドを採用することが可能である。
なお、各実施形態において重複する説明は必要に応じて省略するものとする。
この実施形態では、ピアノがアップライトピアノである場合の構成について説明する。
もっともこの実施形態におけるアップライトピアノは、後述するそのハンマーヘッドにのみ特徴を有し、その構成を除いてすべて、従前のアップライトピアノとその構成を同じくする。
それ故、本来であれば、上述の従前のアップライトピアノとの相違点についての構成を除いて、アップライトピアノの構成について説明を行うまでもないが、一応アップライトピアノの全体的な構成についても説明を行う。
また、この実施形態の説明において、前後の概念はアップライトピアノに向かった演奏者の頭部の前後に倣うものとする。
よく知られているように、アップライトピアノは横並びに配列された多数の鍵1を備えている。
また、アップライトピアノは、多数の弦90を有している。鍵1と弦90の数は同数である。多数の弦90は、その長さを稼ぐために斜めに張り渡されている。向かって左側の所定本数の弦90は図1で向かって右下がりに、向かって右側の残りの弦90は図1で向かって左下がりに、それぞれ張り渡されている。右下がりの弦90と左下がりの弦90とはその下方で交差しており、右下がりの弦90が図1における手前側に位置している。このような弦90の張り渡し方は、交差弦と呼ばれ、極普通のものである。
図中35がハンマーヘッドである。ハンマーヘッド35は、鍵1及び弦90と同数であり、横並びに配列されている。
左から順にならぶハンマーヘッド35、鍵1、及び弦90は、左からの順番が同じもの同士で対応付けられている。例えば、一番左の鍵1を押すと一番左のハンマーヘッド35が一番左の弦90を打ち、左から二番目の鍵1を押すと左から二番目のハンマーヘッド35が左から二番目の弦90を打つが如きである。
筐体板101の後側には、筐体板101を支持する柱102が立てられている。図1に示したように、左右の弦90が交差する部分では、一連に並ぶハンマーヘッド35の間に隙間ができている。また、図1に示したように、柱102が存在する部分でも、ハンマーヘッド35の間に隙間ができている。これら2つがこのアップライトピアノのセクションS(セクションS1〜S3を併せて、セクションSと称する。)の境界となる。このアップライトピアノは結局、3つのセクションS1〜S3を備えている。
柱102や弦90の交差などの事情によりセクションSは生じ、多くのアップライトピアノではその数は3から5である。この実施形態ではセクションSは3つであるものとするが、これはこの限りではない。この実施形態では、セクションS1に属する弦90が低音部弦90Lであり、セクションS2及びセクションS3に属する弦90が中高音部弦90Rである。また、低音部弦90Lを打つハンマーヘッド35が低音部ハンマーヘッド35Lであり、中高音部弦90Rを打つハンマーヘッド35が、中高音部ハンマーヘッド35Rである。
各セクションSに属するハンマーヘッド35の隣接するハンマーヘッド35の内側面と外側面は、すべて互いに平行である。
また、3つのセクションSのうち、セクションS1に属するハンマーヘッド35である低音部ハンマーヘッド35Lのみ、その幅方向の中心の平面が、図1中左方向に傾いている。これはハンマーヘッド35の配置のスペースを取るための工夫であり、最近のアップライトピアノの大半がこのような構成を採用している。
筬3の左右端部にはブラケット(図示せず)がそれぞれ形成されている。左右のこれらのブラケットの間には、センターレール4が架け渡されて固定されている。
鍵1の前端部上方にアクション7が形成されている。アクション7は、弦90を打つための中心的な部材として、ウィッペン8、ジャック18、バット25、及びハンマー32を有する。
以下、詳述する。
ウィッペン8はウィッペンフレンジ10よりも後側におけるその下側にヒール11を有しており、また、その上側にジャックフレンジ12を有している。ジャックフレンジ12は、ウィッペン8に対して回転可能として、ウィッペン8とジャック18とを接続するためのものである。ウィッペン8のヒール11は、鍵1の前端に固定されたキャプスタンボタン2を介して、鍵1の前端部の上に載っている。これにより、鍵1が持ち上げられたときに、キャプスタンボタン2を介してウィッペン8が持ち上げられるようになっている。
ウィッペン8の後端部には、バックチェックワイヤ14が立設されており、その先端にバックチェック15が取り付けられている。
また、ウィッペン8の更に後端部には、ブライドルワイヤ71が立設されている。ブライドルワイヤ71と、後述するキャッチャーとの間には、例えば紐又は帯であるブライドルテープ72が、初期状態ではやや弛んだ状態で張り渡されている。
ジャックスプリング13は、ジャックテール19を上方に付勢することにより、ジャック18に対して反時計回り方向に回転する力を加えるバネであり、通常はコイルスプリングである。
ハンマー32は、ハンマーシャンク33とハンマーウッド34と、ハンマーフェルト36とを有している。ハンマーウッド34は、ハンマーシャンク33の上端から前方に延びる部材である。ハンマーフェルト36は直接弦90を打突する部材であり、ハンマーウッド34の前端の上下を跨ぐようにしてハンマーウッド34に取付けられている。ハンマーウッド34とハンマーフェルト36とを併せたものがハンマーヘッド35である。
バット25の被突き上げ部27には、革製のスキン75が貼られている。バット25の後側面の上部には、キャッチャーシャンク28を介してキャッチャー29が取り付けられている。キャッチャー29は、上述したバックチェック15との組合せにより、バット25の回転を止めるものである。バット25が初期位置にあるときには、キャッチャー29はバックチェック15から離れており、バット25がジャック18に突き上げられて反時計回りに回転し、それと同時にウィッペン8の後端が反時計回りに回転すると、キャッチャー29はバックチェック15に捕らえられる。その後ウィッペン8の全体が時計回りに回転しつつ下降することにより、その後端が時計回りに回転しながら大きく下がると、バックチェック15に捕らえられたキャッチャー29は、素早くバックチェック15から離れて再び回転可能となるようになっている。バット25の後側面のうちキャッチャーシャンク28の付け根より下にある部分にも、例えば革製のスキン76が貼られている。すなわち、バット25において、被突き上げ部27よりも後方側かつ上方側にある面にスキン76が貼られている。スキン75の後端とスキン76の下端は連続しており、スキン75とスキン76とは結果として一体となっている。
バット25の前側の面には、バットスプリング25Aが設けられている。バットスプリング25Aは、バット25に対して常に、時計回りの力を与えるためのバネである。バットスプリング25Aからの力により、弦90に向かってハンマー32が回転するに際してハンマー32とともに反時計回りに回転したバット25は素早く元の位置に復帰するようになっている。
ダンパー39は、ダンパーレバー40、ダンパーワイヤー43、ダンパーヘッド44を有する。
ダンパーレバー40は、その中央部で、センターレール4の前側上部に固定したダンパーフレンジ41に回転可能に軸止されている。ダンパーレバー40は、その後側面下端部が、スプーン9の先端と対向している。ダンパーヘッド44は、ダンパーワイヤー43を介してダンパーレバー40の上端に取り付けられている。ダンパーヘッド44は、ダンパーレバー40に取り付けられたダンパースプリング42から力を受けて弦90に圧接するようになっている。
先ず、鍵1が休止状態にある場合について説明する(図2を参照)。鍵1が休止状態にある場合、鍵1の後端は最も上昇した位置にあり、鍵1の前端は最も下降した位置にある。そして、ウィッペン8も最も下降した位置にある。
ジャック18の突き上げ部20の突端は、バット25の被突き上げ部27の下に入って係合している。ジャックテール19はレギュレーティングボタン47から離れている。突き上げ部20とジャックストップレール53との間は離れている。
またこのとき、バット25と接続されたキャッチャー29は、最も下降した位置にあり、キャッチャー29はバックチェック15から離れている。ハンマーシャンク33はハンマーストップレール55に接した状態となっており、ハンマーヘッド35及びハンマーウッド34は弦90から最も離れた位置にある。また、ダンパーヘッド44はダンパースプリング42の力により弦90に圧接している。
演奏者が鍵1を下に押すと、鍵1が時計回りの方向に回転し、鍵1の前端部が上昇する。そうすると鍵1の前端部が、キャプスタンボタン2を介してウィッペン8のヒール11を突き上げ、ウィッペン8がウィッペンフレンジ10を中心として反時計回りの方向に回転しつつ上昇する。
ウィッペン8が回転を開始すると、直ちに、ウィッペン8の後端に設けられたスプーン9がダンパーレバー40の下端を前方に押し、ダンパーレバー40がダンパーフレンジ41を中心として時計回りの方向に回転するのに伴って、ダンパーヘッド44が弦90から離れる。これにより、弦90は振動できる状態となる。
ウィッペン8の回転と上昇に伴って、ジャック18がウィッペン8と共に上昇する。そしてジャック18が上昇すると、ジャック18の突き上げ部20の上端が、バット25の被突き上げ部27を突き上げる。
演奏者が鍵1を離鍵すると、鍵1が反時計回りの方向に回転し、鍵1の前端部が下降を開始する。鍵1の前端部が下降すると、ウィッペン8が、時計回りの方向に回転しつつ下降する。ウィッペン8が下降を開始すると、直ちに、キャッチャー29がバックチェック15から離れ、ハンマー32は回転可能になる。
他方、ハンマー32及びそれと接続されたバット25はバットスプリング25Aがバット25に与える力と、ブライドルテープ72に入った張力によりキャッチャー29が引き戻される力とにより、時計回りに回転し元の位置に戻る。ハンマー32及びバット25が元の位置に戻るのと前後して、バット25の被突き上げ部27の下に、ジャック18の突き上げ部20が戻って、それらが再係合する。
つまり、同じ鍵1の後端を押すことにより再度音を出せる状態となる。
以下、この実施形態のアップライトピアノの従前のアップライトピアノとは異なる構成を有する部分であるそのハンマーヘッド35について、詳しく説明する。
この実施形態のアップライトピアノに含まれるアクションに装着されたハンマー32の特にハンマーヘッド35に相当する部分の拡大斜視図を図4(A)、(B)、(C)に示す。また、ハンマーヘッド35のうちの低音部ハンマーヘッド35Lの平面図と側面図と背面図とを図5に、ハンマーヘッド35のうちの中高音部ハンマーヘッド35Rの平面図と側面図と背面図とを図6に、それぞれ示す。
この実施形態におけるハンマーヘッド35は、上述のように、ハンマーウッド34及びハンマーフェルト36から構成されている。
低音部ハンマーヘッド35Lには、上述のように、ハンマーウッド34が含まれる。ハンマーウッド34は、従来のハンマーウッド34と同様に、その前端から後端までその幅が一定であり、その前方部分では、その上下方向の厚さが前端に近づくに連れ薄くなるようになっており、またその後方部分が角柱形状となっていても良い。
しかしながら、必ずしもこの限りではないが、この実施形態におけるハンマーウッド34は、従来のハンマーウッド34とは若干異なる形状となっている。この実施形態のハンマーウッド34は、後述する後端側の平面視した場合にその幅が徐々に細くなっていく部分を除き、前方から当該部分まで平面視した場合のその幅が一定である。また、これには限られないが、この実施形態におけるハンマーウッド34及びハンマーヘッド35は、その長さ方向に走る仮想の中心線に対して対称、つまり左右対称に構成されている。
ハンマーウッド34のその前方部分では、その上下方向の厚さが前端に近づくに連れ薄くなるようになっている。かかる部分の形状については、この実施形態のハンマーウッド34は従来のハンマーウッド34と同様で良く、この実施形態ではそうされている。その上下方向の厚さが前端に近づくに連れ薄くなるようになっている部分の前方側の一定の範囲は、その上下を跨ぐようにされたハンマーフェルト36により覆われている。ハンマーフェルト36も、従来のハンマーにおけるハンマーフェルト36と同じで良い。ハンマーフェルト36は、上述の部分のすべての部分を覆っても良いし、当該部分の後まで覆っても良いが、一般的には当該部分の前側の所定の範囲を覆っている。
これには限られないが、この実施形態におけるハンマーフェルト36は、内側の内ハンマーフェルト36Aと、外側の外ハンマーフェルト36Bの2層構造となっている。内ハンマーフェルト36A、外ハンマーフェルト36Bともにフェルトでできているが、内ハンマーフェルト36Aの方が密度が高くなっている。ハンマーフェルト36が、革等の他の素材でできていても良く、また他の素材を含んで多層構造となっていても良いことは従来と同様である。平面視した場合におけるハンマーフェルト36の幅は、ハンマーフェルト36が覆っている部分におけるハンマーウッド34の幅に等しくなっている。
ハンマーウッド34における上側の面は、ハンマーウッド34の後端まで底面と平行な平面となっていても構わないが、この実施形態では、これには限られないが、その後端側の所定の範囲に、その後端に向かうに連れて下っていく僅かな傾斜が与えられている。かかる傾斜が与えられた部分は、平面でも良いがこの実施形態では滑らかな曲面である。
なお、ハンマーウッド34の後方の平面視して後ろに向かうに連れて先細って行く部分の前側の限界は、図示したよりも前、例えばハンマーフェルト36に覆われた部分の直後にまで及んでいても構わない。
低音部ハンマーヘッド35Lに含まれるハンマーウッド34と、中高音部ハンマーヘッド35Rに含まれるハンマーウッド34とは、それらが低音部ハンマーヘッド35Lと、中高音部ハンマーヘッド35Rとのいずれに含まれるかの別なく、低音側のものの方が前後方向の長さが短くされている。かかる長さの相違は、ハンマーシャンク33が接続される部分よりも前側の部分、例えば、上下方向の厚さが前端に近づくに連れ薄くなるようになっている部分の長さを変更することにより達成される。また、低音部ハンマーヘッド35Lに含まれるハンマーフェルト36と、中高音部ハンマーヘッド35Rに含まれるハンマーフェルト36とは、それらが低音部ハンマーヘッド35Lと、中高音部ハンマーヘッド35Rとのいずれに含まれるかの別なく、低音側のものの方が量が多くされている。結果として、この実施形態における低音部ハンマーヘッド35Lと、中高音部ハンマーヘッド35Rとは、その長手方向の長さがすべて等しくなっている。
低音部ハンマーヘッド35Lでは、その底面のハンマーウッド34のハンマーフェルト36で覆われた部分のすぐ後側に、ハンマーシャンク33が接続される。低音部ハンマーヘッド35Lでは、ハンマーシャンク33は側面視した場合にハンマーウッド34の底面に垂直であり、背面視した場合にハンマーウッド34の底面に傾けて取付けられる。低音部ハンマーヘッド35Lは低音部弦90Lの傾きに応じて傾けられるのが通常であるからである。なお、これは公知技術である。
他方、中高音部ハンマーヘッド35Rでは、その底面の低音部ハンマーヘッド35Lの場合よりも後ろ寄りの位置に、ハンマーシャンク33が接続される。中高音部ハンマーヘッド35Rでは、ハンマーシャンク33は側面視した場合にも背面視した場合にもハンマーウッド34の底面に垂直となるようにして、ハンマーウッド34の底面に取付けられる。
低音部ハンマーヘッド35Lに取付けられるものも、中高音部ハンマーヘッド35Rに取付けられるものも、ハンマーシャンク33は、これには限られないが断面円形の木製の棒である。ハンマーシャンク33とハンマーウッド34の固定は一般に、ハンマーウッド34に図示を省略の穴を穿ち、ハンマーシャンク33の上端をその穴に挿入した状態で接着することにより行われる。これには限られないが、この実施形態でもハンマーシャンク33とハンマーウッド34の固定はそのようにして行われている。
ハンマーウッド34を以上のようなものとしたので、低音部弦90Lによる発音を求めて演奏者が鍵1を押して低音部ハンマーヘッド35Lを回転させるときと、中高音部弦90Rによる発音を求めて演奏者が鍵1を押して中高音部ハンマーヘッド35Rを回転させるときとで、タッチ感の不連続な変化がない。
また、ハンマーフェルト36を、低音側程量を増やして重くしておけば、ハンマーヘッド35の重さは最も低音側のものが一番重く、高音側に向かうに連れて徐々に軽くなる。これによって、このアップライトピアノにより得られる音は全体的に良いものとなるし、演奏者が違和感を覚えることもなくなる。
また、この実施形態の特に低音部ハンマーヘッド35Lは、そのハンマーシャンク33よりも後側の部分が細くなっているので、ハンマーウッド34の前後の長さが通常のハンマーウッド34よりも多少長くとも、それが進行等するときに両隣の低音部ハンマーヘッド35Lと干渉しにくい。
なお、この実施形態で説明したハンマー32乃至ハンマーヘッド35は、既存の例えば販売済みの或いは店舗にあるアップライトピアノの同部品に対して置換することが可能である。そうすることにより、既存のアップライトピアノの音を向上させることができる。この事情は第2実施形態におけるグランドピアノにおいても同様である。
この実施形態では、ピアノがグランドピアノである場合の構成について説明する。
もっともこの実施形態におけるグランドピアノは、後述するそのハンマーヘッドにのみ特徴を有し、その構成を除いてすべて、従前のグランドピアノとその構成を同じくする。
それ故、本来であれば、上述の従前のグランドピアノとの相違点についての構成を除いて、グランドピアノの構成について説明を行うまでもないが、一応グランドピアノの全体的な構成についても説明を行う。
グランドピアノは、その筐体900の中に張り渡された弦990を備えている。グランドピアノの弦990には、これもよく知られているように交差弦の構成が採用されている。
弦990のうち、実線で示したのが低音部弦990Lである。低音部弦990Lは、演奏者から見て奥に向かうに連れてやや右側に向かうように斜めに張られている。弦990のうち点線で示したのが中高音部弦990Rである。中高音部弦990Rは、演奏者から見て奥に向かうに連れて左側に向かうように斜めに張られている。低音部弦990L、中高音部弦990Rはともに、水平に張り渡されており、前者が後者の上に位置する。低音部弦990Lと中高音部弦990Rとは、ハンマーで叩かれることのないその図7における上側の部分において交差している。
アクション901は、鍵910に加え、いずれも公知のウィッペン920、レペティションレバー923、ハンマー932を有する。
多数の鍵910は、筬911の上に左右方向に並んでいる。鍵910の中央部には穴913が穿たれており、そこにバランスピン912が挿入されている。鍵910は、バランスピン912を支点としてその前後方向にシーソー運動が可能な状態でバランスピン912により支持されている。鍵910のバランスピン912により支持されている部分よりも前側に、キャプスタンスクリュー914が設けられている。キャプスタンスクリュー914は、鍵910の後方が演奏者により押し込まれることにより鍵910の前方が上がったときに、後述するウィッペン920を上方に押し上げるものである。鍵910の更に前方にはバックチェック915が設けられている。バックチェック915は、打鍵後に戻ってきたハンマー932のハンマーヘッド935を受け止めるものである。
ウィッペン920の前後方向の中程の上側には、支柱状のレペティションレバーフレンジ922が設けられている。レペティションレバーフレンジ922は、レペティションレバー923との接続をなすためのものであり、その上端は、レペティションレバー923の前後方向の中間部分とピン973により接続されている。レペティションレバー923は、ピン973を軸としてレペティションレバーフレンジ922に対して回動可能となっている。
ウィッペン920、レペティションレバーフレンジ922、レペティションレバー923及びジャック924は、それらの全体が、ウィッペンフレンジ963を中心として一体になって回動する部品群を構成している。
ハンマー932は、第1実施形態におけるアップライトピアノの場合と同様のハンマーシャンク933とハンマーウッド934と、ハンマーフェルト936とを有している。第2実施形態でも、第1実施形態と同じくハンマーウッド934とハンマーフェルト936とを併せたものがハンマーヘッド935である。
前述のハンマーシャンクローラ939は、ハンマーシャンク933の基端よりの部分の下側に取付けられている。ハンマーシャンクローラ939は、図8、図9において、時計回り及び反時計回りの双方向に回転自在とされたローラであり、後述のようにしてジャック924の突き上げ部925がハンマーシャンク933を上方に持ち上げる際において、突き上げ部925からハンマーシャンク933へかかる力を素早く開放するためのものである。ハンマーシャンクローラ939の幅は、レペティションレバー923に設けられた上述の細長い孔の幅よりも広く、アクション901が静止状態にあるときには、ハンマーシャンクローラ939の下面は、孔の両側部分で、レペティションレバー923の上面に当接している。
ハンマーシャンク933は、その後端部においてハンマーシャンクフレンジ965に取付けられている。かかる取付けは、ピン975を用いて行われている。ハンマーシャンク933は、ピン975を軸としてハンマーシャンクフレンジ965に対して回動可能にされている。ハンマーシャンクフレンジ965はハンマーシャンクレール966に固定されている。ハンマーシャンクレール966は左右のブラケット962の間に架け渡されて固定される長尺の部材である。
弦990がハンマーヘッド935の上方に張られている。
先ず、鍵910が静止位置にある場合を説明する(図8を参照)。
鍵910の後端が押される前の状態では、鍵910の前端は最も下降した位置にある。このとき、ウィッペン920及びレペティションレバー923の前端は、それぞれ最も下降した位置にある。
このとき、ウィッペン920のヒール921がキャプスタンスクリュー914に当接し、キャプスタンスクリュー914を下向きに押圧している。
また、ハンマーシャンクローラ939は、その下面で、ジャック924の突き上げ部925の上端と、レペティションレバー923の上面とに当接している。
演奏者が静止位置にある鍵910の後端を押すと、鍵910の前端側が上昇する。そうすると、鍵910の前寄りの部分に設けられたキャプスタンスクリュー914が、それに当接しているヒール921を下から押し上げる。それにより、ウィッペン920の全体が、ピン972を軸として、ウィッペンフレンジ963に対して回動しつつ上昇する。ウィッペン920が反時計回りに回動しつつ上昇すると、それに伴いウィッペン920に設けられたレペティションレバーフレンジ922が回動しつつ上昇し、レペティションレバーフレンジ922に接続されたレペティションレバー923も回動しつつ上昇する。
そうすると、レペティションレバー923がハンマーシャンクローラ939を押し上げ、ジャック924の突き上げ部925がハンマーシャンクローラ939を突き上げる。ジャック924の突き上げ部925によるハンマーシャンクローラ939の突き上げにより、ハンマー932がハンマーシャンクフレンジ965に設けられたピン975を軸として、ハンマーシャンクフレンジ965に対して回動する。演奏者が引き続き鍵910を押し続けると、ジャック924は、ピン974を軸としてウィッペン920に対して時計回りに回動し、その結果ジャック924の突き上げ部925が、図9に示したように後方にずれてハンマーシャンクローラ939の下から外れる。ハンマーシャンクローラ939は、ハンマーシャンクローラ939の下からジャック924の突き上げ部925が素早く離脱するのを助ける。
ハンマーヘッド935が弦990を打った後、ハンマー932は直ちに反転し、重力に従い、回動しつつ下降する。そして、ハンマーシャンクローラ939がレペティションレバー923の上に当たり、ハンマーシャンクローラ939がレペティションレバー923を押し下げる。その後、ハンマーヘッド935はバックチェック915につかまって止まる。
これにより、アクション901は、図8に示した静止状態に戻り、同じ鍵910を再度打鍵できるようになる。
以下、この実施形態のグランドピアノの従前のグランドピアノとは異なる構成を有する部分であるそのハンマーヘッド935について、詳しく説明する。
グランドピアノのハンマーヘッド935は、概ねアップライトピアノのハンマーヘッド35と同様に構成される。グランドピアノのハンマーヘッド935は、上述の低音部弦990Lを叩く低音部ハンマーヘッドも、上述の中高音部弦990Rを叩く中高音部ハンマーヘッドも、第1実施形態におけるハンマーウッド34と同じように構成されるハンマーウッド934と、第1実施形態におけるハンマーフェルト36と同じように構成されるハンマーフェルト936とを備えている。
また、グランドピアノのハンマーヘッド935は、図示を省略するが、低音部ハンマーヘッドにおいても、中高音部ハンマーヘッドにおいても、その長手方向の長さは一致するようになっている。グランドピアノのハンマーヘッド935中のハンマーウッド934は、低音側から高音側に向けて徐々に長くなるようになっており、他方ハンマーヘッド935中のハンマーフェルト936は低音側から高音側に向けて徐々にその量が少なくなるようになっている。これらの点も第1実施形態と同様である。
グランドピアノにおけるハンマーウッド934の形状は、第1実施形態のハンマーウッド34と同様に、従来のハンマーウッドと同じようにすることもできるし、従来のハンマーウッドとは若干異なる形状とすることもできる。
第1実施形態のアップライトピアノの低音部ハンマーヘッド35Lでは、その底面のハンマーウッド34のハンマーフェルト36で覆われた部分のすぐ後側に、ハンマーシャンク33が接続された。他方、第2実施形態のグランドピアノでは、ハンマーヘッド935のうち、その中高音音部ハンマーヘッドにおいて、その底面のハンマーウッド934のハンマーフェルト936で覆われた部分のすぐ後側に、ハンマーシャンク933が接続される。
また、第1実施形態のアップライトピアノの中高音部ハンマーヘッド35Rは、その底面の低音部ハンマーヘッド35Lの場合よりも後ろ寄りの位置に、ハンマーシャンク33が接続された。他方、第2実施形態のグランドピアノでは、ハンマーヘッド935のうち、その低音音部ハンマーヘッドに対して、その底面の高音部ハンマーヘッドの場合よりも後ろ寄りの位置に、ハンマーシャンク933が接続される。
つまり、第1実施形態と第2実施形態とでは、ハンマーシャンク33、933が接続される位置が、低音部ハンマーヘッドと中高音部ハンマーヘッドとで逆になっている。
これは、アップライトピアノとグランドピアノで、低音部弦90L、990Lと、中高音部弦90R、990Rとの位置関係が逆転しているからである。つまり、ハンマー32、932の軌道方向で見た場合、アップライトピアノでは、低音部弦90Lが中高音部弦90Rよりもハンマー32から近い側にあり、グランドピアノでは、低音部弦990Lが中高音部弦990Rよりも遠い側にあるからである。
第2実施形態では、ハンマーシャンク933が接続される位置を、低音部ハンマーヘッドと中高音部ハンマーヘッドとで、第1実施形態の場合と逆転させることにより、低音部ハンマーヘッドの先端が、低音部弦990Lに平行に一列に揃い、中高音部ハンマーヘッドの先端が、中高音部弦990Rに平行に一列に揃い、且つ低音部ハンマーヘッドの先端から低音部弦990Lまでの距離と、高音部ハンマーヘッドの先端から高音部弦990Rまでの先端までの距離とが等しい、という第1実施形態と同じ状態が、第2実施形態でも作られることになる。
他方、低音部ハンマーヘッドの前端は、中高音部ハンマーヘッドよりも幾らか上に上がった状態となり、これは弦との位置関係(弦との遠近)で言えば、第1実施形態と逆の関係になる。
なお、グランドピアノの場合には、低音部ハンマーヘッドも中高音部ハンマーヘッドも、ハンマーウッド934の底面に垂直に取付けられるのが通常である。
33 ハンマーシャンク
34 ハンマーウッド
35 ハンマーヘッド
35L 低音部ハンマーヘッド
35R 中高音部ハンマーヘッド
36 ハンマーフェルト
90 弦
90L 低音部弦
90R 中高音部弦
932 ハンマー
933 ハンマーシャンク
934 ハンマーウッド
935 ハンマーヘッド
936 ハンマーフェルト
990 弦
990L 低音部弦
990R 中高音部弦
Claims (6)
- 並列して張り渡された多数の弦である低音部弦と、前記低音部弦のうちのハンマーヘッドで叩かれない部分とそれらのうちのハンマーヘッドで叩かれない部分とが交差するように重ねあわせ、且つ前記低音部弦と前後差を設けて並列して張り渡された多数の弦である中高音部弦とを備えている、ピアノのアクションであって、
前記低音部弦のそれぞれを叩くハンマーヘッドでありハンマーウッドとハンマーフェルトとを含む低音部ハンマーヘッドと、前記中高音部弦のそれぞれを叩くハンマーヘッドでありハンマーウッドとハンマーフェルトとを含む中高音部ハンマーヘッドとを有しており、
前記低音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーヘッドと、前記中高音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーヘッドとは、その長手方向の長さが同じとされている、
アクション。 - 前記低音部ハンマーヘッドと、前記中高音部ハンマーヘッドとはともに、低音側のもの程それに含まれるハンマーフェルトの量が多くされている、
請求項1記載のアクション。 - 前記ピアノはアップライトピアノであり、
前記低音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーウッドは、ハンマーシャンクと接続される部分よりも後端側の部分の平面視した場合の幅が、ハンマーフェルトで覆われる部分の幅よりも細くなるようにされている、
請求項1記載のアクション。 - 前記低音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーウッドと、前記中高音部ハンマーヘッドに含まれる前記ハンマーウッドはともに、ハンマーシャンクと接続される部分よりも後端側の部分の平面視した場合の幅が、ハンマーフェルトで覆われる部分よりも細くなるようにされている、
請求項3記載のアクション。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のアクションを含んでいる、
アップライトピアノ。 - 請求項1又は2に記載のアクションを含んでいる、
グランドピアノ。
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