以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本明細書の
全図において、混同を生じない限り、同一部分には同一符号を付し、その説明を適時省略する。
図1は、本実施形態の溶接用エンドタブを用いた溶接作業の一例を示す斜視図である。図1に示す例の溶接用エンドタブ10は、被溶接部材である第1金属部材1および第2金属部材2のそれぞれの端面を溶接するために用いられる。図1に示す例において、被溶接部材はいずれも板状であるが、被溶接部材の形状はこれに限るもんではない。
本実施形態の溶接用エンドタブ10は、溶接の際、被溶接部材の相対位置を固定するとともに、溶融金属の外部への漏洩を防ぐために用いられる。図1に示す例では、溶接用エンドタブ10が2つ配置されている。2つの溶接用エンドタブ10は、第1金属部材1の端面と第2金属部材2の端面とが溶接される部分に配置されている。2つの溶接用エンドタブ10は、第1金属部材1と第2金属部材2それぞれの側面に、クランプ用針金5によって押さえつけられた状態で固定されている。このように、溶接用エンドタブ10は被溶接部材との接触部を有し、接触部は、第1金属部材11と第2金属部材2それぞれの側面に対向して接触する対向面10aを有している。
また、図2は、本実施形態の溶接用エンドタブ10を用いた溶接作業の状態の他の例を示す斜視図である。図2に示す例では、溶接用エンドタブ10は、被溶接部材である第3金属部材3の一方の主面に、被溶接部材である第4金属部材4の端面を溶接するために用いられる。第4金属部材4は、第3金属部材3に仮固定された裏当金6によって支持されている。
溶接用エンドタブ10は、少なくとも被溶接部材に対向して配置される接触部が窒化珪素を主成分とするセラミック焼結体(以降、単にセラミック焼結体ともいう)からなる。本実施形態の溶接用エンドタブ10は接触部がセラミック焼結体からなる。したがって、接触部が有する対向面10aもセラミック焼結体からなる。なお、溶接用エンドタブ10の全体がセラミック焼結体からなるものであってもよい。そして、セラミック焼結体における主成分とは、セラミック焼結体を構成する成分100質量%のうち、70質量%以上を占める成分をいい、特に、80質量%以上であることが好適である。
以下においては、溶接用エンドタブ10の全体がセラミック焼結体からなるものとして記載する。本実施形態の溶接用エンドタブ10を構成するセラミック焼結体は、溶融金属に対して濡れ難いので、溶融金属が溶接用エンドタブ10に凝着し難く、溶接用エンドタブ10と被接合部とが接合され難い。このため、溶接用エンドタブ10を取り外すために凝着部を切断する工程などの特別にコストのかかる余分な工程を行うことなく、比較的少ない力で溶接用エンドタブ10を引き剥がすことができる。また、セラミック焼結体は機械的強度も高く、繰り返し使用による形状や強度の変化が小さい。また、セラミック焼結体からなる溶接用エンドタブ10は、スチール製の溶接用エンドタブに比べて溶融金属に対する耐食性が高い。セラミック焼結体からなる本実施形態の溶接用エンドタブ10は、繰り返し使用による形状や強度の変化が小さく、繰り返し使用できる回数が多い(耐久性が高い)。
図3は、本実施形態の溶接用エンドタブ10の、対向面10aの近傍を拡大した顕微鏡写真である。溶接用エンドタブ10は、接触部の対向面10aは開気孔9を有し、開気孔9の内部には、窒化珪素の柱状結晶7が互いに交錯するように複数位置していてもよい。
セラミック焼結体において、窒化珪素の柱状結晶7は粒界相8よりも溶融金属に対して濡れ難いものである。それゆえ、窒化珪素の柱状結晶7が互いに交錯した開気孔9を対向面10aに複数有しているときには、開気孔9内部に存在する粒界相8は柱状結晶で覆わ
れることとなるとともに、対向面10aにおいて溶融金属に対して濡れ難い領域が多くなることから、さらに溶融金属が溶接用エンドタブ10に凝着し難くなり、さらに溶接用エンドタブ10と被接合部とが接合され難くなる。
次に、本実施形態の溶接用エンドタブ10の接触部を構成するセラミック焼結体の組成の一例を説明する。このセラミック焼結体は、窒化珪素を主成分とするものであり、窒化珪素以外に含まれる成分として、例えば、イットリウム,アルミニウムおよび珪素がある。
セラミック焼結体は、イットリウム,アルミニウムおよび珪素以外に、クロム,マンガン,鉄,銅,タングステン,モリブデン等を含むものであってもよく、特には、クロム,マンガン,鉄および銅のいずれか1種を含む珪化物である第1の珪化物を含むことが好適である。
上述した第1の珪化物を含むときには、セラミック焼結体をより明度の低い色調にすることができるので、溶接による汚れを目立ちにくくすることかできる。第1の珪化物としては、例えば、組成式が、CrSi2,MnSi2,FeSi2およびCuSi2等として表される成分である。なお、第1の珪化物を構成する、クロム,マンガン,鉄または銅の含有量は、セラミック焼結体を構成する全成分100質量%のうち、0.02質量%以上2質量%以下であることが好適である。
セラミック焼結体において、タングステンまたはモリブデンの珪化物である第2の珪化物を含むこともまた好適である。第2の珪化物を含有することで、セラミック焼結体をさらに明度の低い色調にすることできるので、溶接による汚れをさらに目立ちにくくすることかできる。タングステンまたはモリブデンの珪化物としては、例えば、組成式が、W5Si3(JCPDS#81−1916)およびMoSi2等として表される成分である。なお、タングステンまたはモリブデンの含有量は、セラミック焼結体の全質量100質量%のうち、0.02質量%以上2質量%以下であることが好適である。
第1の珪化物および第2の珪化物は、X線回折装置(XRD)によって同定することができる。また、これら珪化物の各含有量については、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置(ICP)によって得られた上記各元素を珪化物に換算すればよい。
また、対向面10aは炭素を含み、その含有量が40原子%以上であることが好適である。この場合、対向面10a内における通電性が高くなり、アークを安定的に発生することができるので、溶接欠陥の発生を抑制することができる。対向面10aにおける炭素の含有量は、X線光電子分光分析装置を用いて測定することができる。また、対向面10aが炭素を含む場合、その含有量は70原子%以下であることが好適である。
溶融金属に対する濡れ性をより低くするには、セラミック焼結体の対向面10aの表面粗さはより大きい方が好ましい。溶融金属に対する濡れ性をより低くするには、セラミック焼結体の対向面10aの算術平均粗さ(Ra)を例えば1〜50μm程度とすることが好ましい。
セラミック焼結体からなる溶接用エンドタブ10の表面粗さを大きくする方法としては、窒化珪素を主成分とする粉末を所望の形状に固める成形を行う際に、金型の押圧加圧面側にいわゆる放電シボ加工を施すことにより、転写面を適切な表面粗さに調整する方法や、セラミック成形体を焼結する際に、比較的粗い敷き粉を棚板に敷くことで適切な表面粗さに調整する方法などを用いればよい。また、比較的粗い研磨砥粒を用いたブラスト加工を施し表面粗さを調整するといった方法を用いてもよく、表面粗さの調整方法等は特に限定されない。
[セラミック焼結体の実施形態1]本実施形態の溶接用エンドタブ10の接触部を構成するセラミック焼結体は、粒界相8にY2SiAlO5Nが存在し、窒化珪素の含有量が80質量%以上であって、X線回折チャートにおける2θ=32〜33°のY2SiAlO5Nのピーク強度をX、2θ=33.2〜34.2°の窒化珪素のピーク強度をYとしたとき、比率X/Yが0.1以上0.5以下であることも好適である。
上述した構成を満たしている場合には、粒界相8内に窒化珪素の結晶を結合する非晶質相を存在させつつ、Y2SiAlO5Nの占有率が高くなり、粒界相8に生じる空隙が少なくなっている。このように粒界相8に生じる空隙が少ない場合、セラミック焼結体の機械的強度は比較的高くなる。セラミック焼結体において粒界相8に生じる空隙が密集している部分は、顕微鏡等で拡大して観察することで確認できるし、この空隙がより高密度に密集している部分については目視でも確認できる。例えば、セラミック焼結体の表面を100倍に拡大して観察したときには、空隙の密集している部分は白い点(白点)に見える。さらに、円相当径1μm以上5μm以下の白点であれば、0.15mm2あたりに2200より多く存在する領域では、目視でも白色に見える。
また、窒化珪素の含有量は、X線回折装置(XRD)により求めることができる。具体的には、XRDによりセラミック焼結体を構成する成分を同定し、同定された成分をリートベルト解析することによって窒化珪素の含有量を求めることができる。また、XRDにより得られたX線回折チャートから比率X/Yを求めることができる。また、窒化珪素およびY2SiAlO5Nは、XRDまたは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて同定することができる。さらに、非晶質相は、ハローパターンの有無により確認することができる。
また、セラミック焼結体の粒界相8には、Y2SiAlO5N以外に、Y5(Si4)3N(アパタイト),Y2Si2O7(ダイシリケート)およびY2SiO5(モノシリケート)のうち少なくとも1種が存在していてもよい。
ここで、セラミック焼結体の構造について、図4の模式図を用いて説明する。図4に示すように、セラミック焼結体は、窒化珪素の柱状結晶7が配向することなく複数存在しており、窒化珪素の柱状結晶7の間に粒界相8が存在している。なお、粒界相8には、図示していないが、非晶質相およびY2SiAlO5Nが存在する。そして、粒界相8において、Y2SiAlO5Nが少ないときには、空隙が生じやすくなる。
特に、対向面10aにおける円相当径1μm以上5μm以下の白点の個数は、0.15mm2あたり2000個以下であることが好適である。例えば、円相当径1μm以上5μm以下の白点の個数が、2000個以下であれば、粒界相8に生じる空隙が少なく、機械的強度を比較的高くすることができる。なお、白点の個数の測定には、セラミック焼結体の対向面10aを研磨して得られた鏡面を測定すればよい。
次に、セラミック焼結体の対向面10aにおける白点の測定方法を説明する。まず、セラミック焼結体の対向面10aを研磨する。そして、研磨によって得られた鏡面を洗浄した後、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察し、面積が0.15mm2(横方向の長さが1000μm、縦方向の長さが150μm)となる範囲を光学顕微鏡付属のCCDカメラを用いて暗視野で撮影し、画像データを取得する。得られた画像データを用いて、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)による粒子解析を行うことで、白点の円相当径および個数を求めることができる。なお、粒子解析の設
定条件としては、例えば、明度を明に設定し、2値化の方法を手動、小図形除去面積を1μm2、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の1.2倍以下とする。
次に、セラミック焼結体の組成の一例を説明する。セラミック焼結体は、窒化珪素を80質量%以上含むものであり、窒化珪素以外の成分としては、例えば、イットリウム(Y),アルミニウム(Al),珪素(Si)がある。そして、これらの成分の含有量としては、YがY2O3換算で7質量%以上14質量%以下,AlがAl2O3換算で2質量%以上5質量%以下,SiがSiO2換算で0.5質量%以上2質量%以下である。
次に、セラミック焼結体における各成分の含有量の測定方法の一例を説明する。まず、酸素分析装置(堀場製作所製 EMGA−650FA)を用いた赤外線吸収法によりセラミック焼結体中の酸素の含有量を求める。
次に、ICPを用いてYおよびAlの定量分析を行う。そして、定量分析によって得られたYおよびAlの定量値をそれぞれY2O3およびAl2O3に換算する。これにより、YをY2O3に、AlをAl2O3に換算したときの含有量を求めることができる。次に、この酸化物換算で必要とした酸素量をセラミック焼結体中の酸素の含有量から差し引き、この差し引いた酸素量からSiO2に換算し、この値を、SiをSiO2に換算したときの含有量とする。
[セラミック焼結体の実施形態2]また、溶接用エンドタブ10の接触部を構成するセラミック焼結体は、カルシウム,アルミニウムおよび希土類元素の酸化物を含み、カルシウム,アルミニウムおよび希土類元素の酸化物の合計100質量%のうち、カルシウムを酸化物に換算した含有量が0.3質量%以上1.5質量%以下、アルミニウムを酸化物に換算した含有量が14.2質量%以上48.8質量%以下であり、残部が希土類元素の酸化物であるとともに、窒化珪素は、組成式がSi6−ZAlZOZN8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンであり、平均結晶粒径が20μm以下(但し、0μmを除く。)であることも、また好適である。
上述した構成を満たしている場合には、異常に粒成長した結晶粒子が少ないので、結晶粒径のばらつきが小さくなり、かつセラミック焼結体のかさ密度が高く、剛性が高いので、エンドタブの変形を抑制することができる。また、被溶接部材の温度が高くても、異常に成長した結晶粒子が少ないため、機械的強度がほとんど低下せず、また、β−Si3N4の結晶対称性がほとんど損なわれていないため熱伝導率が低下しにくく、耐熱衝撃性を維持することができる。
ここで、固溶量zは、次のようにして算出することができる。まず、粒度番号が200のメッシュを通過するまで試料を粉砕し、得られた粉末に粉末X線回折法における回折角の角度補正用サンプルである高純度α−窒化珪素粉末(宇部興産製E−10グレード、アルミニウム含有量は20質量ppm以下)を60質量%添加して乳鉢にて均一になるように混合し、粉末X線回折法により解析範囲2θを33〜37°とし、走査ステップ幅を0.002°として、Cu−Kα線(λ=1.54056Å)にてプロファイル強度を測定する。なお、角度の補正は、角度補正用サンプルより得られるピークの最大値を用いて補正する。そして、2θ=34.565°付近に現れるα(102)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと34.565°との差(Δ2θ1)、および2θ=35.333°付近に現れるα(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと35.333°との差(Δ2θ2)をそれぞれ求め、その差の平均(Δ2θ1+Δ2θ2)/2を補正Δ2θとする。
次に、2θ=36.055°付近に現れるβ(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θを補正Δ2θによって補正した角度を試料のβ(210)のピーク位置(2θβ)とする。そして、ピーク位置(2θβ),λ=1.54056Å,(hkl)=(210),c=c軸方向の格子定数を以下の数式に代入して格子定数a(Å)を算出する。sin2θβ=λ2(h2+hk+k2)/(3a2)+λ2l2/(4c2) この数式で、算出した格子定数a(Å)と、K.H.Jack,J.Mater.Sci.,11(1976)1135−1158,Fig.13に記載された格子定数a(Å)−固溶量zのグラフとから、固溶量zを求めることができる。特に、固溶量zは0.35以上0.70以下であることがより好適である。
また、窒化珪素の平均結晶粒径は、JIS R 1670−2006に準拠し、走査型電子顕微鏡を用い、倍率を例えば2000倍〜4000倍として、セラミック焼結体を破断して研磨した面を撮影した画像から求めることができる。
[セラミック焼結体の実施形態3]また、溶接用エンドタブ10の接触部を構成するセラミック焼結体は、粒界相8にゲーレナイトを含み、X線回折チャートにおける2θ=31°〜32°におけるゲーレナイトのピーク強度の半値幅が0.5°以下であることもまた好適である。粒界相8にゲーレナイトを含んでいると、粒界相8において酸やアルカリ成分により腐食しやすい非晶質相が相対的に少なくなるため、機械的強度をさらに高く維持することができる。また、粒界相8において非晶質相が相対的により少なくなることから、高温に曝されてもさらに変形しにくくなる。
そして、X線回折チャートにおける2θ=31°〜32°におけるゲーレナイトのピーク強度の半値幅が0.5°以下であると、ゲーレナイトの結晶の歪みが小さくなり、セラミック焼結体の熱伝導性および剛性ともに高くすることができる。なお、ゲーレナイトの組成式は、例えば、Ca2Al2SiO7として示されるが、定比組成に限定されるものではない。また、セラミック焼結体は、ゲーレナイトにマグネシウムおよびナトリウムが固溶していることが好適である。ゲーレナイトにマグネシウムおよびナトリウムが固溶しているときには、粒界相8における結晶(ゲーレナイト)の存在割合が高くなり、非晶質相の存在割合が低くなることから、粒界相8の変形が抑制され、セラミック焼結体の剛性を高めることができる。
なお、マグネシウムおよびナトリウムが固溶しているゲーレナイトの組成式は、例えば、((Ca1−(a+b),Naa,Mgb)2(Al1−(c+d),Sic,Mgd)2(Si1−(e+f),Ale,Mgf)O7)(但し、0<a+b<1,0<c+d<1,0<e+f<1)として示すことができる。また、セラミック焼結体の粒界相8におけるゲーレナイトの存在については、XRDを用いて確認することができる。また、ゲーレナイトにおけるマグネシウムおよびナトリウムの固溶については、エネルギー分散型X線分光器(EDS)または波長分散型X線分光器(WDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認することができる。
[セラミック焼結体の実施形態4]また、溶接用エンドタブ10を構成するセラミック焼結体は、希土類元素、マグネシウムおよびアルミニウムの酸化物を含み、アルミニウムの含有量は、酸化物に換算して0.6質量%以下(但し、0質量%を含まず。)であることが好適である。
セラミック焼結体は、希土類元素、マグネシウムおよびアルミニウムの酸化物を含んでいると、この酸化物が焼結助剤として働いてセラミック焼結体の機械的特性を高めることができるとともに、酸化アルミニウムの含有量が0.6質量%以下(但し、0質量%を含まず。)であることによって、セラミック焼結体の酸に対する耐食性を高めることができ
るため、溶接中、酸性スラグが多く発生する場合には、長期間にわたって好適に使用することができる。
さらに、セラミック焼結体は、希土類元素、マグネシウムおよびアルミニウムの酸化物を含み、マグネシウムおよびアルミニウムの酸化物はアルミン酸マグネシウムであってもよい。このような構成であると、セラミック焼結体の機械的特性を高めることができるとともに、セラミック焼結体のアルカリに対する耐食性を高めることができるため、溶接中、塩基性スラグが多く発生する場合には、長期間にわたって好適に使用することができる。
希土類元素、マグネシウムおよびアルミニウムの酸化物の含有量については、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置(ICP)によって得られた各元素の含有量から酸化物に換算すればよい。
粒界相8は、RESiO2N,RE2Si3O3N4,RE4Si2O7N2およびRE5Si3O12N(RE:希土類元素)の少なくとも1種を含むことが好適である。
これらの珪酸窒化物を粒界相8内に含んでいるときには、変形しやすい金属元素の酸化物で構成される非晶質相の存在割合が粒界相8内において相対的に少なくなり、粒界相8の変形を抑制することができるため、溶湯用エンドタブの剛性を高めることができる。
また、粒界相8が非晶質相および酸化物のみを含む場合よりも耐熱性が向上するので、高温における変形を抑制することができる。
アルミン酸マグネシウムおおび珪酸窒化物については、X線回折装置(XRD)やX線マイクロアナライザー(EPMA)にて測定することによってその形態を確認することができる。
[セラミック焼結体の実施形態5]また、溶接用エンドタブ10は、窒化硼素の含有量が3質量%以上20質量%以下であることが好適である。上述した構成を満たしている場合には、対向面を緻密質な面とすることができるとともに、窒化硼素が有する高い付着防止作用により、溶融金属が付着しにくくなる。また、窒化硼素の結晶構造は菱面体晶であることが好適である。
ここで、窒化硼素は、常圧における結晶構造として、六方晶と菱面体晶とがあり、菱面体晶の窒化硼素は、単位格子におけるc軸の格子定数(1.0000nm)が六方晶の窒化硼素の単位格子のc軸における格子定数(0.66813nm)よりも大きいものである。
そして、窒化硼素の結晶構造が菱面体晶であることにより、焼結時に、窒化珪素の柱状結晶を構成する単位格子の一部が菱面体晶の窒化硼素の単位格子内に侵入して、菱面体晶の窒化硼素と窒化珪素とが強固に結合されるとともに、結合された結晶の形状が複雑な形状となっているため結合力が高くなると考えられる。
ここで、対向面10aにおける各成分の含有量は、X線回折装置(XRD)を用いて、対向面10aにおける成分を同定した後、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算すればよい。または、対向面10aから深さ方向に30μm〜50μm程度の深さまで研磨して得られる研磨粉を試料とし、ICP発光分光分析装置(ICP)を用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算してもよい。
また、XRDを用いて測定した際に、菱面体晶のみの窒化硼素が同定された場合には、上述した方法で求めた窒化硼素の含有量が菱面体晶の窒化硼素の含有量である。なお、六方晶および菱面体晶の窒化硼素が同定された場合には、対向面10aから深さ方向に30μm〜50μm程度の深さまで研磨して得られる研磨粉を試料として、XRDを用いたリートベルト法で、結晶構造毎の質量百分率を求め、窒化硼素の含有量に菱面体晶の質量百分率を掛けて算出すればよい。
次に、本実施形態の溶接用エンドタブの製造方法の一例を説明する。
[セラミック焼結体の第1の実施形態の製造方法]まず、珪素の粉末(平均粒径D50=0.5〜100μm)および窒化珪素の粉末(α化率50%以上、平均粒径D50=0.5〜10μm)と、焼結助剤として、酸化イットリウムの粉末(平均粒径D50=0.5〜10μm)および酸化アルミニウムの粉末(平均粒径D50=0.5〜10μm)とを準備する。そして、窒化珪素の粉末および焼結助剤の各粉末を混合して第1の出発原料を得る。なお、珪素の粉末と窒化珪素の粉末との質量比率は、80:20〜90:10とする。
そして、酸化イットリウム,酸化アルミニウムおよび二酸化珪素の各粉末は、第1の出発原料の合計100質量%のうち、酸化イットリウムの粉末を10.2質量%以上20質量%以下,酸化アルミニウムの粉末を2.9質量%以上7.3質量%以下となるように秤量する。
また、クロム,マンガン,鉄および銅の少なくともいずれか1種を含む珪化物である第1の珪化物を含むセラミック焼結体を得るには、酸化クロム,酸化マンガン,酸化第二鉄および酸化銅のいずれか1種の粉末を適宜秤量して第1の出発原料に添加すればよい。添加された酸化クロム,酸化マンガン,酸化第2鉄および酸化銅の粉末は、焼成時に珪素と反応して、酸素を脱離し、熱力学的に安定した珪化物となり、セラミック焼結体を明度の低い色調とすることができる。
また、タングステンまたはモリブデンの珪化物である第2の珪化物を含むセラミック焼結体を得るには、酸化タングステンまたは酸化モリブデンの粉末を適宜秤量して第1の出発原料に添加すればよい。添加された酸化タングステンまたは酸化モリブデンの粉末は、焼成時に珪素と反応して、酸素を脱離し、珪化物として粒界相に存在する。
そして、第1の出発原料等を、ポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレングリコール(PEG)等の各種バインダとともに、例えば、バレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミル,サンドミルまたはアジテーターミル等入れて湿式にて混合・粉砕して、スラリーとする。さらに、増粘安定剤,分散剤,pH調整剤,消泡剤等を添加してもよい。
次に、噴霧乾燥装置を用いてスラリーを噴霧乾燥して顆粒にする。
そして、顆粒を成形型に充填して、一軸加圧法を用いて加圧することにより、所定形状の成形体を得る。
次に、成形体を、窒素雰囲気中または真空雰囲気中などで、例えば保持時間を15時間以上48時間以下で脱脂して脱脂体を得る。なお、このときの脱脂温度は、添加したバインダの種類によって異なるが、900℃以下がよく、特に、400℃以上800℃以下とすることが好適である。
次に、この脱脂体を50kPa〜1.1MPaの窒素分圧で、1000℃以上1400℃以下の温度で窒化することにより、窒化体を得る。
そして、この窒化体を50kPa〜300kPaの窒素分圧で、温度を1640℃以上1800℃未満として10〜15時間保持することによって焼成した後、常温まで放冷することによって、本実施形態の溶接用エンドタブを得ることができる。
また、対向面がクロム,マンガン,鉄および銅の少なくともいずれか1種を含む珪化物を内部よりも多く含む溶接用エンドタブを得るには、酸化クロム,酸化マンガン,酸化第二鉄および酸化銅のいずれか1種の粉末が添加された第1出発原料を用いた窒化体を密閉型の焼成容器内に配置した上で、金属シリコンと二酸化珪素とからなる脱脂体も併せて焼成容器内に配置することによって、雰囲気を制御すればよい。なお、脱脂体における、金属シリコンと二酸化珪素とのモル比は、Si:SiO2=0.6〜1.4:1とする。
また、対向面の炭素の含有量が40原子%以上である溶接用エンドタブを得るには、窒化体を炭素からなる密閉型の焼成容器内に窒化体を載置し、上述した方法で、焼成すればよい。
また、比率X/Yが0.1以上0.5以下であるセラミック焼結体からなる溶接用エンドタブを得るには、窒化珪素からなる密閉型の焼成容器内に上述した方法で得られた溶接用エンドタブを載置し、窒素雰囲気中、1750℃〜1900℃の温度で熱処理し、最高温度から800℃までの降温速度を10℃/分〜11.2℃/分として冷却した後に常温まで放冷することによって得ることができる。
また、対向面における円相当径1μm以上5μm以下の白点の個数が、0.15mm2あたり2000個以下であるセラミック焼結体からなる溶接用エンドタブを得るには、上記焼成容器の単位容積に対する溶接用エンドタブの質量を0.4g/cm3以下となるようにすればよい。
[セラミック焼結体の第2の実施形態の製造方法]セラミック焼結体の第2の実施形態を得るには、第1の出発原料に代えて、第2の出発原料を用いればよい。第2の出発原料として、組成式がSi6−ZAlZOZN8−Zで表される、固溶量zが0.5以下である窒化珪素の粉末(α化率50%以上、平均粒径D50=0.5〜4μm)と、焼結助剤として酸化カルシウム,酸化アルミニウムおよび希土類元素の酸化物の各粉末を準備する。なお、組成式がSi6−ZAlZOZN8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンである窒化珪素を得るには、固溶量zが0.05以上0.5以下である窒化珪素の粉末を用いればよい。
ここで、焼結助剤である酸化カルシウム,酸化アルミニウムおよび希土類元素の酸化物の各粉末の合計は、窒化珪素質粉末とこれら焼結助剤の粉末の合計との総和を100質量%としたときに、3質量%以上19.2質量%以下になるようにすればよく、また各焼結助剤の含有量は、酸化カルシウム,酸化アルミニウムおよび希土類元素の酸化物の合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムの含有量を0.3質量%以上1.5質量%以下,14.2質量%以上48.8質量%以下として、残部を希土類元素の酸化物とすればよい。
これら第2の出発原料等を、ポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレングリコール(PEG)等の各種バインダとともに、例えば、バレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミル,サンドミルまたはアジテーターミル等入れて湿式にて混合・粉砕して、スラリーとし、第1の実施形態の製造方法と同様の工程を経て製造することができる。
[セラミック焼結体の第3の実施形態の製造方法]セラミック焼結体の第3の実施形態を得るには、第1の出発原料や第2の出発原料に代えて、第3の出発原料を用いればよい。まず、金属シリコンの粉末と、β化率が20%以下である窒化珪素の粉末とを準備して、(金属シリコンの粉末)/(窒化珪素の粉末)の質量比が1以上10以下となるように混合して第1粉末を得る。ここで、金属シリコンの粉末の粒径によっては、窒化不足および焼結不足の原因となるおそれがあるので、金属シリコンの粉末は、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%としたときの累積体積が90%となる粒径(D90)を10μm以下、好ましくは6μm以下のものを用いる。
また、焼結助剤として、アルミン酸マグネシウムの粉末および第1の金属化合物の粉末を秤量した第2粉末を得る。
ここで、第1粉末および第2粉末の合計を100質量%としたとき、第2粉末が10質量%以上23質量%以下となるように秤量した粉末を第3の出発原料とする。なお、第1の金属化合物とは、酸化アルミニウム,二酸化珪素および炭酸カルシウム等である。また、アルミン酸マグネシウムの粉末の代わりに、水酸化マグネシウム,酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウム等の粉末を用いても構わない。これら混合粉末および焼結助剤等の粉末を、ポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレングリコール(PEG)等の各種バインダとともに、例えば、バレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミル,サンドミルまたはアジテーターミル等入れて湿式にて混合・粉砕して、スラリーとし、第1の実施形態の製造方法と同様の工程を経て製造することができる。
[セラミック焼結体の第4の実施形態の製造方法]セラミック焼結体の第4の実施形態を得るには、まず、焼結助剤として、第2の金属化合物の粉末を秤量した第3粉末を得る。ここで、第3粉末および第3の実施形態の製造方法で用いた第1粉末の合計を100質量%としたとき、第3粉末が8.6質量%以上18.6質量%以下となるように秤量した粉末を第4の出発原料とする。なお、第2の金属化合物とは、希土類酸化物、水酸化マグネシウム,酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、酸化アルミニウム等である。より具体的には、第1粉末および第3粉末の合計を100質量%としたとき、希土類酸化物の粉末を7質量%以上14質量%以下、水酸化マグネシウム,酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムの粉末を1質量%以上4質量%以下、酸化アルミニウムの粉末を0.6質量%以下(但し、0質量%を含まず。)とすればよい。
第4の出発原料を、ポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレングリコール(PEG)等の各種バインダとともに、例えば、バレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミル,サンドミルまたはアジテーターミル等入れて湿式にて混合・粉砕して、スラリーとし、第1の実施形態の製造方法と同様の工程を経て製造することができる。
[セラミック焼結体の第5の実施形態の製造方法]セラミック焼結体の第5の実施形態を得るには、焼成後に対向面となる成形体の表面に、第1の出発原料、第2の出発原料、第3の出発原料または第4の出発原料と、菱面体晶の窒化硼素の粉末とを、バインダーとともにエタノール等の溶媒に添加したペーストをスクリーン印刷法で塗布し、温度を、例えば、60℃以上100℃以下として乾燥させる工程を行えばよい。この工程によって、表面に菱面体晶の窒化硼素が存在する窒化珪素質成形体が得られる。なお、菱面体晶の窒化硼素の粉末の添加量は、上記各粉末の合計100質量%のうち、3質量%以上20質量%以下とすればよい。
あるいは、上記方法に代えて、窒化珪素質成形体を反応容器内の所定位置に配置し、硼素源ガスとしてBCl3、BF3、BBr3、B2H6、B3N3H3、B3N3H3C13およびB(C2H5)3のうちの少なくともいずれか1種と、窒素源ガスとしてHN3
、NH3、N2H2、NH4Cl、NH4Br、NH4F、NH4Hf2およびNH4Iのうちの少なくともいずれか1種と、希釈搬送ガス(キャリヤガス)としてAr、HeおよびH2のうちの少なくともいずれか1種とを反応容器内に導入し、温度を600〜800℃、時間を1〜3時間で気相合成してもよい。この気相合成により、窒化珪素の粒子と、窒化硼素の粒子とが表面に混在する窒化珪素質成形体を得ることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
上述の第1の実施形態について説明する。まず、出発原料として、珪素の粉末(平均粒径D50=10μm)および窒化珪素の粉末(α化率90%、平均粒径D50=1μm)と、焼結助剤として、酸化イットリウムの粉末(平均粒径D50=1μm),酸化アルミニウムの粉末(平均粒径D50=1μm)および二酸化珪素の粉末(平均粒径D50=1
μm)とを準備し、出発原料および焼結助剤の各粉末を混合して混合粉末を作製した。なお、珪素の粉末と窒化珪素の粉末との質量比率は84:16とし、酸化イットリウム,酸化アルミニウムおよび二酸化珪素の各粉末は、混合粉末の合計100質量%のうち、酸化イットリウムの粉末を13.8質量%,酸化アルミニウムの粉末を3.7質量%となるように秤量した。
さらに、混合粉末100質量部に対して、酸化第二鉄の粉末を1.4質量部および酸化タングステンの粉末を0.7質量部秤量して添加した。
そして、それぞれの粉末,PVA,水および窒化珪素からなる粉砕用メディアをバレルミルに入れて湿式にて混合・粉砕して、スラリーとした。
次に、噴霧乾燥装置を用いてスラリーを噴霧乾燥することにより顆粒にした。
そして、顆粒を成形型に充填して、一軸加圧法を用いて加圧することにより、所定形状の成形体を得た。
次に、600℃の窒素雰囲気中で20時間保持して脱脂し、脱脂体を得た。その後、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に脱脂体を配置し、120kPaの窒素分圧で、1300℃の温度で窒化することにより、窒化体を得た。そして、得られた窒化体を200kPaの窒素分圧,1750℃の焼成温度で10時間保持した後、常温まで放冷することによって、溶接用エンドタブである試料No.1を得た。
また、上記試料とは別に、比較例として、表1に示す主成分のセラミック焼結体からなる溶接用エンドタブである試料No.2,3を作製した。
ここで、各試料のセラミック焼結体を構成する成分は、XRDで同定し、同定された成分をリートベルト解析することによって主成分を求め、その主成分を表1に示した。
そして、図2に示すように、第3金属部材3の一方の主面に、厚さが25mmの第4金属部材4の端面を炭酸ガスアーク溶接法により溶接した。なお、溶接は、溶接用材料として低電流薄板用溶接ワイヤーを用いて、本溶接および仕上げ溶接を順次行った。また、本溶接では、電流を300A,電圧を38Vとし、仕上げ溶接では、電流を250A,電圧を32Vとした。そして、溶接終了後に、溶接用エンドタブを取り外した。
溶接用エンドタブを取り外すに当たり、手で簡単に取り外すことができた試料には1を、手では取り外すことができず、ハンマーでたたくことによって取り外すことができた試料には2をそれぞれ表1の評価欄に記入した。なお、表1の評価欄に1を記入した試料には、被溶接部材に対向する接触部に欠落が観察されず、2を記入した試料には接触部に部分的な欠落が観察された。
表1に示すように、試料No.1は、少なくとも被溶接部材に対向して配置される接触部が窒化珪素を主成分とするセラミック焼結体からなることから、試料No2,3よりも溶融金属に対する濡れ性が低いため、溶接後に簡単に取り外すことができる。また、窒化珪素を主成分とするセラミック焼結体は機械的強度が高く、かつ溶融した金属に対する耐食性が高いことから、繰り返し使用による形状や強度の変化が小さく、繰り返し使用できる回数が多い(耐久性が高い)。
実施例1で示した方法と同じ方法で、窒化珪素を主成分とするセラミック焼結体からなる溶接用エンドタブを作製した。
次に、窒化珪素からなる密閉型の焼成容器内に溶接用エンドタブを載置し、窒素雰囲気中で1750℃の温度で熱処理した後、表2に示す降温速度で800℃まで冷却して、その後、放冷することにより、溶接用エンドタブを得た。なお、焼成容器の容積に対するセラミック焼結体の質量は0.5g/cm3となるようにした。
次に、各試料につき、XRDによりセラミック焼結体を構成する成分を同定し、同定された成分をリートベルト解析することによって窒化珪素の含有量を求めた。その結果、各試料ともに、窒化珪素の含有量は80質量%以上であり、窒化珪素とY2SiAlO5とが確認された。また、ハローパターンが見られることから、非晶質相が存在することを確認した。
また、得られた各試料のX線回折チャートから、2θ=32〜33°のY2SiAlO5Nのピーク強度Xと、2θ=33.2〜34.2°の窒化珪素のピーク強度Yとの比率X/Yを算出し、その値を表2に示した。
次に、各試料の対向面を目視で観察し、白色に見える部分の有無を確認した。結果を表3に示す。
また、各試料の対向面を研磨し、研磨によって得られた鏡面を洗浄した後、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察し、面積が0.15mm2(横方向の長さが1000μm、縦方向の長さが150μm)となる範囲をCCDカメラで撮影した暗視野での画像を取り込み、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)による粒子解析により求められた円相当径1μm以上5μm以下の白点の個数を表2に示した。ここで、粒子解析の設定条件としては、明度を明に設定し、2値化の方法を手動,小図形除去面積を1μm2,および画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の1.1倍とした。
次に、各試料を作製した方法と同じ方法により、試験片を作製し、JIS R 1601−2008に準拠して4点曲げ強度を、また、JIS R 1648−2002で規定する相対法に準拠して耐熱衝撃温度をそれぞれ求め、その値を表2に示した。
表2に示すように、試料No.6〜14は、窒化珪素の含有量が80質量%以上であり、粒界相にY2SiAlO5Nが存在し、比率X/Yが0.1以上0.5以下であることから、白色に見える部分はない。すなわち、試料No.6〜14は、粒界相に生じる空隙が比較的少なくなっており、優れた機械的強度と高い耐熱衝撃性とを兼ね備えていることがわかった。