JP6645324B2 - 表面修飾フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、表面修飾フィルムおよびその製造方法に関する。本発明を用いることで、包装用途や農業用途、土木建築用途、水処理用途、光学用途向けに幅広く用いられているフィルムの表面を簡便に修飾し、機能を付与することができる。
フィルムの修飾方法としては、表面に機能性ポリマーをコーティングする方法(特許文献1)、フィルム素材に機能性ポリマーをブレンドした後フィルムに成形する方法、プラズマやコロナで処理する方法、グラフト重合により表面に機能性セグメントを導入する方法(特許文献2)等が提案されている。機能性ポリマーをコーティングする方法は簡便であり幅広く用いられているが、コーティングした機能性ポリマーがフィルムから剥離しやすく、長期間安定して機能を維持することが難しかった。
フィルム素材に機能性ポリマーをブレンドした後、フィルムに成形する方法は特別な設備が不要で簡便な方法ではあるが、フィルムの表面を機能性ポリマーで十分被覆するためには機能性ポリマー添加量をかなり多くしなければならず、フィルムの機械的特性の低下や耐薬品性の低下を招きやすく、更に機能性ポリマーの大量添加によるコストアップも問題となる。一方、プラズマ処理やコロナ処理による方法は大掛かりな装置が必要であり、処理の過程で基材を損傷しやすいといった欠点があった。グラフト重合により表面に機能性セグメントを導入する方法は長期安定性に優れ、基材の損傷もないことから優れた修飾方法であるが、基材の種類ごとに重合開始基導入方法が異なり、複雑な導入反応を必要とする点が欠点であった。
上記従来の修飾方法の欠点を改善する方法として、ニトレンの挿入反応を利用した機能性ポリマーの基材表面への導入方法が特許文献3、4に記載されている。この方法は機能性ポリマーのコーティングとUV照射といった簡便な方法で機能性ポリマーを共有結合を介して基材表面に導入できる点で優れた方法であるが、従来のニトレン前駆体は光反応性が低く、高強度かつ比較的長時間紫外線を照射しないと均一な表面機能化が達成できないことが多く、紫外線照射による基材のダメージが大きいといった問題点を有していた。
特開2006−213861号公報 特開平7−300513号公報 特表平3−505979号公報 国際公開第2009/099126号
本発明は、基材フィルムの表面に簡便に機能性ポリマー層を導入して機能を付与した表面修飾フィルムを製造する際に、光反応性の高いニトレン前駆体を用いることで従来の欠点を解消し、表面修飾フィルムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討を行った結果、機能性ポリマー層に電気的に中性(見かけ上電荷を持たない)の親水性基を含む機能性成分を選定すること、特定の構造を有するニトレン前駆体官能基を用いることで、基材フィルムに高機能を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、
[1]基材フィルムと、基材フィルム表面に親水性基を含む機能性成分及びニトレンの反応によって生じる架橋成分を含む機能性ポリマー層とからなる表面修飾フィルムであって、前記架橋前の機能性ポリマーが一般式(1)で示される構造を有していることを特徴とする表面修飾フィルム。
(式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、かつ0.05≦m/(m+n)≦0.25を満たす関係にあり、×は置換基を有しても良いフェニレン基、又は、エステル結合若しくはアミド結合で示される基を表し、Yはベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基から選ばれた親水性基を表し、Zは−O−又は−N(R)−で示される基を表し、Aは−O−又は−CH−で示される基を表し、R、R及びRは互いに独立して水素原子又はC〜Cの炭化水素基を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表し、Rはフッ素原子を表し、pは0〜4の整数を表す。)
[2]前記機能性ポリマー層に導入される機能性成分がアルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基、ベタイン性基から選ばれた官能基とビニル基とを有するモノマーの重合体であることを特徴とする[1]に記載の表面修飾フィルム。
[3]前記機能性ポリマー層に導入される架橋成分がアジド基とビニル基とを有するモノマーの重合体であることを特徴とする[1]に記載の表面修飾フィルム。
[4]一般式(1)で示される機能性成分と5〜25モル%のアジド基を有する成分からなる機能性ポリマーを基材フィルム表面にコーティングした後、光照射により前記基材フィルム表面に共有結合を介して結合した機能性ポリマー層を形成することを特徴とする、表面修飾フィルムの製造方法。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の表面修飾フィルムは、基材フィルム及び基材面に形成された機能性ポリマー層とからなる。
本発明で用いられる基材フィルムの材質は特に制限されないが、機能性ポリマーへのUV照射で生じるニトレンと反応する部位を有している必要がある。ニトレンと反応する部位とは炭素−水素結合や窒素−水素結合を指し、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン、金、白金、銀、銅等の金属やシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、シリコン、ガラス、炭素繊維等の無機材料からなるフィルムやシートの場合は、アルキルメルカプタンやシランカップリング剤などを用いて表面に反応部位を導入する必要がある。
一方、有機ポリマーで作成されたフィルムやシートの場合はそのような必要はなく、そのまま用いることができる。上記有機ポリマーの例としては、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS、ポリメタクリル酸メチル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
本発明で用いられるフィルムとは、フィルム状およびシート状のものを含む。特にフィルム状は、厚みが0.002mmから0.25mm未満の薄い膜状物を指す。また本発明で用いられるシート状とは、厚みが0.25mm以上100mm未満の膜状物を指す。
本発明で用いられる機能性ポリマー層とは基材フィルム表面に親水性基を含む機能性成分及びニトレンの反応によって生じる架橋成分とからなり、架橋前の機能性ポリマーが一般式(1)で示される構造を有しているものである。
(式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、かつ0.05≦m/(m+n)≦0.25を満たす関係にあり、×は置換基を有しても良いフェニレン基、又は、エステル結合若しくはアミド結合で示される基を表し、Yはベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基から選ばれた親水性基を表し、Zは−O−又は−N(R)−で示される基を表し、Aは−O−又は−CH−で示される基を表し、R、R及びRは互いに独立して水素原子又はC〜Cの炭化水素基を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表し、Rはフッ素原子を表し、pは0〜4の整数を表す。)
上記一般式(1)で示される架橋前の機能性ポリマーにおいて、×で表される置換基を有しても良いフェニレン基の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基等が例示される。×としては、エステル結合が好ましい。
上記一般式(1)で示される架橋前の機能性ポリマーにおいて、Yの親水性基としては、例えばベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基を挙げることができる。なお、本発明において「ベタイン性」とは、電離状態で正電荷を持つ部分と負電荷を持つ部分を同一基内の隣り合わない位置に有し、正電荷を有する原子には解離し得る水素原子が結合しておらず、全体としては中性である(電荷を持たない)ことをいうものとする。
ベタイン性基としては特に限定されないが、カルボベタイン性基、スルホベタイン性基、ホスホベタイン性基、アミドベタイン性基等が例示される。アルコキシアルキル基としては特に限定されないが、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、4−メトキシブチル基が例示される。アルコキシポリオキシエチレン基としては特に限定されないが、例えば、メトキシポリオキシエチレン基、エトキシポリオキシエチレン基、ノルマルプロポキシポリオキシエチレン基、イソプロポキシポリオキシエチレン基が挙げられ、親水性の点でメトキシポリオキシエチレン基が好ましい。
本発明において「機能性成分」とは、親水性や電解質溶液に対するぬれ性の付与、タンパク質の吸着抑制、バイオファウリングの発生防止、抗血栓性、生体親和性、帯電防止等の機能を多孔質膜に付与するための成分であり、電気的に中性(見かけ上電荷を持たない)の親水性基を含むものである。
本発明において「架橋成分」とは、ニトレン前駆体官能基を有する成分が光照射によってニトレンを生成し、そのニトレンが炭素−水素結合や窒素−水素結合に挿入して架橋を形成する成分である。この架橋成分が機能性ポリマー層中に5〜25モル%の割合で含まれることが、本発明の効果を発現する上で重要である。架橋成分が5モル%未満であると、機能性ポリマー層の多孔質膜表面への固定化が不十分となるため好ましくなく、一方、25モル%を超えると、タンパク質の吸着抑制、バイオファウリングの発生防止、抗血栓性等の機能の低下が生じるため好ましくない。
本発明において「機能性ポリマー層」とは、前記「機能性成分」と「架橋成分」からなり、多孔質膜表面に共有結合を介して形成されるポリマー層を指す。機能性ポリマー層をフィルムやシートの表面に形成することで、機能性成分由来の各種機能をフィルムやシートの表面に固定化・導入することができる。
上記一般式(1)で示される架橋前の機能性ポリマーにおいて、R、R及びRで表されるC〜Cの炭化水素基としては特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が例示される。
で表されるC〜Cの2価の炭化水素基としては、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、フェニレン基等が例示される。Rで表される2価の炭化水素基の炭素数が2以下であると、機能性ポリマーのガラス転移温度が上昇し側鎖の分子運動性が低下するためか、アジド基から生成するニトレンが基材との反応より機能性ポリマー間の架橋反応に消費され、基材表面への機能性ポリマー固定化率が低下してしまうため好ましくない。
上記一般式(1)で示される架橋前の機能性ポリマーにおいて、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表す。ここで、m/(m+n)の値は、0.05〜0.25であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.20である。m/(m+n)が0.05未満であると、機能性ポリマー層の基材フィルム/基材シート表面への固定化が不十分となるため好ましくなく、一方、m/(m+n)が0.25を超えると、タンパク質の吸着抑制、バイオファウリングの発生防止、抗血栓性等の機能の低下が生じるため好ましくない。
一般式(2)中に含まれる、下記一般式(2)
(式中、R、×、Y及びnは前記と同じ意味を表す。)で表される構造単位としては、特に限定されないが、メトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、2−メトキシエトキシスチレン、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリルアミド、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリルアミド、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシスチレン、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリルアミド、ポリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールエチルエーテルアクリルアミド、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルメタクリルアミド、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアクリルアミド、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシスチレン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノアクリルアミド、N−メタクリロイル−L−ヒスチジン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−(N−3−スルホプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等のモノマーに由来する構造単位が例示され、タンパク質吸着抑制効果の点から、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートや2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−(N−3−スルホプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインに由来する構造単位が好ましい。
一般式(1)中に含まれる、下記一般式(3)
(式中、R、R、R、A、Z、m及びpは前記と同じ意味を表す。)で表される構造単位としては、特に限定されないが、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート、4−(4−アジドフェノキシ)ブチルメタクリレート、5−(4−アジドフェノキシ)ペンチルメタクリレート、6−(4−アジドフェノキシ)ヘキシルメタクリレート、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレート、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリレート、4−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ブチルメタクリレート、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルアクリレート、4−(4−アジドフェニル)ブチルアクリレート、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリルアミド、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリルアミド、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルアクリルアミド、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリルアミド、4−(4−アジドフェニル)ブチルアクリルアミド等のモノマーに由来する構造単位が例示される。付与する機能が親水性の場合、上記一般式(1)中のpは0であることが好ましい。また、アジドの光分解速度はフェニルアジド基に電子供与性置換基が結合した際に速くなるため、(4−アジドフェノキシ)アルキルメタクリレートに由来する構造単位を用いることが好ましい。
一般式(4)で表される構造単位と一般式(5)で表される構造単位との配列は特に限定されず、ランダム、ブロック、交互のいずれの順序であっても良い。
一般式(1)で示される架橋前の機能性ポリマーの数平均分子量は1,000〜1,000,000の範囲で選択できるが、コーティング時の粘度や溶解性、ポリマー層の機械的強度の観点から10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される多分散度(Mw/Mn)は、特に限定されるものではないが、例えば疎水性基材への接着性や塗膜の安定性の観点から1〜5程度が好ましい。
上記一般式(1)で示される架橋前の機能性ポリマーは、本発明の効果を逸脱しない範囲において、他のモノマー由来の構造単位を有してもかまわない。他のモノマー由来の構造単位としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルアニリン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニル安息香酸、ポリビニルリン酸、ポリビニルピリジン、ポリジメチルアミノメチルスチレン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル等のポリビニルエステルやそのケン化物であるポリビニルアルコール;ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸、ポリパーフルオロアルキルメタクリレート、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリジメチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、等の(メタ)アクリルアミド系ポリマー等が例示される。
本発明において、フィルムとは、フィルム状およびシート状のものを指す。フィルムの厚みに特に限定はないが、5μm〜50mmの範囲にあることが好ましい。また基材となるフィルム表面に形成される機能性ポリマー層の厚みは特に限定されないが、5nm〜5μmの範囲であることが好ましい。ポリマー層の厚みが5nm未満であると、付与する機能の発現が十分でないため好ましくない。一方、ポリマー層の厚みが5μmを超えても、更なる高機能化が望めないため好ましくない。
本発明のフィルムとは、フィルム状およびシート状のものであって、表面修飾フィルム製造方法は、機能性ポリマーを基材フィルム表面に存在させ、光照射により基材フィル表面に共有結合を介して機能性ポリマー層を形成することを特徴とする。
機能性ポリマーを基材フィルム表面に存在させる方法としては特に限定はなく、機能性ポリマーをそのままもしくは溶媒で希釈して基材フィルムまたは基材シートにコーティングする方法等を用いることができる。コーティング方法も特に制約はなく、コーティングする機能性ポリマー(溶液)の粘性に応じてディップコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング等から選択すれば良い。機能性ポリマーを溶媒で希釈してコーティングに用いた場合は、光照射の前に乾燥等により溶媒を除去することが好ましい。
上記方法により機能性ポリマーを基材フィルムおよび基材シート表面に存在させた後、光を照射する。光は用いるニトレン前駆体官能基がニトレンを発生できる波長の光である必要があり、ニトレン前駆体官能基としてアジド基を用いる場合には波長が10〜400nm、好ましくは250〜380nm付近の紫外線を照射する。照射する紫外線の強度は特に限定されないが、1〜1000mW/cmの範囲で適宜選択できる。
また、上記機能性ポリマーは水不溶性であっても水可溶性であってもかまわない。例えば、機能性成分が水溶性でニトレン前駆体成分の割合が低い場合は水溶性となるが、機能性成分が水に不溶でニトレン前駆体成分の割合が高い場合は水には溶解しない。
上記機能性ポリマーを製造するための重合方法については特に制約はなく、ラジカル重合を用いてもイオン重合を用いても良いし、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合等いずれの方式を用いてもかまわない。操作の簡便性の点から、ラジカル重合、特にフリーラジカル重合が好ましく用いられる。
本発明によれば、簡便な方法で基材フィルムの表面に機能性ポリマー層を導入することができ、フィルムに様々な機能、例えば、親水性や電解質溶液に対するぬれ性の付与、タンパク質の吸着抑制、バイオファウリングの発生防止、薬効成分の吸着防止、抗血栓性、生体親和性、帯電防止等を付与することができる。このような特性は、包装用途や農業用途、土木建築用途、水処理用途、光学用途において有用であり、本用途分野において幅広く用いることができる。
以下に、本発明を更に詳細に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、各物性の測定及び評価は次の方法で行った。
(1)機能性ポリマーの組成比
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、JNM−ECZ400S)を用いたプロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析により求めた。重溶媒としてd−クロロホルムを用いて測定した。
(2)機能性ポリマーの分子量測定
光反応性ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)と多分散度(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー製HLC−8320GPCを用い、カラムとしては、東ソー製TSKgelGMHHR−Lを用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液としてTHFを用いて測定した。標準サンプルとして東ソー製単分散ポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算にて分子量換算を行った。
(3)機能性ポリマーの固定化量測定
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(PerkinElmer社製、SPECTRUMONE)を用い、ATR法にて測定した。ポリマー固定化量は、機能性ポリマー由来のエステルカルボニルの吸収(1730cm−1前後)強度と基材の吸収(PVDF:870cm−1、PE:1463cm−1、アラミド:1647cm−1、塩素化PVC:1250cm−1)から算出した相対強度を測定することで求めた。
(4)親水性
機能性ポリマーを固定化することによる、基材の親水性に及ぼす影響を、水中接触角測定により評価した。この接触角測定は、水中でフィルム表面に気泡を接触させるcaptivebubble法を用いて測定した接触角θから求めた対水接触角(180−θ)にて評価した。実際の測定は、測定サンプルを一晩純水中に浸漬したのち、触角計を用い、室温、常圧のもとで気泡を水中で表面に接触させ、接触角を測定した。
(5)アルブミン吸着量
QCMを用いて各種基材へのアルブミン吸着量を測定した。基材ポリマーの0.5%溶液をセンサーチップにスピンコートし、センサーチップ上に基材ポリマーの薄膜を形成した。次いで、機能性ポリマーの0.2%溶液を基材ポリマー薄膜上にスピンコートし、風乾後UV照射を行った。このセンサーチップをリン酸緩衝液490μL中で安定化させた後、ウシ血清アルブミンのリン酸緩衝液(1mg/ml)10μLを添加し、振動数変化から吸着量を測定した。
参考例1[3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートの合成]
500mLナス型フラスコに4−ブロモフェノール(51.9g,0.30mol)と炭酸カリウム(97.6g,0.75mol)を入れアルゴン置換した。脱水DMF(300mL)を加え、80度で30分間加熱撹拌した。そこに3−ブロモ−1−プロパノール(50.0g,0.36mol)を加え80度で20時間加熱撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で4−ブロモフェノールの消費を確認後、室温まで冷却した。水(400mL)を加え、有機相を酢酸エチルで抽出した(300mL×3)。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去することで3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノールを茶色オイルとして得た(66.4g,0.29mol,96%)。HNMR(400MHz,CDCl,r.t.):δ1.72(s,1H),2.00−2.07(m,2H),3.83−3.89(m,2H),4.09(t,2H,J=6.0Hz),6.75−6.81(m,2H),7.35−7.39(m,2H)。
500mLナス型フラスコに3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノール(68.6g,0.30mol)、ヨウ化銅(5.64g,29.6mmol)、L−アスコルビン酸ナトリウム(2.95g14.9mmol)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(4.80mL,44.7mmol)を加え、エタノール(210mL)、水(90mL)に溶解させた。反応容器をAr置換後、アジ化ナトリウム(34.6g,0.54mol)を加え5時間加熱還流した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノールの消費を確認後、室温まで冷却した。飽和食塩水(200mL)加えた後にエバポレーターで有機溶媒を留去した。有機相を酢酸エチルで抽出した(200mL×3)。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた黒色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで3−(4−アジドフェニル)−1−プロパノールを茶色オイルとして得た(42.3g,0.22mol,73%)。HNMR(400MHz,CDCl,r.t.):δ1.67−1.72(br,1H),2.05(quintlikett,2H,J=6.0,6.0Hz),3.83−3.91(m,2H),4.11(t,2H,J=6.0Hz),6.87−6.92(m,2H),6.93−6.98(m,2H)。
500mLナス型フラスコに3−(4−アジドフェニル)−1−プロパノール(42.3g,0.22mol)、メタクリル酸(22.7g,0.26mol)、4−ジメチルアミノピリジン(26.8g,0.22mol)を加え、アルゴン置換後に塩化メチレン(400mL)に溶解させた。反応容器を氷浴中0度で30分間撹拌した後に、DCC(56.2g,0.27mol)を加え、そのまま0度で30分間撹拌した。氷浴を取り除き、室温で21時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で3−(4−アジドフェニル)−1−プロパノールの消費を確認後、セライトろ過によって、析出したジシクロヘキシル尿素を取り除き、固体を酢酸エチル(500mL)で洗浄した。ろ液を濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートを茶色オイルとして得た(29.9g,0.11mol,52%)。HNMR(400MHz,CDCl,r.t.):δ1.94(s,3H),2.16(quintlikett,2H,J=6.0,6.0Hz),4.04(t,2H,J=6.0Hz),4.34(t,2H,J=6.0Hz),5.57(t,1H,J=1.6Hz),6.09−6.12(br,1H),6.85−6.91(m,2H),6.92−6.97(m,2H)。
実施例1
[機能性ポリマーの合成]
ガラス製のシュレンクフラスコにポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)(18mmol)および参考例1で製造した3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート(2mmol)、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.09mmol)を秤量した。THF17mLを用いてモノマーと開始剤を溶解させ、均一溶液とした。十分に溶液中の酸素を窒素で除去後、反応はウォーターバスを用いて60℃で8時間行った。反応終了後、ヘキサンを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により、褐色の粘性体の光反応性ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mn=72,000、Mw/Mn=3.5であった。組成比は、HNMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.86−6.71,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(1)において、m/(m+n)の値が0.09であった。
機能性ポリマーの構造式(4)
[PVDFフィルム表面への固定化]
4cm×4cmに切り出したポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム(GLサイエンス製、スマートバッグ2F、t=50μm)に、上記で合成した機能性ポリマーの2%THF溶液を2000rpmで一分間スピンコートした。風乾後、高圧水銀灯(東芝ライテック製H400P)により、2秒間UV照射(21mJ/cm)を行った。その後、THFを用いて掛け洗いし、表面修飾PVDFフィルムを得た。掛け洗い前後でのフィルム表面におけるエステルカルボニルピークの相対強度を比較し、機能性ポリマーの固定化率を算出したところ、95%であった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
上記の機能性ポリマー固定化フィルムについて接触角測定を行った。表面修飾フィルムの対水接触角は40°であり、親水性が高かった。これは、光反応性ポリマーに含まれるPEGMAユニットの親水性に由来するものであると考えられた。
[アルブミン吸着量の測定]
上記の機能性ポリマー固定化フィルムについて、QCMを用いてアルブミン吸着量を測定した。表面修飾フィルムのアルブミン吸着量は30ng/cmであり、表面修飾によりタンパク質吸着が著しく抑制されていた。
実施例2
[機能性ポリマーの合成]
実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを合成した。
[ポリエチレフィルムへの固定化]
PVDFフィルムをポリエチレン(PE、東ソー製、ペトロセン183を熱プレスによりフィルム状に成形したもの、t=75μm)フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にしてPEフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は92%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例2で表面修飾したPEフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は54°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例2で表面修飾したPEフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は42ng/cmであり、表面修飾によりタンパク質吸着が著しく抑制されていた。
実施例3
[機能性ポリマーの合成]
実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを合成した。
[ポリエチレンシートへの固定化]
PVDFフィルムをポリエチレン(東ソー製、ペトロセン183を熱プレスによりシート状に成形したもの、t=1mm)シートに代えた以外は、実施例1と同様にしてシートの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は92%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例3で表面修飾したPEシートを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は54°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例3で表面修飾したPEシートを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は40ng/cmであり、表面修飾によりタンパク質吸着が著しく抑制されていた。
実施例4
[機能性ポリマーの合成]
実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを合成した。
[アラミドフィルムへの固定化]
PVDFフィルムをアラミド(PA、東レ製ミクトロン、t=25μm)フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は90%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例4で表面修飾したPAフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は40°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例4で表面修飾したPAフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は20ng/cmであり、表面修飾によりタンパク質吸着が著しく抑制されていた。
実施例5
[機能性ポリマーの合成]
実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを合成した。
[C−PVCフィルムへの固定化]
PVDFフィルムを塩素化ポリ塩化ビニル(C−PVC、積水化学製HA−15EをTHFに溶解させソルベントキャストでフィルム作成、t=30μm)フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は98%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例5で表面修飾したC−PVCフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は34°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例5で表面修飾したC−PVCフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は20ng/cmであり、表面修飾によりタンパク質吸着が著しく抑制されていた。
実施例6
[機能性ポリマーの合成]
ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)(18mmol)に代えて2−(N−3−スルホプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート(SBMA、10mmol)を用いたこと、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート使用量を2mmolから10mmolに変更したこと、THF17mLに代えてメタノール60mLを用いたことを除いて実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを製造した。得られたポリマーは、Mn=59,000、Mw/Mn=1.8であった。組成比は、HNMRにて、2−(N−3−スルホプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート由来のアンモニウム基のメチルピーク(3.2−3.3,br,6H)と、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.4−7.4,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(2)において、m/(m+n)の値が0.20であった。
機能性ポリマーの構造式(5)
[PVDFフィルムへの固定化]
実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は100%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例6で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は30°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例6で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は15ng/cmであり、表面修飾によりタンパク質吸着が著しく抑制されていた。
比較例1
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
基材フィルムとして実施例1に用いたものと同じPVDFフィルムを用い、同様の方法で接触角の測定を行った。対水接触角は82°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は400ng/cmであった。
比較例2
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例2と同様のPEフィルムを用い、対水接触角を測定した。対水接触角は86°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は320ng/cmであった。
比較例3
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例4と同様のPAフィルムを用い、対水接触角を測定した。対水接触角は61°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は250ng/cmであった。
比較例4
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例5と同様のC−PVCフィルムを用い、対水接触角を測定した。対水接触角は80°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は360ng/cmであった。
比較例5
[機能性ポリマーの合成]
PEGMAを5mmol、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートを5mmol、THFを6mL、AIBNを0.045mmol用いたことを除いて実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを製造した。得られたポリマーは、Mn=30,000、Mw/Mn=3.0であった。組成比はHNMRにて実施例1と同様にして求めた。m/(m+n)の値は0.48であった。
[PVDFフィルムへの固定化]
実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は100%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例5で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は47°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
比較例5で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は220ng/cmであった。
比較例6
[機能性ポリマーの合成]
PEGMAを19.8mmol、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートを0.2mmol、THFを6mL、AIBNを0.045mmol用いたことを除いて実施例1と同様の方法で、機能性ポリマーを製造した。得られたポリマーは、Mn=70,000、Mw/Mn=2.7であった。組成比はHNMRにて実施例1と同様にして求めた。m/(m+n)の値は0.01であった。
[PVDFフィルムへの固定化]
実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は20%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例6で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は62°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
比較例5で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は330ng/cmであった。
比較例7
[機能性ポリマーの合成]
3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートに代えて2−(4−アジドフェノキシ)エチルメタクリレート(参考例1において3−ブロモ−1−プロパノールに代えて2−ブロモ−1−エタノールを用い、同様の方法で製造)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で機能性ポリマーを製造した。得られたポリマーは、Mn=60,000、Mw/Mn=2.7であった。組成比は、HNMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、2−(4−アジドフェノキシ)エチルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.86−6.71,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(3)において、m/(m+n)の値が0.08であった。
機能性ポリマーの構造式(6)
[PVDFフィルムへの固定化]
実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は55%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例7で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は55°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
比較例7で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は290ng/cmであった。
比較例8
[機能性ポリマーの合成]
3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートに代えて3−(4−アジドフェニルカルボキシ)エチルメタクリレートを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で機能性ポリマーを製造した。得られたポリマーは、Mn=75,000、Mw/Mn=3.5であった。組成比は、HNMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、3−(4−アジドフェニルカルボキシ)エチルメタクリレート由来の芳香環ピーク(8.00−8.11,7.09−7.17,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(4)において、m/(m+n)の値が0.09であった。
機能性ポリマーの構造式(7)
[PVDFフィルムへの固定化]
実施例1と同様にしてフィルムの表面修飾を行った。機能性ポリマーの固定化率は11%だった。
[水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例8で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして接触角の測定を行った。対水接触角は62°であった。
[アルブミン吸着量の測定]
比較例8で表面修飾したPVDFフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてアルブミン吸着量の測定を行った。アルブミン吸着量は340ng/cmであった。

Claims (4)

  1. 基材フィルムと、基材フィルム表面に親水性基を含む機能性成分及びニトレンの反応によって生じる架橋成分を含む機能性ポリマー層とからなる表面修飾フィルムであって、前記機能性ポリマー層が、一般式(1)で示される機能性ポリマーに含まれるアジド基から生じるニトレンの反応によって生じる架橋成分を含むものであることを特徴とする表面修飾フィルム。
    (式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、かつ0.05≦m/(m+n)≦0.25を満たす関係にあり、×は置換基を有しても良いフェニレン基、又は、エステル結合若しくはアミド結合で示される基を表し、Yはベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基から選ばれた親水性基を表し、Zは−O−又は−N(R)−で示される基を表し、Aは−O−又は−CH−で示される基を表し、R、R及びRは互いに独立して水素原子又はC〜Cの炭化水素基を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表し、Rはフッ素原子を表し、pは0〜4の整数を表す。)
  2. 前記機能性ポリマー層に導入される機能性成分がアルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基、ベタイン性基から選ばれた官能基とビニル基とを有するモノマーの重合体であることを特徴とする請求項1に記載の表面修飾フィルム。
  3. 前記機能性ポリマー層に導入される架橋成分がアジド基とビニル基とを有するモノマーの重合体であることを特徴とする請求項1に記載の表面修飾フィルム。
  4. 一般式(1)で示される機能性成分と5〜25モル%のアジド基を有する成分からなる機能性ポリマーを基材フィルム表面にコーティングした後、光照射により前記基材フィルム表面に共有結合を介して結合した機能性ポリマー層を形成することを特徴とする表面修飾フィルムの製造方法。
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