以下、添付図面を参照しながら本発明に係るクレーン装置の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るクレーン装置の概要を説明する。図1は、第1実施形態に係るクレーン装置を備えたクレーン設備の全体構成を説明する図である。
図1に示されるように、クレーン設備100は、岸壁51に横付けされたコンテナ船50(船舶)内に載置されたコンテナC(被搬送物)の搬送を行うクレーン装置1を備える。コンテナCは、ISO規格コンテナ等のコンテナである。コンテナCは、長尺の直方体状を呈し、その長手方向において例えば20フィート、40フィートといった所定の長さを有している。クレーン装置1は、ここでは、橋形クレーンである。クレーン装置1は、脚構造部11と、ガーダー12と、トロリー7と、運転室14と、スプレッダ10(荷役部)と、を備えている。
脚構造部11(走行部)は、岸壁51の地上に設置され、前後方向視(走行方向視)においてH形を呈し、上方に延伸しながらクレーン装置1全体を支持する。脚構造部11は、左右一対を成し、基端に走行装置11aをそれぞれ有している。走行装置11aは、走行モータの駆動により、地上に設けられたレールに沿って所定方向(前後方向:以下、「走行方向」とする)へ走行する。これにより、脚構造部11は、岸壁51上を走行方向へ走行可能とされている。
ガーダー12は、脚構造部11から、水平方向において走行方向と交差する方向(図1の紙面左右方向)へ張り出している。ガーダー12は、脚構造部11に支持された状態で、コンテナ船50の上方において岸壁51よりもコンテナ船50側に延伸している。すなわち、ガーダー12は、岸壁51から海上へ張り出している。
トロリー7は、ガーダー12に沿って横行可能とされている。トロリー7は、横行モータの駆動によって横行する。トロリー7の移動に伴って、ガーダー12の延伸方向に運転室14及びスプレッダ10が移動可能とされている。トロリー7は、ドラム駆動モータにより正逆回転する不図示のドラムを備え、ドラムに掛け回されたワイヤーロープ9を介してスプレッダ10を吊り下げている。上記の走行モータ、横行モータ、及びドラム駆動モータは、駆動部23(図4参照)として機能し、制御部30(図4参照)によってその動作が制御される。
運転室14には、クレーン装置1を操作する運転者が搭乗する。運転室14の詳細については後述する。スプレッダ10は、トロリー7からワイヤーロープ9を介して吊り下げられ、ワイヤーロープ9により巻き上げ又は巻き下げが可能とされている。スプレッダ10は、吊り上げようとするコンテナCを係止可能であり、コンテナCの荷役を行う。スプレッダ10は、ワイヤーロープ9が掛け回されたシーブ18(図2参照)を介して吊り下げられ、トロリー7のドラムが正逆回転することにより昇降可能である。
次に、図2を参照して、スプレッダ10の詳細な構成について説明する。図2は、スプレッダ10の斜視図である。図2に示されるように、スプレッダ10は、スプレッダ本体部15と、ガイド(案内部)17と、ロックピン16と、位置検出部21と、撮像手段22と、を有している。
スプレッダ本体部15は、平面視においてコンテナCの上面の形状と略同一の形状を呈している。スプレッダ本体部15は、長手方向における中央部の上側に、ワイヤーロープ9が掛け回される前述したシーブ18を有している。スプレッダ本体部15は、コンテナCをスプレッダ10が係止する際に当該コンテナC上に位置する。
スプレッダ本体部15は、スプレッダ本体部15の長手方向の両端に設けられた収納部15aと、スプレッダ本体部15の長手方向の両端で収納部15aに対応する短手方向の両端に設けられた開口部15bと、を有している。収納部15aは、箱状を呈しており、位置検出部21及び撮像手段22を内部に収納可能とされている。開口部15bは、スプレッダ本体部15の側面15c,15dにおける収納部15aが設けられた位置に開口された穴であり、位置検出部21及び撮像手段22が通過可能とされている。
ガイド17は、スプレッダ10により取得されるべき目標のコンテナC(以下、「目標コンテナ」という。)をスプレッダ10が取得する場合において、スプレッダ10が下降する際に、スプレッダ本体部15を目標コンテナ上に案内する。ガイド17は、水平方向におけるスプレッダ本体部15の短手方向の一端部及び他端部のそれぞれにおいて、長手方向の両端付近のそれぞれに設けられている。すなわち、ガイド17は、スプレッダ本体部15の四隅でスプレッダ本体部15の短手方向の外側に設けられている。ガイド17は、スプレッダ本体部15の側面15c,15dよりも外側に位置している。ガイド17は、スプレッダ本体部15の側面15c,15dよりも内側に退避可能とされており、例えば、積み付けられたコンテナCに対してスプレッダ10により吊り上げられたコンテナCを隙間なく載置する際にガイド17を退避させる。具体的には、スプレッダ本体部15の上方へガイド17を移動させた際、ガイド17は、平面視でスプレッダ本体部15よりも内側へ移動するようになっている。
ガイド17は、その先端部17aにテーパ面17bを有する。ガイド17は、目標コンテナと当該目標コンテナに対して水平方向に隣り合って載置された別のコンテナCとの隙間に進入することにより、目標コンテナの上面の縁部にテーパ面17bを当接させ、当該縁部からの反力を受けて(案内されて)スプレッダ本体部15を目標コンテナの直上に案内する。
ロックピン16は、コンテナCを係止するための機構である。ロックピン16は、スプレッダ本体部15の下面側に、スプレッダ本体部15から下側に突出して設けられている。ロックピン16は、スプレッダ10がコンテナCを係止する際に当該コンテナCの孔部(不図示)に対応する位置であって、且つ、ガイド17の位置よりも水平方向におけるスプレッダ本体部15の中央側に設けられている。ロックピン16は、例えばツイストピンであって、上下方向に延在する軸線回りに回動可能な係止片(不図示)を下端に含む。ロックピン16は、コンテナCの上面の四隅に形成された孔部を通して進入すると共に係止片を回動させることにより、コンテナCに係合可能である。
位置検出部21は、測定対象物の二次元座標データを取得可能な装置である。本実施形態では、位置検出部21として、レーザセンサを用いている。より具体的には、位置検出部21は、レーザ光が測定対象物で反射して戻って来るまでの時間に基づいて、測定対象物までの距離を算出する。そして、位置検出部21は、測定対象物までの距離とレーザ光の照射角度とによって着光点の座標を求め、その情報を制御部30に出力する。なお、位置検出部21は、測定対象物の二次元座標データに限られず、三次元座標データ又は一次元座標データを取得可能な装置であってもよい。
位置検出部21は、スプレッダ本体部15の側面15c,15dに設けられている。具体的には、位置検出部21は、水平方向におけるスプレッダ本体部15の短手方向の一端部及び他端部のそれぞれにおいて、長手方向の両端付近のそれぞれに設けられている。各位置検出部21は、撮像手段22に取り付けられ、撮像手段22と共にスプレッダ本体部15の開口部15bを通過可能である。
位置検出部21は、後述する電動シリンダ40(図3参照)の駆動により、撮像手段22と共にスライド移動させられる。位置検出部21及び撮像手段22は、電動シリンダ40の駆動により、開口部15bを通って収納部15aの外部へ出されると共に、開口部15bを通って収納部15aの内部に収納される。
位置検出部21は、スプレッダ本体部15の下部に位置するコンテナCを検出し、検出したコンテナCの位置を計測する。また、位置検出部21は、撮像手段22の周囲の障害物を検知し、検知した障害物の位置を計測する。障害物には、例えば、コンテナ船50内のコンテナ固定ガイド、コンテナ船50の側壁、又はコンテナ船50に積まれたコンテナC等が含まれる。位置検出部21は、障害物検知部25(図4参照)として機能し、計測結果を制御部30に送信する。なお、本実施形態では位置検出部21がスプレッダ10に設けられている例を説明するが、この例に限られず、位置検出部21は例えばトロリー7に設けられていてもよい。また、位置検出部21は、測定対象物の座標データを取得できるのであればレーザセンサに限定されず、他の方式のもの(例えば、光学式カメラ等)を用いても良い。更に、位置検出部21は、複数の方式のものを併用(例えば、レーザセンサと光学式カメラとを併用)してもよい。
撮像手段22は、スプレッダ10の周囲を撮像可能なカメラであって、例えば動画撮影が可能なビデオカメラである。撮像手段22は、位置検出部21と同様、スプレッダ本体部15の側面であって、スプレッダ本体部15の開口部15bに対応する位置に設けられている。撮像手段22は、スプレッダ本体部15の収納部15a内に設けられた電動シリンダ40(図3参照)のロッド42に固定されている。なお、図2において、紙面手前側の撮像手段22については電動シリンダ40のロッド42を図示しているが、紙面奥側の撮像手段22については図示すると煩雑になるため、電動シリンダ40の図示を省略している。
図3は、撮像手段22の位置を変更する電動シリンダ40を説明するための概念図である。なお、図3では、撮像手段22による撮像範囲を灰色で塗りつぶして模式的に示している。電動シリンダ40は、撮像手段22をスライド移動させるためのスライド機構である。図3に示されるように、電動シリンダ40は、電気駆動のシリンダであって、例えば、筒状のシリンダ本体部41と、シリンダ本体部41に対して進退可能なロッド42と、を有している。進退可能とは、ロッド42が、シリンダ本体部41の外側に軸方向に伸びるように突出する(進行する)と共に、シリンダ本体部41の内部に引っ込む(退行する)ことができることを意味する。
電動シリンダ40は、例えば不図示の電動モータを備えている。ロッド42は、電動モータの駆動により水平方向に進行すると共に退行する。ロッド42の進行及び退行によって、ロッド42に取り付けられた撮像手段22及び位置検出部21は、開口部15bを通って収納部15aの外部へ出されると共に、開口部15bを通って収納部15aの内部に収納される。ロッド42が水平方向に進行及び退行するので、ロッド42に取り付けられた撮像手段22及び位置検出部21も水平方向を保ったままスライド移動する。よって、撮像手段22の視線を常に下方に向かせた状態で好適に視認することができる。
ロッド42の進行及び退行により、撮像手段22は、最大張り出し位置と最大退避位置との間で移動可能とされている。最大張り出し位置とは、スプレッダ10から張り出した位置であって、電動シリンダ40のロッド42が最大限に進行した位置となることにより撮像手段22が最もスプレッダ10から離れる位置である。最大退避位置とは、電動シリンダ40のロッド42が最大限に退行した位置となることにより、スプレッダ10の周囲の障害物から撮像手段22が最大限に退避された位置である。本実施形態において、最大退避位置は、撮像手段22がスプレッダ本体部15の収納部15aに収納される位置(以下、「収納位置」とする。)である。
撮像手段22は、スプレッダ10から水平方向において張り出す方向へ位置する第1の姿勢と、第1の姿勢に比してスプレッダ10から水平方向において張り出さない位置である第2の姿勢と、で変更可能とされている。第1の姿勢とは、例えば、平面視でスプレッダ10よりも外側に位置することであり、換言すれば、スプレッダ10が係止するコンテナCの投影面積よりも外側に位置することをいう。第2の姿勢とは、第1の姿勢と比較するとスプレッダ10からの水平方向における張り出しが少ない位置であり、スプレッダ10から水平方向において張り出していない位置であること(スプレッダ10が係止するコンテナCの投影面積よりも内側に位置すること)を含む。
撮像手段22は、スプレッダ10の下方に位置するコンテナC及び当該コンテナCの周囲を撮像する。撮像手段22により撮像された映像は、運転室14におけるモニタ29(図4参照)に映し出され、運転者に提供される。撮像手段22は、撮像した映像を制御部30に送信する。撮像手段22及び電動シリンダ40は、撮像部26(図4参照)として機能し、制御部30によって制御される。
次に、クレーン装置1の機能的な構成について図4を参照して説明する。図4は、クレーン装置1の構成を機能的に示すブロック図である。図4に示されるように、クレーン装置1は、駆動部23と、荷役動作部24と、障害物検知部25と、撮像部26と、記憶部27と、制御部30と、運転室14と、を備えている。
駆動部23は、前述した走行モータ、横行モータ、及びドラム駆動モータ等に相当する。荷役動作部24は、前述したスプレッダ10が備えるガイド17及びロックピン16等に相当する。障害物検知部25は、前述した位置検出部21に相当する。撮像部26は、前述した撮像手段22及び電動シリンダ40に相当する。
制御部30は、例えば、運転室14の操作器28から送信された情報に基づき、駆動部23及び荷役動作部24の動作を制御する。具体的には、制御部30は、運転室14の操作器28から送信された情報に基づき、前述した走行モータ、横行モータ、及びドラム駆動モータ等の動作を制御すると共に、荷役動作部24のガイド17及びロックピン16等の動作を制御する。
また、制御部30は、障害物検知部25により検知された障害物から撮像手段22までの距離が予め定められた所定の範囲内に入った場合には、撮像部26を制御し、撮像手段22を第1の姿勢から第2の姿勢へ変更させる。
具体的には、制御部30は、衝突判定部31と、撮像手段姿勢変更司令部32と、を有している。衝突判定部31は、障害物検知部25からの検出結果に基づき、障害物検知部25により検知された障害物から撮像手段22までの距離が予め定められた所定の範囲内に入ったか否かを判定する。予め定められた所定の範囲内とは、撮像手段22と障害物が近接し、撮像手段22が障害物に衝突する可能性のある範囲内である。衝突とは、互いに強い力を及ぼし合うようにぶつかることだけでなく、例えば、互いに接触することも含む。
撮像手段姿勢変更司令部32は、衝突仮想時間の算出値が、予め定められた時間以下であると衝突判定部31により判定された場合には、障害物検知部25により検知された障害物から撮像手段22までの距離が所定の範囲に入ったものとして、撮像部26に含まれる電動シリンダ40の動作を制御し、撮像手段22の姿勢を制御する。具体的には、撮像手段姿勢変更司令部32は、電動シリンダ40を駆動させることにより、撮像手段22を第1の姿勢から第2の姿勢へ変更させる。予め定められた時間とは、例えば撮像手段22が第1の姿勢から第2の姿勢まで移動するのに要する時間(撮像手段22の姿勢変化に要する時間)に対して多少余裕を持って設定された時間(以下、「設定移動時間」とする。)である。制御部30の動作の詳細は、フローチャートを用いて後述する。
運転室14は、運転者がクレーン装置1を操作するための操作器28と、撮像手段22により撮像された映像を運転者が見るためのモニタ29と、を有している。運転者は、モニタ29に映し出された映像を見て、操作器28を操作する。運転者が操作器28を操作することにより操作器28に入力された情報は、制御部30に送信される。モニタ29は、撮像手段22により撮像された映像を、制御部30を介して受信し、当該映像を映し出す。
記憶部27は、各種情報を記憶する部分であり、メモリ等によって構成される。記憶部27は、障害物検知部25によって検知された障害物の位置を、制御部30を介して取得し、取得した障害物の位置を記憶する。例えば、記憶部27は、撮像手段22が撮像手段姿勢変更司令部32により収納位置に移動させられる直前に障害物検知部25によって検知された障害物の位置を記憶する。
次に、クレーン装置1における制御部30の動作について、図2及び図4に加え、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6は、クレーン装置1によるコンテナCの荷役の動作を示すフローチャートである。
図5に示されるフローチャートが開始される前に、撮像手段22は、中間位置にあるとする。中間位置とは、前述した最大張り出し位置と収納位置との間の位置であって、スプレッダ10から水平方向において張り出しているが、前述した最大張り出し位置よりもスプレッダ10側の位置である。中間位置は、最大張り出し位置と収納位置との丁度中間の位置に限られず、最大張り出し位置よりもスプレッダ10側であればよい。なお、図2においては、ロックピン16を見易くするために、撮像手段22を中間位置よりも収納位置側に示している。
図5に示されるフローチャートが開始される前には、撮像手段22の第1の姿勢が中間位置であるので、撮像手段22の第2の姿勢は、中間位置よりもスプレッダ10側の位置であって、例えば収納位置が相当する。なお、撮像手段22の第1の姿勢が最大張り出し位置である場合には、撮像手段22の第2の姿勢は、最大張り出し位置よりもスプレッダ10側の位置であって、例えば中間位置及び収納位置が相当する。
撮像手段22は、中間位置において、スプレッダ10の下方に位置するコンテナC及び当該コンテナCの周囲を撮像する。撮像手段22により撮像された映像は、運転室14におけるモニタ29にリアルタイムで映し出される。運転者は、モニタ29に映し出された映像を見ながら、クレーン装置1を操作する。
図5に示されるように、まず、障害物検知部25として機能する位置検出部21によるエリア監視が開始される(ステップS1)。具体的には、位置検出部21は、撮像手段22の周囲の障害物を検知し、検知した障害物の位置を計測する。続いて、制御部30は、スプレッダ10の速度の移動速度目標値及び実測値を取得する(ステップS2)。このとき、制御部30は、運転室14の移動速度指令生成部(不図示)から、予め設定された移動速度目標値を示す情報を受信することにより、移動速度目標値を取得する。また、制御部30は、スプレッダ10の速度の実測値を示す情報を受信することにより、スプレッダ10の速度の実測値を取得する。スプレッダ10の速度の実測値は、例えば、スプレッダ10に取り付けられた速度センサ(不図示)により計測された値であってもよく、スプレッダ10を昇降するドラムの回転速度に基づき計測された値であってもよい。制御部30は、スプレッダ10の速度の実測値を、計測される度に取得してもよいし、所定間隔毎に取得してもよい。
続いて、衝突判定部31は、ステップS2において取得したスプレッダ10の速度と、位置検出部21により検知された障害物の位置とに基づき、スプレッダ10が障害物に衝突するまでにかかると想定される時間である衝突仮想時間(以下、単に「衝突仮想時間」とする。)を算出する(ステップS3)。このとき、スプレッダ10の速度としては、例えば、ステップS2において取得した移動速度目標値及び実測値のうちの何れかが用いられる。例えば、スプレッダ10の速度のより正確な値として実測値を用いてもよいし、スプレッダ10の速度の実測値の測定エラーが生じた場合には移動速度目標値を用いてもよい。
続いて、衝突判定部31は、衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が最大張り出し位置から中間位置まで移動するのに要する時間に対して長いか否かを判定する(ステップS4)。撮像手段22が最大張り出し位置から中間位置まで移動するのに要する時間は、前述した設定移動時間である。当該設定移動時間を示す情報は、例えば、運転室14から制御部30に送信される。なお、本実施形態では、撮像手段22の姿勢変化を最大張り出し位置、中間位置、及び収納位置の三段階としているが、これに限られず、最大張り出し位置及び収納位置の二段階、中間位置及び収納位置の二段階としてもよく、四段階以上の変化としてもよく、連続的な変化としてもよい。
衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が最大張り出し位置から中間位置まで移動するのに要する時間よりも長い場合(ステップS4;YES)、撮像手段姿勢変更司令部32は、撮像手段22を最大張り出し位置に移動させる(ステップS5)。なお、ステップS5において撮像手段22を最大張り出し位置に移動させるとは、ステップS5の前に撮像手段22が最大張り出し位置以外にある場合に最大張り出し位置に移動させることだけでなく、ステップS5の前に撮像手段22が最大張り出し位置にある場合に撮像手段22を最大張り出し位置の状態のままとすることを含む。ステップS5の後、ステップS2に戻る。ステップS5により移動した撮像手段22は、最大張り出し位置において、スプレッダ10の下方に位置するコンテナC及び当該コンテナCの周囲を撮像する。
また、衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が最大張り出し位置から中間位置まで移動するのに要する時間以下である場合(ステップ4;NO)、撮像手段22を移動させずにステップS6に移行する。
続いて、衝突判定部31は、衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間に対して長いか否かを判定する(ステップS6)。撮像手段22が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間は、前述した設定移動時間である。衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間よりも長い場合(ステップS6;YES)、撮像手段姿勢変更司令部32は、撮像手段22を中間位置に移動させる(ステップS7)。なお、ステップS7において撮像手段22を中間位置に移動させるとは、ステップS7の前に撮像手段22が中間位置以外にある場合に中間位置に移動させることだけでなく、ステップS7の前に撮像手段22が中間位置にある場合に撮像手段22を中間位置の状態のままとすることを含む。ステップS7の後、ステップS2に戻る。
衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間以下である場合(ステップS6;NO)、撮像手段22を収納位置に退避させる必要があるとして、ステップS8に移行する。続いて、記憶部27は、エリア監視情報を一時記憶する(ステップS8)。具体的には、記憶部27は、ステップS9に移行する前に位置検出部21によって検知された障害物の位置を記憶する。続いて、撮像手段姿勢変更司令部32は、撮像手段22を収納位置に移動する(ステップS9)。このとき、撮像手段22に取り付けられた位置検出部21も撮像手段22と共に収納位置に移動する。これにより、撮像手段22及び位置検出部21が収納部15aに収納される。撮像手段22が収納部15aに収納された後は、運転者は、モニタ29の映像を見る代わりに運転室14から運転者が目視してもよいし、トロリー7等に取り付けられた別の撮像手段による映像が映し出されたモニタ29を見てもよい。
続いて、ステップS8において記憶された障害物の位置に対して、スプレッダ10の位置監視を継続する(ステップS10)。具体的には、スプレッダ10を昇降するドラムの巻き上げ又は巻き下げ長さ等に基づきスプレッダ10の位置を検出する。なお、例えば位置検出部21がトロリー7に設けられている場合には、ステップS10において、トロリー7に設けられた位置検出部21によってスプレッダ10の位置を検出してもよい。
続いて、衝突判定部31は、スプレッダ10の速度と、位置検出部21により検知された障害物の位置とに基づき、衝突仮想時間を算出する(ステップS11)。このとき、例えばスプレッダ10の速度としては実測値が用いられる。また、このとき、位置検出部21は収納部15aに収納されているので、障害物の位置としては、ステップS8において記憶部27により記憶された障害物の位置が用いられる。なお、位置検出部21が撮像手段22ではなくトロリー7等の他の部分に設けられている場合には、トロリー7等に設けられた位置検出部21により検知された障害物の位置がステップS11において用いられてもよい。このように位置検出部21がトロリー7に設けられる場合には、記憶部27により障害物の位置を記憶する必要がない。
ここで、例えば、スプレッダ10を昇降するドラムの巻き上げ又は巻き下げ速度が遅くなることによりスプレッダ10の速度が遅くなった場合、ステップS11における衝突仮想時間の算出値は、スプレッダ10が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間に対して長くなる可能性がある。そのため、続くステップS12において衝突判定部31による判定が再度行われる。具体的には、衝突判定部31は、ステップS11による衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間に対して長いか否かを判定する(ステップS12)。衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22が中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間よりも長い場合(ステップS12;YES)には、撮像手段22を収納位置から中間位置に移動することが可能であるとして、ステップS13に移行する。
続いて、記憶部27は、位置検出部21によるエリア監視を再開するため、エリア監視情報の記憶をリセットする(ステップS13)。具体的には、記憶部27は、ステップS9に移行する前に位置検出部21によって検知された障害物の位置を記憶した情報を削除する。続いて、撮像手段姿勢変更司令部32は、撮像手段22を中間位置に移動させる(ステップS14)。このとき、撮像手段22の移動と共に位置検出部21も中間位置に移動する。そして、ステップS1に戻り、位置検出部21によるエリア監視を再度開始する。
また、衝突仮想時間の算出値が、撮像手段22を中間位置から収納位置まで移動するのに要する時間以下である場合(ステップS12;NO)には、撮像手段22を収納位置の状態のまま維持して、ステップS10に戻る。以上の制御部30の動作が繰り返し行われ、クレーン装置1の積み付け又は吊り上げが完了すると同時に、制御部30の動作も終了する。
以上、本実施形態に係るクレーン装置1によれば、位置検出部21により検知された障害物から撮像手段22までの距離が予め定められた所定の範囲内に入った場合、制御部30によって撮像手段22が第1の姿勢から第2の姿勢へ変更される。これにより、撮像手段22から障害物までの距離が所定の範囲内となると、撮像手段22は、スプレッダ10から水平方向において張り出された第1の姿勢に比して、スプレッダ10から水平方向において張り出さないように位置する。よって、撮像手段22を障害物と接触させることなく障害物から退避させることができる。このように、撮像手段22が障害物と接触しないので、障害物を傷付けること、及び、撮像手段22が壊れることを防止することができる。また、障害物と接触せず撮像手段22が振動することがないので、撮像手段22による映像に乱れが生じ難く、スプレッダ10の下方に位置するコンテナCの周囲を当該映像によって好適に視認することができる。更に、障害物と接触せずスプレッダ10全体が揺れることがないので、スプレッダ10全体の揺れが収まることを待つことなくスプレッダ10によるコンテナCの荷役を行うことができる。
また、本実施形態によれば、衝突判定部31によって、撮像手段22が障害物に衝突するまでの衝突仮想時間が算出され、算出された算出値が前述した設定移動時間以下となった場合には、接触のおそれがあるとして、撮像手段22が第1の姿勢から第2の姿勢へ変更される。これにより、撮像手段22が障害物に衝突する前に、第1の姿勢に比してスプレッダ10から水平方向において張り出さないように撮像手段22を位置させることができる。よって、撮像手段22を確実に障害物と接触させることなく障害物から退避させることができる。
また、クレーン装置1は、岸壁51に横付けされたコンテナ船50内に載置されたコンテナCを吊り上げる際又は当該コンテナ船50にコンテナCを積み付ける際等に適用することができる。このようにコンテナCを吊り上げる際又はコンテナCを積み付ける際には、コンテナ船50内のコンテナ固定ガイド又はコンテナ船50の側壁等の障害物との隙間や障害物となる他のコンテナCとの間の隙間が狭い。例えば、コンテナヤード上では、隣接するロウ間である程度の隙間を設けてコンテナCが載置されるのに対し、コンテナ船50内では、輸送時のコンテナCの倒壊等を防ぐために極力隙間無くコンテナCが載置される。このため、スプレッダ10が障害物と接触し易いので、前述した構成のクレーン装置1を適用することが有効である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るクレーン装置について説明する。以下の説明においては、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態に係るクレーン装置において、制御部30は、撮像手段22から障害物の側面までの水平方向における距離が、予め定められた第1の閾値以下となり、且つ、撮像手段22から障害物の側面の上端までの鉛直方向における距離が、予め定められた第2の閾値以下となった場合には、位置検出部21により検知された障害物から撮像手段22までの距離が所定の範囲内に入ったものとして、撮像手段22を、第1の姿勢から第2の姿勢へ変更させる。以下、図7を参照して制御部30の制御による撮像手段22の位置変化について詳細に説明する。
図7は、第2実施形態に係る制御部30の制御による撮像手段22の位置変化を説明するための概念図である。図7では、スプレッダ10を前後方向(クレーン装置1の走行方向)から見た端面を模式的に示している。また、図7では、スプレッダ10が係止するコンテナCを吊コンテナC1とし、その他の積み付けられたコンテナCを積み付けコンテナC2〜C8として示している。積み付けコンテナC2〜C8は、スプレッダ10の撮像手段22に対する障害物に相当する。また、図7では、スプレッダ本体部15の一方の側面15cに設けられた撮像手段22を撮像手段22aとし、スプレッダ本体部15の他方の側面15dに設けられた撮像手段22を撮像手段22bとして示している。
図7に示されるように、撮像手段22から水平方向に所定の距離D1(第1の閾値)を取り、且つ、撮像手段22から鉛直方向に所定の距離D2(第2の閾値)を取った範囲が予め干渉範囲Aとして設定されている。ただし、干渉範囲Aは、スプレッダ10及び吊コンテナC1の外側に設定されている。撮像手段22を収納位置に移動させるのに要する時間をtとし、スプレッダ10を水平方向に移動させる速度の最大値をVxmaxとした場合、距離D1は、D1>Vxmax×tの条件を満たす値とすることができる。スプレッダ10を鉛直方向に移動させる速度の最大値をVymaxとした場合、距離D2は、D2>Vymax×tの条件を満たす値とすることができる。
位置検出部21は、撮像手段22から各積み付けコンテナC2〜C8の側面までの水平方向における距離(以下、「水平距離」とする。)と、撮像手段22から当該側面の上端までの鉛直方向における距離(以下、「鉛直距離」とする。)と、を測定する。位置検出部21は、測定結果を制御部30に送信する。制御部30は、水平距離が距離D1以下であるか否かを判定すると共に、鉛直距離が距離D2以下であるか否かを判定することにより、障害物が干渉範囲A内に入っているか否かの干渉判定を行う。制御部30は、水平距離が距離D1以下であり、且つ、鉛直距離が距離D2以下である場合には、障害物が干渉範囲Aに入っており、干渉範囲Aに入っている障害物に撮像手段22が衝突する可能性があるとして、撮像手段22を第1の姿勢から第2の姿勢へ変更する。これにより、撮像手段22が障害物に衝突する前に、撮像手段22を障害物から退避させることができる。距離D1,D2を前述した条件を満たす値とすることにより、撮像手段22が積み付けコンテナC2〜C8に衝突する可能性があると判定した後にスプレッダ10を最大の速度Vxmax,Vymaxで水平方向又は鉛直方向に移動させたとしても、撮像手段22が積み付けコンテナC2〜C8の側面及び上端に衝突することを防ぐことができる。
一例として、撮像手段22aの積み付けコンテナC7に対する干渉判定を具体的に説明する。位置検出部21は、撮像手段22aから積み付けコンテナC7の側面S7までの水平距離x7と、撮像手段22aから積み付けコンテナC7の側面S7の上端T7までの鉛直距離y7と、を測定する。制御部30は、水平距離x7が距離D1以下であるか否かを判定すると共に、鉛直距離y7が距離D2以下であるか否かを判定する。
図7に示されるように、水平距離x7は距離D1よりも大きく、且つ、鉛直距離y7は距離D2よりも大きい。このため、制御部30は、積み付けコンテナC7が干渉範囲A内に入っておらず、撮像手段22aが積み付けコンテナC7に衝突しないと判定する。他の積み付けコンテナC2〜C6,C8についても同様の干渉判定を行うことにより、撮像手段22aが全ての積み付けコンテナC2〜C8に衝突しないと判定することができる。よって、制御部30は、撮像手段22aをスプレッダ10から水平方向において張り出しておく(すなわち、第1の姿勢とする)。
撮像手段22bの積み付けコンテナC2〜C8に対する干渉判定も、前述した撮像手段22aの場合と同様に行うことができる。撮像手段22bの積み付けコンテナC3に対する干渉判定において、撮像手段22bから積み付けコンテナC3の側面S3までの水平距離は距離D1以下であり、且つ、撮像手段22bから積み付けコンテナC3の側面S3の上端T3までの鉛直距離は距離D2以下である。このため、制御部30は、積み付けコンテナC3が干渉範囲A内に入っており、撮像手段22bが積み付けコンテナC3に衝突すると判定する。よって、制御部30は、撮像手段22bをスプレッダ10から水平方向において張り出さずに収納位置とする(すなわち、第2の姿勢とする)。
以上、第2実施形態によれば、撮像手段22が障害物と衝突する前に、第1の姿勢に比してスプレッダ10から水平方向において張り出さないように撮像手段22を位置させることができる。よって、撮像手段22を確実に障害物と接触させることなく障害物から退避させることができる。
以上、本実施形態の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られず、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用してもよい。
例えば、撮像手段22をスライド移動させるためのスライド機構は電動シリンダ40に限られず、例えば4節平行リンク機構を設けてもよい。具体的には、4節平行リンク機構の固定リンクをスプレッダ10に固定すると共に、中間リンクに撮像手段22及び位置検出部21を取り付け、駆動リンクを駆動することにより、中間リンクが水平を保ったまま前後方向にスライド移動する構成としてもよい。この場合、撮像手段22及び位置検出部21は中間リンクと共に水平を保ったままスライド移動することになるため、前述した電動シリンダの場合と同様に、撮像手段22の視線を常に下方を向かせた状態で好適に視認することができる。
また、上記実施形態では、位置検出部21及び撮像手段22を収納部15aに収納することにより位置検出部21及び撮像手段22を退避させる例について説明したが、この例に限られない。例えば、位置検出部21及び撮像手段22をスプレッダ本体部15の上面に設け、当該上面上で位置検出部21及び撮像手段22をスライド移動させることにより位置検出部21及び撮像手段22を退避させてもよい。また、位置検出部21及び撮像手段22をスライド移動させて退避させることに限られず、例えば位置検出部21及び撮像手段22を回動させて退避させてもよい。また、最大退避位置は上記実施形態で述べた収納位置に限られず、位置検出部21及び撮像手段22が、スプレッダ10が係止するコンテナCの投影面積よりも内側に位置するように退避された位置であればよい。
また、上記実施形態では、特に効果的であるとして、脚構造部11から所定方向と交差する方向へガーダー12が張り出し、接岸したコンテナ船50との間でコンテナCの搬送を行う橋形クレーンに対する適用を述べているが、ガーダー12が海上へ張り出していない橋形クレーンに対しても適用可能であり、また、荷役部を例えばクラブバケット等としたクレーン装置や、天井クレーン装置等に対しても適用可能である。