JP6644524B2 - 電動式ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ブレーキ装置のブレーキパッドを直線駆動する電動式直動アクチュエータおよび電動式ブレーキ装置に関する。
ブレーキパッドを直線駆動する電動式の直動アクチュエータとして特許文献1に記載されたものが知られている。その特許文献1に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータを駆動源として回転される回転軸と軸方向に移動自在に支持されたピストン部材としての外輪部材との間に遊星ローラを組込み、上記電動モータの回転を歯車式減速機構により減速して回転軸に伝達し、その回転軸の回転による接触摩擦により遊星ローラを自転させつつ公転させ、その遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条との噛み合いにより外輪部材を軸方向に移動させるようにしている。
上記電動式直動アクチュエータを採用する電動式ブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータにおける外輪部材によりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドをディスクロータに押し付けて、そのディスクロータに制動力を付与するようにしている。
特開2015−52370号公報
ところで、近年では、大きな制動力を付与できるようにした電動式ブレーキ装置が要求されるようになってきている。そのような要求に対しては、上記電動式直動アクチュエータの2組をブレーキディスクの周方向に並列配置し、それぞれの電動式直動アクチュエータでもって1つのブレーキパッドを押圧することにより満足させることができるが、その場合、電動式ブレーキ装置が大型化し、しかも、2組の電動式直動アクチュエータの駆動源としての2つの電動モータを同時に制御して2組の電動式直動アクチュエータの外輪部材の突出量を同じとする必要があるため、モータ制御が複雑となり、コストも高く付くと不都合が生じる。
上記の不都合を解消するため、本件の発明者らは、2つの直動アクチュエータを1つの電動モータで駆動する電動式直動アクチュエータを試作して電動式ブレーキ装置の組立てを行ったところ、2つの直動アクチュエータの外輪部材の突出量を一致させる調整作業が極めて困難であって調整に時間を有し、その突出量の相違からブレーキパッドの全面に均一な圧力を付与することができずにフェード現象を誘引し、ブレーキパッドが摩耗しやすくなるという問題に直面した。
この発明の課題は、フェード現象を生じさせることなく大きな制動力を付与することができる小型、コンパクトな電動式ブレーキ装置を得ることができるようにすることである。
上記の課題を解決するため、この発明に係る電動式直動アクチュエータおいては、ブレーキディスクに対してブレーキパッドを進退させる2つの並列に配置された直動アクチュエータと、その2つの直動アクチュエータを同時に駆動する単一の電動モータを有し、前記2つの直動アクチュエータのそれぞれが、回転軸と、その回転軸の軸方向に移動可能なパッド押圧用のピストン部材と、前記回転軸の回転運動をピストン部材の直線運動に変換する運動変換機構を備えてなり、前記電動モータと前記2つの直動アクチュエータの相互間に、電動モータからの動力を前記2つの直動アクチュエータの回転軸のそれぞれに分配して伝達する差動装置を設けた構成を採用したのである。
上記のように、単一とする電動モータと2つの直動アクチュエータ間に差動装置を設けることにより、電動モータから2つの直動アクチュエータの回転軸にトルクが負荷された際、その負荷トルクに大小関係が生じると、差動装置が作動して、負荷トルクの小さい側の直動アクチュエータの回転軸に多くの動力が分配されることになり、2つの直動アクチュエータの相互において回転軸に作用する回転トルクの均一化が図られ、2つの直動アクチュエータのピストン部材に同じ大きさの軸方向力が負荷される。
したがって、2つの直動アクチュエータでブレーキパッドをブレーキディスクに向けて直線駆動させる電動式ブレーキ装置を形成した場合において、ブレーキパッドの全面に均一な押込み荷重を負荷することができ、フェード現象を生じさせることなく大きな制動力を付与することができる。
ここで、差動装置として、電動モータのロータ軸に設けられたサンギヤと、そのサンギヤと同軸上に配置されたリングギヤのそれぞれにピニオンギヤを噛合し、そのピニオンギヤを上記ロータ軸を中心に回転可能なキャリアによって回転自在に支持した遊星歯車機構と、上記リングギヤの回転を2つの直動アクチュエータの一方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する第1のギヤ伝動機構と、上記キャリアの回転を他方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する第2のギヤ伝動機構とからなるものを採用することができる。
また、差動装置として、電動モータのロータ軸にキャリアを取り付け、そのキャリアによって回転自在に支持されたピニオンギヤを上記ロータ軸と同軸上に配置されたサンギヤおよびリングギヤの内周に形成された内歯に噛合した遊星歯車機構と、上記リングギヤの外周に形成された外歯に噛合してリングギヤの回転を上記2つの直動アクチュエータの一方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する平歯車と、上記サンギヤの回転を他方の直動アクチュエータの回転軸に伝達するギヤ伝動機構とからなるものを採用することができる。
さらに、差動装置として、電動モータのロータ軸に設けられたドライブピニオンと、そのドライブピニオンに噛合するリングギヤと、そのリングギヤを支持するディファレンシャルケースに回転自在に支持された対向一対のピニオンギヤと、上記ディファレンシャルケースに回転自在に支持されて上記一対のピニオンギヤのそれぞれに噛合する一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤのそれぞれの回転を2つの直動アクチュエータの回転軸のそれぞれに伝達するベベルギヤ機構からなるものを採用することができる。
この発明においては、上記のように、電動モータを駆動源として作動する2つの直動アクチュエータによりブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けるようにしたので、極めて大きな制動力を付与することができ、しかも、2つの直動アクチュエータを単一の電動モータで駆動するようにしたため、小型、コンパクトな電動式ブレーキ装置を得ることができる。
また、電動モータと2つの直動アクチュエータ間に、電動モータからの動力を2つの直動アクチュエータの回転軸のそれぞれに分配して伝達する差動装置を設けたことにより、ブレーキパッドを直線駆動する2つの直動アクチュエータのピストン部材のそれぞれに同一大きさの軸方向力を付与することができ、ブレーキパッドの全面に均一な大きさの軸方向力を負荷することができる。このため、フェード現象を生じさせることなく大きな制動力を付与することができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータを採用した電動式ブレーキ装置の実施の形態を示す一部切欠正面図 図1の左側面図 図1のIII−III線に沿った断面図 図3のIV−IV線に沿った断面図 図4の遊星歯車機構部を拡大して示す断面図 図5のIV−IV線に沿った断面図 図4のVII−VII線に沿った断面図 図7のVIII−VIII線に沿った断面図 図3に示す差動装置の模式図 差動装置の他の例を示す模式図 差動装置のさらに他の例を示す模式図 差動装置のさらに他の例を示す模式図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図4に示すように、電動式ブレーキ装置は、図示省略した車輪と一体に回転するブレーキディスク10と、そのブレーキディスク10の外周囲に設けられたキャリパ11を有する。
キャリパ11は、キャリパベース12と、そのキャリパベース12に支持されたキャリパ本体18とからなる。
キャリパベース12は、ブレーキディスク10のインナ側外周部に対向配置されるベース板部13の両端部にブレーキディスク10の外周部を跨ぐ一対のコの字状のガイド片14を連設し、その一対のガイド片14の端部間にブレーキディスク10のアウタ側外周部に対向配置されるブリッジ部材15を設けた構成とされている。なお、電動式ブレーキ装置を車体に取り付けた状態で車体内側をインナ側といい、車体側面側をアウタ側という。
キャリパベース12は、上記ベース板部13にねじ込まれる複数のボルト16の締め付けによって図1に示すナックル17に固定されている。
キャリパ本体18は、ブレーキディスク10の外周囲に配置される弧状壁部19のアウタ側端部に複数のパッド支持片20(図2参照)を設け、上記弧状壁部19のインナ側端部には一対の並列配置の筒状ハウジング21を設けた構成とされている。
キャリパ本体18は、キャリパベース12の対向一対のガイド片14間に位置する組み込みとされ、キャリパベース12によりブレーキディスク10の軸方向にスライド自在に支持されている。
キャリパ本体18のスライド自在の支持に際し、ここでは、一対のハウジング21のそれぞれ外側にピン支持片22を設け、各ピン支持片22に端部が支持されたスライドピン23をキャリパベース12のガイド片14に設けられたピン孔24にスライド自在に挿入している。
ブレーキディスク10と対向する面にはアウタ側ブレーキパッド27(図7参照)が、ブレーキディスク10のインナ側面にはインナ側ブレーキパッド28(図7参照)が対向配置され、両ブレーキパッド27、28の両側にガイド突条25を設け、そのガイド突条25をキャリパベース12のガイド片14の対向内側部に形成されたガイド溝26にスライド自在に挿入することで、回転不能な状態でブレーキディスク10に向けて移動自在に支持され、キャリパ本体18に支持された電動式直動アクチュエータ30によってブレーキディスク10に向けて移動される。
図4に示すように、電動式直動アクチュエータ30は、キャリパ本体18(図7参照)における一対のハウジング21のそれぞれ内部に組み込まれてインナ側ブレーキパッド28をブレーキディスク10(図7参照)に対して進退させる2つの直動アクチュエータ40と、その2つの直動アクチュエータ40を同時に駆動する単一の電動モータ60と、その電動モータ60からの動力を上記2つの直動アクチュエータ40のそれぞれに分配して伝達する差動装置70とからなる。
図7および図8に示すように、直動アクチュエータ40は、ハウジング21内にスライド自在に組み込まれたピストン部材41と、そのピストン部材41と同軸上に配置された回転軸42と、その回転軸42の回転運動を上記ピストン部材41の軸方向への直線運動に変換する運動変換機構43とからなる。
ピストン部材41のアウタ側端部は閉塞端とされ、その閉塞端部の外側端面に形成された回り止め溝44にインナ側ブレーキパッド28のパッドホルダ29に設けられた回り止め突起45が係合しており、その係合によってピストン部材41がインナ側ブレーキパッド28に対して回り止めとされている。
回転軸42は、ハウジング21内において、ピストン部材41のインナ側端部より内側に組み込まれた軸支持部材46を貫通し、その貫通部に組み込まれた複数の軸受47によって回転自在に支持されている。
運動変換機構43は、ピストン部材41と回転軸42との間に複数の遊星ローラ48を組込み、その遊星ローラ48の外周にピストン部材41の内周に設けられた螺旋突条49に噛合する複数の円周溝50を螺旋突条49と同一ピッチで軸方向に等間隔に形成し、上記回転軸42の回転により、その回転軸42との摩擦接触により遊星ローラ48を自転させつつ公転させてピストン部材41を軸方向に移動させるようにしている。なお、円周溝50に代えて、螺旋突条49と同一のピッチでリード角が相違する螺旋溝を設けるようにしてもよい。
ここで、複数の遊星ローラ48のそれぞれは、回転軸42を中心にして回転可能なキャリア51により回転自在に支持されている。キャリア51は、回転軸42を中心に回転自在に支持された一対のディスク51a、51bと、その一対のディスク51a、51bによって両端部が支持されたローラ軸52とからなる。ローラ軸52は遊星ローラ48と同数とされ、それぞれのローラ軸52により遊星ローラ48のそれぞれが回転自在に支持されている。複数のローラ軸52のそれぞれは、ディスク51a、51bの径方向に移動自在に支持され、その複数のローラ軸52の軸端部を包み込むように掛け渡された弾性部材53によって遊星ローラ48が回転軸42の外径面に圧接されている。
キャリア51におけるインナ側ディスク51bと遊星ローラ48の軸方向の対向部間には、遊星ローラ48側から順に、スラスト軸受54、加圧座板55および受圧座板56が組み込まれ、加圧座板55と受圧座板56は球面接触している。また、受圧座板56とローラ軸52の嵌合面間には隙間が設けられ、その隙間の範囲内においてローラ軸52と加圧座板55は調心自在とされている。
また、キャリア51におけるインナ側ディスク51bと回転軸42を回転自在に支持する前述の軸支持部材46間にはバックアッププレート57とスラスト軸受58とが組み込まれ、ピストン部材41から遊星ローラ48を介してキャリア51に負荷される軸方向の反力を上記スラスト軸受58で支持するようになっている。
図4に示すように、電動モータ60は、キャリパ本体18(図7参照)における一対のハウジング21間よりブレーキディスク10の外径側に片寄った位置に配置されて、一対のハウジング21と平行の配置とされている。この電動モータ60は、一対のハウジング21の端部間に渡されたギヤケース61の底板62に固定されている。
差動装置70は、ギヤケース61内に組み込まれている。図3乃至図6に示すように、差動装置70は、遊星歯車機構71と、その遊星歯車機構71から出力される2つの回転のうちの一方を2つの直動アクチュエータ40の一方の直動アクチュエータ40の回転軸42に出力する第1のギヤ伝動機構Gおよび他方の回転を他方の直動アクチュエータ40の回転軸42に出力する第2のギヤ伝動機構Gからなる。
遊星歯車機構71は、電動モータ60のロータ軸60aの軸端部に設けられたサンギヤ72と、そのサンギヤ72と同軸上に配置されたリングギヤ73のそれぞれに複数のピニオンギヤ74を噛合し、各ピニオンギヤ74を上記ロータ軸60aを中心にして回転可能なキャリア75によって回転自在に支持し、上記サンギヤ72の回転によりピニオンギヤ74を自転させつつ公転させ、キャリア75およびリングギヤ73のそれぞれを互いに逆方向に回転させるようにしている。
第1のギヤ伝動機構Gは、キャリア75に設けられた入力ギヤ76と、その入力ギヤ76に噛合する第1中間ギヤ77と、その第1中間ギヤ77と同軸上に設けられた第2中間ギヤ78と、その第2中間ギヤ78に噛合する出力ギヤ79とで形成される平歯車機構からなり、上記出力ギヤ79を一方の直動アクチュエータ40の回転軸42に接続して、出力ギヤ79から出力される回転を一方の直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達している。
第2のギヤ伝動機構Gは、リングギヤ73に設けられた入力ギヤ81と、その入力ギヤ81に噛合する第1中間ギヤ82と、その第1中間ギヤ82と同軸上に設けられた第2中間ギヤ83と、その第2中間ギヤ83に噛合する出力ギヤ84とで形成される平歯車機構からなり、上記出力ギヤ84を他方の直動アクチュエータ40の回転軸42に接続して、出力ギヤ84から出力される回転を他方の直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達するようにしている。図9は、図4に示される差動装置70の模式図である。
実施の形態で示す電動式ブレーキ装置は上記の構成からなり、図7は、ブレーキディスク10に対する制動力の解除状態を示し、一対のブレーキパッド27、28はブレーキディスク10に対して離反している。
上記のような制動力の解除状態において、図4に示す電動モータ60を駆動すると、その電動モータ60のロータ軸60aの回転がサンギヤ72に伝達され、そのサンギヤ72に噛合するピニオンギヤ74が自転しつつ公転し、そのピニオンギヤ74を支持するキャリア75およびリングギヤ73が回転する。
キャリア75の回転は第1のギヤ伝動機構Gを介して一方の直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達され、その回転軸42が制動方向に回転する。また、リングギヤ73の回転は第2のギヤ伝動機構Gを介して他方の直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達され、その回転軸42が制動方向に回転する。
一対の直動アクチュエータ40のそれぞれの回転軸42が回転すると、遊星ローラ48が回転軸42との接触摩擦により自転しつつ公転する。
このとき、図7に示すように、遊星ローラ48の外径面に形成された円周溝50はピストン部材41の内径面に設けられた螺旋突条49に噛合しているため、その円周溝50と螺旋突条49の噛合によってピストン部材41が軸方向に移動し、そのピストン部材41に当接されたインナ側ブレーキパッド28がブレーキディスク10に当接して、そのブレーキディスク10を軸方向に押圧し始める。その押圧力の反力によりパッド支持片20に支持されたアウタ側ブレーキパッド27がブレーキディスク10に接近する方向に向けてキャリパ本体18が移動し、アウタ側ブレーキパッド27がブレーキディスク10に当接して、そのアウタ側ブレーキパッド27がインナ側ブレーキパッド28とでブレーキディスク10の外周部を軸方向両側から挟持し、ブレーキディスク10に制動力が負荷される。
上記のような制動力の付与時、インナ側ブレーキパッド28は、図4に示す2つの直動アクチュエータ40のピストン部材41によってブレーキディスク10に押し付けられるため、上記ブレーキディスク10には極めて大きな制動力が負荷される。
ここで、2つの直動アクチュエータ40の相互において、ピストン部材41の突出量に差が生じると、突出量の大きな側のピストン部材41がブレーキディスク10に先に当接してインナ側ブレーキパッド28を軸方向に押圧し、そのインナ側ブレーキパッド28からピストン部材41に負荷される軸方向反力の相違により、回転軸42に作用する負荷トルクも相違する。
このとき、電動モータ60のロータ軸60aと2つの直動アクチュエータ40の回転軸42間には差動装置70が設けられているため、各直動アクチュエータ40の回転軸42に作用する負荷トルクが相違すると、差動装置70が作動して、負荷トルクの小さい側の直動アクチュエータ40の回転軸42に多くの動力が分配される。
例えば、図4に示す一対の直動アクチュエータ40の相互において、図4の上側の直動アクチュエータ40の回転軸42に大きな負荷トルクが負荷されると、リングギヤ73が停止し、キャリア75のみが回転する。その回転が図4の下側の直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達され、下側の直動アクチュエータ40のピストン部材41が軸方向に移動してインナ側ブレーキパッド28を押圧する。その押圧により、下側の直動アクチュエータ40の回転軸42の負荷トルクが大きくなり、その負荷トルクが上側直動アクチュエータ40の回転軸42の負荷トルクと等しくなると、リングギヤ73が回転し始め、電動モータ60から2つの直動アクチュエータ40の回転軸42のそれぞれに同一大きさの回転トルクが負荷される。
このため、インナ側ブレーキパッド28には2つの直動アクチュエータ40によって全面に均一な大きさの軸方向力が負荷されることになり、フェード現象を生じさせることなくブレーキディスク10に対して大きな制動力を付与することができる。
なお、図4の下側の直動アクチュエータ40の回転軸42に大きな負荷トルクが負荷されると、キャリア75が停止し、リングギヤ73が回転して、その回転が図4の上側の直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達され、電動モータ60から2つの直動アクチュエータ40に付与される動力の均一化が図られる。
図4および図9に示す差動装置70においては、遊星歯車機構71のリングギヤ73とキャリア75から出力される回転を同一の構成とされた第1のギヤ伝動機構Gおよび第2のギヤ伝動機構Gを介して2つの電動アクチュエータ40の回転軸42のそれぞれに伝達し、回転軸42を互いに逆方向に回転させるようにしているため、2つの電動アクチュエータ40のピストン部材41の内周に形成された螺旋突条49を逆向きとしているが、図10に示すように、第1のギヤ伝動機構Gおける中間ギヤを2つの中間ギヤ80a、80bとすることにより、ピストン部材41の内周に形成された螺旋突条49を同じ向きとすることができ、同一構成の電動アクチュエータ40を採用することができる。
また、図4および図9に示す差動装置70においては、遊星歯車機構71のサンギヤ72を電動モータ60のロータ軸60aに取り付けて、そのサンギヤ72を入力部材としたが、図11に示すように、ロータ軸60aにキャリア75を取り付けて、そのキャリア75を入力部材としてもよい。この場合、内歯を内周に有するリングギヤ73の外周に外歯85を設け、その外歯85に平歯車86を噛合して、その平歯車86からの回転を一方の直動アクチュエータ40の回転軸42に入力する。また、サンギヤ72の回転を入力ギヤ87、中間ギヤ88および出力ギヤ89からなるギヤ伝動機構Gを介して他方の直動アクチュエータ40の回転軸42に入力する。
また、遊星歯車機構71のリングギヤ73を電動モータ60のロータ軸60aに取り付けて、サンギヤ72及びキャリア75の動力をそれぞれ2つの直動アクチュエータ40の回転軸42に伝達してもよい。
図9乃至図11では、差動装置70として遊星歯車機構71を採用したものを示したが、差動装置70はこれに限定されない。図12は、差動装置70の他の例を示す。この差動装置70においては、自動車のディファレンシャルを採用している。すなわち、電動モータ60のロータ軸60aに設けられたドライブピニオン90と、そのドライブピニオン90に噛合するリングギヤ91と、そのリングギヤ91を支持するディファレンシャルケース92と、そのディファレンシャルケース92に回転自在に支持された対向一対のピニオンギヤ93と、上記ディファレンシャルケース92に回転自在に支持されてその一対のピニオンギヤ93のそれぞれに噛合する一対のサイドギヤ94と、一対のサイドギヤ94のそれぞれの回転を一対の直動アクチュエータ40の回転軸42のそれぞれに伝達する2組のベベルギヤ機構95とからなる。ここで、べベルギヤ機構95とは、一対の互いに噛合するベベルギヤからなるものをいう。
上記差動装置70においても、電動モータ60のロータ軸60aから出力される動力を2つの直動アクチュエータ40のそれぞれに分配して伝達することができ、それぞれの直動アクチュエータ40の回転軸42の回転トルクの均一化を図り、ピストン部材41がインナ側ブレーキパッド28(図7参照)を押圧する押圧力を均一とすることができる。
なお、実施の形態では、電動モータ60を直動アクチュエータ40のハウジング21に平行に配置したが、本構成に限定されるものではなく、適宜任意の角度及び位置に取り付けてもよい。
10 ブレーキディスク
28 インナ側ブレーキパッド
40 直動アクチュエータ
41 ピストン部材
42 回転軸
43 運動変換機構
60 電動モータ
60a ロータ軸
70 差動装置
71 遊星歯車機構
72 サンギヤ
73 リングギヤ
74 ピニオンギヤ
75 キャリア
ギヤ伝動機構
ギヤ伝動機構
85 外歯
86 平歯車
ギヤ伝動機構
90 ドライブピニオン
91 リングギヤ
92 ディファレンシャルケース
93 ピニオンギヤ
94 サイドギヤ
95 べベルギヤ機構

Claims (4)

  1. ブレーキディスクのインナ側面に対してインナ側ブレーキパッドを進退させるブレーキディスクの周方向に並列に配置された2つの直動アクチュエータと、その2つの直動アクチュエータを収容する一対の並列配置の筒状のハウジングと、前記2つの直動アクチュエータを同時に駆動する単一の電動モータを有し、
    前記2つの直動アクチュエータのそれぞれが、回転軸と、その回転軸の軸方向に移動可能に前記ハウジング内にスライド自在に組み込まれたパッド押圧用のピストン部材と、前記回転軸の回転運動をピストン部材の直線運動に変換する運動変換機構を備え
    前記ピストン部材で前記インナ側ブレーキパッドを直線駆動し、そのインナ側ブレーキパッドで前記ブレーキディスクのインナ側面を押圧して、ブレーキディスクに制動力を付与するようにした電動式ブレーキ装置であって、
    前記2つの直動アクチュエータのそれぞれが、前記ハウジング内において前記ピストン部材のインナ側端部よりインナ側に固定して組み込まれ、前記回転軸を回転自在に支持する軸支持部材と、前記ハウジング内において前記運動変換機構と前記軸支持部材の間に組み込まれ、前記ピストン部材から前記運動変換機構に負荷される軸方向の反力を支持するスラスト軸受とを更に備え、
    前記電動モータと前記2つの直動アクチュエータの相互間に、電動モータのロータ軸からの動力を前記2つの直動アクチュエータの回転軸のそれぞれに分配して伝達する差動装置を設け
    前記差動装置は、前記電動モータのロータ軸に取り付けられた差動歯車機構と、その差動歯車機構から出力される2つの回転のうちの一方を2つの直動アクチュエータの一方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する第1のギヤ伝動機構と、他方の回転を他方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する第2のギヤ伝動機構とからなり、
    前記差動装置が、前記一対のハウジングのインナ側端部間に渡して設けられたギヤケースに組み込まれ、
    前記電動モータは、前記ロータ軸がインナ側となる向きで前記一対のハウジングと平行に前記ギヤケースに固定されるとともに、前記一対のハウジング間より前記ブレーキディスクの外径側に片寄った位置に配置されている電動式ブレーキ装置。
  2. 前記差動歯車機構が、電動モータのロータ軸に設けられたサンギヤと、そのサンギヤと同軸上に配置されたリングギヤのそれぞれにピニオンギヤを噛合し、そのピニオンギヤを前記ロータ軸を中心に回転可能なキャリアによって回転自在に支持した遊星歯車機構であり、
    前記第1のギヤ伝動機構は、前記キャリアの回転を一方の直動アクチュエータの回転軸に伝達し、
    前記第2のギヤ伝動機構は、前記リングギヤの回転を前記2つの直動アクチュエータの他方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する、
    請求項1に記載の電動式ブレーキ装置
  3. 前記差動歯車機構が、電動モータのロータ軸にキャリアを取り付け、そのキャリアによって回転自在に支持されたピニオンギヤを前記ロータ軸と同軸上に配置されたサンギヤおよびリングギヤの内周に形成された内歯に噛合した遊星歯車機構であり、
    前記第1のギヤ伝動機構は、前記リングギヤの外周に形成された外歯に噛合する平歯車を介してリングギヤの回転を前記2つの直動アクチュエータの一方の直動アクチュエータの回転軸に伝達し、
    前記第2のギヤ伝動機構は、前記サンギヤの回転を他方の直動アクチュエータの回転軸に伝達する、
    請求項1に記載の電動式ブレーキ装置
  4. 前記差動歯車機構が、前記電動モータのロータ軸に設けられたドライブピニオンと、そのドライブピニオンに噛合するリングギヤと、そのリングギヤを支持するディファレンシャルケースに回転自在に支持された対向一対のピニオンギヤと、前記ディファレンシャルケースに回転自在に支持されてその一対のピニオンギヤのそれぞれに噛合する一対のサイドギヤとをもつディファレンシャルであり、
    前記第1のギヤ伝動機構および前記第2のギヤ伝動機構は、前記一対のサイドギヤのそれぞれの回転を2つの直動アクチュエータの回転軸のそれぞれに伝達する2組のベベルギヤ機構からなる
    請求項1に記載の電動式ブレーキ装置
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