JP6644432B2 - 車両の走行用前照灯 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に装備される走行用前照灯に関する。
近時、夜間に車両の前方にある交通上の障害物を適切に確認でき、かつ照射光線が対向車や先行車の交通を妨げないような、配光可変型前照灯システムが開発されている。配光可変型前照灯システムは、車載のカメラで撮影した画像を解析して対向車や先行車を検出し、当該対向車または先行車の存在する領域以外の領域に向けて照明光を正射する状態を維持しながら、当該対向車または先行車の存在する領域に限って照明光を照射しないようにするものである。配光可変型前照灯システムにより、対向車または先行車の搭乗者を眩惑させずに走行用前照灯(ハイビーム)を使用して安全に夜間走行を行うことができる。
前照灯の配光パターンを変化させるための具体的な仕組みとしては、光源から放たれる光を反射させるリフレクタをアクチュエータにより駆動して光軸の向きを変位させる態様のもの(例えば、下記特許文献1を参照)や、多数の独立した光源の点灯/消灯を頻繁に切り換えることで照明光の照射範囲を細かく制御する態様のもの(例えば、下記非特許文献1を参照)が知られている。
特開2016−120871号公報
"Audi(登録商標)マトリックスLEDヘッドライト"、[online]、アウディ アクチェンゲゼルシャフト、[平成28年12月15日検索]、インターネット<URL:http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja/vorsprung_durch_technik/content/2013/10/audi-a8-in-a-new-radiant-light.html>
複数の光源セグメントを構成要素とする配光可変型前照灯システムでは、対向車の出現を認識したとき、その対向車を指向する光源セグメントを消灯することで、対向車の搭乗者の眩惑を抑止する。
現実には、自車も対向車も微妙に左右に蛇行しながら走行している。その帰結として、自車の前照灯の光源セグメントが照明する範囲の外側縁部に、対向車が出たり入ったりを繰り返すことがある。すると、対向車が光源セグメントの照明範囲に入ったことで当該光源セグメントを一旦消灯し、その後すぐに対向車が照明範囲の外に出たために当該光源セグメントを再点灯し、さらにその直後に対向車が照明範囲に入ったので光源セグメントを再点灯する……というように、光源セグメントの消灯と再点灯とを反復する状態に陥り、車両の前方の照明が明滅することとなって搭乗者に負担をかけるおそれがある。
本発明は、上記の点に初めて着目してなされたものであり、自車の前方の車両を指向する光源セグメントが短い周期で消灯と再点灯とを繰り返す問題を有効に回避することを所期の目的としている。
本発明では、前方車両が出現した場合に、車両の前方を照明する複数の光源セグメントのうちの前方車両を指向する光源セグメントを消灯しまたは当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも減少させるものであり、当該光源セグメントによる照明範囲の外側縁部に前方車両が位置する間は当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも減少させ、その照明範囲の外側縁部よりも内側に前方車両が進入したときに当該光源セグメントを消灯する車両の走行用前照灯を構成した。
本発明によれば、複数の光源セグメントを構成要素とする配光可変型前照灯システムにおいて、前方車両の出現時に当該前方車両を指向する光源セグメントが短い周期で消灯と再点灯とを繰り返す問題を有効に回避することができる。
本発明の一実施形態において車両の反対向車線側(左側)の部位に設置する複数の光源セグメントの配光パターンの例を模式的に示す平面図。 同実施形態の車両の反対向車線側の部位に設置する複数の光源セグメントの配光パターンを車両に正対するスクリーンに投影した状態を模式的に示す図。 同実施形態の車両の反対向車線側の部位に設置する特定の光源セグメントの照明光の照射範囲を模式的に示す側面図。 同実施形態において車両の対向車線側(右側)の部位に設置する複数の光源セグメントの配光パターンの例を模式的に示す平面図。 同実施形態の車両の対向車線側の部位に設置する複数の光源セグメントの配光パターンを車両に正対するスクリーンに投影した状態を模式的に示す図。 同実施形態において対向車が存在する状況下での複数の光源セグメントの点灯/消灯の状態を模式的に示す平面図。 同実施形態において先行車が存在する状況下での複数の光源セグメントの点灯/消灯の状態を模式的に示す平面図。 同実施形態の車両に設置する特定の光源セグメントの照明光の照射範囲を模式的に示す側面図。 同実施形態の車両に設置する特定の光源セグメントの構造を示す斜視図。 同実施形態の車両に設置する特定の光源セグメントの構造を模式的に示す側断面図。 同実施形態において前方車両が存在する状況下での当該前方車両を指向する光源セグメントの減光の状態を模式的に示す平面図。 同実施形態において前方車両が存在する状況下での当該前方車両を指向する光源セグメントの消灯の状態を模式的に示す平面図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の車両Cの走行用前照灯は、車両Cの前端部における左右の側部にそれぞれ複数個の光源セグメントを設置してなるものである。各光源セグメントは、照明光を放射する照明光源、例えば発光ダイオードと、照明光源から放射される照明光を車両Cの前方に向けるリフレクタとを要素とする。各光源セグメントの照明光源は、互いに独立に点灯/消灯させることが可能である。照明光源から放たれる光束の量の制御は、例えば、当該光源に印加する平均の電流量をFET(Field Effect Transistor)その他の半導体スイッチング素子を介して増減させるPWM(Pulse Width Modulation)制御により実現できる。
本実施形態の走行用前照灯は、車両Cの左側部及び右側部に四個ずつ光源セグメントを備えている。図1ないし図5に、各光源セグメントの配光パターンの一例を示す。なお、この図示例の配光パターンは、左側通行を採用する国または地域を想定したものであり、右側通行を採用する国または地域に適用する際にはこれを左右反転させる必要がある。
従来の車両の走行用前照灯では、車両Cの搭乗者(または、運転者)から見て左側に設置した光源セグメントが主として車両中心線よりも左方の領域を照らし、右側に設置した光源セグメントが主として車両中心線よりも右方の領域を照らしていた。このようなものであると、配光可変型前照灯システムが対向車の存在を検出したとき、当該対向車に対して強い光を照射しないために、右側の光源セグメントの大半を消灯することとなる。結果、車両の前方、特に自車線CLの右半部を照明する光量が減少し、遠方の障害物の視認性が低下するおそれがあった。対向車の搭乗者を眩惑させることを回避し、かつ遠方の障害物の視認性を十分に確保するには、光源セグメントの個数を増やさざるを得ないが、光源セグメント数の増加はコストの増大に直結する。
これに対し、本実施形態では、車両Cの搭乗者から見て左側に設置した光源セグメントが車両中心線よりも右方の領域を照らし、右側に設置した光源セグメントが車両中心線よりも左方の領域を照らすように配光している。
詳述すると、搭乗者から見て左側に設置した第一光源セグメント、第二光源セグメント、第三光源セグメント及び第四光源セグメントの四個の光源セグメントのうち、第一光源セグメントは、自車線CLに沿った前方を照明する。図2に示す例に則して述べると、第一光源セグメントから放たれる照明光10を車両Cに正対する(車両Cの前方10mの距離に設立した)スクリーンに投影して運転席から(車両Cの前方を向いて)見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aと車両Cの前端部との交点を基点として右方に少しく偏倚した角度から左方に偏倚した角度までの領域が、その照明光10の照射範囲に含まれる。
第二光源セグメントは、自車線CLよりも寧ろ対向車線OLを照明する。第二光源セグメントから放たれる照明光20を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから右方に偏倚した領域が、その照明光20の照射範囲に含まれる。
第三光源セグメントは、運転席から見て、第二光源セグメントが照明する領域よりもさらに右方の領域を照明する。その光軸は、車両Cの前方100m超の地点の対向車線OLの路肩の辺りを指向する。第三光源セグメントから放たれる照明光31、32を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから右方により偏倚した領域が、その照明光31、32の照射範囲に含まれる。第二光源セグメント及び第三光源セグメントの光軸は、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右方を指向している。これら第二光源セグメント及び第三光源セグメントは、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右側(特に、対向車線OL)に存在する障害物を照明するものであり、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左側(特に、自車線CL及びその路肩)に存在する障害物を積極的に照明しようとしていない。図1に示しているように、第二光源セグメント及び第三光源セグメントは、搭乗者から見て車両Cの左側端よりも左方に照明光20、31、32を照射しない。なお、詳しくは後述するが、第三の光源セグメントは複数の光源L1、L2を有しており、一方の光源L1から出射する照明光31は当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面(路面と平行な面)Hよりも上方の領域を照明し、他方の光源L2から出射する照明光32は当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hよりも下方の領域を照明する。つまり、第三光源セグメントによる照明範囲は、水平面Hを境として上下に二分割される。
並びに、第四光源セグメントは、自車線CLに沿った前方を照明する。第四光源セグメントから放たれる照明光40を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aと車両Cの前端部との交点を基点として右方に偏倚した角度から左方に偏倚した角度までの領域が、その照明光40の照射範囲に含まれる。
搭乗者から見て左側に設置した光源セグメントによる照明光10、20、31、32、40の照射範囲の分解能は、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右方においてより細かく、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左方においてより粗い。つまり、搭乗者から見て左側に設置した各光源セグメントの照明光源の点灯/消灯の切り換えを通じて、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右方における照明光10、20、31、32、40の照射範囲を細かく制御することが可能である。
第一光源セグメント及び第二光源セグメントの光軸は、水平方向即ち路面と平行な方向に設定する。第一光源セグメント及び第二光源セグメントが放つ照明光10、20は、既存の走行用前照灯と同様に車両Cの前方を正射、即ち路面と平行な方向(水平方向)ないしそれよりも上方に向かう。これに対し、第四光源セグメントの光軸は、路面と交差する斜め下方を向き、路面との交差地点において車両中心線を含む鉛直面Aまたはその近傍に到達するように設定する。図3に示しているように、第四光源セグメントが放つ照明光40は、主として路面と平行な方向よりも下方に向かい(但し、路面と平行な方向ないしそれよりも上方に向けて、人の目を眩惑させない程度の減光された光が放射されることはあり得る)、車両Cの前方50mないしその数m手前の地点から100m超(例えば、120m)の地点までの路面及び当該路面上に存在する障害物を照明する。この第四光源セグメントは、車両Cに装備されたすれ違い用前照灯(ロービーム)が照射する照明光90よりは遠方の領域を照明する、いわばハイビームとロービームとの中間の「ミドルビーム」となる。
搭乗者から見て右側に設置した第五光源セグメント、第六光源セグメント、第七光源セグメント及び第八光源セグメントの四個の光源セグメントのうち、第五光源セグメントは、運転席から見て大きく左方に偏倚した領域を照明する。その光軸は、車両Cの前方100m超の地点の自車線CLの路肩の辺りを指向する。図5に示す例に則して述べると、第五光源セグメントから放たれる照明光51、52を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から(車両Cの前方を向いて)見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから左方に偏倚した領域が、その照明光51、52の照射範囲に含まれる。なお、詳しくは後述するが、第五の光源セグメントは複数の光源L1、L2を有しており、一方の光源L1から出射する照明光51は当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hよりも上方の領域を照明し、他方の光源L2から出射する照明光52は当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hよりも下方の領域を照明する。つまり、第三光源セグメントによる照明範囲は、水平面Hを境として上下に二分割される。
第六光源セグメントは、運転席から見て、第五光源セグメントが照明する領域よりはやや右方即ち車両中心線寄りの領域、車両Cの前方100m程度の地点までの自車線CLの左半部を含む領域を照明する。第六光源セグメントから放たれる照明光60を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから左方に偏倚した領域が、その照明光60の照射範囲に含まれる。
第七光源セグメントは、運転席から見て、第六光源セグメントが照明する領域よりもやや右方、自車線CLの大半部を含む領域を照明する。第七光源セグメントから放たれる照明光70を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから左方に偏倚した領域が、その照明光70の照射範囲に含まれる。第五光源セグメント、第六光源セグメント及び第七光源セグメントの光軸は、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左方を指向している。これら第五光源セグメント、第六光源セグメント及び第七光源セグメントは、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左側(特に、自車線CL及びその路肩)に存在する障害物を照明するものであり、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右側(特に、対向車線OL及びその路肩)に存在する障害物を積極的に照明しようとしていない。図4に示しているように、第五光源セグメント、第六光源セグメント及び第七光源セグメントは、搭乗者から見て車両Cの右側端よりも右方に照明光51、52、60、70を照射しない。
並びに、第八光源セグメントは、自車線CLに沿った前方を照明する。第八光源セグメントから放たれる照明光80を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aと車両Cの前端部との交点を基点として左方に少しく偏倚した角度から右方に偏倚した角度までの領域が、その照明光80の照射範囲に含まれる。
搭乗者から見て右側に設置した光源セグメントによる照明光51、52、60、70、80の照射範囲の分解能は、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左方においてより細かく、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右方においてより粗い。つまり、搭乗者から見て右側に設置した各光源セグメントの照明光源の点灯/消灯の切り換えを通じて、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左方における照明光51、52、60、70、80の照射範囲を細かく制御することが可能である。
第六光源セグメント、第七光源セグメント及び第三光源セグメントの光軸は、水平方向即ち路面と平行な方向に設定する。第六光源セグメント、第七光源セグメント及び第八光源セグメントが放つ照明光60、70、80は、既存の走行用前照灯と同様、車両Cの前方そして無限遠方を正射する。
しかして、本実施形態では、車両Cの搭乗者から見て最も左右の外側方を照明する光源セグメント、即ち対向車線OLの路肩を指向して照明光31、32を照射する第三の光源セグメント、及び自車線CLの路肩を指向して照明光51、52を照射する第五の光源セグメントが、それぞれ複数の光源L1、L2を具備している。一方の光源L1は、当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hよりも上方の領域を照明する照明光31、51を出射する。他方の光源L2は、当該光源L2と同等の高さに位置する水平面Hよりも下方の領域を照明する照明光32、52を出射する。
図9及び図10に、第三光源セグメント及び第五光源セグメントの構造を示している。第三光源セグメント及び第五光源セグメントにおいては、基板Sの下向面に二個の光源L1、L2、例えば発光ダイオードを前後方向に沿って配列しており、それら光源L1、L2の各々から下方に出射する照明光31、51、32、52を凹面状をなすリフレクタRの前向面に当て、当該リフレクタRで反射させて車両Cの前方に放射するようにしている。
基板S上で前方に所在する光源L1から出射する照明光31、51の主光軸は、リフレクタRに当たって反射されることで、水平面Hよりも斜め上方を向く。これに対し、基板S上で光源L1よりも後方に所在する光源L2から出射する照明光32、52の主光軸は、リフレクタRにおける照明光31、51の主光軸が当たる箇所と同じ箇所またはその近傍の箇所に当たる。そして、リフレクタRで反射されることで、水平面Hよりも斜め下方を向く。
第三の光源セグメント及び第五の光源セグメントのそれぞれにおける照明光源L1、L2は、互いに独立に点灯/消灯させることが可能である。既に述べた通り、照明光源L1、L2から放たれる光束の量の制御は、例えば、当該光源に印加する平均の電流量をFETその他の半導体スイッチング素子を介して増減させるPWM制御により実現できる。
図2、図5及び図8に示しているように、前者の照明光31、51の照明範囲と、後者の照明光32、52の照明範囲とは、若干オーバラップしているものの、基本的には水平面Hによって隔てられている。特に、後者の照明光32、52の照明範囲の上縁はカットオフライン(明瞭境界線)を有していて、そのカットオフラインは、第三の光源セグメントまたは第五の光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hの近傍にある。
本実施形態における車両Cの配光可変型前照灯システムの制御を司る電子制御装置(Electronic Control Unit)は、車両Cの前方を撮影することのできる車載カメラ(イメージセンサ)で撮影した動画像を解析し(当該画像内に現れる対向車Oの前照灯や先行車Fの尾灯、歩行者等を検出して)、対向車線OLを走行する対向車O、自車線CLを走行する先行車F、及び/または、歩道上の歩行者等の存在を認識する。そして、その対向車O、先行車F、歩行者等に対して照明光10、20、31、32、40、51、52、60、70、80を照射することとなる光源セグメントの照明光源を適時消灯、または当該光源から出射する光束の量を平常よりも減光しながら、それ以外の光源セグメントの照明光源を点灯させた状態に維持する。
例えば、図6に示すように、車両Cの前方200m付近の地点における対向車線OL上に対向車Oが存在するときには、当該対向車Oを照明光10、20、80の照射範囲に捉えた光源セグメント、即ち第一光源セグメント、第二光源セグメント及び第八光源セグメント(の照明光源)を消灯または減光しつつ、当該対向車Oを照明光31、32、40、51、52、60、70の照射範囲に捉えていない光源セグメント、即ち第三光源セグメント、第四光源セグメント、第五光源セグメント、第六光源セグメント及び第七光源セグメント(の照明光源)を点灯させる。これにより、車両Cの前方を照明する光量を必要十分に確保しながらも、対向車Oの搭乗者を眩惑させることを回避できる。以後、対向車Oとの距離が縮まるにつれて、対向車Oを照明光10、20、31、32、40、51、52、60、70、80の照射範囲に捉える光源セグメントが変化するので、その都度消灯または減光する光源セグメント及び点灯する光源セグメントを切り換えてゆく。
また、図7に示すように、車両Cの前方200m付近の地点における自車線CL上に先行車Fが存在するときには、当該先行車Fを照明光10、70、80の照射範囲に捉えた光源セグメント、即ち第一光源セグメント、第七光源セグメント及び第八光源セグメント(の照明光源)を消灯または減光しつつ、当該対向車Oを照明光20、31、32、40、51、52、60の照射範囲に捉えていない光源セグメント、即ち第二光源セグメント、第三光源セグメント、第四光源セグメント、第五光源セグメント及び第六光源セグメント(の照明光源)を点灯させる。これにより、車両Cの前方を照明する光量を必要十分に確保しながらも、先行車Fの搭乗者を眩惑させることを回避できる。先行車Fとの距離が変化した際には、先行車Fを照明光10、20、31、32、40、51、52、60、70、80の照射範囲に捉える光源セグメントが変化するので、その都度消灯または減光する光源セグメント及び点灯する光源セグメントを切り換える。
さらに、自車線CLの路肩に隣接する歩道上を通行する歩行者や道路標識が存在するときには、第三の光源セグメントの光源L2を点灯させたまま、第三の光源セグメントの光源L1を消灯し、またはその光源L1から出射する光束の量を平常よりも減らす。これにより、照明光32による自車線CLの路肩側の照明を維持しながら、照明光31を消光または減光して、自車線CL側の歩道上の歩行者の眩惑を防止することができる。照明光31が自車線CL側の道路標識に当たって反射し、強い反射光が車両Cの搭乗者の目に入る問題も回避できる。
対向車線OL上を走行する対向車Oや、対向車線OLの路肩に隣接する歩道上を通行する歩行者が存在するときには、第五の光源セグメントの光源L2を点灯させたまま、第五の光源セグメントの光源L1を消灯し、またはその光源L1から出射する光束の量を平常よりも減らす。これにより、照明光52による対向車線OLの路肩側の照明を維持しながら、照明光51を消光または減光して、対向車Oの搭乗者や対向車線OL側の歩道上の歩行者の眩惑を防止することができる。
本実施形態の走行用前照灯では、車両Cにおける車両中心線よりも対向車線側(搭乗者から見て右側)の部位に設置する複数の光源セグメントのうち、自車線CLまたは自車線CLよりも反対向車線側(搭乗者から見て左側)を指向して光51、52、60、70を照射する光源セグメント(第五光源セグメント、第六光源セグメント、第七光源セグメント)の数を、対向車線側(搭乗者から見て右側)を指向して光80を照射する光源セグメント(第八光源セグメント)の数よりも多くしている。
これにより、対向車Oの搭乗者の眩惑を回避するべく対向車Oに向けて照明光10、20、31、32、40、80を照射する光源セグメントを消灯したとしても、点灯状態にある他の光源セグメントが、車両Cの前方(特に、自車線CLの右半部)を必要十分に照明することができる。換言すれば、対向車Oが存在する状況下において、消灯する光源セグメントの個数を減らし、点灯させて自車線CL及び自車線CLの路肩を照明する光源セグメントの個数を増すことができる。従って、夜間走行における障害物の視認性が改善し、ひいては夜間走行の安全性が向上する。そして、照明光量を増すために多数個の光源セグメントを車両Cに設置する必要はなく、低コストで有用な配光可変型前照灯システムを構築することが可能となる。
加えて、車両Cの対向車線側の部位に設置した光源セグメントが車両中心線よりも反対向車線側、即ち自車線CLないし自車線CLの路肩を照らす一方、車両Cの反対向車線側の部位に設置した光源セグメントが車両中心線よりも対向車線側、即ち対向車線OLないし対向車線OLの路肩を照らすというように、光軸がクロスする配光パターンと採用したことから、先行車Fがある程度の距離まで接近してきたとしても、多くの光源セグメントを消灯せず点灯させた状態に維持することが可能となる。遠方に位置する先行車Fがカーブに差し掛かったときにも、光源セグメントが放つ照明光が当該先行車Fに当たりにくく、当該先行車Fの搭乗者を眩惑させない。
並びに、本実施形態の走行用前照灯は、車両Cにおける車両中心線よりも反対向車線側(搭乗者から見て左側)の部位に設置する複数の光源セグメントとして、路面と平行な方向を指向して光10、20を照射する光源セグメントである第一光源セグメント及び第二光源セグメントと、路面と交差する斜め下方を指向して光40を照射し、車両Cの前方50mの地点から100mの地点までの路面を光40の照射範囲に含む光源セグメントである第四光源セグメントとを備えている。
このようなものであれば、遠方の先行車Fの存在を検知したときに、直ちに車両Cの前方の照明を走行用前照灯からすれ違い用前照灯に切り換える必要がなくなる。即ち、先行車Fとの距離が100m程度に接近するまでは、第四光源セグメントを消灯せず点灯させた状態に維持して、その照明範囲40を照明し続けることが可能となる。ひいては、走行用前照灯の照明範囲10、20からすれ違い用前照灯の照明範囲90への急変を回避できる。
車両Cの前方40m付近の路面に向けて光を照射するすれ違い用前照灯では、車両Cの前方50m以遠の地点に存在する障害物を照明することができない。先行車Fの搭乗者を眩惑させないために、走行用前照灯を使用せずすれ違い用前照灯を使用することは、夜間の走行中に前方の障害物の発見が遅れるリスクを増大させる。本実施形態のように、走行用前照灯の構成要素として、路面と交差する斜め下方を指向して光40を照射しすれ違い用照明灯による光の照射範囲よりも前方の路面を光40の照射範囲に含む光源セグメント、例えば車両Cの前方50mの地点から100mの地点までの路面を光40の照射範囲に含む光源セグメントを設けておけば、当該光源セグメントを点灯させつつ他の光源セグメントを必要に応じて消灯し、先行車Fの搭乗者の眩惑を回避しながら、車両Cの前方50m以遠の地点に存在する障害物を照明してその視認性を高めることができる。
また、上述の第四光源セグメントは、車載のカメラで撮影した画像を解析して車両Cの前方の障害物の存在を認識し、車両Cが当該障害物に衝突する直前に車両Cを自動で制動する衝突被害軽減ブレーキシステムの性能向上にも寄与する。走行用前照灯に代えてすれ違い用前照灯を点灯させる場合と、走行用前照灯の第四光源セグメントを点灯させる場合とでは、後者の方がより遠方の障害物を照明することが可能であり、その分だけシステムが早期に障害物の存在を認識するに至り、特に高速走行時の障害物への衝突回避の確実性が増すことになる。
自車線CLの路肩または対向車線OLの路肩を指向して光31、32、51、52を照射する光源セグメント(第三の光源セグメント及び第五の光源セグメント)は複数の光源L1、L2を具備しており、そのうちの一方の光源L1により当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hよりも上方の領域を照明し、他方の光源L2により当該光源セグメントと同等の高さに位置する水平面Hよりも下方の領域を照明するようにしている。これにより、前者の光源L1から放たれる照明光31、51を適宜消光しまたは減光することが可能となり、照明光31、51が車両C、Oの搭乗者や歩道上の歩行者を眩惑させる問題を有効に回避できるようになる。
配光可変型前照灯システムを制御するECUは、自車の前方に他の車両、例えば対向車Oや先行車Fの出現を認識したときに、その前方車両を指向する光源セグメントを消灯し、または当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも減少させることで、前方車両の搭乗者の眩惑を防止する。
特に、本実施形態では、図11に示すように、前方車両(対向車O)を指向する光源セグメントによる照明範囲80の外側縁部(図11及び図12においてハッチングを付して表す)81に前方車両が存在する間は、当該光源セグメントを消灯せず、当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも少ない(が0でない)目標光量まで減光する。具体的には、当該光源セグメントの光源に印加する電流の量(または、PWM制御による印加電流のDUTY比)を平常よりも減少させる。これにより、当該光源セグメントがある一定の照度(例えば、一般的に眩しく感じる一ルクスの照度)を与える範囲(図11において網点を付して表す)が縮小する。結果、当該光源セグメントの照明範囲80の外側縁部81に位置する前方車両の搭乗者に強い光束が向かわず、前方車両の搭乗者を眩惑させずに済む。
しかして、図12に示すように、前方車両を指向する光源セグメントの照明範囲80の外側縁部81よりも内側の領域82に前方車両が進入したときに、はじめて当該光源セグメントを消灯する。具体的には、当該光源セグメントの光源に印加する電流の量(または、印加電流のDUTY比)を0とする。
このようなものであれば、前方車両が光源セグメントの照明範囲80の外側縁部81に対して出たり入ったりを繰り返したとしても、当該光源セグメントは消灯しない。従って、車両Cの前方を照明する照明光の明滅を抑制することができ、車両Cの搭乗者に負担や疲労を与えない。
図11及び図12では、照明光80を照射する第八光源セグメントを例として図示し、それ以外の光源セグメントの照明範囲の図示を省略しているが、第八光源セグメント以外の光源セグメントについても、その照明範囲の外側縁部に前方車両が位置するときには当該光源セグメントを消灯せずに放射する光束の量を平常よりも減少させ、その照明範囲の外側縁部よりも内側に前方車両が進入したときに当該光源セグメントを消灯するように制御することは言うまでもない。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。光源セグメントの個数や配光パターンが、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。各光源セグメントから放たれる光の照射範囲(の角度、光軸の向き)は、照明光源のパワーに応じて調整する。
その他、各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両に装備される走行用前照灯に適用することができる。
10…第一光源セグメントの照明光
20…第二光源セグメントの照明光
31、32…第三光源セグメントの照明光
40…第四光源セグメントの照明光
51、52…第五光源セグメントの照明光
60…第六光源セグメントの照明光
70…第七光源セグメントの照明光
80…第八光源セグメントの照明光
A…車両中心線を含み車両の進行方向と平行な鉛直面
C…車両
CL…自車線
F…先行車(前方車両)
H…光源セグメントと同等の高さに位置する水平面
L1、L2…光源
O…対向車(前方車両)
OL…対向車線

Claims (1)

  1. 前方車両が出現した場合に、車両の前方を照明する複数の光源セグメントのうちの前方車両を指向する光源セグメントを消灯しまたは当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも減少させるものであり、
    当該光源セグメントによる照明範囲の外側縁部に前方車両が位置する間は当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも減少させ、その照明範囲の外側縁部よりも内側に前方車両が進入したときに当該光源セグメントを消灯する車両の走行用前照灯。
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