JP6637708B2 - 電子写真機器用導電性組成物および電子写真機器用導電性ロール - Google Patents

電子写真機器用導電性組成物および電子写真機器用導電性ロール Download PDF

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Description

本発明は、電子写真機器用導電性組成物および電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器では、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが用いられている。
電子写真機器の導電性ロールは、軸体の外周に導電性ゴム弾性体層を有する。導電性ゴム弾性体層は、成形金型を用いて成形される。
特許第4348776号公報
成形金型を繰り返し使用すると、ゴム由来と思われる汚れが金型内面に堆積する。金型内面に堆積した汚れは、成形金型を用いて成形される導電性ゴム弾性体層の表面に付着して、導電性ゴム弾性体層の表面を汚染する。金型内面に汚れが堆積しやすいと、金型内面の洗浄や再めっきによる再生などのメンテナンスを高頻度で行う必要があり、生産性や収益性の面で課題となる。
本発明が解決しようとする課題は、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れを低減して生産性を向上させた電子写真機器用導電性組成物および電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用導電性組成物は、下記の(a)〜(d)を含有することを要旨とするものである。
(a)ゴムポリマー
(b)過酸化物架橋剤
(c)安定ラジカル化合物
(d)有機金属化合物
前記(a)は、ニトリルゴムを含むことが好ましい。前記(c)は、下記の式(1)または式(2)からなる安定ラジカル化合物であることが好ましい。前記(c)は、ピペリジニルオキシラジカル化合物であることが好ましい。前記(d)は、有機亜鉛化合物であることが好ましい。前記(a)は、極性ゴムと非極性ゴムを含むことが好ましい。
Figure 0006637708
式(1)中、Rは、炭素数3〜10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、環上に他の有機基を有しても良い。
Figure 0006637708
式(2)中、R、Rは、炭素数3〜15のアルキル基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
そして、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、上記の電子写真機器用導電性組成物の架橋体からなるゴム弾性体層を軸体の外周に有することを要旨とするものである。
本発明に係る電子写真機器用導電性組成物によれば、組成物中に含まれる汚染成分が(d)に吸着して金型内面に接触する汚染成分の量が低減するとともに、(c)により架橋時間が短くなることで汚染成分が金型内面に接触する時間が短くなるため、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する。これにより、生産性が向上する。
(a)がニトリルゴムを含む場合には、組成物中に含まれる汚染成分による金型内面の汚れが特に多い。このような場合にも、本発明によれば、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減し、生産性が向上する。(c)が上記の式(1)または式(2)からなる安定ラジカル化合物であると、高温で短時間架橋が可能となり、架橋時間が短くなることで繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する効果により優れる。(c)がピペリジニルオキシラジカル化合物であると、高温で短時間架橋が可能となり、架橋時間が短くなることで繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する効果により優れる。(d)が有機亜鉛化合物であると、組成物中に含まれる汚染成分を吸着して金型内面に接触する汚染成分の量を低減する効果により優れる。(a)が極性ゴムと非極性ゴムを含む場合には、非極性ゴムの影響で組成物中に含まれる汚染成分による金型内面の汚れが特に多い。このような場合にも、本発明によれば、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減し、生産性が向上する。
そして、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールによれば、ゴム弾性体層が本発明に係る電子写真機器用導電性組成物の架橋体からなることから、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減し、生産性が向上する。
本発明の一実施形態係る電子写真機器用導電性ロールの周方向断面図である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る電子写真機器用導電性組成物(以下、本組成物ということがある。)は、下記の(a)〜(d)を含有する。本組成物は、未架橋のゴム組成物である。
(a)ゴムポリマー
(b)過酸化物架橋剤
(c)安定ラジカル化合物
(d)有機金属化合物
(a)ゴムポリマーとしては、ゴムそのものがイオン導電性を示すイオン導電性ゴム(極性ゴム)、ゴムそのものはイオン導電性を示さないゴム(非極性ゴム)が挙げられる。(a)ゴムポリマーは、必要に応じてイオン導電剤や電子導電剤が配合されて導電性ゴムとされるものである。導電性ゴムとしては、ゴムそのものがイオン導電性を示すイオン導電性ゴム、そのイオン導電性ゴムにさらにイオン導電剤を配合したもの、そのイオン導電性ゴムにさらに電子導電剤を配合したもの、そのイオン導電性ゴムにさらにイオン導電剤および電子導電剤を配合したもの、ゴムそのものはイオン導電性を示さないゴムにイオン導電剤あるいは電子導電剤またはその両方を配合したものなどが挙げられる。
ゴムそのものがイオン導電性を示すイオン導電性ゴムとしては、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム、NBR)、エポキシ化天然ゴムなどが挙げられる。これらのゴムは、極性基を有するため、ゴムそのものがイオン導電性を示すことができる。これらのゴムは、ゴムそのものがイオン導電性を示すことから、ゴムそのものの体積抵抗率が比較的低い。このため、低抵抗にしやすく、導電性ロールに求められる導電性を有利に発現させることができる。したがって、ゴムそのものがイオン導電性を示すイオン導電性ゴム(極性ゴム)をベースゴムとして用いることが好ましい。極性ゴムのうちでは、価格面、耐熱性などの観点から、NBRが好ましい。
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などが挙げられる。これらのうちでは、エチレンオキサイドを共重合成分として含むECO、GECOは、エチレンオキサイドを共重合成分として含まないものと比べて低抵抗体が得られやすい点でより好ましい。また、アリルグリシジルエーテルを共重合成分として含むGCO、GECOは、二重結合を有するため、アリルグリシジルエーテルを共重合成分として含まないものと比べて耐ヘタリ性を向上できる点でより好ましい。
ゴムそのものはイオン導電性を示さないゴム(非極性ゴム)としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)などが挙げられる。
(a)ゴムポリマーは、極性ゴムだけで構成されていてもよいし、非極性ゴムだけで構成されていてもよいし、極性ゴムと非極性ゴムを組み合わせて構成されていてもよい。極性ゴムと非極性ゴムを組み合わせて構成すると、低硬度と低ヘタリ性の両立などの高機能を発現させやすい。
(b)過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤が挙げられる。
過酸化物架橋剤としては、分解温度が比較的高く、より高温で成形しやすくできるなどの観点から、蓄熱貯蔵試験(BAM式:SADT)における分解温度が60℃以上で、1分間半減期温度が150℃以上であることが好ましい。より好ましくは1分間半減期温度が160℃以上、さらに好ましくは1分間半減期温度が170℃以上である。一方、架橋速度に優れるなどの観点から、1分間半減期温度が200℃以下であることが好ましい。より好ましくは1分間半減期温度が190℃以下、さらに好ましくは1分間半減期温度が180℃以下である。
好ましい過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルなどが挙げられる。パーオキシケタールとしては、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレレートなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、ジ(2−tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。パーオキシエステルとしては、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ブチルペルオキシラウレート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネートなどが挙げられる。
過酸化物架橋剤の含有量は、低硬度にしやすいなどの観点から、過酸化物原体量換算で(a)ゴムポリマー100質量部に対し、6質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。また、ゴムの架橋度に優れ、耐ヘタリ性を向上するなどの観点から、過酸化物原体量換算で(a)ゴムポリマー100質量部に対し、0.2質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上である。(a)ゴムポリマーとは、イオン導電剤および電子導電剤を含まない(a)ゴムポリマーそのものをいう。
(c)安定ラジカル化合物は、過酸化物架橋におけるラジカル捕捉剤として機能する。所定温度まで架橋反応が進行するのを抑え、高温で高速に架橋反応を進行させることで、架橋時間を短くすることができる(熱履歴を少なくすることができる)。(c)により架橋時間が短くなることで汚染成分が金型内面に接触する時間が短くなるため、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する。
(c)安定ラジカル化合物としては、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)、カルビノキシルラジカル化合物や下記の式(1)の化合物や下記の式(2)の化合物などが挙げられる。これらのうちでは、化合物の入手のしやすさ、価格、ラジカルの捕捉能、保管安定性などの観点から、下記の式(1)の化合物がより好ましい。
Figure 0006637708
式(1)中、Rは、炭素数3〜10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、環上に他の有機基を有しても良い。
Figure 0006637708
式(2)中、R、Rは、炭素数3〜15のアルキル基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
式(1)の化合物としては、下記の式(3)で表されるピペリジニルオキシラジカル化合物や、ピロリジニルオキシラジカル化合物、イミダゾリニルオキシラジカル化合物、ピロリニルオキシラジカル化合物などが挙げられる。これらのうちでは、高温で短時間架橋が可能となり、架橋時間が短くなることで繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する効果により優れる、保管安定性、価格面などの観点から、ピペリジニルオキシラジカル化合物がより好ましい。
Figure 0006637708
〜Rとしては、水素、炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。Rとしては、水素、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、アリール基、アセトキシ基、ベンジルオキシ基、カルボン酸基、アセトアミド基、アルデヒド基などが挙げられる。
ピペリジニルオキシラジカル化合物として好ましいものは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルなどが挙げられる。これらのうちでは、ゴムの成形温度に対し融点が最適範囲内にある事や、ラジカル捕捉能、保管安定性、価格面などの観点から、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルがより好ましい。
式(2)の化合物としては、ジアリールアミン−N−オキシル、アルキルアリールアミン−N−オキシル、ジアルキルアミン−N−オキシルなどが挙げられる。これらのうちでは、ラジカルの捕捉能、保管安定性、価格面などの観点から、ジアリールアミン−N−オキシルがより好ましい。
(c)安定ラジカル化合物の含有量は、架橋時間を短くする効果に優れる、耐老化防止性に優れるなどの観点から、(a)ゴムポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。また、ゴムの架橋度に優れ、耐ヘタリ性に優れるなどの観点から、(a)ゴムポリマー100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましい。より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。(a)ゴムポリマーとは、イオン導電剤および電子導電剤を含まない(a)ゴムポリマーそのものをいう。
(d)有機金属化合物は、組成物中に含まれる汚染成分を吸着して金型内面に接触する汚染成分の量を低減する。(d)有機金属化合物の金属は、金型基材の金属や基材表面に施されるめっきに使用される金属よりイオン化傾向が大きい方が有利である。金属種としては、一般的なめっきに使用されるクロムやニッケルよりイオン化傾向の大きい金属である亜鉛、マンガン、ジルコニウム、アルミニウムなどが特に有効である。(d)有機金属化合物の金属としては、汚染成分の吸着能、価格などの観点から、亜鉛がより好ましい。すなわち、有機亜鉛化合物がより好ましい。(d)有機金属化合物の有機基としては、カルボン酸基などが好ましい。カルボン酸基としては、炭素数1〜18のカルボン酸基が好ましい。より好ましくは炭素数3〜12のカルボン酸基である。炭素数の増加に伴い、(d)有機金属化合物がブリードしやすくなるからである。また、炭素数の減少に伴い、(d)有機金属化合物が揮発しやすくなるからである。
(d)有機金属化合物の含有量は、組成物中に含まれる汚染成分を吸着する効果に優れるなどの観点から、(a)ゴムポリマー100質量部に対し、0.05質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、ゴムの架橋度に優れ、耐ヘタリ性に優れるなどの観点から、(a)ゴムポリマー100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましい。より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。(a)ゴムポリマーとは、イオン導電剤および電子導電剤を含まない(a)ゴムポリマーそのものをいう。
本組成物においては、必要に応じて、イオン導電剤、電子導電剤、滑剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
イオン導電剤としては、電子写真機器分野で使用されるものであれば特に限定されるものではない。好ましいものとしては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、界面活性剤などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
第四級アンモニウム塩あるいは第四級ホスホニウム塩としては、例えば、炭素数1〜18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものであって、ハロゲンイオン、ClO 、BF 、SO 2−、HSO 、CSO 、CFCOO、CFSO 、(CFSO、PF 、(CFCFSO、CF(CFSO 、(CFSO、CF(CFCOOなどの陰イオンを含むものを示すことができる。
ホウ酸塩としては、例えば、炭素数1〜18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものであって、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンを含むものを示すことができる。
より具体的には、例えば、トリブチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩、テトラブチルアンモニウムハライド(クロライド、ブロマイド、ヨーダイド)、テトラブチルアンモニウムパークロレート等の第四級アンモニウム塩、トリブチルメチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の第四級ホスホニウム塩、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウムなどの過塩素酸塩、有機ホウ素錯体などを挙げることができる。
イオン導電剤の含有量としては、(a)ゴムポリマー100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.2〜3質量部の範囲内、さらに好ましくは0.3〜2質量部の範囲内である。
電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)などが挙げられる。電子導電剤の含有量としては、(a)ゴムポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.2〜7質量部の範囲内、さらに好ましくは0.3〜5質量部の範囲内である。
以上の構成の本組成物は、電子写真機器用導電性ロールにおけるゴム弾性体層の材料として好適に用いることができる。そして、本発明に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、導電性ロールということがある。)は、本組成物の架橋体からなるゴム弾性体層を軸体の外周に有するものからなる。図1には、本発明の一実施形態に係る導電性ロールを示す。図1に示す導電性ロール10は、軸体12の外周にゴム弾性体層14が1層設けられた構成を備える。
ゴム弾性体層14は、軸体12の外周に未架橋の本組成物をロール状に成形し、成形された未架橋の本組成物を過酸化物架橋することにより形成される。ゴム弾性体層14は、成形金型を用いて成形される。
成形金型は、基材に金属材料などが用いられる。金属材料としては、S55Cなどの炭素鋼材、SACM645などのアルミニウムクロムモリブデン鋼材、A5056などのアルミニウム合金、アルミニウムなどが挙げられる。成形金型は、メンテナンスなどを考慮して、基材の表面にめっきが施されることがある。めっきとしては、ニッケルめっき、クロムめっき、亜鉛めっきなどが挙げられる。つまり、基材あるいはめっきによって金型内面には金属が現れている。
本組成物中には、不可避的にあるいは必然的に、成形金型の金型内面を汚染する汚染成分が含まれる。このような汚染成分としては、(a)ゴムポリマー中に微量に含まれる不純物である、S,N,Oから選択される少なくとも1種の元素を含む化合物が挙げられる。汚染成分は、S,N,Oなどの官能基によって成形金型の金型内面の金属と塩を形成して吸着する。これにより、金型内面が有機化してゴム成分の付着が促進される。そして、成形金型を繰り返し使用すると、ゴム由来と思われる汚れが金型内面に堆積する。金型内面に堆積した汚れは、成形金型を用いて成形されるゴム弾性体層14の表面に付着して、ゴム弾性体層14の表面を汚染する。金型内面に汚れが堆積しやすいと、金型内面の洗浄や再めっきによる再生などのメンテナンスを高頻度で行う必要があり、生産性や収益性の面で課題となる。
これに対し、本組成物によれば、組成物中に含まれる汚染成分が(d)に吸着して成形金型の金型内面に接触する汚染成分の量が低減するとともに、(c)により架橋時間が短くなることで汚染成分が金型内面に接触する時間が短くなるため、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する。これにより、生産性が向上する。(d)および(c)のいずれか一方のみを含有する組成物では、上記課題を解決できない。(d)および(c)の両方を含有することで、上記課題を解決することができる。
(a)がニトリルゴムを含む場合には、組成物中に含まれる汚染成分による金型内面の汚れが特に多い。このような場合にも、本発明によれば、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減し、生産性が向上する。(c)がピペリジニルオキシラジカル化合物であると、高温で短時間架橋が可能となり、架橋時間が短くなることで繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減する効果により優れる。(d)が有機亜鉛化合物であると、組成物中に含まれる汚染成分を吸着して金型内面に接触する汚染成分の量を低減する効果により優れる。(a)が極性ゴムと非極性ゴムを含む場合には、非極性ゴムの影響で組成物中に含まれる汚染成分による金型内面の汚れが特に多い。このような場合にも、本発明によれば、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減し、生産性が向上する。
そして、導電性ロール10によれば、ゴム弾性体層14が本組成物の架橋体からなることから、繰り返しの成形によって金型内面に堆積する汚れが低減し、生産性が向上する。
導電性ロール10において、軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
ゴム弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの範囲内である。ゴム弾性体層14の体積抵抗率(100V印加時)は、好ましくは1×10〜1×10Ω・cm、より好ましくは1×10〜1×10Ω・cm、さらに好ましくは1×10〜1×10Ω・cmの範囲内である。耐ヘタリ性に優れるなどの観点から、ゴム弾性体層14の圧縮永久歪は好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。低硬度であるなどの観点から、ゴム弾性体層14の硬さ(MD−1硬度)は、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、さらに好ましくは50°以下である。
本発明において、導電性ロールは、図1に示すように、軸体12と1層のゴム弾性体層14のみで構成されていてもよいし、1層のゴム弾性体層14以外の他の層をさらに有する構成であってもよい。他の層としては、表層や中間層などが挙げられる。表層は、導電性ロールの表面に現れる層であり、ロール表面の保護、表面特性の付与などの目的で設けられる。中間層は、軸体12と1層のゴム弾性体層14との間や1層のゴム弾性体層14と表層の間などに1層以上設けられる。中間層は、導電性ロールの電気抵抗の調整、密着性の向上、成分の他への拡散防止などの目的で設けられる。
他の層として表層を設けない場合には、ゴム弾性体層14の表面を改質する表面改質処理を施すことにより、表層を設ける場合と同様の機能を付与してもよい。表面改質方法としては、UVや電子線を照射する方法、ゴム弾性体層14の不飽和結合やハロゲンと反応可能な表面改質剤、例えば、イソシアネート基、ヒドロシリル基、アミノ基、ハロゲン基、チオール基などの反応活性基を含む化合物と接触させる方法などを挙げることができる。
表層材料としては、ウレタン樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタアクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキサイド(変性ポリフェニレンエーテル)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアリルエーテルニトリル、ニトリルゴム、ウレタンゴム、これらを架橋した樹脂などが挙げられる。表層には、イオン導電剤や電子導電剤、各種添加剤を必要に応じて添加することができる。表層は、ゴム弾性体層14や中間層の外周に表層形成用組成物を塗工するなどの方法により形成することができる。表層には、必要に応じて、架橋処理が施される。
中間層の材料としては、ヒドリンゴム(CO、ECO、GCO、GECO)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、ウレタン系エラストマー、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、などが挙げられる。中間層には、イオン導電剤や電子導電剤、各種添加剤を必要に応じて添加することができる。中間層は、射出成形法、押出成形法などの方法により、ゴム弾性体層14の外周などに中間層形成用組成物を成形することにより形成することができる。中間層には、必要に応じて架橋処理が施される。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
<導電性組成物の調製>
ニトリルゴム100質量部、過酸化物架橋剤(パークミルD40)3質量部(原体量換算では1.2重量部)、安定ラジカル化合物<1>0.1質量部、有機金属化合物<1>1.0質量部、イオン導電剤0.5質量部を攪拌機により撹拌、混合して、導電性組成物を調製した。
<導電性ロールの作製>
成形金型に芯金(直径6mm)をセットし、120℃で上記導電性組成物を注入し、175℃で10分加熱することにより、導電性組成物を過酸化物架橋させた。その後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚み2mmのゴム弾性体層を形成した。これにより、実施例1の導電性ロールを作製した。
(実施例2〜4)
安定ラジカル化合物を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の導電性ロールを作製した。
(実施例5〜6)
安定ラジカル化合物の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5〜6の導電性ロールを作製した。
(実施例7〜9)
有機金属化合物を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7〜9の導電性ロールを作製した。
(実施例10〜11)
有機金属化合物の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例10〜11の導電性ロールを作製した。
(実施例12)
ニトリルゴムに代えてヒドリンゴム(ECO)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例12の導電性ロールを作製した。
(実施例13)
ニトリルゴムに加えてイソプレンゴム(IR)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例13の導電性ロールを作製した。
(比較例1)
安定ラジカル化合物を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の導電性ロールを作製した。
(比較例2)
有機金属化合物を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例2の導電性ロールを作製した。
(比較例3)
安定ラジカル化合物および有機金属化合物を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例3の導電性ロールを作製した。
この際、使用した各成分は、以下の通りである。
(a)ゴムポリマー
(a1)ニトリルゴム(NBR)[JSR社製、「N237H」]
(a2)ヒドリンゴム(ECO)[ゼオン社製、「Hydrin−T3106」]
(a3)非極性ゴム:イソプレンゴム(IR)、[JSR社製「JSR IR2200」]
(b)過酸化物架橋剤
(b1)パークミルD40(過酸化物)[日油社製、1分間半減期温度175.2℃]
(c)安定ラジカル化合物
(c1)安定ラジカル化合物<1>:TEMPOフリーラジカル(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)
(c2)安定ラジカル化合物<2>:N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル
(c3)安定ラジカル化合物<3>:ガルビノキシルフリーラジカル
(c4)安定ラジカル化合物<4>:DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)
(d)有機金属化合物
(d1)有機金属化合物<1>:2−エチルヘキサン酸亜鉛
(d2)有機金属化合物<2>:メタクリル酸亜鉛
(d3)有機金属化合物<3>:ステアリン酸亜鉛
(d4)有機金属化合物<4>:2−エチルヘキサン酸アルミニウム
・イオン導電剤(テトラブチルアンモニウムブロマイド、ライオン・アクゾ(株)製「TBAB−100」)
調製した導電性組成物を用い、金型汚染の評価を行った。評価方法および評価基準は以下の通りである。導電性組成物の組成(質量部)および評価結果を以下の表に示す。
(金型汚染の評価)
調製した導電性組成物を用い、導電性ロールの作製を300回繰り返し行った。その後、金型内面を目視にて観察し、汚染成分の付着量を評価した。汚染成分の付着がほとんど見られなかった場合を特に良好「◎」、汚染成分の付着が軽微であった場合を良好「○」、汚染成分の付着が著しかった場合を不良「×」とした。
Figure 0006637708
比較例1では、導電性組成物において有機金属化合物を配合しているが安定ラジカル化合物を配合していない。比較例2では、導電性組成物において安定ラジカル化合物を配合しているが有機金属化合物を配合していない。比較例3では、導電性組成物において安定ラジカル化合物および有機金属化合物の両方を配合していない。そして、比較例1〜3では、金型汚染の評価において劣っている。これに対し、実施例では、導電性組成物において安定ラジカル化合物および有機金属化合物の両方を配合している。そして、実施例では、金型汚染の評価において優れている。これらから、導電性組成物において安定ラジカル化合物および有機金属化合物の両方を配合することにより、金型汚染が抑えられることがわかる。
また、実施例1〜4から、安定ラジカル化合物のうちでも、TEMPOフリーラジカルを用いたときが最も金型汚染を抑制する効果に優れることがわかる。また、実施例1、9から、有機金属化合物のうちでも、有機亜鉛化合物を用いたときが最も金型汚染を抑制する効果に優れることがわかる。また、実施例1、7、8から、有機亜鉛化合物のうちでも、炭素数3〜12のカルボン酸亜鉛を用いたときが最も金型汚染を抑制する効果に優れることがわかる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
10 電子写真機器用導電性ロール
12 軸体
14 ゴム弾性体層

Claims (4)

  1. 下記の(a)〜(d)を含有し、前記(a)が、ニトリルゴムまたはヒドリンゴムを含み、前記(c)が、下記の式(1)または式(2)からなる安定ラジカル化合物であり、前記(d)が2−エチルヘキサン酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛であることを特徴とする電子写真機器用導電性組成物。
    (a)ゴムポリマー
    (b)過酸化物架橋剤
    (c)安定ラジカル化合物
    (d)有機金属化合物
    Figure 0006637708
    式(1)中、Rは、炭素数3〜10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、環上に他の有機基を有しても良い。
    Figure 0006637708
    式(2)中、R、Rは、炭素数3〜15の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
  2. 前記(c)が、ピペリジニルオキシラジカル化合物であることを特徴とする請求項に記載の電子写真機器用導電性組成物。
  3. 前記(a)が、極性ゴムと非極性ゴムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性組成物。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性組成物の架橋体からなるゴム弾性体層を軸体の外周に有することを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
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