JP6634871B2 - 透過型電子顕微鏡用試料の作製方法および確認方法 - Google Patents
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Description
この確認後、試料片を当該FIB装置から取り出し、TEM装置内にセットし、当該試料片に対してTEM観察を行う。
その一方で、非特許文献2のトリプルビーム型FIB装置によるダメージ層の除去方法を採用すれば、非特許文献1のイオンシニング法とは異なり、とにかくArイオンビームによって当該ダメージ層を除去するため試料の材質ごとに最適条件を見出す必要がなくなり、手間だけを鑑みると非特許文献1よりも効率的にTEM用試料を作製できる。
・試料片からダメージ層の基となったGaイオンを除去する工程
・試料片の表面においてダメージ層の基となったGaイオンの存否を正確に確認する工程
を実行可能な手法を模索した。
本発明の第1の態様は、
透過型電子顕微鏡用試料の作製方法であって、
所定のイオンXを用いた集束イオンビーム装置により試料から摘出された試料片において当該イオンXを含有する部分を除去する除去工程と、
前記除去工程に際し、前記試料片に対して電子線を照射した際に生じるオージェ電子を検出することにより、前記試料片における前記イオンXの有無または含有量を確認する確認工程と、
を有する、透過型電子顕微鏡用試料の作製方法である。
前記除去工程および前記確認工程は、前記イオンXとは異なるイオンYを用いたイオンエッチング機能を備えた一つのオージェ電子分光装置内に配置したまま行う。
前記イオンXはGaイオンであり、前記イオンYは希ガスのイオンである。
透過型電子顕微鏡用試料の確認方法であって、
所定のイオンXを用いた集束イオンビーム装置により試料から摘出された試料片において当該イオンXを含有する部分が除去された試料片を透過型電子顕微鏡に設置する前に、前記試料片に対して電子線を照射した際に生じるオージェ電子を検出することにより、前記試料片における前記イオンXの有無または含有量を確認する確認工程と、
を有する、透過型電子顕微鏡用試料の確認方法である。
1.TEM用試料の作製方法
1−1.準備工程
1−2.除去工程
1−3.確認工程(確認方法)
2.実施の形態における効果
なお、本明細書におけるTEM装置は、透過型電子顕微鏡に係る装置を含むことはもちろん、同じく透過型を採用した技術(例えば走査透過型電子顕微鏡(STEM))を採用した装置を含む。
本実施形態においては、主に以下の工程を行う。以下、各工程について説明する。
本工程においては、上記の除去工程および確認工程を行うまでの段階、具体的に言うと、所定のイオンX(例えばGaイオン)を用いた集束イオンビーム装置により試料から試料片を摘出し、当該試料片に対して電子線が透過するまで薄片化する工程を行う。なお、この薄片化に係る工程は、上述の特許文献1や後述の実施例の項目に記載の装置を使用すればよく、詳細については省略する。
(1)試料をFIB用試料ホルダーに固定する工程
(2)FIB用試料ホルダーをFIBに導入する工程
(3)試料の任意の場所にデポジションによる保護膜を形成する工程
(4)高エネルギー(エッチングレートの早い)のGaイオンビームを用いて保護膜の周囲を加工(粗加工)する工程
(5)粗加工した試料を60°傾斜して断面方向から試料の下部をエッチングする工程
(6)傾斜を0°に戻してマイクロサンプリング装置によって試料片を吊り上げる工程
(7)吊り上げた試料片をTEM観察用の試料固定台(以降、単にTEM用試料固定台。)に接着する工程
(8)接着した試料片を電子線が透過するまで薄片化する工程
本工程においては、所定のイオンXを用いた集束イオンビーム装置により試料から摘出された試料片において当該イオンXを含有する部分を除去する。こうすることにより、FIB装置による試料片sの採取に伴うダメージ層dを除去することができ、TEM観察において像質を低下させずに済む。
具体例を挙げると、ArやXeを用いたイオンエッチング機能を備えた一つのオージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy:AES)装置1内に試料片sを配置したまま、上記の除去工程と後述の確認工程とを行うのが非常に好ましい。
上記の除去工程に引き続き、本工程であるところの確認工程を行うことに、本実施形態の特徴の一つがある。本工程においては、先の除去工程に際し、試料片sに対して電子線を照射した際に生じるオージェ電子を検出することにより、試料片sにおけるイオンXの有無または含有量を確認する。
このタイミングで確認工程を行い、試料片sにおいてダメージ層dが想定通りに除去されていれば、当該試料片sをTEM用試料固定台ごとTEM装置内に設置する。
もし想定通りに除去されておらずダメージ層dが残存していれば、再び上記の除去工程を行うことになる。ただ、再び除去工程を行うにしても、本実施形態ならば、オージェ電子分光装置内にてこれらの作業を行うことができる。そのため、TEM装置にていちいち確認する作業(ひいては試料片をいちいち真空引きする作業)が不要となり、手間が相当省ける。
さらに、ダメージ層d(Gaイオン)の確認方法としては、もちろん元素分析という観点から定性的に確認しても構わない。例えば、後述のAES検出器(図2の符号4)における定性分析機能や、同じく後述のエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDS)検出器(不図示)から元素分布写真を得、これを基にGaイオンの有無を確認しても構わない。
また、上記の各確認方法に加え、後述の二次電子検出器(図2の符号3)にて試料片sを撮像し、その結果からダメージ層dの除去の状況を確認しても構わない。
なお、イオンエッチングに用いるイオン源は、Arが繁用的で入手しやすく、材料においても通常含有されていないことから元素分析の観点からも好ましい。
(9)薄片化した試料をTEM用試料固定台ごと、イオンエッチング機能を備えた分析装置用試料ホルダーに固定する工程
(10)試料ホルダーをイオンエッチング機能を備えたオージェ電子分光装置に導入する工程
(11)試料片の表面をArイオンにてイオンエッチングしてダメージ層を除去すると共に試料片に対して電子線を照射して生じたオージェ電子分光のスペクトルからGaについての元素分析を行い、ダメージ層の除去が完了しているか否かを判断する工程
本実施形態によれば、主に以下の効果を奏する。
上記手段を利用した本発明によれば、イオンエッチング機能によってダメージ層を除去することができ、元素分析機能によってダメージ層由来のイオンX(例えばGaイオン)を追跡することができる。
また、ダメージ層の除去状態を経時的に捉えられること、二次電子検出器によって像観察することによって試料の状態を確認できること、定量的にダメージ層の除去が判断できること、等から、試料の材質ごとに条件検討や再処理をする必要が無くなり、著しい時間的効率の向上も望める。
さらには、残存したダメージ層の除去に伴う真空状態と大気圧状態の繰り返しも避けられる。例えば、試料片が嫌気性である場合等において、試料の変質を抑制するという効果も得られる。
TEM観察用の試料としてはSiウェハを用い、薄片化処理には日立製FIB装置(FB−2000A)を用いた。また、当該装置のデポジション源としてはカーボン系材料を用いた。
当該装置によって試料片を摘出し、当該試料片を電子線が透過する程度の厚さ(厚さ100nm以下)まで薄片化した。その試料片をAES専用ホルダーに張り付けてAES装置(JEOL製JAMP/9500)内に導入した。
ついで、Arイオン銃によって試料片の表面をエッチングすると共にAESの定性分析(オージェ電子分光スペクトルによるGa由来のピークの有無)によってGaを追跡して検出した。
その結果、Gaの量は、エッチング時間が数十から数分程度で検出下限以下となった。また、本手法によってダメージ層を除去した後の試料片をTEM観察(日立製HF−2200)したところ、ダメージ層由来のコントラストが無くなったことから良質なTEM像が得られた。
なお、TEM観察後、TEM装置に付属していたEDS検出器によって当該試料片に対して元素分析を実施したところ、Gaが検出下限であった。
FIB装置による薄片化した試料片に対し、AES装置でのArイオンエッチングを未実施の状態で、実施例と同様の操作を行った。その結果、ダメージ層由来のコントラストのためにTEM像が不明瞭となり、EDS分析においてGaが顕著に検出された。
以上の結果、本実施例においては、TEM観察を行う前に、TEM用試料である試料片のダメージ層の除去状態を正確に把握できていることがわかった。
また、本発明は、従来とは異なり、TEM観察を行うにあたりいきなりTEM装置内に試料片を配置するのではなく、TEM装置以外にてダメージ層の除去状況を確認したことに技術的意義がある。
上記の内容を鑑みた構成は以下のようになる。
「(電子顕微鏡用の)試料の作製方法であって、
所定のイオンXを用いた集束イオンビーム装置により試料から摘出された試料片において当該イオンXを含有する部分を除去する除去工程と、
前記試料片を分析装置に設置する前に、前記試料片における前記イオンXの有無または含有量を確認する確認工程と、
を有する、(電子顕微鏡用の)試料の作製方法。」
上記の構成ならば、例えば電子顕微鏡等による観察を行う前に、電子顕微鏡用試料である試料片のダメージ層の除去状態を正確に把握しつつ当該ダメージ層の除去が可能となる。また、残存したダメージ層の除去に伴う真空状態と大気圧状態の繰り返しも避けられ、ひいては試料の変質を抑制するという効果があり、別の言い方をすると当該往復に係る試料の変質に係る課題を解決可能となる。
2……電子銃
3……二次電子検出器
4……AES検出器
5……Arイオンビーム銃
6……TEM用試料固定台
S……試料
s……試料片
d……ダメージ層
p……保護膜
X……(Ga)イオンビーム
Y……(Ar)イオンビーム
E……電子線
Claims (2)
- 透過型電子顕微鏡用試料の作製方法であって、
イオンエッチング機能を備えたオージェ電子分光装置内において、
前記オージェ電子分光装置とは異なる装置であってディポディション機能を有する集束イオンビーム装置によって、所定のイオンXを用いて試料から摘出された試料片に対し、前記イオンXとは異なるイオンYによるイオンエッチングにより前記イオンXを含有する部分を除去する除去工程と、
前記除去工程に際し、前記試料片に対して電子線を照射した際に生じるオージェ電子を検出することにより、前記試料片における前記イオンXの有無または含有量を確認する確認工程と、を有し、
前記イオンXはGaイオンであり、前記イオンYは希ガスのイオンである、
透過型電子顕微鏡用試料の作製方法。 - 透過型電子顕微鏡用試料の確認方法であって、
イオンエッチング機能を備えたオージェ電子分光装置内において、
前記オージェ電子分光装置とは異なる装置であってディポディション機能を有する集束イオンビーム装置によって、所定のイオンXを用いて試料から摘出された試料片に対し、前記イオンXとは異なるイオンYによるイオンエッチングにより、前記イオンXを含有する部分が除去された試料片を透過型電子顕微鏡に設置する前に、前記試料片に対して電子線を照射した際に生じるオージェ電子を検出することにより、前記試料片における前記イオンXの有無または含有量を確認する確認工程を有し、
前記イオンXはGaイオンであり、前記イオンYは希ガスのイオンである、透過型電子顕微鏡用試料の確認方法。
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