[第1実施形態]
[腹腔鏡システムの全体構成]
図1に示す、体腔内観察システムの一例である腹腔鏡システム10は、腹腔鏡手術に際して、医師を含む医療スタッフSTが、患者Pの体腔内(より具体的には腹腔内)を観察するために用いられる。腹腔鏡システム10は、内視鏡システムと本発明であるカメラ付きトロカール装置12とを備えている。内視鏡システムは、内視鏡11、プロセッサ18、モニタ19およびコンソール20を備えている。カメラ付きトロカール装置12は、カメラ付きトロカール16と、トロカールシャフト17(図5参照)とで構成される。
カメラ付きトロカール16は、鉗子などの処置具22を体腔内に挿入するための挿入ポートとして利用される挿入器具であるトロカールに、カメラ機能を付加したものである。
プロセッサ18は、内視鏡11によって撮影される腹腔内の内視鏡画像と、カメラ付きトロカール16のカメラによって撮影される腹腔内のトロカール画像のそれぞれに対する画像処理を実行する。プロセッサ18は、内視鏡画像と各トロカール画像とを合成する画像合成機能を有している。図1に示すように、プロセッサ18のモニタ19には、内視鏡画像とトロカール画像の合成画像が表示される。こうした合成画像によって腹腔内の視野が医療スタッフSTに提供される。なお、合成画像を表示する代わりに、またはそれに加えて、内視鏡画像とトロカール画像を、それぞれ独立した表示ウインドウに表示してもよい。
図2にも示すように、内視鏡11はトロカール21を通じて患者Pの腹腔内に挿入される。内視鏡11用のトロカール21(内視鏡用トロカール)は、カメラ付きトロカール16と異なり、カメラが設けられていない通常のトロカールである。トロカール21は内視鏡11を腹腔内に挿入するための挿入ポートとして利用される挿入器具である。トロカール21は、略円筒形状のパイプ部と、パイプ部の基端側に設けられ、パイプ部よりも大径のヘッド部とを有している。トロカール21のパイプ部には、内部を軸方向に貫通する挿通孔が設けられており、挿通孔に内視鏡11が挿通される。
腹腔鏡手術において、各トロカール21、16の腹腔内への挿入に際しては、患者Pの腹壁23の皮膚をメスで切開して切開部26、27が形成される。腹壁23は、皮膚や、脂肪23A(図24A、24B参照)などの皮下組織、並びに筋肉組織で形成される。で形成される。本例において、内視鏡11用の1つのトロカール21と、2つのカメラ付きトロカール16の合計3つのトロカールを使用するため、切開部26、27の数は、内視鏡11用の1つの切開部26と、処置具22用の2つの切開部27の合計3つである。3つの切開部26、27の位置は、例えば、内視鏡11用の切開部26を中央に、その左右に処置具22用の切開部27が設けられる。なお、本例の切開部26、27の数や位置は一例であり、手術の対象部位、使用する処置具の数などによって適宜決められる。
トロカール21は、切開部26に挿入されて、腹壁23に固定される。カメラ付きトロカール16は、2つの切開部27のそれぞれに挿入されて腹壁23に固定される。これにより、トロカール21は、内視鏡11用の挿入ポートとして利用可能になり、カメラ付きトロカール16は、処置具22用の挿入ポートとして利用可能となる。
内視鏡11は、体腔の全体を照明する照明光を発する照明機能とともに、体腔内の所定領域を撮像する撮像機能を有している。一方、カメラ付きトロカール16は、照明機能は有しておらず、撮像機能のみを有している。このようなカメラ付きトロカール16とすることで、カメラ付きトロカール16と内視鏡11との位置関係によっては、体腔内に余分な光が当たってフレアが発生することを避けることができる。したがって、カメラ付きトロカール16のカメラ部36は、内視鏡11からの照明光で照明された被写体を撮像することとなる。なお、カメラ部36は、内視鏡11からの照明光を利用して撮像を行うことから、内視鏡11からの照明光が照明された状態で、トロカール画像のホワイトバランスを行う必要がある。このトロカール画像のホワイトバランスの詳細については後述する。
図1のモニタ19の画面に示すように、中央のトロカール21に挿入される内視鏡11によって、腹腔内において処置対象の部位全体を俯瞰した視野が提供され、内視鏡11の両側に位置するカメラ付きトロカール16によって、処置具22の先端部22Aを中心としたその周辺の視野が提供される。
図2に示すように、腹腔鏡手術に際しては、炭酸ガスを腹腔内に注入することにより腹腔を拡張する気腹処置が行われる。気腹処置により、腹腔内に処置を施す空間が確保される。通常のトロカール21やカメラ付きトロカール16には、ガス供給装置(図示せず)の送気管が接続される接続口(カメラ付きトロカール16の接続口49については図3、4等参照)が設けられている。ガス供給装置から供給される炭酸ガスは、トロカール21やカメラ付きトロカール16を通じて腹腔内に注入される。
このように、腹腔鏡手術では気腹が行われるため、トロカール21やカメラ付きトロカール16は、それぞれの挿通孔を通じた体腔内から体腔外へのガス漏れを防止するために、挿通孔を気密に封止する気密構造を備えている。カメラ付きトロカール16の気密構造については、後に詳述する。
[内視鏡の概略構成]
図2に示すように、内視鏡11は、例えば、挿入部11Aが金属などの硬質部材で形成された硬性内視鏡である。挿入部11Aの先端部には、腹腔内の被写体(内臓など)に照明光を照射する照明窓と、被写体で反射した反射光を受光して被写体を撮影するカメラユニット28とが設けられている。カメラユニット28は、周知のように、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサなど、受光した光を光電変換する撮像素子(図示せず)と、撮像素子の撮像面に被写体の光学像を結像させる撮影レンズ(図示せず)とを有する。
撮像素子は、例えば、カラー撮像素子であり、撮影画像を、R(Red)画像信号、G(Green)画像信号、B(Blue)画像信号の三色の画像信号として出力する。撮像素子は、動画撮影が可能であり、所定のフレームレートで画像信号を出力する。画像信号は信号線を介してプロセッサ18に順次出力される。
挿入部11A内には、信号線やライトガイドなどが配設される。ライトガイドは、照明窓に光源装置(図示せず)から供給される照明光を導光する。内視鏡11の基端部には、信号線やライトガイドを内部に配設するユニバーサルケーブル(図示せず)の一端が設けられている。ユニバーサルケーブルの他端には、ライトガイドを光源装置に接続するコネクタや、信号線をプロセッサ18に接続するコネクタが設けられている。内視鏡11は、ユニバーサルケーブルを介して、光源装置およびプロセッサ18と接続される。
[カメラ付きトロカール装置の全体構成]
図3〜図7に示すように、カメラ付きトロカール装置12は、カメラ付きトロカール16とトロカールシャフト17で構成される。カメラ付きトロカール16には、トロカールシャフト17が着脱自在に装着される。カメラ付きトロカール16は、円筒形状のパイプ部31と、パイプ部31の基端に設けられるヘッド部32とを備えている。ヘッド部32は、パイプ部31よりも大径な略円筒形状をしている。カメラ付きトロカール16には、パイプ部31の内部を軸方向(Z軸方向)に貫通し、処置具22等が挿通される挿通孔33が設けられている。
[カメラ付きトロカールの概略構成]
図6に示すように、カメラ付きトロカール16は、主要部分が内筒部材16Aと外筒部材16Bとで構成されており、内筒部材16Aの大半が外筒部材16Bに内包される二重構造となっている。内筒部材16Aは、パイプ部内筒31Aと、パイプ部内筒31Aの基端側に設けられたヘッド部内筒32Aとを備えている。パイプ部内筒31Aとヘッド部内筒32Aは、例えば、樹脂製であり、両者は一体に形成されている。外筒部材16Bは、パイプ部外筒31Bと、パイプ部外筒31Bの基端側に設けられたヘッド部外筒32Bとを備えている。本例では、パイプ部外筒31Bとヘッド部外筒32Bは、例えば、樹脂製であり、両者は一体に形成されている。
パイプ部内筒31Aは、その先端部に、リトラクタブル式(格納式)のカメラ部36が設けられている。カメラ部36は、図3に示すように、パイプ部内筒31Aの内部に格納される格納位置と、図4に示すように、パイプ部内筒31Aの外周面から突出する方向にポップアップして展開する展開位置との間で変位自在に設けられている。内筒部材16Aと外筒部材16Bは、軸方向(Z軸方向)に沿って相対的にスライド自在に設けられている。後述するように、パイプ部内筒31Aに対するパイプ部外筒31Bのスライドによってカメラ部36の展開と格納が行われる。
パイプ部外筒31Bの外周面には、滑り止め41が形成されている。滑り止め41は、所望の挿入位置でパイプ部31を腹壁23に固定するためのものである。滑り止め41は、パイプ部外筒31Bの外周面において、Z軸回りの周方向に形成された複数の凹凸がZ軸方向に配列された態様で構成される。滑り止め41は、凹凸が無い部分と比べて摩擦係数が高くなっている。滑り止め41は、パイプ部外筒31BのZ軸方向のほぼ全長に渡って形成されている。そのため、パイプ部外筒31BのZ軸方向のどの位置でも滑り止め41と腹壁23を係合させることができる。この係合により、パイプ部外筒31Bを所望の挿入深さで腹壁23に固定することができる。
図6および図7に示すように、ヘッド部32は、主要部分が、ヘッド部内筒32Aとヘッド部外筒32Bで構成されている。図7に示すように、カメラ付きトロカール16には気密構造ユニット42が内蔵されており、気密構造ユニット42は、ヘッド部内筒32Aに収容される。ヘッド部内筒32Aの基端部分には、基端側の開口部を覆うリアカバー43が取り付けられる。また、ヘッド部内筒32Aには、ガス供給装置が接続される接続口49(図3および図4も参照)が設けられている。上述したとおり、接続口49を通じて炭酸ガスが腹腔内に注入されて、気腹処置が行われる。気密構造ユニット42は、腹腔内から体外へのガス漏れを防止する機能を担う。
また、ヘッド部32には、コネクタ部44が設けられている。コネクタ部44は、プロセッサ18と電気的に接続するための通信ケーブル(図示せず)を接続するためのコネクタである。コネクタ部44は、リアカバー43に設けられており、リアカバー43をヘッド部内筒32Aに取り付けると、ヘッド部32の外周面と対向する位置に配置される。コネクタ部44は、内筒部材16Aと外筒部材16Bの隙間に配設されたフレキシブルケーブル(図示せず)を介してカメラ部36と電気的に接続される。コネクタ部44は、カメラ部36からの画像信号をプロセッサ18に中継するとともに、プロセッサ18からの制御信号をカメラ部36に中継する。
リアカバー43の背面には、トロカールシャフト17や処置具22を挿通するための開口43Eが形成されている。また、リアカバー43のZ軸回りの周方向の外周面には、複数の凹凸で形成された把持部43Dが形成されている。把持部43Dは、ヘッド部内筒32Aを把持して操作する際の滑り止めとして機能する。
また、リアカバー43の外周面には、周方向において約90°の間隔を空けて4つの係合穴43Aが形成されている。ヘッド部内筒32Aの外周面には各係合穴43Aと係合する係合爪35が形成されている。リアカバー43は、係合穴43Aと係合爪35の係合により、ヘッド部内筒32Aに装着される。
各係合穴43Aの両側には、Z軸方向に延びる溝であるすり割り43Fが形成されている。これにより、リアカバー43のうち、係合穴43Aが形成される部分が弾性変形できるようになっている。係合穴43Aと係合爪35が係合する際には、係合穴43Aが形成される部分が、係合爪35に乗り上げるように径方向の外側に弾性変形する。すり割43Fが形成されることによって、係合穴43Aと係合爪35の係合がしやすい。
リアカバー43の基端部分には、周方向に円弧状に延びる嵌合溝43Bが形成されている。嵌合溝43Bは、トロカールシャフト17のハンドル部54に設けられた嵌合爪54A(図6参照)と嵌合する。嵌合溝43Bと嵌合爪54Aとの嵌合により、図3および図4に示すように、トロカールシャフト17がヘッド部内筒32Aに装着される。
図6および図7に示すように、嵌合溝43Bの一部には切り欠き部43Cが形成されており、切り欠き部43Cから嵌合爪54Aを嵌合溝43Bに挿入して、挿入した位置からハンドル部54を軸回りに回転させて嵌合させる。この嵌合完了位置は、後述するトロカールシャフト17の初期位置(図12A、図13A、図3参照)に対応する。
ヘッド部外筒32Bの外周面には、ロック解除操作部材46が配置されている。ロック解除操作部材46は、内筒部材16Aに対する外筒部材16Bのスライドをロックする外筒ロック機構を解除するための操作部である。後述するように、ロック解除操作部材46は、ヘッド部内筒32Aの外周面に設けられた係合部47とともに、外筒ロック機構の構成要素である。係合部47は、ヘッド部内筒32Aの外周面に設けられており、外周面の軸回りの周方向において対向する位置に2箇所、すなわち、周方向において約180°間隔で2箇所配置されている。
ロック解除操作部材46は、ヘッド部外筒32BのZ軸回りの周方向において、2箇所の係合部47と対向する位置に配置される。ロック解除操作は、対向配置された2つのロック解除操作部材46を手で挟み込むようにして同時に操作することにより行われる。ロック解除操作が行われると、内筒部材16Aに対して外筒部材16Bがスライド可能になる。
また、ヘッド部外筒32Bには、基端からさらに後方に向かって延びるカム板51が設けられている。カム板51の外周面には、カム溝52が形成されている。カム板51は、ヘッド部外筒32Bの周方向において対向する位置、すなわち、周方向において約180°間隔で2箇所配置されている。カム板51は、トロカールシャフト17のハンドル部54(図6参照)と係合して、トロカールシャフト17の軸回りの回転を、外筒部材16BのZ軸方向のスライドに変更する。詳しくは後述するが、トロカールシャフト17の回転操作によって、ヘッド部外筒32Bがスライドして、カメラ部36の展開と格納が行われる。
[トロカールシャフトの概略構成]
図3および図4に示すように、トロカールシャフト17は、パイプ部31を体腔へ挿入する際にカメラ付きトロカール16に装着される。トロカールシャフト17をカメラ付きトロカール16から抜き取った状態を示す図5において、トロカールシャフト17は、シャフト部53とシャフト部53の基端に設けられシャフト部53よりも大径なハンドル部54とを備えている。シャフト部53の先端には穿刺部55が設けられている。カメラ付きトロカール16にトロカールシャフト17が装着された状態では、シャフト部53はパイプ部31の挿通孔33に挿通される。この状態では、図3に示すように、シャフト部53は、挿通孔33を貫通して、穿刺部55がパイプ部31の先端から突出して外部に露出する。
図3に示すように、穿刺部55は、Z軸回りの外径が先端で最も小さく、基端側に向かって徐々に大きくなる先細形状となっている。本例では、穿刺部55の形状は、Z軸方向に沿って切断した縦断面(Y−Z断面)において、外周面を示す輪郭線が曲線となる砲弾型である。なお、縦断面において、外周面を示す輪郭線が直線となる円錐形状としてもよい。カメラ付きトロカール16を体腔に挿入する際には、穿刺部55から切開部27(図2参照)に穿刺される。そして、穿刺部55によって切開部27が押し広げられ、押し広げられた切開部27に穿刺部55の後方のパイプ部31が挿入される。
図5に示すように、シャフト部53は、穿刺部55、シャフト部本体56、および連接部57を有している。連接部57は、穿刺部55とシャフト部本体56とを連接する。穿刺部55の最大径と、シャフト部本体56の最大径はほぼ等しく、Z軸方向と直交する横断面(X−Y断面)の断面積はほぼ等しい。対して、シャフト部53の横断面(X−Y断面)において、連接部57の断面積は、穿刺部55およびシャフト部本体56の断面積と比較して、小さく形成されている。連接部57は、シャフト部53の中心軸からオフセットされて配置されている。具体的には、連接部57は、カメラ部36の格納位置から離間する方向に、オフセットされて配置されている。オフセットの詳細については後述する。
トロカールシャフト17を装着した状態では、穿刺部55の後方にカメラ部36が位置する。パイプ部31を体腔内に挿入する際には、カメラ部36はパイプ部31内に格納される。連接部57は、トロカールシャフト17がカメラ付きトロカール16に装着された状態において、穿刺部55の後方にカメラ部36を格納するスペースを確保するために設けられる。
ハンドル部54は、トロカールシャフト17を、カメラ付きトロカール16に装着したり、抜き取ったり、挿入状態で回転させたりする際に把持される。ハンドル部54の外周面には、2つのピン配設板58が設けられている。ピン配設板58は、穿刺部55がある先端側に延びており、カム板51と対向する内周面58Cには、ヘッド部外筒32Bのカム溝52と係合するカムピン59が設けられている。2つのピン配設板58は、2つのカム板51の位置に合わせて、ハンドル部54のZ軸回りの周方向において対向する位置に2箇所、すなわち、周方向において約180°間隔で2箇所配置されている。
より具体的には、2つのピン配設板58は、金型による成形性を考慮して、以下のような形状の工夫がされている。
図8に示すように、2枚のピン配設板58は、Z軸回りの周方向において、カムピン59が180°間隔で配置されるように設けられている。2つのピン配設板58は、カムピン59がピン配設板58の一方の端部側に配置され、かつ、対向する2つのカムピン59を結ぶ結合線Lpに対して直交する方向に延びる延長部分58Eを有している。結合線LPは、カムピン59の突出方向と一致する。
さらに、延長部分58Eは、トロカールシャフト17の回転中心Oに対して点対称となる方向に形成されている。つまり、図8において、右側のピン配設板58の延長部分58Eは、カムピン59の位置から下方に延び、反対に、左型のピン配設板58の延長部分58Eは、カムピン59の位置から上方に延びている。
ピン配設板58における、トロカールシャフト17のZ軸と直交する横断面の形状は、カムピン59側の厚みが厚く、延長部分58Eにおいてカムピン59から離れるほど厚みが薄くなる楔形状をしている。ピン配設板58の内周面58Cは、カムピン59の結合線Lpに対して直交する方向に延びる平面で形成され、ピン配設板58の外周面58Dは、横断面の形状の一部が、回転中心Oを中心とする円(例えばパイプ部31の外周面の同心円)の円弧形状と重なる部分を有する曲面で形成されている。
ピン配設板58をこのような配置および形状とすることにより、金型による成形性がよい。というのも、例えば、結合線Lpの上下に2分割される金型を使用する場合、成形後における2つの金型の抜き取り方向は、結合線Lpと直交する上下方向となる。この場合、ピン配設板58の内周面58Cを、結合線Lpと直交する方向に延びる平面で形成しておけば、2つの金型を上下に抜き取ることが可能となる。
また、ピン配設板58の横断面の形状は、カムピン59側の厚みが厚く、延長部分58Eがカムピン59から離れるほど厚みが薄くなる楔形状をしており、外周面58Dは、横断面の形状の一部が、回転中心を中心とする円の円弧形状と重なる部分を有する曲面で形成されている。すなわち、ピン配設板58の横断面の形状は、金型の抜き取り方向に沿って厚みが薄くなるため、金型の抜き取りにおいて障害とならない。これにより、ピン配設板58の良好な成形性が確保される。
[カメラ部および展開機構]
図9A、9Bおよび図10に示すように、カメラ部36は、パイプ部内筒31Aの先端に形成された切り欠き部61に設けられている。カメラ部36は、カメラユニット62、マウント63、およびハウジング64を備えている。カメラユニット62は、内視鏡11のカメラユニット28と同様に、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子と撮影レンズ62Aとを有する。また、カメラユニット62には、撮影レンズ62Aを有する鏡胴部62Bの両側に、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成される照明部(図示せず)を設けてもよい。
カメラユニット62は、フレキシブルケーブル(図示せず)によって、ヘッド部32に設けられたコネクタ部44と通信可能に接続される。フレキシブルケーブルやコネクタ部44を介して、カメラユニット62とプロセッサ18との間で、カメラユニット62が出力する画像信号や、プロセッサ18から送信される制御信号の通信が行われる。図示は省略するが、フレキシブルケーブルは、カメラ部36の基端側に一端が接続され、パイプ部内筒31Aとパイプ部外筒31Bの間の隙間に配設されて、他端がコネクタ部44まで延設される。
カメラユニット62は、マウント63を介してハウジング64に取り付けられている。ここで、パイプ部31をZ軸方向の先端側から正視した場合において、切り欠き部61およびカメラ部36が配置される位置をパイプ部31の上方とする。ハウジング64は、カメラユニット62の上方および幅方向の両側端を囲う形状をしており、上方を覆う上面部64Aと、両側面のそれぞれを覆う側面部64Bとを有する。
上面部64Aは、パイプ部31の切り欠き部61の形状に対応する形状を有しており、外周面は、パイプ部31の外径に合わせて曲面で構成される。これにより、図9Aに示すように、カメラ部36が格納位置にある場合において、ハウジング64は、切り欠き部61に嵌合して、パイプ部31の上面の一部を構成する。
カメラ部36は、基端側を支点に、格納位置と展開位置の間で回動自在に設けられている。図10に示すように、カメラ部36の両端に位置する各側面部64Bの外面には、左右一対の回動ピン65が設けられている。各回動ピン65は、カメラ部36の幅方向において、カメラ部36の両端のそれぞれから外向きに突出する。回動ピン65は、カメラ部36の回動軸を構成する。切り欠き部61の内周の基端側には、各回動ピン65を回動自在に支持する軸受け部67が設けられている。ここで、カメラ部36の両端の各側面部64Bに設けられる回動ピン65、および切り欠き部61の内周に設けられる各軸受け部67は、カメラ部36の両端に設けられるヒンジ部を構成する。
こうしたヒンジ部の作用により、カメラ部36は変位可能に保持される。具体的には、カメラ部36は、図9Aに示す格納位置から、基端側の回動ピン65を中心に回動して、図9Bに示すように、先端側を跳ね上げるようにして展開する。図9Bに示す展開位置では、挿通孔33から突出する処置具22を撮影できるように、撮影レンズ62Aが先端側を向くように配置される。
図10および図11に示すように、カメラ部36には、バネ71が取り付けられて、バネ71によって展開位置に付勢される。バネ71は、例えば、コイルバネであり、2本使用される。ハウジング64の基端にはバネ71の一端が取り付けられるフック64Cが設けられている。パイプ部内筒31Aには、切り欠き部61の基端側に、2つのバネ71をそれぞれ収容する2つの収容凹部72が設けられている。2つの収容凹部72は、それぞれ、長手方向がZ軸方向と一致するように形成され、平行に配列されている。収容凹部72の溝は、バネ71を収容した状態において、パイプ部内筒31Aの外径からバネ71が突出しないような深さに形成されている。これにより、パイプ部内筒31Aに対してスライドするパイプ部外筒31Bの内周面と、バネ71との干渉が防止される。
また、各収容凹部72には、バネ71の他端が取り付けられるフック72Aが設けられている。バネ71は、外力が加わっていない自然長よりも伸長した状態で、フック64Cとフック72Aにそれぞれ取り付けられる。そのため、バネ71は、フック64Cとフック72Aに取り付けられた状態では、収縮する方向に付勢力を発生する。カメラ部36の基端に設けられたフック64Cは、回動ピン65よりも上方に位置しているため、バネ71が発生する収縮方向の付勢力によって、フック64Cが基端側に引っ張られる。この引っ張りによって、カメラ部36に対して、回動ピン65を支点に展開位置に向けて回転力が作用して、カメラ部36が展開位置に向けて付勢される。
図12A、12Bおよび図13A、13Bに示すように、カメラ部36の展開と格納はパイプ部外筒31Bのスライド操作によって行われる。図12Aおよび図13Aに示すように、パイプ部外筒31Bは、カメラ部36を格納位置に保持する保持位置と、図12Bおよび図13Bに示すように、保持位置からさらに後方に退避して、保持を解除する保持解除位置との間で軸方向に沿ってスライドする。
上述したとおり、カメラ部36は展開位置に向けてバネ71で付勢されている。図12Aおよび図13Aに示すように、パイプ部外筒31Bは、保持位置において、パイプ部外筒31Bの先端部が、カメラ部36の後方部分を覆う。これにより、パイプ部外筒31Bは、バネ71の付勢力に抗してカメラ部36の展開を規制して、カメラ部36を格納位置に保持する。また、図13Aに示すように、トロカールシャフト17がカメラ付きトロカール16に装着された状態では、格納位置において、カメラ部36は、連接部57によって形成される収容スペースに格納される。
一方、パイプ部外筒31Bが、図12Bおよび図13Bに示す保持解除位置にスライドすると、パイプ部外筒31Bの先端部がカメラ部36の後方部分から退避する。これにより、カメラ部36に対するパイプ部外筒31Bの保持が解除される。保持が解除されると、カメラ部36は、バネ71の付勢によってポップアップして展開する。
本例において、パイプ部外筒31Bを有する外筒部材16Bが保持部材に相当する。バネ71と外筒部材16Bは、外筒部材16Bの解除動作によって、カメラ部36の保持を解除して、カメラ部を展開位置にポップアップして展開させる展開機構を構成する。
[カメラ部の展開および格納のための操作機構]
図12A、12Bに示すように、パイプ部外筒31Bのスライド操作は、トロカールシャフト17の軸回りの回転操作によって行われる。上述のとおり、外筒部材16Bのヘッド部外筒32Bには、カム溝52が形成されたカム板51が設けられている。カム溝52と、トロカールシャフト17に設けられたカムピン59(図5参照)とが係合する。これらカム溝52およびカムピン59は、トロカールシャフト17の回転操作によってパイプ部外筒31Bを基端側へスライドさせる操作機構を構成する。
図14に示すように、カム板51の外周面は、ヘッド部外筒32Bの曲率に合わせて曲面で構成されている(図3および図4も参照)。カム溝52は、軸方向に対して傾斜している傾斜部52Eを有しており、傾斜部52Eの一方の第一端52Aと他方の第二端52Bとは、Z軸方向の位置が異なる。第一端52Aは、Z軸方向において、相対的に基端側に位置しており、第二端52Bは先端側に位置している。
また、カム溝52は、傾斜部52Eに加えて、ガイド溝52Cと直線部52Dとを有している。ガイド溝52Cは、一端が第二端52Bと接続し、基端側に向かってZ軸方向に延びる。直線部52Dは、一端が第一端52Aと接続し、周方向に延びる。
図12A、12B、および図13A、13Bに示すように、トロカールシャフト17がカメラ付きトロカール16に装着された状態では、ハンドル部54は、嵌合爪54Aと嵌合溝43Bとの嵌合によって、ヘッド部内筒32Aに取り付けられている。そのため、トロカールシャフト17のZ軸方向の位置は、内筒部材16Aに対して固定されている。トロカールシャフト17がカメラ付きトロカール16に装着されると、ヘッド部外筒32Bに設けられたカムピン59と、ヘッド部内筒32Aに設けられたカム溝52が係合する。トロカールシャフト17のZ軸方向の位置は内筒部材16Aに対して固定されているため、トロカールシャフト17が回転すると、カムピン59とカム溝52の傾斜部52Eとの係合によって、外筒部材16Bが、トロカールシャフト17および内筒部材16Aに対してスライドする。
具体的には、まず、図12Aおよび図13Aに示すように、パイプ部外筒31Bが保持位置にある場合には、カメラ部36が格納位置にある。保持位置の状態では、カムピン59はカム溝52の第一端52Aと直線部52Dの区間内に位置する。トロカールシャフト17の初期位置は、直線部52Dにおいて、第一端52A側とは反対側の端部にカムピン59が当接する位置である。すなわち、トロカールシャフト17の初期位置は、トロカールシャフト17を、Z軸方向の先端側から見て反時計方向に回転させた場合の終端位置である。
トロカールシャフト17を先端側から見て時計方向に回転させても、カムピン59が初期位置から第一端52Aに位置する間、すなわち、カムピン59が直線部52Dの区間内にある間は、パイプ部外筒31Bは軸方向にスライドせず、保持位置の状態を維持する。直線部52Dは、トロカールシャフト17の回転操作をした直後にパイプ部外筒31Bがスライドを開始することを防止する遊びを確保するために設けられる。こうした遊びを確保することで、初期位置にあるトロカールシャフト17の不用意な僅かな回転によって、カメラ部36の保持が解除されることが防止される。
トロカールシャフト17が初期位置から、先端側から見て時計方向に回転を開始すると、カムピン59が第一端52Aに達する。その後、トロカールシャフト17がさらに時計方向に回転すると、カムピン59がカム溝52の傾斜部52Eと係合して、第一端52Aから第二端52Bに向かってカムピン59の係合位置が移動する。カムピン59と傾斜部52Eとの作用によって、図12Bおよび図13Bに示すように、パイプ部外筒31Bがパイプ部内筒31Aに対して後方にスライドして保持解除位置に後退する。これにより、カメラ部36の保持が解除されて、展開位置にポップアップして展開する。
ここで、トロカールシャフト17のカムピン59が第二端52Bに到達する位置を、トロカールシャフト17の解除完了位置という。解除完了位置は、トロカールシャフト17の時計方向の回転の終端位置である。
一方、図12Bおよび図13Bに示すカメラ部36が展開位置にある場合には、パイプ部外筒31Bは保持解除位置に、トロカールシャフト17は解除完了位置にある。解除完了位置では、カムピン59はカム溝52の第二端52Bに位置する。この状態で、トロカールシャフト17を、先端側から見て反時計方向に回転すると、カムピン59が傾斜部52Eの第二端52Bから第一端52Aに向かって移動する。カムピン59とカム溝52の傾斜部52Eとの作用によって、図12Aおよび図13Aに示すように、パイプ部外筒31Bがパイプ部内筒31Aに対して前方にスライドして保持位置に前進する。
パイプ部外筒31Bの前進により、展開位置にあるカメラ部36の後方部分に当たるハウジング64がパイプ部外筒31Bの先端に押圧されて、カメラ部36が回動ピン65を中心に回転して格納位置に押し込まれる。格納位置においては、カメラ部36の後方部分はパイプ部外筒31Bの先端で覆われる。これにより、バネ71の付勢によるカメラ部36の展開位置へのポップアップによる展開が規制されて、カメラ部36が格納位置に保持される。
このように、カム溝52とカムピン59によって、トロカールシャフト17の回転操作でパイプ部外筒31Bを基端側へスライドさせる操作機構を構成することで、手でパイプ部外筒31Bをスライド操作する場合と比べて、パイプ部外筒31Bのスムーズなスライド操作が可能となる。というのも、パイプ部外筒31Bを操作者である医療スタッフSTが直接手で把持してスライドさせる場合には、手の把持力によって、パイプ部外筒31BのZ軸方向以外の方向に力が加わりやすい。こうした力はパイプ部外筒31Bのスムーズなスライドを阻害する。そのため、上記操作機構によって、パイプ部外筒31Bに対してZ軸方向以外の方向に働く力が軽減されるため、パイプ部外筒31Bのスムーズなスライド操作が可能となる。
また、パイプ部外筒31Bが保持解除位置にあるときには、カムピン59はカム溝52の第二端52Bに位置する。第二端52Bから軸方向に延びるガイド溝52Cが形成されている。そのため、カムピン59がガイド溝52Cに沿って移動することにより、パイプ部外筒31Bに対して、トロカールシャフト17を基端側に向けて軸方向にスライドさせることができる。図12Bおよび図13Bに示すように、パイプ部外筒31Bが保持解除位置にある状態では、カメラ部36は展開位置にある。そのため、パイプ部内筒31A内において、穿刺部55の後方からカメラ部36は退避しているため、穿刺部55の後退が可能である。そのため、カメラ部36が展開した状態においては、カメラ付きトロカール16からトロカールシャフト17を抜き取ることが可能となる。
また、トロカールシャフト17をカメラ付きトロカール16に装着する際には、カメラ付きトロカール16のパイプ部外筒31Bを、トロカールシャフト17の抜き取りを行った状態、すなわち、図12Bおよび図13Bに示すように、カメラ部36が展開位置になる、保持解除位置にパイプ部外筒31Bをセットする。この状態で、ヘッド部32から、シャフト部本体56をパイプ部31の挿通孔33に挿通させる。カメラ部36は展開位置にあるため、パイプ部31の先端においても穿刺部55の進路からカメラ部36は退避しているので、穿刺部55をパイプ部31の先端から突出させることができる。
この後、ハンドル部54を回転させて、カムピン59の位置とガイド溝52Cの位置を合わせる。カムピン59とガイド溝52Cの位置を合わせると、図6および図7に示す嵌合爪54Aの周方向の位置も、嵌合溝43Cの切り欠き部43Cと対向するようになっている。この状態で、カムピン59をガイド溝52Cに沿ってトロカールシャフト17を先端側に前進させて、カムピン59が第二端52Bに達すると、嵌合爪54Aが切り欠き部43Cから嵌合溝43Cに進入する。トロカールシャフト17を初期位置に向けて回転させると、カムピン59とカム溝52の作用により、図12Aおよび図13Aに示すように、パイプ部外筒31Bが保持位置に向けて前進し、カメラ部36が格納される。
このように、ガイド溝52Cは、トロカールシャフト17のカメラ付きトロカール16への装着やカメラ付きトロカール16からの抜き取りの際に、トロカールシャフト17のカムピン59とパイプ部外筒31Bのカム溝52との係合の開始や係合を解除するための溝として機能する。
一方、カム溝52において、第一端52Aおよび直線部52Dが存在する側には、カムピン59との係合を解除するためのガイド溝は形成されていない。このため、パイプ部外筒31Bが保持位置にある状態、すなわち、図12Aおよび図13Aに示す、カメラ部36が格納位置にある状態では、トロカールシャフト17の抜き取りが規制される。図13Aに示すように、カメラ部36は、格納位置においては、トロカールシャフト17の連接部57によって形成される格納スペースに格納される。この状態で、トロカールシャフト17の不用意な抜き取り操作が行われてしまうと、穿刺部55の後端とカメラ部36が接触して、カメラ部36が破損するおそれもある。これを防止するため、ガイド溝52Cは、第二端52B側にのみ形成され、第一端52A側には形成されていない。
また、図5に示すように、ピン配設板58に設けられるカムピン59と、カム板51に設けられるカム溝52の組は、2つ設けられており、これらの組は、外筒部材16BのZ軸回りの周方向において約180°の間隔を空けて、対向配置されている。このように、カムピン59とカム溝52の組を複数設けて、対向配置することにより、係合状態が安定する。また、把持もしやすく操作性もよい。
また、トロカールシャフト17は、シャフト部53と比較して大径のハンドル部54が設けられているため、回転操作がしやすい。
また、図14に示すように、トロカールシャフト17のハンドル部54において、カム溝52と係合するカムピン59が設けられるピン配設板58には、位置マーク58Aと方向マーク58Bが設けられている。位置マーク58Aは、ピン配設板58において、外周面に配置されており、内周面に配置されたカムピン59の位置を示す。
カムピン59はピン配設板58の内周面に設けられているため、外側から視認しにくい。ピン配設板58の外周面に位置マーク58Aを設けることで、外側からカムピン59の位置を把握しやすく、カムピン59がカム溝52のどの部分と係合しているかといった、カムピン59とカム溝52との係合状態を簡単に確認できる。これにより、トロカールシャフト17を通じたカメラ部36の展開と格納の操作、およびトロカールシャフト17の外筒部材16Bに対する着脱もしやすい。
方向マーク58Bは、ヘッド部32にトロカールシャフト17を装着する際の回転方向、すなわち、トロカールシャフト17の解除完了位置から初期位置への回転方向を示す。
本例において、外筒部材16Bの基端側に設けられたカム板51に形成されたカム溝52は、第1カム部に相当し、トロカールシャフト17の基端側に設けられたピン配設板58に形成されたカムピン59は、カム溝52と係合する第2カム部に相当する。また、本例では、第1カム部をカム溝とし、第2カム部をカムピンとしたが、第1カム部をカムピンとし、第2カム部をカム溝としてもよい。
[カメラ部の展開補助機構]
上述のとおり、トロカールシャフト17を回転操作すると、パイプ部外筒31Bによるカメラ部36の保持が解除されて、カメラ部36は、バネ71の付勢により展開位置にポップアップして展開する。カメラ付きトロカール装置12は、カメラ部36の展開に際してトロカールシャフト17が回転すると、連接部57がカメラ部36と当接してカメラ部36を格納位置から展開位置に押し上げる展開補助機構を備えている。展開補助機構は、パイプ部内筒31A内で回転可能で、かつ、カメラ部36と当接可能な連接部57を有するトロカールシャフト17によって構成される。
図15A〜図15Cは、カメラ部36および連接部57が配置される部分における、パイプ部31のZ軸方向と直交する横断面(X−Y断面)を示す。図15A〜図15Cに示すように、パイプ部31の横断面において、連接部57は、パイプ部31の上方に配置されるカメラ部36と対向する下方位置に配置されている。図15Aおよび図15Bは、カメラ部36が格納位置にある状態を示し、図15Cは、カメラ部36が展開位置にある状態を示す。
また、図15Aにおいて、トロカールシャフト17の回転位置は、初期位置、すなわち、カムピン59がカム溝52の直線部52Dにある状態を示す(図3参照)。図15Bにおいて、トロカールシャフト17の回転位置は、カムピン59が、傾斜部52Eの第一端52Aから第二端52Bに移動する途中の状態を示す。図15Cにおいて、トロカールシャフト17の回転位置は、解除完了位置、すなわち、カムピン59がカム溝52の第二端52Bにある状態を示す(図4参照)。
図15A〜図15Cに示すように、パイプ部31をZ軸方向の先端側から正視した場合において、連接部57の断面形状は、パイプ部31の径方向の中心からパイプ部31の内壁に向かって裾野が延びる山形形状をしている。連接部57の裾野側の底面は、パイプ部内筒31Aの内壁の曲率に合わせた曲面となっており、パイプ部内筒31Aの内壁と当接する。トロカールシャフト17が時計方向に回転すると、連接部57は、パイプ部内筒31Aの内壁に沿って時計方向に回転する。
図15Aに示す初期位置から、トロカールシャフト17が時計方向に回転して、図15Bに示す位置に達すると、連接部57がカメラ部36の側面部64Bに当接を開始する。図15Bに示す状態は、カムピン59とカム溝52の傾斜部52Eが係合している状態であるため、トロカールシャフト17が回転すると、パイプ部外筒31Bも保持解除位置に向けてスライドする。そのため、パイプ部外筒31Bのスライドに応じてカメラ部36の保持が徐々に解除される。そうすると、カメラ部36は、展開位置に向けたバネ71の付勢力によって、ポップアップを開始する。このタイミングで、連接部57がカメラ部36と当接を開始して、カメラ部36を展開位置に向けて押し上げる。
このため、カメラ部36がポップアップして展開する際に、バネ71の付勢力に加えて、連接部57の押圧力による補助を受けるため、バネ71の付勢力だけでポップアップを行う場合と比較して、カメラ部36のポップアップによる展開を確実に行うことができる。より具体的には、カメラ部36の外周面には、脂肪23A(図24A、図24B参照)等が付着して、これがポップアップの際の抵抗となる場合がある。このような場合でも、連接部57で構成される展開補助機構を設けたため、ポップアップによる展開を確実に行うことができる。
図15A〜図15Cに示すように、連接部57において、側面部64Bと当接する斜面には、本体部57Aから外側に張り出す押圧部57Bが設けられている。また、図16Aおよび図16Bに示すように、押圧部57Bは、連接部57のZ軸方向の全長に渡って設けられているわけではなく、その一部に設けられている。具体的には、押圧部57Bは、連接部57のZ軸方向において、カメラ部36の側面部64Bと対向する範囲に設けられている。このように押圧部57Bを設ける範囲を、必要最小限にすることで、カメラ部36の格納スペースが徒に圧迫されることを防止している。
また、図15Aに示すように、トロカールシャフト17が初期位置にあり、カメラ部36が格納位置にある状態では、パイプ部31をZ軸方向の先端側から正視した場合において、連接部57の幅方向(X軸方向)の中心位置は、カメラ部36の幅方向(X軸方向)の中心線C1に対してオフセットされて配置される。中心線C1は、カメラ部36の幅方向(X軸方向)の中心位置とパイプ部31の中心を結ぶ線である。中心線C2は、押圧部57Bを除く、連接部57の本体部57Aのみの幅方向(X軸方向)の中心線である。オフセットされるという意味は、中心線C1と中心線C2とが一致しないという意味である。
より具体的には、図15Aにおいて、カメラ部36が格納位置にある状態では、連接部57は、カメラ部36と対向して配置される。この状態において、カメラ部36の幅方向の中心線C1と、連接部57の幅方向(X軸方向)の中心線C2とは一致しておらず、中心線C2は、中心線C1に対して、側面部64Bと当接する斜面とは反対方向(図15Aにおいて右方向)にオフセットされている。
このように、トロカールシャフト17が初期位置にあり、かつ、カメラ部36が格納位置にある状態において、カメラ部36の中心線C1に対して、連接部57の幅方向(X方向)の中心位置をオフセットして配置することで、次に説明するとおり、トロカールシャフト17の回転量の調節がしやすい。
すなわち、トロカールシャフト17は、その回転により、カメラ部36の展開補助機構として機能する以外に、パイプ部外筒31Bをスライドさせて、カメラ部36の展開と格納を行う操作機構としても機能する。このようにトロカールシャフト17が複数の機能を担う場合、それぞれの機能に合わせて、トロカールシャフト17の回転量を調節する必要がある。
例えば、操作機構に必要なトロカールシャフト17の回転量が決まると、連接部57のストローク量(連接部57の周方向の回転量)も決まる。展開補助機構を機能させるためには、決定したストローク量に合わせて、連接部57とカメラ部36の側面部64Bとの間の距離を調節しなければならない。連接部57をオフセットさせることで、連接部57と側面部64Bとの距離の微調節がしやすい。このように微調節がしやすいため、トロカールシャフト17に複数の機能を担わせる場合でも、一方の機能に必要な回転量をある程度の自由度を持って決定できるため、結果としてトロカールシャフト17の回転量の調節がしやすい。
言い換えると、連接部57の断面形状をこのような形状および配置とすることで、設計の自由度が確保される。具体的には、本例において、連接部57の本体部57Aの中心線C2は、カメラ部36の中心線C1に対してオフセットして配置されている。しかし、理論的には、押圧部57Bを設けた場合であっても、中心線C2と中心線C1が一致するように(オフセットさせずに)、本体部57Aを設けることも可能である。
本例においてオフセットさせた理由は、カメラ部36の展開は、外筒部材16Bのスライド量とも関係するため、カム設計において連接部57の押圧部57Bと、カメラ部36の側面部64Bとの距離を確保するためである。このように、本体部57Aの中心線C2と中心線C1に対してオフセットし、押圧部57Bを含む連接部57の断面形状を中心線C2に関して非対称形状とすることにより、側面部64Bと押圧部57Bの間の距離を広げることができるため、設計の自由度が向上する。
[カメラの展開時と格納時のロック機構]
カメラ付きトロカール装置12は、パイプ部外筒31Bを有する外筒部材16BのZ軸方向のスライドを規制して、外筒部材16Bを保持位置と保持解除位置のそれぞれにおいてロックする外筒ロック機構を備えている。上述したとおり、ロック解除操作部材46は、外筒ロック機構の解除操作を行う操作部材であり、係合部47とともに外筒ロック機構を構成する。
図17に示すように、ヘッド部内筒32Aの外周面に形成された係合部47は、Z軸方向と直交する方向に延びる2本の係合溝47A、47Bを有する。各係合溝47A、47Bは、Z軸方向の位置が異なり、係合溝47Aは、パイプ部外筒31Bが保持位置にある状態で外筒部材16Bをロックするための溝で、係合溝47Bは、パイプ部外筒31Bが保持解除位置にある状態で外筒部材16Bをロックするための溝である。係合溝47Aは第1係合部に相当し、係合溝47Bは第2係合部に相当する。
ロック解除操作部材46は、外筒部材16Bのヘッド部外筒32Bの外周に取り付けられる。ロック解除操作部材46は、操作部46Aと支持部46Bとを有する。支持部46Bは、操作部46Aに連接され、操作部46Aをヘッド部外筒32Bに支持するための部分である。操作部46Aと支持部46Bの間には段差が形成され、ロック解除操作部材46の縦断面は略クランク形状をしている。
ロック解除操作部材46において、操作部46Aと支持部46Bが接合する部分には、幅方向の両端に取り付けピン46Cが設けられている。支持部46Bには、ロック解除操作部材46を、所定の方向に付勢するバネ68が取り付けられる取り付け穴46Dが設けられている。また、支持部46Bには、取り付け穴46Dとは反対側の面に係合凸部46E(図19A〜図19C参照)が設けられている。後述するように、係合凸部46Eは、係合溝47A、47Bのそれぞれと係合して、外筒部材16Bのスライドを規制する規制部に相当する。
ヘッド部外筒32Bには、ロック解除操作部材46を取り付けるための取り付け部66が設けられている。取り付け部66は、開口66Aと、開口66Aの内周部に形成され、取り付けピン46Cを回転自在に支持する軸受け部66Bとを有している。
図18A〜図18Cは、ロック解除操作部材46の組み付け方法を示す。図18Aに示すように、ロック解除操作部材46は、例えば、支持部46Bにバネ68が取り付けられた状態で、開口66Aに挿入される。そして、図18Bに示すように、取り付けピン46Cが軸受け部66Bに取り付けられる。そして、取り付けピン46Cを中心にロック解除操作部材46を回転させて、ロック解除操作部材46の姿勢を、支持部46Bとヘッド部外筒32Bの内周面とが平行になるように調節する。
この状態では、バネ68が支持部46Bとヘッド部外筒32Bとの内周面との間に挟み込まれる。この姿勢を維持しながら、図18Cに示すように、外筒部材16B内に内筒部材16Aが挿入されて、支持部46Bは、外筒部材16Bの内周面と内筒部材16Aの外周面に形成された係合部47との間で挟持される。支持部46Bは、図18Cにおいて、バネ68の付勢力によって、取り付けピン46Cを中心に時計方向に回転し、係合凸部46Eを係合部47に押しつける方向に付勢される。
図19A〜図19Cに示すように、ロック解除操作部材46と係合部47との係合状態を示す。図19Aは、パイプ部外筒31Bが、カメラ部36を格納位置に保持する保持位置にある状態を示す。図19Aに示す状態では、係合凸部46Eが、第1係合部に相当する係合溝47Aと係合し、バネ68の付勢によって、係合凸部46Eが係合溝47Aに押しつけられる。このため、係合凸部46Eと係合溝47Aとの係合により、内筒部材16Aに対する外筒部材16Bの軸方向のスライドが規制されて、パイプ部外筒31Bは、カメラ部36を格納位置に保持する保持位置(図12Aおよび図13A参照)にロックされる。
図19Bは、ロック解除操作部材46を操作して、外筒部材16Bのスライドロックを解除した状態を示す。操作部46Aを押下すると、ロック解除操作部材46は、バネ68の付勢に抗して取り付けピン46Cを中心に反時計方向に回転する。この回転により、支持部46Bが係合部47と離間して、係合凸部46Eと係合溝47Aの係合が外れる。これにより、外筒部材16Bのスライドロックが解除される。外筒部材16Bのスライドロックが解除されると、パイプ部外筒31Bを基端側に後退させて、保持解除位置に移動することが可能となる。
図19Cは、パイプ部外筒31Bが保持解除位置にある状態を示す。図19Bに示すように、ロックが解除された状態で外筒部材16Bを基端側に後退させると、支持部46Bの係合凸部46Eが、第2係合部に相当する係合溝47Bに達する。図19Cに示すように、係合凸部46Eが係合溝47Bに達すると、バネ68の付勢により、係合凸部46Eが係合溝47Bに落ち込んで、両者が係合する。係合凸部46Eと係合溝47Bと係合する保持解除位置では、パイプ部外筒31Bによるカメラ部36の保持が解除されるので、カメラ部36がポップアップして展開する。
図19Cに示す状態では、係合凸部46Eが係合溝47Bと係合し、バネ68の付勢によって、係合凸部46Eが係合溝47Bに押しつけられる。このため、係合凸部46Eと係合溝47Aとの係合により、内筒部材16Aに対する外筒部材16Bの軸方向のスライドが規制されて、パイプ部外筒31Bは、カメラ部36の展開を許容する保持解除位置(図12Bおよび図13B参照)にロックされる。
このように、ロック解除操作部材46と係合部47とを備えた外筒ロック機構により、次のような効果が得られる。すなわち、カメラ付きトロカール16において、パイプ部外筒31Bを含む外筒部材16Bは、カメラ付きトロカール16のパイプ部31の最外周に位置する。こうしたパイプ部外筒31Bを、カメラ部36の格納位置の保持や展開のための操作部材として用いると、操作者の手に触れやすく、操作者の意に反する不用意なスライドが生じやすい。
パイプ部外筒31Bが不用意にスライドすると、操作者の意に反して、格納位置にあるべきカメラ部36が展開したり、反対に展開位置にあるべきカメラ部36が格納されてしまう懸念がある。外筒ロック機構によれば、パイプ部外筒31Bを保持位置および保持解除位置にロックすることができるため、パイプ部外筒31Bの不用意なスライドを防止することができる。
また、係合溝47A、47Bのそれぞれと係合することにより、外筒部材16Bのスライドを規制する規制部に相当する係合凸部46Eは、ロック解除操作部材46に一体に形成されているため、構造が簡単である。そのため、部品コストや組み立て性の点で有利である。
また、ロック解除操作部材46は、パイプ部31よりも大径のヘッド部32に配置されているので、操作性がよい。
[カメラ部の軸受け構造]
図20Aおよび図20Bに示すように、カメラ部36は、パイプ部内筒31Aに取り付けられ、格納位置と展開位置の間で回動自在に支持される。図20Aは、格納位置にあるカメラ部36を示し、図20Bは、展開位置にあるカメラ部36を示す。図10にも示したとおり、カメラ部36の幅方向(X軸方向)の両端には左右一対の回動ピン65が設けられており、各回動ピン65は、パイプ部内筒31Aの切り欠き部61に形成された、左右一対の軸受け部67のそれぞれに取り付けられる。一対の軸受け部67は、各回動ピン65を回動可能に支持する。
各軸受け部67は、パイプ部内筒31Aの先端側に回動ピン65を受け入れる先端側受け入れ口67Aを有している。軸受け部67は、回動ピン65と直交する断面の形状が略半円形状であり、残りの半円に対応する切り欠き部分が先端側受け入れ口67Aに相当する。先端側受け入れ口67Aは、パイプ部31のZ軸方向に沿ってパイプ部31の先端側から進入する回動ピン65を受け入れ可能である。先端側受け入れ口67Aと対向する位置には、軸受け部67に支持される回動ピン65の脱落を防止する脱落防止部材76が配置されている。脱落防止部材76は、軸方向に延びる帯状の舌片であり、パイプ部内筒31Aに設けられている。
脱落防止部材76は、例えば、パイプ部内筒31Aと一体に形成されている。脱落防止部材76は、一端がパイプ部内筒31Aに固定された固定端76Aに、基端側の他端は自由端76Bとなっており、弾性を有している。かかる構成により、脱落防止部材76は、固定端76Aを基点に自由端76Bが、カメラ部36の幅方向(X軸方向)に変位するように弾性変形することが可能となる(図21B参照)。脱落防止部材76は、樹脂製であり、パイプ部内筒31Aと一体に樹脂成形される。脱落防止部材76は、自由端76Bが先端側受け入れ口67Aに位置するような長さに形成されており、自由端76Bは先端側受け入れ口67Aと対向して配置される。自由端76Bは、軸受け部67と協働して回動ピン65を支持し、かつ、先端側受け入れ口67Aを塞いで、軸受け部67からの回動ピン65の脱落を防止する。カメラ部36の軸受け構造は、回動軸に相当する回動ピン65、軸受け部67、脱落防止部材76で構成される。
図21A〜図21Cに示すように、左右の脱落防止部材76の各自由端76Bには、内側に向けて突出する、すなわち、相互に対向する各自由端76Bに向けて突出する突出部76Cが設けられている(図10も参照)。
図21A〜図21Cは、カメラ部36の取り付け方法を示す。図21Aに示すように、カメラ部36は、パイプ部内筒31Aの先端側から、軸受け部67に取り付けられる。この際に、図21Bに示すように、左右の回動ピン65を、左右の脱落防止部材76との間に入り込ませて、各脱落防止部材76の内側と当接させる。この状態で、カメラ部36は、パイプ部内筒31AのZ軸方向に沿って移動される。
左右の回動ピン65の間隔は、左右の脱落防止部材76の間隔よりも広い。そのため、左右の回動ピン65が左右の脱落防止部材76と当接している状態では、各脱落防止部材76は、固定端76Aを基点に自由端76Bが外向きに弾性変形する。各脱落防止部材76の弾性変形は、左右の回動ピン65が、先端側受け入れ口67Aを通じて、左右の軸受け部67に受け入れられるまでの間、継続する。
図21Bに示すように、先端側から軸受け部67に向けて移動する左右の回動ピン65が、突出部76Cの位置に達すると、脱落防止部材76の自由端76Bの外向きの変形量は、最大となる。この状態では、自由端76Bが、軸受け部67の先端側受け入れ口67Aの前方から退避する。これにより、回動ピン65の軸受け部67への進入が可能となる。
カメラ部36をさらに基端側に移動すると、図21Cに示すように、回動ピン65が軸受け部67に進入して受け入れられる。回動ピン65が軸受け部67に受け入れられると、脱落防止部材76の内側と回動ピン65との当接が解除される。そのため、外向きに変形した自由端76Bが弾性により内側に変位し、先端側受け入れ口67Aと対向する初期位置に復帰する。これにより、回動ピン65を受け入れた軸受け部67の先端側受け入れ口67Aが塞がれるため、回動ピン65の軸受け部67からの脱落が防止される。また、回動ピン65は、軸回りの外周面が、軸受け部67と先端側受け入れ口67Aとによって覆われて、これらの協働により回動自在に支持される。
このように、先端側受け入れ口67Aを有する軸受け部67と、先端側受け入れ口67Aと対向して配置される脱落防止部材76とによって、回動ピン65の軸受け構造を構成したことにより、カメラ部36の良好な取り付け性を確保しながら、カメラ部36の回動ピン65の強度低下を防止することができる。
すなわち、先端側受け入れ口67Aは、略半円形の切り欠きで構成されるため、回動ピン65において、回動軸と直交する方向の断面形状を円形とすることができる。仮に、軸受け部67の受け入れ口が回動ピン65の半径に対して小さいと、回動ピン65を軸受け部67に挿入することができない。その場合には、回動ピン65の断面形状を小さくするために、回動ピン65の少なくとも一部をDカットにしたり、Iカットにするといった加工が必要になる。このような加工は、回動ピン65の強度低下を招く。回動ピン65の強度が低下すると、例えば、回動ピン65が腹腔内で破損するおそれもある。回動ピン65の強度低下を防止することで、こうした不都合を回避することができる。
また、先端側受け入れ口67Aには、脱落防止部材76が配置されるため、回動ピン65が軸受け部67から脱落することが防止される。
さらに、脱落防止部材76は弾性変形可能であるため、カメラ部36を軸受け部67に取り付ける際には、脱落防止部材76を弾性変形させて、先端側受け入れ口67Aから退避させることができる。そのため、カメラ部36を、先端側から軸方向に沿って移動させるだけで、回動ピン65を先端側受け入れ口67Aから軸受け部67に進入させることができるため、取り付け性も良好である。
また、脱落防止部材76の自由端76Bには内側に突出する突出部76Cが設けられている。このため、回動ピン65が先端側受け入れ口67Aに到達する直前において自由端76Bを外側に向けて大きく変形させることができる。このため、自由端76Bの退避量が大きくなるため、回動ピン65を先端側受け入れ口67Aに進入させやすい。
なお、本例の軸受け部67において、略半円形状とは、円形の円周の50%の長さの円弧を持つ半円に加えて、この半円を基準にプラスマイナス10%の範囲、すなわち、円周の40%から60%の長さの円弧を持つ半円を含む概念である。先端側受け入れ口67Aは、軸受け部67の円弧の長さが60%に近づくほど、口の大きさが小さくなり、40%に近づくほど、口の大きさが大きくなる。
例えば、軸受け部67の円弧の長さが60%の長さの場合、先端側受け入れ口67Aの大きさは、回動ピン65の半径よりも若干小さくなる場合もある。しかし、その場合でも、先端側受け入れ口67Aが弾性変形して口の大きさを広げることができれば、軸受け部67に回動ピン65を受け入れることが可能である。また、このように先端側受け入れ口67Aの大きさを小さくするほど、回動ピン65の軸受け部67からの脱落を防止することができる。
[穿刺部の突条部]
図22に示すように、トロカールシャフト17の穿刺部55の外周面には、径方向に突出し、穿刺部55のZ軸方向に沿って延びる複数の突条部78が形成されている。穿刺部55は、図2および図3において説明したとおり、カメラ付きトロカール16を患者Pの腹腔内に挿入する際に、患者Pの腹壁23に形成された切開部27に最初に挿入される。上述したとおり、腹壁23は、脂肪23A(図24A、24Bの符号23A参照)などの皮下組織で形成されており、穿刺部55は、こうした腹壁23を押し広げる役割を担う。突条部78は、皮下組織を引き裂いて、穿刺部55の外周面への皮下組織の巻き付き、特に脂肪23Aの巻き付きを防止する。
本例において、突条部78は4本設けられている。ここで、4本の突条部78について、各突条部78を区別する必要が場合には、突条部78A〜78Dとして符号を分けて説明し、区別の必要が無い場合は、単に突条部78として説明する。
図23Aおよび図23Bに示すように、4本の突条部78A、78B、78C、78Dは、穿刺部55をZ軸方向の先端側から正視した場合において、全体として十文字状に交差する態様で配置される。具体的には、4本の突条部78A、78B、78C、78Dは、基端側の端部が、穿刺部55のZ軸回りの周方向において90°間隔で配置されており、穿刺部55の先端において、先端側の端部が交差している。
図23Aは、カメラ部36が格納位置にある状態、すわなち、トロカールシャフト17が初期位置(図3および図12A等参照)にある状態の複数の突条部78とカメラ部36との位置関係を示し、図23Bは、トロカールシャフト17が解除完了位置(図4および図12B等参照)にある状態の複数の突条部78とカメラ部36の位置関係を示す。
図23Aに示すように、トロカールシャフト17が初期位置にある状態(カメラ部36が格納位置にある状態)では、4本の突条部78Aから78Dのうち、2本の突条部78A、78Bについては、基端側の端部が、穿刺部55のZ軸回りの周方向において、カメラ部36の両端の各ヒンジ部の位置と対応する位置に配置される。各ヒンジ部は、上述したとおり、カメラ部36の両端に設けられており、各ヒンジ部は、カメラ部36の各側面部64Bに設けられる回動ピン65、および切り欠き部61の内周に設けられる各軸受け部67によって構成される。
図24Aおよび図24Bは、動物実験を通じて得た知見に基づく、カメラ部36が配置されるパイプ部31先端への脂肪23Aの巻き付きを示す説明図であり、図24Aは、パイプ部31を側方から見た側面図であり、図24Bは、パイプ部31をカメラ部36が配置される上方から見た上面図である。図24Aおよび図24Bに示すように、穿刺部55の後方のパイプ部31において、突条部78に対応する領域R1は、それ以外の領域R2と比較して、脂肪23Aの巻き付きが少ない。そのため、パイプ部31に設けられるカメラ部36のヒンジ部に対応する位置に、突条部78A、78Bを配置することで、カメラ部36のヒンジ部を含む周辺領域(図24A、24Bにおいて領域R1)に対する脂肪23Aの巻き付きを抑制することができる。
カメラ部36に巻き付いた脂肪23Aは、カメラ部36の展開位置へのポップアップに際して抵抗となるため、カメラ部36のスムーズな展開を阻害する要因となる。カメラ部36のヒンジ部に対応する位置に突条部78A、78Bを配置することで、脂肪23Aの巻き付きを抑制することができる。これにより、カメラ部36のスムーズな展開が可能になる。
また、各突条部78において、Z軸方向に沿う稜線に相当する上端部分79は、刃先のような尖端形状ではなく、平坦面となっている。上端部分79を平坦面とすることで、次のような効果が得られる。第1に、操作者がゴム手袋を装着した手で穿刺部55を触っても、ゴム手袋の破損を防止できる。第2に、カメラ付きトロカール装置12を腹腔内に挿入する際に穿刺部55に対して大きな力が作用する場合でも、上端部分79が尖端形状である場合と比べて、突条部78が破損しにくい。第3に、気密構造ユニット42に含まれるシールユニットの破損を防止することができる。すなわち、カメラ付きトロカール16に対してトロカールシャフト17を挿入する際に、穿刺部55が気密構造ユニット42を通過する。突条部78を平坦面とすることで、気密構造ユニット42に含まれるシールユニットの破損を防止することができる。
また、図23Aおよび図23Bに示すように、複数の突条部78の径方向の最大径D2は、穿刺部55の外周面55Aにおいて突条部78が形成されていない部分の最大径D1以下である。本例では、最大径D1は、先細形状の穿刺部55の基端側の端部における直径であり、突条部78の最大径D2も、突条部78の基端側の端部において、周方向に配列される複数の突条部78の上端部分79を結ぶ直径である。
このように、突条部78の最大径D2を穿刺部55の最大径D1以下とすることにより、突条部78の最大突出量を規制することができるため、突条部78の上端部分79を平坦面としたことによる、上述の第1〜第3の効果をさらに高めることができる。
また、本例において、複数の突条部78として、4本の突条部78が設けられる例で説明したが、突条部78の数は4本以外でもよい。例えば、3本でもよいし、5本以上でもよく、複数の突条部78の中に、カメラ部36のヒンジ部に対応する位置に配置される2本の突条部78A、78Bが含まれていればよい。また、1つのヒンジ部に対応する位置に2本以上の突条部78を配置してもよい。
図25は、8本の突条部78を設けた例である。このうちの2本は、図23Aに示す突条部78A、78Bと同様に、カメラ部36のヒンジ部に対応する位置に配置されている。また、図23Aおよび図23Bに示す4本の突条部78や、図25に示す8本の突条部78を設けた例のように、複数の突条部78の配置間隔は、等間隔であることが好ましい。複数の突条部78を設けたことによる、脂肪23Aの巻き付きを防止する効果が、穿刺部55の周方向において均等に得られると考えられるからである。
[気密構造ユニット]
図26は、図7で示した気密構造ユニット42を基端側から見た斜視図である。上述のとおり、気密構造ユニット42は、腹腔内から体外へのガス漏れを防止する機能を担う。気密構造ユニット42は、ヘッド部内筒32A内に収容され、ヘッド部内筒32Aの後方の開口部は、リアカバー43で塞がれる。
図27および図28に示すように、気密構造ユニット42は、ダックビル弁81と、ダックビル弁81の基端側に配置されるシールユニット82で構成されている。ダックビル弁81は、カメラ付きトロカール16に処置具22が挿通されていない状態において、気腹された体腔内から挿通孔33を通じて体外へガスが漏れることを防止する。一方、シールユニット82は、処置具22が挿通された状態において、体腔内から挿通孔33を通じて体外へガスが漏れることを防止する。
(ダックビル弁の構成)
ダックビル弁81は、周知のようにアヒルの口ばしの形状をした弁機構であり、弁部81Aと、弁部81Aの基端に一体に形成された円形部81Bとを有する。ダックビル弁81は、シリコンゴムなどのエラストマーで形成される。弁部81Aは、先端で交差して基端に向かって広がる向かい合う2つの斜面を有している。弁部81Aの先端には筋状の開口81Cが形成されている。円形部81Bの基端には外側に張り出すフランジ81Dが形成されている(図4も参照)。
図30の断面図に示すように、気密構造ユニット42が装着されるヘッド部内筒32Aの内壁面には、ダックビル弁81のフランジ81Dと当接する突き当て面83が形成されている。ヘッド部内筒32Aにおいて、突き当て面83よりも先端側の内径は、ダックビル弁81の円形部81Bの外径とほぼ同一である。
(シールユニットの構成)
図27および図28に示すように、シールユニット82は、シールホルダ86、第1マウント87、ドーム型シール88、気密用ゴムカバー89、センタリングガイド91、および第2マウント92を備えている。ドーム型シール88は、請求項におけるシールに相当し、気密用ゴムカバー89は請求項におけるゴムカバーに相当する。これらの部材は、シールホルダ86を先頭に、先端側から基端側に向かってこの順番で配置され、一体に組み立てられることで、シールユニット82としてユニット化される。
ドーム型シール88は、平面形状が円形で、先端側に凸型のドーム形状をした部材である。ドーム型シール88は、ドーム形状のシール部88Aと、シール部88Aの外周に形成された円形のフランジ88Bとを有する。シール部88Aの径方向の中心、すなわち、ドーム形状の頂点に位置する中央部には処置具22やトロカールシャフト17を挿通させる開口88Cが形成されている。ドーム型シール88は、平面形状が円形の1枚の材料で構成されており、材料はシリコンゴムである。開口88Cは、弾性変形により、挿通される処置具22の外周面に密着した状態で拡大する。処置具22の外周面と開口88Cの内周は気密に封止される。これにより、処置具22を挿通した状態において、開口88Cからのガス漏れを防止する。
ドーム型シール88の開口88Cの径は、挿通される処置具22の外径に応じて決定される。一般的な処置具22の外径は約5mm程度であるので、本例では、開口88Cの径を4mmとして、処置具22の外径よりも僅かに小さく形成している。これにより、処置具22を挿通すると、開口88Cが弾性変形により拡張して、開口88Cの内周と処置具22の外周を密着させることができる。
ドーム型シール88に使用されるシリコンゴムは、デュロメータ測定によるJIS A硬度が30のシリコンゴムで、肉厚が約0.8mmの比較的柔軟な材料である。柔軟な材料を使用することにより、処置具22の良好な操作性を確保している。
図29にも示すように、ドーム型シール88の後方(カメラ付きトロカール16の基端側)には、センタリングガイド91が配置される。センタリングガイド91は、4枚のセグメント93で構成されている。センタリングガイド91は、各セグメント93を組み合わせることで、全体として、先端側に凸型のドーム形状となるように構成される。各セグメント93は、隣接するセグメント93が部分的に重ね合わされる。
センタリングガイド91の全体形状は、ドーム型シール88の形状に対応している。センタリングガイド91は、ドーム形状のガイド部91Aと、ガイド部91Aの外周に形成されるフランジ91Bとを有する。ガイド部91Aのドーム形状の頂点に相当する中央部には、処置具22やトロカールシャフト17が挿通される開口91Cが形成されている。開口91Cの径は、ドーム型シール88の開口88Cと同径か僅かに小さい。本例では開口88Cと同じ4mmである。センタリングガイド91の材料は、デュロメータ測定によるJIS A硬度が90のポリウレタンであり、肉厚が約0.5mmである。
センタリングガイド91を基端側から見た状態を示す、図29、図31A、図31Bにおいて、センタリングガイド91を構成する4枚のセグメント93は、略扇形をしており、円弧の長さは、センタリングガイド91の円周の1/4である。ここで、円周の1/4には、プラスマイナス10%の範囲を含む。
また、隣接するセグメント93同士が重なる部分である重なり領域93Aの面積は、各セグメント93の全面積の半分以下である。また、図31A、図31Bに示すように、重なり領域93Aは、センタリングガイド91の外周から中心に向かって、重なり領域93Aの幅が単調に増加する形状となっている。
セグメント93のそれぞれには、開口91Cの一部を構成する切り欠き部93Bが形成されている。また、重なり領域93Aにおいて開口91C側の辺は、切り欠き部93Bと滑らかに接続している。また、開口91C側の辺は、センタリングガイド91の径方向と平行な方向に延びている。
開口91Cは、処置具22が挿通されると、処置具の外径に応じて拡張する。この拡張は、隣接するセグメント93同士が離間する方向に変位することにより行われる。開口91Cは、各セグメント93の切り欠き部93Bで構成されており、隣接するセグメント93同士には重なり領域93Aがある。そのため、開口91Cが拡張した場合でも、隣接するセグメント93同士の重なり合いが保たれるため、開口91Cと処置具22の外周の間に隙間は生じにくい。
センタリングガイド91は、処置具22を挿通する際に、ガイド部91Aおよび開口91Cによって、処置具22の先端をドーム型シール88の中央の開口88Cにガイドする。
第1マウント87は、ドーム型シール88の先端側に配置され、シール部88Aを露出する開口87Cを有し、先端側に凸型のマウント部87Aと、マウント部87Aの外周に形成されるフランジ87Bとを有している。第1マウント87は、例えばポリエステルなどの樹脂材料で形成されている。第1マウント87は、マウント部87Aによって、ドーム型シール88のシール部88Aの先端側を支持し、フランジ87Bによって、フランジ88Bを先端側から支持する。開口87Cの径は、トロカールシャフト17や処置具22の径よりも大きく、これらを挿通可能になっている。
シールホルダ86は、ドーム型シール88のシール部88Aを露出する開口86Cを有し、先端側に凸型の略円錐形のカバー部86Aと、カバー部86Aの基端側に形成された円筒部86Bとを有している。シールホルダ86の開口86Cの径は、第1マウント87の開口87Cの径よりも僅かに大きく形成されている。シールホルダ86は、例えばポリエステルなどの樹脂材料で形成されている。
カバー部86Aは、ドーム型シール88のシール部88Aを露出する第1マウント87のマウント部87Aの周囲を先端側から支持するとともに、カバーする。カバー部86Aは、処置具22の操作に伴ってドーム型シール88とマウント部87Aが先端側に移動する際に、マウント部87Aの突き当てとして機能することにより、先端側への移動量を規制する。
円筒部86Bは、気密用ゴムカバー89が取り付けられるフレームとして機能する。円筒部86Bの内径は、第1マウント87、ドーム型シール88、センタリングガイド91、第2マウント92を内部に収容可能な大きさである。円筒部86Bにおいて、カバー部86Aの周囲に位置する先端側の周端縁86D(図30参照)は、気密用ゴムカバー89を介して、ダックビル弁81のフランジ81Dに対する突き当て面として機能する。
第2マウント92は、センタリングガイド91の基端側に配置される。第2マウント92は、先端側に凸型のマウント部92Aと、マウント部92Aの外周に形成されるフランジ92Bとを有している。第2マウント92は、例えばポリエステルなどの樹脂材料で形成されている。第2マウント92は、マウント部92Aによって、センタリングガイド91のガイド部91Aの基端側を支持し、フランジ92Bによって、フランジ91Bを基端側から支持する。マウント部92Aには開口92Cが形成されている。開口92Cは、第1マウント87の開口87Cとほぼ同径であり、トロカールシャフト17や処置具22を挿通可能になっている。
フランジ92Bには、先端側に突出する複数のピン92Dが形成されている。ピン92Dは、フランジ92Bの円周上に等間隔で配置されている。複数のピン92Dは、センタリングガイド91のフランジ91Bの小孔91E(図29参照)、ドーム型シール88のフランジ88Bの小孔88E(図29参照)、および第1マウント87のフランジ87Bの小孔に挿入される。これにより、センタリングガイド91、ドーム型シール88、第1マウント87、および第2マウント92が、図30に示すように、一体に組み付けられる。
ピン92Dは、小孔91E、88E等に挿入された状態で、例えば、超音波溶着などの熱溶着によってカシメ止めされる。これにより、第1マウント87のフランジ87B、ドーム型シール88のフランジ88B、および第2マウント92やセンタリングガイド91のフランジが密着した状態で固定される。ピン92Dは、第2マウント92に設けられ、先端側に突出しているため、カシメ止めされるピン92Dの先端側は、気密構造ユニット42の基端側からは見えないようになっている。こうすることで、見た目をよくしている。
気密用ゴムカバー89は、円筒形状の円筒部89Aと、円筒部89Aの内部に設けられた内側フランジ89Bとを有している。内側フランジ89Bには、トロカールシャフト17や処置具22が挿通される開口89Cが形成されている。また、円筒部89Aと内側フランジ89Bとの間には蛇腹部89Dが設けられている。気密用ゴムカバー89は、デュロメータ測定によるJIS A硬度が30のシリコンゴムなどのエラストマーで形成されている。気密用ゴムカバー89の硬度は、ドーム型シール88と同程度に柔らかい。また、気密用ゴムカバー89は、蛇腹部89Dの厚みが、周端縁82Aおよび折り返し部89Eなどその他の部分より薄く形成されており、蛇腹部89Dは厚みが0.3mm、その他の部分の厚みは0.5mmである。
内側フランジ89Bにも、第2マウント92のピン92Dが挿入される小孔が形成されている。図30に示すように、内側フランジ89Bは、小孔にピン92Dが挿入されることにより、ドーム型シール88のフランジ88Bと、センタリングガイド91のフランジ91Bとによって挟持される。これにより、気密用ゴムカバー89に、第1マウント87、ドーム型シール88、センタリングガイド91、および第2マウント92が取り付けられる。また、蛇腹部89Dが弾性変形して伸縮することにより、気密用ゴムカバー89の内側において、ドーム型シール88およびセンタリングガイド91等を変位可能に支持する。蛇腹部89Dによって、ドーム型シール88およびセンタリングガイド91の径方向の移動が許容される。
気密用ゴムカバー89の円筒部89Aは、シールホルダ86の円筒部86Bの外周面を覆うように取り付けられる。円筒部89Aの先端側の周端には、内側に折り返す折り返し部89Eが設けられており、折り返し部89Eが、シールホルダ86の円筒部86Bの周端縁86Dに被せられる。
(シールユニットの組み立て)
シールユニット82の組み立ては、例えば次のように行われる。まず、セグメント93を重ね合わせてセンタリングガイド91が形成されて、フランジ91Bの小孔91Eにピン92Dが挿入されて、第2マウント92に取り付けられる。
次に、センタリングガイド91が取り付けられた状態の第2マウント92は、内側フランジ89Bの小孔にピン92Dが挿入されて、気密用ゴムカバー89に取り付けられる。気密用ゴムカバー89の内側フランジ89Bの小孔からはピン92Dが突出している。この状態で、気密用ゴムカバー89の内側フランジ89Bから突出しているピンDに対して、先端側から、ドーム型シール88のフランジ88B、および第1マウント87のフランジ87Bが順番に取り付けられる。これらの取り付けが終了した後、ピン92Dがカシメ止めされる。
最後に、シールホルダ86の基端側から、気密用ゴムカバー89が被せられる。円筒部86Bの外周に、円筒部89Aを取り付けられて、折り返し部89Eで周端縁86Dが覆われる。内側フランジ89Bに固定されている、第1マウント87、ドーム型シール88、センタリングガイド91、および第2マウント92は、シールホルダ86の内部に収容される。これにより、シールホルダ86、第1マウント87、ドーム型シール88、センタリングガイド91、第2マウント92、および気密用ゴムカバー89が一体化されて、シールユニット82が完成する。
(気密構造ユニットのヘッド部への取り付け)
図30の断面図に示すように、ダックビル弁81は、円形部81Bの外周面をヘッド部内筒32Aの内壁と圧接させた状態で、フランジ81Dが突き当て面83に当接するまで先端側に押し込まれることによって装着される。
ダックビル弁81が装着されると、ヘッド部内筒32A内において、ダックビル弁81の外周面と、ヘッド部内筒32Aの内周面とによって内部空間S1が形成される。内部空間S1は、パイプ部内筒31Aの挿通孔33と連通しており、炭酸ガスが供給される接続口49も、内部空間S1に接続している。
ダックビル弁81が装着された後、ダックビル弁81の基端側にシールユニット82が装着される。シールユニット82は、シールホルダ86の周端縁86Dを覆う、気密用ゴムカバー89の折り返し部89Eと、ダックビル弁81のフランジ81Dの基端側とを当接させた状態で取り付けられる。シールユニット82が装着された後、シールユニット82の基端側からリアカバー43が取り付けられる。
ヘッド部内筒32Aにリアカバー43が取り付けられると、シールユニット82がリアカバー43からの押圧を受けて、ダックビル弁81が先端側に押し込まれる。これにより、ダックビル弁81のフランジ81Dが突き当て面83に圧接される。また、ダックビル弁81の外周面とヘッド部内筒32Aの内壁との間は気密に封止されている。これにより、内部空間S1が気密に封止される。
また、リアカバー43が取り付けられると、リアカバー43の先端側の突き当て面43Gと、気密用ゴムカバー89によって覆われたシールユニット82の基端側の周端縁82Aとが圧接される。シールユニット82の先端側は、折り返し部89Eとダックビル弁81のフランジ81Dとが圧接する。この圧接により、ダックビル弁81の内部空間S2において、ダックビル弁81の基端側の周端部分が封止される。また、リアカバー43の取り付けによって、シールユニット82は、先端側のダックビル弁81と基端側のリアカバー43によって挟持されて、Z軸方向に移動しないように固定される。
また、シールユニット82において、ピン92Dのカシメ止めによって、気密用ゴムカバー89の内側フランジ89Bとドーム型シール88のフランジ88Bとは圧接されて気密に封止される。このため、ドーム型シール88の開口88Cに処置具22が挿通されている状態では、ダックビル弁81の内部空間S2が気密に封止される。
(気密構造ユニットの機能)
カメラ付きトロカール16が体腔内に挿入されて、炭酸ガスの供給により気腹が行われた状態では、内部空間S1の気圧が上昇し、ダックビル弁81の弁部81Aの2つの斜面に開口81Cを塞ぐ方向に圧力が作用する。開口81Cに処置具22が挿通されていない状態では、気圧によって開口81Cが気密に封止される。また、パイプ部内筒31Aにダックビル弁81は気密に取り付けられている。そのため、開口81Cに処置具22が挿通されていない状態では、内部空間S1から体外へのガス漏れが防止される。
ドーム型シール88の開口88C等にトロカールシャフト17や処置具22が挿通されると、開口88Cは弾性により広がってトロカールシャフト17や処置具22の外周面と密接する。一方、ダックビル弁81の開口81Cは、トロカールシャフト17や処置具22が挿通されると、開口81Cが開く。開口81Cは筋状の開口であるため、開口81Cが開くと、トロカールシャフト17や処置具22の外周面との間に隙間が生じて、封止が解除される。
しかし、トロカールシャフト17や処置具22が挿通された状態では、ドーム型シール88を含むシールユニット82によって、ダックビル弁81内の内部空間S2の基端側が封止される。このため、トロカールシャフト17や処置具22の挿通によってダックビル弁81の開口81Cが開いても、体腔内から挿通孔33を通じて体外へガスが漏れることが防止される。
シールユニット82は、開口88Cを有する1枚構成のドーム型シール88を用いることにより、複数枚のセグメントでシールを構成した従来のシールと比べて、セグメント間の隙間が生じない分、気密性が向上する。
また、ドーム型シール88の基端側には、ドーム型シール88よりも硬度が高く、かつ、開口91Cを有するセンタリングガイド91が配置されている。そのため、処置具22をカメラ付きトロカール16に挿通する際において、処置具22をドーム型シール88の中心にある開口88Cの位置にガイドしやすい。処置具22をセンタリングガイド91の基端側に突き当てて、開口91Cの位置を触感で探り当てれば、処置具22がドーム型シール88の開口88Cの位置にガイドされるためである。従来のように、シールの基端側に開口が無いプロテクタが配置されている場合と比較して、開口位置を探しやすい。また、センタリングガイド91の硬度はドーム型シール88よりも硬度が高く、処置具22の摩擦抵抗も低減されるため、ガイドしやすい。
また、本例において、シールユニット82は、ドーム型シール88と、複数枚のセグメント93で構成されたセンタリングガイド91と、気密用ゴムカバー89とを組み合わせて使用している。そして、ドーム型シール88および気密用ゴムカバー89の硬度は、センタリングガイド91の硬度よりも低い。そのため、次に説明するとおり、処置具22の移動によって、ドーム型シール88の開口88Cに径方向の力が作用した場合でも、開口88Cの変形が防止される。開口88Cの変形が防止されると、処置具22の外周面との間に隙間が生じにくいため、良好なシール性能を確保できる。
図32Aおよび図32Bは、処置具22を挿通した状態のシールユニット82を、基端側から見た図である。図32Aは、処置具22がシールユニット82の径方向の中心にある状態を示し、図32Bは、図32Aの状態から、処置具22がシールユニット82の径方向、図において右側に移動した状態を示す。
処置具22が挿通されると、処置具22の外径に応じて、ドーム型シール88の開口88Cおよびセンタリングガイド91の開口91Cが拡張する。図32Aに示すように、処置具22が中心にある状態では、気密用ゴムカバー89の蛇腹部89Dは、円筒部89Aとの間隔が全周に渡って均一な初期状態を保っている。
処置具22が操作されて、図32Bに示すように、処置具22が径方向(図中右側)に移動すると、センタリングガイド91の開口91Cを拡張する方向に力が働く。開口91Cが拡張するためには、隣接するセグメント93同士が離間する方向に移動しなければならないが、その際には重なり領域93Aの接触により摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗に起因する開口91Cを拡張させる際の抵抗力は、ドーム型シール88の開口88Cを拡張させる際の抵抗力、および気密用ゴムカバー89の蛇腹部89Dを弾性変形させる際の抵抗力よりも大きい。
そのため、開口91Cが拡張するよりも早く、蛇腹部89Dが弾性変形する。蛇腹部89Dが弾性変形すると、気密用ゴムカバー89の内側フランジ89Bに保持されている、センタリングガイド91およびドーム型シール88は全体的に径方向に移動する。これにより、ドーム型シール88の開口88Cを拡張させる力も低減されるため、開口88Cの変形が防止される。
また、センタリングガイド91を構成するセグメント93の形状を、センタリングガイド91の円周の1/4の円弧を持つ扇形とすることにより、半円形状のセグメントで構成したプロテクタを用いる従来技術と比べて、隣接するセグメント93の重なり量を減らしている。これにより、開口91Cに対する処置具22の挿入や引き抜きの円滑性が向上する。また、重なり領域の面積を、セグメントの全面積の半分以下とすることにより、従来技術よりも重なり量が減るため、円滑性がさらに向上する。
また、隣接するセグメント93同士の重なり領域93Aを、外周から中心の開口91Cに向かって重なり幅が単調に増加する形状としたことで、こうした開口91Cに対する処置具22の挿入や引き抜きの円滑性をさらに向上させることができる。というのも、開口91Cのある中心付近には処置具22が挿通されるため、隣接するセグメント93が離間しやすい。一方、外周に近づくほど、中心付近にある処置具22から離れるため、隣接するセグメント93同士が離間する量は減る。
上述のとおり、処置具22の挿入や引き抜きの円滑性を考慮すると、重なり領域93Aは少ない方がよい。そこで、重なり領域93Aの幅を、外周から中心の開口91Cに向かって重なり幅を単調に増加させる形状とすることで、隣接するセグメント93間に隙間が生じるのを防止しつつ、重なり領域93Aの幅を最小限に留めることができる。
[トロカール画像又は内視鏡画像のホワイトバランス]
カメラ付きトロカール装置12では、腹腔内への挿入時に用いるトロカールシャフト17の穿刺部55を白色とすることによって、体腔内部において、トロカール画像のホワイトバランスの設定ができるようにしている。トロカール画像のホワイトバランスを行う際には、腹腔内でカメラ部36を展開位置にポップアップした後、カメラ部36の視野に白色の穿刺部55が入っており、且つ、この白色の穿刺部55が内視鏡11からの照明光で照明されている状態で、ホワイトバランスを行う。この状態で、図33に示すように、カメラ付きトロカール装置12に設けられたホワイトバランス設定スイッチ12aを操作する。これにより、図34に示すように、白色の穿刺部55の画像が含まれるホワイトバランス設定用のトロカール画像が得られる。なお、ホワイトバランス設定スイッチ12aは、コンソール20に設けてもよい。
図33に示すように、ホワイトバランス設定用のトロカール画像は、プロセッサ18に設けられたトロカール画像用ホワイトバランス設定部18aに送られる。トロカール画像用ホワイトバランス設定部18aでは、ホワイトバランス設定用のトロカール画像に基づいて、トロカール画像のホワイトバランスの設定を行う。具体的には、トロカール画像用ホワイトバランス設定部18aは、ホワイトバランス設定用のトロカール画像のうち、画像中下方の特定領域を白色の穿刺部55の画像領域と特定し、この特定領域内の画像に基づいてホワイトバランスの設定を行う。ここで、カメラ部36を展開位置にセットした時のカメラ部36と白色の穿刺部55との位置関係は、予め分かっているので、この位置関係に基づいて、特定領域が予め設定されている。なお、白色の穿刺部55は、ホワイトバランス設定用のトロカール画像の約10パーセントを占めることが分かっている。
ホワイトバランス設定用のトロカール画像における特定領域内の画像のうち、B画像信号、G画像信号、R画像信号の信号値の比率が1:1:1となるように、B画像信号のゲイン係数Gb、G画像信号のゲイン係数Gg、R画像信号のゲイン係数Grを設定する。これにより、トロカール画像のホワイトバランスの設定が完了する。ホワイトバランス設定後は、カメラ部36から得られるトロカール画像に対して、ゲイン係数Gb、Gg、Grを掛け合わせることによって、白色の被写体が、モニタ19において白色で表示されるようにする。
プロセッサ18には、内視鏡画像のホワイトバランスを設定する内視鏡画像用ホワイトバランス設定部18bも設けられている。内視鏡画像のホワイトバランスは、内視鏡11を体腔内に挿入する前に行う他、トロカール画像のホワイトバランスを設定した後は、トロカール画像のホワイトバランスと略同じになるようにしてもよい。トロカール画像のホワイトバランスを略同じにする場合には、例えば、トロカール画像用ホワイトバランス設定部18aで設定したトロカール画像用のゲイン係数Gb、Gg、Grが、内視鏡画像用ホワイトバランス設定部18bに送信される。内視鏡画像用ホワイトバランス設定部18bは、受信したゲイン係数Gb、Gg、Grを内視鏡画像のホワイトバランスに使用するゲイン係数として設定する。設定したゲイン係数Gb、Gg、Grを内視鏡画像に掛け合わせることにより、内視鏡画像中の白色の被写体が、モニタ19において白色で表示されるようにする。
なお、トロカールシャフト17の穿刺部55の全体を白色とすることによって、体腔内でホワイトバランスを行えるようにしているが、ホワイトバランスの他に、カラーバランスをも行えるように、穿刺部55の一部をカラーバランス設定用の色にしてもよい。例えば、体腔内では青色や緑色の被写体は少ないことから、図35に示すように、穿刺部55のうち白色の領域以外に、青色の領域と緑色の領域を設けて、青色と緑色のカラーバランスを設定できるようにすることが好ましい。
以下、上記構成による作用について説明する。腹腔鏡手術を行う際には、内視鏡11およびカメラ付きトロカール16がプロセッサ18に接続される。接続完了後、プロセッサ18が起動される。これにより、内視鏡11のカメラユニット28とカメラ付きトロカール16のカメラユニット62の駆動が開始されて、撮影が開始される。カメラユニット28およびカメラユニット62の画像信号は、プロセッサ18に入力される。プロセッサ18は、画像信号に対して画像処理を施して、内視鏡画像とトロカール画像を合成した合成画像をモニタ19に表示する。
医療スタッフSTは、モニタ19に表示される合成画像を確認しながら、内視鏡11とトロカール16、17の腹腔内への挿入作業を行う。まず、患者Pの腹部に、例えば図2に示すように3つの切開部26、27が開けられる。中央の切開部26には、カメラ機能の無い通常のトロカール21が挿入される。
一方、2つの切開部27には、2つのカメラ付きトロカール16が挿入される。カメラ付きトロカール16の挿入は、カメラ付きトロカール16にトロカールシャフト17が装着された状態で行われる。装着の際には、図12Bおよび図13Bに示すように、カメラ付きトロカール16の外筒部材16Bは、カメラ部36が展開位置となる、保持解除位置にセットされる。
外筒部材16Bは、ロック解除操作部材46によってスライドがロックされている。そのため、保持位置にある場合には、図19Bに示すように、ロック解除操作部材46を押圧操作してロックを解除した状態で、外筒部材16Bを基端側の保持解除位置にスライドさせる。図19Cに示すように、外筒部材16Bを保持解除位置に向けてスライドして、係合凸部46Eが係合溝47Bに達すると、バネ68の作用により係合凸部46Eと係合溝47Bが係合して、外筒部材16Bが保持解除位置にロックされる。
この状態で、シャフト部53がヘッド部32からパイプ部31の挿通孔33に挿通される。図14の二点鎖線で示すようにカムピン59をガイド溝52Cの位置に合わせて、トロカールシャフト17を先端側に前進させて、カムピン59をガイド溝52Cに係合させる。カムピン59が第二端52Bに達すると、図6に示す嵌合爪54Aが図7に示す切り欠き部43Cから嵌合溝43Bに進入して、図4、図12Bおよび図13Bに示す状態となる。この状態は、カメラ部36が展開位置となる、外筒部材16Bの保持解除位置となる。
トロカールシャフト17を初期位置に向けて回転させる際には、ロック解除操作部材46を押圧操作して、外筒部材16Bのスライドをロックした状態にする。この状態で、トロカールシャフト17のハンドル部54を回転操作する。トロカールシャフト17の回転により、カムピン59とカム溝52の作用によって、外筒部材16Bが、Z軸方向に沿って先端側にスライドする。このスライドにより、パイプ部31の先端が、展開位置にあるカメラ部36に後方から当接して、カメラ部36を格納位置に向けて回動させる。外筒部材16Bが保持位置に達すると、図3、図12Aおよび図13Aに示すように、カメラ部36の格納が完了する。
このように、トロカールシャフト17の回転により外筒部材16Bをスライドさせるため、パイプ部外筒31Bを直接把持して操作する場合と比較して、Z軸方向以外の方向に働く力が軽減されるため、パイプ部外筒31Bのスムーズなスライド操作が可能となる。
トロカールシャフト17がカメラ付きトロカール16に装着された状態では、パイプ部31の先端から穿刺部55が露出している。カメラ付きトロカール16の挿入に際しては、この穿刺部55から切開部27に挿入される。穿刺部55は、腹壁23を押し広げながら体腔内に進入し、穿刺部55に続いてパイプ部31が進入する。この際に穿刺部55は脂肪23Aの皮下組織を引き裂きながら進む。
この際に、穿刺部55およびパイプ部31には腹壁23を構成する脂肪23Aの皮下組織が巻き付く。図23Aに示すように、トロカールシャフト17が初期位置にあり、カメラ部36が格納位置にある状態では、穿刺部55の2本の突条部78は、カメラ部36のヒンジ部に対応する位置に配置される。そのため、図24Aおよび図24Bに示すように、穿刺部55の後方において、カメラ部36のヒンジ部を含むヒンジ部の周辺の領域R1では、それ以外の領域R2と比較して、脂肪23Aの巻き付きが抑制される。
カメラ付きトロカール16のパイプ部31が体腔内の所望の深さまで挿入されると、カメラ部36の展開が行われる。この展開に際しては、ロック解除操作部材46を押圧操作して、外筒部材16Bのスライドロックを解除する。この状態で、トロカールシャフト17のハンドル部54を初期位置から解除完了位置へ回転させる。そうすると、カムピン59とカム溝52の作用により、外筒部材16Bが保持位置から保持解除位置に向けて基端側にスライドする。上述のとおり、トロカールシャフト17の回転操作によって外筒部材16Bをスライドさせるため、スムーズな操作が可能である。このスライドにより、カメラ部36の保持が解除されて、バネ71の付勢力によってカメラ部36が展開位置に向けてポップアップする。
また、トロカールシャフト17を解除完了位置に向けて回転させる際には、図15A〜図15Cに示すように、連接部57に設けた押圧部57Bがカメラ部36に当接してカメラ部36を展開位置に向けて押し上げる。カメラ部36が設けられるパイプ部31の先端には脂肪23Aが付着してカメラ部36のポップアップの際の抵抗となる場合がある。このような場合でも、連接部57で構成される展開補助機構により、バネ71の付勢力を補助するため、カメラ部36のポップアップによる展開を確実に行うことができる。
また、穿刺部55の2本の突条部78A、78Bによっても、カメラ部36のヒンジ部の周辺の領域R1への脂肪23Aの巻き付きが抑制されるため、カメラ部36のスムーズな展開が可能になる。
また、カメラ部36が展開位置となる保持解除位置においては、図19Cに示すように、外筒部材16Bは、係合凸部46Eと係合溝47Bと係合して、スライドがロックされる。このため、不用意に外筒部材16Bがスライドしてカメラ部36が格納されてしまうことはない。
カメラ部36を展開させた後は、トロカールシャフト17を抜き取る前に、トロカール画像のホワイトバランスを設定する。ユーザーは、ホワイトバランス設定スイッチ12aを操作することによって、カメラ部36は、白色の穿刺部55が含まれるホワイトバランス設定用のトロカール画像を撮像する。トロカール画像用ホワイトバランス設定部18aでは、ホワイトバランス設定用のトロカール画像に基づいて、トロカール画像のホワイトバランスを設定する。
トロカール画像のホワイトバランスの設定が完了した後は、カメラ付きトロカール16からトロカールシャフト17を抜き取る作業に移る。カメラ部36を展開させた状態では、トロカールシャフト17は解除完了位置にある。この状態では、図14において二点鎖線で示すようにカムピン59が第二端52Bに達している。このため、カムピン59をガイド溝52Cに沿って移動させながら、カメラ付きトロカール16からトロカールシャフト17を抜き取ることができる。
トロカールシャフト17が抜き取られた後、カメラ付きトロカール16の接続口49および挿通孔33を通じて体腔内に炭酸ガスが供給されて気腹処置が行われる。カメラ付きトロカール16に処置具22が挿通されていない状態では、挿通孔33と連通する内部空間S1(図30参照)は、ダックビル弁81によって気密に封止されている。そのため、この状態において、ガス漏れが生じることはない。
気腹処置の終了後、トロカール21を挿入ポートとして、内視鏡11が体腔内に挿入される。そして、カメラ付きトロカール16を挿入ポートとして、処置具22が体腔内に挿入される。
処置具22の挿入時において、ドーム型シール88よりも硬度が高く、かつ、開口91Cを有するセンタリングガイド91の作用により、ドーム型シール88の開口88Cにガイドしやすい。
処置具22が挿入されると、ダックビル弁81の開口81Cが開く。処置具22が、気密構造ユニット42のドーム型シール88の開口88Cに挿通されており、開口88Cと処置具22は密接している。このため、ダックビル弁81による封止が解除されるが、気密構造ユニット42によって、挿通孔33に連通する内部空間S2(図30参照)のシールが保たれる。また、ドーム型シール88は1枚構成であるため、複数セグメントで構成される場合と比べて、シール性能がよい。
医療スタッフSTは、モニタ19に表示される合成画像を通じて体腔内を観察しながら、処置具22を操作して手技を行う。ドーム型シール88は柔軟性が高いため、処置具22の良好な操作性が確保される。処置具22が径方向に移動した場合でも、ドーム型シール88、気密用ゴムカバー89の蛇腹部89D、これらよりも硬度が高いセンタリングガイド91の組み合わせにより、図32Bに示したように、開口88Cの開口の変形が防止される。開口88Cの変形を防止することでシール性能を確保できる。
[第2実施形態]
(スライドガイド機構)
図36から図40に示す第2実施形態のトロカール装置112は、第1実施形態のトロカール装置12と同様に、トロカール116と、トロカールシャフト117とで構成される。トロカール116は、内筒部材116A、外筒部材116Bおよびリアカバー143で構成される。第2実施形態のトロカール装置112は、内筒部材116Aと外筒部材116Bの軸方向の相対的なスライド移動をガイドするスライドガイド機構を備えており、その他の基本的な構成は、第1実施形態と同様である。以下、相違点を中心に説明する。
なお、第2実施形態およびそれ以後の実施形態において、第1実施形態で説明した部分と対応する部分については、第1実施形態で付した符号に「100」を加えた符号を付して説明する。例えば、第1実施形態のトロカール装置12については、「12」に「100」を加えて、第2実施形態のトロカール装置112として説明する。第2実施形態において第1実施形態の符号と対応する符号(「100」を加えた符号)が付された部分については、基本的な構造および機能は、第1実施形態と同様であり、特に断りが無い限り、寸法や形状等の細かな点についての相違があるのみである。
図36において、内筒部材116Aは、第1実施形態の内筒部材16Aと同様に、パイプ部内筒131Aと、パイプ部内筒131Aの基端側に設けられ、パイプ部内筒131Aよりも大径のヘッド部内筒132Aとを有している。第2実施形態の内筒部材116Aの第1実施形態との相違点としては、ヘッド部内筒132Aについて、後述するスライドガイド機構の構成要素が設けられている他、外周面の細かな形状や寸法、第1実施形態の接続口49に相当する接続口149の形状などである。
外筒部材116Bも、第1実施形態の外筒部材16Bと同様に、パイプ部外筒131Bと、パイプ部外筒131Bの基端側に設けられ、パイプ部内筒131Aよりも大径のヘッド部外筒132Bとを有している。また、第2実施形態のパイプ部外筒131Bにも、第1実施形態と同様に、カム溝152が形成されたカム板151が設けられている。外筒部材116Bの第1実施形態の外筒部材16Bとの相違点としては、ヘッド部外筒132Bについて、後述するスライドガイド機構の構成要素が設けられている他、外周面の細かな形状や寸法、第1実施形態のロック解除操作部材46に相当するロック解除操作部材146の形状などである。
また、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、トロカール116のパイプ部131は、パイプ部内筒131Aとパイプ部外筒131Bで構成され、ヘッド部132は、ヘッド部内筒132Aとヘッド部外筒132Bで構成される。
トロカールシャフト117についても、第1実施形態のトロカールシャフト17と基本的な構成は同一であり、第2実施形態のシャフト部153、ハンドル部154、穿刺部155、シャフト部本体156および連接部157は、第1実施形態のシャフト部53、ハンドル部54、穿刺部55、シャフト部本体56および連接部57にそれぞれ相当する。また、第2実施形態のトロカールシャフト117にも、第1実施形態と同様に、カム溝152と係合するカムピン159が設けられている。第1実施形態との相違点としては、穿刺部155、連接部157、シャフト部本体156の寸法や形状などであり、機能的な相違はない。
リアカバー143は、第1実施形態のリアカバー43に相当し、ヘッド部132の基端側に取り付けられて、ヘッド部132の基端側の開口を覆う。
上述したとおり、カメラの展開機構は、内筒部材116Aと外筒部材116Bの相対的なスライドによって作動する。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、パイプ部外筒131Bのスライド操作は、トロカールシャフト117の軸回りの回転操作によって行われる。トロカールシャフト117が回転すると、カムピン159と、パイプ部外筒131Bのカム溝152との係合により、パイプ部内筒131Aに対してパイプ部外筒131Bが基端側にスライドし、カメラ部36が展開する。
図37に示すように、ヘッド部内筒132Aの外周面には、第1実施形態の係合部47に相当する係合部147が設けられている。係合部147は、第1実施形態の外筒ロック機構を構成する係合溝47A、47Bに相当する係合溝147A、147Bに加えて、第1ガイド係合部147Cを有している。第1ガイド係合部147Cは凹部であり、軸方向に延びる溝形状のガイド部である。第1ガイド係合部147Cは、周方向に延びる係合溝147Aおよび147Bの両端にそれぞれ配置されている。
一方、ヘッド部外筒132Bの内周面には、第1ガイド係合部147Cと係合する第2ガイド係合部148が設けられている。第2ガイド係合部148は凸部であり、軸方向に延びるレール形状のガイド部である。第2ガイド係合部148は、ヘッド部外筒132B内に挿入される、ロック解除操作部材146の挿入部分の両端にそれぞれ配置されている。
図38に示すように、ヘッド部内筒132Aとヘッド部外筒132Bとが組み付けられた状態では、第2ガイド係合部148と第1ガイド係合部147Cとは対向して、それぞれの凹凸により係合する。第1ガイド係合部147Cおよび第2ガイド係合部148は、軸方向に延びているので、両者の係合により、内筒部材116Aと外筒部材116Bの軸方向の相対的なスライドがガイドされる。
第1ガイド係合部147Cと第2ガイド係合部148の組は、2組設けられており、各組は、ヘッド部132の軸回りの周方向において対向する位置に配置されている。
上述したとおり、カメラの展開機構は、内筒部材116Aと外筒部材116Bの相対的なスライドによって作動する。第1ガイド係合部147Cと第2ガイド係合部148で構成されるスライドガイド機構によって、スムーズなスライドが可能となる。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、パイプ部外筒131Bのスライド操作は、トロカールシャフト117の軸回りの回転操作によって行われ、パイプ部外筒131Bには、カムピン159とカム溝152との係合に伴って軸回りの回転力が作用する。パイプ部外筒131Bに回転力が作用しても、スライドガイド機構によってパイプ部外筒131Bは軸方向にガイドされる。このように回転力が作用するパイプ部外筒131Bにスライドガイド機構を設けることは、特に有効である。
また、第1ガイド係合部147Cと第2ガイド係合部148の組は、対向位置に2組設けられているので、1組の場合と比べて、よりスムーズなスライドが可能となる。
なお、本例では、第1ガイド係合部147Cを凹部、第2ガイド係合部148を凸部で構成したが、凹凸は逆でもよい。また、係合部の形状としては、本例のような単なる凹凸の係合ではなく、断面がL字形状の鍵型形状の凹部および凸部でもよい。また、本例において、ヘッド部132にスライドガイドを設けているが、ヘッド部132に代えて又はそれに加えて、パイプ部131にスライドガイドを設けてもよい。また、本例において、第1ガイド係合部147Cおよび第2ガイド係合部148の組を2組設けているが、1組でもよく、また3組以上設けてもよい。
(スライド量規制部)
また、図37において、トロカール116には、展開機構を構成するパイプ部外筒131Bの基端側へのスライド量を規制するスライド量規制部が設けられている。内筒部材116Aにおいて、ヘッド部内筒132Aの外周面には、径方向に突出する突き当てピン201が設けられている。ヘッド部内筒132Aの軸回りの周方向において、突き当てピン201が設けられる位置は、例えば、パイプ部内筒131Aにおいてカメラ部36が設けられる位置に対応している。
外筒部材116Bにおいて、ヘッド部外筒132Bの内周面には、突き当てピン201と係合するピン係合溝202が設けられている。ピン係合溝202は、スライド方向である軸方向に延びた細溝であり、先端側には、突き当てピン201が当接する突き当て面202Aが形成されている。
図39および図40に示すように、内筒部材116Aと外筒部材116Bが組み付けられた状態では、突き当てピン201のほぼ全体がピン係合溝202内に進入して、両者が係合する。カメラ部36が展開する際にパイプ部外筒131Bは基端側にスライドされる。このスライドにより、図40に示すように、ヘッド部内筒132Aに設けられた突き当てピン201に向かって、ヘッド部外筒132Bに設けられた突き当て面202Aが基端側に後退する。突き当て面202Aが突き当てピン201と当接することにより、パイプ部外筒131Bの基端側へのそれ以上のスライドが規制される。
このようにパイプ部外筒131Bの基端側へのスライド量が規制されているため、パイプ部外筒131Bが所定位置以上に後退することが防止される。これにより、適切なカメラ部36の展開動作が可能となる。
また、パイプ部外筒131Bおよびヘッド部外筒132Bを有する外筒部材116Bをスライドさせる操作は、ヘッド部外筒132Bに設けられたカム板151と、トロカールシャフト117に設けられたカムピン159との係合によって行われる。上述のとおり、トロカールシャフト117をトロカール116から分離する動作は、外筒部材116Bに対してトロカールシャフト117を基端側に引き抜くことによって行われ、この際に、カム板151とカムピン159との係合も解除される。
そのため、トロカールシャフト117の引き抜き時に、カム板151が設けられた外筒部材116Bに対して、カムピン159を通じて基端側へスライドさせる力が働く。しかし、突き当て面202Aが突き当てピン201に当接して、外筒部材116Bの基端側へのスライドは規制されるため、外筒部材116Bがトロカールシャフト117に引き摺られることはなく、トロカールシャフト117のスムーズな引き抜きが可能となる。このように、突き当て面202Aと突き当てピン201は、トロカールシャフト117のスムーズな引き抜きを可能とする機能も担っている。
なお、本例において、スライド量規制部を、突き当てピン201と突き当て面202Aで構成したが、突き当て板など、突き当てピン201とは別の形状や構造でスライド量規制部を構成してもよい。また、ヘッド部内筒132Aに突き当てピン201を設け、ヘッド部外筒132Bに突き当て面202Aを設けた例で説明しているが、反対に、突き当てピン201をヘッド部外筒132Bに、突き当て面202Aをヘッド部内筒132Aに設けてもよい。また、スライド量規制部を1箇所ではなく、2箇所以上に設けてもよい。
上記説明により、以下の発明を把握することができる。
[第1の付記項1]
体腔内に挿入されるパイプ部を有し、前記パイプ部が、相対的に軸方向にスライド可能な内筒と外筒で構成されるトロカールと、
前記トロカールを前記体腔内に挿入する際に前記トロカールに装着され、装着時において前記パイプ部の先端から穿刺部が露出するトロカールシャフトと、
前記内筒部材の先端に配置されたカメラ部であって、前記内筒内に格納される格納位置と前記内筒の外周面から突出する方向に展開する展開位置との間で変位するリトラクタブル式のカメラ部と、
前記カメラ部を前記展開位置に付勢するバネを有し、前記外筒を用いて前記カメラ部を前記格納位置に保持し、かつ、前記外筒の基端側へのスライドによって前記カメラ部の保持を解除して前記展開位置に展開させる展開機構と、
前記外筒の基端側に設けられた第1カム部と、前記トロカールシャフトの基端側に設けられ、前記第1カム部と係合する第2カム部とを有し、前記トロカールシャフトの軸回りの回転操作によって前記外筒を基端側へスライドさせる操作機構と、
前記内筒および前記外筒の前記軸方向の相対的なスライドをガイドするスライドガイド機構とを、
備えているトロカール装置。
[第1の付記項2]
前記スライドガイド機構は、前記内筒に形成された第1ガイド係合部と前記外筒に形成された第2ガイド係合部とによって構成される第1の付記項1に記載のトロカール装置。
[第1の付記項3]
前記第1ガイド係合部および前記第2ガイド係合部は、一方が凸部で他方が凹部で構成されている第1の付記項2に記載のトロカール装置。
[第1の付記項4]
前記内筒は、前記パイプ部を構成するパイプ部内筒と前記パイプ部内筒の基端側に設けられ、前記パイプ部よりも大径なヘッド部内筒で構成され、
前記外筒は、前記パイプ部を構成するパイプ部外筒と前記パイプ部外筒の基端側に設けられ、前記パイプ部よりも大径なヘッド部外筒で構成されて、
前記第1ガイド係合部は前記ヘッド部内筒の外周面に形成され、
前記第2ガイド係合部は前記ヘッド部外筒の内周面に形成されている第1の付記項2に記載のトロカール装置。
[第1の付記項5]
前記前記第1ガイド係合部および前記第2ガイド係合部の組は、複数設けられており、
前記複数の組は、前記ヘッド部の軸回りの周方向において対向する位置に配置されている第1の付記項4に記載のトロカール装置。
[第1の付記項6]
さらに、前記トロカールは、前記外筒の基端側へのスライド量を規制するスライド量規制部を備えている第1の付記項1〜6のいずれか1項に記載のトロカール装置。
[第1の付記項7]
前記スライド量規制部は、前記内筒および前記外筒の一方に形成された突き当て面と、他方に形成され、前記突き当て面に当接する突き当てピンとで構成されている第1の付記項6に記載のトロカール装置。
[第1の付記項8]
前記内筒は、前記パイプ部を構成するパイプ部内筒と前記パイプ部内筒の基端側に設けられ、前記パイプ部よりも大径なヘッド部内筒で構成され、
前記外筒は、前記パイプ部を構成するパイプ部外筒と前記パイプ部外筒の基端側に設けられ、前記パイプ部よりも大径なヘッド部外筒で構成されて、
前記突き当て面および前記突き当てピンの一方は、前記ヘッド部内筒の外周面に形成され、他方は、前記ヘッド部外筒の内周面に形成されている第1の付記項7に記載のトロカール装置。
[第1の付記項9]
前記スライド量規制部は、前記ヘッド部の軸回りの周方向において、前記パイプ部に設けられた前記カメラ部に対応する位置に配置されている第1の付記項8に記載のトロカール装置。
[第3実施形態]
図41〜図47に示す第3実施形態のトロカール装置は、第1実施形態のトロカール装置12や第2実施形態のトロカール装置112を改良したものであ。第3実施形態のトロカール装置は、図36に示す第2実施形態のトロカール装置112のトロカール116とトロカールシャフト117は共通であるので、第3実施形態についても、第2実施形態のトロカール装置112と同一の符号を付して説明する。
図41および図42に示すように、第3実施形態のトロカール装置112は、トロカール116、トロカールシャフト117(図36参照)、気密構造ユニット142、およびリアカバー143を備えている。気密構造ユニット142は、第1実施形態の気密構造ユニット42と基本的な構成は同一であり、ダックビル弁181とシールユニット182を備えている。ダックビル弁181およびシールユニット182は第1実施形態のダックビル弁81およびシールユニット82と基本的な構成は同一である。
第3実施形態のトロカール装置112の主な改良点は、トロカールシャフト117をトロカール116から円滑に引き抜くための工夫と、シールユニット182に含まれるドーム型シールの破損をより確実に防止するための工夫を施した点である。そのため、第3実施形態のトロカール装置112は、トロカール116、トロカールシャフト117、および気密構造ユニット142(ダックビル弁181およびシールユニット182を含む)の各部の細かな形状や寸法が、第1実施形態のトロカール装置12と異なっている。以下、こうした改良点を中心に説明する。
図43および図44に示すように、第3実施形態のシールユニット182は、第1実施形態と同様に、シールホルダ186、第1マウント187、気密用ゴムカバー189、センタリングガイド191、および第2マウント192を備えている。これらは第1実施形態のシールホルダ86、第1マウント87、気密用ゴムカバー89、センタリングガイド91、および第2マウント92に相当する。
図44に示すように、気密用ゴムカバー189には、ドーム型シール188が設けられており、第1実施形態と異なり、ドーム型シール188と気密用ゴムカバー189が一体化されている。気密用ゴムカバー189は、第1実施形態の気密用ゴムカバー89と同様に、円筒部189A、内側フランジ189B、および蛇腹部189Dを有しており、蛇腹部189Dは、円筒部189Aと内側フランジ189Bの間に設けられている。
一方、ドーム型シール188のシール部188Aの外周と、内側フランジ189Bは連接されており、これにより、ドーム型シール188と気密用ゴムカバー189が一体化されている。これは第1実施形態との相違点の1つである。ドーム型シール188と気密用ゴムカバー189が一体に形成されているため、次の効果が得られる。まず、部品点数が減り、低コスト化に寄与し、かつ、組み立て性も良い。さらに、一体化により、隙間が減るため、シールユニット142の気密性も向上する。
各部の構成や機能は、第1実施形態と同一である。材料についても第1実施形態と同様である。例えば、ドーム型シール188およびこれと一体の気密用ゴムカバー189はシリコンゴムで形成されており、第1マウント187や第2マウント192は、ドーム型シール188よりも硬質なポリエステルなどの樹脂材料で形成されている。ドーム型シール188は、柔軟な材料で形成されているため、径方向の中央に形成されたシール開口188Cに処置具22が挿通された状態では、ドーム型シール188が弾性変形して処置具22の外周にフィットする。これにより、パイプ部131に処置具22が挿通された状態において、体腔に通じるトロカール116内部の気密性を維持する。
また、ドーム型シール188および気密用ゴムカバー189は一体化されている点で第1実施形態と異なるが、各部の肉厚については、第1実施形態と同様である。すわなち、ドーム型シール188のシール部188Aの肉厚は約0.8mmであり、気密用ゴムカバー189の蛇腹部189Dの肉厚は0.3mmであり、その他の部分の肉厚は0.5mmである。
第1実施形態で説明したとおり、蛇腹部189Dが弾性変形して伸縮することにより、処置具22からドーム型シール188およびセンタリングガイド191に対して径方向の力が作用した場合に、ドーム型シール188およびセンタリングガイド191の径方向の移動が許容される。蛇腹部189Dの肉厚は、ドーム型シール188のシール部188Aの肉厚よりも薄いため、シール部188Aの開口188Cが拡張するよりも早く、蛇腹部189Dが弾性変形する。そのため、処置具22から径方向の力が作用した場合において、開口188Cの拡張が抑制されるので、気密性が向上する。
第1マウント187および第2マウント192には、それぞれの径方向の中央にトロカールシャフト117の外径よりも大きな開口であり、処置具22やトロカールシャフト117が挿通する第1マウント開口187Cおよび第2マウント開口192Cが設けられている。リアカバー143にも、処置具22を挿通することが可能なリアカバー開口143Eが設けられている。リアカバー143は樹脂材料で形成されており、ドーム型シール188と比べて硬質である。
また、センタリングガイド191は、第1実施形態と同様に、ドーム型シール188の基端側に配置され、処置具22を挿通する際に、処置具22の先端をシール開口188Cにガイドする。センタリングガイド191も、第1実施形態と同様に、ガイド部191A、フランジ191B、およびガイド開口191Cを有している。ガイド部191Aは、ドーム型シール188のドーム形状にならって先端側に突出している。ガイド開口191Cは、口径がシール開口188Cとほぼ同様であり、本例においては、シール開口188Cよりも僅かに小さい。
第3実施形態において、シール開口188C、第1マウント開口187C、第2マウント開口192C、およびリアカバー開口143Eは、第1実施形態における開口88C、87C、92Cおよび43Eにそれぞれ相当する。第3実施形態においては、各開口の区別を明瞭にするため、各開口に修飾を付して呼称している。
図45および図46は、ダックビル弁181およびシールユニット182を含む気密構造ユニット142を、ヘッド部132のハウジング内に装着した状態の断面図である。処置具22やトロカールシャフト117をトロカール116に挿入する際には、処置具22やトロカールシャフト117の先端側から、リアカバー開口143E、第2マウント開口192C、ガイド開口191C、シール開口188C、第1マウント開口187C、およびダックビル弁181を通じてパイプ部131内に挿入される。
そして、パイプ部131内を挿通された状態の処置具22やトロカールシャフト117を、パイプ部131およびヘッド部132から引き抜く場合には、挿入時とは反対に、処置具22やトロカールシャフト117の先端部分がパイプ部131内からヘッド部132に移動し、ダックビル弁181、第1マウント開口187C、シール開口188C、ガイド開口191C、第2マウント開口192C、およびリアカバー開口143Eを順に通過する。
(長さL1とマウント間隔L2の関係)
第3実施形態のトロカール装置112では、図46に示すように、トロカールシャフト117の穿刺部155の先端から所定位置までの長さであるL1とマウント間隔L2は、L1とL2の関係が、次の条件式(1)を満たすように設定されている。
L1>L2・・・・・式(1)
ここで、長さL1は、穿刺部155の先端から、シャフト部153の外周面に形成される、軸方向における段差のうち、軸方向においてシャフト部153(穿刺部155)の先端から最小距離にある段差までの長さである。
図36に示すように、シャフト部153の外周面には、連接部157が形成されることに起因して生じる段差や、連接部157の基端側であって、シャフト部本体156の先端に形成された膨出部156Aに起因して生じる段差など複数の段差が形成されている。長さL1を規定する、軸方向においてシャフト部153(穿刺部155)の先端から最小距離にある段差とは、本例では、連接部157が形成されることによって起因して生じる段差をいう。
本例においては、穿刺部155の基端側の直後に連接部157が形成されている。そして、連接部157はカメラ部36を収容する収容スペースを形成するための細径部となるため、穿刺部155の基端には、穿刺部155の外周面155Aから径方向の中心に向かってほぼ垂直に落ち込む基端面155Bが形成される。この基端面155Bによって軸方向における段差が形成される。そして、このように段差は穿刺部155の基端面155Bによって形成されるため、長さL1は、本例においては、軸方向における穿刺部155の先端から基端までの長さである穿刺部長と一致する。以下においては、長さL1を穿刺部長L1として説明する。
また、マウント間隔L2は、パイプ部131とヘッド部132の境界位置から第1マウント開口187Cまでのトロカール116の軸方向における間隔L2である。より厳密には、境界位置は、パイプ部内筒131Aとヘッド部内筒132Aの境界位置をいう。
穿刺部長L1とマウント間隔L2を式(1)の関係とすることで、次のような効果が得られる。第1に、トロカールシャフト117の引き抜き時において、図46に示すように、穿刺部155の基端、すなわち、基端面155Bによって形成される段差が、第1マウント開口187Cに達するまでの間、穿刺部155の先端はパイプ部内筒131A内に留まる。穿刺部155の先端がパイプ部内筒131A内に留まっている間は、ヘッド部内筒132A内における穿刺部155のふらつきが抑制される。
穿刺部155のふらつきが抑制されると、ヘッド部内筒132A内において、第1マウント開口187Cの径方向の中心と穿刺部155の径方向の中心がほぼ一致する状態が保たれる。そのため、段差である穿刺部155の基端面155Bが第1マウント開口187Cに引っ掛かることが防止され、第1マウント開口187Cをスムーズに通過させることができる。トロカールシャフト117の外周に段差が形成されている場合でも、段差が第1マウント開口187Cに引っ掛かることが防止されるので、トロカールシャフト117をトロカール116から円滑に引き抜くことができる。
第2に、トロカールシャフト117の段差の引っ掛かりが防止されることで、段差に引っ掛けられたドーム型シール188が無駄に基端側に引っ張られるなど、ドーム型シール188に無用な力が加われることが抑制されるため、段差によるドーム型シール188の引き裂き等の破損がより確実に防止される。
(センタリングガイドの変形可能部分の自然長L3と間隔L4の関係)
また、第3実施形態のトロカール116では、センタリングガイド191の変形可能部分の自然長L3と、第2マウント開口192Cの位置とリアカバー開口143Eの位置との間の軸方向における間隔L4は、L3とL4の関係が、次の条件式(2)を満たすように設定されている。
L3<L4・・・・式(2)
ここで、図46に示すように、自然長L3は、ガイド部191Aにおいて、ガイド開口191Cに挿通されたトロカールシャフト117を引き抜く際に基端側に向かって弾性変形可能な変形可能部分の長さであって、変形可能部分に対して外力が加わっていない状態において、ガイド開口191Cの開口縁から第2マウント開口192Cまでの長さである。
ガイド開口191Cは、穿刺部155の外径と比較して小さいため、ガイド部191Aは、穿刺部155が基端側に引き抜かれる際に、ドーム型シール188とともに基端側に引っ張られて弾性変形する。ガイド部191Aの基端側には第2マウント192が配置されているため、ガイド部191Aのうち、第2マウント192に支持されている部分は、基端側に向けて弾性変形することはなく、自然長L3に相当する部分のみ弾性変形する。
自然長L3と間隔L4を式(2)の関係とすることで、次のような効果が得られる。トロカールシャフト117の引き抜き時に、仮に、トロカールシャフト117の外周面に形成された段差がドーム型シール188とセンタリングガイド191を引っ掛けて、リアカバー143側に引っ張ったとしても、センタリングガイド191の変形可能部分は、リアカバー開口143Eに到達しない。
図47に示すように、ドーム型シール188は、センタリングガイド191よりも柔軟な材料で形成されているため、ドーム型シール188が、センタリングガイド191よりも基端側に伸長して、リアカバー開口143Eに到達する場合がある。しかし、その場合でも、ドーム型シール188よりも硬質なセンタリングガイド191はリアカバー開口143Eに到達しない。
そのため、比較例を示す図48のように、ドーム型シール188がセンタリングガイド191と一緒にリアカバー開口143Eに巻き込まれることはない。そのため、トロカールシャフト117とリアカバー143Eの開口縁との挟み込みに起因するドーム型シール188の破損が確実に防止される。
また、図47に示すように、ドーム型シール188が単体でリアカバー開口143Eに巻き込まれたとしても、センタリングガイド191と一緒にリアカバー開口143Eに巻き込まれる場合(図48参照)と比較して、トロカールシャフト117の外周面とリアカバー開口143Eの開口縁との間の隙間には、センタリングガイド191の巻き込みが無い分、センタリングガイド191の厚み分の余裕が生じることになる。そのため、トロカールシャフト117とリアカバー143Eの開口縁との挟み込みに起因するドーム型シール188の破損がより確実に防止される。
(リアカバー開口の開口径OPD1と穿刺部最大径D1)
また、ドーム型シール188の肉厚をTとしたときに、リアカバー開口143Eの開口径OPD1と、穿刺部155の最大径D1との関係は、次の条件式(3)を満たしている。
OPD1>D1+T・・・・式(3)
開口径OPD1は、例えば15mmであり、D1+Tとの差は、少なくとも1mm程度あればよい。
リアカバー開口143Eの開口径OPD1と穿刺部155の最大径D1を式(3)の関係とすることで、次のような効果が得られる。すなわち、図47に示すように、トロカールシャフト117の外周面に形成された段差によってドーム型シール188が単体でリアカバー開口143Eまで引っ張られたとしても、トロカールシャフト117がリアカバー開口143Eの中央に位置している限り、ドーム型シール188が、トロカールシャフト117とリアカバー開口143Eの開口縁とによって挟み込まれることはない。これにより、ドーム型シール188の破損がより確実に防止される。
また、図45等に示すように、リアカバー開口143Eの開口縁は、角が生じないように丸められている。いわゆる、開口縁に対してRを付けている。こうした加工は、金型成形時に施してもよいし、金型成形後にヤスリなどによって施してもよい。こうした加工を施すことにより、トロカールシャフト117の外周面の段差によってドーム型シール188がリアカバー開口143Eまで引っ張られたとしても、角がある場合と比べて、ドーム型シール188の破損が抑制される。図45および図46に示すように、本例では、開口縁は、先端側および基端側の両方が丸められている。特に、本例のように、ドーム型シール88との接触がより懸念される先端側の曲率半径を、基端側よりも大きくすることが好ましい。
以上のとおり、本例のようにカメラ付きのトロカール装置112の場合には、カメラ部36の収容スペースを設けるために、トロカールシャフト117に対して、細径部に相当する連接部157が設けられる。連接部157を設けると、段差が生じるため、トロカールシャフト117の円滑な引き抜きを阻害する要因となるとともに、ドーム型シール188の破損の原因となる場合もある。第3実施形態で説明した工夫によって、こうした課題を解決することができる。
本例のドーム型シール188は、処置具22の操作性とシール性能を向上するために、柔軟性を高めている。そのため、樹脂材料などの硬質な材料と係合すると、従来の比較的硬質なシールと比較して破損しやすい傾向にある。こうした柔軟性の高いドーム型シール188を用いる場合に、第3実施形態に係る発明は特に有効である。
なお、本例では、トロカールシャフト117の外周面に形成される段差として、格納位置にあるカメラ部36を収容するための細径部(連接部57)を設けることに起因して形成される段差を例に説明している。しかし、カメラ部36に限定されず、カメラ部36以外の機能部を収容するための細径部を設けるために起因して形成される段差でもよい。例えば、カメラ部36以外の機能部としては照明部が考えられる。照明部には、LEDなどの光源や照明光学系が含まれる。この場合のトロカール装置は、カメラ付きトロカール装置ではなく、リトラクタブル式の照明部を設けた照明付きトロカール装置である。
照明部としては、例えば、特許5991975号公報に記載の蛍光観察に用いる照明部などの特殊光観察用途の特殊光源部が考えられる。特殊光観察とは、例えば、通常光である白色光の代わりに、紫外光や赤外光などの特定の波長の光を、観察対象部位に照明して、粘膜や血管に生じた病変を明瞭に観察するための技術である。こうした特殊光源部をトロカール装置に設けることで、体腔内観察のヴァリエーションを広げることができる。
また、照明部としては、特殊光源部に限らず、腹腔鏡の光源の光量をアシストするために白色光を照射する白色光源部でもよい。このように、第3実施形態に係る発明は、カメラ付きトロカール装置に限定されず、こうした照明付きトロカール装置に適用してもよい。
また、本例では、トロカールシャフト117の外周面に形成される、軸方向における段差として、機能部の収容スペースを設けるための細径部を設けることに起因する段差を例に説明している。このような段差は、上述した基端面155Bに示すとおり、径方向に向かってほぼ垂直に立ち上がる面で構成される。第3実施形態に係る発明は、トロカールシャフト117において、このような鋭角的に立ち上がる階段状の段差が生じる場合に特に有効である。というのも、図36に示す膨出部156Aのように段差が、比較的なだらかに立ち上がる傾斜面で構成されている場合には、ドーム型シール188などとの引っ掛かりは問題にならず、基端面155Bのように段差が鋭角的であるほど、ドーム型シール188などとの引っ掛かりが問題になるからである。
また、上記第3実施形態の説明から、以下の発明を把握することができる。
[第2の付記項1]
処置具が挿通されるトロカールに内蔵され、処置具が挿通された状態において、体腔に通じるトロカール内部の気密性を維持するトロカール用のシールユニットにおいて、
平面形状が円形の1枚の材料で構成され、径方向の中心に処置具を挿通させる開口が形成されたゴム製のシールと、
前記シールと一体に形成されたゴムカバーであって、円筒部と、円筒部の内側に設けられ、前記シールの外周と連接される内側フランジと、前記円筒部と前記内側フランジの間に配置され、弾性変形により、前記シールの径方向の移動を許容する蛇腹部とを有するゴムカバーと、
を備えている、トロカール用のシールユニット。
[第2の付記項2]
前記蛇腹部の肉厚は、前記シールの肉厚よりも薄い、第2の付記項1に記載のトロカール用のシールユニット。
[第2の付記項3]
さらに、前記トロカールの軸方向において、前記シールよりも基端側に配置され、前記処置具を前記径方向の中心位置にガイドするセンタリングガイドであって、前記シールよりも硬度が高い材料で形成されたセンタリングガイドを備えており、
前記シールおよび前記ゴムカバーは、デュロメータ測定によるJIS A硬度が30のシリコンゴムで形成され、
前記センタリングガイドは、デュロメータ測定によるJIS A硬度が90のポリウレタンで形成される、第2の付記項1または2に記載のトロカール用のシールユニット。
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変更した形態にも及ぶことはもちろんである。例えば、上記実施形態には、複数の発明が含まれているが、それらを単独で実施してもよいし、2つ以上の発明を適宜組み合わせてもよい。また、上記実施形態において、ドーム型シールとセンタリングガイドとを備えたシールユニットは、カメラが設けられていない通常のトロカールにも適用することができる。